「あ、お疲れ様です。」
午後、そのまま出社してきた真太郎に社長室で執務をしていた高宮は一礼した。
「留守の間ありがとう。何か急ぎの要件は?」
「いえ、今の所は特に。」
そこに
「あ、おかえり。ご苦労様。大阪どやった?」
南が入ってきた。
「ん。まあ・・」
何となく言葉を濁し、
「ちょっと着替える、」
と社長室に繋がる部屋に入って行ってしまった。
真太郎から手渡された鞄を手に高宮は
「・・ひとりで出張なんて。珍しい・・」
ポツリとつぶやいた。
社長就任後はとにかく高宮を片時も離さず連れ歩き、まだまだ自信がなかったのかひとりで出張ももちろんなかった。
南も今回の出張においては確かに何となく違和感を感じていた。
何気なく高宮を見ると彼も南を同時に見た。
「・・や、別におれなんも言ってないですよ、」
「あたしもなんも言ってないやん、」
ムッとした。
しばしの間があって。
「あ。そうださっき総務から呼ばれてたんだ・・」
わざとらしくそう言って高宮はその場をあとにした。
着替えて戻ってきた真太郎に
「ねえ、」
南は早速書類に目を通す真太郎に歩み寄った。
「ん?」
「・・あたしに。なんか隠してない?」
さらに、にじり寄った。
真太郎は書類から目を離さず
「え?別になんも?」
平然と答えた。
そして彼女を見て
「なんで?」
と逆に聞いた。
「や・・。 なんとなく・・」
南も確たるものがあったわけではないのですぐにスーッと移動してしまった。
「じゃあ。来月試食会もあるから。メニューも詰めて行かないとね。」
紗枝がトントンと書類を整えて打ち合わせが終わった。
そして帰り際真緒に
「あ。聞いた? 野々村さん今月打ち合わせに来る予定だったんだけど。ちょっと忙しくて来られないって、」
声をかけた。
「え?」
あれから。
初音とは本当にメールのやりとりだけで、それも仕事のことだけで。
『あの』件の返事は全くなかった。
「あ・・そうですか。わかりました、」
やや動揺しながら返事をした。
紗枝はそんな彼女を心配そうに背中を見送った。
必ず返事をしますから
の彼の言葉だけで今の精神状態を保っていると言ってもよかった。
やっぱり無理なのかもしれない
何度も心折れそうになって。
そのたびに
今は自分ができることをやろう
と気持ちを奮い立たせて。
その繰り返しだった。
あれから初音からの連絡が全くなく、真緒の心は揺れます・・
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