何日かで1知識 2017年12月
FC2ブログ

NHKの受信契約は契約自由の例外?


【 NHK受信契約 vs 憲法上の権利 】


 2017/12/6、NHKの受信料に関する最高裁判決が出た。


1.最高裁判決

テレビ設置者に受信契約を義務付けた放送法の規定が「合憲」と判断された
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/281/087281_hanrei.pdf


2.放送法64条1項の意義
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000132#347

(受信契約及び受信料)
第64条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。

⇒ 受信設備設置者とNHKとの受信契約を定めた放送法64条1項は、NHKの財政基盤を確保するため法的に実効性のある手段として設けられた

⇒ 国民の知る権利を充足する公共放送の目的にかなう合理的なもの

⇒「契約締結の自由」の例外

⇒「情報を摂取することを強制されない自由」と「テレビ設置者に受信契約を義務付けた放送法の規定」を比較衡量した結果、後者が勝るとされた


3.関連する憲法条文
http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM

憲法13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

憲法29条 財産権は、これを侵してはならない。


<感想>
 本件は、憲法(13条・29条)上の「国民の権利」(情報を摂取することを強制されない自由)より、テレビ設置者にNHKの受信契約を義務付けた「放送法の規定」の方が優先されるという最高裁判決。
 本来、契約締結は自由のはずであるが、その例外とされた。
 日頃それほど意識したことのない憲法が、裁判上では重要な論点となることを改めて認識させられた事案である。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------

新設分割による子会社IPO?


【 新設分割による子会社上場 】


 2017/12/25、ABホテル(6565)(東祥(8920)の連結子会社)がJASDAQと名証2部に上場した。
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171221439960.pdf


1.IPO概要

・IPO価格:1,500円(a)

(1)公募増資
・株数:260千株(b)
・OA:108千株(c)(貸株人:親会社・東祥(8920))(GSO:第三者割合増資)

(2)売出し
・売出人:東祥
・株数:460千株(d)

< 合計 >
・828千株(e=b+c+d)

(3)増資勘案後の東祥グループ所有比率
・発行済株式数:7,088千株
・東祥G所有:6,260千株(88.3%)

(4)上場形式要件(一部)
・株式等の分布状況:上場株式数の10%
(JASDAQ・名証2部とも)


2.12/25(上場初日)~12/28の株価推移

(1)12/25
・初値:3,060円(13:23)(a×2.04)
・安値:3,035円(13:25)
・高値:3,760円(13:44)
⇒ 制限値幅の上限(ストップ高水準)のまま取引終了
・出来高:1,774,900株(f)
⇒ IPO株式の回転率:2.1倍(f÷e)

(2)12/26
・ストップ高:4,460円(9:27)(a×3.0)
・出来高:206,900株(ストップ高比例配分)
https://www.nomura.co.jp/terms/japan/su/stop.html

(3)12/27
・ストップ高:5,160円(15:00)(a×3.4)
・出来高:17,600株(同上)

(4)12/28
・始値:5,660円( 9:12)
・安値:5,040円(12:36)
・高値:6,060円(10:33)
・終値:5,740円(a×3.8)
・出来高:3,023,200株(g)
⇒ IPO株式の回転率:3.7倍(g÷e)

(5)各種指標
< 前提 >
・18/3期当期純利益(予想):681百万円
・純資産:4,055百万円(17/9末3,547+増資分508)

<  各種指標 >
・EPS:96円
・PER:1,500円で16倍/5,740円で60倍
・ROE:16.8%
・時価総額:407億円(@5,740)


3.沿革・グループ戦略

(1)沿革
 2014/10:東祥から新設会社分割。資本金1億円
 2017/11:ABホテル17店舗を展開中


(2)グループ戦略
http://www.to-sho.net/news/file/20171120154819_1.pdf

a)上場の目的

・目標:年間5店舗以上の新規ホテルを開発

⇒ 上場企業として多様な資金調達手段・取引先からの信用を得ることが可能
⇒ グループの企業価値向上に資すると判断

b)株式保有方針

・連結子会社として50%超の株式保有割合を維持


(3)東祥の時価総額等
< 前提 >
・12/28終値:@3,640
・18/3期当期純利益(予想):4,000百万円
・17/9末純資産:25,298百万円

<  各種指標 >
・EPS:104円
・PER:35倍
・ROE:15.8%
・時価総額:1,394億円(除、自己株式)
(ABホテル株式の東祥G所有時価総額:359億円)


<感想>
 本件は、親子上場における子会社IPOの事例。上場日初値を付けた後の13:44以降、翌々日までストップ高が続いた。

 上場により、(1)会社:当面借入(レバレッジ)を活用してアセットを増やせる、(2)レンダー:株式時価総額をベースとした(担保)評価がし易くなる等、両者にとってメリットがある。

 将来、業界が成熟化した際に、少数株主の存在により、思い切った(損失を伴う)戦略が打てなくなることもあり得ようが、それはかなり先の話という整理で問題ないように思われる。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/

----------------------------------------------------------------------

国連総会で米国に反対した背景?


【 エルサレム(イスラエルの首都)に関する国連総会決議 】


< 一連の流れ(概要) >

2017/12/21:日本は国連総会の緊急特別会合で、エルサレムをイスラエルの首都に認定した米国の決定撤回を求める決議に賛成

12/25:河野外相はイスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長とそれぞれ会談

12/27:河野外相がイスラエル、パレスチナ自治政府と米国の首脳の東京での会談を提案
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO25131660X21C17A2MM0000


<感想>
 12/21の国連総会決議の前に、秘密裏の安倍・トランプの電話会議等により、上記一連の流れのお膳立てが出来ていたようにも見える。
 他国にできない意味ある会談のアレンジを安倍政権が成し得たとすれば、国際的な日本の立場は一層高まるものと思われる。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/

----------------------------------------------------------------------

持合株式を通じた取引先との協業?


【 持合株式を通じた取引先との協業の発展 】


 2017/12/26、ナガワ(9663)が第三者割合による自己株式処分(⇒株式持ち合い)を開示した。
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171226442956.pdf


1.自己株式処分の概要
(1)概要
・株数:193,600株(発行済の1.2%)
・価格:4,870円(12/25終値)(a)

< 第三者割合(処分)予定先 >
・住友不動産:102,000株、約5億円
・横河ブリッジHD:61,600株、約3億円
・丸全昭和運輸:30,000株、約1.5億円

⇒ 同額の(持合)株式を取得(予定)


2.株式持ち合いへのプロセス
< コア事業 >
・鉄骨を主構造とするユニットハウス、プレハブ・システム建築の製造・販売および請負工事業

(1)ステップ1
・コア事業の強化、取引先との協業の更なる発展及び安定的な事業基盤構築のための施策を当社の様々な取引先と検討

(2)ステップ2
・住友不動産、横河ブリッジHD、丸全昭和運輸の3社との間で、関係構築及び関係強化並びに株式相互保有方針について協議

(3)ステップ3
・相互に住友不動産とは約5億円、横河ブリッジHDとは約3億円、丸全昭和運輸とは約1.5億円の株式を取得へ


3.自己株式の有効活用
< 17/9末時点 >

・株数:2,669千株(発行済の16.3%)(b)
・簿価:3,386百万円(@1,269/株(c))

< 自己株式処分差益 >
・697百万円(b×(a-c))
⇒「その他資本剰余金」が増加(PLにはヒットしない資本取引)


4.ナガワのコーポレート・ガバナンス
http://www2.tse.or.jp/disc/96630/140120170613405133.pdf

【原則1-4 いわゆる政策保有株式】 
 当社は、保有先企業の動向、取引の状況、当該保有株式の市場価額等の状況を踏まえて、当該企業との業務提携の更なる強化や安定的な取引関係の維持・強化を図ることにより、当社の企業価値の向上に資すると認められる場合、政策保有目的で株式を保有することを基本方針としております。 


<感想>
 本件は、取引先との(持合)株式の相互保有を通じて、協業の発展を目指すもの。
 コーポレート・ガバナンス強化が叫ばれる中、相対的には持ち合い解消を図るケースが多くなって行くだろうが、個別には本件のような動きがなくなる訳ではないものと思われる。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/

----------------------------------------------------------------------

立会外分売による流動性向上?


