プリゴジンの申し立て:神々の黄昏*か、それともマスキロフカ(偽装)なのか?
<記事原文 寺島先生推薦>
* 『神々の黄昏』(かみがみのたそがれ)は、リヒャルト・ワーグナーが1869年から1874年までかけて作曲し1876年に初演した楽劇。彼の代表作である舞台祝祭劇『ニーベルングの指環』四部作の4作目に当たる。(ウィキペディア)。なお、「ワグネル」は「ワーグナー」のロシア語よみ。
The Prighozin File: Twilight of the Gods or Maskirovka?
筆者:ペペ・エスコバル(Pepe Escobar)
出典:INTERNATONALIST 360°2023年5月6日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月23日
取るに足らない2機のドローン攻撃(アングロサクソン・ネオコンの複合挑発)はモスクワに完璧な贈り物を提供した:紛れもない開戦の大義だ。
私的軍事会社ワグネルのマエストロであるエヴゲニー・プリゴジンは、コミュニケーションの達人/トローラー*/心理戦の専門家として、決して誰にも引けは取らない。
*インターネットの掲示板・チャット・メーリングリストなどで騒動を起こすため、あるいは多くの反応を得るため、場を荒らすためなどの目的で挑発的メッセージを投稿をする人(英辞郎)
だから、彼が最近ミサイルのような言葉遣いを発表した(「ゴンゾ戦争について」、ロシア語でここ)ときには、かなりの人が驚いた。
戦争の最中であり、絶え間なく神話化されているウクライナの「反攻」(無数の自殺的な形で起こるかもしれない、起こらないかもしれない)の前夜に、プリゴジンはロシア国防省(MoD)とショイグ大臣、そしてクレムリンの官僚制度を絶対に破壊すると公式発表したのだ。
この爆弾発言によって、ロシアの専門家の間で連続的な波紋が広がった。しかし、英語を話す人々の間ではそれほど大きな影響を与えなかったようで、ロシアの内部関係者は私に詳細にインタビュー全体を分析した結果を伝えてくれた。ここに、重要なポイントに焦点を当てた注目すべき例外がある。
プリゴジンは、証拠のない、次のようないくつかの不合理な主張に茶々を入れた。例えば、
・ ロシアは2つのチェチェン戦争に勝利しなかった、
・ プーチンはカディロフの父親に賄賂を支払って、全てを取り繕った、また、
・ ドンバスのデバルツェボ・コールドロンでの戦いは存在せず、代わりにポロシェンコの軍が整然と撤退した、
などという主張に対してだ。
しかし、以下のような無視できない深刻な告発もある。
・ SMO(戦略的多層評価)は、ロシア軍が基本的に組織されておらず、訓練も受けておらず、規律もなく、士気も低下していることを証明した、
・ 実際の指導力は存在しない、
・ ロシア国防省は戦場で何が起こっているか、およびワグネルの行動についても定期的に嘘をついている、
などだ。
プリゴジンは、ウクライナが反攻に出た後、ロシア軍が混乱状態で撤退した際、戦線を安定化させるための作戦を開始したのはワグネルだと、一徹に主張している。
彼の話の要点は、
・ ロシアは素早くかつ決定的に勝利するために必要なものはすべてを持っている、
・ しかし、「指導層」がその資源を必要としている行動者(たぶん、ワグネル)から意図的に遠ざけている、
ということだ。
そして、それはバフムート/アルテミウスクでの成功と結びついている:ワグネルと「アルマゲドン将軍」と呼ばれるスロビキン将軍が共同で計画を立てた。
「私を殺せ。その方が嘘をつくよりいいだろう」。
プリゴジンは、今後6ヶ月間戦うのに必要な軍需品がどこに保管されているかについての自身の知識に自信を持っている。ワグネルは少なくとも1日に8万発の砲弾が必要。それを手にできないのは、ひとえに「政治的な妨害行為」があるからだ。
ロシアの官僚制度(国防省からロシア連邦保安庁まで)のせいで、ロシア軍は「世界第2の軍から最悪の軍隊になり果てた。 ロシアはウクライナにすら対処できなくなっている。兵士たちに物資を供給しない限り、ロシアの防衛は維持されないだろう」。
プリゴジンはインタビューで、ワグナルが物資を受け取らなければ撤退せざるを得ないかもしれないと不吉な言い方をしている。彼はウクライナの反攻を不可避として予見し、可能性として5月9日(勝利の日)をその開始日としている。
