肝臓外の門脈(小腸からの栄養分を多く含む肝臓に流入する血管)の閉塞によって、肝臓に流入する血液の流れが悪くなり、門脈の圧が上昇し、門脈圧亢進症等の症状を示す疾患をいいます。
年間340~560人前後がこの病気で病院に通院あるいは入院しています。
やや男性に多く、男女比は約1:0.6です。確定診断されたときの年齢は、20歳未満が一番多く、次に40~50歳代が続きます。
原発性肝外門脈閉塞症と続発性肝外門脈閉塞症に大きく分類されています。
原発性肝外門脈閉塞症の原因は不明ですが、血管形成異常、血液凝固異常、骨髄増殖性疾患の関与が考えられています。
続発性肝外門脈閉塞症をきたすものとしては、新生児臍炎、腫瘍、肝硬変や特発性門脈圧亢進症に伴う肝外門脈血栓、胆嚢胆管炎、膵炎、腹腔内手術などがあります。しかし、因果関係不明の場合もあります。
原則として遺伝しないものとされていますが、一部の患者さんでは先天的な素因の関与が疑われており、この点に関しては現在研究の途上です。
門脈圧が著しく上昇するため、門脈血の一部が肝臓に向かわずに他の方向に逃げるようになります。このようにしてできた新しい血液の流通経路を側副血行路と言います。この側副血行路のために腹壁の静脈が怒張し、食道や胃、十二指腸に静脈瘤ができます。また、肝性脳症や腹水が出現し、長期療養を必要とする場合もあります。さらに、脾臓が大きくなると脾機能亢進という状態になり、貧血をきたすようになります。また血小板も少なくなり、出血した時に血液が止まりにくくなります。また、静脈瘤の圧が上昇すると、静脈の血管がその圧に耐えきれなくなり、破裂・出血してしまい、吐血・下血等の症状が出ます。出血のためショックになり死亡することもあります。
小児では成長障害をきたしていることも多く、鼻出血を契機に診断されることがあります。
門脈圧亢進症の症状(胃・食道静脈瘤、脾腫、脾機能亢進症)に対する治療が中心となります。しかし、門脈圧亢進症は一生涯継続するため、あらゆる消化管に難治性の静脈瘤が発生します。そしてその出血率はウイルス性肝硬変よりも高いことが知られています。そして著しく上昇した門脈圧のため、一旦、静脈瘤出血を来すと大量出血となり、出血性ショックに至ります。
1)静脈瘤に対する止血処置
2)脾機能亢進症に対する治療
消化管静脈瘤からの出血が十分にコントロールされれば、経過は良好です。
久留米大学先端癌治療研究センター・分子標的部門
鹿毛 政義
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