元証券マンが「あれっ」と思ったこと 取締役
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あれっ、執行役の解任&取締役の辞任?


【 執行役の解任・取締役の辞任 】


 224/4/17、イオンが「執行役の解任について」をリリースした。(一部抜粋)
https://ssl4.eir-parts.net/doc/8267/announcement/98627/00.pdf

「当社は、 本日開催の取締役会において、当社執行役 松本忠久の解任を決議いたしました。
 私生活において不適切な行為があり、当社の信用を傷つけるものであると判断したものです。」
 
 一方、同日、ウエルシアホールディングスが「代表取締役及び取締役の異動(辞任)に関するお知らせ」をリリースした。(一部抜粋)
https://data.swcms.net/file/welcia/ja/news/auto_20240404566272/pdfFile.pdf

「当社は、代表取締役社長 松本忠久へ代表取締役社長及び取締役を辞任することを勧告し (4月16日)、その勧告に基づき本人からの辞任届が提出され、これを受理しました。

3.異動(辞任)の理由
私生活において不適正な行為があり弊社の信用を傷つけるものであると判断したため

4.その他
同氏の辞任に当社は、本件を厳粛に受け止め、今後はコンプライアンス体制を一層強化して、再発防止に取り組んでまいります。」


<会社法>
(執行役の解任等)
第403条
執行役は、いつでも、取締役会の決議によって解任することができる。


(解任)
第339条
役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。


ご参考1)執行役(に関する説明。法:会社法)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=71515?mobileapp=1&site=nli

上場企業:三つの会社形態
1.監査役会設置会社:取締役と監査役の双方を選任する
2.指名委員会等設置会社:取締役のみを選任する
3.監査等委員会設置会社:取締役のみを選任するが、取締役と、監査等委員兼務の取締役とを分けて選任する(法329条2項)

執行役:会社法では上記「2.指名委員会等設置会社」においてのみ、取締役会で選任する(法402条)。会社法上の役員ではないが、取締役会から委任を受けて、本来は取締役会の権限である業務執行の決定(一部の重要事項除く、後述)と、業務の執行を行う(法416条4項、418条)。執行役が複数名いるときは代表執行役も選任される(法420条)。指名委員会等設置会社においては、執行役が経営者として会社を運営する。このことを踏まえると一般的な意味としての経営者と会社法上の役員とは異なる。

指名委員会等設置会社の取締役会:会社法上執行役に委任できないこととされている重要事項の決定(例えば経営方針の策定や株主総会の議案内容の決定)と、執行役の業務執行に関する監視・監督を行う機関となる。このように取締役会が経営をモニターする機関として主に機能するため、指名委員会等設置会社の機関設計はモニタリングモデルといわれる。執行役は英米法におけるExecutive officer(またはofficer)の和訳である(取締役会はBoard of directorsという)。なお、取締役と執行役の兼務も可能である(法402条6項)


ご参考2)デイリー新潮記事
https://www.dailyshincho.jp/article/2024/04171225/?all=1


<感想>
執行役(@イオン)の解任は取締役会決議で可能だが、取締役の解任は株主総会決議が必要なため、(代表)取締役(@ウエルシアHD)については、辞任を勧告→本人から辞任届を提出させたもの(実質的解任)と思われる。

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あれっ、従業員の大半が取締役に辞任を迫る?

 

【 オープンAI:取締役の新たな実質的な解任方法 】



 2023/11/21、CNNのWebサイトに、「オープンAI従業員505人が退職を通告、CEO解任めぐり取締役に辞任要求」記事が掲載された。
https://www.cnn.co.jp/tech/35211792.html

 

 以下は、一部抜粋。

 


対話型AI(人工知能)「ChatGPT(チャットGPT)」を開発した米オープンAIで、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が解任されたことに抗議して従業員505人が取締役に辞任を迫り、自分たちも退職すると通告した。

 

従業員側は書簡の中で、アルトマン氏を解任した取締役会に不手際があったなどと主張。アルトマン氏が取締役会に真意を明かさず、経営陣との交渉に対して不誠実だったと取締役会が説明したことについても、それを裏付ける根拠がないと訴えている。CNNはこの書簡を入手した。

 

書簡ではアルトマン氏を解任した取締役会について「あなた方にオープンAIを監督する能力がないことがはっきりした」と述べ、「能力も判断力もなく、我々の理念も従業のことも気にかけない人々と共に働くことはできない」としている。

 

その上で、取締役が辞任してアルトマン氏と社長だったグレッグ・ブロックマン氏を復帰させなければ、自分たちもアルトマン氏を追ってマイクロソフトに入社すると通告。「マイクロソフトはオープンAIの従業員全員の採用を保証している」とした。

 


ご参考)2011/8/25「スティーブ・ジョブズ、AppleのCEOを辞任」
https://www.apple.com/jp/newsroom/2011/08/24Steve-Jobs-Resigns-as-CEO-of-Apple/

 


<感想>
「取締役の解任」(日本の会社法)は、株主総会を開催して、出席した株主の過半数の賛成により議決されるが、仮に、従業員の大半の協力を得た上で、スティーブ・ジョブズがAppleのCEOを辞任していなかったとしたら、果たして今のiPhoneは生まれていたのだろうか。

 

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あれっ、大株主の代表取締役が解職?


