父は羊羹に黒文字を入れながら 「・・感性は。おれとおまえはとても似ている、」 静かに言った。 「え、」 「昔からそう思っていた。おまえのセンス。いつも感心して…
いろんな恋のカタチ。ちょこっと胸がきゅんとなるお話です。暇つぶしにケータイでも気軽に読めます!
ものすごく胸があったかくなって、ちょっぴり切ない気持ちになりたくなって書き始めました。私自身、もうそういう時間は通り過ぎてしまいましたが、もう一度そんな切ない時間を取り戻したい!
父は羊羹に黒文字を入れながら 「・・感性は。おれとおまえはとても似ている、」 静かに言った。 「え、」 「昔からそう思っていた。おまえのセンス。いつも感心して…
少しでも自分が彼にとっての『価値』であるよう勉強も仕事もさらにギアを上げて頑張った。 カフェレストランのメニュー開発もシェフたちや栄養士などの専門家を中心に…
この前のお休みに再び映画をひとりで観てきました。 前に書きましたように今回は三谷幸喜さん脚本・監督の スオミの話をしよう です。 三谷さんと言えば「古畑任三…
「この前。あんなこと言っちゃって。ごめん、」 真緒は気まずそうに真太郎に謝った。 「え?」 「・・全部ひとり占めにしてって。」 「ああ・・」 少し照れ臭そうに…
真太郎が帰宅して一息ついていると、 「あ・・帰ってた?」 真緒がやってきた。 「ん?」 「あのー・・。 インテリアコーディネーターもワインアドバイザーも。一次…
「あ、お疲れ様です。」 午後、そのまま出社してきた真太郎に社長室で執務をしていた高宮は一礼した。 「留守の間ありがとう。何か急ぎの要件は?」 「いえ、今の所は…
本当に静かで。 鳥の声と木々の葉が風に揺れる音しか聞こえない。 「北都Gの総帥の妻であっても全く夫婦同伴のパーティーにも出ないし、女優も引退状態だし。父は仕事…
「わ・・ きれいですねえ・・」 翌朝早く、真太郎は初音にホテルまで迎えに来てもらい彼の家の近くの小高い丘に登った。 そこからは朝日に照らされ少し霞んだような山…
北都Gを継いだこの社長は。 まだ40手前で。 自分とそう年も変わらない。 どんなスーパーマンだと思っていたけれど。 初音には真太郎が等身大の青年に見えた。 …
「ぼくにとって、ここはやっぱり大切な場所で。大きなお金を動かすことはできませんが農業にも誇りを感じています。その気持ちと。何かをやりたい、という思いもあって。…
「そんな妹が。あなたと一緒に会社を作りたい、初音さんでなければ意味がない・・って言った時。ぼくはいったい妹にこれまで何をしてきてやれたのか、いや何を見てきたの…
「実は。当社、NCからもあなたに引き続き仕事をしてもらえないかと要望もあるんです、」 真太郎はまっすぐに初音を見た。 「えっ・・」 目を見開いてしまった。 「…
「真緒ちゃん、何とか頑張ろうとしてるみたいだよ、」 南は遅くに帰宅した真太郎の脱いだスーツの上着をハンガーにかけた。 真緒と二人で話したことは南にも黙っていた…
「名前?」 NCでの会議で紗枝はメンバーに資料を手渡した。 「代理店の人とも話し合って候補はいくつか上がっているんだけど。ピンと来なくて。もう時間もないしいろ…
先々週の日曜日。 映画「ラストマイル」見てきたんですよ。 ひとりで。 映画をひとりで観るって初めての経験だったのですが、好きな時に好きな作品をふらっと見に行く…
もちろんこのことに関してまだ初音からYesの返事ももらっていない。 心が揺れた。 迷った。 でも。 あの光景を見てしまったから。 紗枝に連れて行ってもら…
「これで彼の仕事の進め方の素晴らしさの理由がわかったよ。これは高野じゃなくても手放したくないよ。・・たたき台だけ作って丹波に帰ってしまったって。まあ・・天音く…
「・・ここのスペース。もったいなくないですか。このワゴンの向きを変えて。お客さんが入って来る方に向けて。売れ筋のものは奥の方に陳列してもみなさん探して買ってく…
