植物には、種の壁を超えた受精により、生殖能力をもつ新種を生み出す力があります。親が持たない新たな形質の創出につながるその力は、画期的な作物の育種や、植物の新たな生育環境への進出において、きわめて重要です。
植物の新種誕生原理、そのチャレンジングな課題に、私たちは取り組みます。近年の研究の進展により、生殖の様々なステップにひそむ、主要な鍵と鍵穴の実体が明らかになってきました。今こそ、残る主要な鍵と鍵穴の同定を進める一方で、有機合成化学、構造生物学、ライブイメージングという異分野融合によるキーテクノロジーを領域全体に投入することで、生殖における鍵と鍵穴の作動実態を、分子の構造や動態のレベルで明らかにすべき時です。その理解は、鍵と鍵穴の操作や、障壁の打破といった「実証」の形で示されます。
そして、種の壁を超えた受精が起きて異なるゲノムが出会うとき、どのように新種が誕生するのか、またどのように新たな鍵と鍵穴が生まれるのか、バイオインフォマティクスを基盤に解明に挑みます。進化を再現し、リアルタイムに解析します。
こうした先進的な研究を通じて、私たちの領域は、異分野融合や構成的生物学によるアプローチを自在に駆使する若手研究者の育成も目指します。さらに世界的にも本領域の研究をけん引し、多くの海外研究者を日本に呼び込み、国際的ビジビリティーを確固たるものにします。
領域を挙げた5年間の取り組みに、温かいご支援をお願い申し上げます。
領域代表 東山哲也