「残り全部バケーション」
「残り全部バケーション」(伊坂幸太郎著、集英社)より
「その時の岡田のやったのは、『それらしく見せる』ってことだった」
「人ってのは、それらしい情報を与えられると、勝手に想像して、納得しちまうってことだ。俺もな、だからそれをやってみた」
「俺は後悔してんだよ。あの時、岡田に責任をおっ被せちまったことを。岡田はいい奴だったからな。面白くて、いい奴だった」
「『友達になろうよ。ドライブとか食事とか』」
「最後に岡田といた時に、そういうメールを打ったんだよ。覚えてるかもしれねえ」
「じゃあ、『子供作るより、友達作るほうがはるかに難しい』ってのも足せ」
「その時は、どこかでずっとバケーションでも満喫してやるよ。俺の人生、残りは夏休みだ。宿題なしでな」
ちゃらん、とスマートフォンが鳴った。
>>溝口も岡田も今もきっとバケーションの最中に違いない