今週の水曜日(5月5日)、彼はさらに語調を強めた:「反攻」は既にアルテミウスクで「無制限の人員と弾薬」を持って始まっており、供給不足のワグネル部隊を圧倒する脅威となっている。
プリゴジンは誇らしげにワグネルの情報能力を称賛している;彼のスパイや衛星情報によれば、キエフの部隊はロシアの国境に到達することさえありうる。彼はまた、第五列の非難を激しく否定している:国家プロパガンダを乗り越える必要性を強調し、「今の事態に対して血の代償を払わなければならなくなるだろうから、ロシア人は、(現実を)知る必要がある。官僚たちは単に西側に逃げるだけだ。彼らこそが真実を恐れている人々なのだ」と述べている。
つまり、金ということなのだろう:次は引用
「私には、将来この国で生きなければならない人々に嘘をつく権利はない。もし、望むなら私を殺してもいい、嘘をつくよりもマシだ。私はこのことについて嘘をつくことを拒否する。ロシアは大惨事の瀬戸際にいる。このゆるんだボルトをただちに締めなければ、この(ロシアという)飛行機は空中で崩壊する」。
彼はかなり妥当な地政経済的な指摘もしている:なぜロシアがインドを通じて西側に石油を売り続ける必要があるか? 彼はこれを「裏切りだ。ロシアのエリートは西側のエリートと秘密裏に交渉している」と述べている。これはイゴール・ストレルコフの重要な論点でもある。
「怒れる愛国者クラブ」
疑問の余地はない:もしプリゴジンが本質的に真実を語っているのであれば、これは文字どおり「核」だ。プリゴジンがほとんどの人が知らないことをすべて知っているのか、あるいは、これが見事なマスキロフカ*であるか、だ。
*古くはソ連時代から存在する「情報偽装工作」のこと。 あらゆる手段を駆使し、真の目的を相手に悟られないこと。
が、2002年2月以降の現地の事実は、彼の主な非難を裏付けるように思われる:ロシア軍は、国防省のトップから大臣ショイグに至るまでの、完全に腐敗した官僚集団のせいで、適切に戦闘することができない。彼らはすべて、大儲けのみに興味を持っているのだ。
さらに事態は悪くなっている:ガチガチに官僚主義化された環境の下では、前線の指揮官は自律して決定を下し、迅速に適応する権限がなく、遠くからの命令を待たなければならない。これがキエフの反攻が劇的な動揺をもたらす可能性がある主な理由だろう。
ロシア愛国者の中で、プリゴジンだけが自分の分析を声に出しているわけではない。実際、これには何も目新しいことはない:彼はただ今回、より強い口調で語っているだけだ。ストレルコフは戦争の開始以来、まったく同じことを言っている。それはさらに4月19日に爆弾的な映像を公開する「怒れる愛国者クラブ」へと融合した。
ここでは、小規模ながら、信頼性の高い愛国的な資質を持つグループが声高に深刻な警鐘を鳴らしている:劇的な変化がすぐに起こらない限り、ロシアはこの代理戦争に完全に負けてしまう危険にさらされている。
もしくは、繰り返しになるが、これは見事なマスキロフカ(偽装)である可能性もある。それは敵を完全に惑わせることになる。 もしそうであるならば、それは見事に機能している。キエフのプロパガンダ機関は、「ロシアは敗北の瀬戸際にある。ストレルコフがクレムリンにクーデターの脅し」というような見出しでストレルコフの非難を勝ち誇るように採り上げたのだ。
ストレルコフは語調を強めて続け、ロシア政府がこの戦争を真剣に受け止めておらず、実際に戦わずに取引をする計画を立てていると主張し続けており、ウクライナの領土を譲る可能性さえあると言い張っている。
彼の証拠は次のとおり:「腐敗した」(プリゴジンの言葉)ロシア軍は、訓練や物流の面で、攻撃のために経済や世論を準備するための真剣な努力を行っていない。そしてそれはクレムリンと軍のエリートたちはこの戦争を本当に信じておらず、望んでいないからなのだ。彼らはむしろ戦前の現状に戻りたいのだ。
ここで話は振り出しにもどる。マスキロフカ(偽装)なのか? それともワグネルに対する国防省の復讐のようなものなのか? SMO(特別軍事作戦)の開始時には、ロシア軍は正確には共同歩調を取ってはおらず、彼らは本当にワグネルを必要としていたことは事実だ。しかし、今の状況は全く異なる。国防省は、ロシアが決定的な攻撃を開始する際に、プリゴジンの部隊がすべての栄光を手中に収めることがないよう、徐々にワグネルの役割を減らしているかもしれない。
