「気骨」について
対談集「気骨」について(城山三郎、新潮文庫)より
今こそ少しだけ無理をしてみないか 大賀典雄
城山 そういうとき、途中であきらめることはないんですか。
大賀 それはありません。絶対にできる、これは行くよと言うんですね。といっても、私は野放図に楽天的というわけでもないですよ。初めに、いまの技術からしたら、こいういうカーブで進んでいくに違いない、ということを考えてみて、ちょっと無理かなというところに期日を置く。ほんとうに無理なところに目標をおいたら、それはできません。
城山 私が作家になったとき、伊藤整という先輩の作家が、あなたに一つだけアドバイスしておくと言うので、何ですか?と聞いたら、「あなたはいつも自分を少々無理な状態の中に置くようにしなさい」とおっしゃったんです。私は、これは非常にいいアドバイスだったと思いますね。まったく無理な状態だと、いいものはできませんし、体を壊したりもします。かといって、まったく自然な状態でもまたいい仕事はできない。だから、いつも自分を少々無理な状態にせよと。いまうかがっている話と同じですね。
大賀 ええ。やはり少々無理な課題をいつも自分に課しておくことですね。それがちょうどいいテンション(緊張感)になる。頭の体操に一番いいのはテンションなんですね。少しだけ無理なテンションがかかっていると、いつもそのことを考えている状態になる。
>>いつも少しだけ無理な課題を自らに課し続けて行きたい