【 立会外分売による流動性の向上 】


 2017/12/26、ロングライフHD(4355)が立会外分売に関して開示した。
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171226442690.pdf


1.立会外分売の結果
(1)分売実施日:2017/12/26
(2)株数:400千株(a)
(3)分売値段:474円(12/25終値489円の3%ディスカウント)
(4)買付申込数量の限度:2千株(b)


2.分売の効果・目的
(1)効果
・200人以上の(個人)株主が増加(a÷b)
・流動性が400千株向上
(発行済株式数(11,190千株)の3.6%)

(2)目的
・東証2部への市場変更に向けた(現在JASDAQ(S))、分布状況の改善・流動性の向上


3.東証2部上場基準
http://www.jpx.co.jp/equities/listing/criteria/listing/

< 前提 >
右記数値:四季報浮動株比率24.1%、12/25終値@500ベース

・流通株式数:4,000単位以上 < 28,704単位
・流通株式時価総額:10億円以上 < 13.5億円
・流通株式数(比率):上場株券等の30%以上 > 24.1%


4.ご参考
(1)東証への届出
http://www.jpx.co.jp/markets/equities/off-auction-distro/

(2)用語解説
https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ta/tatiai.html


<感想>
 立会外分売は、分布状況の改善・流動性向上に加えて、公募売出し対比、(1)事務手続きが簡易(目論見書不要等)、(2)引受手数料(通常4%)より手数料割安、などのメリットもある。
 売却株式数がそれほど多くない場合に有効な手法であり、今後とも株式売却全体の一定程度は立会外分売が選択されるであろう。
 なお、上記3の流通株式数は、今回の分売を加味しても未だ30%には届かないため、追加の対策が必要なものと思われる。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/

----------------------------------------------------------------------

来年の通常国会で憲法改正を発議?


【 憲法改正に関する論点取りまとめ 】


 2017/12/20、自由民主党憲法改正推進本部から「憲法改正に関する論点取りまとめ」が公表された。
https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/136448_1.pdf


[ 憲法9条の自衛隊に関する両論併記 ]

1.9条1項・2項を維持した上で、自衛隊を憲法に明記するにとどめるべき

2.9条2項を削除し、自衛隊の目的・性格をより明確化する改正を行うべき(もともとの自由民主党の案)


[ 青山繁晴参議院議員の代案 ]
 同日の「ザ・ボイスそこまで言う」Podcast版で聴取した青山案(上記推進本部での発言)
http://www.1242.com/program/voice/

・9条3項に以下追記:
「本9条(1項・2項)は、自衛権の発動を妨げない」

< 理由 >
1.「自衛隊」の明記は「自衛隊」を固定化(国際法で保証されている(将来の)「国軍」を否定)してしまう

2.自衛権の発動については、old media(NHK、朝日新聞)を含めて、誰も反対しない


<感想>
 上記青山案は、両論併記1の変形版と言えよう。
 自由民主党憲法改正推進本部での議論は、来年の通常国会で憲法改正の発議まで持って行くような雰囲気だったらしい。
 将来の更なる改正への含みを残す意味でも意味のある代案だと思われる。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/

----------------------------------------------------------------------

東レと三井物産による曽田香料株式のTOB?


【 曽田香料:東レと三井物産によるTOB  】


 2017/12/22、曽田香料(4965)が、支配株主の東レ(3402)と三井物産(8031)によるTOBに伴う、上場廃止を開示した。
http://www.soda.co.jp/ir/


1.TOB前後の両社の株式保有比率

(1)TOB前の出資比率(位置付)
・東レ:50.03%(連結子会社)
・三井物産:15.01%(持ち分法適用会社)

(2)TOB後の議決権保有比率
・東レ:66%
・三井物産:34%


2.TOBの概要

(1)スケジュール
・2016/5:東レが対象者と成長戦略の協議・検討開始
・2016/7:東レが三井物産と企業価値向上の協議・検討開始

・2016/12:TOBの初期的申し入れ
・2016/1~3:デュー・ディリジェンス実施

・2017/5/10:両社の共同公開買付契約締結。国内外の競争当局と調整開始
・2017/8/7:TOBの適時開示

・2017/8/8~9/28:TOB期間(30営業日)


(2)TOB価格:1,140円(5/9終値@743の53.43%アップ)

(3)TOB 結果
・応募:3,294,607株
・総額:3,756百万円
 ⇒ 両社の97.99%


3.TOBに よる企業価値の向上

・TOBにより非上場化し、当社の株主を両社のみとした上で、 3社が三位一体となって事業推進を図ることによって、以下のような効果を期待することができ、もって当社グループの企業価値向上を図ることが可能であるとの認識を共有するに至っ た

(1)経営戦略遂行の迅速化
(2)競争力の強化
(3)人材の育成・登用の強化


<感想>
 本件は、支配株主である上場会社2社(東レ・三井物産)によるTOBの非上場化を通じて、企業価値の向上を目指したもの。
 少数株主の利益を毀損することなく、思い切った戦略を実施するために、このような支配株主によるTOBは益々増えて行くものと思われる。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------

事業法人同士の持合解消⇒自己株式取得(ToSTNeT-3)?


【 伊藤忠エネクスとシナネンHDの持ち合い解消 】

 2017/12/22、シナネンHD(8132)がToSTNeT-3で筆頭株主の伊藤忠エネクス(8133)から自己株式を取得した。
http://v4.eir-parts.net/DocumentTemp/20171222_014007275_11tjwq45mytj0euyq2hv1t55_0.pdf


1.取得の内容
(1)株数:2,104,000株
(2)価格:2,568円(12/21終値)
(3)総額:5,403,072千円
(4)取得日:2017/12/22
(5)方法:東証の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による買付け


2.理由
(1)これまで
・筆頭株主の伊藤忠エネクスと株式を相互に保有し、協力関係を維持、強化してきた

(2)持ち合いの見直し
・電力・都市ガスの小売り自由化など、事業環境が大きく変化
・経営環境の変化や資本効率の要請等から、株式の相互保有の見直しを両社で検討した結果、資本関係を解消後も事業等に影響はないと判断

⇒ 相互に保有する株式を売却する方針で合意

⇒ 資本の関係は解消しても、事業上の取引等において、両社はこれまでと同様の関係を継続していく

(3)自己株式取得の選択
・経営環境の変化に対応した機動的な資本政策にも資するものであると判断し、当該株式を自己株式として取得するものとした


3.今後の見通し
・18/3末までを目途に伊藤忠エネクス株式を売却する方針(具体的な売却の時期及び売却金額は未定)


4.伊藤忠エネクスのコーポレート・ガバナンス(CG)
http://www2.tse.or.jp/disc/81330/140120170614406321.pdf
(原則1-4)
・政策保有株式に関する方針
当社では、株式を保有することで中長期的な関係維持、取引拡大、ノウハウ獲得等当社の企業価値の向上に資すると認められる場合にのみ、お客様・取引先の株式を保有する方針としております。

(シナネンHDのCG)
http://www2.tse.or.jp/disc/81320/140120171101406148.pdf


<感想>
 本件は、事業法人同士の持ち合い解消に伴う(政策保有)株式の売却をToSTNeT-3の自己株式取得で受けたもの。
 CGが重視される中、資本効率向上的にも、このような持ち合い解消売りが益々増えて行くことが想定される。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと

発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------

年末のクロス取引による譲渡損失の損益通算?


【 株式のクロス取引による譲渡損失の損益通算 】


 2017/12/20、さいか屋が主要株主である筆頭株主の異動に関する開示をした。
http://dl.r7cms.jp/dl/3305-a53e20967355a14d0add349c725b2e92


1.取引の概要

(1)2017/12/20
売主:浅山忠彦
買主:SMBC日興証券
株数:621,200株

(2)2017/12/21
売主:SMBC日興証券
買主:浅山忠彦
株数:621,200株

⇒ オーバーナイトで買い戻すクロス取引


2.大量保有報告書(変更報告書)より

[ 株式併合前 ]
提出日:2017/2/28
保有株:6,154千株(発行済株式の18.7%)
取得資金:419,846千円
取得簿価:68.22円/株

[ 株式併合 ]
2017/9:10株を1株に併合
 ↓ ↓
保有株:615.4千株
取得簿価:682.2円/株

⇒ その後、追加で5,800株取得(621,200株-615,400株)


3.クロス取引の結果

前提:12/20終値@508で615.4千株をクロス取引
譲渡損失:174.2円/株(@508@ー@
682.2)
⇒ 総額:△107百万円


<感想>
 12月末までの個人の譲渡損失(△107百万円、上記3)については、(1)「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算」(「利益>損失」の場合)及び(2)3年間の「繰越控除」(「利益<損失」の場合)が可能となる。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1474.htm
 今年も残すところ、あと数日。税効果の観点から同様のクロスや株式売却を検討してみてはいかが。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/

----------------------------------------------------------------------

MBOを活用した抜本的改革?


