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「企業のリアル」⑥



「企業のリアル」(田原総一朗×若手起業家、プレジデント社)より

ライフネット生命社長  岩瀬大輔

1976年、埼玉県生まれ。開成高等学校、東京大学法学部卒業、在学中に司法試験合格。ボストン・コンサルティング・グループなどを経て、米ハーバード・ビジネススクール留学。2006年ライフネット生命保険の設立に参画。08年、同社取締役副社長、09年2月より代表取締役副社長。13年6月より、代表取締役社長に就任。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダー2010」選出。著者に『入社1年目の教科書』『入社10年目の羅針盤』など。

 セールスレディの数が営業力を左右すると言われる生保業界において、ネット販売で営業職員ゼロという革命を起こしたライフネット生命。同社を出口治明会長と二人三脚で創業したのが、岩瀬大輔氏だ。岩瀬氏は、ハーバード・ビジネススクールを上位5%の成績で卒業。日本きってのエリートが、旧態依然の業界で起業した理由とは。


  74年ぶりに
  新規参入したわけ


  起業のきっかけは留学中のブログ


岩瀬  当時は堀江貴文さんが逮捕される少し前で、村上ファンドの村上世彰さんが世間から叩かれていました。でも、僕は日本には投資家が足りないし、誰もリスクを取っていないことが問題だと思っていて、村上ファンドを擁護する記事をブログに書きました。それを読んで、「バランス感覚がいい」と評価してくれたようです。

田原  なるほど。それにしても、どうして生命保険だったのですか。日本の生保業界は大手の寡占状態でしょう。ベンチャーでもいけるという確信はあったんですか。

岩瀬  きっかけは、投資家の方からの提案です。僕のまわりはモバイルとか技術系のベンチャーばかりなので、保険業界と聞いて直感的に「意表をついておもしろい!」と思いました。冷静に考えても、僕が留学中に聞いた「大きく伸びるベンチャービジネスの三つの条件」に生保はあてはまっていました。

まず、一つは、「みんなが使っているものを対象とせよ」。これは大きい市場を狙えという意味です。次に「みんながわずらわしさを感じているものを対象にせよ」。これは大きな非効率がある市場がいいということ。そして三番目が、「技術革新や規制緩和で、そのわずらわしさを取り除く可能性のあるものを対象とせよ」。生保が、どれもあてはまるのです。


  古くて変化のない業界こそチャンス

岩瀬  護送船団のせいでしょう。日本の生命保険会社は戦後、1946年に21社で再出発をしました。72年にアリコを筆頭にアフラックなどが参入。96年に子会社を通した生命保険と損害保険の相互参入が自由化されたため、あらたに10社が参入、43社になりました。ということは戦後、外資と損保以外の新規参入はずっとなかったということになります。不思議に思って、最後に親会社として保険会社の資本が入っていない新しい保険会社ができたのはいつかと調べてみたら、34年でした。起業しようという人がいなかったわけではありません。当局が免許を出さないから、新規参入がなかったんです。

 逆に言うと、古くて変化のない業界だからこそ規制緩和でベンチャーにもチャンスが生まれます。生保業界の規制緩和は少しずつだったのですが、2006年の保険料自由化で大きく前進しました。保険料は死亡率によって当局が決める部分と、各社の手数料の部分にわかれていますが、以前は手数料でも規制があり、護送船団で一番弱いところに合わせた値段にする必要がありました。ただ、06年から手数料は各社の経営判断で決めていいことに。僕が保険業界に飛び込んだのも、そのタイミングでした。


  禁断の保険料内訳を公開して躍進

田原  岩瀬さんたちは06年に準備を初めて、08年に認可を取りました。会社は何人で始めたのですか。

岩瀬  準備を始めたときは出口と二人です。溜池山王の雑居ビルにほかのベンチャー数社と共に居候して、何もないところからスタートしました。

 インターネットで直接販売しています。お客様の平均年齢がちょうど36.9歳で、僕は今37歳(編集注 2013年6月現在)。僕らの世代は営業職員に会っている時間もないし、そもそも押し売りされるかもしれないから会いたくない。それなら自分でネットで調べて選ぶから安くしてくれと考える人が多い。そういう需要が必ずあるはずだと思って、インターネットでの直販にしました。

