みんなが寝静まった頃に 2021年12月
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【山根明のノックアウト人生相談】(138) 何でも言い易いんやろうね…僕には言えないでしょうけど(笑)

Q. 仲間内に厄介な人間がいます。「今度、皆を集めて飲もう!」と仕切りたがるくせに、「お前、やっといて」と幹事は人任せ。自分になら軽く頼めると思っているのか、散々小間使いさせておいて、「この店、煩いし、料理もいまいちだな」と、私が予約した店にケチをつけてきます。「じゃあ自分で店探せよ」と言っても、「お前のほうが詳しいだろ」と上手いこと言って毎回、面倒なことを押しつけてきます。本人は悪いとも思っていないようです。こちらの苦労もわかってほしいのですが、どう言えばいいものでしょう? (広島県・67歳・アルバイト)

A. こういう人間、多いですね。悪気が一切ない人と、敢えて根性悪く言ってくる人と、二通りに分かれますけどね。この文章からすると、この方はそんなに悪い友人じゃないと思いますよ。だけど、冗談にしろ、他人様のことを貶めるいうのは、質が悪いね。いくら人間は悪くないといってもね。この相談者のね、「それじゃあ、お前がやればいいやんか」という意見は、ご尤もや。この友人は、そんなに悪い人間じゃないけど、相談者に無理を言っているね。それは、この方にね、非常に親しみを感じている、2人が仲が良いからこそだと思います。何でも言い易いから、文句も簡単に言うてるんやろうけど。だけど、店の予約なり何なり、やっているほうは真剣ですからね。どの店にしようかと、来る人の好みやら、色々考えて選びますし、希望の日にちは予約でいっぱいということもありますからね。やるほうは大変でしょうし、だから腹も立ってくると。解決するには、一度ね、その友人に予約を頼まれたら、態と「予約するの忘れとった!」と恍けてみる。それで、「予約していなかったから、お前頼むわ」って、1回、相手に振ってみたらどうですかね? この2人は、何でも言える間柄や思うんですよ。僕の周りには、こういう厚かましい知人はいてないんですけど。ただ、仲間内でね、こういう問題を相談されたことはありますね。「山根会長、アイツはこんな無理言ってきてはケチをつける」とね。僕の知人と別の友人との間にトラブルがあったみたいでね。そういう悩みを、非常に興奮しながら、打ち明けられたことがありますよ。だけど、個人的につきあいのある人間でも、僕には言えないでしょ(笑)。はっきり言ったらね。男・山根に無理なこと言えません。だから、そういう間違いは起こらないんですけど。まぁ、本人に一度、やらせてみることです。上手いこと言ってね。そうすれば、大変なことや苦労もわかるでしょうからね。


山根明(やまね・あきら) 『日本ボクシング連盟』前会長・在日コリアン2世。1939年、大阪府生まれ。大阪商業大学ボクシング部ヘッドコーチ、大阪経済大学ボクシング部監督、シドニー五輪日本選手団ボクシング競技監督を歴任。2011年2月に日本ボクシング連盟会長に就任、2012年10月に理事会全員一致で終身会長となったが、助成金の不正流用等を理由に2018年8月8日を以て同会長・理事を辞任。著書に『男・山根 “無冠の帝王”半生記』(双葉社)。


キャプチャ  2021年12月27日・2022年1月3日号掲載

テーマ : 人生を豊かに生きる
ジャンル : 心と身体

【絶望センセイ奮闘中】(17) ビジネスマンでもできる“副業ティーチャー”一覧

激務の教師にとって負担が大きいのが部活動指導。ビジネスマンが引き受けてくれれば大助かりだ。“副業ティーチャー”の3つのコースについて、60の仕事とその料金相場を列挙する。