【 鈴縫工業:MBOを活用した抜本的改革 】


 2017/12/19、鈴縫工業(1846)がMBO*を発表した。
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171219438712.pdf

*MBO(マネジメント・バイアウト):一般に、買収対象会社の経営陣が、買収資金の全部又は一部を出資して、買収対象会社の事業の継続を前提として買収対象会社の株式を取得する取引


1.MBO(TOB)の概要

(1)公開買付者:株式会社アサヒ
・株主:
鈴木良亮(当社取締役、鈴木一良社長長男)50%
鈴木達二(当社取締役、鈴木一良社長二男)50%

・役員:
代表取締役 鈴木一良当社社長(71歳)
取締役 鈴木正三当社専務(一良社長弟、67歳)、上記株主2名(44歳、43歳)

(2)買付予定数の下限
・6,957,000 株(所有割合:66.67%)

(3)TOB価格
・390円(12/18終値@327の19.3%プレミアム)
⇒ PER :13.1倍(EPS:29.7円、ROE:5.3%)

(4)TOB期間
・17/12/20~18/2/13(34営業日)

(5)デットファイナンス
・SMBCより4,274百万円(上限)
(発行済株式数10,597千株-自己株式162千株)×@390+205百万円


2.MBOに至った背景等

(1)MBO後の経営方針
・経営に直接関与しない少数株主が存在する上場企業としては取りづらい一定の事業リスクを背負ってでも、 経営者株主の責任において、中長期的な視点から抜本的かつ機動的に以下のような経営戦略を迅速かつ果敢に実践する必要があるとの考えに至る

(a) 首都圏を中心とした営業エリア拡大による民間受注増加やリフォーム事業の多店舗展開による収益増加

(b) ICT*施工システムの導入による生産効率改善
*Information and Communication Technology(情報通信技術)

(c) M&Aによる建設関連サービス**の拡充
**電気工事、通信工事、給排水工事、メンテナンス等


(2)株価への悪影響等の回避
・当社株主に対して発生する可能性がある上記悪影響・リスクを回避可能


(3)機動的・抜本的な経営戦略
・中長期的な視点から抜本的かつ機動的な経営戦略を迅速かつ果敢に実践可能


(4)所有と経営の一致
・所有と経営を一定の範囲で一致させることにより、意思決定の迅速化と施策の実行力強化を実現し、上記各施策を迅速かつ果敢に実行可能


3.株価/出来高推移
    株価     出来高
12/18 327円    2千株
12/19 327円    1千株
12/20 391~397円 706千株
12/21 389~391円 286千株


<感想>
 本件は、MBOを活用した非公開化により、(1)事業承継と(2)抜本的・機動的な経営戦略の実践を目指すもの。
 自社のみの力で改革等が可能な場合、将来のエクイティ部分の売却可能性(売却益⇒出資者・経営陣へ)等を考えると、ファンドによるTOBよりもMBOの方が望ましい。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuru1.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------

MBOを活用した抜本的改革?


【 鈴縫工業:MBOを活用した抜本的改革 】


 2017/12/19、鈴縫工業(1846)がMBO*を発表した。
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171219438712.pdf

*MBO(マネジメント・バイアウト):一般に、買収対象会社の経営陣が、買収資金の全部又は一部を出資して、買収対象会社の事業の継続を前提として買収対象会社の株式を取得する取引


1.MBO(TOB)の概要

(1)公開買付者:株式会社アサヒ
・株主:
鈴木良亮(当社取締役、鈴木一良社長長男)50%
鈴木達二(当社取締役、鈴木一良社長二男)50%

・役員:
代表取締役 鈴木一良当社社長(71歳)
取締役 鈴木正三当社専務(一良社長弟、67歳)、上記株主2名(44歳、43歳)

(2)買付予定数の下限
・6,957,000 株(所有割合:66.67%)

(3)TOB価格
・390円(12/18終値@327の19.3%プレミアム)
⇒ PER :13.1倍(EPS:29.7円、ROE:5.3%)

(4)TOB期間
・17/12/20~18/2/13(34営業日)

(5)デットファイナンス
・SMBCより4,274百万円(上限)
(発行済株式数10,597千株-自己株式162千株)×@390+205百万円


2.MBOに至った背景等

(1)MBO後の経営方針
・経営に直接関与しない少数株主が存在する上場企業としては取りづらい一定の事業リスクを背負ってでも、 経営者株主の責任において、中長期的な視点から抜本的かつ機動的に以下のような経営戦略を迅速かつ果敢に実践する必要があるとの考えに至る

(a) 首都圏を中心とした営業エリア拡大による民間受注増加やリフォーム事業の多店舗展開による収益増加

(b) ICT*施工システムの導入による生産効率改善
*Information and Communication Technology(情報通信技術)

(c) M&Aによる建設関連サービス**の拡充
**電気工事、通信工事、給排水工事、メンテナンス等


(2)株価への悪影響等の回避
・当社株主に対して発生する可能性がある上記悪影響・リスクを回避可能


(3)機動的・抜本的な経営戦略
・中長期的な視点から抜本的かつ機動的な経営戦略を迅速かつ果敢に実践可能


(4)所有と経営の一致
・所有と経営を一定の範囲で一致させることにより、意思決定の迅速化と施策の実行力強化を実現し、上記各施策を迅速かつ果敢に実行可能


3.株価/出来高推移
    株価     出来高
12/18 327円    2千株
12/19 327円    1千株
12/20 391~397円 706千株
12/21 389~391円 286千株


<感想>
 本件は、MBOを活用した非公開化により、(1)事業承継と(2)抜本的・機動的な経営戦略の実践を目指すもの。
 自社のみの力で改革等が可能な場合、将来のエクイティ部分の売却可能性(売却益⇒出資者・経営陣へ)等を考えると、ファンドによるTOBよりもMBOの方が望ましい。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/

----------------------------------------------------------------------

IPOの初値時点で受渡株式の大半が約定?


【 みらいワークスのIPO 】


 2017/12/19、みらいワークス(6563)が東証マザーズに上場し、初日は取引が成立せず、翌日にIPO価格の3.3倍で初値が付いた。
http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08217/8525ea93/81e8/4cd2/a90d/fd4ea21f2ed8/140120171219438204.pdf


1.IPO概要

・IPO価格:1,840円
・引受価額:1,692.8円(引受手数料8%)

(1)公募増資:170千株

(2)OA:25.6千株(GSO:第三者割当増資)

(3)売出し:44千株(個人等3名)

⇒上記(1)~(3)計:239.6千株(発行済株式数(下記3(b))の20%)


2.ビジネスモデル等

(1)ビジネスモデル
・5,700人を超える独立プロフェッショナルの中から、最適なメンバーを選定してプロジェクト・チームを組成し、クライアントの業務、IT、組織などの経営課題を解決する

(2)経営理念
・日本の未来の為に挑戦する人を増やす

(3)ビジョン
・プロフェッショナル人材が挑戦するエコシステムを創造する


3.各種指標等(IPO後)

・当期利益:98百万円(18/9期予想)(a)
・発行済株式数:1,195.6千株(前提:シンジケートカバー取引なし)(b)
・純資産:526.9百万円(17/9末+上記1(1)+(2))(c)

(1)EPS:82.0円(d=a÷b)
(2)PER 1:22.4倍(IPO価格÷d)
    PER 2:74.2倍(12/20初値6,080円÷d)
    PER 3:80.5倍(同終値6,600円÷d)
(3)ROE:18.6%(a÷c)


4.上場初日の初値決定前の気配運用について
http://www.jpx.co.jp/news/1031/20171218-01.html

⇒ 上場初日は取引成立せず(買い気配:4,325円)


5.規制措置(初値決定日まで)
http://www.jpx.co.jp/news/1030/20171219-01.html


6.上場翌日(12/20)の株価

(1)初値(10:23)時点のスクリーンショット
・初値:6,080円(IPO価格の3.3倍)
・高値:6,080円
・安値:5,870円
出来高:222,500株(上記1の239,600株の92.9%)

(2)全日
・高値:6,700円
・安値:5,420円
・終値:6,600円
出来高:585,500株(同2.4倍)


7.IPOの売出しでなく市場内で売却した事例
(ロックアップの対象外)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171220439148.pdf


<感想>
 初値時点(10:23)の出来高はIPO株式数に近いため、受渡株式の大半が約定されたもとの思われる。
 初値はIPO価格(今期の予想PER の22倍)の3.3倍(同74倍)だったため、会社・売出人にとってはIPO株数を抑えた方が良かったかもしれないが、流動性(上記1:流通株20%)的には、止むを得なかったように思われる。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuru1.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------


----------------------------------------------------------------------



----------------------------------------------------------------------

TOBを活用したビジネスモデルの大変革?