クレムリンの床に打ち落とされた
そして、この白熱した対立の最中に、真夜中にクレムリン上空に、ちっぽけな神風カミカゼ・ドローンが突入してきたのだ。
これはプーチンを暗殺しようとしたわけではない。むしろ安っぽい見世物の一環だった。ロシアの情報機関はおそらくすでに全体の経緯を把握しているだろう。ドローンはおそらくモスクワ内またはその近郊から、市民服をまとい偽造IDを持っていたウクライナの攻撃部隊によって発射されたのだ。
今後も車爆弾や罠、即席地雷など、このようなPR的な事件は増えるだろう。ロシアは内部の安全対策を本格的な戦時体制に向けて強化することが必要になるだろう。
しかし、「テロ攻撃」への「対応」(クレムリンの用語)はどうなるのだろう?
Russtrat.ru のエレーナ・パニーニは、非常に貴重で、ヒステリックにならない評価を提供している。「ビデオ映像から判断すると、夜間の攻撃の目的はクレムリンそのものでも、参事院宮殿のドームでもなく、ロシア連邦大統領の紋章旗を複製した円屋根の旗用ポールだったのだ。この象徴的なゲームは、もう純粋に英国的なものだ。イギリスからの「お知らせ」であり、チャールズ3世の戴冠の前夜に、ウクライナの紛争が依然として英米の筋書きに従って展開され、彼らが設定した枠組み内で進行していることの『お知らせ』だ」。
そう、そうなのだ:あのキエフ・ネオナチの馬鹿どもはただの道具だ。重要な命令は常にワシントンとロンドンから出される。特にレッド・ライン*を越える場合にはそうだ。
* 越えてはならない一線、平和的解決から軍事的解決へと移るその一線(英辞郎)
パニーニは、クレムリンが決定的な戦略的主導権を握る時が来たと言っている。それには、SMOを本格的な戦争の状態に引き上げ、ウクライナをテロ国家と宣言し、ドゥーマで既に議論されていることを実行する必要がある。具体的には、「キエフのテロリスト政権を停止し破壊することができる武器の使用への移行」だ。
取るに足らない二機のドローン攻撃(アングロサクソン・ネオコンの複合挑発)はモスクワに完璧な贈り物を提供した:紛れもない開戦の大義だ。
プーチンへの「暗殺未遂」と5月9日の勝利記念日パレードの妨害を組み合わせる? 「愚者計測器」(The Stupid-O-Meter) によれば、それはネオコンたちだけがそんな素晴らしいアイデアを思いつくのだ。だから、これからは彼らの使い走りである、汗ばんだTシャツの戦争扇動役者(ゼレンスキー)は彼の身近なオリガルヒ連中もろとも、全員死刑囚ということになる。
しかし、それすら、結局は見当違いだ。モスクワは、2022年10月のケルチ橋攻撃の直後にウクライナをテロリスト国家と認定することができた。しかし、そうしても、NATOは生き残っただろう。
プリゴジンの「神々の黄昏」シナリオは、クレムリンが本当に望んでいるのは蛇の頭を追い求める(息の根を止める)ことであることを忘れているかもしれない。プーチン大統領は、1年以上前に重要なヒントを提供した:
「集団的な西側の干渉は、あなたがたが歴史上で経験したことのないような結果をもたらすだろう」。
それがNATOのパニックを説明している。ワシントンの一部の知能指数が室温(訳注:セ氏20華氏68。IQの平均値は100)を超える人々は、霧を通して見抜いたかもしれない:したがって、挑発行為(クレムリンへのこれ見よがしのドローン攻撃も含め)繰り返し、モスクワにSMOを迅速に終わらせるように迫ったのだ。
いや、いや、そんなことは起こらない。
モスクワにとっての現状は見事なうねりとなっている。NATOの武器や財政は測り知れないブラックホールへと止まることなく落ち込んでいる。クレムリンがさり気なく出す yes を合図に、「はい、私たちは応答しますが、それは私たちが適切と判断した時です」と。
さあ、これが、親愛なるプリゴジン同志よ、究極のマスキロフカ(偽装)だ。
________________________________________
ラムザン・カディロフ、ワグネル部隊を自分の部隊で置き換えることを提案