「だから! 10年くらい前に高野で音楽配信のアプリ開発してて。その発案者である兄ちゃんを伯父さんも母も、いや会社の上層部もその腕を買ってて。その時も高野で正式…
リアクションのない真緒に紗枝は怪訝そうに 「どしたの?」 と顔を覗き込むと 「う・・」 真緒はぽろぽろと涙をこぼしてしまった。 「・・真緒さん、」 「う、嬉し…
あれから初音からこの動画メールが特に説明もなく送られてきて。 例の件のことは全く音沙汰なし。 必ず返事をしますから の彼の言葉を信じるしかないのだが。 …
「ごめんなさいね。あなたに黙って、」 母の声は穏やかだった。 「いや。ええねんけど。でも・・北都会長の奥様とそんな関係だったとは。びっくりした、」 初音は部屋…
「今朝。NCに行ったら高原さんが徹夜で仕事してて。」 真緒はぼうっと話し始めた。 「あんなにすごい人なのに。めちゃくちゃ勉強してるんだよね。あたし。この年から…
「明るくしてたけど。相当傷ついただろうし。本当につらかっただろうし。それでも何とか立ち直って頑張ろうとも思っただろうし、」 母の言葉が真太郎の胸に突き刺さる。…
事業部を出ていくと、はす向かいにある秘書課から真太郎が出て来てばったり会ってしまった。 うっ・・ 真緒は一瞬足を止めたが絵にかいたような フン!! をしてその…
でも。 真緒はつっぷした格好のまま思った。 あたしが頑張ればいい。 高原さんのようにはなれなくても。 自分を生かせる分野の勉強をして。 資格を取って。 一人前…
「・・資格?」 真緒はポツリと言った。 「なんでもいいのよ。何か取れると自信にもなるし。これからの仕事に役立つかもしれないし。」 「なんか。考えもしなかったで…
「・・起業を軽く考えてるあいつの性根が許せないんだよ。ホント苦労もせずにこれまでのほほんと生きてきたくせに、」 そして絞り出すように真太郎は新聞をテーブルに乱…
南がそっと二人の間に入った。 「・・もう、やめよう。お互い傷つけたって何も生まれない、」 冷静にそう言った。 「・・あたしが。ホントに・・なんも考えてなくて。…
それにはカチンときて 「え、偉そうに言わないでよ!真太郎は昔から自分が頭がいいと思ってあたしのことなんかバカにして!自分一人でホクトの社長に収まったような顔し…
真緒は一大決心をしたように 「・・初音さんと。 野々村初音さんと一緒にやりたいんです!」 よく通る声で訴えた。 「・・・・」 それには真太郎も南も一瞬黙ってし…
初音はゆっくりと真緒に歩み寄り、右手で彼女の左の二の腕をそっと掴んだ。 びっくりして顔を上げた。 「・・ありがとう。ほんまに。ありがとう、」 優しい関西弁だっ…
真緒はただただ茫然として初音の言葉を受け止めていた。 「もうここには帰りたくない。ずっと東京で華やかな仕事をしていたい。そう思っている自分に気づいて。・・落ち…
それから。 祐奈は娘を迎えに行くから、と慌てて帰って行った。 「じゃ。また来てや。夏物のシャツの新作できたら送るわ、」 赤星もそのまま自分のテーラーに行ってし…
真緒は自分のグラスをコトっと置いた。 「あたしは。ずっとなんとなく生きてきたので。やりたいことさえ見つけられなくて。前に出たくても、今自分がどこにいるのかさえ…
「初音さん、やっぱり昔からモテモテでした?」 真緒が身を乗り出して二人に聞いた。 「そりゃモテモテに決まってるやん。顔良し、頭良し、性格良し。」 赤星が指を折…
自宅に戻って何が驚いたって。 「あ!おっかえり~~。長かったね!どこのホテル寄ってきたの~~???」 「もー、風太くんてば!そんな下衆なこと言っちゃダメ!!」…
後ずさりをしすぎて 「・・わっ!!!」 広場の淵の段差を踏み外して落ちてしまった。 「は、初音さん!!」 真緒が慌てて近づくと、80センチほどの段差を落ちてし…