【 アサツーディ・ケイ:ベインキャピタルによるTOB 】


 2017/12/7、ベインキャピタル(「ベイン」)によるアサツーディ・ケイ(9747)のTOBが成立した旨の開示があった。
https://www.adk.jp/wp/wp-content/uploads/2017/12/1ef9c4e07f6db8f08ad8a7dfe5e4c393.pdf


1.広告業界のビジネスモデルの変化

旧:マスメディアの広告枠の卸売りを中心とした広告代理店型のビジネスモデル

新:消費者行動に直接働きかけてクライアントのマーケティング活動を支援する広告販促支援ビジネス


2.ビジネスモデルの変化に伴う会社の戦略

[ 有効な事業パートナーとの連携を通じた、オープンイノベーションの推進 ]

(1)「オープン・ネットワーク型」グループへの転換

・WPPとの資本業務提携の解消、特定の事業パートナーにとらわれることなく、多様な事業パートナーとの事業の特性に応じて連携する「オープン・ネットワーク型」グループへの転換


(2)ベインの事業改善ノウハウの活用と改革施策の推進

・非公開化を通じて意思決定プロセスの簡素化を図ることで改革スピードを上げ、ベインがこれまで蓄積してきた国内外の投資先における事業改善ノウハウを最大限活用し、ベインによる人的支援・経営管理体制に対する支援を受けながら大胆な改革施策を速やかに推進


3.TOBに至る経緯(概要)

(1)1998/8:世界売上No.1のWPPグループと資本・業務提携契約締結

(2)2016/2:非公開化取引を目的として、ベイン、WPPとの協議・交渉開始

(3)2016/11:上記協議終了

(4)2017/2:ベイン(単独)から初期的提案

(5)2017/8:ベインから最終提案

(6)2017/9:ベインを基盤構築・構造改革の一層の推進や中長期の成長に向けた当社の戦略を推進するスポンサーであると考えるに至る

(7)2017/10:TOBの発表、賛同の意見表明

(8)2017/11:TOB期間延長(~11/24⇒~12/6)


<感想>
 本件も昨日同様、公開買付者のノウハウを活用して、ビジネスモデルの大胆な変革を目指した事例と言えよう。
 グローバルな市場で戦うためには、このように他社のリソースの活用が有効であるように思われる。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら 
http://tsuru1.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------

TOBを活用した事業運営の大改革?


【 黒田電気のTOB 】


 2017/12/16、黒田電気(7517)のTOBが成立した。


1.TOBの結果
https://www.kuroda-electric.co.jp/asset/32575/view

(1)買付予定数の下限
 発行済株式:39,446,162株(a)
 自己株式数:  1,811,331株(b)
 自己株TOB:*9,256,500株(c)
 a-b-c=28,378,331株(d)
 下限:18,918,900株(e=d×2/3)

 *旧村上ファンド系の野村綾氏(一部)・(株)オフィスサポート・(株)レノの合算


(2)応募株式数
 25,709,019株>e


2.TOBに至った意思決定の過程・理由

(1)事業環境の変化
・電子部品専門商社業界:専門商社モデルのコモディティー化が進行
⇒ 与信・在庫・物流の基本機能の提供のみでは不十分であるという流れが加速

(2)スピード感
・スピード感をもってM&Aや資本業務提携等の実行、人材や設備への戦略的投資を積極的に行うことが必要

(3)戦略的投資
・抜本的な諸施策遂行には、人材や設備への戦略的投資を積極的に行うことが必要

(4)組織構造変革
・個々の事業の最適な成長戦略の遂行には、現在の商社事業を担う当社を頂点とする組織から、商社事業と開発・製造事業が並列的に位置付けられる経営管理体制への移行も必要

⇒ 上場を維持したままでは大規模な事業運営の変革を短期的に行うことは難しいとの判断に至る

⇒ MBKパートナーズグループ*からの非公開化の提案に賛同

 *日中韓3カ国でのプライベート・エクイティ投資に特化した独立系プライベート・エクイティ・ファーム


3.(株)レノの大量保有変更報告書より

(1)共同保有者(旧村上ファンド系)
・(株)レノ、野村綾・中島章智・(株)オフィスサポート・(株)青山不動産

(2)保有目的
・純投資

(3)保有株式数/保有割合/簿価
・15,009,100株/38.05%/324.0億円(@2,159/株)

(4)TOB売却総額/売却差益
 a)自己株TOB:248.8億円/46.1億円
 b)TOB:156.5億円/35.3億円
    合 計:405.3億円/81.3億円


<感想>
 本件は、そもそも旧村上ファンド系の大株主が38%超株式保有する中で、MBKのTOBに大株主・会社双方が賛同したもの。
 会社は、専門商社モデルのコモディティー化という事業環境の変化に対して、非公開化による、大規模な事業運営の変革を選択した。
 今後もこのようなTOBの活用(⇒TOBをテコとした大胆な改革)が増えて行くものと思われる。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------

TOB価格を二度上方修正?


【 日立国際電気のTOB 】


 2017/12/8、二度のTOB価格引き上げの末に、KKRによる日立国際電気(6756)のTOBがようやく成立した。
http://www.hitachi-kokusai.co.jp/news/2017/pdf/news171209.pdf


1.日立国際電気のTOB価格等の推移

(1)2017/4/26
・所与:時価総額2,150億円
a)TOB価格:2,503円(48.3%、1,242億円)
b)自己株式取得価格:1,710.34円(51.7%、908億円)

⇒ 8/9:TOB見合わせ(第三者委員会のネガティブな答申を踏まえて)


(2)10/11
a)TOB価格:2,900円(48.3%、1,439億円)
b)自己株式取得価格:1,870円(51.7%、992億円)
⇒ 時価総額2,432億円

(3)11/24
a)TOB価格:3,132円(48.3%、1,554億円)
b)自己株式取得価格:1,870円(同上)
⇒ 時価総額2,547億円

(4)業績上方修正、
      営業/当期利益
・当  初:175/114億円
・  7/26:225/145億円
・10/11:290/199億円

< TOB価格/PER(除自己株式)>
・  4/26:2,503円/23.1倍
・10/11:2,900円/21.0倍
・11/24:3,132円/16.6倍


2.エリオット(米ファンド)の動き

(1)大量保有報告書・変更報告書より
提出 義務 保有 備考
9/11 9/5 5.01% 9/5に*市場内取得(0.25%)
⇒ 5%超に(最近60日間では9/5のみ)
9/19 9/14 6.10% *9/5~9/14
9/28 9/27 7.11% *~9/27
10/12  10/11 8.59% *~10/11
12/12 12/8 0% *~10/13(8.83%)。12/8全株TOB応募

~10/11:平均単価@2,742.80
~10/13: 同 @2,750.50(10/12-13@簡易VWAPで取得と仮定)

⇒ 売却利益/売却総額:35.4億円/291.0億円(9,290,400株×@3,132)
(総投資額255.5億円(9,290,400株×@2,750.50))


(2)意思決定等の想定(例)
a)17/4/26~7/6:4.76%まで取得(しよう)
b)9/5:8.83%まで取得(しよう)
c)~11/24:水面下での交渉
・2,900円でのTOBには応募しない(ことにしよう)
・(日立との間では未解決のイタリア案件*もあるため)3,132円ならTOBに応募(して恩を売ろう)
*
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24488380R11C17A2000000/?n_cid=DSTPCS001


<感想>
 11/24のTOBに関する価格引上・期限延長を巡って、関係者の間では様々な駆け引きが繰り広げられていたものと想定される。
 当初のTOB総額からは1.45倍(3,132÷2,150)超となったが、業績の大幅な上方修正等も考慮すると、妥当な価格での着地だったと言えるのではないだろうか。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/

----------------------------------------------------------------------

経営陣への助言・提案に基づくToSTNeT-3?


