事業継続計画(BCP) 被災後の暮らし想定:朝日新聞デジタル

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11月15日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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  • 【災害大国】あすへの備え

    BCP 被災後の暮らし想定

     災害で被災しても業務を続ける計画づくりを、企業や行政機関が発展させてきた。リスクを想定、生命や財産の保護、震災後の再建を見据えて立てる対策は、家庭の備えにも生かせる。企業の取り組みを家庭にどう活用できるか考えた。

東日本大震災と阪神大震災で起こった主な被害と影響

【1】事業継続計画、家庭に応用すると

避難場所を確認・常備薬チェック…

 【編集委員・黒沢大陸、合田禄】自然災害や事故で大きな被害を受けても、業務を早期に再開する事業継続計画(BCP)づくりは、2001年の米同時多発テロを機に広がった。地域で助け合うCCP、家族の生活を継続するLCPも提唱され始めている。
 朝日新聞は、計画づくりを支援する大手損保グループのインターリスク総研に協力してもらい、家庭にどう生かせるかを検討した。
 企業は、リスクや被災時の影響を想定し、従業員の安全確保や企業活動に必要な拠点を維持、事業を続けるしくみを作り、その資金を確保し、社内の意識を高め、取り組みを見直し続ける。家庭に置き換えると、身近な危険を調べ、非常時の行動を話し合い、生活に必要な物資を備蓄し、被害を減らす対策にあたる。

■撤退の選択なし

 例えば、住宅を耐震化することや火事で燃えにくくすることは、命を守ると同時に財産も守り、被災後の生活の立て直しにつながってくる。被災後に生活を続けるために何が必要なのかの視点で、従来の防災や減災の取り組みを見直せば、新たに必要なことが見えてくる。
 インターリスク総研の江尻明隆・上席コンサルタントは「被災の影響が深刻なら、企業は事業から撤退という選択もあるが、家庭は生活をやめるわけにはいかない。むしろ家庭こそ生活継続の視点が必要だ」と話す。
 被災後の生活立て直しも重要だ。最大の課題は住居と収入。東日本大震災では、震災から千日が過ぎた今も、仮設住宅に約30万人が入居したままだ。
 住宅が全壊すると、公的な支援や地震保険だけでは被災前の家は建てられない。転居や小さい住宅への建て替えといった再建策を想定しながら、貯蓄などを考えておく必要がある。地元に根ざした仕事は、災害で地域社会が打撃を受けると職を失う恐れがある。失業の準備はできなくても、可能性を考えておくことは再建への一歩につながる。

■欠かせない連携

 災害時は、行政も、生活に必要な物資を供給する企業も、単独では業務を続けられず、地域を含めた連携が欠かせない。家庭の生活維持は、災害に強い社会づくりに直結する。
 ふだんから災害について話し合い、対策を立てておくことは、企業にとっては組織の活性化に、家庭にとっては家族の良好なコミュニケーションにつながるという意味でも有益だ。

家庭でできることに置きかえてみると…

MS&ADグループ・インターリスク総研の協力で作製

住宅再建・失職…お金が課題

 LCPを考えるとき、お金の問題は避けて通れない。自宅の再建や補修が必要になったり、職を失って収入が減ったりしたとき、お金の工面は大きな課題になる。
 住まいの再建には多額の資金が必要だが、公的な援助は限られている。被災者生活再建支援法が適用されると、全壊の場合で最大300万円の支援金が支払われる。義援金の配分は、東日本大震災の津波で自宅が全壊した場合で百数十万円だった。
 この場合、自宅を建て直すのに2千万円かかるとすると、残り1500万円前後は預金やローンで自分で準備しなければならない。東日本大震災では、二重ローンや高齢で借り入れできないなどという声もあり、独自に給付制度を上乗せした自治体もあった。
 事前の備えに、国が運用にかかわる「地震保険」がある。火災保険とのセット加入で、2千万円の火災保険を契約している場合、地震保険は最大1千万円の支払いまで契約できる。加入率は2012年度末時点で27・1%にとどまっている。
 仕事への影響も大きい。総務省の就業構造基本調査(2012年)によると、東日本大震災の影響で離職した人は全国で約21万人で、うち4割が震災から約1年半が経過しても仕事に就けていなかったという。
 生計維持者が亡くなると災害弔慰金(最大500万円)、自分が重い障害を負うと災害障害見舞金(同250万円)が国や自治体から支給される。雇用保険には、失業しておらず休職中でも給付が受け取れる震災特例がある。ほかは、被災者への生活資金などの融資制度が主になる。

【2】身の回りの危険 日ごろから話そう

福和伸夫・名古屋大
減災連携研究センター長

 防災や減災、災害を克服しようと立ち向かう「克災」は、まず、必ずやるという強い意志、上杉鷹山のいう「為せば成る」の精神を持つことが大事だ。

 自治体や会社と同様に、家庭も意思決定が大切で、例えば自宅の耐震化のために節約してお金をためようと決めれば家族みんなでがんばれる。やる気になってねばり強く進めれば、ごみの分別や禁煙社会のように、いずれ実現する。

