ワシントンの最新の神話と嘘と石油戦争
Washington’s Latest Myths, Lies and Oil Wars
ウィリアム・エングダール F. William Engdahl
2018年7月6日
<記事原文>
https://journal-neo.org/2018/07/06/washington-s-latest-myths-lies-and-oil-wars/
(翻訳:新見明)

アメリカのドライバーがガソリン価格値上げに文句を言っているとき、トランプ政権とその背後の石油・金融権益集団は大喜びで銀行へ向かっている。もし我々がイランやベネズエラや今はリビアの一見異なる出来事を見れば、アメリカ石油支配に直ちに有利になるように、主要な石油流通経路を破壊しようとするする首尾一貫した戦略があることがはっきりする。
10年前、アメリカが、世界最大の石油生産者のサウジアラビアやロシア共和国と入れ替わるなどということは考えられないことだった。今日ではそれは、トランプ政権とシェール・オイル生産に資金投入するウォールストリート銀行の外交政策の優先事項なのだ。その戦略はロシアやイランやベネズエラのような独立した石油生産力を弱体化するという地政学的かつ究極的な狙いなのだ。
世界石油価格に劇的に影響を与えた最近のいくつかの事件を見ると、明確なパターンが、自由市場の力でなく、地政学的策謀から生じていることがわかる。とりわけイランやベネズエラやごく最近のリビアのケースを見ると、ワシントンが再びシェールオイル産業に経済的投資をするため、石油価格をかなり高くしようとしていることが明らかである。
イラン核合意破棄は、核兵器ではなく石油が狙い
トランプ政権がイラン核合意を一方的に破棄した明きらかな狙いは、イランの核開発計画とは本質的に何の関係もなく、イラン石油取引や石油・ガス開発に経済制裁を直接加えるものだ。そのイラン核合意は、イランを西欧の経済制裁から解放し(とりわけ石油・ガス産業を)、何十億ドルもの外国投資の道を開いていたのだった。
イランが核合意を遵守しているという国連IAEA報告を無視して、トランプ政権は、5月事実上の合意終了を宣言した。しかしEUやロシアや中国など署名国は反対した。11月4日、ワシントンの要求に対し、イランが屈服することはあり得ないので、主にイラン石油輸出を狙った新たな厳しい制裁が実行されるだろう。ワシントンは、イエメンでのシーア派勢力やシリアのアサドへの支援からイランが撤退することとも関連させている。核合意以来、イランの国家石油会社は石油輸出を4百万バレル/日まで再建したが、第二次制裁を通してワシントンは、イランの石油輸出支援するEUや他の会社はアメリカとのビジネスでも制裁されるという厳しい障害が設けられた。すでにフランスエネルギー会社トタルはイランの巨大エネルギー部門のジョイント・ベンチャーを終わらせると述べた。
7月2日、米国務省幹部はイランにおけるワシントンの狙いを明らかにした。「我々の狙いはイラン体制に原油取引で収入ゼロにする圧力を加えることだ。我々は世界経済の混乱を最小限にするようにしている。しかし世界的に十分な余剰石油生産能力があることに我々は自信をもっている。」
同様にベネズエラも
トランプ政権は、11月下旬には世界市場でイラン石油をターゲットにすることを再開するが、それはベネズエラの石油生産の完全な崩壊を促すものである。それはマドゥーロ政権に対するワシントンの現在進行中の金融・政治戦争の一部である。
最近のベネズエラ選挙で現職の社会主義者マドゥーロ大統領が勝利したとき、ワシントンは国有石油会社PDVSAへの全てのアクセスを遮断する制裁をエスカレートさせた。またアメリカの銀行によるベネズエラへの新たな借款の再融資を全て打ち切る制裁も課した。最近のOPEC閣僚会議に先立って、ベネズエラ石油相マヌエル・ケベドは断言した。「これらの制裁は、非情に強力で、制裁は実質的にPDVSAの流通を止めている。それは石油市場への攻撃だ。」国際エネルギー期間(IEA)によればベネズエラの石油生産は、5年前の290万バレル/日から、6月、平均136万バレル/日に激減した。
