故郷は遠くにありて思ふもの
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食かたゐとなるとても
帰るところにあるまじや
ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや
室生犀星「小景異情」より
上砂川鶉本町
この家の以前に建てられた家から60年前に
嫁したのではないだろうか?二箇建ちだった。
そこは上砂川町の 教職員住宅だった。
裏庭は畑になっていて土手の下には 上砂川駅から砂川駅に
向かって汽車が走っていた。
上砂川炭鉱から積んだ石炭列車が日に何度か
わたし達の言う「貨物列車」が走っていた。
ぴかぴか光る塊炭が山積みされて、長い列車だった。
焼け山と呼んでいた。
この山からヤマブドウが沢山採れ、 太いツタにぶら下がり
弟たちは ターザンごっこをしていた。
ツタ漆にかぶれて 直ぐ下の弟は人相が変わるほど
腫れ上がったりもした。
ある日 魚釣りに弟に誘われて この山を越え、文殊の池に釣りに行った。
途中で 弟はナイフで笹竹を小刀で切って、太い糸を結わえてくれた。
餌は「どんぐい虫」か「ミミズ」で、針に付けてくれた。
待って・・待って・・陽が陰り 夕闇が迫る頃
一匹も釣れない・・姉弟は再び夕焼けの中この山を越えて
帰ってきた。
また行って 今度こそ釣ろうと!二人で言い合った。