2017年11月12日イラン・イラク国境付近の地震に伴う地殻変動 | 国土地理院
最終更新日:2018年6月7日

2017年11月12日イラン・イラク国境付近の地震に伴う地殻変動

合成開口レーダー(SAR)解析によって明らかとなった地殻変動

作成:2017年11月15日、更新:2018年3月5日 English version of this page

概要

2017年11月12日に(UTC)にイラン・イラク国境付近でMw7.3(USGS)の地震が発生しました。震央付近では建物が倒壊し死者が出るなど、大きな被害が生じています。 この地震に伴う地殻変動を把握するため、日本の地球観測衛星「だいち2号」(ALOS-2)に搭載された合成開口レーダー(PALSAR-2)のデータを使用してSAR干渉解析を行いました。

これまでの解析により、以下のことがわかりました。
(地殻変動の特徴)
  • サルポレザハブ(Sarpol-e Zahab)から北北西に約20kmの付近を中心として、最大約90cmの隆起及び最大約50cmの西向きの変動が見られます(図1、図2)。
  • 震央付近では、最大約30cmの沈降及び最大35cmの西向きの変動が見られます(図1、図2)。
  • 10cm以上の変動が生じた地域は、直径約80kmにわたっています(図1、図2)。
  • 地震に伴う変動のパターンから、北北西-南南東走向の低角の断層面で逆断層運動が生じたと考えられます(図7)。これは、地震波から推定される地震のメカニズム解と調和的です。
  • 地震の断層運動による変動の他にも、局所的な変動が山地斜面で多数見られ、地震の揺れによって誘発されたものである可能性があります(図4bc、5bc)。

(震源断層モデル)
  • 干渉SARで観測された地殻変動から震源断層モデル(滑り分布モデル)を推定しました(図7)。
  • 震央のやや南側を中心として、最大約3mの滑りが推定されました。
  • 推定されたMwは7.36(地震モーメント:1.4×1020Nm)です。

(参考:現地での利活用)
これらの解析結果については、イラン国立地図センター(NCC:National Cartographic Center of Iran)に迅速に提供を行いました。 その情報提供に対して、 「災害の全体像が見えない初期段階において、イランの災害対応局が災害対応のためのリソース(救援物資、救助隊など)をどこに投入すべきかを判断する材料として役立った」 として、NCCから感謝の意が表されました。

変動の準上下成分及び準東西成分

図1準上下成分

図1. 準上下成分 [PNG: 2.67MB] [KMZ: 151KB]

図2準東西成分

図2. 準東西成分 [PNG: 2.71MB] [KMZ: 155KB]

 

【2.5次元解析】
複数の方向からの観測データによる干渉画像(図4、5)を利用して、変動を準上下・準東西方向に分離することができます。
図3:2.5次元解析の概念図
図3. 2.5次元解析の概念図

干渉画像

図4北行干渉画像
図4. [PNG: 6.72MB]

図5南行軌道干渉画像
図5. [PNG:6.06MB]


番号
観測日 観測時間
(UTC)
衛星
進行
方向
電波
照射
方向
観測
モード
*1
入射角
(震央付近)
垂直
基線長
KMZ
4 2016-08-09
2017-11-14
20:59頃 北行 W-W 47° -70m (a)8.24MB
(b, c)2.33MB
5 2017-10-04
2017-11-15
08:49頃 南行 W-W 47° +160m (a)4.37MB
(b, c)1.42MB

*1 W:広域観測(Normal)
(参考: ALOS-2プロジェクト/PALSAR-2(JAXA)


図6. 解析範囲

解析:国土地理院   原初データ所有:JAXA
本成果は、地震予知連絡会SAR解析ワーキンググループの活動を通して得られたものです。

震源断層モデル(滑り分布モデル)


画像:断層モデル
図7. 推定された断層モデル [PNG: 867KB]

地震概要

地震発生日時 2017年11月12日18時18分(UTC)
2017年11月13日03時18分(JST)
震源位置 34.905°N、45.956°E、深さ19.0 km
(USGS、2017年11月15日現在)
マグニチュード Mw=7.3(USGS、2017年11月15日現在)

分析に使用した人工衛星

日本の地球観測衛星 「だいち2号」(ALOS-2)

広報・講演・論文発表

Kobayashi, T., Y. Morishita, H. Yarai, and S. Fujiwara (2018), InSAR-derived Crustal Deformation and Reverse Fault Motion of the 2017 Iran-Iraq Earthquake in the Northwest of the Zagros Orogenic Belt, Bull. Geospatial Info. Auth., 66. [PDF: 1.3MB]

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