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「最大のネックは部活指導だった」――。立命館大学を運営する学校法人『立命館』の担当者は、付属校の働き方改革について、そう振り返る。改革により、専門技量を持つ外部指導員が教師に代わり部活の顧問業務を担う制度を導入。教師は約50人の外部指導員と共に、2~3人でシフトを組みながら指導するようになった。休日出勤もある部活指導は、全国的に教師の過重労働の最たるものとして問題視されてきた。文部科学省は、休日の部活を地域や民間団体等外部指導員に任せる改革案を作り、2023年度から段階的に実施する。そんな中、ビジネスマンが部活指導を副業にするチャンスが生まれている。教育・人材サービスを手掛ける『サクシード』は、副業で部活指導員をやりたいというビジネスマン等を学校に紹介する『部活動指導おまかせサービス』を展開。契約形態は基本的に業務委託だ。学校が支払う料金は1時間当たり4000円(※税込み)からで、要望や競技によって若干異なり、所定の手数料を引いた分が部活指導員の収入となる。5000人超の登録者には元アスリート等スポーツ経験者の他、コロナ禍以降はテレワークやフレックスタイム制導入で自由時間が取れるようになった人材系、IT系ベンチャー企業の社員も増えた。部活指導に限らず、先生やコーチとなる副業全般では、大きく分けてアルバイター、アドバイザー、メンターの3つのコースがある。
①アルバイター  3つの中で最も敷居が低い
スポーツ、芸事、勉強等を教えるアルバイターについて、『ディップ』が運営するアルバイト検索サイト『バイトル』から条件を絞って抽出したのが左上の表だ。中学受験指導、理数系専門のオンライン授業、ピアノ、算盤、書道等、専門の知識や技術が必要になるほど時給は高い傾向にある。教える対象は子供や一般の大人。先生やコーチの入り口としては、3つのコースの中で最も敷居が低い。
②アドバイザー  3つの中で料金が最も高い
アドバイザーは、プロとしての仕事となる。『ビザスク』が運営する『ビザスクlite』というプラットフォームでは、プロ相手にスポットコンサルティングでアドバイスする。国内外の14万人以上が500以上の分野にアドバイザーとして登録されており、上場企業の役員クラスや企業の現役社員、元社員の他、飲食店の店長やタクシー運転手等多岐に亘る。2020年にマッチングした案件では、コロナ禍の影響で医療や学習等のサービスのオンライン化や、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する相談が、2019年と比べてかなり増えた。他に集客や商品企画、広告の運用、保険関係等、その道で長年経験を積まなければアドバイスできないことも多く、総じて依頼者が支払う1時間当たりの料金の相場は三大コースの中で最も高い。1万円超えはざらで、3万円もある。そこから所定の手数料を引いた分がアドバイザーの受け取る金額で、「平均2万円前後」(ビザスク担当者)だ。
③メンター  人気職種はプログラマー
『ランサーズ』が運営する『MENTA』では、教えたい人(※メンター)と学びたい人をオンラインでマッチングさせるサービスを展開。プログラミング等を学びたい初心者や未経験者がその道のプロを探していれば、フリーランサーや会社員等が自分を売り込める。登録者のうち、4割が会社員による副業だ。人気の職種はプログラマーがトップで、「月100万円以上稼ぐ人もいる」(ランサーズ担当者)。基本的に月額料金制。生徒に気に入られれば中長期で固定収入が見込め、法人相手の仕事は料金水準が上がり易い。教師になろうと教員免許を取ったものの、民間企業に就職する道を選んだという人は、今、その夢を副業で叶えられる。 =おわり

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(副編集長)臼井真粧美/土本匡孝・松野友美・大根田康介が担当しました。

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教師たちが長時間労働や教育行政に対する不満を、SNS上の“#教師のバトン”に次々と投稿しています。一体、何が起きているのか。複数の人に連絡を取りました。すると、電話や返信の時間帯は平日夜間や休日ばかり。他の取材で知り合うビジネスマンとは様子が違いました。ある教師は、「自分のことで精いっぱい。他の先生と情報を共有する時間さえない」と残念そうに語っていました。今回の連載では、教師が置かれたブラックな現状やそこから抜け出すヒント、構造的な課題等を載せています。先生、この特集を丸めて、職員室の隣の席の先生に渡していただけませんか? これが先生たちに本当に役立つバトンになることを願っています。 (本誌 松野友美)


