何日かで1知識
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思わず人に話したくなるストーリー?

 

【 ストーリーとしての競争戦略 】

 


 先日、「ストーリーとしての競争戦略 ~優れた戦略の条件~ 」(楠木建著、東洋経済新報社、https://str.toyokeizai.net/books/9784492532706/)を読み返してみた

 

 以下は一部抜粋(その7)

 


戦略ストーリーの「骨法10カ条」
あらゆるジャンルに共通した原理原則

 

骨法その8 競合他社に対してオープンに構える 
「オープンに構える」というのは、競合他社に対して防御的(defensive)な構えをとるべきではないという意味です。 自信を持てるストーリーさえあれば、競争相手の反応に対して鷹揚に構えていることができます。逆にいえば、競争相手に対してオープンな構えを自然に取れる程度に自信を持てるストーリーを描くことが大切だということです。
 反対に、ストーリーの一貫性よりも特定の構成要素に強みを大きく依存している企業は競合他社に対して防御的にならざるをえません。 まずは自分の頭を使って、自分の言葉で、自分だけのストーリーをつくることが先決です。
 自信を持てるだけのストーリーの原型をつくることが大切です。ストーリーの原型ができてしまえば、あとは業界の一時的な流行や競争相手の短期的な行動に振り回されることなく、試行錯誤を重ねながらストーリーがより強く、太く、長くなるように磨きをかけることが大切です。

 

骨法その9 抽象化で本質をつかむ
 他社の成功要因を自分のストーリーに水平的に応用しようとしても、異なった文脈をまたぐことになるので、そのままでは無理があります。具体的事象の背後にある論理を汲み取って、抽象化することが大切なのです。具体的事象をいったん抽象化することによって、はじめて汎用的な知識ベースとなります。汎用的な論理であれば、それを自分の文脈で具体化することによって、ストーリーに応用することができます。 
 ストーリーの本質を抽象論理で押さえておくと、一見関係のなさそうな他の業界にも、同じようなストーリーがあることに気づきます。 他社のストーリーを読解するときは、このような抽象化が欠かせません。抽象化すれば、汎用的な知見を手に入れる可能性が飛躍的に高まります。一見何の関連もなさそうな業界の事例や、時代遅れに見える遠い昔の事例から、自分のストーリーづくりに役立つさまざまなヒントが得られるはずです。抽象的な論理こそ実用的なのです。

 

骨法その10 思わず人に話したくなる話をする

 「強さ」と「太さ」と「長さ」の三つが戦略ストーリーの評価基準だという話をしましたが、一番手っ取り早くわかる優れたストーリーの条件は、そのストーリーを話している人自身が「面白がっている」ということです。自分が面白がっているからといって必ずしも成功するとは限りませんが、このことは優れたストーリーの必要条件として最重要なもののひとつであることは間違いありません。
 自分で面白いと思えるということは、少なくともその人の頭の中では、ストーリーを構成するさまざまな決めごとや打ち手が論理で無理なくつながっているということを保証しています。
 ビジネスも総力戦です。「何を」「どのように」も大切ですが、それ以前に「なぜ」についての全員の深い理解がなくては実行にかかわる人々のモチベーションは維持できませんし、総力戦にはなりえません。
 ストーリーを全員で共有していれば、自分の一挙手一投足が戦略の成否にどのようにかかわっているのか、一人ひとりが根拠を持って日々の仕事に取り組めます。戦略がどこか上のほうで漂っている「お題目」でなく、「自分の問題」になります。自分がストーリーの登場人物の一人であることがわかれば、その気になります。こうしてビジネスは総力戦になるのです。
 戦略ストーリーは社内の人々を突き動かす最強のエンジンです。経営者から出てくる戦略が機能部門ごとの無味乾燥な静止画の羅列であれば、総力戦はとうてい期待できません。インセンティブ・システムなどさまざまな制度や施策も必要でしょうが、そんな細部に入り込む前に、人々を興奮させるようなストーリーを語り、見せてあげることが、戦略の実効性を確保するうえでとても大切です。
 リーダーが自ら面白いストーリーを語り、ストーリーで人々を突き動かし、現場の日常のコミュニケーションでストーリーが飛び交い、全員が一つのストーリーを共有し、「共犯意識」を持っている。これが私の思い浮かべる理想的な組織のイメージです。 思わず人に伝えたくなる話。これが優れたストーリーです。逆にいえば、誰かに話ししたくてたまらなくなるようなストーリーでなければ、自分でも本当のところは面白いと思っていないわけです。
 ストーリーという戦略の本質を考えると、「話の面白さ」はリーダーシップの最重要な条件の一つです。


一番大切なこと
 戦略ストーリーにとって切実なものとは何か。煎じ詰めれば、それは「自分以外の誰かのためになる」ということだと思います。直接的にあ顧客への価値の提供ですが、その向こうにはもっと大きな社会に対する「構え」なり「志」のようなものがあるはずです。「社会貢献」とか「世のため人のため」というと何やらきれいごとに聞こえるのですが、自分が楽しい、自分のためになるということだけ、スタートダッシュは効いても、決して長続きしません。
 変化の激しい時代だといいます。しかし。人間の寿命は延びている。ほとんどの人が数十年間は仕事をするわけです。事業や会社はもっと長続きするべきものです。切実なものとは、結局のところ「世のため人のため」なのです。 少なくとも自分では「世のため人のため」と信じられることでなくては、10年、20年続く仕事としてもたないのではないでしょうか。
 「すきこそものの上手なれ」です。 自分が好きで、心底面白いと思えることであれば、人は持てる力をフルに発揮できます。その結果、良い仕事ができるし、自分以外の誰かの役に立てる。人の役に立っているという実感が、ますますその仕事を面白くする。 
 優れた戦略ストーリーを読解していると、必ずといってよいほど、その根底には、自分以外の誰かを喜ばせたい、人々の問題を解決したい、人々の役に立ちたいという切実なものが流れていることに気づかされます。

 


<感想>
思わず人に伝えたくなる、話したくてたまらなくなるような、(世のため人のためになる)面白いストーリーを語ってゆきたい

 

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取締役会の合理的判断?


【 富士ソフト:取締役会の判断 】

 


 2024/11/19、日経電子版に、「富士ソフトへ2回目TOB 米KKR、20日から」の記事が掲載された。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB19BTY0Z11C24A1000000/

 

米投資ファンドのKKRは19日、富士ソフトへの第2回TOB(株式公開買い付け)を20日から始めると発表した。TOBの期限は12月19日。対抗する米ベインキャピタルの提案より1円高い1株あたり9451円で募る。

 

KKRはTOBを2段階で進める。9月5日〜11月5日に実施した第1回のTOBは1株8800円での買い取りを提示し、発行済み株式の33.86%を取得した。第2回TOBは当初、第1回と同額で募集する予定だったが、ベインキャピタルが9450円で提案していたことを踏まえ、11月15日に価格引き上げを表明した。

 

富士ソフトは同日の取締役会で、KKR案への賛成とベイン案への反対を決定した。

 


ご参考)2024/11/19 富士ソフトのリリース
「(追加)FK株式会社による当社株券等に対する第2回公開買付けに関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ」

https://www.fsi.co.jp/company/news/2024/20241119_4.pdf

 


<感想>
富士ソフト側からの要請を受けて、KKRがTOB価格をベインキャピタルの9450円を上回る9451円に決定したものと思われる
富士ソフトの取締役会が、このタイミングで、KKR案への賛成とベイン案への反対を決議したのは、極めて合理的だったと言える
第1回目のTOB価格8800円で応募した投資家(3Dインベストメント・パートナーズ、ファラロン・キャピタル・マネジメント等)は、複雑な思いであるように思われる

 

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普通の人々の本性を直視して考え抜く?


【 ストーリーとしての競争戦略 】

 


 先日、「ストーリーとしての競争戦略 ~優れた戦略の条件~ 」(楠木建著、東洋経済新報社、https://str.toyokeizai.net/books/9784492532706/)を読み返してみた

 

 以下は一部抜粋(その6)

 


戦略ストーリーの「骨法10カ条」 
あらゆるジャンルに共通した原理原則

 

骨法その1 エンディングから考える
 戦略の目的は、長期利益の実現です。 戦略ゴールは長期利益にあります。この「ゴール」という言葉を「目標」と「目的」に分けて考えてみましょう。厳密な言葉の定義はさておき、語感としていえば、このうちの目標に相当するのが長期利益です。この目標を達成する理由であり、手段となるのが競争優位です。 一方のコンセプトは目標というよりも目的という言葉がしっくりきます。目標が客観的にどちらかというとドライでクールなゴールだとすれば、目的はストーリーの実現にかかわる人々が自ら主体的にコミットするべきホットなゴールです。
 コンセプトはストーリーの終点であり、起点です。個別の具体策に手を出す前に、確信が持てるまでコンセプトを考え抜く、あらゆるストーリーづくりはそこから始まります。

 

骨法その2 「普通の人々」の本性を直視する
 コンセプトを構想するためには、「誰をどのように喜ばせるのか」をはっきりとイメージしなくてはなりません。そこでは「誰に嫌われるか」という視点が大切です。 八方美人は禁物です。 コンセプトを固めるときは、あくまでも「普通の人々」を念頭に置き、普通の人々の「本性」を直視することが大切です。普通の人々が確かに必要とすること、欲しがるものを価値の中心に据えるべきです。
 コンセプトは「今そこにある価値」を捉えるものでなくてはなりません。 人間の本性はそう簡単には変わりません。表層的な現象にとらわれると、骨太のコンセプトはかえって生み出しにくくなります。 人間の本性を捉えたコンセプトにするためには、人間の本性をしっかり見つめることが大切です。スターバックスの「第三の場所」やガリバーの「買取専門」、こうしたコンセプトの表現には、それ自体で肯定的な意味を持つ形容詞が一切使われていません。だからこそユニークな価値を捉えられたのです。
 「業界ナンバーワン」とか「世界最高水準」といったベタベタに肯定的な価値を含んだ言葉を使ってしまうと、それ自体が「良いこと」に決まっているので、その時点で思考停止に陥りがちです。 「言われたら確実にそそられるけれども、言われるまでは誰も気づいていない」、これが最高のコンセプトです。

 

骨法その3 悲観主義で論理を詰める
 優れた戦略ストーリーの条件は一貫性にあります。一貫性の高いスト-リーをつくるためには、打ち手をバラバラと箇条書きするだけでなく、その間にある因果論理をよくよく考えなければなりません。ここで大切なことは、打ち手をつなぐ因果論理を詰めるときは悲観主義で臨むべきだということです。
 ここでいう「悲観主義」は「弱者の論理」と言い換えてもよいでしょう。ヒト、モノ、カネの制約に苦しんでいる会社であれば、「どうにかなるさ」とは言ってられません。ストーリーが本当に作動するかどうか、打ち手をつなぐ論理を突き詰めて考えざるをえません。そもそも、あらゆる戦略は利用可能な資源の制約を前提にしています。無尽蔵に資源を使えるのであれば(そんなことは現実にはないのですが)、戦略は必要ありません。

 

骨法その4 物事が起こる順序にこだわる
 因果論理の組立てに不可欠の条件は、共変関係(AとBが連動する)だけでなく、時間的先行性(AがBに先行して起こる)があることです。戦略ストーリーを考えるときは、いつも頭の中に時間軸がなければなりません。要するに、物事が起こる順序にこだわるということです。ビジネスモデルの概念は、確かに全体の「かたち」を捉えるものですが、構成要素の因果論理が巻き起こす「流れ」や「動き」の側面を捉えにくいというきらいがあります。
 戦略ストーリーは物事が起こる順序をよく考えながら練り上げていくものです。
 
骨法その5 過去から未来を構想する
 ストーリーという戦略思考からすれば、事業の成長は、非連続的な「革命」(revolution)というよりも、連続的な「進化」(evolution)の結果です。「これから」は「これまで」と無関係には考えられません。裏を返せば、戦略ストーリーは一面では成長の制約要因にもあるということです。どこまでもストーリーを拡張していくのが理想なのですが、無限の拡張性を持ったストーリーはありません。

 

骨法その6 失敗を避けようとしない
 どんなに秀逸な戦略ストーリーでも、それが本当に成功するかどうかは事前には把握できません。最後のところは、やってみるしかないのです。この意味で、実験の規模に違いがあるにせよ、あらゆるビジネスは本質的に実験であるといえます。だとしたら、事前にできること、するべきことは次の二つです。一つは事前に戦略ストーリーを持ち、組織でしっかりと共有すること。もう一つはストーリーの作り手が失敗を事前に明確に定義しておくことです。
 大切なことは、失敗を避けることではなく、「早く」「小さく」「はっきりと」失敗することです。
 
骨法その7 「賢者の盲点」を衝く
 「他社と違った良いことをやる」、これが戦略です。「違ったこと」をやらなければならない。 個別の構成要素の一団上にあるシンセシス(綜合)のレベルで戦略の宿命的なジレンマを解決する。ストーリーの戦略論の腕の見せどころはここにあります。戦略のある要素が非合理であれば、他社はその部分については模倣しようという動機を持ちません。むしろ、意図的にそこから離れようとします。あからさまに「良いこと」をやるのと比べて、違いを持続することができます。もちろん、それだけでは非合理なので、長期利益にはなりません。
 しかし、ストーリー全体の流れの中で部分の非合理を全体の合理性に転嫁することができれば、「良いこと」と「違ったこと」の矛盾が解け、この両者を同時に、しかも長期的に維持できるわけです。
 「なぜ」の積み重ねは当事者の頭の中にしかない、ということを改めて強調したいと思います。 キラーパスのストーリーは、出来合いの情報ばかり集めている素人の発想が及ばないところにあります。その意味で、キラーパスは玄人好みの戦略なのです。

 


<感想>
「普通の人々」の本性を直視して、長期利益を実現する(=目的)ための、確信が持てるストーリーを考え抜いてみたい

 

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戦略ストーリーのクリティカル・コアをじっくり考える?

 

【 ストーリーとしての競争戦略 】

 


 先日、「ストーリーとしての競争戦略 ~優れた戦略の条件~ 」(楠木建著、東洋経済新報社、https://str.toyokeizai.net/books/9784492532706/)を読み返してみた

 

 以下は一部抜粋(その5)

 


コンセプトを自分の頭で深くじっくりと考える 

クリティカル・コア(戦略ストーリーの一貫性の基盤となる中核的な構想要素)を見つめる 

 

 どんなに投資をしても自分の頭を使わなければコンセプトは構想できません。流行の画期的な技術やそのときに華々しく成長している市場セグメント、今そこにいる顧客の声、こうした「外部の事情」に惑わされてはなりません。人間の変わらない本性を見つめるためには、そのような表面的な誘惑や情報の洪水を意識的に遮断することがむしろ大切です。

 

 人間の本性を捉えた骨太のコンセプトをつくるために、その製品やサービスを本当に必要とするのは誰か、どのように利用し、なぜ喜び、なぜ満足を感じるのか、こうした顧客価値の細部についてのリアリティを突き詰めることが何よりも大切です。繰り返しお話してきたように、特に大切なのは「なぜ」についてのリアリティです。

 

 およそあらゆる人にとって、一番リアリティのある「なぜ」は自分自身の生活や仕事の中にあるはずです。自分自身ほどリアリティを持って理解できる「顧客」は他にはありません。

 

 ごく日常の生活や仕事の中で、嬉しかったこと、面白いと思ったこと、不便を感じたこと、頭にきたこと、疑問に思ったこと、そうしたちょっとした引っかかりをやり過ごさず、その背後にある「なぜ」を考えることを習慣にする。回り道のように見えて、これがコンセプトを構想するために最上にして最短の道だというのが私の意見です。どんなに画期的なコンセプトも、発想の初めの一歩はそうした日々の習慣の積み重ねの中から生まれるものだと私は思っています。

 

 戦略ストーリーの五つのCの残された一つ、「クリティカル・コア」(critical core)についてじっくりお話したいと思います。もったいぶるわけではありませんが、この起承転結の「転」にあたる部分がストーリーづくりの一番おいしいところであります。
 
 戦略ストーリーの起承転結です。戦略ストーリーの5Cを思い出してください。筋の良い戦略ストーリーをつくるためには、この五つのCをきちんと押さえることが大切です。

 

 起承転結がきちんとしているというのは、古今東西の優れたお話の基本条件ですが、その中でもとりわけ重要なのは、読み手の心をがっちりつかむような「起」と、ストーリー展開のツボとなる「転」の二つです。 クリティカル・コアは「転」にあたります。ストーリーのヤマといってもよいでしょう。コンセプトと並んで、クリティカル・コアは戦略ストーリーの優劣を決めるカギとなります。

 

 サッカーにたとえれば、ゴール(長期利益)へのシュート(競争戦略)に向けてさまざまなパス(構成要素)を繰り出すわけですが、その中でも「キラーパス」となるのがクリティカル・コアです。

 

 「戦略ストーリーの一貫性の基盤となる中核的な構成要素」、これがクリティカル・コアの定義です。 第一の条件は、「他のさまざまな構成要素と同時に多くのつながりを持っている」ということです。クリティカル・コアは文字通りストーリー全体の中核、つまり他のさまざまな構成要素と深いかかわりを持ち、「一石で何鳥にもなる」打ち手です。これは前段の「ストーリーの一貫性」に関連しています。

 

 第二の条件は、「一見して非合理的に見える」ということです。ストーリーから切り離してそれだけを見ると、競合他社には「非合理」で「やるべきではないこと」のように見える。しかし、ストーリー全体の中に位置づければ、強力な合理性の源泉になる。クリティカル・コアの特徴はこの二面性にあります。この意味で、クリティカル・コアはストーリーに「ひねり」を利かすものであり、起承転結の「転」なのです。この第二の条件は、定義の後段の「持続的な競争優位」に関連しており、とりわけ重要な意味を持っています。

 

 概念的な定義だけではわかりにくいので、以下では、スターバックスコーヒーの事例で見ていきましょう。スターバックスの戦略ストーリーを、例によってエンディングのほうか読み解いていくことにします。

 

 スターバックスの意図する最終的な競争優位はWTP(Willingness To Pay:顧客が支払いたいと思う水準)の増大にありました。 顧客がより大きなWTPを感じるということは、スターバックスにそれだけプラスアルファの価値があるということです。その価値の本質は何か。この問いに対する答えがコンセプトです。すでにお話したとおり、「第三の場所」(third place)、これがスターバックス独自のコンセプトでした。

 

 つまり、コーヒーを売るのではなく、ゆったりとした雰囲気の中でリラックスするという経験なり文化なりを売るということで、コーヒーそのものは、そのための手段であるという考え方です。

 

 第三の場所というコンセプトの定義は、単価を上げるだけでなく、顧客の来店頻度を上げるという意味でもWTPの増大に貢献します。日常的な避難場所として顧客は習慣的にスターバックスに来るようになります。 サッカーにたとえれば、WTP(競争優位)と第三の場所(コンセプト)がスターバックスの戦略ストーリーのツートップだということです。このツートップで長期利益のゴールにボールをたたき込もうというのがストーリーのエンディングの部分です。

 


<感想>
戦略ストーリーの一貫性の基盤となる中核的な構想要素 (クリティカル・コア。「転」)について、深くじっくりと考えてみたい

 

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賞味期限の長い独自のコンセプト?

 

【 ストーリーとしての競争戦略 】

 


 先日、「ストーリーとしての競争戦略 ~優れた戦略の条件~ 」(楠木建著、東洋経済新報社、https://str.toyokeizai.net/books/9784492532706/)を読み返してみた

 

 以下は一部抜粋(その4)

 


すべてはコンセプトから 
筋の良いストーリーに独自のコンセプトは欠かせない

 

 戦略ストーリーにおけるコンセプトの重要性はいくら強調してもし過ぎることがありません。

 

 第一は、すべてはコンセプトから始まる、ということです。幸いにして、コンセプトづくりにはたいして投資は必要ありません。使うのは自分の頭だけです。 思いついたアイディアがうまく転がっていかなくても、また考え直せばいいだけです。

 

 反対に、コンセプトをないがしろにしたままストーリーづくりに取りかかってしまうと、失敗は高くつきます。勝ち目のない事業に進出したり、誰も欲しくないような製品を開発したり、工場や従業員などの固定投資をドブに捨てるといった、取り返しのつかないことになりかねません。コンセプトの構想はある意味で「安上がり」な仕事ですが、逆にいえば、どんなに投資をしても、頭を使わなければ筋の良いコンセプトは生まれません。急ぐ必要はありません。コンセプトの構想にじっくりと時間をかけるべきです。本質的な顧客価値を捉えていると確信できるコンセプトが固まるまでは、ストーリーの細部を考えても意味がありません。コンセプトがしっかりしていないストーリーはしょせん砂上の楼閣です。

 

 スターバックスの意図する最終的な競争優位はWTPの増大です。「第三の場所」を提供することができれば、単にコーヒーを飲ませるよりも単価を高くすることができます。しかも、第三の場所は南の島のリゾートに行ってリラックスするという非日常ではありません。あくまでも日常的な経験ですから、顧客は習慣的に第三の場所に来るようになります。事実、1990年代後半には、スターバックスにの顧客は平均して週に18回来店するようになっていました。「高品質でおいしいコーヒーの提供」という見たままのコンセプトであれば、スターバックスはいまだにシアトルのローカルなコーヒー豆小売業者のままだったかもしれません。

 

 戦略のもう一つの本質である因果論理のシンセシスという意味でも、コンセプトは重要な役割を担っています。
 
 戦略の本質が因果論理のシンセシスにあるからこそ、コンセプトが大切になります。戦略ストーリーのシンセシスの基盤となるという意味で、コンセプトは「扇の要」の役割を担っています。ストーリーの起点がしっかりしていれば、そこから出てくる構成要素には初めから骨太の因果論理が備わってくるものです。「ユニークなコンセプトが固まれば、ストーリー作りの半分は終わったも同然」というのは、このことを指しています。

 

 「すべてはコンセプトから」ということは、裏を返せば、「すべてはコンセプトのために」ということでもあります。ストーリーに含まれるあらゆる構成要素が、コンセプトの実現に向かっていなければなりません。そうでなければシンセシスの一貫性が崩れてしまいます。筋の良いストーリーをつくるためには、コンセプトと因果論理でつながらない構成要素は意識的に切り捨てるという姿勢が大切になります。

 

 コンセプトは、顧客の喜ぶ姿が映画のシーンのように浮かび上がってくるような言葉でなくてはなりません。そのためには、そもそも誰を喜ばせるか、価値を提供するターゲットをはっきりさせる必要があります。

 

 「誰に嫌われるか」をはっきりさせる、これがコンセプトの構想にとって大切なことの二つ目です。ターゲットを明確にするということは、同時にターゲットでない顧客をはっきりさせるということでもあります。

 

 筋の良いコンセプトを構想するために大切なことの三つ目、たぶんこれが最も大切なことだと思うのですが、それは「コンセプトは人間の本性を捉えるものでなくてはならない」ということです。

 

 人間の本性とは、要するに、人はなぜ喜び、楽しみ、面白がり、嫌がり、悲しみ、怒るのか、何を欲し、何を避け、何を必要とし、何を必要としないのか、ということです。

 

 できるだけ賞味期間の長いストーリーをつくるためにも、人間の変わらない本性を捉えたコンセプトが大切になります。事業を取り巻く環境や機会は常に変化するものです。

 

 だから、「変わらないもの」としての人間の本性を捉えたコンセプトが必要なのです。

 


<感想>
賞味期限の長い、人間の本性を捉えた、筋の良い独自のコンセプトを創ってゆきたい

 

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