「企業価値経営」④
「企業価値経営 コーポレート・ファイナンスの4つの原則」(マッキンゼー・アンド・カンパニー、ダイヤモンド社)より
マッキンゼーの人たちが考える、価値創造に貢献する戦略立案の方法について学んでみる。
『 第17章 価値創造経営
戦略立案と予算策定
戦略立案が価値創造に貢献するように改善する方法は、いくつも考えられる。
第1に、戦略立案と予算策定の間にあるしがらみを断つことだ。戦略計画は、それが見せかけの3~5年の業績計画となってしまわないために、予算策定とは別の時間軸のもとで実施されるべきである。
第2に、事業部の戦略立案は、詳細な業績予測から離れて長期的な価値創造ドライバーを重視し、事業部が直面している問題や機会についての議論に集中すべきである。詳細な業績予測の項目を50行も連ねるのではなく、各事業部には、問題点、機会、必要な投資を整理するのに役立つような、10行の項目からなる財務のシナリオを3つ準備させるべきかもしれない。
企業はまた、事業単位の戦略立案とは別に、独立した企業全体の戦略プロセスを策定するべきである。この企業戦略は、優れたオーナー、成長のプラットフォーム、資源配分を説明するものであなければならない。
事業戦略、企業戦略の両方とも、現状を大きく変革するための立案でなければならない。たとえば、事業からの撤退、将来性のある成長機会への大幅な支出の増加、自社の商品開発や販売における資本の集約性を減らすための大胆な方策の実施、などである。
よりよいアプローチは、企業本部が各事業と協働し、個々の事業部にとっての対等な目標と予算を算出し、それらの合計を検証する、というものである。全事業部の合計が本部の期待にそぐわない場合もあるかもしれないが、それで構わない。企業がこのような準備を行っていれば、機械的な全社一律のコスト削減ではなく、相対的な価値創造の潜在能力に基づいて、どの事業部のコストを削減すべきかを判断できる。さらなる利点として、企業はこのプロセスを通じて、全事業部のすべての機会を全額まかなう予算はないことを理解するだろう。その結果、自社がある事業部のベスト・オーナーかどうか、慎重に議論する機会が得られるだろう。
取締役会
我々の同僚は、以下のように述べている。「業績管理に対する企業文化の特性と強度こそが、おそらく2つの環境の最も大きな違いだろう。あるインタビュー対象者によれば、プライベート・エクイティの取締役会には『容赦なきまでの価値創造への希求』があった。それに対して、上場企業の取締役会は、細部にあまり関与しない、と表現された。上場企業の取締役会は、本質的な価値創造の追求に焦点を当てる度合いがはるか少なく、四半期の利益目標の達成をはるかに重視する。彼らは予算管理や短期な会計上の利益を重視しており、投資家を驚かせることを避けようとしている。」
取締役会は、個々の事業単位の業績、戦略、機会についてより理解を深める方法を探すべきである。価値創造は事業部レベルで起こるのであって、全社レベルで起こるのではないため、取締役会はこの事業部レベルでの洞察や議論を必要とする。
共訳者あとがき
本書のなかで一貫して語られているメッセージは、「企業の経営者はどのような視点を持ち、どのような判断基準に基づき、どのように行動すれば、企業価値を高めることにつながるか」ということである。
本書の主たる読者層は、企業価値を実際に現場で行う実務家というよりは、むしろその評価結果を解釈し、経営判断を求められる企業の経営幹部を想定しているように思われる。本書における著者たちの視点は、常に経営のトップにあり、そのメッセージは経営者に直接向けられている。
2012年8月 鈴木一功 』
現状を大きく変革して長期的な価値を創造するために、(1)事業単位と、(2)(事業単位とは独立した)企業全体の、大胆な戦略立案の策定が必要であるという。
現状の延長線上で考えるだけでは、企業価値を高めることにはなり得ないということだと思う。
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元証券マンが「あれっ」と思ったことの
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