するとこの時期を利用して、2007年ベネズエラが米石油メジャーを国有化したベネズエラ国有石油会社PDVSAが持つ資産63,600万ドルを、アメリカの主要石油会社コノコフィリップスは差し押さえた。その差し押さえは、PDVSAが輸出義務を遂行するのを阻止し、ベネズエラの港でタンカーを封鎖したのであった。ベネズエラの石油輸入における膨大な損失に対応するため、中国開発銀行はベネズエラ石油会社に50億USドルの借款を公表したところだ。ベネズエラとイラン石油の主要輸入国は中国であることを、米財務省も国務省も十分承知していることである。
そして現在のリビア
石油貿易業者は、イランやベネズエラにおける供給減少に対応して、様々なグレードの原油価格を上げて、最初の3年で70ドル以上に高騰させたが、市場状況は、アメリカ石油産業、特にシェール・オイルの観点から見ると、まだ確実ではない。それは、リビアの最近の進展を考えると変わってきている。
リビアはアフリカで最も経済的に発展した国であったが、カダフィのリビアをワシントンが「人道的」爆撃をして以来、リビアは事実上内戦状態であり、政治的にも分断されたままである。一方では国連が据え、ワシントン支援の政権がトリポリにあり、欺瞞的な名称の国民協調政府をつくっている。ファイズ・アル=サラージが指名された首相であり、また大統領委員会(PC)の議長をつとめている。アル=サラージを支援するのは、ムスリム同胞団である。つまりそれはワシントンが支援する「アラブの春」やエジプトのムハメド・ムルシー政権の背後にある秘密政治組織サラフィー主義者である。トリポリ・グループはアメリカ、イギリス、フランスにも支援されている。
(「中東調査会」より、訳者挿入)https://www.meij.or.jp/kawara/2016_096.html
もう一方のアル=サラージの対抗勢力は、フィールド・マーシャル・カリファハフタルであり、彼は反サラフィ主義リビア国民軍を通して事実上軍事支配を打ち立てた。また石油が豊富な東リビアで主要部族長の支援を受けていて、リビア下院(HOR)のリビア人の支援も受けている。
ハフタルは、彼がテロリストと呼ぶムスリム同胞団の仇敵であり、国の東部の石油三日月地帯を事実上軍事支配した。彼の勢力が最近、重要な石油輸出港であるハリガやズエティナを含む東リビアの重要部分を支配したとき、ハフタルはトリポリのアメリカ支援政権に真っ向から対立した。東部石油港の支配は、国連には認められていないが東部政府に属し、独立したベンガジ基盤の国家石油会社のものになると宣言した。その時点で、7月2日、ワシントンの支援を得て、西のトリポリ国営石油(NOC)は東部港に関して不可抗力条項*を宣言し、世界市場向けリビア石油の850,000バレル/日を出荷停止とした。
*(訳注:不可抗力条項とは戦争などで契約を履行できないことを免責する条項)
ハフタル軍は、エジプト大統領アル=シシときわめて密接であることは知られており、ムスリム同胞団の仇敵でもある。ハフタルはまたプーチンのロシアとよい関係にある。しかし石油豊富な東部でハフタル勢力がアメリカ支援のトリポリ体制から並立した石油経済を阻止することは、世界石油市場に劇的な変化を与えることであり、世界市場価格を2014年以来見られなかった1バレル80ドル以上に押し上げるのはごぼ確実である。
それは好都合なことに、アメリカのシェールオイル産出を大きく増加させる利益水準になるだろう。
アメリカのシェールオイル:新たな石油地政学
アメリカ最大のシェールオイル生産者であるテキサス・パイオニア・リソーシズ会長のスコット・シェフィールドは、最近のウィーンのOPEC会合でのインタビューで、今年度末前にアメリカの生産はロシアを超えて世界最大の石油生産国になるだろうと宣言した。彼はアメリカの生産は3・4ヶ月したら1100万バレル/日を超え、急速に1300万バレル/日に達するだろう。そしてテキサスのパーミアン盆地のような場所のシェールオイル生産に基づいて、7・8年以内に1500万バレル/日に達するだろうと述べた。彼はまた、シェールオイルの現在最も好ましい価格は1バレル60~80ドルの範囲であると述べた。トランプ外交政策の背後にいる有力なエネルギー企業が、イランやベネズエラや今はリビアの石油供給を標的にして、アメリカのシェールオイルをこの数ヶ月で世界市場にあふれさせ、石油だけでなく、さらにロシアの石油に取って代わることを狙っているなどということが可能だろうか。
注目すべきは、イランはアメリカが石油価格を上げるために、JCPOAから撤退したことを非難した。5月11日イラン石油相ビジャン・ナムダル・ザンギャネは宣言した。「トランプ大統領は石油市場で裏表がある。一部のOPEC加盟国はアメリカの術中にはまっている。アメリカはシェールオイル生産を増大させたいのだ。」
ワシントンの石油支配戦略で長期的問題は、シェールオイル供給の不安定性である。最近の技術投資がかなり生産性や生産速度を改善させたが、シェールオイルは大きな問題を抱えている。一つは既存のシェール油井が既存の油井よりも急速に枯渇することである。典型的なものは最初の1年で75%かそれ以上生産が落ちる。そのとき全体量を維持するためにさらなる油井やもっと費用のかかる油井が必要とされる。その他の問題は、フラッキングのために油井に水を大量に必要とすることである。パーミアン盆地のようなところでは1バレルの石油に5バレルの水が必要とされる。産業報告では、アメリカのシェールオイル生産の黄金期は2020年のはじめに終わるだろうと示唆されている。価格上昇や品質低下や他の制約がシェールオイルの成長はアメリカ石油産出を制限する。それはアメリカを偉大な石油王にしようとする現在のトランプ政権戦略に大きな否定的要素を与えるだろう。それは究極的に神話と嘘と石油戦争によって成り立つ戦略である。
F・ウリアム・エングダルは戦略危機コンサルタントで講師である。かれはプリンストン大学の政治学学位をもっていて、石油と地政学に関してベストセラーの著者である。これはオンライン雑誌「New Eastern Outlook」への独占寄稿である。
ウィリアム・エングダール F. William Engdahl
2018年7月6日
<記事原文>
https://journal-neo.org/2018/07/06/washington-s-latest-myths-lies-and-oil-wars/
(翻訳:新見明)

アメリカのドライバーがガソリン価格値上げに文句を言っているとき、トランプ政権とその背後の石油・金融権益集団は大喜びで銀行へ向かっている。もし我々がイランやベネズエラや今はリビアの一見異なる出来事を見れば、アメリカ石油支配に直ちに有利になるように、主要な石油流通経路を破壊しようとするする首尾一貫した戦略があることがはっきりする。
10年前、アメリカが、世界最大の石油生産者のサウジアラビアやロシア共和国と入れ替わるなどということは考えられないことだった。今日ではそれは、トランプ政権とシェール・オイル生産に資金投入するウォールストリート銀行の外交政策の優先事項なのだ。その戦略はロシアやイランやベネズエラのような独立した石油生産力を弱体化するという地政学的かつ究極的な狙いなのだ。
世界石油価格に劇的に影響を与えた最近のいくつかの事件を見ると、明確なパターンが、自由市場の力でなく、地政学的策謀から生じていることがわかる。とりわけイランやベネズエラやごく最近のリビアのケースを見ると、ワシントンが再びシェールオイル産業に経済的投資をするため、石油価格をかなり高くしようとしていることが明らかである。
イラン核合意破棄は、核兵器ではなく石油が狙い
トランプ政権がイラン核合意を一方的に破棄した明きらかな狙いは、イランの核開発計画とは本質的に何の関係もなく、イラン石油取引や石油・ガス開発に経済制裁を直接加えるものだ。そのイラン核合意は、イランを西欧の経済制裁から解放し(とりわけ石油・ガス産業を)、何十億ドルもの外国投資の道を開いていたのだった。
イランが核合意を遵守しているという国連IAEA報告を無視して、トランプ政権は、5月事実上の合意終了を宣言した。しかしEUやロシアや中国など署名国は反対した。11月4日、ワシントンの要求に対し、イランが屈服することはあり得ないので、主にイラン石油輸出を狙った新たな厳しい制裁が実行されるだろう。ワシントンは、イエメンでのシーア派勢力やシリアのアサドへの支援からイランが撤退することとも関連させている。核合意以来、イランの国家石油会社は石油輸出を4百万バレル/日まで再建したが、第二次制裁を通してワシントンは、イランの石油輸出支援するEUや他の会社はアメリカとのビジネスでも制裁されるという厳しい障害が設けられた。すでにフランスエネルギー会社トタルはイランの巨大エネルギー部門のジョイント・ベンチャーを終わらせると述べた。
7月2日、米国務省幹部はイランにおけるワシントンの狙いを明らかにした。「我々の狙いはイラン体制に原油取引で収入ゼロにする圧力を加えることだ。我々は世界経済の混乱を最小限にするようにしている。しかし世界的に十分な余剰石油生産能力があることに我々は自信をもっている。」
同様にベネズエラも
トランプ政権は、11月下旬には世界市場でイラン石油をターゲットにすることを再開するが、それはベネズエラの石油生産の完全な崩壊を促すものである。それはマドゥーロ政権に対するワシントンの現在進行中の金融・政治戦争の一部である。
最近のベネズエラ選挙で現職の社会主義者マドゥーロ大統領が勝利したとき、ワシントンは国有石油会社PDVSAへの全てのアクセスを遮断する制裁をエスカレートさせた。またアメリカの銀行によるベネズエラへの新たな借款の再融資を全て打ち切る制裁も課した。最近のOPEC閣僚会議に先立って、ベネズエラ石油相マヌエル・ケベドは断言した。「これらの制裁は、非情に強力で、制裁は実質的にPDVSAの流通を止めている。それは石油市場への攻撃だ。」国際エネルギー期間(IEA)によればベネズエラの石油生産は、5年前の290万バレル/日から、6月、平均136万バレル/日に激減した。
するとこの時期を利用して、2007年ベネズエラが米石油メジャーを国有化したベネズエラ国有石油会社PDVSAが持つ資産63,600万ドルを、アメリカの主要石油会社コノコフィリップスは差し押さえた。その差し押さえは、PDVSAが輸出義務を遂行するのを阻止し、ベネズエラの港でタンカーを封鎖したのであった。ベネズエラの石油輸入における膨大な損失に対応するため、中国開発銀行はベネズエラ石油会社に50億USドルの借款を公表したところだ。ベネズエラとイラン石油の主要輸入国は中国であることを、米財務省も国務省も十分承知していることである。
そして現在のリビア
石油貿易業者は、イランやベネズエラにおける供給減少に対応して、様々なグレードの原油価格を上げて、最初の3年で70ドル以上に高騰させたが、市場状況は、アメリカ石油産業、特にシェール・オイルの観点から見ると、まだ確実ではない。それは、リビアの最近の進展を考えると変わってきている。
リビアはアフリカで最も経済的に発展した国であったが、カダフィのリビアをワシントンが「人道的」爆撃をして以来、リビアは事実上内戦状態であり、政治的にも分断されたままである。一方では国連が据え、ワシントン支援の政権がトリポリにあり、欺瞞的な名称の国民協調政府をつくっている。ファイズ・アル=サラージが指名された首相であり、また大統領委員会(PC)の議長をつとめている。アル=サラージを支援するのは、ムスリム同胞団である。つまりそれはワシントンが支援する「アラブの春」やエジプトのムハメド・ムルシー政権の背後にある秘密政治組織サラフィー主義者である。トリポリ・グループはアメリカ、イギリス、フランスにも支援されている。

(「中東調査会」より、訳者挿入)https://www.meij.or.jp/kawara/2016_096.html
もう一方のアル=サラージの対抗勢力は、フィールド・マーシャル・カリファハフタルであり、彼は反サラフィ主義リビア国民軍を通して事実上軍事支配を打ち立てた。また石油が豊富な東リビアで主要部族長の支援を受けていて、リビア下院(HOR)のリビア人の支援も受けている。
ハフタルは、彼がテロリストと呼ぶムスリム同胞団の仇敵であり、国の東部の石油三日月地帯を事実上軍事支配した。彼の勢力が最近、重要な石油輸出港であるハリガやズエティナを含む東リビアの重要部分を支配したとき、ハフタルはトリポリのアメリカ支援政権に真っ向から対立した。東部石油港の支配は、国連には認められていないが東部政府に属し、独立したベンガジ基盤の国家石油会社のものになると宣言した。その時点で、7月2日、ワシントンの支援を得て、西のトリポリ国営石油(NOC)は東部港に関して不可抗力条項*を宣言し、世界市場向けリビア石油の850,000バレル/日を出荷停止とした。
*(訳注:不可抗力条項とは戦争などで契約を履行できないことを免責する条項)
ハフタル軍は、エジプト大統領アル=シシときわめて密接であることは知られており、ムスリム同胞団の仇敵でもある。ハフタルはまたプーチンのロシアとよい関係にある。しかし石油豊富な東部でハフタル勢力がアメリカ支援のトリポリ体制から並立した石油経済を阻止することは、世界石油市場に劇的な変化を与えることであり、世界市場価格を2014年以来見られなかった1バレル80ドル以上に押し上げるのはごぼ確実である。
それは好都合なことに、アメリカのシェールオイル産出を大きく増加させる利益水準になるだろう。
アメリカのシェールオイル:新たな石油地政学
アメリカ最大のシェールオイル生産者であるテキサス・パイオニア・リソーシズ会長のスコット・シェフィールドは、最近のウィーンのOPEC会合でのインタビューで、今年度末前にアメリカの生産はロシアを超えて世界最大の石油生産国になるだろうと宣言した。彼はアメリカの生産は3・4ヶ月したら1100万バレル/日を超え、急速に1300万バレル/日に達するだろう。そしてテキサスのパーミアン盆地のような場所のシェールオイル生産に基づいて、7・8年以内に1500万バレル/日に達するだろうと述べた。彼はまた、シェールオイルの現在最も好ましい価格は1バレル60~80ドルの範囲であると述べた。トランプ外交政策の背後にいる有力なエネルギー企業が、イランやベネズエラや今はリビアの石油供給を標的にして、アメリカのシェールオイルをこの数ヶ月で世界市場にあふれさせ、石油だけでなく、さらにロシアの石油に取って代わることを狙っているなどということが可能だろうか。
注目すべきは、イランはアメリカが石油価格を上げるために、JCPOAから撤退したことを非難した。5月11日イラン石油相ビジャン・ナムダル・ザンギャネは宣言した。「トランプ大統領は石油市場で裏表がある。一部のOPEC加盟国はアメリカの術中にはまっている。アメリカはシェールオイル生産を増大させたいのだ。」
ワシントンの石油支配戦略で長期的問題は、シェールオイル供給の不安定性である。最近の技術投資がかなり生産性や生産速度を改善させたが、シェールオイルは大きな問題を抱えている。一つは既存のシェール油井が既存の油井よりも急速に枯渇することである。典型的なものは最初の1年で75%かそれ以上生産が落ちる。そのとき全体量を維持するためにさらなる油井やもっと費用のかかる油井が必要とされる。その他の問題は、フラッキングのために油井に水を大量に必要とすることである。パーミアン盆地のようなところでは1バレルの石油に5バレルの水が必要とされる。産業報告では、アメリカのシェールオイル生産の黄金期は2020年のはじめに終わるだろうと示唆されている。価格上昇や品質低下や他の制約がシェールオイルの成長はアメリカ石油産出を制限する。それはアメリカを偉大な石油王にしようとする現在のトランプ政権戦略に大きな否定的要素を与えるだろう。それは究極的に神話と嘘と石油戦争によって成り立つ戦略である。
F・ウリアム・エングダルは戦略危機コンサルタントで講師である。かれはプリンストン大学の政治学学位をもっていて、石油と地政学に関してベストセラーの著者である。これはオンライン雑誌「New Eastern Outlook」への独占寄稿である。
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