184 古都プナカと氷河湖洪水

首都ティンプーから古都プナカへ
首都ティンプーから、東ブータンの中心地タシガンまでは、国道1号線 (総延長:約550km) が通じています。
この道路は、通称「横断道路」の名で人々に親しまれる、ブータンの最重要道路の主要部分でもあります。

ティンプーからプナカに行く時も、この道を東に進みます。
山間を曲がりくねるようにして走り続けると、やがて大きな川プナ・ツァン・チューが見えてきます。

ブータン最長の河川(長さ250km)で、中国との国境をなす大ヒマラヤが水源です。
この川は、インドに流れ込むと名前が変わり、スンコシ川と呼ばれます。

広い川沿いに走る開放感を味わいながら北上すると、古都プナカです。
ティンプーからプナカまでは、車で3時間ほど、約72kmです。

この町の中心は、何と言っても「プナカ・ゾン」です。
このゾンは、ポ・チュー(Pho Chu)とモ・チュー(Mo Chu)と呼ばれる、2つの川の合流地点にありす。

Phoは「父」、Moは「母」 の意味なので、父川と母川が合流して、プナ・ツアン・チューが生まれるわけです。

プナカを襲う氷河湖の洪水
モ・チュー上流のヒマラヤ山中には、118の氷河と 308の氷河湖があります(*1)。
ポ・チューも同じで、154の氷河と 549の氷河湖を抱えています。

(59)[旅]古都プナカと氷河湖洪水.jpg


この写真はポ・チュー上流の、ルナナ地方(標高4,500 m)にある氷河湖群を、米国NASAが撮影した人工衛星画像です。

1994年10月7日、写真右側下の横長の湖、ルゲ湖の土手(モレーン)が決壊しました。
そのため、氷河湖から大量の水が一挙に流れ出しました。

最大時には、オリンピック・プールの水が、わずか1秒間で空になる程だったと推測されています(*2)。

この大量の水がはるか下流のプナカで、大洪水となって人々に襲いかかりました。

そして、プナカ・ゾンに大被害をもたらしたばかりでなく、プナカに住む21人の尊い命と財産を奪い去ったのです。

*** (次回に続く) ***
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(注記)
(*1) Mool, P.K. et al(2001): Inventory of Glaciers, Glacial Lakes and Glacial Lake Outburst Floods: Monitoring and Early Warning Systems in the Hindu Kush-Himalayan Region - Bhutan (2001).
(*2) プールの大きさは 50m X 25m X 2m、水量は2,500m3です。詳しくは、次の報告書をご参照下さい. 「 西村浩一(2011):ブータンヒマラヤにおける氷河湖決壊洪水に関する研究、SATREPS終了報告書.」


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