何日かで1知識 東北から始まる「賢慮の資本主義」①
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東北から始まる「賢慮の資本主義」①


東北から始まる「賢慮の資本主義」(竹内弘高 vs 佐藤智恵、Voice 平成28年4月号)より


  ハーバードで日本を再評価

佐藤
  米マサチューセッツ州にあるハーバード大学といえば、いうまでもなく世界の最高学府です。なかでもハーバード大学経営大学院は、米大統領からグローバル企業のCEOまで、数多のリーダーを育成してきたことで知られています。現在、ハーバードには約270名の教員が在籍していますが、日本人教授は竹内弘高先生お一人だと伺っています。そうした竹内先生の目からご覧になって、日本企業の強みはどんなところにあるのでしょうか。

竹内  最近、とくにアジアから「賢慮のリーダー」について話してほしい、という依頼が来ます。私は、一橋大学の野中郁次郎名誉教授と『ハーバード・ビジネス・レビュー』に共同執筆した論文「賢慮のリーダー」のなかで、現代のビジネス・リーダーは「実践知」を実行しなければいけない、という主張を述べました。「実践知」の起源は、アリストテレスが分類した三つの知識の一つ、フロネシスにあり、賢慮とも訳されます。「実践知」は経験から得られる高度な暗黙知で、価値観や道徳についての思慮分別をもつことにより、現実に基づいて最善の判断を下し、最適な行動を可能にすることができる。賢慮のリーダーは、見識ある「今、ここ」の判断ができる、ということです。日本にはそうした「実践知」を備えた企業が少なくない。


  共通善の追求という「生き方」

竹内
  資本主義に関しての私のいちばんの推薦書は、マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(岩波文庫)です。資本主義のコアにはカルヴィニズムの厳格な宗教倫理があることを述べた名著です。ハーバードのマイケル・ポーターが提唱している「Creating Shared Value(共通価値の創造)」も、もともと資本主義の根底には「creating social value(社会的価値の創造)」というコンセプトが流れていた、という主張です。

佐藤  資本主義というと、最初からお金儲けばかりを追求するイメージがありますが、じつはそうではなかった。もとを辿れば、「common good」と呼ばれる共通善がある、というわけですね。

竹内  そうですね。日本企業はこれまで「投資家へのリターンが十分ではない」「社員を解雇してコストを削減しない」などの理由から、「資本主義が十分ではない」と批判されることが多かった。しかし、そうした批判があるにもかかわらず、優れた日本企業は社会との共生、いわば共通善の追求をまさに「生き方」として実践してきた。むしろことらのほうが正論ではないか、という思いで書いたのが先に挙げた論文「賢慮のリーダー」だったわけです。

 日本の長寿企業の経営者が口を揃えていうのは、たとえば「三方よし」のような古い家訓をそのまま実行してきた、ということです。

佐藤  「売り手よし、買い手よし、世間よし」という近江商人の言葉ですね。そこには、まさに自社とともに顧客や社会を思いやる「共通善」が表れている。結果として、日本には数百年も続く企業がたくさんありますね。これも、利益ばかりを追求しないで、「三方よし」を守り続けてきた結果ではないでしょうか。


  なぜ教養が大事なのか

竹内
  たとえば、ピーター・ドラッカーは、「マネジメントは一般教養である」という言い方をしています。では、彼は何を念頭に置いてそういったのか。「共通善は教養から生まれる」というのがわれわれの解釈です。実際、アメリカの大学では四年間、リベラル・アーツの世界にどっぷり浸かることができる。リベラル・アーツを学ぶための費用が年間5万ドルを超えているんです。

 日本人は社会人になってから、教養の重要性に気付く。そこで「何から学ぶか」を考えたとき、まずドラッカーから、ということなのでしょう。


>>価値観や道徳についての思慮分別をもって「三方よし」の判断を下してゆきたい

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