【 テーオーシーのToSTNeT-3 】


 2017/12/6、テーオーシー(8841)がToSTNeT-3により、自己株式を取得した。


1.自己株式の取得
https://www.toc.co.jp/toc/news/pages/jikokabushiki_20171206.pdf

(1)理由
・資本効率の向上を図り、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を遂行するため

(2)取得の内容
a)株数:18,716,900株
b)総額:172.2億円(@920円/株)
c)取得日:17/12/6
d)方法:ToSTNeT-3
http://www.jpx.co.jp/equities/trading/tostnet/01.html
e)売主:エフィッシモ キャピタル、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行

(3)各種指標の変化
・純資産:1,053億円(17/9末ベース)
・当期純利益:239億円(18/3期予想。譲渡益299億円含む)

< 本件取得前後(除自己株式)>
・ROE:22.69%⇒27.12%
・EPS:196円⇒231円
・PER:5.4倍⇒4.3倍(12/14終値@993ベース)


2.エフィッシモ キャピタルの売却益等

(1)大量保有報告書
・2008/11:6.14%保有
・保有目的:純投資(ただし、うち8,404,500株については、投資一任契約に基づく顧客資産運用のため)

(2)変更報告書
・2017/11:16.74%保有
・保有目的:投資及び状況に応じて経営陣へ助言、重要提案行為等を行うこと
・株数/総額:22,917千株/125.4億円
・簿価:547.1円/株

(3)ToSTNeT-3での売却
・株数/総額:17,417千株/160.2億円
・売却益:64.9億円(簿価@547.1⇒TOB価格@920)


<感想>
 本件は、ほぼ10年に渡る、村上ファンド系のエフィッシモの出口戦略の一部。
 ToSTNeT-3で着地した背景には、上記2(2)の、経営陣への助言等があったものと思われる。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちらhttp://tsuruichi.blog.fc2.com/

----------------------------------------------------------------------

SECが岩井コスモ証券の行政処分を勧告?


【 行政処分の勧告 by SEC 】


 2017/12/12、証券取引等監視委員会が、岩井コスモ証券の行政処分を行うよう勧告した。


< 岩井コスモ証券に対する検査結果に基づく勧告について >
http://www.iwaicosmo-hd.jp/news/ic/release/discl20171212.pdf


1. 勧告の内容
 金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。


2. 事実関係
○ 公表前のアナリスト・レポートに記載される情報を用いて勧誘する行為及び当該情報の不適切な取扱い 

(1) 一部の顧客に対して公表前のアナリスト・レポートに記載される情報を用いて勧誘する行為

(2) アナリスト・レポートに記載される情報の取扱いが不適切な状況 

(3) 内部管理態勢が不十分な状況 

(4) 経営陣による不十分な態勢整備 

⇒ 当社における上記のような業務運営状況は、金融商品取引法第51条に規定する「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。

[ 関連法令 ](一部内容を等として抜粋)
金融庁設置法
(勧告)
第二十条 委員会は、金融商品取引法等の規定に基づき、検査等を行った場合において、必要があると認めるときは、その結果に基づき、金融商品取引の公正を確保するため、又は投資者の保護その他の公益を確保するため行うべき行政処分その他の措置について内閣総理大臣及び長官に勧告することができる。

金融商品取引法
(金融商品取引業者に対する業務改善命令)
第五十一条 内閣総理大臣は、金融商品取引業者の業務の運営等に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、当該金融商品取引業者に対し、業務の方法の変更その他業務の運営等の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。


<感想>
 本件は、公表前の、ポジティブやネガティブな内容が含まれたアナリスト・レポートを用いて勧誘を行っていた事案に対する行政処分の勧告。
 あまりにも基本的・初歩的な要因に基づくものであり、内部管理態勢の早期構築が期待される。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら 
http://tsuruichi.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------

佐川急便の持株会社がIPO?


【 SGホールディングス:東証1部新規上場 】


 2017/12/13、SGホールディングス(9143)が初値1,900円で東証1部に新規上場した。


1.IPOの条件決定
http://www2.sg-hldgs.co.jp/uploads/resources/newsrelease/2017/pdf/20171204_1.pdf

(1)売出し価格:1,620円

(2)売出株式数:78,775,400株
   国内 55,142,800株(OA 7,192,500株)

   海外 23,632,600株
  (国内:海外=7:3)

(3)価格決定の理由等
・売出価格等の決定に当たっては、仮条件(1株につき1,540円~1,620円)に基づいて国内外の機関投資家等を中心にブックビルディングを実施

[ 当該ブックビルディングの特徴 ]
1.申告された総需要株式数が、公開株式数を十分に上回る状況であったこと
2.申告された総需要件数が多数にわたっていたこと
3.申告された需要の相当数が仮条件の上限価格であったこと

⇒ 上記ブックビルディングの結果、売出株式数以上の需要が見込まれる価格であり、現在の株式市場の状況、最近の新規上場株の株式市場における評価及び上場日までの期間における価格変動リスク等を総合的に勘案して、1株につき1,620円と決定

(4)引受価額:1,543.86円(引受手数料4.7%)

(5)申込期間:2017/12/5~12/8

(6)株式受渡期日:2017/12/13


2.上場日当日(12/13)の価格
(1)まとめ
初値:1,900円(9:33)(売出価格の17%アップ)
高値:1,945円(9:45)
安値:1,867円(11:13)
終値:1,906円
出来高:56,530,100株

(2)特別買い気配値の推移等(一部抜粋) 
https://www.nomura.co.jp/terms/japan/to/tokukaikehai.html

時間 気配値 売数量・買数量(千株)
9:28 @1,782 9,958・19,612
9:32 @1,863 13,238・16,705

[ 初値時点の画面上数値 ]
9:33 始値1,900 高値1,928 安値1,900
   出来高15,575千株


3.各種指標
当期純利益:330億円(18/3期予想)(a)
発行済株式数:320,197,200株(自己株式含む)(b)
純資産:3,229億円(17/9末)(c)

・ROE:10.2%(a÷c)
・EPS:103.1円(d=a÷b)
・PER:18.5倍(12/13終値1,906円÷d)


<感想>
 時価総額6,103億円(上場日終値ベース)は、今年上場した銘柄では最大だと言う。
 上場初日の出来高は、OA含めた売出株数約79百万株/国内約55百万株の72%/103%に相当。売出しに申し込んだ(国内)投資家のかなりの数量が初日に売買されたものと思われる。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら 
http://tsuruichi.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------

NTT応募による自己株式TOB by ドコモ?


【 NTTドコモ:自己株式TOB 】


 2017/12/11、NTTドコモ(9437)が2017年度の自己株式TOBを発表した。


1.自己株式TOBに関するお知らせ
https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2017/12/11_00.html

[ TOBを選択した背景 ]
 株主が所定のTOB期間中に市場価格の動向を見ながら応募する機会を確保できるTOBの方法が、株主間の平等性、取引の透明性の観点からも、最も適切であると判断

(1)TOB期間:2017/12/12~1/15(20営業日)
(2)TOB価格:2,681円(12/8終値@2,882.5×93%)
(3)買付予定数(上限):93,248,787株(2500億円)
(4)NTTの応募意向:74,599千株(2千億円)
(5)ドコモの手元流動性:8,400億円(現金等)
(6)TOB価格ベースの配当利回り:3.73%
 (18/3期予想配当100円÷2,681円)
(7)2017/3期末のROA:8.76%
 (当期純利益6,525億円÷総資産7兆4,531億円)


2.2015年度の自己株式TOB
https://www.nttdocomo.co.jp/corporate/ir/binary/pdf/irnews/160308/notice_160308.pdf

(1)TOB期間:2015/2/8~3/7(20営業日)
(2)TOB価格:2,544円(2/4終値@2,765.5×92%)
(3)買付株式数:120,867,062株(全てNTTより)
(4)NTTの所有簿価等(2016/3期)
a)簿価:65.91円/株
b)関係会社株式売却益:299,520百万円
c)NTT単体の税前当期利益*:670,618百万円
 b÷c=44.7%(2017/3期の*:286,590百万円)