Kadyrov_95
https://t.me/RKadyrov_95
私はロシア国防相セルゲイ・ショイグ、ロシア軍参謀総長、そしてPMC「ワグネル」の創設者に呼びかけます。
国家の運命に無関心でないすべての人々と同様に、私もエフゲニー・ヴィクトロヴィチの最新の発言を聞くのは嫌です。なおかつ、ロシア国防省の指導部がPMC「ワグネル」との意思疎通や説明のために会合を開かず、意見を出さないことはさらに不快です。何だかんだ言っても、プリゴジンはワグネル隊の貴重な貢献は尊敬に値します。もし不足しているのであれば、砲兵に頼らず、少なくともワグネル部隊のさらなる戦術がどのように調整されるのかを基準に説明し、示す必要があります。
私はマリウポリでのチェチェン部隊の経験を思い出します。歩兵を支援するために国防省から5両の戦車が必要でしたが、割り当てられたのは1両だけでした。その戦車の乗組員も最初の戦闘で車両を離れてしまいました。その後、戦車兵は再び戦闘に向けて調整され、車両に戻され、アゾフの悪魔崇拝者たちの少なくとも1つの位置を砲撃で抑える必要がありました。他の装備にも問題がありました。SSOの開始以来、私たちは30門の砲を交換することができませんでした。私は個人的にモスクワに電話し、指揮官や上官と話しました。1か月後、問題は解決しました。最初の電話ではうまくいかなかったかもしれませんが、私たちの部隊は一撃を受けることもなく、敵に楽しい情報エンターテイメントを提供することもありませんでした。
・・・ところで、人々の反応を考えれば、戦友の死体を撮影することは正しくありません。私たちは決してそれを行わないようにしましょう・・・
たとえば、私の親愛なる兄弟であるアプタ・アラウディノフは、特殊部隊「アフマト」の指揮官であり、ロシア軍第2軍団の副司令官として、敵との接触線に100キロ以上の責任範囲を持っています。彼にとって問題のない日はありません。しかし、アプティ・アロノヴィッチはインターネット上でそれを公に発表したことは一度もありません。彼は内部のコミュニケーションを通じてのみ問題を伝えています。指摘しておきます(まれには例外もあります)が、国防省と参謀本部は常にチェチェン部隊に対して協力的で支援的でした。一般市民生活には常に誤解が生じます。戦争は言うに及ばず、です。この戦争において弾薬の不足が常に存在しています! セルゲイ・クズゲトヴィッチに私の訴えが聞き入れられ、参謀本部に現地に行って問題を解決するよう命令が出されることを私は願っています。これが兵士のやり方であり、状況からの唯一の正しい道です。
チェチェン部隊はワグネル部隊とともに、ポパスナ、セヴェロドネツク、リシチャンスクなどのドンバスの最も困難な地域で肩を並べて戦いました。彼らは国籍や信仰の区別なく、母国に対する神聖な使命を共に果たしました。国家の利益と国家の安全は常に最優先されるべきです。そして、USO(特別戦争作戦)が終わった時、私たち全員、戦士も指揮官も、ロシアの愛国者全員が勝者であることを願います。一緒に。
はい、もし兄であるプリゴジンと「ワグネル」が去るのであれば、参謀本部は経験豊富な戦闘部隊を失い、弟であるカディロフと「アフマト」がアルテモフスクにその位置を引き継ぐでしょう。もしもそれが予定通り進むなら、私たちの戦士たちは移動し、市を占拠する準備がもうできています。それは時間の問題です。しかし、市の残りの2キロメートルが兵士たちの命を犠牲にせず、相互理解と支援、指揮部と戦士たちの決意によってロシアの最高司令官、ウラジーミル・ウラジミロヴィッチ・プーチンの命令を遂行する結果として奪取されるとしたら、それは素敵なことでしょう。
t.me/RKadyrov_95/3600
2.0MviewsMay 5 at 12:02
* 『神々の黄昏』(かみがみのたそがれ)は、リヒャルト・ワーグナーが1869年から1874年までかけて作曲し1876年に初演した楽劇。彼の代表作である舞台祝祭劇『ニーベルングの指環』四部作の4作目に当たる。(ウィキペディア)。なお、「ワグネル」は「ワーグナー」のロシア語よみ。
The Prighozin File: Twilight of the Gods or Maskirovka?
