概要
当院の臨床工学技術課は、様々な医療分野で生命維持管理装置などを扱う臨床工学技士18名で構成します。臨床工学技士(Clinical Engineer : CE)は医学と工学両方の知識を持ち医療機器の操作をはじめ安全性の確保と有効性を維持する上で欠かすことのできない専門性の高い医療職です。
ご挨拶
当院は三次救急を行う施設であり、高度な治療が頻繁に行われています。現代の高度な医療技術は多くの医療機器に支えられて成立しています。臨床工学士はこれらの生命維持管理装置を操作および保守管理を行う医療職として1987年に法制化された比較的新しい医療専門職です。当院では血液浄化関連業務や手術室関連業務をはじめ、心臓カテーテル室関連業務や内視鏡関連業務、医療機器管理業務、高気圧酸素療法などの幅広い分野で活躍しています。
特徴
当院の臨床工学技士は、日々進化する医療や広がる現場ニーズに応えるべく学術技能の研鑽を重ね、資質の向上に努めています。それに伴い活躍する医療現場も増え、業務内容も年々複雑化しています。また、医療機器の中央管理を始めとし、高度な医療現場で使用される装置の操作や保守管理に併せて他職種への研修も積極的に行い、安全で効率的な機器の運用に努めています。
スタッフ紹介
医療技術部長 谷 達夫
臨床工学技術課 技師長 佐野一樹
臨床工学技士 18名
取得認定資格
- 血液浄化専門臨床工学技士 6名
- 不整脈治療専門臨床工学技士 1名
- 心・血管カテーテル関連専門臨床工学技士 1名
- 呼吸療法専門臨床工学技士 1名
- 認定血液浄化臨床工学技士 1名
- 透析技術認定士 7名
- 3学会合同呼吸療法認定士 6名
- 体外循環技術認定士 1名
- ME第1種実力検定認定 1名
- ME第2種実力検定認定 13名
血液浄化部門
血液浄化部門は、腎臓の働きが悪くなり体内にたまった毒素や余分な水分を取り除く血液透析治療を毎日4~5名の臨床工学技士が交代で担当し、人工腎センターで月曜日から土曜日までの午前と午後の2回に分けて行われる透析治療に関わる業務を行っています。
当院の人工腎センターは透析装置40台と、集中治療室や病棟への出張透析や出張透析に対応する透析装置が1台あります。臨床工学技士の人工腎センターでの主な業務は、治療の準備、血管への穿刺、治療の開始や終了といった血液透析治療の全般に携わり、エコーを用いた血管の管理や安全に血液透析を行えるよう治療に必要な装置の操作や点検などを行っています。
また、主に集中治療室で行われる持続的腎代替療法 (CRRT)や、血漿交換療法(PE)や直接血液還流療法(DHP)などの特殊な血液浄化療法にも対応しています。
その他にも、末梢血幹細胞採取(PBSCH)や腹水濃縮再静注(CART)、血管エコーなどの血液浄化以外の業務にも携わっています。
手術室部門
手術室では、全身麻酔・脊椎麻酔・局所麻酔を行いながら様々な手術が行われています。
医療技術の発展は日進月歩で、手術治療においても同様です。多種多様の医療機器を使用し高度な手術を行なっています。
臨床工学技士は安全に手術が行なえるよう、毎日4~5名の技士が医療機器の操作、セッティング、保守管理などを行なっています。
体外循環業務
冠動脈疾患、心臓弁膜症、小児心疾患、大動脈の手術の際に、人工心肺装置を使用し患者様の心臓、肺の機能をサポートし手術が行なわれます。
臨床工学技士が人工心肺装置、心筋保護装置をそれぞれ操作しています。
機器操作業務
心臓血管外科、整形外科などの手術で自己血回収装置を操作しています。耳鼻科、脳外科、整形外科の手術では、ナビゲーションシステムを導入しており、システムの準備と操作を行っています。脊椎外科の手術では、術中経頭蓋運動誘発電位(TCMEP)モニタリングの操作を、腹腔鏡・胸腔鏡手術、レーザー手術では各機器のセッティングも行なっています。
機器保守管理業務
手術室では多種多様の医療機器が使用されています。
麻酔器、電気メス、超音波メス、レーザー装置、内視鏡手術装置などを安全に使用できるよう、保守点検を行い、いつでも提供できるよう準備しています。
医療機器管理部門
近年では様々な医療機器が登場して使用されています。当院でも多種多様な医療機器が存在しており、その医療機器を安全に使用することを目的として臨床工学技士が管理業務を行っています。