⇒ NTT:TOBに応じて、単体では(隔年で)多額の株式売却益を計上


3.みなし配当の益金不算入制度

・自己株式TOBの場合、法人(大株主)からの売却であれば、みなし配当の「益金不算入」制度(持株割合/益金不算入:(1)~5%/20%、(2)5%~1/3/50%、(3)1/3~/100%*)の活用が可能

⇒  NTT:ドコモ株を1/3超保有しているため、みなし配当の額から*負債の利子の額のうち関係法人株式等に係る部分の金額を控除した残額は益金の額に算入しないこととされている

https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2015_5/pdf/04.pdf


4.NTTドコモの経営方針・経営戦略
https://www.nttdocomo.co.jp/corporate/ir/management/strategy/index.html

[ 利益配分に関する基本方針 ](一部抜粋)

 自己株式の取得についても、弾力的な実施を引き続き検討していきます。取得した自己株式の保有については、原則として発行済株式総数の5%程度を目安とし、それを超える部分は年度末等に一括して消却することを検討していきます。


<感想>
 本件は、ドコモの利益配当方針(上記4)に基づく、NTTを売り手とした、2年振りのディスカウント自己株式TOB。
 2016年度は、ToSTNeT-3を含めた市場買付を4,571億円(平均@2,584)実施。
 今後も市場買付とTOBを織り交ぜながら、自己株式取得を継続して行くものと思われる。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/

----------------------------------------------------------------------

MUFGは政策保有株式を5年間で9千億円超売却?


【 MUFG:オムロン株式の売出し 】


 2017/12/11、オムロン(6645)が売出の条件決定をした。


1.売出し価格等の決定に関するお知らせ
https://www.omron.co.jp/ir/press/pdfs/20171211j.pdf

(1)売出株数:2,875千株
 三菱東京UFJ銀行:2,235千株
 三菱UFJ信託銀行: 640千株
 (引受価額ベース:計175億円)

(2)オーバーアロットメント:430千株
http://www.nomura.co.jp/terms/japan/o/overallotment.html

(3)売出価格:6,343円(△*3.01%)

(4)引受価額:6,081.40円(引受手数料4%)

<ご参考>
(1) 算定基準日・価格:2017/12/11・6,540円
(2) ディスカウント率:*3.01%
(3) グリーンシューオプション行使期間:12/19~12/22 
(4) シンジケートカバー取引:12/14~12/22


2.オムロン:売出しの目的
http://www.omron.co.jp/ir/press/pdfs/20171128j.pdf

・目的:個人株主層の拡大および株主構成の多様化をはかる


3.MUFGのコーポレートガバナンス・コード
http://www.mufg.jp/profile/governance/structure/pdf/report.pdf

【原則1-4】
■政策保有に関する方針
(一部抜粋)
◇近年、国際金融規制の強化やコーポレートガバナンス・コード導入など、政策保有株式を取り巻く環境は大きく変化しております。

◇当社及びグループ銀行では、このような環境変化を踏まえ、株式保有リスクの抑制や資本の効率性、国際金融規制への対応等の観点から、取引先企業との十分な対話を経た上で、政策投資目的で保有する株式の残高削減を基本方針とします。 

◇平成28年度は約1,490億円(グループ銀行単純合算、取得原価ベース)の政策保有株式を削減し、平成29年3月末時点の取得原価対Tier1比率 は17.9%から16.6%に低下しました。次期中期経営計画終了時(平成33年3月末)を目処に10%程度への縮小をめざします。

[ 削減額 ]
16年度:1,490億円(△1.3%)
17-20年度:7,565億円(△6.6%)
⇒ 本件175億円 × 43.3回分(相当額)


<感想>
 オムロン株式の売出しは、上記MUFGのコーポレートガバナンス・コードの政策保有株式の削減方針に則した売却であろう。
 MUFGは、今期以降、昨年度以上のペースで株式を売却する必要があるため、今後も同様の売出しが継続するものと思われる。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら
 http://tsuruichi.blog.fc2.com/

----------------------------------------------------------------------

主要株主の異動の開示が遅延?


【 主要株主の異動に関する適時開示 】


 2017/12/6、アマノ(6436)の掲題開示が遅延していた。


1.主要株主の異動に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171206431581.pdf

・2017/9/20付で、シルチェスター(英国の投資ファンド)より大量保有報告書の変更報告書が関東財務局に提出された時点において、主要株主の異動を遅滞なく知らせるべきにもかかわらず、開示時期が遅延したことをお詫び

 異動前(2017/7/31現在):議決権割合10.79%
 異動後(2017/9/19現在): 同 9.74%


2.重要事実(インサイダー取引規制上の)
http://www.jpx.co.jp/glossary/sa/197.html

・主要株主:議決権の10%以上を保有する株主

⇒「誰が主要株主になったのか」「誰が主要株主でなくなったのか」は、重要事実の発生(金融商品取引法第166条第2項第2号ロ)に該当するため、適時開示が必要


3.適時開示が求められる会社情報
http://www.jpx.co.jp/equities/listing/disclosure/01.html

[ 上場会社の発生事実 ]
2.主要株主又は主要株主である筆頭株主の異動


4.適時開示に違反した場合
http://www.jpx.co.jp/equities/listing/measure/01.html

・東証は、改善の必要性が高いと認められるときは、改善報告書の提出を求めることとしている

⇒ 本件は、改善の必要性が高くないと認められるため、改善報告書の提出は不要と思われる


<感想>
 会社として実質所有株式数の確認ができなくても、株主から提出された大量保有報告書(変更報告書)に基づいて、主要株主の異動に関する適時開示は必要となる。
 会社情報の適時開示は、投資者にとって大変重要なものと位置付けられるため、タイムリーであることが必要であろう


----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------

償還直前でのCBコールオプション行使?


【 牧野フライス製作所:ユーロCBの130%コールオプション行使 】


 2017/12/8、牧野フライス製作所(6135)が、ユーロ円CBの130%コールオプションを行使した。


1.2018年満期ユーロ円CBに係るコールオプション条項の権利行使に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171208432655.pdf

(1)繰上償還する銘柄 牧野フライス製作所2018年満期ユーロ円CB
(2)繰上償還対象総額 残存CB全部97億円(額面)(2017/12/7現在)
(3)転換請求最終日 2018/1/12
(4)繰上償還期日  2018/1/17
(5)繰上償還金額  CB額面金額の100%


2.130%コール(繰上償還)オプションの概要
http://ke.kabupro.jp/tsp/20130228/140120130220089352.pdf

・株価が転換価額の130%以上(パリティ:130円以上)に上昇した場合に、発行会社がCBの所持人に対し、額面金額(@100)で繰上償還できる条項

[ 狙い ]
・株式への早期転換促進による資本増強を期待

[ CB投資家の行動 ]
・130円以上の価値があるのに100円で償還(上記1(4)の1月17日に)されたくはない

⇒通常、株式に転換(上記1(3)の1月12日までに)した上で株式を市場売却して差益を得る


3.エクイティ/デット目線からの望ましい着地(一般論)

(1)エクイティ:株式投資家目線
・CBが株式に転換されることなく、CB(デット)のまま償還して欲しい
⇒転換による株式希薄化は望まない(デットのレバレッジ享受を望む)

(2)デット:レンダー目線
・CBが株式に転換されて、CB償還が不要になって欲しい
⇒既存レンダー宛て返済可能性確率がその分上昇する(現預金が維持され、財務基盤(自己資本)も強化される)


4.発行会社の選択肢(オプション)

[ 2017/9末時点 ](2012/12末時点)

・現預金:537億円(367億円)
・純資産比率:51.4%(47.7%)
・純資産1,332億円(899億円)÷総資産2,592億円(1,886億円)


(1)コールオプションを行使する
・当初CB発行金額120億円の内、現在97億円が未転換のまま

(a)早期の純資産比率向上(⇒財務基盤の強化)
(b)投資家が転換請求し忘れることを期待(⇒株式へ転換されることなくCBを@100で償還)

(2)コールオプションを行使しない
・約3ヶ月後の償還期日(2018/3/19)を待つ

(c)数ヶ月程度早期に純資産比率を向上する必要なし(上記(a)との比較)
(d)投資家が転換請求し忘れてCBのままでの償還(@100)を期待(上記(b)との比較)


<感想>
 純資産比率50%超/現預金527億円(総資産対比20%超)の当社にとって、これ以上の純資産比率向上のニーズはなく、現預金での償還が本当はベストなようにも思われる。
 メインのシナリオにはなり得ようもないが、上記4の(b)と(d)の比較において、「発生確率が(b)>(d)」という判断も多少はあったのではなかろうか。


----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら 
http://tsuruichi.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------

自己株式取得のROE・PER等へのインパクト?