筆者:ペペ・エスコバル(Pepe Escobar)
出典:INTERNATONALIST 360°2023年5月6日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月23日
取るに足らない2機のドローン攻撃(アングロサクソン・ネオコンの複合挑発)はモスクワに完璧な贈り物を提供した:紛れもない開戦の大義だ。
私的軍事会社ワグネルのマエストロであるエヴゲニー・プリゴジンは、コミュニケーションの達人/トローラー*/心理戦の専門家として、決して誰にも引けは取らない。
*インターネットの掲示板・チャット・メーリングリストなどで騒動を起こすため、あるいは多くの反応を得るため、場を荒らすためなどの目的で挑発的メッセージを投稿をする人(英辞郎)
だから、彼が最近ミサイルのような言葉遣いを発表した(「ゴンゾ戦争について」、ロシア語でここ)ときには、かなりの人が驚いた。
戦争の最中であり、絶え間なく神話化されているウクライナの「反攻」(無数の自殺的な形で起こるかもしれない、起こらないかもしれない)の前夜に、プリゴジンはロシア国防省(MoD)とショイグ大臣、そしてクレムリンの官僚制度を絶対に破壊すると公式発表したのだ。
この爆弾発言によって、ロシアの専門家の間で連続的な波紋が広がった。しかし、英語を話す人々の間ではそれほど大きな影響を与えなかったようで、ロシアの内部関係者は私に詳細にインタビュー全体を分析した結果を伝えてくれた。ここに、重要なポイントに焦点を当てた注目すべき例外がある。
プリゴジンは、証拠のない、次のようないくつかの不合理な主張に茶々を入れた。例えば、
・ ロシアは2つのチェチェン戦争に勝利しなかった、
・ プーチンはカディロフの父親に賄賂を支払って、全てを取り繕った、また、
・ ドンバスのデバルツェボ・コールドロンでの戦いは存在せず、代わりにポロシェンコの軍が整然と撤退した、
などという主張に対してだ。
しかし、以下のような無視できない深刻な告発もある。
・ SMO(戦略的多層評価)は、ロシア軍が基本的に組織されておらず、訓練も受けておらず、規律もなく、士気も低下していることを証明した、
・ 実際の指導力は存在しない、
・ ロシア国防省は戦場で何が起こっているか、およびワグネルの行動についても定期的に嘘をついている、
などだ。
プリゴジンは、ウクライナが反攻に出た後、ロシア軍が混乱状態で撤退した際、戦線を安定化させるための作戦を開始したのはワグネルだと、一徹に主張している。
彼の話の要点は、
・ ロシアは素早くかつ決定的に勝利するために必要なものはすべてを持っている、
・ しかし、「指導層」がその資源を必要としている行動者(たぶん、ワグネル)から意図的に遠ざけている、
ということだ。
そして、それはバフムート/アルテミウスクでの成功と結びついている:ワグネルと「アルマゲドン将軍」と呼ばれるスロビキン将軍が共同で計画を立てた。
「私を殺せ。その方が嘘をつくよりいいだろう」。
プリゴジンは、今後6ヶ月間戦うのに必要な軍需品がどこに保管されているかについての自身の知識に自信を持っている。ワグネルは少なくとも1日に8万発の砲弾が必要。それを手にできないのは、ひとえに「政治的な妨害行為」があるからだ。
ロシアの官僚制度(国防省からロシア連邦保安庁まで)のせいで、ロシア軍は「世界第2の軍から最悪の軍隊になり果てた。 ロシアはウクライナにすら対処できなくなっている。兵士たちに物資を供給しない限り、ロシアの防衛は維持されないだろう」。
