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20階程度にあたる高さ60メートルを超える超高層ビルは全国に約2500棟あり、そのほとんどが東京、大阪、名古屋に集中する。大地震が起きたとき、どのようなことが起きるのか。
東日本大震災では、震源から800キロ離れた大阪市にある55階建ての咲洲(さきしま)庁舎も最大2・7メートル、10分以上も揺れ続けた。長周期地震動と呼ばれるゆったりとした揺れだ。軟らかい地盤で増幅され、長時間続く。
東京理科大の永野正行教授(地震工学)は、関東と関西の24階建て以上のマンション計22棟の住民に東日本大震災時の状況についてアンケートを実施。968人から得た回答を高層、中層、低層に分けて分析した。
関東の高層階では7割が「揺れにより自分の意思で行動できなかった」「立っていることができなかった」と回答。「遊園地の海賊船に乗っているような揺れ」「船室にいるような揺れが20分ほど続いた」など、高層階ほど水平方向のゆっくりした揺れが長時間続き、家具などの転倒やテレビやパソコン、花瓶などの落下が多くあった。
地震のけがの原因の多くは家具の転倒や落下。永野教授は「今回の調査でも半数以上が家具の固定をしていなかった。超高層の建物では、家具やオフィス機器などの固定がより重要になる」と話す。
一方、低層では半数以上で壁紙や内装材の亀裂などが見られた。7割の人が「ギシギシ」「ミシミシ」などと建物がきしみ、内装材が壊れる音を頻繁に聞いていた。高層ほど大きく揺れていないにもかかわらず、多くの人が音による恐怖感を強く抱いていた。
高層マンションに欠かせないのはエレベーター。日本エレベーター協会によると、地震の揺れを感知すると最寄り階に自動停止するが、震度4より大きな揺れの場合、故障などがなくても点検を受けるまで復旧できない。数多く停止すれば、復旧まで時間がかかる。階段の上り下りが困難な人が孤立化するおそれがある。
東京都中央区が、東日本大震災で区内の分譲マンション253棟を対象にした調査では、8割近くが自動停止や故障で動かなくなった。震災当日に復旧したのは4分の1。数日から1週間以上動かなかった例もある。
夕食の食材がなく非常階段で1階まで移動した35階の住人は、理科大のアンケートで「下りるのに10分、上るのに21分。高層難民の経験をした」と回答した。
飲料水(1人1日3リットル)は最低でも3日分、可能なら1週間分の備蓄のほか、ガスコンロや懐中電灯などライフラインの停止に備えた用意を個人でしておくべきだ、と専門家は指摘する。
全国に約601万戸ある分譲マンションのうち、1981年以前に建てられた旧耐震基準のマンションは約106万戸。旧耐震のままでは将来の大地震に耐えられないのか。
日本建築防災協会の神田重信・専務理事は「旧耐震がすべて危ないということではないが、構造上のバランスが悪いマンションは耐震診断をした方がいい」と指摘する。国土交通省のマニュアルによると、バランスの悪いマンションとして、L字形やコの字形▽上層と下層で構造が異なる▽細長い形▽1階に駐車場や店があり壁が抜けている(ピロティ形式)――などがある。
診断で耐震性能を示す「Is値」0・6未満が改修の目安だという。ただ、耐震診断も図面と現況を確認する簡易なものから、コンクリートに穴をあけて強度を確認するものもある。
耐震化には、改修か建て替えかの選択があるが、一般的には改修の方が費用が抑えられる。ただ、改修も壁や柱の補強から制震、免震装置の設置まで様々だ。建物の大きさなどにもよるが、改修には数千万~数億円かかるのが一般的だ。費用に見合った効果が得られるか、住みにくくならないかも考え方針を決めることになる。診断や改修費用の助成をする自治体もあるので、まずは自治体などに相談して、専門家に依頼した方がいい。
マンションで常に必要になのが住民の合意づくり。東日本大震災の被災マンションでも、意見がまとまらず、改修や建て替えに手間取った例が目立った。
大規模な改修工事には4分の3以上の賛成が必要だが、昨年の法改正で耐震性不足と行政から認定されたマンションは過半数の賛成で改修ができるようになった。全員の合意が必要な建物と敷地の一括売却も、今年12月末からは、耐震性不足と認定されれば8割の賛成でできるようになり、選択肢が広がる。
東日本大震災では、仙台市などのマンションで、受水槽の破損や地盤沈下による配管の損傷でライフラインが途絶え、日常生活に大きな支障がでた。
マンション管理支援ネットワークせんだい・みやぎの調査によると、住民が避難したマンションの3割がライフラインの停止が理由だった。ライフラインの復旧までの日数は、電気は7割が3日以内に、都市ガスは7割が1カ月以内だった。外壁が落下した例もあり、通行人がけがをする恐れへの配慮も必要だ。(北林晃治)
大地震では火事が起きなければ、マンションからすぐ逃げる必要はない。多くのマンションでは、壁に亀裂が入っても、床が傾いたり、柱の中の鉄筋が曲がったりしなければ、倒壊するようなことはない。人が集まる都市部では自宅待機が原則だ。
住人の無事を自分たちで把握することも忘れてはいけない。お年寄りや障害者とどう連絡をとるか。集合場所や連絡方法を事前に管理組合で確認しておく必要がある。
大地震が起きると、出血や骨折ぐらいでは医療機関で治療を受けられないかもしれない。けが人が出ても、可能な限りその場で応急対応する。担架の保管場所や使い方、高層階でけが人が出た場合の搬出など、訓練をしておくべきだ。
エレベーター内に閉じ込められるのを防ぐには、揺れを感知したら、全てのボタンを押し最寄り階への停止を試みる。閉じ込められた場合の脱出や救出方法も調べておいた方がいい。
災害時に重要なのは人と人とのつながり。入居者や地域住民の人間関係が基本となる。普段から祭りや防犯活動などに参加し、顔見知りになり、いろんな知識や技術をもった住人がいることがわかれば、非常時に互いに頼れる。
水や食料などの備蓄は、個人でも必要だが、管理組合でも相談しておくべきだ。マンションや地域の防災力を高めることは、マンションの資産価値を高めることにもつながる。
■災害別特集ページまとめ
熊本地震、こう揺れた(2016/04)
3Dで見る阿蘇大橋周辺の被害地図(2016/04)
ふるさとの復興への思いを語る西田敏行さんインタビューや「データで見る被災地」「原発の現状」など特集紙面がご覧いただけます。
発生から2年までの復旧・復興への歩み、原発事故のその後を、この特集でさぐる。多くの困難なのか、それでも前を向く人々。「忘れない」という誓いを胸に、これからも支えたい。
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著者:朝日新聞社 価格: ¥1,680
朝日新聞のシリーズ企画「災害大国 迫る危機」が本になりました。活断層、津波、地盤、斜面災害、インフラ、火山のリスクを地域ごとに示した大型グラフィックや対策の現状などを収録。書籍化のために各地域の災害史を書き下ろしました。いつ見舞われるか分からない災害の備えとして役立ちます。B4判変型(縦240ミリ、横260ミリ)でオールカラー、120ページ。
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