 命や生活を守るには、行政や企業が被害想定やリスク評価をするように、個人が身の回りの危険を想定することが必要だ。

 この時間、あの場所で災害が起きたら、どんな状況に直面するのか。家具が倒れる、窓ガラスが割れて降ってくる、水がない、電気がしばらく使えないなど、具体的な場面を想像できれば、減災のためにやるべきことが次から次へと見えてくる。

 昔は小さな災害が日常的にあって災害を意識して対策につながったが、近年はそれが減った。災害を自分のこととしてとらえる「我がこと」感が大切だ。

 減災も日々の見直しが大切で、最近は増えてきたように災害を日常の話題にしていくといい。日本人は改善運動が得意だから、チェックリストがなくても、会話から自分の欠けていることがわかり、他の人がやっていることを知れば自分の生活にも生かせる。

 現代社会は、東京に一極集中が進み、地盤が悪い場所に住宅地が広がって災害に弱くなっている。個人が災害のリスクを考えた住居の選択を徹底していけば、多くの日本人は?年もすれば一回は引っ越すのだから数十年たてば災害に弱い土地は住む人が減って、農地など本来あるべき土地利用に戻っていくだろう。政府が想定する被害も多くが個人の命と財産。個人の改善活動は災害に強い社会づくりにつながっていく。

  • (新防災力)事業継続計画=BCP、企業の命綱

    2013年10月21日14時24分

     災害に見舞われた企業が素早く復旧するにはどうすればいいか。いざという時の対応をまとめたのが「事業継続計画(Business Continuity Plan)」だ。「BCP」の略称で東日本大震災後に浸透し、中小企業にも広がり始めている。

    ■工場に震度6直撃…「混乱なし」

     兵庫県淡路島大阪湾を望む島の東岸に化学品メーカー、東洋合成工業(東京)の淡路工場はある。大地震に備え、首都圏に集まる工場を分散させようと新設。4月8日に完成した。

     5日後の朝だった。

     「淡路島で大きな地震です」。静岡県内の自宅にいた浅岡鎮夫・淡路工場長(59)は部下からの電話で目を覚ました。マグニチュード6・3で、震度は6弱。この日は土曜日で、工場は休みだ。工場は大丈夫か、従業員は無事か確認するよう指示した。

     約30分後、工場に管理職らが集まった。東京の本社には社長らがそろい、テレビ会議で工場の状況を伝えた。工場内の設備はほぼ無傷で、従業員26人は全員が無事だとわかった。

     「混乱なく対応できたのはBCPのたまもの」と浅岡工場長。BCPは昨年9月に工場の分散化とあわせてつくりあげた。「BCPづくりの過程で緊急時の動き方が身についていた」

     苦い記憶がある。2007年に千葉工場で火災があり、2人が亡くなった。「二度と起こさない」と誓ったのに、翌年も火災が発生した。「想定外は起きる。それを前提に考えるべきだと気づいた」と中渡孝・安全グループ長(48)。

     そうして練りあげたBCPは各事業所での緊急時の動き方を細かく定めている。優先して守る技術や顧客リストも書いてあり、「絶対に外に出せない機密情報」(広報)という。淡路工場は敷地をかさ上げし、南海トラフ巨大地震の津波対策にもぬかりはない。

     東洋合成の製品は、スマートフォンやパソコンの部品づくりに使われる。川村繁夫専務(61)は「うちの工場が止まれば、世界中を混乱させて信用を失い、二度と取引してもらえなくなる。企業として生き残るにはBCPは不可欠」と話す。

    ■中小企業も備える動き

     東日本大震災南海トラフ巨大地震の被害想定を受け、大企業はBCPの作成や見直しを進めている。工場の移転や分散化も急ぐ。

     東レは航空機にも使われる炭素繊維複合材を米国と愛媛県のほか、石川県の工場でも生産する。ニプロは医薬品の工場を国内だけでなく、ベトナムにもつくる。スズキは海岸沿いにある「二輪技術センター」を浜松市の高台に移す。

     中小企業には、全国や海外に拠点を広げる余裕はない。それでも「他社の工場を借りる」など、知恵を絞ってBCPをつくろうという動きが出てきた。

     文房具販売のデルタジムサービス(大阪市北区)は年商4億円弱、従業員は約30人。前田武嗣社長(38)は経営者仲間との会話の中でBCPを知った。「取引先に求められた」という声も耳にした。大企業のBCPに連動して、原材料や部品を供給する中小企業も備えが必要となっている。

     昨夏、大阪府商工会連合会の「策定支援」に申し込み、コンサルタントと半年でつくりあげた。関西地方の被災を想定し、仕入れ先を全国に広げる方針だ。「完璧なBCPはできない。今後も見直しを続ける」