キャプチャ  2021年6月12日号掲載

テーマ : 教育問題
ジャンル : ニュース

【中小企業のリアル】(42) ビザスク(東京都目黒区)――中小企業の情報ニーズに応ず



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誰しも、「このような環境で長持ちする材料はないか?」とか、「どうやったらこの加工ができるのか?」と途方にくれることがあるだろう。知り合いに尋ねたり、研究機関を訪問しても、有用な答えが得られないことも多い。或いは「○○国の××企業から引き合いがあったが、信用出来るのか、支払いを確実にするにはどうすればよいか、事後トラブルの心配はないか?」等々の問題になると、町工場仲間では誰もわからないし、抑々誰に相談すればよいか見当が付かないことも多い。そのうちに、貴重なチャンスを失ってしまう。このような時、その国に駐在したことがある、その企業を知っている、その業界に詳しい…といった人に巡り合えれば百人力だ。逆に、「俺のところに聞きに来てくれれば詳しく教えることができるのに…」と思っている人もいる。こうした有用な知識を商品化できないか、というのが『ビザスク』の創業者である端羽英子さんのアイデアの出発点だった。ビザスクを利用すれば、15万人にも及ぶ様々な知識を持ったアドバイザー集団の中から、当該知識を持った人に必要な時に気軽にアドバイスを受けられる。一方、教えるアドバイザー側は“週末コンサル”という気軽なスタイルで、自分の知識を相手企業に役立ててもらい、何がしかの報酬を得る。こんなWin-Win関係のナレッジプラットフォームがビザスクだ。具体的には、500に亘る分野でのスポットコンサルティングを1時間単位で取引できる。アドバイザーとしての登録料は無料で、アドバイザートレーニングという5分程度のオンラインでのコンプライアンス講習を受けると、スポットコンサルに応じられるようになる。

受け取る謝礼は最低5000円(※平均2万円/時間)。コンサルタントとしての実績がなくても、専門分野での経験や独自のノウハウがあれば、隙間時間を最大限に活用できる。“依頼者が用意した質問に答える”というスタイルが主流だから、特定の分野での知識や経験があれば誰でもできる気軽さがあり、大半が電話やウェブでの対面を必要としない案件なので、1時間の拘束だけという自由度も副業として最適だ。実際にコンサルティングを経験することで、自身のキャリアや知識の価値を再認識でき、本業へのモチベーションアップに繋がるという声も多くあるという。創業者の端羽さんは熊本県出身。父親が金融機関勤務で、常日頃「金融が産業を育てる」という話を聞いていた為、昔から経済に興味を持っていた。東京大学経済学部卒業後、外資系金融機関に就職。仕事は充実していたが、1年目に妊娠がわかり、「遠慮しながらの子育てと仕事の両立はきついな」ということもあって退職した。その後、化粧品企業を経て渡米し、自身もMIT(※マサチューセッツ工科大学)に入学し、MBAを取得した。入学願書には既に「起業したい」と書いていた。学友たちが競って起業するのにも刺激されたという。帰国後、投資ファンドに約5年勤務したが、起業しようと退職し、事業プランを練り続けた。テーマは“個人が知識や経験を強みに売り手になれるサービス”。大きな転機になったのは、事業プランがある程度固まり、紹介された著名な経営者にプランをぶつけてみた時だ。「成功の確率、0%だよ」とコテンパンに叩きのめされた。「実践している方のアドバイスですから、スッと腑に落ちました。そして、その方から『アメリカには似たサービスがあるよ』と教えてもらい、勇気が出ました」(端羽さん)。調べてみると、アメリカのサービスは超優秀なごく一部の専門家と、高いフィーを払える一部の会社を繋ぐサービスだった。それを日本向けにアレンジし、著名な専門家だけでなく、その分野で仕事の経験がある人なら誰でもアドバイスでき、一方で大企業だけなく、中小企業も手軽に利用できるサービスというコンセプトで、2012年にビザスクを創業した。ビザスクのような、各種調査や相談の為に知見を持つ人物とのインタビューをマッチングするサービスはENS(※Expert Network Service)と呼ばれるが、世界のENSの市場は年17%の成長を続けている。昨年の市場規模は15億ドル(※約1650億円)という。「ENS市場は高い成長率を続けているし、コンサルティング市場やR&D(※研究開発)市場にも隣接している。世界のR&D市場は1兆7000億ドルともいわれ、世界がイノベーションに投資し、テクノロジーの進化に対応している。良質な情報へのニーズが高まっており、経験を持った人材を紹介できる我々には大きなビジネスチャンスがある」と端羽さんは目を輝かせる。挑戦する経営者ではあるが、気負った感じは全くなく、ユーモアに富む。同社の従業員も「失敗することも学びと言ってもらえる環境です」と言う。