毎日暑くて、しんどいですね・・ 年々暑くなるわ、自分は年を取ってるわで。 ホントしんどい って思う中。 またオリンピックがやってきて、終わりましたね・・ 東京…
彼のことが好き その思いは。 彼のその『感性』がとても好きで ずっと一緒に仕事をしたい という気持ちのすり替えだったのか。 真緒にはまだよくわからなかった。 …
初音はやや呆然としながらだらんと両手を垂らした。 そして彼女に背を向けた。 どうしよう・・ 呆れられたかな・・ 真緒はぎゅっと目を瞑った。 「・・ありが…
真緒はもう頭が混乱して。 このシチュエーションと、そして詰まりに詰まったこの思い。 この日初音と一緒になって作った料理や その素晴らしい仕上がり その美味しさ…
「ど、どういうことですか・・」 真緒は驚いて彼を見た。 「・・東京に天音の仕事ぶりを見に行きました。それを見ていて自分のやりたいことをもっともっとやってみたい…
初音はもう一度オーブンで温め直したパイ包みを持ってテーブルの上に置いた。 「真緒ちゃんは。今回仕事?」 赤星に聞かれてドキっとした。 「えーっと・・まあ・・」…
そこに 「こんちわーー」 赤星と祐奈がやってきた。 「・・あれ?」 初音が彼女を見て怪訝な表情をすると 「今日は彩乃がお友達の家にお泊りなの。だからあたしも…
台所のテーブルにはノートが置いてあり、そこにはたくさんの料理レシピが細かい文字とイラストで描かれていた。 「これ・・」 真緒はそれを手に取った。 「丹波焼の皿…
結果はどうあれ。 高野有希子の駆け落ちを後押ししたのが母ゆかりであることを思い出し、もし初音がこれを知ってしまったらどう思うだろうか と真緒は心配になってしま…
「や。おまえのやりたいことやればええんちゃうの。」 赤星は当たり前のように言った。 「だから!おれのやりたいことってなんやねん、てこと。」 初音は彼に八つ当た…
「・・それで・・どうするの、」 初音はやや呆然としながら尋ねた。 「すぐには決められん。でも。本当の気持ちを言うと・・やってみたいと思った、」 「は、畑は。ど…
両親が離婚して20年以上。 その間ずっと連絡を取っていなかったのに、こういう形で再会して。 特にわだかまりも何もなかったようで、この20年はいったいなんだった…
丹波篠山は4月の終わりとはいえ朝晩はまだ冷える。 父が東京に行っている間は叔母家族に助けてもらって一人で農作業をする。 自分が東京に行っている間はこうやって父…
そして天音は楽しそうにゆかりと話をしている母を見た。 「でも。お母ちゃんは帰ってこなかった。今も。『あそこには住めない』ってキッパリと言われた。」 「え、」 …
天音は少し考え込んでから意を決したように顔を上げた。 「真緒さん、兄ちゃんのこと。どう思っていますか。」 もうまっすぐな目でそんなことを言われて 「はっ・・?…
両親の離婚も 子供たちを丹波に残したことも 全て間違っていなかった ゆかりの言葉に天音もなんだかグッとくるものがあって思わず唇をかみしめた。 20年ぶりに…
「でも。ユキちゃん。ひとりだけ連絡取っていた人がいたのよね、」 ゆかりはふふっと笑った。 「そう。運転手の村本さん、」 「あ、さっきの・・」 真緒は自分たちを…
「芸能界って。ホントに厳しいんだね…。昔気軽にそこに足踏み入れようとした自分が愚かだわー」 真緒もやけ酒のようにグッとシャンパンを飲んだ。 「まあ。なんでもや…
「めちゃくちゃカッコイイでしょ?もうあたしもこの人しかいない!ってなっちゃって、」 ゆかりは隣の真緒をバシバシと叩いた。 「痛い痛いって・・ へー・・あの無口…
言ってもしょうがないんですけど 暑いですねえ・・ もう私の知っている『夏』は戻ってこないのでしょうなあ。 夜中もゆるくクーラーをつけっぱなしでないと眠れません…