プリゴジンはインタビューで、ワグナルが物資を受け取らなければ撤退せざるを得ないかもしれないと不吉な言い方をしている。彼はウクライナの反攻を不可避として予見し、可能性として5月9日(勝利の日)をその開始日としている。
今週の水曜日(5月5日)、彼はさらに語調を強めた:「反攻」は既にアルテミウスクで「無制限の人員と弾薬」を持って始まっており、供給不足のワグネル部隊を圧倒する脅威となっている。
プリゴジンは誇らしげにワグネルの情報能力を称賛している;彼のスパイや衛星情報によれば、キエフの部隊はロシアの国境に到達することさえありうる。彼はまた、第五列の非難を激しく否定している:国家プロパガンダを乗り越える必要性を強調し、「今の事態に対して血の代償を払わなければならなくなるだろうから、ロシア人は、(現実を)知る必要がある。官僚たちは単に西側に逃げるだけだ。彼らこそが真実を恐れている人々なのだ」と述べている。
つまり、金ということなのだろう:次は引用
「私には、将来この国で生きなければならない人々に嘘をつく権利はない。もし、望むなら私を殺してもいい、嘘をつくよりもマシだ。私はこのことについて嘘をつくことを拒否する。ロシアは大惨事の瀬戸際にいる。このゆるんだボルトをただちに締めなければ、この(ロシアという)飛行機は空中で崩壊する」。
彼はかなり妥当な地政経済的な指摘もしている:なぜロシアがインドを通じて西側に石油を売り続ける必要があるか? 彼はこれを「裏切りだ。ロシアのエリートは西側のエリートと秘密裏に交渉している」と述べている。これはイゴール・ストレルコフの重要な論点でもある。
「怒れる愛国者クラブ」
疑問の余地はない:もしプリゴジンが本質的に真実を語っているのであれば、これは文字どおり「核」だ。プリゴジンがほとんどの人が知らないことをすべて知っているのか、あるいは、これが見事なマスキロフカ*であるか、だ。
*古くはソ連時代から存在する「情報偽装工作」のこと。 あらゆる手段を駆使し、真の目的を相手に悟られないこと。
が、2002年2月以降の現地の事実は、彼の主な非難を裏付けるように思われる:ロシア軍は、国防省のトップから大臣ショイグに至るまでの、完全に腐敗した官僚集団のせいで、適切に戦闘することができない。彼らはすべて、大儲けのみに興味を持っているのだ。
さらに事態は悪くなっている:ガチガチに官僚主義化された環境の下では、前線の指揮官は自律して決定を下し、迅速に適応する権限がなく、遠くからの命令を待たなければならない。これがキエフの反攻が劇的な動揺をもたらす可能性がある主な理由だろう。
ロシア愛国者の中で、プリゴジンだけが自分の分析を声に出しているわけではない。実際、これには何も目新しいことはない:彼はただ今回、より強い口調で語っているだけだ。ストレルコフは戦争の開始以来、まったく同じことを言っている。それはさらに4月19日に爆弾的な映像を公開する「怒れる愛国者クラブ」へと融合した。
ここでは、小規模ながら、信頼性の高い愛国的な資質を持つグループが声高に深刻な警鐘を鳴らしている:劇的な変化がすぐに起こらない限り、ロシアはこの代理戦争に完全に負けてしまう危険にさらされている。
もしくは、繰り返しになるが、これは見事なマスキロフカ(偽装)である可能性もある。それは敵を完全に惑わせることになる。 もしそうであるならば、それは見事に機能している。キエフのプロパガンダ機関は、「ロシアは敗北の瀬戸際にある。ストレルコフがクレムリンにクーデターの脅し」というような見出しでストレルコフの非難を勝ち誇るように採り上げたのだ。
