広報誌「厚生労働」2023年9月号 特集|厚生労働省

知らないと“損”をする 薬局活用術

近年、薬局の機能強化に向けた施策が実施されています。
2021年8月から「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」の認定が、今年1月からは「電子処方箋」が始まりました。日々の健康管理において、「薬局」「薬剤師」は非常に重要な存在です。本特集では、薬局や薬剤師を活用することで、「損をしない」「得をする」方法を紹介します。

意外と知らない得する・損する情報

薬局や薬剤師は健康に関する身近な相談先(相手)です。上手に付き合うことで得られる「得」、活用しないことでの「損」について、見落としがちな“当たり前”な部分にスポットを当てます。

<損>
薬は正しく使わないと健康面で“損”

医師に処方される医療用医薬品とOTC医薬品(一般用医薬品・要指導医薬品)で同じ効能・効果を表示している場合でも、成分や含有量が違ったり、効き方や効き目が異なることがあります。たとえば、解熱剤など医療用医薬品の効能・効果を知っているからといって、飲み残した薬をOTC医薬品の代わりに自分の判断で使用するようなことは絶対にやめましょう。

誤った使用でケガや病気が治らなくなることは、皆さんの健康を考えると大きな“損”です。自分で判断せず、必ずかかりつけの医療機関や薬局の薬剤師に相談してください。

<得>
ジェネリック医薬品の活用は費用面で“得”

ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは、先発医薬品(新薬)の特許が切れた後に製造販売される、新薬と同じ有効成分を同一量含み、同一の効能・効果を持つ医薬品のことです。開発費用が抑えられるので新薬より安価で、効き目や安全性も新薬と同等であることから、医療の質を落とさずに費用負担が軽くなります。ジェネリック医薬品は日本以上に欧米で広く使用されています。
ジェネリック医薬品が調剤されるにあたっては、薬剤師からジェネリック医薬品に関する説明が行われるので、不安がある場合は薬剤師に相談してください。

<得>
OTC医薬品は薬剤師や登録販売者に聞くのが“得”

医師から処方された薬を服用している人は、病気によって使ってはいけない薬があります。持病がある人や治療中の人、妊娠中や授乳中の人は、OTC医薬品を選ぶときには薬剤師や登録販売者に相談してください。症状によっては主治医を受診したほうがよい場合もあります。

OTC医薬品によっては(15歳未満の)子どもには使用できない場合や、商品名に小児用とあっても年齢により使用できない場合があります。子どもの薬を選ぶときは、パッケージの表示の用量を見たり、薬剤師に子どもの年齢を伝えて、使用できるかどうかを確認してもらいましょう。

参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)ウェブサイト  くすりQ&A
 

<Part1>薬局の電子化  押さえておかないと“損”をする

電子処方箋や電子版お薬手帳など、薬局や医療機関では電子化が進行中です。電子化による変化やメリットについて解説します。

解説者:長嶋賢太
医薬・生活衛生局 総務課 電子処方箋サービス推進室 課長補佐

【電子処方箋】
重複投薬や併用禁忌などを防ぎ 患者の安全と安心を守る

●飲んでいる薬の情報を正しく伝えられる
皆さんは、日頃行く医療機関や薬局で「電子処方箋」という言葉を聞いたことがありますか。電子処方箋は、今年1月からスタートした新たな取り組みです。

これまでは、医療機関を受診し薬が必要になると紙の処方箋が発行され、患者さんは薬局の薬剤師に処方箋を渡すことで薬が受け取れる仕組みでした。これに対し電子処方箋は、処方箋を紙で発行せずに、医療機関と薬局が「電子処方箋管理サービス」というシステム上で情報を共有し処方・調剤するものです(図表)。これにより、患者さんは紙の処方箋を薬局に持参する必要がなくなります。

電子処方箋のメリットは3つあります。1つ目は、「重複投薬」の回避です。患者さんによっては同時期に複数の医療機関にかかっている場合があり、それぞれの医療機関で同じ効能・効果の薬が処方され、必要以上の量を飲んでしまっていることもあります。これまでは、飲んでいる薬は口頭やお薬手帳により医師や薬剤師に伝えていましたが、電子処方箋を利用すれば、口頭で伝え漏れをしたり、お薬手帳を忘れたときにも医師や薬剤師がシステム上で服用中の薬をチェックできるので、重複投薬の回避につながります。

2つ目は、「併用禁忌」の防止です。薬には飲み合わせによって体に悪い影響が出たり、十分に効果を得られない場合があります。1つ目のメリットと同じく電子処方箋を利用すれば、服用中の薬について医師と薬剤師がシステム上で確認し、併用に問題がある薬が処方された場合には両者が相談し変更できるので、併用禁忌の防止につながります。

