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住宅の耐震化は、地震から命を守るために欠かせない。死者の8割が住宅の倒壊などによる圧死だった阪神大震災の最大の教訓だ。特に改修が必要なのは、1981年以前の古い基準で建てられた住宅だ。お金がかかることにためらう人も多いが、自治体の助成や、費用を抑えた対策もある。
大地震時にシェルターとして機能するための強度が十分であるかを検証
(2005年6月29日実施、東京大学・坂本功名誉教授監修)
地震により家屋全体が倒壊しても潰れない空間を住宅内に設置。100~150万円かかる耐震費用に対し、施工費を含めて25万円、工期2日間で四畳半以上の部屋に設置が可能。シングルベッド2台が入る広さ。
木造住宅を耐震化する改修工事にかかる費用は、100万~150万円が最も多い。効果的な工事が、費用を抑えるポイントだ。
全国1千社以上の工務店やリフォーム会社が加盟する日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)は、効果が高く優先すべき工事として「壁の補強」「接合部の補強」「基礎の改善」「屋根を軽くする」「シロアリ被害に遭ったり腐ったりしている部分の取り換え」の5項目を掲げる。
壁は新しく作ったり、筋交いを入れたりする。バランスよく配置し直すことも重要だ。壁を取り除かないとできない柱や梁(はり)の接合部の補強も一緒に済ませてしまうといい。基礎はシロアリや腐食の被害を受けやすい。傷んだ部分を取り換え、ボルトで固定する。
どの程度の工事が必要かを見極めるには、耐震診断が必要だ。診断は自治体からの補助などで無料になる場合や、15万円ほどかかる場合もある。
耐震診断結果は点数で表される。震度6強~7程度の地震に対し、1・5以上が「倒壊しない」、1・0以上が「一応倒壊しない」、0・7以上で「倒壊する可能性がある」、0・7未満で「倒壊する可能性が高い」。費用面を考慮しながら目指す点数を決める。
名古屋大の福和伸夫・減災連携研究センター長は「費用が足りない場合は、一部の自治体が設けている2段階の補助制度も選択肢の一つ」と話す。
名古屋市は、点数を1・0以上にする一般改修のほか、まず0・7以上1・0未満にする段階的改修にも、一般世帯で最大40万円を助成する制度を設けている。その費用は、13年度の実績で100万~150万円が最も多く、50万~100万円という例もあった。
さらに費用を抑えるため、建物全体ではなく寝室など一部に対策を施す方法もある。寝場所を守り、起きている時に駆け込めるようにすることで命を守る。寝室を木枠で補強する耐震シェルターや、ベッドを覆う鉄枠などが製品化されており、自治体によっては補助制度もある。
マンションは、新耐震基準が適用された81年6月以前に着工したものは耐震性が低いおそれがある。全国約601万戸のうち106万戸(13年末現在)が旧基準と推計されている。1階部分に壁が少ない駐車場になっている建物や、形が複雑な建物も注意が必要だ。
住宅の耐震化は、地震の揺れによる犠牲者を減らすために最も重要な対策だ。建物が倒壊すれば火災が発生し延焼もしやすくなる。壊れた建物から人を助け出すための人員も多く必要になってしまう。
中央防災会議が2013年に公表した首都直下地震の被害想定では、冬の深夜の例で、死者約1万8千人のうち建物倒壊や家具の転倒によるものが約1万1千人、建物被害に伴って自力脱出が困難になる人は7万2千人。被災地で失われる建物などの資産の被害は47兆4千億円で、木造住宅分を14兆円と見積もった。
こうした被害は、耐震化で大幅に減らせる。試算では、東京都の耐震化率を約87%から94%に高めれば建物倒壊による死者は6100人になる。97%なら3800人、100%なら1500人に減る。
国土交通省によると、建築基準法で耐震基準が厳しくなる1981年以前に建った住宅のうち、耐震性がないとみられる住宅は、2003年に約1150万戸、13年でも約900万戸残っている。
自宅に住み続けられるかどうかは、地震後の生活再建を大きく左右する。被災者生活再建支援法が適用されれば全壊の場合で最大300万円の支援金が出る。義援金は災害により異なるが、東日本大震災では津波で自宅が全壊した場合で百数十万円だった。地震保険に入っていない場合、残りは預金やローンなど自分で調達しなければならない。
(渡辺周、編集委員・黒沢大陸)
耐震改修をかたり、お金をだまし取る詐欺が横行しているので注意が必要だ。特に高齢者が狙われる。
国民生活センターが受けた相談によると、昨年9月、60代の男性宅に大手不動産会社を名乗った業者が訪れ、無料の「耐震診断」を実施した。業者は「診断結果が悪い。自治体からの補助金が出る」と言い、男性は30万円の改修工事の契約を結んだ。だが、後で役所に問い合わせると補助金は出ないことが分かった。
昨年8月には、築数十年の住宅に住み、かねて耐震改修を希望していた80代の男性が700万円の契約をしたが、業者と連絡がとれなくなったという。
国民生活センターの担当者は「一人でその場で契約せず、家族や近所の人に相談して複数の社から見積もりをとることが大切」。木耐協の担当者は「いきなり訪問してくる業者は避けたほうがいい」とアドバイスする。
住宅の耐震補強の推進には、三つ大切なことがある。災害状況を適切に想像する災害イマジネーション、業者にも応分の利益を与える診断方法を含めた質の高い耐震補強技術、そして持ち主の耐震補強への意欲を引き出す制度だ。
自動車を運転する人の多くが強制保険に加え任意保険に加入する理由は、事故で相手の命を奪った場合の悲惨さがイメージできるからだ。一方で、地震時に家族を失うなどの被災状況をイメージできる人は少ないし、自家用車の購入費以下で可能な耐震補強で家族の命を守ることができることへの認識も低い。
施工は、業者に応分の利益をもたらす価格設定が重要だ。安すぎる価格では、質の高い施工を維持できないし、質の確保には施工前後での耐震性の変化を正確に評価する診断法が求められる。
制度としては、努力した人が報われる制度が重要だ。努力せず、弱い家に住み続けて被災した場合に手厚い公的支援をすると、将来の被害と公的支援の出費を増大させる。
「弱者の切り捨て」という意見もある。しかし南海トラフなどの巨大地震が想定されるなか、事前の自助努力で被害を減らさないと財政が破綻(はたん)する。そうなれば本当に弱い人を救うことはできない。
■災害別特集ページまとめ
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