イムラン・カーンの逮捕: パキスタンのファシズムの素顔とは - 寺島メソッド翻訳NEWS
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イムラン・カーンの逮捕: パキスタンのファシズムの素顔とは

<記事原文 寺島先生推薦>
The Arrest of Imran Khan: The Naked Face of Fascism in Pakistan
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年5月11日
筆者:アースマ・ワドゥド(Aasma Wadud)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月23日



イムラン・カーンの人気は政権交代後うなぎ登りであり、 今やパキスタンで最も愛され、親しまれ、信頼されている指導者となった。

 
 政権交代が強制的に行われて、イムラン・カーンやパキスタン正義運動党(PTI)の指導者たち、同党に投票した人々、支持者、報道家、ソーシャル・メディア上で活動する人々、一般市民が辛い時間を迎えることになってから、野党連合「パキスタン民主運動(PDM)」が権力を握り、恥知らずにも、ファシスト的な考え方を持って権力を振るおうとしている。

 パキスタンの民主主義は最近ずっと弱体化してきているが、真の民主主義への願いはかつてなく強まっている。パキスタンは、イムラン・カーンの指導のもとで団結し、断固とした態度で立ち上がり、自国の主権や、繁栄、敬意を追求しようとしている。パキスタン元首相のカーンは、新しい方法で、パキスタンの政界を再構築しているのだ。その一例が、2023年5月6日に出された判決に連帯する国家規模の集会への呼びかけだった。

 パキスタン最高裁は憲法を守れるかの瀬戸際に立たされている。現政権は何としてでも、選挙を避けたがっていて、パキスタン最高裁や大統領の職務権限において決定的な変化が生じるまで、選挙を避ける構えのようだ。

 他方、パキスタン憲法第224条においては、議会解散後90日以内に重要な二州(パンジャブ州とカイバル・パクトゥンクワ州)において選挙をしなければならないとされている。ウマー・アタ・バンディアル最高裁長官はスオ・モト*を発令し、両州での州選挙を90日以内に行うよう命じた。政府側はあらゆる手を尽くしてこの選挙を遅延させようとしている中で深刻な影響が刻々と生じており、事態は風雲急を告げている。
*インドやパキスタンの裁判所が持つ、裁判所が独自の判断で下すことの出来る職務命令のこと

 「パキスタン正義運動党」は、パキスタン各地の4千を超える地域で平和的な反対運動を24時間以内で組織することに成功した。しかし、このファシスト政権においては、あらゆる政治的取努力は結果が伴う。今回の政権奪取の成功に伴い、政治上の犠牲者がたくさん生まれていることが、パキスタンで急速に日常茶飯事になっている。パキスタンでは、女性たちが警察により残忍に連行され、肌を日光に露出させられ、公衆の面前で衣服を破られていた。さらには、男性用の囚人護送車で運びさられていた。パキスタン正義運動党の指導者層や同党に投票した人々や支持者、支援者は嫌がらせを受け、拉致され、偽の供述調書を書かれていた。この反対運動は現政権に大きな打撃を与え、国家権力を混乱させているが、これはこの20年で最大の誤算に基づくものだった。イムラン・カーンは、翌週の選挙へ出馬を表明したので、イスラマバード高等裁判所の敷地内で、国家行政機関の命を受けた警備員らに逮捕された。国家権力に対して、恐れることなく対決したために、このような手荒な対応をされ、屈辱を受けることになったのだ。悲しいかな、こんなことは氷山の一角に過ぎない。

 カーンの逮捕は、国家規模の反対運動を引き起こし、その運動において民衆は、このような暴挙を行った軍を非難していた。このような衝突はパキスタンの歴史上例を見ないものだ。 それだけではなく、イムラン・カーンの逮捕に対する民衆の激しい怒りは、不穏な事態となっている。さらに問題なのは、イムラン・カーンは逮捕されたのか拉致されたのかどちらなのかが、未だに明らかになっていないことだ。


昨日のパキスタンのペシャワールでの抗議活動において、警察はイムラン・カーン元首相の支持者たちに対して催涙弾を発射した。Credit…Abdul Majeed/Agence France-Presse — Getty Images

 政権交代が強制的に行われて、イムラン・カーンや「パキスタン正義運動党(PTI)」の指導者たちや、同党に投票した人々、支持者、報道家、ソーシャル・メディア上で活動する人々、一般市民は辛い時間を迎えることになってから、「パキスタン民主運動(PDM)」はファシスト的な考え方で権力を握り、恥知らずにそれを実行した。「パキスタン正義運動党」の指導者たちや、同党に投票した人々、支持者たちは、拉致され、嫌がらせを受け、強姦され、危害を加えられ、拷問された。彼らは橋の上から落とされ、平和的な政治集会を行っているところを射撃され、集会から連れ去られ、留置所で殺された。

