「シン・ゴジラ」わたしはこう読む②
「シン・ゴジラ」わたしはこう読む(日経ビジネス編)より
石破茂議員との対話は続く。
『石破:小学校でも中学校でも高等学校でも、そして大学でも「国家主権とは何か」ということは全然、教わりません。国民主権は習いますよ。でも、国家主権とは何か、ということは日本の学校では教えません。
国家主権を護るということが独立ということです。国の独立を守るのが軍隊の仕事で、そこで発動されるのが自衛権なんです。自衛権とは国の独立を守るためのものなんですが、攻撃の主体は常に国または国に準ずる組織となる。これって基本中の基本なんですけれど、でも大学でも教わらない。
国家主権の三要素である「領土」と「国民」と「統治の仕組み」。この三つについては、国または国に準ずる組織に指一本触れさせてはならない。それは領土であり、国民であり、統治の仕組みを守ることが国の独立を守るということだからです。軍隊の仕事というのはただ一つ、国の独立を守ることです。そんな大事なことも、実は私も議員になるまで知りませんでした。
では警察とは何か。これは国民の生命と財産、そして公の秩序を守ることで、行使されるのが警察権です。従って、優れて、軍隊の作用というのは外国勢力に対して行われるべきものであって、国内において軍隊は機能するものではないのです。逆に、警察というのは、優れて、対内的な作用を果たすべきものです。対外的に警察権を行使すると言うことはあり得ないのです。
軍であれ、警察であれば、実力組織であることに違いはありません。しかし、その2つは全く異なるものです。安全保障を語る上において、基本中の基本をほとんど誰も理解していない。だから私は、何故、ゴジラがギャーと暴れて、自衛権が行使されるのか全くわからない。』(太字は筆者)
確かに、国家主権、警察権、自衛権を教わる機会は全くなかったなぁ・・・・・・
『――ゴジラは害獣であって、外国勢力とは言えないからですか?
石破:そうです。自衛権を行使するための三要件というのが法的に決まっています。我が国に対する国または国に準ずる組織からの急迫不正の武力攻撃があること。他に取るべき手段がないこと。その実力行使は必要最低限にとどめること。これが三要件です。映画で出てきた「防衛出動」というのは自衛権の行使に他なりません。だからこの三要件が満たされない限り、自衛隊に対して防衛出動が下令されることはあり得ません。
去年、安全保障政策が国会に提出されたときにあれほど議論したのに、映画とは言え、なんであんな平気に、防衛出動の下令となってしまうのか・・・
もし、あのゴジラをどっかの国がリモコンで操っていれば、国または国に準ずる組織からの我が国に対する武力攻撃とみなせるので、自衛権の行使はまったく問題ありません。でも映画の中ではそうはなっていないから、害虫駆除として災害派遣で対処すべきなのです。イノシシとか、クマとか、そういう害虫を駆除するのと基本的には全く同じです。クマが爪でガーンと攻撃するのと、ゴジラが火を吐くのは一緒ということです。
国家とは何か、ということを別の言い方をすると、軍隊と警察という実力組織を独占する組織体だということです。これが国家なんです。マックス・ウェーバー流に言えば「暴力装置」なんです。
実力組織と暴力装置というのは、本質は同じです。要するに軍隊と警察という実力組織、マックス・ウェーバー流に言えば、暴力装置を独占的に所有する主体が国家です。だから国家とは何か、国家主権とは何か。警察とは何か、警察権とは何か。軍隊とは何か。自衛権とは何か。そういうことを整理する意味で、あの映画ってどうなんだろうねと言う議論は、あって然るべきでしょう、と思うのです。
国家とは何か、国家の独立とは何か。そういうことをきちんと整理しておかないと、憲法九条を改正して国防軍を持つとか、自衛権を行使するのはどうすべきかとか、そういう議論の本質が分からなくなると。
国権の最高機関である国会で、定義もきとんと分からずに議論すること。これは国民に対する冒涜だと、私は常に思っているんですよ。でも、そういう人がいっぱい、いるわけですよ、国会議員でも。
おそらく法曹界の弁護士でも、分かっている人はごく少数だと思いますよ。
そういう状況下で自衛権をどうするか、緊急事態に対応するにはどうすべきか、という議論が行われることを私は危惧しています。』(太字は筆者)
「シン・ゴジラ」をきっかけにして、国家とは、国家の独立とは、国家主権とは、何かを理解した上で、緊急事態に対応するには自衛権をどう行使すべきか、ということを国民一人ひとりが考えてゆかねばなるまい。
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元証券マンが「あれっ」と思ったことの
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