【 ゴーゴーカレー創業者 vs 日本製麻取締役会 】



 2023/8/21、日本製麻が、「代表取締役の異動(解職)および社長交代に関するお知らせ」を発表した。
https://www.nihonseima.co.jp/pdf/news/20230821_daihyousya_idou_oshirase.pdf

 

 以下は一部抜粋。

 


< 異動の理由 >
代表取締役が複数名いる中で、代表取締役社長であった宮森宏和氏の取締役会における不合理な議事運営、経費申請時の諸問題等により、代表取締役副社長であった山村貴伸氏の業務執行に混乱をきたす等会社の意思決定に支障が出ていたことから、宮森氏を代表取締役社長から解職し、山村氏を代表取締役社長に選定することで、責任の所在の明確化および迅速な意思決定を図る体制を構築するためです。

 

宮森宏和氏
1973年12月10日生
1995年3月 北陸交通入社
2023年3月 ゴーゴーカレーグループ取締役会長就任(現任)
2023年4月 当社代表取締役社長就任

 


ご参考1)2023/3/10「株式会社ゴーゴーカレーグループとの合意書の締結」等
https://www.nihonseima.co.jp/pdf/news/20230310_RinjiSoukai_KaisaiNitiji&Gouisyo_Teiketsu&Fugigian_Kettei&Torishimariyaku_Idou_Oshirase.pdf


ご参考2)2023/3/11「ゴーゴーカレー会長・宮森氏が日本製麻社長に 両社合意 4月、株主総会に付議」
https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/1010889


ご参考3)ゴーゴーカレーグループ・大量保有報告書(2023/8/24)
http://www.kabupro.jp/edp/20230824/S100RR3T.pdf

 

保有株式数:618,700株(16.84%)
取得資金:374,087千円(@605)
2023/8/24・25終値:825円・944円


ご参考4)2023/7/19「代表取締役の異動(追加)に関するお知らせ」
https://www.nihonseima.co.jp/pdf/news/20230719_daihyousya_idou_oshirase.pdf

 

山村 貴伸氏
現:取締役 管理本部長 ⇒ 新:代表取締役副社長 兼
管理本部長
1960年10月20日生
1983年4月 兵庫相互銀行(現:みなと銀行) 入行
2023年6月 当社入社 経理部長 当社取締役 管理本部長


ご参考5)「日本製麻、突然の社長解職 宮森氏、わずか4カ月で」
https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/1159466

 


<感想>
本件は、ゴーゴーカレー創業社長(宮森氏) vs 日本製麻取締役会との争い。
記事によれば、宮森氏退出後に、取締役会で宮森氏の代表取締役解職の決議がなされた模様。
大株主と会社側取締役との争いから当面目が離せない。 

 

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あれっ、少数の取締役での意思決定?

 

【 シダックスの取締役会決議:オイシックスのTOB 】

 


 2022/9/6、日経電子版に『ユニゾン「シダックス賛同が条件」オイシックスのTOBで』が掲載された。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0677E0W2A900C2000000/

 


投資ファンドのユニゾン・キャピタル(東京・千代田)は6日、オイシックス・ラ・大地によるシダックスへのTOB(株式公開買い付け)について条件が満たされれば応募するとの方針を公表した。シダックス取締役会が賛同意見を出すことや、インサイダー取引規制に違反する恐れが払拭されることを条件としている。オイシックスのTOBはユニゾンの応募を前提としており、成立に不透明感がでている。

 

ユニゾンはシダックス創業家との株主間契約に従い、シダックス株をオイシックスに売却する意向があるとした。もっとも、オイシックスにはTOB開始に先立ち、インサイダー取引違反の懸念を解消するよう要請していた。オイシックスはシダックスが第三者から協業提案を受けたという未公表の重要事実を知りながら、TOBを始めようとしていたという。

 

ユニゾンはシダックス取締役会が5日にTOBへの反対意見を表明したのを受け、一般株主を含むステークホルダーに最善の可能性を検討したという。その結果、オイシックスのTOBを巡る懸念が解消され、シダックス取締役会の賛同が得られることなどがTOBに応じる条件だとした。

 

オイシックスは8月30日からシダックス株へTOBをしている。TOB価格は541円と足元の株価(6日終値は576円)を下回るディスカウントTOBとなっている。現在の筆頭株主であるユニゾンからの応募しか想定しておらず、同社が保有する27%以上の応募が成立条件になっている。現状のままでは不成立となる可能性が高い。

 


(ご参考)2022/9/6 日経電子版
「オイシックス実施のTOB、シダックス取締役会が反対 創業家に異議、敵対的買収へ」

https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/?DisplayType=1&n_m_code=151&ng=DGKKZO64068330V00C22A9TB0000

 

シダックスの取締役は志太勤一会長兼社長と志太勤最高顧問など社外取締役3人を含めて6人。志太会長兼社長と志太最高顧問、ユニゾン代表取締役の川崎達生社外取締役は特別利害関係者にあたるため、賛否表明の決議には参加していない。社外取締役2人を含む残る3人が全員一致で決議した。

 


<感想>
 シダックスの取締役は6名で利害関係者3名を除いた3名の内、2名は社外取締役。
 創業家が賛同するオイシックスのTOBに反対を表明した取締役会の意思決定プロセスを覗いてみたい。

 

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あれっ、親子会社間の貸付時に取締役会決議は必要?

