【 日銀:金融政策決定会合 】
2024/1/23、日本銀行から「経済・物価情勢の展望(2024年1月)」が発表された。
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2401a.pdf
以下は一部抜粋。
【基本的見解】
本基本的見解は、1月22、23日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定されたものである。
< 概要 >
日本経済の先行き
当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。
物価の先行き
消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、来年度にかけて、 既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰するもとで、政府による経済対 策の反動がみられることなどから、2%を上回る水準で推移するとみられる。
2025年度については、これらの影響の剥落から、前年比のプラス幅は縮小すると予想される。この 間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップがプラスに転じ、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まるもとで、見通し期間終盤にかけて「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくと考えられる。
先行きの不確実性はなお高いものの、こうした見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まっている。
前回の見通しとの比較
成長率については、2023年度が幾分下振れ、2024年度が幾分上振れとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、2024年度は、このところの原油価格下落の影響を主因に、下振れとなっている。
リスク要因
海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。
リスクバランス
経済・物価のいずれの見通しについても、概ね上下にバランスしている。もっとも、物価については、長期にわたる低成長やデフレの経験などから賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が社会に定着してきたことを踏まえると、賃金と物価の好循環が強まっていくか注視していくことが重要である。
(以下略)
ご参考)日銀総裁会見要旨
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20240124&ng=DGKKZO77895550T20C24A1EE9000
日銀の植田和男総裁は23日開いた金融政策決定会合後に記者会見した。要旨は以下の通り。
問 決定内容について。
答 長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)のもとでの金融市場調節方針とその運用、及び資産買い入れ方針について、いずれも現状維持を全員一致で決めた。粘り強く金融緩和を継続することで賃金上昇を伴う形で2%の物価目標の持続的・安定的な実現を目指す。
問 物価の見通しは。
答 輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰しつつも残るもとで、サービス価格の緩やかな上昇も受けて足元2%台前半になっている。前回との比較では、来年度が下振れているが、このところの原油価格下落の影響が主因。先行きの不確実性はなお高いが、見通しが実現する確度は引き続き少しずつ高まっている。
問 能登半島地震の影響は。
答 情報収集と分析に努めている。現在のところ、経済全体のサプライチェーンへの深刻な影響、消費等へのマインドを通じた影響について、大きなマイナスが確認されているわけではない。ただし今後出る可能性はあるので、丁寧に見ていきたい。
問 2%目標に向けた確度は高まったか。
答 少しずつ高まっている。物価から賃金への波及の面では、春季労使交渉に向けて組合側から昨年を上回る賃上げを要求する方針が示され、大企業中心に経営者から前向きな発言もみられている。賃金から販売価格への波及も、サービスを含む価格が緩やかな上昇傾向にあることや支店長会議を踏まえると、少しずつ広がっている。
問 その根拠は。
答 これまでの物価見通しに沿って経済が進行していることが確認できた。(物価見通しの)姿は前回とあまり変わらないが、まだ必ずしも自信が持てなかったなかで、もう一回点検してみたら同じような見通しになったというあたりが、確度が上昇したことの根拠だ。
問 賃上げの見通しは。
答 支店長会議で受けた印象では、去年のこの時期と比べるとやや早めに賃上げを決めた企業の数が多かったと思う。一部にはまだ慎重な先もあって、賃上げの広がりや程度については不確実性は高い。
問 中小企業の賃上げをどこまでみるか。
答 大事な確認ポイントだが、すべての中小の賃金が皆そこそこ上がらないと判断ができないかというと、そうではない。経済全体の平均の賃金の動きにどれくらい影響を与えるかを中心に見ることになる。
問 3月会合までの判断材料は。
答 賃金あるいは経済、物価周りのデータもある程度出てくる。さらに2カ月ほどあるので、様々なヒアリング情報も入手できる。3月に比べれば4月はより情報量が増えるのは言うまでもない。その時その時に新たに追加された情報をもとに判断する。
問 マイナス金利解除をどう判断するか。
答 物価目標の達成が見通せる状況に至ったとすると、マイナス金利を含めた大規模緩和策の継続の是非を検討していくことになる。現時点での経済・物価・金融見通しを前提とすると、大きな不連続性が発生するような政策運営は避けられると思っている。
問 マイナス金利の負の影響をどう考えるか。
答 ある程度の副作用は否定できないと思うので、ベネフィットとの関係で、さらに物価目標の実現にどれくらい近づいているかということで継続の是非を判断することになる。
問 解除の際は連続利上げを想定するか。
答 解除する時にその後の金利の経路も考慮した上で判断するかというと、当然そういうことになるかと思う。現在見えている経済の姿からすると、仮にマイナス金利を解除することになったとしても、極めて緩和的な金融環境が当面続くということは言えるのかなと。
問 解除後もYCCを維持するか。
答 長期国債の買いオペについても出口の前後で大きな不連続性が発生することがなるべくないように金融政策を運営したいと今のところは考えている。順序づけについては今のところ必ずしもこれといった姿をもっているわけではない。
問 サービス価格の強さは。
答 上昇の一部に、明らかに一時的と思われる要素が含まれる。多少、消費の弱さのマイナスの影響も見られる。それらを除いたらどれくらいの強さかということを抽出しようとしており、少しずつ上昇しているということは言えそうだ。
問 需給ギャップがプラスになる必要があるか。
答 長い目で見れば少しずつ上昇してきてゼロ近辺にいるというトレンドに大きな変化はない。はっきり大きくプラスになっていかないと物価目標達成に到達しないかといえば、そういうことはない。
問 実質賃金はマイナスだが。
答 上昇率がずっとマイナスの見通しでは、物価目標の達成には遠い。足元でマイナスでも近い将来プラスに転じる見通しがあれば、正常化を必ずしも妨げるものではない。
問 上場投資信託(ETF)購入への考え。
答 足元はほとんど購入していないが、枠組みとしては大規模な緩和の一環として実施している。2%の達成が見通せる状況になった時点で、買っちゃった物を売るという話ではないが、引き続き買うかどうかについて検討することにはなるかなと思う。
問 米国の利下げの影響は。
答 少しソフトランディング期待が高まっている状況かなとみている。米国経済を含む海外経済は日本に影響を与えるので、私どもの物価経済見通しに対する影響を見極めつつ、適切に判断するということに尽きる。
問 2%目標の功罪について。
答 政策委員がそれぞれ常に考えている問題の一つ。インフレ目標自体はそう頻繁に変えるものではないというのがとりあえずの答えかなと思う。2%目標にこだわらずもう少し早めに利上げしたら、デフレに戻ってしまうリスクもその分上がっていたとは思う。
<感想>
「マイナス金利解除」の問いへの答えが、「物価目標の達成が見通せる状況に至ったとすると、マイナス金利を含めた大規模緩和策の継続の是非を検討していく」。
マイナス金利解除のためには、まずは、この春の「労使交渉」を通じた「賃上げ」がポイントとなりそうだ。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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