「それとは別に仕事もまだ残っていて。急にやめることも会社にとっては困ることで。しかも看板女優がいきなり妊娠したなんてことになったら。スキャンダルもいいとこだし…
「その頃、ユキちゃんのお母さんも病気療養していて。心配かけたくないって言ってたしね。色々悩んでたわよね・・」 ゆかりはしみじみ言った。 それを同じようにしみじ…
「芸能界を、辞めたかった・・?」 真緒はシャンパングラスを持ったまま固まった。 「うん。お芝居は好きだったけど。とにかく忙しすぎてね。3年間くらいほぼ休みなし…
『私、高野有希子といいます。どうぞよろしくお願いします、』 『え?いくつ?ピアノどのくらいやってるの?』 『あ・・ハタチ、です。音大の2年生です。ピアノは・・…
そこに 「・・どうも、」 天音が遠慮がちに顔を出した。 「あ!天音くんも? どうぞどうぞお座りなさいな、」 ゆかりは嬉しそうにソファの自分の隣をポンポンとして…
時を昨夜の8時ごろに巻き戻すと。 パーティーも終わり、ほとんどの客が引けて行ったあと 「は?帰った??」 天音は伯父の高野社長に思わず聞き返してしまった。 「…
【これまでのお話】初音と天音が高野楽器の副社長の息子、と知った真緒。高野のパーティーに天音と天音の父、そして真緒と母ゆかりも招待者としてやってきます。鉢合わせ…
いつもMy sweet home~恋のカタチ。をご覧くださっている皆様。 ありがとうございます。 ずっとお休みしていましたが、明日から小説を再開させていただき…
小説再開までいましばらくお待ちください 小説(森野日菜) - カクヨムkakuyomu.jp 香織&樺沢編ただいま連載中。毎朝7時ごろ更新していま…
My sweet home~恋のカタチ。を読んでくださっているみなさま。 いつもありがとうございます。 すみません、いつまでもお休みしてしまって。 しかもお話…
いつもMy sweet home~恋のカタチ。をご覧くださっているみなさま。 ありがとうございます。 高野楽器のパーティーで真緒の母、ゆかりと初音と天音の母有…
パーティーのホスト役、高野社長夫妻はゲストへの挨拶で大忙しのようだったが、天音の父・野々村直人はその合間を縫って挨拶に行った。 「ここに来られる立場ではないの…
一方、天音も。 ホスト側として忙しそうな母に疑問をぶつけられずにいた。 「天音さん?」 声を掛けられ振り返る。 「高野楽器の取締役の矢田部と申します。初音さん…
何とも拍子抜けしたが 「・・いや!『ナイショ!』じゃなくて! 高野副社長とどういう関係??」 真緒はさらに母を問い詰めた。 「どういう関係って。まあ・・むかし…
「まさかゆかりさんが来てくれるなんて、」 「あたしもね、息子夫婦が行かれなくなって。なんかユキちゃんともう一度会うようにって神様が言ってる気がして・・。」 「…
「・・真緒、さん?」 後ろから声を掛けられて振り返る。 天音がスーツ姿で立っていた。 「あ! 天音くん! え?なに?やっぱ来てたの??」 「コンクールのピアノ…
「え? ひょっとして。 一ノ瀬ゆかりじゃない・・?」 「ウソ。 ホクトグループの奥様になって完全引退したよね?」 「いや、たぶんそうだよ!」 高野楽器のアニバ…
父は少し考えた後 「・・じゃあ。少しだけ、」 とパーティーへの出席を承諾した。 え! 天音はぎょっとした。 絶対断ると思っていたのに。 どうした、お父ちゃん…
My sweet home~恋のカタチ。を読んでくださっている皆様。いつもありがとうございます。 お話の方は高野楽器のパーティーを舞台に意外な方向に転換してゆ…
でも母はそのまま芸能界からフェードアウトした。 真緒はコップをカタンと置いた。 「オファーの方はひっきりなしにあったようですよ。直接の電話も結構ありましたし。…
母ゆかりは真緒が部屋に入ってきたのを丸っきり無視するように 「真也さ~ん、」 と隣の部屋にいる父の所に行ってしまった。 「ねえ、どうかしら。このワンピース。若…
