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戦略ストーリーのクリティカル・コアをじっくり考える?

 

【 ストーリーとしての競争戦略 】

 


 先日、「ストーリーとしての競争戦略 ~優れた戦略の条件~ 」(楠木建著、東洋経済新報社、https://str.toyokeizai.net/books/9784492532706/)を読み返してみた

 

 以下は一部抜粋(その5)

 


コンセプトを自分の頭で深くじっくりと考える 

クリティカル・コア(戦略ストーリーの一貫性の基盤となる中核的な構想要素)を見つめる 

 

 どんなに投資をしても自分の頭を使わなければコンセプトは構想できません。流行の画期的な技術やそのときに華々しく成長している市場セグメント、今そこにいる顧客の声、こうした「外部の事情」に惑わされてはなりません。人間の変わらない本性を見つめるためには、そのような表面的な誘惑や情報の洪水を意識的に遮断することがむしろ大切です。

 

 人間の本性を捉えた骨太のコンセプトをつくるために、その製品やサービスを本当に必要とするのは誰か、どのように利用し、なぜ喜び、なぜ満足を感じるのか、こうした顧客価値の細部についてのリアリティを突き詰めることが何よりも大切です。繰り返しお話してきたように、特に大切なのは「なぜ」についてのリアリティです。

 

 およそあらゆる人にとって、一番リアリティのある「なぜ」は自分自身の生活や仕事の中にあるはずです。自分自身ほどリアリティを持って理解できる「顧客」は他にはありません。

 

 ごく日常の生活や仕事の中で、嬉しかったこと、面白いと思ったこと、不便を感じたこと、頭にきたこと、疑問に思ったこと、そうしたちょっとした引っかかりをやり過ごさず、その背後にある「なぜ」を考えることを習慣にする。回り道のように見えて、これがコンセプトを構想するために最上にして最短の道だというのが私の意見です。どんなに画期的なコンセプトも、発想の初めの一歩はそうした日々の習慣の積み重ねの中から生まれるものだと私は思っています。

 

 戦略ストーリーの五つのCの残された一つ、「クリティカル・コア」(critical core)についてじっくりお話したいと思います。もったいぶるわけではありませんが、この起承転結の「転」にあたる部分がストーリーづくりの一番おいしいところであります。
 
 戦略ストーリーの起承転結です。戦略ストーリーの5Cを思い出してください。筋の良い戦略ストーリーをつくるためには、この五つのCをきちんと押さえることが大切です。

 

 起承転結がきちんとしているというのは、古今東西の優れたお話の基本条件ですが、その中でもとりわけ重要なのは、読み手の心をがっちりつかむような「起」と、ストーリー展開のツボとなる「転」の二つです。 クリティカル・コアは「転」にあたります。ストーリーのヤマといってもよいでしょう。コンセプトと並んで、クリティカル・コアは戦略ストーリーの優劣を決めるカギとなります。

 

 サッカーにたとえれば、ゴール(長期利益)へのシュート(競争戦略)に向けてさまざまなパス(構成要素)を繰り出すわけですが、その中でも「キラーパス」となるのがクリティカル・コアです。

 

 「戦略ストーリーの一貫性の基盤となる中核的な構成要素」、これがクリティカル・コアの定義です。 第一の条件は、「他のさまざまな構成要素と同時に多くのつながりを持っている」ということです。クリティカル・コアは文字通りストーリー全体の中核、つまり他のさまざまな構成要素と深いかかわりを持ち、「一石で何鳥にもなる」打ち手です。これは前段の「ストーリーの一貫性」に関連しています。

 

 第二の条件は、「一見して非合理的に見える」ということです。ストーリーから切り離してそれだけを見ると、競合他社には「非合理」で「やるべきではないこと」のように見える。しかし、ストーリー全体の中に位置づければ、強力な合理性の源泉になる。クリティカル・コアの特徴はこの二面性にあります。この意味で、クリティカル・コアはストーリーに「ひねり」を利かすものであり、起承転結の「転」なのです。この第二の条件は、定義の後段の「持続的な競争優位」に関連しており、とりわけ重要な意味を持っています。

 

 概念的な定義だけではわかりにくいので、以下では、スターバックスコーヒーの事例で見ていきましょう。スターバックスの戦略ストーリーを、例によってエンディングのほうか読み解いていくことにします。

 

 スターバックスの意図する最終的な競争優位はWTP(Willingness To Pay:顧客が支払いたいと思う水準)の増大にありました。 顧客がより大きなWTPを感じるということは、スターバックスにそれだけプラスアルファの価値があるということです。その価値の本質は何か。この問いに対する答えがコンセプトです。すでにお話したとおり、「第三の場所」(third place)、これがスターバックス独自のコンセプトでした。

 

 つまり、コーヒーを売るのではなく、ゆったりとした雰囲気の中でリラックスするという経験なり文化なりを売るということで、コーヒーそのものは、そのための手段であるという考え方です。

 

 第三の場所というコンセプトの定義は、単価を上げるだけでなく、顧客の来店頻度を上げるという意味でもWTPの増大に貢献します。日常的な避難場所として顧客は習慣的にスターバックスに来るようになります。 サッカーにたとえれば、WTP(競争優位)と第三の場所(コンセプト)がスターバックスの戦略ストーリーのツートップだということです。このツートップで長期利益のゴールにボールをたたき込もうというのがストーリーのエンディングの部分です。

 


<感想>
戦略ストーリーの一貫性の基盤となる中核的な構想要素 (クリティカル・コア。「転」)について、深くじっくりと考えてみたい

 

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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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