東北から始まる「賢慮の資本主義」②
東北から始まる「賢慮の資本主義」(竹内弘高 vs 佐藤智恵、Voice 平成28年4月号)より
日本体験で驚くこと
竹内 昨年11月、私の教え子であるケイシー・ジェラルドがIFCの授業に来てくれました。彼は一昨年5月にハーバードを卒業したあと、MBAs Across AmericaというNPOを起ち上げた人物です。
彼は「知識総合戦略(Knowledge-Based Strategy)」の考えがインサイド・アウト・アプローチである、と話していました。つまり、自分の思い、信念をベースに戦略、ビジネスを考えていく。これは自社を取り巻く環境や業界を分析して立ち位置を決めよ、というマイケル・ポーター的なアプローチとは逆なアプローチとは逆の新たな方法かもしれません。
「共通善」の実現をビジネスの目的にしたいと考えるハーバードの学生にとって、彼の生き方は一つのロールモデルになっています。
佐藤 竹内先生は震災の翌年から被災地で実習授業を続けておらるわけですが、その原動力となっているものはなんですか。
竹内 一つはハーバードに恩義を感じていること。もう一つは、親からたたき込まれたミッションのようなものです。私は先述のようにインターナショナルスクールに12年間通い、日本の大学を出たのですが、その間、父親から「日本とアメリカの懸け橋になれ」と繰り返し教え込まれました。
面白いのは、学生たちが一様に「街にゴミ箱がないがゴミも落ちていない」と言うこと。
また、ハーバードの学生たちが驚くのは、日本のコンビニの店員が親切で効率的であることです。アメリカではコンビニの仕事は典型的な3K(きつい、汚い、危険)ですからね。こうした体験というのが「暗黙知」として学生たちに残るわけです。結果として、日本そして日本人を好きになって帰る。
世界を舞台に活躍する日本の若者の力を行かせ
佐藤 最後になりますが、今後、竹内先生はハーバードでどんな仕事をしていきたいですか。
竹内 ハーバードでの仕事はあと5年ぐらいだと考えていますので、まず自分の後継者を探さなくてはいけません。もっと先を見据えると、グローバルに活躍できる若い日本人を育成すること。
マルティン・ルーサー・キング牧師は1963年の有名なスピーチで「I have a dream」と語りかけ、子供たちの未来にアメリカの将来を重ねました。私の思いも同じかもしれません。日本の高校生から二十代、三十代の若い世代が「賢慮の資本主義」の精神に基づいて世のため、人のために尽くす。そのような未来を創るのが私の夢なのです。
>>自分の思い、信念をベースに戦略、ビジネスを考える(インサイド・アウト・アプローチの)「知識総合戦略」の考えを持ちながら未来を創ってゆきたい