 商品は基本的に(大手生保と)同じです。ただ、僕らは特約などをそぎ落として、ほんとうにシンプルな保険だけにしています。うどんで言うならトッピングのない素うどんです。生命保険は災害時の非常食みたいなものだから、デラックスである必要はないというのが僕らの考え方です。

 年齢や商品によって違いますが、一番差がある例でいうと、30際の人が保険金3000万円の掛け捨ての10年定期保険に入ると、うちの場合は月々3500円ぐらいで、大手さんは7000円ぐらい。10年で約40万円の差が出ます。

 あるインターネットの記事がきっかけでした。じつはその記事で、われわれが保険料の手数料の内訳を公表したのです。たとえば、僕らは月々約3500円の保険料で、お客様に保険金として返す分は約2700円。つまり手数料は約800円です。大手は月々約7000えんですが、この2700円部分は同じなので、手数料は4300円になる。これを開示したら騒然となって契約数が1日40件前後に。その後に、週刊誌上でプロが選ぶ生命保険ランキングで1位になったこともおおきかったですね。契約数が1日40件から60件に増えました。


  楽天参入で新たな価格競争に!?

岩瀬  契約件数は17万件(編集注 2013年6月現在)を超えました。ただ生命保険の場合は、システムなどの初期投資が大きいため、まだ黒字化していません。生命保険は法律上、10年以内に黒字化する必要がありますが、さらにペースを速めて前倒ししたいと考えています。

田原  岩瀬さんにとって、このビジネスのおもしろさは何ですか。

岩瀬  業界の常識を変えていくところでしょうか。僕らがやり始めたころ、生命保険をネットで買う人なんて誰もいないと言われていました。でも、いまや世界中の保険会社が僕らのところに話を聞きにやってきます。世界の生保業界で誰もやっていなかったことをやるのは、やはりおもしろい。

 ブランドが大事なのかなと考えています。若い世代の間で、僕らは誠実さと透明性を武器にして古い業界に一石を投じる新しい世代を代表する会社だというイメージを持ってもらっています。そのイメージを強調していけたらいいなと。


  経営者は文化芸術を支えるべき


岩瀬  文章だけでなく、文化活動とか芸術全般が好きです。海外のビジネスマンは、成功したらアートやチャリティーに社会貢献をする人が多く、かつては日本にもそういう経営者がたくさんいましたが、僕らの世代はほとんどいない。だから仲間を文楽に誘ったり、一緒にアートを買いにいったりして、アートにもっと興味を持とうよという運動を密かにやっています。

田原  たとえばアサヒビールの樋口廣太郎はオペラにものすごいお金を使った。電通の成田豊も、劇団四季を支えていましたね。たしかに最近は文化芸術を支える経営者がいなくなった。

岩瀬  僕らの世代の起業家が世間からリスペクトされない原因も、そういうとこにあるんじゃないかと思っています。起業家は会社の利益を追求するだけじゃなく、社会と共生したり貢献する姿勢を示さないとリスペクトされません。そこに気づいた人は、僕らの世代でもTシャツじゃなくてスーツを着ていますし、文化・芸術の保護にも積極的です。楽天社長の三木谷浩史さんは最近、東京フィルハーモニーの理事長になられた。そこは先をいかれています。


対談を終えて

  現状に満足しないベンチャー精神の塊だ

 戦い方もユニークだ。岩瀬さんは、これまで業界が秘密にしてきた保険料の内訳を公開。自社と大手との手数料の違いを浮き彫りにして、お客さんの心をつかんだ。これは既存の大手にはできない戦い方だ。現状に満足せず、将来について意欲的に語る姿も印象的だった。


>>私も現状に満足せずベンチャー精神を持ち続けて、業界の常識を変えて行きたい


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