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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

【Global Economy】(258) EV普及、痛み抑えながら…自動車の脱炭素化と雇用減

電気自動車(EV)が世界的に本格普及し始めた。脱炭素の流れが強まり、急速充電器を始めとするインフラ整備や各国政府による購入支援策が進んでいる為だ。ただ、あまりに急速なEV化は車産業の雇用を脅かす等、副作用も生じさせる。 (経済部次長 瀬川大介)



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年末恒例である米誌『TIME』のパーソンオブザイヤー(※今年の人)に、今年はアメリカのEV大手『テスラ』のCEOであるイーロン・マスク氏が選ばれた。同誌は理由を「社会の最も大胆で破壊的な変革を進めた」と説明した。同企画は、インド独立の父と言われるマハトマ・ガンジーら歴史に名を刻む人物が並ぶ。そこにマスク氏が入ったことは、EV時代の本格化を世界中に印象付けた。これを最も示す国がノルウェーだ。『ノルウェー電気自動車連合』の纏めでは、今年の新車登録台数のうち、乗用車でEVとプラグインハイブリッド車(PHV)が占める割合は、9月末までに84%を超えた。首都のオスロで、充電ステーションで家族連れが車にプラグを差し込む姿は、日常的な光景となっている。在日ノルウェー大使館一等書記官のオイヴィン・フォッスム・ヴァンベルグさんは、「70歳近い母がEVを買って、とても喜んでいる。EVの充電に使うスマートフォンのアプリ操作に苦労しそうですが」と笑う。普及の背景には、政府の強力な支援策がある。EVについては、25%の付加価値税(※日本の消費税に相当)や重量税等を免除し、ガソリン車よりも安く買えるようにした。商業施設やマンションは充電設備を用意する必要がある。EVは19世紀の自動車黎明期から開発が進められてきた。国内メーカーでは『東京電気自動車』(※後の『プリンス自動車工業』、現在の『日産自動車』)が1947年、『たま電気自動車』を発売。交換できるバッテリーを搭載し、航続距離は90㎞超を達成したという。

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だが、ガソリンの供給網が整備されると、より長距離を走るガソリン車に押され、世界の市場からほぼ姿を消した。EVが脚光を浴びたのは2010年代で、バッテリー性能の飛躍的な改善や、政府による環境規制の強化が後押しとなった。日米を始め、各国が相次いで意欲的な脱炭素目標を表明した昨年以降、この流れは一段と強まった。『国際エネルギー機関(IEA)』の『グローバルEVアウトルック2021』によると、世界で普及するEV(※PHV含む乗用車)の累計台数は、2015年に100万を漸く超えたのが、2020年に1000万の大台に乗った(※①)。昨年はコロナ禍による経済低迷で世界の自動車販売が前年比16%減となる中、EVの新規登録は41%増だった。経済対策で補助を厚くした欧州は、EV登録台数が2倍以上の137万台に達した。将来展望は、各国の目標等を考慮したシナリオで、2030年までに年平均で約30%成長するとした。自動車各社は対応を急ぐ。『フォルクスワーゲン』は2022~2026年の投資計画の中で、EVやデジタル化等の新技術に890億ユーロ(※約11兆4800億円)もの巨費を投じる。日本勢では『トヨタ自動車』が2030年までにEVの研究開発や設備投資に4兆円を充てる。日産や『ホンダ』も、EVを始めとする電動車シフトを強めている。「自動車が転換点を迎えていることを示す明らかなサインだ」。イギリスのグラスゴーで開催された『国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)』。議長国だったイギリス運輸省のトゥルーディー・ハリソン政務次官は先月10日、2040年までに世界の新車販売の全てを温室効果ガスを排出しないゼロエミッション車にする目的を掲げたことに対し、こう胸を張った。ただ、今月6日時点の参加はイギリス等27ヵ国で、自動車が基幹産業の一つである日本やドイツ、中国は見送った。自動車メーカーでは、ゼロエミッション車目標を『ゼネラルモーターズ(GM)』等が支持したものの、トヨタを始め日本企業やフォルクスワーゲンは加わらなかった。