 イムラン・カーンは暗殺されそうになりながらも辛くも逃げることができたが、負傷し、何ヶ月も自宅で監禁された。報道界においては、アーシャド・シャリフ記者のような尊敬される記者が亡くなった。今パキスタンでは、これまでにない規模で政治上の犠牲者が生まれており、「パキスタン正義運動党」の指導者たちはパキスタン国内の至る所をまわり、 国内各地で多くの事態に対処している。イムラン・カーンには、150件以上の罪状が掛けられている。愚かにも政府当局は、法的正当性を無視して行動を起こし、カーンを逮捕しようと企んでいた。警察権力はカーンの自宅を家宅捜索した。 「パキスタン正義運動党」の支持者、同党に投票した人々、男性、女性、子どもたち、老いも若きもが、催涙弾を発射され、警棒で殴られ、放水砲を浴びせられた。個人的な電話も盗聴され、あろうことか内閣の記者会見内でその内容が明かされた。個人情報も人権も言論の自由もあったものではない。

 権力の座に居座り続けることが、現政権の主要目的だ。汚職の伝統と実体があるという理由だけで連立が成立している「パキスタン民主運動」政権は、13の政党からなる連立政権だが、成立したのは2020年9月のことであり、その目的は、自分たちの利権に奉仕する権力を確保することだった。不信任動議のやり直しをさせるという手口の策謀でイムラン・カーンを退陣させて権力を得た後、この不浄な連立政権は自分たちの汚職を正当化させ、法律や制度を都合のいいように変えようとしてきた。

 イムラン・カーンの人気は政権交代後うなぎ登りであり、 今やパキスタンで最も愛され、親しまれ、信頼されている指導者となった。他方、「パキスタン民主運動」政権は徐々に政治的資産を失い、権力を傘に来た横暴な態度をとるようになった。「パキスタン民主運動」政権がイムラン・カーンを恐れているという事実は、公然の秘密である。カーンが、パキスタンの国家規模で、唯一全国的に有権者や支援者、支持者からの信頼を得ている指導者だからだ。ただしそれは、自由で公正な選挙を確立させることができるなら、の話だ。そのような選挙が実現できれば、カーンは3分の2の支持票を集め、これまで妨害されてきた、「国民に対して説明責任が持てる政府」の再興を成し遂げられるだろう。そうなれば、今回カーンに与えられる政治的活動領域の画布はこれまでで最大のものとなろう。これまでは手をつけることが出来なかった聖域にまで踏み込めるようになる。

 イムラン・カーンが最大の脅威であることを考えれば、カーンを懐柔し、拘束し、身柄を抑え込み、力を削ごうとすることは、現政権にとって必須のことだ。反逆罪であれ、外国人から贈り物を得ていた件であれ、事実をよく調べることなく罪をでっち上げようとしたが、全く上手くいっていない。それでもまだ、カーンの身辺にのしかかる脅しは、終わることがない。

 「パキスタン民主運動」政権が権力者として支持を失うのは時間の問題だ。「分割して統治せよ」の手法を用いて、現政権は意図的に衝突を演出してきた。現政権は、支配者層と民衆の間の乖離を拡げている。現在、最高裁が現政権の主要な槍玉に挙げられている。今パキスタンで最も尊敬されていて、愛されている組織は、軍なのだが、この軍が、現在最も混乱している政治上の対立劇の渦中に置かれている。それだけではなく、現政権はパキスタン憲法を改悪して選挙をさせない構えだ。少しずつパキスタンが世界から孤立しつつある中で、好調な経済界は政界の安定を求めているが、パキスタン民主運動政権は何としてでも、2023年9月までの選挙実施を阻止しようとしている。

 他方、イムラン・カーンは波に乗り、民衆からの支持や愛情や賞賛を集めている。口先で妥協するつもりのないカーンの態度が、カーンと民衆を強く結合させている原動力になっている。現政権は最高裁が出した(カーン逮捕無効の)判決に抵抗していることは、イムラン・カーンとパキスタンの民衆の結束力を強め、共に努力して憲法を守ろうという動きに繋がっている。カーンや民衆は、どんな困難に直面しても、目的を達成するつもりだ。その目的とは、自立し、民主的で、繁栄あるパキスタンの実現だ。 腐敗し、王権的政治の旗手である現政権の「パキスタン民主運動」政権は、上手くいかない施策を弄して追い込まれている。 イムラン・カーンが逮捕されたことがきっかけとなり、民衆の中で鬱積されてきた怒りが爆発したのだ。カーンが拘留され続けるならば、状況は悪化の一途を辿るだろう。正当な民主主義に則った手順が取られたのであれば、このような状況は友好的・政治的に対処できていただろう。ファシズムという炉の中で燃やされるという試練を受けた後に、パキスタンの民主主義は、真の色で燃え盛ることだろう。
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