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火山列島 災害大国 迫る危機

噴煙を上げる御嶽山=2014年9月27日午後2時13分、朝日新聞社ヘリから、池永牧子撮影

全国32火山、噴火警戒基準にばらつき 数値ない山も(2015/11/30)

 全国32火山で運用されている噴火警戒レベルの判定基準表を朝日新聞が入手したところ、データの蓄積がありながら具体的な数値がない火山や、レベルを下げるときの項目がない火山があるなど精度や内容にばらつきがあった。気象庁は基準をわかりやすく具体的にしたうえで公表する方針だが、作業は遅れている。
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【目次】

噴火警戒レベルの概要(2015/11/30)

レベル 対象範囲 火山活動の状況 住民の行動 登山者らへの対応
5 避難 居住地域及びそれより火口側 居住地域に重大な被害を及ぼす噴火が発生、あるいは切迫している状態 危険な居住地域から避難
4 避難準備 居住地域に重大な被害を及ぼす噴火が発生すると予想(可能性が高まってきている) 避難の準備、災害時の要援護者の避難など
3 入山規制 火口から居住地域近くまで 居住地域の近くまで重大な影響を及ぼす(この範囲に入った場合には生命に危険が及ぶ)噴火が発生、あるいは発生すると予想 必要に応じて災害時の要援護者の避難準備など 入山規制など
2 火口周辺規制 火口周辺 火口周辺に影響を及ぼす(この範囲に入った場合には生命に危険が及ぶ)噴火が発生、あるいは発生すると予想 通常の生活 火口周辺への立ち入り規制
1 活火山であることに留意 火口内など 火山活動は静穏。火山活動の状態によって、火口内で火山灰の噴出等が見られる(この範囲に入った場合には生命に危険が及ぶ) 特になし

※気象庁の資料から

噴火警戒レベル判定基準の用語説明(2015/11/30)

火山性地震 マグマによる岩盤の破壊による地震、地下の流体の振動などで起きると考えられる地震など、複数のタイプがある。人が体に感じる揺れがある地震は「有感地震」と呼ばれる。
判定基準にある「μm」は、地震によって地面が揺れる幅を示す単位で、1μm(マイクロメートル)は0.001ミリ。「μm/s」は、地震で地面が揺れる速さを示す単位で、1μm/sは1秒間に1μm動く速さ。kine(カイン)という単位もあり、1カインは1秒間に1センチ動く速さのこと。
 地震は発生した場所から離れれば観測される揺れが小さくなるため、判定基準で数値を示す場合、「A点」「C点」などのように基準で使う観測点の位置を決めている火山もある。
火山性微動(低周波地震) 火山特有の連続的な震動。マグマの動きに関係して起きると考えられ、噴火に先行することも多く、噴火予知のための重要なデータとされる。地震計で観測されるが、揺れからの特徴や長期間続く継続時間から火山性地震とは区別されている。「微動」と省略される。
深部低周波地震 地下10~50キロぐらいの深さで発生する低周波地震。富士山や伊豆大島、岩手山など観測されている。多くは噴火と関係ない時期に起きるが、マグマが上昇する時期に発生した事例もある。
孤立型微動 火口直下の浅い場所で発生する継続時間の短い微動。阿蘇山では火山活動を判断する指標となっている。
孤立型微動 火口直下の浅い場所で発生する継続時間の短い微動。阿蘇山では火山活動を判断する指標となっている。
地殻変動 マグマの移動などによると想定される地下の変化を反映した地面のわずかな伸び縮み、隆起や沈降、傾きをとらえる。
人工衛星からの電波を使って地面の位置を測定する衛星測位システム(GNSS)、地下に設置した機器で地面のわずかな傾きを測定する傾斜計、人工衛星や航空機からのレーダーなどで観測する。
火口、湯だまり 火口や周辺の地面の温度変化、雨水や地下水などがたまっている場合、その色や温度や量、色などが火山の変化を知る手がかりになる。目視や監視カメラ、赤外熱映像装置などで変化をとらえる。
火映 火口内にある熱い溶岩などが噴煙や雲に映って明るく見える現象。活動が活発化した火山で夜間に見られる。
噴火 火口から火山灰などの固形物や溶岩を火口付近の外へ放出する現象。 (噴火活動が活発な桜島では、火山灰を含む噴煙の高さが火口縁上約1千メートル以上となった場合に噴火としている)
爆発 爆発的噴火の略。大きな音とともにガスや水蒸気、岩石などを放出し、空振を伴う。火口や山体を破壊することもある。
噴石 噴火で火口から噴出される溶岩や岩石の破片。風の影響を受けずに弾道を描いて飛散する「大きい噴石」、風に流される「小さい噴石」がある。
噴煙 噴煙がどこまで上昇するかの「噴煙高度」。有色噴煙
空振 火山の噴火で発生した急激な気圧の変化が周囲に伝わる現象。空振が通過すると窓ガラスが揺れ、大きな空振だと割れることもある。
ストロンボリ式噴火 火口からマグマ片や火山弾を放出するタイプの噴火。イタリアのストロンボリ火山の噴火形態から名付けられた。
ブルカノ式噴火 火口からマグマ片や火山弾を放出するタイプの噴火。イタリアのストロンボリ火山の噴火形態から名付けられた。
プリニー式噴火 大量の軽石や火山灰が火口から噴出、成層圏に達する巨大な噴煙が立ち上がる。風下では軽石や火山灰が広範囲に降り、火砕流を伴うこともある。イタリアのベズビオ火山で起きた噴火を調査したプリニウスから名付けられた。
土砂噴出 火山ガスなどの急激な噴出に伴い、湯だまりの湯や土砂を噴出する現象。