「おれらが高野の副社長の息子ってこと。ウチの会社の人たちや北都家の人たちに内緒ってことになってんねん、」 天音は母にそう言った。 「それは・・初音が色々考えて…
「あそこを離れることになった経緯は。正直あまりよく覚えてないの。でも。父も兄も離婚をしなくても別居をしてみたらどうかって言ってくれたんだけど。直さんが・・離婚…
ついこの間、いきなり 母 とカミングアウトされて。 いきなり なー、お母ちゃん~ なんて話もかけられんしな・・ 天音は距離感を迷っていた。 すると 「直さんは…
父は少し離れたところで椅子に座って天音が作業するのをジッと見ていた。 天音が父について調律に行くようになったのは中学生のころ。 学校が長い休みになると東京や大…
天音はなんとなく父をジッと見た。 するとそれを察してか 「いや。ワシはもうでけんで。」 秒で断られた。 「・・できるやろ?こういう事情や。頑張ってやってみ、」…
彼女が着ていたワンピースの柄も。 スーツケースの色も。 全部覚えている。 『私はもう家には帰りません、』 そう言って子供のように泣き出した彼女の顔も。 そし…
とても温和な紳士だった。 最初は社長とわからずいきなり声を掛けられて怪訝そうに会釈をすると 『社長の高野です。HIRAIにとても腕のいい調律師がいると聞いてい…
「おれ、その日の昼間にある高野主催の音楽祭のピアノ調律の補佐依頼されて。」 天音はスープの乗ったトレイをダイニングに運んだ。 「え、そうなの?すごいやん、」 …
真緒は隣にいた兄・真太郎に 「・・どういうこと?ちょっと怖いんですけど、」 小声でコソっと言った。 「いや。おれもわからん・・。さっき急に言い出して、」 真太…
「いや、しかし・・」 父はそのメールの文面を読んでも戸惑うだけだった。 「別にな。今さらお母ちゃんとどうこうっていうんやなくて。おれらの親として。天音が頑張っ…
「おまえにも。いろんな経験をしてほしいんや、」 初音はなおも続けた。 「兄ちゃん、」 天音は兄の気持ちを思う。 「いくら身内や言うても。補佐とはいえそんなこと…
My sweet home~恋のカタチ。 ご覧くださっている皆様、いつもありがとうございます。 さて。 お話は。 真緒と初音のモヤモヤ出張を経て。 少しは距離…
そして。 それから1か月半が経った。 その間。 真緒は捻挫をした足を治療しつつ、リモートで仕事をこなし。 時折初音と電話やメールなどで打ち合わせをしたりと カ…
「ひとつは悪いことをしたらきちんと叱ること。もうひとつは。『お嬢さま、お坊ちゃま』と呼ばないこと、」 美和子はふふっと笑った。 「それは・・」 初音は少し首を…
なんとか昼過ぎには北都邸に戻ることができた。 「あらあら、まあまあ。全くもうどうしたの、」 初音に抱えられるように帰ってきた真緒にゆかりは呆れたように言った。…
「すみません。こんな夜中に、」 初音も部屋着のままやってきた。 「い、いえ・・」 「もう寝てるかなと思ったんですけど。すぐに返事が来たので。ああ痛んで寝れない…
元夫の祐介のことを思い出した。 彼も本当に完璧な人だった。 はたから見ると不足なんか何一つなさそうな人だったけれど 長い間ずっと悩んでいたんだろう。 真緒…
なんだか周囲の空気が緊張に包まれた。 「あの、」 彼がいったい何を言い出すのか。 ドキドキと心臓が音を立てる。 「・・はい、」 神妙に言葉を待つ。 しばしの間…
真緒はスプーンを握っていた手にグッと力を入れた。 「母は大女優と呼ばれた人ではあったけれど。素顔は本当に普通の人です。そんな人がホクトグループの総帥の妻になる…
「・・忙しい父親はほとんど家にいなくて。料理のヘタな母親。子供たちはほとんどお手伝いさんのゴハンで大きくなってって。いくら金持ちでももっと普通の親がいいなあっ…