     従業員5人の町工場、大洋化工(大阪府守口市)にもBCPがある。昨夏の豪雨で浸水し、あと数センチで製品や設備がダメになるところだった。橋本秀夫社長(66)は「危ない目にあって初めて対策が大事だと気づいた」。

    ■「入門コース」なら半日で作成/防災施設に低利融資

     経済産業省の昨年の調査では、「BCPを知っている」という企業は48%に達した。ただ、大阪市信用金庫の今夏の調査では、大阪の中小企業でBCPがあるのは9%だった。調査担当者は「BCPづくりに多額の費用がかかると勘違いされているのでは」とみる。

     簡易なBCPなら、意外と手間がかからずにつくれる。中小企業庁のサイト(http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/)からマニュアルが無料でダウンロードできる。「入門コース」なら、問いに答えながら空欄に書き込めば半日でつくれるという。

     各地の経済団体にも、安い費用でBCPづくりを手伝ってくれる制度がある。日本政策金融公庫は、BCPに沿って防災施設をたてる中小企業に低利融資する。日本政策投資銀行も、地方銀行とともに、BCPがある中小企業への低利融資を検討中だ。

     BCPはサイバーテロや感染症の流行への備えにもなる。中小企業庁は「初めから100点満点を目標にせずに、まずは70点でよいからつくってみてほしい」としている。

災害大国 被害に学ぶ

◆【災害大国】被害に学ぶ・特集へ

過去の災害の被害や将来の被害想定から、必要な対策を探り、備えに役立つ情報をお伝えします。

◆【災害大国】あすへの備え・特集一覧

タイムライン・熊本地震(4月14~15日)

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タイムライン・熊本地震(4月16~17日)

写真、SNSの反応などをまとめてタイムラインで

福島からの母子避難

原発事故のあと福島県外で避難生活を送る母子。負担に耳を傾けました

農業用ダム・ため池、510カ所で耐震不足

震災で決壊した藤沼ダムの解説映像

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被災者と同じ空気を吸う記者たちが、リレー方式でつづります

やっぺし 大槌の日々一覧

大震災の被災地、岩手・大槌駐在の記者が現地から報告します

銚子電鉄から見た震災々一覧

自主再建を断念した銚子電鉄の沿線をめぐる

【2016 震災5年】

「震災5年特集・別刷り紙面」ビューアー

紙面別刷り特集!あの日から、重ねた5年

検索データが語る大災害

災害時にどんな言葉を、どんなタイミングで検索しているのでしょうか

【2015 震災4年】

 ふるさとの復興への思いを語る西田敏行さんインタビューや「データで見る被災地」「原発の現状」など特集紙面がご覧いただけます。

 発生から2年までの復旧・復興への歩み、原発事故のその後を、この特集でさぐる。多くの困難なのか、それでも前を向く人々。「忘れない」という誓いを胸に、これからも支えたい。

 かつて「野鳥の森」と呼ばれた福島第一原発敷地内の森は、汚染水をためるタンクで埋め尽くされそうとしている。

(阪神大震災20年)遺族の思い

朝日新聞社と関西学院大人間福祉学部による遺族調査

【阪神大震災20年】レンズの記憶

被災直後の神戸の街や人々の写真を公開

会員限定 阪神大震災・「あの日」の紙面

阪神大震災 阪神大震災

 1923年9月1日の関東大震災から1年たった24年(大正13年)9月15日、大阪朝日新聞は、付録として「関東震災全地域鳥瞰図絵」を発行した。絵図は吉田初三郎画伯が描いたもので、関東大震災の主要な被害のほか、当時の交通網や世情も反映され、裏面は「震災後の一年間」と題して、被害状況と復旧状況をまとめ、各地の写真を載せている…[続きを読む]

  • 「表面・関東大震災俯瞰図絵」ビューアーへ
  • 「裏面・震災後の一年間」ビューアーへ

◆ 地震動予測地図

地震調査研究推進本部の資料から

◆ 女子組版「災害時連絡カード」

印刷して切り抜き、財布などに入れてお使いください

 鹿児島県・口永良部島で29日、噴火があった。箱根山では火山性地震が増え、噴火警戒レベルが引き上げられた。昨年は御嶽山が噴火、桜島や西之島は活発に噴火を続け、蔵王山でも地震が増加、日本が火山列島だと痛感している。…[続きを読む]

著者:朝日新聞社 価格: ¥1,680

 朝日新聞のシリーズ企画「災害大国 迫る危機」が本になりました。活断層、津波、地盤、斜面災害、インフラ、火山のリスクを地域ごとに示した大型グラフィックや対策の現状などを収録。書籍化のために各地域の災害史を書き下ろしました。いつ見舞われるか分からない災害の備えとして役立ちます。B4判変型(縦240ミリ、横260ミリ)でオールカラー、120ページ。

日本列島ハザードマップ 災害大国・迫る危機

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