『今年は彼岸花全然見ないね~』とうちの奥さんと話をしていたら、ここ最近気温が少し
下がり始めて、急にあちらこちらの田んぼの畔で目に付くようになった。
やはり今年の夏はかなりの猛暑だったようで、季節の花も咲く時期がずれてしまっている。
そのせいか10月に入っても今度は紅葉の便りが聞こえてこない。いつもなら石鎚山の紅
葉が10月に入って直ぐにWeb上で目に付くようになるのに・・・・。
そうこの時期はやはり石鎚山の東稜コースを登って南尖峰の色づいた岩肌、そして墓場尾
根、最後は弥山からの天狗岳の彩を見てみたい。
ただ来週は事情があって遠出ができない。その次の週になるとさすがに山頂近くの紅葉は
もう終わっているだろう。そう思って少し早いかもしれないが出かけてみることにした。
あっちゃんには『紅葉はまだかもしれませんが、どうしますか?』と連絡したら、『いい
わよ今回の目的はリベンジだから!』と返事が返ってきた。
そうあっちゃんは前々から、昨年自力で登れなかった南尖峰への最後の岩をロープを使わ
ずに登りたいと言っていたのだ。
『それなら今回はリベンジということで』と今回は紅葉の様子は気にせず出かけてきた。
平野部では青空が広がっていたが山間部に入るにつれて少しづつ雲がかかり始めた。UF
Oラインでも周りは薄曇りで、子持ち権現の辺りでは青空が見えて期待感が高まったが、
土小屋に着くと周りは真っ白なガスがかかって、いつもは下の駐車場から見える南尖峰も
それこそ雲隠れして全く見えなかった。
それでも天気予報では昼には晴れマークがついていたので、そのうちにと思いながら歩き
始める。駐車場は思っていたよりたくさんの車が停まっていて、これから歩き始めるとい
った感じの人の姿も多くみられた。
土小屋までの道中のアスファルトの路面もずっと濡れていたが、登山道も昨日降った雨が
まだ乾いていなくて濡れている。
途中にある細い丸太でできた木道も濡れていてとても滑りやすい。痛めた膝には転倒が一
番怖いが、それよりもあっちゃんが一昨日から腰を痛めてプチ・ギックリになっているら
しくて『足を滑らせるのが怖い!』と言いながら用心深く歩いている。
何も調子が悪いのならわざわざ出かけなくてもと思うのだが、どうしてもリベンジを果た
して今年中には後味の悪さを払拭したいらしい。
第一ベンチからもまだ南尖峰さんはお姿を見せてくれない。
事前にあっちゃんには『遅くまで雨が残りそうなので、足元が悪かったら辛い東稜コース
を登るのはやめて、一般道を歩いて弥山まで行ってそこから南尖峰へ。目的の岩を一旦降
りて登り返すという手立てはどうですか?』と話をしていたが、その肝心の南尖峰が見え
ないのではテンションもイマイチ上がってこない。
濡れた丸太の木道も危ういが、濡れた岩も油断大敵。まぁ今日はポンコツ二人、ゆっくり
歩いて行きましょう。
第一ベンチまでは鶴ノ子ノ頭の北側を巻くようにして続く道だったが、第一ベンチを過ぎ
ると今度は稜線の南側に続く道になり、南の景色が広がってくる。
頭の上には相変わらずガスが重たくのしかかっていたが、南に見える峰々の上には青空が
広がっているので、まだ望みは捨てきれずにいる。
東稜コースの起点となる第三ベンチには見慣れない看板が立っていた。自然保護の注意喚
起の看板だったが、日本語の看板の横には同じ内容の英語で書かれた看板が立てられてい
た。(もちろん英語は読めるわけではないですが)
第三ベンチからは先は天狗岳の北壁の下部を回り込みようにして道が続いて行く。
垂直に近くそそり立つ天狗岳の北壁。谷筋には崩れた大きな岩が転がっている。そのせい
か落石注意の看板も立っている。
土小屋から1時間50分ほどで二ノ鎖元小屋に着いた。
後ろから男女が混じった若者のグループが楽しそうに登ってきた。その中に一人だけ年配
の男性が息を切らせて大変そうにしていた。部活動の団体?と思ったが、あとから三ノ鎖
の上で声をかけて尋ねてみると、会社の同僚と年配の人は上司との事だった。なかなかい
い会社じゃないですか~!