3つ目は、紙の処方箋と違って電子処方箋はシステム上にあるので、処方箋の紙を持参しなくなることです。つまり、処方箋をなくしたり、薬局に持って行き忘れるといった心配を減らすことができます。

電子処方箋を利用すると、服用中の薬の情報をリアルタイムに医師や薬剤師にデータとして伝えることができます。もちろん、伝えるのはご自身が薬の情報の提供に同意した場合に限ります。同意なしに勝手に閲覧されることはありません。

●難しい操作は不要   受付時に選ぶ・伝えるだけ
電子処方箋を利用する場合は、医療機関の受付で本人確認の際に、タッチパネルに「処方箋を電子処方箋にしますか。紙処方箋にしますか」という画面が表示されるので、電子処方箋を選びます。受診後には、「引換番号」が印字された「処方内容(控え)」という紙を受け取ります。薬を受け取る薬局の受付でも、本人確認の際にタッチパネルで電子処方箋を選び、薬を受け取ります。

電子処方箋はマイナンバーカードだけでなく、健康保険証でも利用できます。受付で健康保険証を出したときや診察のときに「電子処方箋を希望します」と伝え、薬局では、引換番号を伝えて薬を受け取ります。
電子処方箋に対応した医療機関と薬局は、ポスターや厚生労働省のホームページでも確認できます。

電子処方箋とは?
これまで紙で発行していた処方箋を電子化したものです。処方・調剤された薬をいつでも自分で確認することができます。


【電子版お薬手帳】
受診時や来局時に忘れにくく  長期にわたる服用歴管理に有効


●スケジュール管理や健康管理機能も

「お薬手帳」は、患者さんが服用歴を記載・管理するものです。お薬手帳を活用することで、自分の服用している薬について正しく把握・理解するとともに、服用したときに気づいた薬の副作用や効果、体の変化、服用したかどうかなどを記録すれば健康維持・増進につなげることができます。

また、複数の医療機関を受診する際や薬局で調剤を受ける際に、患者さんがお薬手帳を医師や薬剤師などに提示することで、薬の相互作用や重複投与を防ぎ、より安全で有効な処方に資する一助にもなります。

お薬手帳は紙のものだけでなく、近年は電子化も進んでいます。今年1月からスタートした電子処方箋とも連動しており、患者さんが医療機関で渡された引換番号と被保険者番号などを電子版お薬手帳経由で薬局に送信すると、その情報を受信した薬局は引換番号により電子処方箋の原本を取得した後、速やかに調剤ができるなど、待ち時間の削減にも有効です。

電子版お薬手帳のメリットは3つあります。1つ目は、携帯電話やスマートフォンを活用することから携帯性が高く、受診時や来局時にも忘れにくいことです。

2つ目は、データの保存容量が大きいため、長期にわたる服用歴の管理が可能であることです。

3つ目は、アプリケーション独自に運動の記録や健診履歴など健康に関する情報を管理する追加機能を備えているものもあること。たとえば、スケジュール管理(服用アラーム)や、薬局への処方箋画像送信(待ち時間短縮)、健康管理機能(歩数、血圧など)などです。

患者さんのなかにはスマートフォンなどの操作に不慣れな方もいることから、電子版お薬手帳の運営事業者は相談窓口や問い合わせ先を設けています。使い方に迷った際には、そうした窓口も利用してみてください。

<Part2>
薬局の多様化・特徴  知らないと“損”をする

薬局は、現在は調剤・販売だけでなく、さまざまな機能を持っているところが増えてきています。パート2では、多様化する薬局の特徴を事例で紹介するとともに、薬局の「探し方」についても示します。



解説者:東 寛(写真右)/村本紗央理(写真左)
医薬・生活衛生局 総務課 薬局・販売制度企画室




 

薬局機能情報提供制度を活用し お目当ての薬局を探そう

薬局の情報は「薬局機能情報提供制度」により公表されています。都道府県が公表する検索システムを使い、利用したいタイミングや目的に合わせて適切な薬局を見つけることができます。




来年4月には全国統一のシステム「医療情報ネット」の運用が始まります。このシステムでは、都道府県をまたいで薬局を探すことができ、「キーワード」や「急いで(場所と時間から)」、「じっくり(設備や対応内容など)」などさまざまな探し方が可能になるほか、音声読み上げや多言語翻訳などにも対応しています。

また、薬剤配送サービスの内容や、薬局に相談をするためにはどのような手段(電話、メール、SMSなど)があるのかなどを把握することもできるようになります。15~17ページの事例で紹介する薬局も、上記の方法により自分の身近な場所で探すことができます。ぜひ一度活用してみてください。
 
出典 : 広報誌『厚生労働』2023年9月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省