ロシアのオレシュニクと中国の「オイル・マネーを使った脱ドル化作戦」に米国は太刀打できない
<記事原文 寺島先生推薦>
How Russia and China are rewiring Greek mythology
筆者:ペペ・エスコバル(Pepe Escobar)
出典:Strategic Culture Foundation 2024年11月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年12月5日
ロシアがギリシャ神話全知全能の神ゼウスの役割を刷新するいっぽうで、中国はギリシャ神話の商業の神ヘルメスの役割を刷新することに忙しい。
ああ、食器洗い機用の半導体チップ*が解き放った驚異。
*2022年のウクライナへの特別軍事作戦により西側から課された制裁のため、ロシアは軍事用の半導体が不足し、その不足分を家電用の半導体チップにより補ってきた状況があった。
神々の王ゼウスはなぜそれを予見できなかったのだろうか。ゼウスのもつ神聖な直感ならば、その先、オレシュニク(ロシア語でヘーゼルナッツを実らせるハシバミの木の意味を持つなんの怖さも滲ませない響きだが)を通じてロシアで彼の雷が再現されることを承知していたろうに。
神話は、その後の全ての現実を予示する。
さて、ここでニュートンの話をしよう。彼の公式によると、非常に高速で飛行する長さ1メートルのウラン弾は、6メートルの厚さの硬い岩を貫通することができる。 (BGMに英国のハードロックバンド「ディープ・パープル」の「ハイウェイ・スター」は如何?)。
毎秒1200メートルで飛行する弾頭は、46メートルの厚さのコンクリートを貫通する能力がある。
ここで、衝撃速度が音速を超える場合を想像していただきたい。当然、衝撃の深さは指数関数的に激しくなる。
非常に高速の衝撃により、前方にあるものはすべてガスに変わる。運動衝撃波は50メートルほどの深さまで到達し、地下深くに群がり、その跡にあるすべてのものを粉砕、破壊し、実際に内破する。
ドネプロペトロフスクのユジュマシュ工場の地下深くでまさにそのような事態が起こった。オレシュニクはこうした物理的原理を改良して考案された。そしてロシアはオレシュニクの最初の実験では、弾頭ではなく空砲だけを使った。
商品にご満足いただけなければ返金いたします
目を転じて、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とカザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領がアスタナで直接会談し、CSTO(集団安全保障条約)内での協力強化に向けた新たな取り組みを含め、両国の戦略的友好関係を深めている様子を見てみよう。
さらに、カザフスタンはBRICSの友好国となるよう正式に招待された。
プーチン大統領は、オレシュニクとNATO代理戦争全般について、報道陣からかなりの数の質問に答えた。しかし、最も興味深かったのは、 CSTO集団安全保障理事会の出席者制限付き会議での演説だったと言えるだろう。その演説の一部は、長々と引用する価値がある。特に、大統領が「顧客満足度」について冗談を言ったからだ。
「ロシアのイスカンデル・ミサイル・システムとその改良型は、米国の3つのATACMSミサイル改良型すべてのロシア版です。弾頭の重量はTNT(トリニトロトルエン)換算でほぼ同じですが、イスカンデル・ミサイルの方が射程距離が長いです。新しい米国製のPrSMミサイルは、どの仕様でもロシアの同等品より優れていません。米国のストームシャドウ空中発射ミサイル、フランスのSCALP、ドイツのタウルスは、TNT換算で450~480キログラムの弾頭を持ち、射程は500~650キロメートルです。ドイツのタウルスミサイルの射程は650キロメートルです。Kh-101空中発射ミサイルは、これらのシステムのロシア版で、弾頭の威力では同等ですが、射程距離では各ヨーロッパ製システムを大幅に上回っています。先ほど述べたように、新しい米国製のPrSMミサイルは、JASSMミサイルと同様に、技術仕様の点でロシアの同等品より劣っています。我が国は潜在的敵国が使用している関連兵器システムの間違いのない数を把握しています。それらのうち、何個が保管施設に保管されているか、それらの正確な位置、ウクライナに供給された兵器の数、さらに何個が供給予定であるかを知っています。