病院内全体で使用頻度が高い医療機器の中央管理を実施しており、各種ポンプ、人工呼吸器、生体情報モニターなどを中心に貸し出し業務、使用後点検を実施しています。また各病棟に配置されているAEDや除細動器、生体情報モニター等の定期点検、手術室・内視鏡室・人工腎センター等で使用される各種機器の保守点検を実施しています。その他病棟における医療機器トラブルへの初期対応も行っています。これらの点検計画や実施記録を医療機器管理システムで一元管理することで、安全な医療機器の使用に貢献しています。
医療機器 中央管理装置 |
シリンジポンプ、輸液ポンプ、PCAポンプ、経腸栄養ポンプ、TCIポンプ、生体情報モニター類、人工呼吸器、NPPV、気道粘膜除去装置、空気・酸素混合流量計、ポータブル吸引器、侵襲式体外型心臓ペースメーカ、超音波診断装置、皮膚灌流圧測定器など |
医療機器 保守管理装置 |
AED、除細動器、各種生体情報モニター、自動血圧計、経皮的補助循環装置(PCPS)、大動脈内バルーンポンプ(IABP)、血液浄化関連装置、血液成分分離装置、保育器、酸素テント、麻酔器、電気メス、手術室関連装置、内視鏡関連装置、ドクターヘリ関連装置など |
循環器関連部門
心臓カテーテル関連業務
心臓カテーテル検査とは患者さんの手首や足の付け根の血管からカテーテルと呼ばれる管を通して冠動脈と呼ばれる心臓の血管の状態や心臓の動きを見たりする検査です。臨床工学技士は検査中の心電図や血圧の記録とモニタリングを行います。また、検査の結果心筋梗塞や狭心症といった冠動脈が狭窄や閉塞した状態を確認した場合には治療が必要となり、その際に使用する血管内超音波装置等の医療機器の準備や操作も臨床工学技士が行っています。
心臓ペースメーカ関連業務
ペースメーカとは心臓の脈拍が遅くなる徐脈性不整脈に対して、必要に応じて電気刺激を与える装置になります。臨床工学技士はペースメーカを患者さんに埋め込む際に立ち会って、ペースメーカの設定やデータ測定等を行っています。また、埋め込み後の外来時にも立ち会ってデータの測定や確認等も行っています。
近年では希望された患者さんのご自宅に専用の中継機器を設置していただき、自宅からペースメーカの情報を送信し、病院側でその情報を閲覧できる遠隔モニタリングと呼ばれシステムを導入し、定期的に不整脈の有無やリード、電池などの状態を確かめる業務も行っています。
高気圧酸素療法部門
高気圧酸素療法は高い気圧のもとで酸素を吸入することにより、血液中の酸素濃度を増
やして一酸化炭素中毒や突発性難聴、腸閉塞をはじめとする様々な病気を対象として行っ
ています。
当院では7名の臨床工学技士が担当し、治療用装置の操作や点検を行っています。
内視鏡部門
内視鏡室では胃潰瘍や胆石などの消化器系や、肺がんなどの呼吸器系疾患の患者様方に、内視鏡装置を用いた検査・治療を行っています。当院では3~4名の臨床工学技士が内視鏡業務を担当しており、安全な内視鏡検査・治療が行えるように内視鏡機器の点検管理や各種検査・治療の際に使用する様々な器具の管理や操作を行っています。また、特殊な検査・治療時の内視鏡機器類のセッティングやトラブルなどにも対応しています。
内視鏡機器管理業務
内視鏡室は、胃・十二指腸・大腸・肺気管支用と多種多様な内視鏡装置や治療に使用される電気メスなど高度な医療機器を多数保有しています。臨床工学技士はこれらの機器が安全かつ本来の性能を発揮できるように点検を行うとともに、機器故障などのトラブル発生時の対応を行っています。
内視鏡検査・治療補助業務
ダブルバルーン内視鏡や超音波内視鏡など特殊な内視鏡装置を用いて行う検査・治療が、円滑に行えるように各種機器のセッティングを行っています。また、早期消化管がんや胆石などの治療の際に使用される様々な医療材料の使用方法・特性を理解し安全に治療できるようにサポートを行っています。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
ESDは腫瘍が食道や胃などの消化管の粘膜内に限られている場合に行われる内視鏡治療法です。臨床工学技士は治療の際に用いる電気メスや各種治療用器具の操作・設定を医師の指示のもと行い治療をサポートしています。
内視鏡的逆行性膵胆管造影関連手技(ERCP)
ERCPでは胆石や膵炎など胆管・膵管系の病気に対して、内視鏡を用いた結石の除去や胆汁のドレナージなどを行っています。臨床工学技士は治療の際に使用される各種治療器具の準備や入れ替えなどを医師の指示のもとで行っています。