【 自己株式取得前後の各種指標の変化 】


 2017/12/7、日比谷総合設備(1982)が自己株式TOBの結果の開示をした。自己株式取得がROE等の各種指標にどの程度影響を与えるかを確認してみたい。


1.自己株式TOB等に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171204429933.pdf


2.前提となる数値(17/9の半期決算短信)
http://www.hibiya-eng.co.jp/assets/files/irnews/2017_11_07_30_2qkessan.pdf

(1)自己資本:665億円(a)
(株主資本625億円+その他包括利益40億円)

(2)発行済株式数:31,000千株(b)
   自己株式:2,115千株(c)
   b- c:28,885千株(d)

(3)18/3期予想当期純利益:73億円(e)


3.自己株式TOBの概要
・取得株数:4,494千株(f)
・取得総額:110億円(g=f×@2,453)
⇒自己資本:555億円(h =a-g)


4.各種指標の変化(TOB前⇒TOB後)

(1)ROE
・11.7%(e÷a)⇒ 13.2%(e÷h)

(2)EPS
・253円(i =e÷d)⇒ 299円(j =e÷(d-f))

(3)PER(12/8終値@2,322(k)ベース)
・9.2倍(k÷i)⇒ 7.8倍(k÷j)

(4)配当利回り
・2.4%(予想配当60円÷TOB価格2,453円)
(ROA:8.5%。70億円÷826億円(17/9末))


5.ホンダの自己株式取得事例

(1)上記4の数値
・資本合計:7.6兆円
・自己株式取得:0.1兆円
⇒(自己)資本が大き過ぎて、自己株式取得をしてもほとんど変化ない(ため計算省略)

(2)配当利回り
・18/3期予想配当:96円/株(l)
・平均取得価格:3,628円/株(m)
(取得総額870億円÷2400万株)

[ 配当利回り ]
・税引後:2.65%(n=l÷m)
・税引前:3.92%(o=n÷(1-p))
(法人所得税率:32.53%(p)。17/3期:法人所得税費用0.33兆円÷税前当期利益1.01兆円(q))
・税引前ROA:5.31%(r =q÷総資産19.0兆円)

・「o<r」⇒ 資金を「自己株式取得」より「本業(営業活動)」に回した方がベター(と言えよう)


<感想>
 自己株式取得比率に従って(日比谷総合設備:自己資本の16.6%(g÷a)、発行済株式の14.5%(f÷b))、ROEやPER等は算数的に変化する。
 後講釈的な話で恐縮ながら、11/9高値の2,798円はTOB価格の1.14倍と、EPSの1.18倍(j÷i)にほぼ近い値となっていた。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/

----------------------------------------------------------------------

新海誠の原点に触れられる?


【 新海誠展 】


 先日、国立新美術館に「新海誠展」を観に行った。
http://shinkaimakoto-ten.com/tokyo/

 以下は、インタビュー記事(「故郷の表情豊かな風景と東京の淀んだ風景」)からのキーワードの抜粋。


1.パソコンで絵をつくる
・小学校高学年の頃からパソコンに触れていた
・自分の組んだプログラムが正確であれば、想像通りの絵が表示される、それが嬉しい


2.人のいない風景
・長野県南佐久郡小海町で育つ
・すごく空の表情が豊かな場所
・高校時代、片道40分くらい電車に乗って通学
・行きは東側の窓際に座り、帰りは西側の窓際に座って、朝日と夕日と窓の外に広がる風景を3年間、眺め続けていた
・高校3年の終わりの春休みは野山を駆け回った
・自分が好きだったまちの風景を思い出せば、東京でしんどくなったときもなんとかやっていけるかな、みたいな気持ちがあった


3.積極的に美しいと思えるものを見つける
・東京の中にもある美しさを意識的に探すようになった
・遠くのマンションとかビルの窓に朝日や夕日が反射して、街中に複数の光源ができてキラキラして見える
・同時に人との出会いがあって思い出が積み重なっていくと、なんだか悪くない風景に思えてきた
・自分の感情や記憶によって、同じ風景がきれいなものに見えてきた


【 感想 】
 新海誠作品に、空や朝日や夕日、(田舎の)まちが美しく描かれているのは、高校時代に小海町の自然を吸収し尽くしたからなのだろう。
 大好きな「言の葉の庭」は、上記3の東京の中にもある美しさが描かれた作品と言えよう。
 新海誠作品の原点に触れられた気がした、あっという間の2時間だった。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/

----------------------------------------------------------------------

非公開化 by TOB ⇒ IPO + 相対譲渡?


【 マクロミルに見るベインの戦略 】

 2017/12/7、ベインキャピタルのアサツー ディ・ケイ(9747)へのTOBが成立した。
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171207432010.pdf

 今日は、先行事例として、マクロミル(3978)における、TOB(非上場化)⇒(出口戦略)IPO+株式相対譲渡に至る、大きな流れを確認してみたい。


< ベインによるTOB ⇒ IPO・相対譲渡 >

1.2014/2:TOB(非上場化)

(1)TOB総額
・約514億円(a)
(@786×65,367千株)

(2)2017/3のIPO前発行済株式数
・37,858,800株(b)

(3)ベインの取得簿価
・1,357円/株(c = a÷b)


2.出口戦略

(1)2017/3:IPO
・売出し
国内:15,722,200株
海外:9,295,000株
合計:25,017,200株(d)
総額:約467億円(e=d×引受価額@1,867.78円(f))

・売却益:約128億円(g=(f-c)×d)


(2)2017/12:株式相対譲渡
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171205431072.pdf

・譲渡株数:5,731,600株(h)
・手法:ToSTNeT-1
・相手先:大和証券(直ちに転売予定)
・売却益:約81億円(i=h×(@2,774.306(j)*- c))
・総額:約159億円(k=h×j)
*EDINET:マクロミルの大量保有変更報告書より

(3)売却後
・保有株数:5,975,900株(現発行済株式の15.4%)
・売却益総額:約209億円円(g+i)
・売却総額:約626億円(e+k)> a+約112億円


<感想>
 TOBによる非公開化から、出口(約85%売却)のIPO・相対売却まで約3~4年。
 資金がファンドに流れる状況は今後も継続し、ファンドによるこの種の取組はまだまだ続くような気がする。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/

----------------------------------------------------------------------

資本金・資本準備金、半々ではない?


【 資本金・資本準備金の仕訳 】


 2017/12/5、ダイフク(6383)の公募増資の発行条件が確定した。

1.発行価格等の決定に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171205430501.pdf

(1)払込金額の総額:13,929百万円
(2)増加する資本金の額:13,929百万円
(3)増加する資本準備金の額:ゼロ

⇒ よりフレキシブルに対応可能な「資本準備金」に半分計上するケースが大半だが、本件では全額「*資本金」に計上している

「*資本金」取り崩しには、(a)「株主総会の特別決議」と(b)「会社債権者保護手続き」が必要となるため、「資本準備金」の方が取り崩し易い点ではベター
(ご参考:
https://biz.moneyforward.com/establish/capital-stock-capital-reserve-capital-surplus/


2.資本金/資本準備金(2017/3期)

・資本金(Common stock):15,016百万円
・資本準備金(Capital surplus):15,915百万円

⇒ 海外比率が高い**ため、英文財務諸表上の「Common stock」(資本金)の額を増加(+13,929百万円。これまでの1.93倍)させたかったのではないか?
**四季報秋号:66%


3.会社法第445条

(資本金の額及び準備金の額)
 株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。
2 前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。
3 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。


<感想>
 会社の戦略の違いによって、調達資金の仕訳方法一つとっても会社毎に違ってくる。
 常に、全社的な視点で考える癖を付けて行く必要がありそうだ。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/

----------------------------------------------------------------------

売出し+ToSTNeT-3+相対譲渡による株式売却?