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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

【テレビの裏側】(193) 片瀬那奈も退社! 独立に成功した芸能人の共通点

https://friday.gold/article/100374


キャプチャ  2022年1月7・14日号掲載

テーマ : 芸能ニュース
ジャンル : ニュース

【宇垣美里の漫画党宣言!】(62) 今ならわかる“嘘に込められた愛”

うんと幼かった頃、潔癖が服を着て歩いているようなタイプだった私は、些細な嘘も許せなかった。その人のことを思って吐いた嘘など偽善に過ぎず、真実のみが傷を癒すものだと。老いて同じことを繰り返し尋ねる祖母に対し、根気強く、然も初めて聞いたかのように返答し続ける大人たちに、何故彼女に現状をきちんと伝えないのかと怒ってすらいた。あの頃の大人と同い年くらいになった今、本当のことを伝えることだけが愛情ではないと理解できるようになった。『スカートをはいたおじいさん』で描かれているのは、そんな愛情をベースに生まれた優しくて切ない嘘だ。老人ホームで静かに余生を過ごす元役者の男性、准生。ある日、若い頃に思いを寄せていた日向が同じ老人ホームに入居することとなる。喜んだのも束の間、日向は妻の薫を亡くしたことですっかり生きる気力をなくし、認知症の症状が進んで過去の記憶も失っていた。何とか日向を元気づけたいと、准生は想い人の大切な人の仕草をつぶさに見ていたことを活かし、一世一代の大芝居を打つことに。スカートを穿いて化粧もして、薫になり切って日向の元を訪れるようになる。その昔、未だ多様な愛の形が認知されていなかった時代に自覚し、けれど告げることなどできなかった思い。その好きになる過程や、再会したことで沸き起こる感情がとても鮮明に描かれていて、勝手に自分とは隔たりがあると思っていた高齢男性である准生にぐっと感情移入することができた。

何より、日向のいい男っぷりといったら! 自信のなかった准生にかけた力いっぱいに彼を肯定する言葉、ぐいっと紅を拭う仕草の男らしさ、からの「うん その色のほうがいい よく似合っている」というセリフと優しい微笑み。“ザ・昭和”の男である日向は言葉少なな職人タイプで、個人的には苦手だった筈なのに、その奥に溢れんばかりの大きな愛が透けて見えて、「そりゃあ好きになっちゃうよねぇ…」と思わず納得してしまった。罪な男だ。繊細な線で描かれる老人たちは皆魅力的で、物語の纏う空気感はとても暖かい。特に、准生の瞳からは慈しみと共に切実とも言える想いが痛いほど伝わってくる。そして迷いも。騙し続けることが本当に正しいことなのかはわからない。認知症患者に最愛の人を騙ることは、許される行為なのだろうか。“恩返し”という言葉で偽装した准生のエゴにも思える。だって、きっと准生はただ日向と一緒にいたくてスカートを穿いた。引き時もあった筈なのに、共に過ごす時間が幸せ過ぎて。嘗ての自分なら許せなかっただろう、でも今はその優しさがわかる。そこにある愛に嘘はなかった。寄り添う気持ちは本物だった。想いに賞味期限なんてない。束の間の夢に過ぎないけれど、ほんの少しだけ報われるその時間の美しさと穏やかさに涙が出た。その人に相応しくありたいと、自分の背筋を伸ばして生きていけるような、そんな出会いがあれば、その想いを抱えて人は生きていける。つらく切ない恋だったけど、希望の残るどこか爽やかな読後感だった。


