元証券マンが「あれっ」と思ったこと あれっ、株式譲渡の検討開始段階での適時開示?
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あれっ、株式譲渡の検討開始段階での適時開示?


【 検討開始段階での適時開示 】


 2017/10/12、アサヒビールホールディングス(「アサヒ」)(2502)は、株式譲渡の検討を開始したとして、その内容を公表した。


1.アサヒのプレスリリース

http://www.asahigroup-holdings.com/ir/17pdf/171012.pdf

 以下は、上記からの一部抜粋。

[ 持分法適用関連会社の株式譲渡検討開始に関するお知らせ ]

 当社が保有する青島ビールの株式の全部または一部を第三者に譲渡する検討を開始いたしました。

(1)本譲渡検討開始の理由

 持続的な企業価値向上への貢献を判断基準として、「資産効率を重視した事業ポートフォリオの再構築」にも取り組んでおり、今回、中国のビール事業への投資についても再検討した結果、青島ビール株式の全部または一部の譲渡について検討を開始することにいたしました。

(2)本件の概要

 譲渡対象株式: 青島ビール株式(香港証券取引所上場株式:H 株)270,127,836 株、発行済株式の約19.99%
売却先: 売却先については今後決定します。
売却条件: 売却の諸条件については今後当事者間で協議・交渉されます。


2.アサヒの適時開示体制

http://www.asahigroup-holdings.com/company/governance/disclosure.html

 上記より一部抜粋。

(1)情報収集について
 情報の集約・管理は、法務担当役員又は総務法務部門とします。

(2)情報開示手続きについて
 アサヒ各部門及びグループ各社より法務担当役員又は総務法務部門に集約された情報について、総務法務部門が主管となり、適時開示事項に該当するか否かの基本的な判断を行っています。

(3)証券取引所への適時開示について
 情報取扱責任者は、適時開示が必要と判断された事実について、発生後遅滞なく適時開示を行います。


3.インサイダー取引規制における「決定」のタイミング

 以下は、「インサイダー取引規制における『決定』と実現可能性 いわゆる村上ファンド事件最高裁決定」*からの一部抜粋。
 *
http://www.dir.co.jp/souken/research/report/law-research/securities/11061601securities.html


『 問題は、「予備・準備行動」の着手決定から「実行行動」の着手決定までの間に、通常、様々な調 査、検討、交渉作業などを通じて、M&Aに向けた「意思」の確定(「どこかよいターゲットはな いか?」⇒「A社がよさそうだ」⇒「A社を是非買収したい」......)や「能力」の確保(資金調達、 スキームの確定......)が徐々に進行していく点にある。

 しかも、こうした「意思」の確定や「能力」の確保は、白から黒にデジタルに切り替わっていくとは限らず、むしろ白からグレーゾーンを経て徐々に黒へと変わっていくことが多いと考えられる。 そのため、「予備・準備行動」の着手決定から「実行行動」の着手決定までの間の、どの時点において「公開買付け等を行うことについての決定」があったと機械的に処理することは困難である。

 そのような状況の下で、『実現可能性が全くあるいはほとんど存在』しない場合を除き、『実現可能性があることが具体的に認められることは要しない』という最高裁決定の考え方が示された以上、 M&A及び企業コンプライアンスの実務現場は、自己防衛的な行動に走る可能性が高いもの思われる。即ち、インサイダー取引規制に抵触するおそれのある「公開買付け等の実施に関する事実」や 「決定事実」について、できるだけ前倒しで「決定」があったものと考えて対応しておくということである。 』


<まとめ>
 実現可能性がある「決定事実」については、できるだけ前倒しで「決定」があった(⇒この段階で「重要事実*」に該当する)ものと考えて対応しておく(⇒適時開示を行う)ことが望ましい

*重要事実:アサヒのケースは、添付(4)のいわゆる「バスケット条項」に該当
http://www.daiwa.jp/olt_help/etc/h_00h_ntc0403-01.html


4.最高裁判決(平成23年(2011年)6月6日決定(いわゆる村上ファンド事件))

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/389/081389_hanrei.pdf


<感想>

 本件は、アサヒのディスクロージャーポリシー(
http://www.asahigroup-holdings.com/ir/disclosure/)に沿って、株式譲渡の検討を開始した段階で適時開示した事例。

 本件のように(上記3にもある通り)、決定事実(含む、発生事実)については、可能な限り、早めに公表することが良いと思われる。

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