報道発表資料
1 環境省版レッドリストについて
環境省版レッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)とは、日本に生息又は生育する野生生物について、専門家で構成される検討会が、生物学的観点から個々の種の絶滅の危険度を科学的・客観的に評価し、その結果をリストにまとめたもの です。
レッドリストへの掲載は、捕獲規制等の直接的な法的効果を伴うものではありませんが、社会への警鐘として広く社会に情報を提供することにより、様々な場面で多様な活用が図られるものです。
レッドリストは、分類群ごとに専門家による検討会を設けて評価しています。動物では、①哺乳類 ②鳥類 ③爬虫類 ④両生類 ⑤汽水・淡水魚類 ⑥昆虫類 ⑦貝類 ⑧その他無脊椎動物(クモ形類、甲殻類等)の分類群ごとに、植物では、⑨維管束植物 ⑩蘚苔類 ⑪藻類 ⑫地衣類 ⑬菌類の分類群ごとに、計13分類群について作成しています。
○カテゴリー(ランク)の概要
絶滅 (EX) |
我が国ではすでに絶滅したと考えられる種 |
野生絶滅 (EW) |
飼育・栽培下、あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ存続している種 |
絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN) |
絶滅の危機に瀕している種 |
絶滅危惧ⅠA類(CR) |
ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの |
絶滅危惧ⅠB類(EN) |
ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの |
絶滅危惧Ⅱ類 (VU) |
絶滅の危険が増大している種 |
準絶滅危惧 (NT) |
現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種 |
情報不足(DD) |
評価するだけの情報が不足している種 |
絶滅のおそれのある 地域個体群 (LP) |
地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの |
2 環境省レッドリスト2017について
これまでのレッドリスト見直しの経緯や検討体制は[別添資料1]のとおりであり、レッドリスト2017では、13分類群の合計60種についてカテゴリーを見直しました。レッドリストのカテゴリーの詳細な定義については[別添資料2]に、評価対象種の基本的条件は[別添資料3]に示すとおりです。
レッドリスト2017における13分類群の掲載種の総数表(亜種を含む)は[別添資料4]、分類群順別のリストは[別添資料5]のとおりです。また、レッドリスト掲載種の新旧のカテゴリーの対照表(五十音順)は[別添資料6-1]のとおりであり、このうち、カテゴリーを見直した全60種の対照表は[別添資料6-2]、カテゴリーの推移表は[別添資料6-3]に示すとおりです。なお、カテゴリーの変更理由など詳細については、レッドリスト2017の補遺資料として追って公表する予定です。
レッドリスト2017における13分類群の絶滅危惧種の合計種数は、レッドリスト2015の3,596種から38種増加して3,634種となり、環境省が選定した絶滅危惧種の総数は、先日公開した海洋生物レッドリストに掲載された絶滅危惧種56種を加えると3,690種となりました。
3 特筆すべき種のカテゴリーとその変更理由(詳細は[別添資料7]を参照)
和名 ツシマウラボシシジミ |
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カテゴリー 絶滅危惧Ⅱ類(VU) → 絶滅危惧ⅠA類(CR) | |
本亜種の生息地である対馬の上島では、2000年代の後半以降からシカによる森林の林床に生える植物の捕食が顕著になり、それに伴いツシマウラボシシジミの幼虫の食草も大部分で消失し、第4次レッドリストでは準絶滅危惧(NT)から絶滅危惧Ⅱ類(VU)にアップリストされた。その後も本亜種の減少は続き、 2013年に行われた調査では、既に生息が確認できる地点は1箇所に限られていることが分かり、現在では生息域外保全の実施とその個体の再導入により、野生個体群を何とか維持している状況にあることから、今回の見直しにおいて絶滅の危険性が極めて高いと判断し、絶滅危惧ⅠA類(CR)に選定した。なお、このような状況を踏まえ、平成29年1月に種の保存法に基づく国内希少野生動植物種に指定された。 |
