| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-085 (Poster presentation)
近年,ツキノワグマの人里への出没による人身被害や農林業被害が問題となっている。雑食性のツキノワグマは季節ごとに様々な餌資源を利用しているが,特に堅果類は冬眠前の秋季において重要な餌資源であり,その結実状況が大量出没を引き起こす1つの要因ともなっている。しかし,夏季や豊作年であってもクマの出没が常態化している地域もあるため,ナラ枯れや里山環境の変化によってクマの利用環境自体がシフトしている可能性が考えられる。このような場合,駆除中心の管理ではクマ個体群に多大な影響を及ぼす危険性もある。したがってツキノワグマの適切な保護管理に向けて,個体群全体の時空間的な密度パターンの変化と利用環境の現状を把握することが求められる。
そこで2013年度から,富山県東部の約800km2の調査地においてカメラトラップ法を用いた大規模調査を実施している。これまでの2年間に撮影されたクマの動画は1184本,連続撮影を除いた撮影イベント数は442回,識別個体は86個体である。堅果豊作年であった2013年には低標高域での撮影は少なく,凶作年の2014年には低標高域の撮影が多い傾向が認められている。本発表では年月ごとの各トラップ設置点におけるクマ撮影イベント数と環境要因との関係について,一般化線形モデル(GLM)を用いた解析結果を中心に報告する。
本研究は科研費 基盤研究(C)「行動意思決定の個体差が,ツキノワグマ個体群の時空間パターンに与える影響の解明」の助成を受けたものである。