みんなが寝静まった頃に 【大川原化工機事件の真相】(10) 「公安は門外漢の教授を利用した」
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【大川原化工機事件の真相】(10) 「公安は門外漢の教授を利用した」

20241115 05
化学機械メーカー『大川原化工機』が襲われた冤罪事件を巡り、私(※記者)は有識者から集中的に話を聞いていた時期がある。きっかけは、ある捜査関係者の一言だ。「警視庁公安部は、噴霧乾燥器の構造や輸出規制の内容を知らない有識者を敢えて狙い、話を聞きに行った」。

公安部は、大川原化工機が噴霧乾燥器を不正輸出しているとの疑いを掛けたが、それは製品が輸出規制品であることが前提になる。だが、所管官庁の経済産業省は当初、否定的だったとされる。輸出規制を定める省令の規定が曖昧だとし、担当者は「この省令には欠陥があるとしか言いようがない」と捜査方針に難色を示していたという。

経産省を説得するには専門家の“お墨付き”が必要だ。公安部はその為に、門外漢の有識者を利用した――。そんな話だった。公安部が話を聞いた有識者は4人。そのうちの1人に小児科医の大学教授がいた。教授の専門は小児癌。外来診療もこなし、聴診器を首にかけて患者と向き合う日々を送る。

教授はハーバード大学(※左上画像)の公衆衛生大学院に留学した経験があり、1995年の地下鉄サリン事件に関する災害医療の講義も受けた。留学を終えて日本に帰国後の2001年、アメリカ同時多発テロが起きた。すると、ハーバード大学の大学院学長から手紙が届いた。卒業生に送っているようだった。

「世界の国の人々にとって、より住み易い世の中にするのが、公衆衛生を学んだ者のミッションだ。原点に戻って考えてほしい」。感銘を受け、考えた。「自分にできることは何か」――。

日本は唯一の被爆国で、『オウム真理教』による生物兵器(※未遂に終わったボツリヌス菌等)、化学兵器(※サリンやVXガス)のテロも経験している。以来、本業の傍ら、NBC(※核・生物・化学)兵器を想定したテロ対策の研究を続けた。防衛省や外務省の職員らを相手にテロ対策の重要性を伝える講義もした。

原動力はただ一つ。学長の手紙に書かれていた“平和で安全な世の中”の実現だった。公安部の聴取内容を知ろうと取材を申し込んだ私に、教授は応じてくれた。その口から出てきたのは、「公安に利用された。捜査員が研究室に来た時、もっと質問すればよかった」という後悔の言葉だった。

私は記事にするにあたり、名前を実名にしてもよいかと尋ねた。しかし、教授が首を縦に振ることはなかった。その理由を聞いた私は、公安部の罪深さを知ることになる。


キャプチャ  2024年9月4日付掲載

テーマ : 警察
ジャンル : 政治・経済

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