噴火警戒レベル判定基準の読み方 (編集委員・黒沢大陸 2015/11/30)

 気象庁は、全国の110火山を活火山としており、噴火した場合の影響が大きい47火山を常時監視している(近く3火山増えて50火山になる)。このうち、32火山について噴火警戒レベルを設定している。

 レベルは1~5までの5段階あり、最低段階のレベル1は警戒が必要な範囲が火口内などで「活火山であることに留意」、レベル2は火口から少し離れた所までの火口周辺で「火口周辺規制」、レベル3は火口から居住地近くまでの広い範囲が対象で「入山規制」、居住地域も対象になるのはレベル4「避難準備」、レベル5「避難」だ。2015年11月30日現在、レベル5が口永良部島、レベル4、3の火山はなく、レベル2が桜島、阿蘇山、御嶽山、浅間山、吾妻山、草津白根山、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島だ。残りはレベル1となっている。

 噴火警戒レベルの変化は、自治体による立ち入り禁止区域の設定や避難勧告など住民の防災行動に直結するため、気象庁は地元自治体と協議が整った火山から噴火警戒レベルを導入している。

 火山の噴火は、地下深くからマグマが上昇して起きる。移動するマグマが地震を起こしたり、地表に近づいてきたマグマによって地面に変化が現れたりするため、予知することも可能だ。ただ、変化が小規模で観測できないうちに噴火したり、観測できても警戒を促す前に噴火したりする場合もある。火山で活発に地震が起きても、マグマが地表まで届かず、噴火に至らないこともある。噴火警戒レベルは、噴火の兆しを観測できて上げる場合と、予知できずに噴火が起きてしまって上げる場合がある。どのような現象が起きた場合にレベルを上げて、どのような状態になったらレベルを下げるかについて気象庁は判定基準を作っている。

 判定に使われる火山の観測は、地下の動きを探る火山性地震、山の膨張や収縮を地殻変動など多岐にわたる。判定基準表には、各火山に設置された機器が観測した結果が書かれている。ただ、観測を始めてから噴火や顕著な活動がない火山では、どんな変化があったら警戒度を高めればいいのかが具体的な数値ではわからない火山も多い。

 火山に積雪があると、噴火による熱で急に溶けて、泥流が発生する場合がある。山頂にあるダムが決壊するようなもので、泥流は高速で流れ下り、ふもとを襲う。このため、積雪期用の判定基準も設けている火山もある。

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活火山とは

 過去1万年以内に噴火した火山と今も活発な噴気活動が確認されている火山。気象庁が定義している。以前は「2000年以内」としていたが、1979年に御岳山(長野県、岐阜県)が有史以来初めて噴火し、最後の活動から数千年後に噴火した火山もあるため、2003年に改めた。活火山は北方領土や海底も含めて110あり、気象庁が47について24時間体制で監視している。「休火山」「死火山」という表現は使われていない。

火山灰の被害

 噴火で広範囲に影響を及ぼす火山灰。気象庁によると、数センチ積もると車は動かせず、線路の切り替えができなくなる恐れがある。物流が止まりかねない。屋根に数十センチ積もると木造家屋が倒壊する危険が高まる。雨が降ればその分、灰は重くなり、雪と違って片付けないとなくならない。

詳しくは特集「災害大国 火山災害」へ→

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