宇垣美里(うがき・みさと) フリーアナウンサー。1991年、兵庫県生まれ。同志社大学政策学部卒業後、『TBS』に入社。『スーパーサッカーJ+』や『あさチャン!』等を担当。2019年4月からフリーに。著書に『風をたべる』(集英社)・『宇垣美里のコスメ愛』(小学館)・『愛しのショコラ』(KADOKAWA)。


キャプチャ  2021年12月2日号掲載

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

【仁義なきキャッシュレス戦争】(04) 社会インフラへ課題も

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アメリカ各地で週末に開かれる農産物直売所の支払い風景が、コロナ禍を機に変わりつつある。現金やカードの受け渡しを避けたい消費者が増え、『スクエア』の端末を導入したきのこ店では、『Appleペイ』等で生産者に支払う姿が目立つ。中小事業者が対象の『カードフライト』によると、スマートフォン等非接触決済のアメリカでの取引数は、先月時点で1年半前と比べ約9倍になった。世界中でキャッシュレスは増えるが、新型コロナウイルスによる現金忌避だけが理由ではない。「支払いはQR決済が得です」。バンコクの飲食店では店員が客に声をかける。タイではクレジットカード決済だと店舗に数%の手数料がかかるが、QRコードは無料だ。7月のQR決済件数は、前年同月比2倍の9.3億回と急増した。無料の背景にあるのは、タイ政府と金融機関が2017年に導入したキャッシュレス決済システム『プロンプトペイ』だ。銀行口座と携帯電話番号、国民IDを紐付けると、消費者が持つ銀行のアプリから店舗の口座へ無料で即時送金できる仕組みを構築した。個人間の送金や公共料金の支払いにも対応し、金融インフラとして定着した。1~9月の電子決済取引額が前年同期比5割増のインドネシアでは、『GoTo』や『グラブ』等大手インターネット企業のスーパーアプリが牽引役となっている。アプリ上で買い物代行や生鮮食品宅配等幅広いサービスの決済に使え、多くの消費者が利用。路面店では現金お断りを掲げる店も出始めた。ただ、キャッシュレス先進国の中国では異変が起きている。「リンクを遮断することは消費者の利益を損なう」。中国工業情報化省の担当者は9月中旬の会見で警告した。多くの消費者が使う『アリババ集団』と『騰訊控股(テンセント)』のスーパーアプリは、決済手段を自社のものに限ることが多かった。当局の指導でどちらの決済も使えるようになりつつあるが、データを含め顧客を囲い込んできた2社にとっては、競争力が削がれることになる。企業がサービスを競い消費者の利便性が高まり、普及したスマホ決済。しかし、社会共通のインフラになると、データの取り扱いを含めてどこまで企業に自由を許すかという新たな問題も生まれてくる。 《敬称略》 =おわり

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駿河翼・平本信敬・工藤正晃・佐藤浩実・松田直樹・村松洋兵・谷翔太朗が担当しました。