 

【 会社から子会社へ貸付時の取締役会決議 】

 


 親会社から子会社へ貸付時の取締役会決議の必要性について、以下のWebsiteから考えてみたい。

 


「親会社から子会社への貸付と取締役の責任」
http://www.3776150.info/6/050.html

 


子会社への貸付けが適切かどうか、十分に審議されたか

 

 子会社への貸付けについて、親会社の取締役会において、貸付けをして援助することによる子会社の業績の回復の可能性等子会社への貸付けの必要性を十分審議したうえで親会社の利益を図る目的で貸付けをし、子会社の管理等を行っている等、貸付行為をしたことが合理的な選択であり、取引の通念からみて誠実に行われている場合は、結果として貸付金の回収ができず会社に損害を与えたとしても会社に対し損害賠償責任を負うということにはならない。

 


< 裁判例 >
 経営不振に陥った子会社を救済するために危険ではあるが事業の好転が期待できるとして新たな融資を継続した場合において、たとえ子会社再建が失敗に終わりその結果融資を与えた大部分の債権を回収できなかったとしても、その取締役の行為が親会社の利益を計るために出たものであり、かつ、融資の継続か打切りかを決断するにあたり企業人としての合理的な選択の範囲を外れたものでない限り、これをもって直ちに忠実義務に違反するものとはいえないとしているものがある。


 親会社の取締役が子会社の代表取締役を兼務しているような場合、子会社に貸付けをすることは親会社の取締役に貸付けをすることと同様の問題があり、親会社の取締役会の承認が必要となるかが問題となる。以下、取締役の兼務のそれぞれの場合について。

 


1.取締役がいずれにおいても代表取締役でない場合
 この場合は、親会社、子会社のいずれにおいても取締役会の承認は必要とはされない。ただし、貸付けについて親会社の取締役に善管注意義務、忠実義務違反がある場合は、損害賠償責任が生じることはある。

 


2.親会社の取締役が子会社の代表取締役を兼務している場合
会社法の自己取引、貸付けの趣旨からすると原則として親会社の取締役会の承認が必要となる。
そして、この場合に子会社を救済するために貸付けを行ったが、結果としては、子会社が倒産し、回収不能となったような場合は、貸付けに賛成した親会社の取締役は、その弁済の責任を負うこととなる。
これに対し、親子会社の場合に子会社を救済する目的で融資をした場合まで、親会社の取締役会の承認を必要とするのは形式的に過ぎ、実質的には会社と取締役との間に利益が相反していないとするものもあり、少なくとも親会社が子会社の唯一の株主である場合は、実質的には完全同一体であり、利益相反は生じていないとして取締役の承認は、必要とされないとする考えが有力。また、このような親子会社間の貸付けが自己取引となる場合については、取締役会決議に賛成した取締役に無過失責任を負わせることとなるのは妥当ではないとする考えもある。

 


3.親会社の代表取締役が子会社の代表取締役を兼務している場合
この場合も、親会社については、取締役会の承認が必要となるため、前記と同様の問題が生じてくる。子会社についても、取締役会の承認が必要となってくるが、親会社が子会社の唯一の株主である場合は、子会社の取締役会の承認は必要とされていない。また、この場合、親子会社にそれぞれ別に他の代表取締役がいて、その他の代表取締役が親会社、子会社を代表して貸付けをし、兼務する代表取締役が直接貸付けに関与しない場合は、原則的に親会社、子会社とも取締役会の承認は必要とはされていない。

 


4.親会社の代表取締役が子会社の取締役を兼務する場合
この場合には、子会社の取締役会の承認が必要とされる。
取締役会における承認が必要であるにもかかわらず、その手続をとらずに貸付けを行った場合は、その貸付けは無効となり、法令違反行為としてその貸付けを実行した取締役は、この貸付けによって会社に生じた損害を賠償する責任を負うこととなる。

 


<感想>
 親会社の取締役が完全子会社の代表取締役を兼務している場合で、親会社が完全子会社宛て貸付けする際は、子会社の取締役会の承認は不要ながら、救済目的以外では会社法の自己取引の観点から、親会社の取締役会の承認は必要となりそうだ。
 その場合、子会社の業績の回復の可能性等、子会社への貸付けの必要性を十分審議することが必要となるものと思われる。

 

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