氷河湖群に近い村が危ない
プナ・ツァン・チュー(川)の中でも、ポ・チュー上流のルナナ地域には、危険な氷河湖が多くあります。
1994年10月にプナカを襲った大洪水も、ルナナにあるルゲ氷河湖の決壊が原因でした。
その後の調査では、トルトミ湖とラフストレン湖が最も危険、と言われています(*1)。
始めにトルトミ湖が決壊し、洪水が直ぐ下のラフストレン湖に流れ込みます。
その衝撃で2つの湖が共に決壊し、大量の水が洪水となって、一気に下流を襲うと推定されています。
この時、最も危ないのが、氷河湖群のすぐ下流にある、タンザ村、ツォ・ジュ村などです。
上記決壊の20分後には、洪水が襲うと予想されています。
かつては氷河湖の底だった
ツォ・ジュ村(標高4,120m)の北方向に、大きな氷河が伸びています(*2),(*3)(*4)。
流域最大と言われる、このツォ・ジュ氷河は、長さ約15km、面積約20km2にも及びます(*5)。
このツォ・ジュ氷河は、かつて村の下流側まで伸びて来たそうです。
そして、氷河尖端の土砂(モレーン)が、ポ・チューを堰き止めてしまいました。
そのため、現在ツォ・ジュ村がある場所は、当時は約 1km×5kmの巨大な湖だったそうです。
この村の名前の「ツォ(Tsho)」は「湖」の意味です。
かつての湖底に出来た村、であることを物語っています。
また山岳地帯にも関わらず、この村には平坦で広大 な草地があます。
この草の下からは、かつて湖底だった証(あかし)となる、氷縞粘土の堆積層が発見されました。
巨大な氷河湖の決壊
この巨大な氷河湖は、ある時、何らかの原因で決壊してしまいました。
そのため湖水は完全に干上がり、かつての湖底は広大な草地に変わった、と言われます。
一方、湖に蓄えられた大量の水は、大洪水となってポ・チューを駆け下ります。
さらにプナ・ツァン・チューを進んで、ウォンディ・ポダンの土砂ダムを襲った?と言う説もあります。
この大洪水こそが、プナ・ツァン・チューの大きな湖を一夜で消し去った、のだそうです。
*** (終わり) ***
*** 目次に戻る ***
(注記)
(*1) RA on Line(Home): Bhutan/Natur/laciers and glacial lakes/Watching the lakes (Source UNEP&DEWA 2006).
(*2) P.K. Mool et al.(icimod)(2001): Inventory of Glaciers, Glacial Lakes and Glacial Lake Outburst Floods Monitoring and Early Warning Systems in the Hindu Kush-Himalayan Region Bhutan.
(*3) O. Bhargava et al.(2009): Glacial Lake Burst in the Lunana Area, Bhutan: A Consequence of Global Warming.
(*4) K. Ohashi et al.(2013): Study on Applicability of Electric Sounding for Interpretation of the Interenal Structure of Glacial Moraines, Global Environmental Research, 16/2012, p.51-58.
(*5) 氷河の長さや面積の値は諸説があります。