【 芝浦メカトロニクス株式の行方 】



 2017/12/4、芝浦メカトロニクス(6590。「東芝メ」)株式に関して、複数の開示があった。


1.売出し
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171201428809.pdf

(1)売出人:東芝(6502)
(2)株数:8,337千株(発行済の16.25%)
(3)条件決定日:2017/12/12~15
(4)OA:*1,250千株(発行済の2.4%)
*東芝は、SMBC日興証券(主幹事)宛、(a)同数の株式を貸して、(b)追加的に買い取る権利(グリーンシューオプション( GSO)**)を付与
**
https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ku/greenshoeoption.html


2.自己株式取得(ToSTNeT-3での売却)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171204430222.pdf

(1)取得方法:12/6午前8:45のToSTNeT-3(12/5終値@448円)
(2)株式総数:5,357千株(総額24億円)
(12/4公表分:上限株数:5,452千株(発行済の10.63%)、上限金額:24億円)


3.信越エンジニアリング*との資本業務提携(株式相対譲渡)
*信越化学工業(4063)の完全子会社
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171201428766.pdf

・東芝より株式取得
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171201428758.pdf
(1)数量:2,597千株(発行済の5%)
(2)買付日:売出価格等決定日と同一


4.ニューフレアテクノロジー*との資本業務提携(株式相対譲渡)
*東芝デバイス&ストレージ50%出資等(東芝の連結子会社)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171201428755.pdf

(1)東芝より株式取得
 a)数量:1,600千株(上限)
 b)数量等決定日:2017/12/6(上記2の自己株式取得の結果で数量を決定)

(2)市場での買付け(追加取得)
 a)数量:上記4(1)東芝からの取得との合算で2,597千株(発行済の5%)
 b)時期:POの受渡日以降


5.東芝の売却株数
http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20171204_1.pdf

(1)信越エンジニアリング宛売却:2,597千株(上記3。5%)

(2)売出し(上記1)+ToSTNeT-3での売却(上記2)+ニューフレアテクノロジー宛売却(上記4)の合計:11,187千株(21.5%)

(3)上記合計:13,784千株(26.5%)

⇒ 売却後の所有株数:5,193千株(10%)


<感想>
 本件は、(1)売出し(+ GSO)、(2)自己株式取得、(3)資本業務提携(株式相対譲渡)、を絡めた、東芝による東芝メ株式の売却。
 今後、世の中の進展に対応するために、単純な株式売出しのみではなく、本件のように、戦略的な複合ミックス的な売却手法が増えて行くように思われる。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら
http://tsuruichi.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------

村上ファンドがTOB中の株式を大量取得?


【 村上ファンドの出口戦略 】

 2017/12/4、村上ファンド系の(株)オフィスサポートが、東栄リーファーライン(9133)株式に関する、変更報告書(大量保有報告)を提出した。


1.変更報告書(大量保有報告)
http://www.kabupro.jp/edp/20171204/S100BVX7.pdf


< (株)オフィスサポート+(株)レノの合計 >
・株数:706,600株(11.68%)
・簿価:422,741千円(598.27円/株)
・目的:投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為等を行うこと
・期間:2017/11/10~11/27


2.東栄リーファーライン:TOB(MBO)の開示(2017/11/8 15:00)
http://ir.toeireefer.co.jp/pdf/toeireefer20171108_01.pdf


< TOBの概要 >

・価格:600円/株
・期間:2017/11/9~2018/1/11(40営業日)
・下限:3,689,400株((全株式6,050千株-自己株式514,757株)×66.7%)

< 株価推移 >
11/8 518円(TOB開示日終値)
  9 596円(同翌日)
 30 609円(村上ファンド系の大量保有報告16:32)
12/1 640円
  4 681円
(12/2日経朝刊に記事掲載)


3.黒田電気(7517)の事例

(1)村上ファンド系列(共同保有者5名)の保有株数等
http://www.kabupro.jp/edp/20171107/S100BN3F.pdf
・株数:15,009,100株          (a)
・簿価:32,398,312円/2,158.6円/株(b)
・目的:純投資

(2)出口:MBK(日中韓3ヶ国企業への投資ファンド)による友好的TOB
https://www.kuroda-electric.co.jp/asset/28358/view(その後訂正あり)


< TOBの概要 >

・TOB価格:2,720円          (c)
・TOB期間:2017/11/2~12/15(30営業日)

(3)株式売却利益
・約84億円(a×(c-b))


<感想>
 上記1は、上記2のTOB(MBO)開示の翌日から、株式取得をスタートしたもの。
 上記3の流れとは全く異なるが、TOB価格が低すぎるとの判断の下での株式取得かと思われる。
 最終的に、(1)TOB(MBO)が成立するのか、(2)MBOに代わる投資家が出てくるのか等、今後の動向が注目される。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら
http://tsuruichi.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------

メーカー以外においても内部統制は大切?


【 内部統制の開示すべき重要な不備 】


 2017/11/30、コシダカHD(2157)が内部統制の不備に関する開示をしていた。


1.財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171130427708.pdf


2.会計監査人からの指摘

(1) 多岐にわたる勘定科目の残高の誤り

(2) 関係会社株式評価プロセスの運用不備

(3) カラオケ事業におけるカード未収売掛金の適切な消込処理の不備

(4) 会計監査人及び内部監査での指摘事項に対する適切な対応が取られなかったこと 


3.原因

(1) 残高を照合する手続が定められていなかったこと

(2) 信頼性のある財務報告の作成を支えるのに必要な能力を有する人材を経理部門に確保・配置しておらず、職務の遂行に必要な教育訓練等が不足していたこと

(3) 年度中に内部監査人が退職し期末日時点までに適切な能力を有する内部監査人を配置できなかったこと

(4) 会計監査人及び内部監査からの指摘事項が適切に調査され、必要な対応が取られなかったこと

⇒ これらの全社的な内部統制及び決算・財務報告プロセスに係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高く、開示すべき重要な不備があると判断した


4.事業年度末までに是正できなかった理

(1) 採用条件が合致せず体制整備に必要な経理人材確保が出来なかったこと

(2) 期末直前に経理担当者が退職したことが重なったため、期末日までに適切な経理体制を構築することができなかったため

(3) 内部監査人に関しても後任の採用に時間がかかり期末日までに必要な能力を要する人材の確保が出来なかったため


5.会計監査人(新日本有限責任監査法人)の退任
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171201428510.pdf


<感想>
 ここ最近、メーカーの内部統制の不祥事が相次いでいたが、本件はメーカー以外のサービス業界で発生した事例。
 会計監査人・内部監査の指摘事項に対する適切な対応が取られなかった社内態勢に一番の問題がありそうだ。
 会計監査人が退任する等、問題の根は深そうで、今後の改善策等が注目される。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuruichi.blog.fc2.com/

----------------------------------------------------------------------

IRを通じた流動性向上?

  
【 フィル・カンパニー:株式市場における認知  】 


 2017/11/30、フィル・カンパニー(3267)が第三者割当増資の払込に関する開示をしていた。


1.第三者割当による新株式発行の払込完了に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171130427520.pdf


2.第三者割当による新株式発行及び業務提携に関するお知らせ

< 開示日時:11月7日15:20 >
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120171107411089.pdf


3.出来高/株価推移/予想PER等 

(1)2017/10 (1ヶ月間、22営業日)
・出来高:2,183,000株/
     平均99,227株/日 (a)
・高値:2,150円(10/12)  (b)
・安値:1,780円(10/19) 

(2)2017/11 (1ヶ月間、20営業日)  
・出来高:27,169,700株/
     平均1,358,485株/日(c)
・高値:5,080円(11/27)  (d)
・安値:1,811円(11/7) 

(3)上記(1)と(2)の比較
・平均出来高:約13.7倍(c÷a)
・高値:約2.4倍(d÷b)  

(4)予想PER 等
・予想当期純利益:180 百万円(e)
・発行済株式数:5,070千株   (f)
・EPS:35.5 円                 (g=e÷f)
・12/1終値:3,700円     (h)
・PER:104.2 倍    (i=h÷g)

⇒平均PER・20倍前後*を基準とすれば、現状のPERが100倍強であるため、今後の利益水準は5倍になると想定していると考えられる*
http://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/misc/nlsgeu000002t30k-att/j_perpbr201711.pdf  


<感想>
 本件は、知名度が低かったために、市場流動性が低位に留まり、結果として値動きも少なく、株価も抑えられていた典型例のように思われた。
 このような業務提携等のIRを通じて、投資家に会社内容を知ってもらうことの大切さを改めて感じさせられた事例である。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら  http://tsuruichi.blog.fc2.com/

----------------------------------------------------------------------
FC2プロフ
プロフィール
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
CEO (4)
夢 (8)
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR