あれっ、キリスト教世界は自由貿易を重視しない?
【 日本型資本主義 その精神の源 】
先日、寺西重郎著「日本型資本主義 その精神の源」を読んだ。
以下はその一部抜粋。
< 自由貿易システムの問題 >
宗教的基盤に立つ精神の視点からは、アメリカなど西洋のキリスト教世界の立場は、基本的に自由貿易を重視しないことに特色がある。キリスト教的精神を人類全体に広める、あるいは自己の世界観に立った世界秩序を構築する、という目的に対しては、各国経済の個性や要素賦存に基づく自由な発展形態をもたらす自由貿易は、ある意味で逆の効果をもたらすからである。キリスト教的な人類の厚生を高めるという使命は、自由貿易ではなく自由な要素移動によって達成されるほうが望ましいのである。
アメリカがしばしば歴史上で一国孤立主義を主張し、個別の産業利害を前面に押し出す自由貿易否定の動きに傾いてきたことはこうした点に基本的な理由があるのである。同様に英米が金融資本主義の興隆を国是のようにして、官民一体となって推進しようとすることの裏には、自由貿易によらずして、金融のグローバル化によって世界経済の効率化と人類の幸福の増進という宗教的使命を達成したい、という思惑があるとみる必要がある。
さらに言うなら、この点において英米的な価値観の特質が鮮明に現れている。真に人類の幸福を感がある考えるならば、各国の多様な形での発展によって、世界が創造性を高めることが必要であると考えるのが普通であろう。しかし英米的な価値観では、自分たちの構築してきた社会の普遍的価値を固く信じているために、英米的システム一色に世界を塗りつぶすことが、人類のためになると固く信じているとも考えられる。
いずれにしても、日本としては日本の経済社会のよさを今後とも進化させ、そのよさを世界に向かって積極的に発信する必要がある。すなわち、日本の伝統的な資本主義の精神、すなわち身近な他者との深い交わりを大事にして、人格者陶冶としての労働を尊び、自然とともに生きる姿勢を持つなどの、世界に発信すべき価値の視点から、自由貿易の主張を組み立て、かつ要素市場のグローバル化の意味を考える必要があろう。
<感想>
英米の金融のグローバル化による、世界経済の効率化と人類の幸福の増進という宗教的使命 vs
日本の身近な他者との深い交わりを大事にした、自由貿易。
日本の経済社会のよさを世界に共感させられれば、日本的自由貿易をより進化させることができるに違いない。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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