和名 ヤエヤマイシガメ | |
カテゴリー 新規 絶滅危惧Ⅱ類(VU) | |
イシガメ科の日本固有亜種であり、沖縄県の西表島、石垣島、与那国島にのみ分布し、主に池沼、ため池や湿地、水田、水路等の止水環境に生息する。本亜種は今まで集落の近くで頻繁に目撃されることもあり、比較的普通に生息する印象が強いことから、今までも絶滅のおそれは小さいと考えられレッドリストに掲載されてこなかった。しかし、近年ペット用や食用を目的とした採集が増加しており、海外に多数の個体が輸出されている事例も確認されている。 また、2014年に行われた調査の結果では、本亜種の生息地が水田等に限定されており、市街地や島内で大きな割合を占める森林等には生息しないこと等がわかっている。これら情報に基づき、本亜種は絶滅の危険が増大していると判断し絶滅危惧Ⅱ類(VU)に選定した。 |
和名 オガサワラクロベンケイガニ | |
カテゴリー 新規 絶滅危惧Ⅱ類(VU) | |
ベンケイガニ科に属する日本固有種であり、小笠原諸島の父島と母島のみに分布し、河川下流域や河口の岸辺に巣穴を掘って生息する。以前は日本の広域に分布する「クロベンケイガニ」と同種と考えられていたが、2013年に小笠原諸島に生息する個体群が別種として新種記載されたため、今回新たに評価をおこなった。 本種は既存の調査結果等から小笠原諸島の父島と母島の計10水系のみに生息することが分かっており、加えて生息域が河川の下流など集落地と重なるため、河川や海岸の整備・開発の影響により今後も継続的な減少が起こる可能性が高いことから、絶滅の危険が増大していると判断し、今回絶滅危惧Ⅱ類(VU)に選定した。 |
和名 ヒュウガホシクサ | |
カテゴリー 絶滅(EX) → 絶滅危惧ⅠA類(CR) | |
本種は約50年前に絶滅し、その後生育は確認されていなかったが、近年になり宮崎県の湿原において自生していることが確認され、再評価を行った。湿原の維持管理作業によって、約50年間にわたって休眠していた埋土種子が発芽したものと考えられるが、現在、本種の生育範囲は極めて限定的であり株数も限られることから、絶滅の危険性が極めて高いと判断し、絶滅危惧ⅠA類(CR)に選定した。 |
4 レッドリストの入手方法
以下のいずれかの方法で入手可能です。
① 環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室で直接配布。なお、事前連絡がない場合お待たせする可能性があります。
② 環境省ホームページよりダウンロード。
③ 返送用封筒(A4版、切手400円分を貼り宛先を記入)を同封して下記に送付。別添資料5を印刷して返送します。
〒100-8975
東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館26階
環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室 宛
添付資料
- 別添資料1 レッドリスト見直しの経緯と検討体制 [PDF 178 KB]
- 別添資料2 環境省レッドリストカテゴリーと判定基準(2017) [PDF 232 KB]
- 別添資料3 評価対象種の基本的条件 [PDF 108 KB]
- 別添資料4 環境省レッドリスト2017の掲載種数表 [PDF 55 KB]
- 別添資料5 環境省レッドリスト2017 [PDF 670 KB]
- 別添資料6-1 環境省レッドリスト2015からの新旧対照表(五十音順) [PDF 1.4 MB]
- 別添資料6-2 環境省レッドリスト2017評価対象種の新旧対照表 [PDF 177 KB]
- 別添資料6-3 環境省レッドリスト2015からのカテゴリー推移表 [PDF 38 KB]
- 別添資料7 特筆すべき種のカテゴリーとその変更理由 [PDF 187 KB]
- 連絡先
- 環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室
室長 番匠 克二(内線6677)
室長補佐 羽井佐 幸宏(内線6685)
係長 田邊 依里子(内線6687)
関連情報
過去の報道発表資料
- 平成29年3月21日
- 環境省版海洋生物レッドリストの公表について
- 平成27年9月15日
- 環境省レッドリスト2015の公表について