「適当に頼んじゃったんですけど。好き嫌いとかあります?」 初音が訊くと 「あー。こう見えても好き嫌いないです。なんでも大好き、」 真緒はそう言いながら茶碗蒸し…
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父は羊羹に黒文字を入れながら 「・・感性は。おれとおまえはとても似ている、」 静かに言った。 「え、」 「昔からそう思っていた。おまえのセンス。いつも感心して…
少しでも自分が彼にとっての『価値』であるよう勉強も仕事もさらにギアを上げて頑張った。 カフェレストランのメニュー開発もシェフたちや栄養士などの専門家を中心に…
この前のお休みに再び映画をひとりで観てきました。 前に書きましたように今回は三谷幸喜さん脚本・監督の スオミの話をしよう です。 三谷さんと言えば「古畑任三…
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「わ・・ きれいですねえ・・」 翌朝早く、真太郎は初音にホテルまで迎えに来てもらい彼の家の近くの小高い丘に登った。 そこからは朝日に照らされ少し霞んだような山…
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「ぼくにとって、ここはやっぱり大切な場所で。大きなお金を動かすことはできませんが農業にも誇りを感じています。その気持ちと。何かをやりたい、という思いもあって。…
「そんな妹が。あなたと一緒に会社を作りたい、初音さんでなければ意味がない・・って言った時。ぼくはいったい妹にこれまで何をしてきてやれたのか、いや何を見てきたの…
「実は。当社、NCからもあなたに引き続き仕事をしてもらえないかと要望もあるんです、」 真太郎はまっすぐに初音を見た。 「えっ・・」 目を見開いてしまった。 「…
「真緒ちゃん、何とか頑張ろうとしてるみたいだよ、」 南は遅くに帰宅した真太郎の脱いだスーツの上着をハンガーにかけた。 真緒と二人で話したことは南にも黙っていた…
「名前?」 NCでの会議で紗枝はメンバーに資料を手渡した。 「代理店の人とも話し合って候補はいくつか上がっているんだけど。ピンと来なくて。もう時間もないしいろ…
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「だから! 10年くらい前に高野で音楽配信のアプリ開発してて。その発案者である兄ちゃんを伯父さんも母も、いや会社の上層部もその腕を買ってて。その時も高野で正式…
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いつもMy sweet home~恋のカタチ。を読んでくださっているみなさま。 毎日暑いですねーー 時候の挨拶挟みつつ、本当にありがとうございます。 ずうっ…
いつもMy sweet home~恋のカタチ。をお読みくださっている方々、ありがとうございます。 ただいま小説、長期休載中です。 このお盆休み。 5連休頂きま…
まーーー 毎日暑くて暑くて。 私はほとんど外に出ない仕事ですけれども。 ちょっと買い物に行くだけでヘトヘトです。 電気代は気になりつつもうクーラーなしの生活は…
ただいま小説休載中です。 長く休んでしまって申し訳ありません。 めちゃくちゃゆっくり書き進めています。 しかし一気に書き上げないと、正直最初の設定を忘れてしま…
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いつもMy sweet home~恋のカタチ。を読んで下さってありがとうございます。 今日で今回のお話は終了です。 瑠依と小和はお互いに新しい一歩を踏み出し…
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