二ノ鎖元からはスチールの階段が始まる。いつもなら鎖場を登って行くあっちゃんも、今
日のこの天気で濡れた足元の上に腰痛では『行きます!』とは言わなかった。
弥山に着いてすぐ山荘にいるさおりんを訪ねた。天気の様子を尋ねたら『朝はいい感じで
晴れていたのに、今日は北側が晴れてこないと難しそう』と教えてくれた。
それでは『南尖峰まで行って戻ってきてからお昼ご飯をいただきます』と言って山荘を出
た。弥山の広場では腰を下ろして休んでいる人が大勢いたが、やはり天狗岳は薄くそれら
しい形が見える程度だった。
天狗岳への取り付きの手前では『どうしようか・・・』と話し合っている人の姿があった。
それもそのはず、真っ白なガスを吹き上げて北壁から突風がものすごい音をたてて舞い上
がっている。まともにその風を受けたら飛ばされそうなくらいの風で、一瞬恐怖すら感じ
るほどだった。それでも一組だけ取り付きの鎖を降りて行く人がいたので後に続いて我々
も降りて行く。
いつもなら前にも後ろにも行列ができ、離合するのに時間がかかったりするのだが、今日
はすれ違う人はほとんどいなくて、すれ違う人がいると『ゆっくりでいいですよ、気を付
けて安全に!』と声をかけあう。
ガスのせいで周りの雰囲気は皆目だが、稜線上の木々はけっこう色づいている。
あっちゃんも恐怖心からなのか腰の痛みからなのか笑顔が引きつっている。
途中でGOPROで動画を撮っているペアとすれ違った。『どちらからですか?』と尋ねると、
『東稜コースを登ってきました』と女性が答えてくれた。『笹滝は大変だったでしょう』
と言うと『もうずぶ濡れでした』と。
後日KINチャンネルさんにはその時の様子の動画がアップされていた。(18分57秒辺り)
南尖峰でも吹き上げてくる風は強かった。目印の取り付きに立つ白骨林から下を覗き込む。
その白骨林に安全のために一応ロープをかけて、もう一段下の白骨林まで降りて行く。
後ろからあっちゃんが降りてロープを回収。二つ目の白骨林にまたロープをかけ、まずは
左の(下から見ると右側)斜めの割れ目へと降りて行く。
そこから登り返しで登って行くのだが、けっこうな人が中央からではなくこの右側から登
っているけど、手のかかり足の置き場所を少し考える。リーチがあれば全く問題ないが、
後から来たあっちゃんは『体の大きさが違うから!』と文句を言いながら少し苦戦をして
いた。
それでも問題なく登ってまた二人で一旦降りて、今日のリベンジの目的の中央部へ。
昨年は中央の割れ目の足元が悪くて、右斜め上の岩の割れ目に手が届かずに身体を持ち上
げられなかった。でも今日は足元が埋まってきたのか段差ができて、右手を岩に引掛ける
ことができ、硬い身体を持ち上げることができた。一段上がればあとはスイスイ、ロープ
に頼ることもなく『あれ~こんなに簡単だったんだ』
もちろんあっちゃんも右側よりも案外簡単に登ってきた。少し拍子抜けしたが二人でハイ
タッチをしてリベンジ達成を喜んだ。
目標達成した途端に奥様が『お腹が空いた~』と騒ぎ始めたので、さおりんのいる山荘へ
と折り返していく。
それにしても東稜コースを登ってきたわけでもなく、この南尖峰の最後の岩だけを登りに
しかも降りては登るを2回繰り返すという物好きな人はいないだろうなと二人で話をする。
ガスがかかって北壁の高度感はまったく感じないが、やはり吹き上げてくる爆風に慎重に
歩いて行く。
この時期いつもなら順番待ちになる天狗岳も人っ子一人いない。
前回歩いた時にはなかったような気がするが、岩には所々で矢印がペンキでぬられている。
植生保護で立ち入り禁止になった場所に入らないように誘導しているのかな?
稜線沿いのドウダンツツジも結構色づいている。
天気が良ければ弥山からの天狗岳の紅葉も、そこそこきれいに見られたんじゃないかな?
なんて考えながら歩いて行く。
弥山の上には大勢の人影が見えるが、こちらに下りてくる人の姿は見られない。
やはりこの強風では危うさを感じているのだろう。
山荘ではさおりんが天狗岳カレーを取り置きしてくれていた。そのカレーを頂く前に、
念願のリベンジ達成を二人で乾杯をする。
普段はおにぎりかインスタントラーメンくらいしか食べない小食には、このカレーとクロ
ワッサンは少々多すぎた。さおりんとあっちゃんと三人で山の話をしながら何とか完食で
きたが、お腹周りの浮き輪がまたひと回り膨らんできた。
満腹のお腹を抱えながら山荘を出ると『まだ練習中なの』と言いながら、さおりんと山荘
のメンバーが『出陣式』のほら貝を吹いてくれた。その野太い音を背に受けながら山荘を
あとにする。
まだ乾ききらぬ丸太の階段や木道を滑らないように必要以上に注意しながら降りて行く。
二ノ鎖元まで降りてくると一人の年配の男性が休んでいた。少し話をすると足が攣って休
んでいるとの事。心配したが今日は山頂の山荘に泊まるとの事なので『お気をつけて』と
言って別れた。毛糸の帽子を被った天狗さんが可愛らしい。
結局天気予報に反して最後まで晴れることはなかったが、北側に少し日が差す瞬間もあっ
た。いつもなら特急列車でスピードを出して降りて行く奥様も、今日はさすがにゆっくり
としたペースで降りている。そのおかげで道の脇や周りの景色がよく見える。
ハチクを大きくしたような木に、赤くなったツタが絡んでいる。
道には黄色や赤の落ち葉が散っているが、登山道の本格的な紅葉はもう少し先だろう。
土小屋をスタートして6時間強で戻ってきた。天狗岳の紅葉は恐らくこの週末が見ごろだ
ろう。その時はこの駐車場には停めきれない車が路肩にも溢れているだろう。
リベンジが目的で紅葉は二の次といったものの、やはり弥山から真っ赤に染まった天狗岳
を眺めて見たかったと欲が出てきたのだった。
いつになく対向車の少ない瓶ケ森林道を車を走らせ帰路についた。
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