キャプチャ  2021年11月6日付掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

【仁義なきキャッシュレス戦争】(03) 「決済は入り口に過ぎない」

20211224 11
8月から消費者向け小口融資を始めた『メルカリ』。インターネット上には「20万円まで金利年率3.4%。意外と低金利」等の書き込みが並ぶ。決済子会社『メルペイ』CEOの青柳直樹は「データを与信サービスに広げる」と、年18%が多い消費者金融との差別化を狙う。メルカリのフリマアプリは足元の月間利用者数が2000万人で、累計の出品件数は20億を超える。顧客の同意を得て、この売買データを与信に生かす。AIも導入しつつ、履歴に応じて借入可能額の上限や金利を変えている。『みずほ銀行』と『ソフトバンク』の共同出資会社『ジェイスコア』(東京都港区)は、今年度中にも利用者の同意を得た個人データを、活用したい外部企業に提供する“情報銀行”を始める。個人データは性格、趣味、人生経験等多様な約150項目から任意で入力する。AIが算出した信用力を基に、融資以外にも飲食店や百貨店での優遇が受けられることから、登録者は既に130万人に達する。金融サービスにとって与信は命。その判断に役立つ決済データは宝だ。“○×スーパー2493円 九州”・“△□スポーツ4752円 関東”――。QRコード決済の一括導入を支援する『ネットスターズ』(東京都中央区)社内の電光掲示板には、全国30万拠点のキャッシュレス決済の情報が1秒単位で表示され、地図上では地域毎の利用状況がわかる(※左画像)。同社社長の李剛は「決済はビジネスの入り口に過ぎない」と、決済データを使って小売店や外食店が“ミニアプリ”を作る手助けをする。ミニアプリとは、『PayPay』等利用者が多いアプリの中にあるアプリ。消費者は一々別のアプリを立ち上げる必要がなく、事業者は利用率が高まる効果がある。中国では『騰訊控股(テンセント)』のアプリ内に230万種類のミニアプリがある。病院、タクシー予約、出前、株式や不動産の取引等、決済を軸に様々なサービスが繋がる。PayPay副社長の馬場一は「様々なパートナーと組む」と、現在8種類のミニアプリを増やす為、異業種と話を進める。1994年に『マイクロソフト』創業者のビル・ゲイツは、「銀行業は必要だが、銀行は必要ではない」と話した。約30年経ち、金融とデータの垣根を越えた競争が加速している。 《敬称略》


キャプチャ  2021年11月5日付掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

【仁義なきキャッシュレス戦争】(02) 日本はブルーオーシャン

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「アメリカのペイパルホールディングスに買収されることになりました」。9月8日、『ペイディ』社長の杉江陸は『大和証券』の新規株式公開(IPO)の担当者に告げた。ペイディは、インターネット通販等で購入した商品の代金を後払いできるサービスを手がける。『アマゾンジャパン』や『楽天グループ』のフリマサイト等70万店で使え、女性や若年層等600万を超える利用者がいる。元々はIPOを目指し、日本では数少ないユニコーン(※評価額10億ドル超の未上場企業)とみられてきた。秒読みだったIPOをひっくり返したのが、アメリカの決済大手『ペイパル』からの3000億円の買収提案だった。「日本での事業展開に向けた強力な基盤」。ペイパルで日本事業を統括するピーター・ケネバンは、ペイディを日本やアジア市場開拓の切り込み役と位置付けるが、実は狙っていたのはペイディだけではなかった。それが、7月に『グーグル』が買収を決めたスマホ決済の『pring』(東京都港区)。水面下では、ペイパルとグーグルというアメリカの巨大IT企業が日本のスタートアップを奪い合っていた。pring社長の荻原充彦は2020年当時、資金調達に奔走していた。資金力に勝る携帯大手が巨額の販促費で顧客の囲い込みを進める中、収益化の目処が立たないpringに対して色よい返事をする国内投資家は殆どなかった。その状況下で声をかけてきたのが、ペイパルとグーグルだった。消費者との接点を既に持つ巨大IT企業にとって大事なのは顧客の量ではなく、決済機能のレベル。両社は国内での顧客争奪戦で劣勢でも、pringの潜在力を高く評価した。先に買収を持ちかけたのはペイパルだったが、グーグルが対抗。「ウェブサービスと同じように送金や決済手段を人々に届ける」という戦略に共鳴したpringは株主とも協議し、グーグル傘下に入ることを決めた。キャッシュレス化で遅れる日本だが、海外勢からみればブルーオーシャン(※未開拓の市場)にみえる。『三井住友カード』は先月、物理的なカードを発行しないクレジットカードを出した。国際ブランドの『VISA』がカードレスを認める、世界でも珍しい例となった。決済市場の陣取り合戦は財布からスマホへと舞台を変え、国内外入り乱れた競争が始まっている。 《敬称略》