関連ミサイルシステムと関連機器の生産に関して言えば、ロシアはNATO諸国全体の生産量の合計の10倍を保有しています。来年、我々は生産量をさらに25~30%増やす予定です。キエフ政権の首謀者たちが、主人に別の種類の軍事装備を懇願しているのがわかります。カリブル、キンジャール、ジルコンの極超音速ミサイルシステムを忘れてはなりません。これらは、その技術仕様の点で世界でも比類のないものです。それらの生産も増加しており、全速力で進んでいます。このような製品が、この階級の製品メニューにまもなく追加されるかもしれません。いわば、顧客満足は保証されている、ということです。」
近づく隕石衝突
プーチン大統領は、オレシュニクの攻撃を隕石の衝突の衝撃に例え、「歴史から、どんな隕石がどこに落ち、どんな結果になったかはわかっています。時には湖が丸ごとできるほどでした」と述べた。同時に、彼は「新兵器を扱う際に宣伝は不適切です」と語気を強めた。オレシュニクの場合もまさにそうだった。
「我が国は実験を実施し、実際に結果が出るまで待ちました。それから発表をおこなったのです。」
これが、一見無害に見えるこのヘーゼルナッツ、つまりゼウスの雷の完全な複製品の実際の作成者であるミハイル・コヴァルチュク氏が、シリウス教育センターでおこなわれた第4回若手科学者会議の傍らでロシアのイズベスチヤ紙に語ったことの背景となっている。
コワルチュク氏はクルチャトフ研究所国立研究センターの所長である。同氏は「ロシアが持つ超高温に耐えられる素材によってオレシュニクシステムの開発が可能になり、他の種類の極超音速兵器の開発も可能になるでしょう」と述べた。
ロシアはどうやって他の国を追い抜くことができたのか、全世界が疑問に思っているかもしれない。「我が国は世界の5先進国の1つです。(中略)我が国は短期間で極超音速兵器を開発しました。これらはかつて1500度で機能した素材で、その後1800度、そして2000度でも機能できるようになりました。我が国はそれを実現しましたが、他の国はできませんでした」。
さらに、コヴァルチュク氏は「高温に耐えられる他の素材を使えば、さらに高度な兵器を作ることも可能になる。次の発展は、2500~3000度に耐えられる素材の開発になるはずです」と語った。
これにより、例えば、非常に低い高度でもマッハ15、あるいはマッハ20でミサイルを飛行させ、すでに実験済みのオレシュニクよりもさらに壊滅的な衝撃(プラズマ衝撃波を含む)を与えることが可能になる。
いっぽう、プーチン大統領は、国防省が現在、オレシュニクによるさらなる攻撃の「標的を選定中」であり、ウクライナの「意思決定中枢部」、工業生産拠点、軍事施設などが含まれている、とほぼ何気なく語った。NATOは聞いているのだろうか? 明らかに聞いていない。
最大のソフトパワーとは何か
ロシアがゼウスの役割を刷新する一方で、中国はヘルメスの役割を刷新することに忙しい。
中国当局は現在、サウジアラビアで米ドル建て債券を販売している。つまり、中国がこれらの債券を多く販売すればするほど、これらの「アラブ」米ドルは一帯一路(BRI)の有効諸国への融資として転用され、覇権国米国が支配するIMFと世界銀行への強要的な債務を返済できるようになる、ということだ。
最も素晴らしいのは、これらのBRI友好諸国が、中国へのドル建て負債を、ほかでもない人民元を使って、あるいは生産した商品や天然資源を使って返済できる点にある。
この戦略を「脱ドル化超高速道路」とでも呼ぼう。そして、中国の米ドル建て債券は金(きん)に裏付けられているのに対し、米ドル建て債券は紙幣印刷機に裏付けられていることをゆめゆめお忘れなく。
多額の負債を抱える中国について西側諸国があれこれ言っているのは全く無意味だ。中国の債務は、明らかに莫大だが、その大半は人民元建ての国内債務だ。中国は国内債券市場を利用して、企業が資金を投資し、実質的に危険なしでまともな利益を得られるよう支援している。そして、そのすべてが経済を刺激しながらおこなわれている。
中国政府は、サウジアラビアからオイル・マネーを引き出すために米ドル建て債券を発行するという素晴らしい名案を思いついた。そうすれば、オイル・マネーが直接米国に戻らなくなるからだ。多くの国が以前のように米国債を購入していないことは誰もが知っている。そのため、債券利回りが上昇する必要があることも。中国政府は、借入利回りを高く維持する方法を見つけた。それは米国に対する借入の費用を高くすることだ。
最も重要な方向性は、債券から調達した米ドルが、IMFや世界銀行からの法外な利子の融資を返済するための融資として、多くの南半球諸国に提供されるという点だ。中国政府は、20~30%の利子を支払う代わりに、これらの国々に債券金利(5%程度)を課すだけだ。つまり、中国がやっていることは、基本的に、南半球諸国のために安い米ドルを借りるための隠れ蓑になっているということだ。これが、最大限のソフトパワーの目的である。
南半球諸国が返済した米ドルはどうなるのか? 過剰流動性は米国を新たなインフレ危機に陥れるだろう。株式市場は活況を呈するだろうが、金利は上昇し、借り入れ費用はさらに高くなる。これに高関税が加わり、香港の賢い取引業者のことばを借りれば「完全なる嵐」だ。
ゼウスと美しいプレアデスのマイアの息子であるヘルメスを演じている中国へようこそ。ヘルメスが持つ無数の神性の中には、旅行者や道路と貿易 (まさにBRI!連結回廊!)、狡猾さ、外交、言語、書記、占星術などがある。ゼウスの伝令者であり個人的な使者でもあるヘルメスは、いたずら好きでもある(「サウジアラビアで米ドルを我が中国から買ってください」のようないたずらだ)。
ここでも、ロシアがチェスをしているのが見える。ロシアが何手もの先を考えてチェスをしているのに対し、中国は囲碁をしている。中国も同じように何手もの先を考えて囲碁をしている。そして、この両国の友好関係は、常に同期し、素敵なギリシャ神話が復活しているかのような様相を呈している。
ヘーゼルの木という名を持つ雷撃により、ロシアに対する覇権国米国の戦略は完全に死に体となった。ロシアを挑発して戦術核兵器で攻撃させることで得た「戦略的優位性」はもはやさらば、だ。今やロシアは時速1万2千キロでいつでもどこでも攻撃できる。しかも放射線も出さず、民間人の犠牲者も増やさずに、だ。
軍事的にも地政学的にも、衝撃的な波が押し寄せている。NATO属国諸国が何もわかっていないのも無理はない。ゼウスは冷えた赤ワインのブルネッロの瓶を飲みながら、ニヤニヤしながらチェス盤を見守っている。
How Russia and China are rewiring Greek mythology
筆者:ペペ・エスコバル(Pepe Escobar)
出典:Strategic Culture Foundation 2024年11月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年12月5日
ロシアがギリシャ神話全知全能の神ゼウスの役割を刷新するいっぽうで、中国はギリシャ神話の商業の神ヘルメスの役割を刷新することに忙しい。
ああ、食器洗い機用の半導体チップ*が解き放った驚異。
*2022年のウクライナへの特別軍事作戦により西側から課された制裁のため、ロシアは軍事用の半導体が不足し、その不足分を家電用の半導体チップにより補ってきた状況があった。
神々の王ゼウスはなぜそれを予見できなかったのだろうか。ゼウスのもつ神聖な直感ならば、その先、オレシュニク(ロシア語でヘーゼルナッツを実らせるハシバミの木の意味を持つなんの怖さも滲ませない響きだが)を通じてロシアで彼の雷が再現されることを承知していたろうに。
神話は、その後の全ての現実を予示する。
さて、ここでニュートンの話をしよう。彼の公式によると、非常に高速で飛行する長さ1メートルのウラン弾は、6メートルの厚さの硬い岩を貫通することができる。 (BGMに英国のハードロックバンド「ディープ・パープル」の「ハイウェイ・スター」は如何?)。
毎秒1200メートルで飛行する弾頭は、46メートルの厚さのコンクリートを貫通する能力がある。
ここで、衝撃速度が音速を超える場合を想像していただきたい。当然、衝撃の深さは指数関数的に激しくなる。
非常に高速の衝撃により、前方にあるものはすべてガスに変わる。運動衝撃波は50メートルほどの深さまで到達し、地下深くに群がり、その跡にあるすべてのものを粉砕、破壊し、実際に内破する。
ドネプロペトロフスクのユジュマシュ工場の地下深くでまさにそのような事態が起こった。オレシュニクはこうした物理的原理を改良して考案された。そしてロシアはオレシュニクの最初の実験では、弾頭ではなく空砲だけを使った。
商品にご満足いただけなければ返金いたします
目を転じて、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とカザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領がアスタナで直接会談し、CSTO(集団安全保障条約)内での協力強化に向けた新たな取り組みを含め、両国の戦略的友好関係を深めている様子を見てみよう。
さらに、カザフスタンはBRICSの友好国となるよう正式に招待された。
プーチン大統領は、オレシュニクとNATO代理戦争全般について、報道陣からかなりの数の質問に答えた。しかし、最も興味深かったのは、 CSTO集団安全保障理事会の出席者制限付き会議での演説だったと言えるだろう。その演説の一部は、長々と引用する価値がある。特に、大統領が「顧客満足度」について冗談を言ったからだ。
「ロシアのイスカンデル・ミサイル・システムとその改良型は、米国の3つのATACMSミサイル改良型すべてのロシア版です。弾頭の重量はTNT(トリニトロトルエン)換算でほぼ同じですが、イスカンデル・ミサイルの方が射程距離が長いです。新しい米国製のPrSMミサイルは、どの仕様でもロシアの同等品より優れていません。米国のストームシャドウ空中発射ミサイル、フランスのSCALP、ドイツのタウルスは、TNT換算で450~480キログラムの弾頭を持ち、射程は500~650キロメートルです。ドイツのタウルスミサイルの射程は650キロメートルです。Kh-101空中発射ミサイルは、これらのシステムのロシア版で、弾頭の威力では同等ですが、射程距離では各ヨーロッパ製システムを大幅に上回っています。先ほど述べたように、新しい米国製のPrSMミサイルは、JASSMミサイルと同様に、技術仕様の点でロシアの同等品より劣っています。我が国は潜在的敵国が使用している関連兵器システムの間違いのない数を把握しています。それらのうち、何個が保管施設に保管されているか、それらの正確な位置、ウクライナに供給された兵器の数、さらに何個が供給予定であるかを知っています。関連ミサイルシステムと関連機器の生産に関して言えば、ロシアはNATO諸国全体の生産量の合計の10倍を保有しています。来年、我々は生産量をさらに25~30%増やす予定です。キエフ政権の首謀者たちが、主人に別の種類の軍事装備を懇願しているのがわかります。カリブル、キンジャール、ジルコンの極超音速ミサイルシステムを忘れてはなりません。これらは、その技術仕様の点で世界でも比類のないものです。それらの生産も増加しており、全速力で進んでいます。このような製品が、この階級の製品メニューにまもなく追加されるかもしれません。いわば、顧客満足は保証されている、ということです。」
近づく隕石衝突
プーチン大統領は、オレシュニクの攻撃を隕石の衝突の衝撃に例え、「歴史から、どんな隕石がどこに落ち、どんな結果になったかはわかっています。時には湖が丸ごとできるほどでした」と述べた。同時に、彼は「新兵器を扱う際に宣伝は不適切です」と語気を強めた。オレシュニクの場合もまさにそうだった。
「我が国は実験を実施し、実際に結果が出るまで待ちました。それから発表をおこなったのです。」
これが、一見無害に見えるこのヘーゼルナッツ、つまりゼウスの雷の完全な複製品の実際の作成者であるミハイル・コヴァルチュク氏が、シリウス教育センターでおこなわれた第4回若手科学者会議の傍らでロシアのイズベスチヤ紙に語ったことの背景となっている。
コワルチュク氏はクルチャトフ研究所国立研究センターの所長である。同氏は「ロシアが持つ超高温に耐えられる素材によってオレシュニクシステムの開発が可能になり、他の種類の極超音速兵器の開発も可能になるでしょう」と述べた。
ロシアはどうやって他の国を追い抜くことができたのか、全世界が疑問に思っているかもしれない。「我が国は世界の5先進国の1つです。(中略)我が国は短期間で極超音速兵器を開発しました。これらはかつて1500度で機能した素材で、その後1800度、そして2000度でも機能できるようになりました。我が国はそれを実現しましたが、他の国はできませんでした」。
さらに、コヴァルチュク氏は「高温に耐えられる他の素材を使えば、さらに高度な兵器を作ることも可能になる。次の発展は、2500~3000度に耐えられる素材の開発になるはずです」と語った。
これにより、例えば、非常に低い高度でもマッハ15、あるいはマッハ20でミサイルを飛行させ、すでに実験済みのオレシュニクよりもさらに壊滅的な衝撃(プラズマ衝撃波を含む)を与えることが可能になる。
いっぽう、プーチン大統領は、国防省が現在、オレシュニクによるさらなる攻撃の「標的を選定中」であり、ウクライナの「意思決定中枢部」、工業生産拠点、軍事施設などが含まれている、とほぼ何気なく語った。NATOは聞いているのだろうか? 明らかに聞いていない。
最大のソフトパワーとは何か
ロシアがゼウスの役割を刷新する一方で、中国はヘルメスの役割を刷新することに忙しい。
中国当局は現在、サウジアラビアで米ドル建て債券を販売している。つまり、中国がこれらの債券を多く販売すればするほど、これらの「アラブ」米ドルは一帯一路(BRI)の有効諸国への融資として転用され、覇権国米国が支配するIMFと世界銀行への強要的な債務を返済できるようになる、ということだ。
最も素晴らしいのは、これらのBRI友好諸国が、中国へのドル建て負債を、ほかでもない人民元を使って、あるいは生産した商品や天然資源を使って返済できる点にある。
この戦略を「脱ドル化超高速道路」とでも呼ぼう。そして、中国の米ドル建て債券は金(きん)に裏付けられているのに対し、米ドル建て債券は紙幣印刷機に裏付けられていることをゆめゆめお忘れなく。
多額の負債を抱える中国について西側諸国があれこれ言っているのは全く無意味だ。中国の債務は、明らかに莫大だが、その大半は人民元建ての国内債務だ。中国は国内債券市場を利用して、企業が資金を投資し、実質的に危険なしでまともな利益を得られるよう支援している。そして、そのすべてが経済を刺激しながらおこなわれている。
中国政府は、サウジアラビアからオイル・マネーを引き出すために米ドル建て債券を発行するという素晴らしい名案を思いついた。そうすれば、オイル・マネーが直接米国に戻らなくなるからだ。多くの国が以前のように米国債を購入していないことは誰もが知っている。そのため、債券利回りが上昇する必要があることも。中国政府は、借入利回りを高く維持する方法を見つけた。それは米国に対する借入の費用を高くすることだ。
最も重要な方向性は、債券から調達した米ドルが、IMFや世界銀行からの法外な利子の融資を返済するための融資として、多くの南半球諸国に提供されるという点だ。中国政府は、20~30%の利子を支払う代わりに、これらの国々に債券金利(5%程度)を課すだけだ。つまり、中国がやっていることは、基本的に、南半球諸国のために安い米ドルを借りるための隠れ蓑になっているということだ。これが、最大限のソフトパワーの目的である。
南半球諸国が返済した米ドルはどうなるのか? 過剰流動性は米国を新たなインフレ危機に陥れるだろう。株式市場は活況を呈するだろうが、金利は上昇し、借り入れ費用はさらに高くなる。これに高関税が加わり、香港の賢い取引業者のことばを借りれば「完全なる嵐」だ。
ゼウスと美しいプレアデスのマイアの息子であるヘルメスを演じている中国へようこそ。ヘルメスが持つ無数の神性の中には、旅行者や道路と貿易 (まさにBRI!連結回廊!)、狡猾さ、外交、言語、書記、占星術などがある。ゼウスの伝令者であり個人的な使者でもあるヘルメスは、いたずら好きでもある(「サウジアラビアで米ドルを我が中国から買ってください」のようないたずらだ)。
ここでも、ロシアがチェスをしているのが見える。ロシアが何手もの先を考えてチェスをしているのに対し、中国は囲碁をしている。中国も同じように何手もの先を考えて囲碁をしている。そして、この両国の友好関係は、常に同期し、素敵なギリシャ神話が復活しているかのような様相を呈している。
ヘーゼルの木という名を持つ雷撃により、ロシアに対する覇権国米国の戦略は完全に死に体となった。ロシアを挑発して戦術核兵器で攻撃させることで得た「戦略的優位性」はもはやさらば、だ。今やロシアは時速1万2千キロでいつでもどこでも攻撃できる。しかも放射線も出さず、民間人の犠牲者も増やさずに、だ。
軍事的にも地政学的にも、衝撃的な波が押し寄せている。NATO属国諸国が何もわかっていないのも無理はない。ゼウスは冷えた赤ワインのブルネッロの瓶を飲みながら、ニヤニヤしながらチェス盤を見守っている。
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