キャプチャ  2021年11月4日付掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

【仁義なきキャッシュレス戦争】(01) 手数料、幕引かぬ消耗戦

生産性向上や社会のデジタル化とも関係するスマホ決済等キャッシュレス。手数料の有料化で始まった第二幕を追う。

20211224 09
新型コロナウイルスの感染者急増で、国内に重苦しい雰囲気が漂っていた8月最後の週末。『KDDI』の決済事業部では、社長の高橋誠を交えた会議が続いていた。10日前の8月19日、スマートフォン決済サービスで最大手の『PayPay』が無料としていた決済システム利用料を、10月から全面有料にすると発表していた。同じく、9月末まで手数料ゼロとしていた自社の『auペイ』はどうするか。会議では、「現場から収益化への道筋を付ける為にも、PayPayに追随して有料化すべきだ」との提案がでていた。「追う側が業界トップに合わせても意味がない」。高橋は無料期間を1年延長することを決めた。KDDIが30日に発表すると、今度は『NTTドコモ』が31日、『d払い』の無料期間をKDDIより1ヵ月長い13ヵ月間とすることを発表。加盟店の囲い込み競争は延長戦に入ることになった。QRコードを使うスマホ決済の市場は急拡大している。各社が手数料を無料にしたことで、導入店舗は増加。2019年に始まった国のポイント還元事業も普及を後押しした。2020年の決済額は4.2兆円と2年前に比べて25倍となり、非接触ICを使った電子マネー(※6兆円)に迫る。普及は進んだが、サービスを提供する各社は赤字が続く。手数料が無料で収入は限られ、加盟店が344万ヵ所でシェアが約7割のPayPayでも、2021年3月期の営業赤字は700億円に達する。携帯電話各社は将来の収益の基盤となる利用者を先ず囲い込もうと、赤字覚悟で巨額の販促費を注ぎ込んできたが、潮目は変わりつつある。

PayPayに出資する『ソフトバンク』社長の宮川潤一は、「決済手数料で必ず収益化し、独立してもらう」とはっぱをかける。早ければ2022年中の新規株式公開(IPO)を視野に入れ、手数料で稼ぐビジネスモデルを1年かけて練り上げてきた。昨年10月頃、PayPayは全国数千の加盟店の調査を始めた。「どの水準なら継続しますか?」。営業担当が店舗を訪ね、1%、2%、3%と料率毎に解約がどの程度広がるかも調べた。今年に入ると、社長の中山一郎ら幹部十数人が詰めの作業に着手、関係部署の社員には秘密保持契約への署名を求めた。「3%を超えると6割が離脱」「2%未満にすべきだ」。調査結果も踏まえ、3~5%とされるクレジットカードの手数料の半分程度の1.98%(※通常時)に決めた。「手数料がかかる以上、しょうがない」。食品スーパーマーケットの『オーケー』(神奈川県横浜市)は7月、スマホ決済の場合は会計の3%を割り引く会員サービスの対象外とした。食品スーパー等薄利多売の加盟店にとって、2%の負担は重い。滋賀県地盤のスーパー『平和堂』は2022年、自社アプリに決済機能を付ける方向で準備を進める。「自社の機能であれば手数料も安く抑えられる。中長期的には導入費用を回収できる」と目論む。有料化を打ち出して1ヵ月。離脱したPayPayの加盟店は0.2%だった。期間限定の還元策の影響もあるが、当初の業界の見方や市場調査より低く抑えられている。それでも追う側の攻勢が緩む気配はない。『楽天グループ』は、中小加盟店の手数料と売り上げの振込手数料を1年間無料にした。ポイントサービスは会員規模が1億人を超える。ポイントが利用できる店舗をスマホ決済にも呼び込む戦略だ。副会長の穂坂雅之は「結果は数年後にわかる」と巻き返しに自信をみせる。現金大国と呼ばれ、キャッシュレス決済の比率が20年で約30%と先進国でも低い日本。『野村総合研究所』はATMの運営費や現金輸送、レジ管理に伴う人件費等を合わせた日本の現金インフラの社会コストを、年1兆6000億円と試算する。加盟店の手数料無料、利用者への還元策によってスマホ決済の裾野は広がった。しかし、消耗戦を繰り広げているだけでは、持続可能な決済のインフラにはならない。キャッシュレスで社会をどう変えるのか。無料化競争の先を見据える段階にきている。 《敬称略》


キャプチャ  2021年11月3日付掲載

テーマ : 経済ニュース
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