ストレルコフは語調を強めて続け、ロシア政府がこの戦争を真剣に受け止めておらず、実際に戦わずに取引をする計画を立てていると主張し続けており、ウクライナの領土を譲る可能性さえあると言い張っている。
彼の証拠は次のとおり:「腐敗した」(プリゴジンの言葉)ロシア軍は、訓練や物流の面で、攻撃のために経済や世論を準備するための真剣な努力を行っていない。そしてそれはクレムリンと軍のエリートたちはこの戦争を本当に信じておらず、望んでいないからなのだ。彼らはむしろ戦前の現状に戻りたいのだ。
ここで話は振り出しにもどる。マスキロフカ(偽装)なのか? それともワグネルに対する国防省の復讐のようなものなのか? SMO(特別軍事作戦)の開始時には、ロシア軍は正確には共同歩調を取ってはおらず、彼らは本当にワグネルを必要としていたことは事実だ。しかし、今の状況は全く異なる。国防省は、ロシアが決定的な攻撃を開始する際に、プリゴジンの部隊がすべての栄光を手中に収めることがないよう、徐々にワグネルの役割を減らしているかもしれない。
クレムリンの床に打ち落とされた
そして、この白熱した対立の最中に、真夜中にクレムリン上空に、ちっぽけな神風カミカゼ・ドローンが突入してきたのだ。
これはプーチンを暗殺しようとしたわけではない。むしろ安っぽい見世物の一環だった。ロシアの情報機関はおそらくすでに全体の経緯を把握しているだろう。ドローンはおそらくモスクワ内またはその近郊から、市民服をまとい偽造IDを持っていたウクライナの攻撃部隊によって発射されたのだ。
今後も車爆弾や罠、即席地雷など、このようなPR的な事件は増えるだろう。ロシアは内部の安全対策を本格的な戦時体制に向けて強化することが必要になるだろう。
しかし、「テロ攻撃」への「対応」(クレムリンの用語)はどうなるのだろう?
Russtrat.ru のエレーナ・パニーニは、非常に貴重で、ヒステリックにならない評価を提供している。「ビデオ映像から判断すると、夜間の攻撃の目的はクレムリンそのものでも、参事院宮殿のドームでもなく、ロシア連邦大統領の紋章旗を複製した円屋根の旗用ポールだったのだ。この象徴的なゲームは、もう純粋に英国的なものだ。イギリスからの「お知らせ」であり、チャールズ3世の戴冠の前夜に、ウクライナの紛争が依然として英米の筋書きに従って展開され、彼らが設定した枠組み内で進行していることの『お知らせ』だ」。
そう、そうなのだ:あのキエフ・ネオナチの馬鹿どもはただの道具だ。重要な命令は常にワシントンとロンドンから出される。特にレッド・ライン*を越える場合にはそうだ。
* 越えてはならない一線、平和的解決から軍事的解決へと移るその一線(英辞郎)
パニーニは、クレムリンが決定的な戦略的主導権を握る時が来たと言っている。それには、SMOを本格的な戦争の状態に引き上げ、ウクライナをテロ国家と宣言し、ドゥーマで既に議論されていることを実行する必要がある。具体的には、「キエフのテロリスト政権を停止し破壊することができる武器の使用への移行」だ。
取るに足らない二機のドローン攻撃(アングロサクソン・ネオコンの複合挑発)はモスクワに完璧な贈り物を提供した:紛れもない開戦の大義だ。
プーチンへの「暗殺未遂」と5月9日の勝利記念日パレードの妨害を組み合わせる? 「愚者計測器」(The Stupid-O-Meter) によれば、それはネオコンたちだけがそんな素晴らしいアイデアを思いつくのだ。だから、これからは彼らの使い走りである、汗ばんだTシャツの戦争扇動役者(ゼレンスキー)は彼の身近なオリガルヒ連中もろとも、全員死刑囚ということになる。
しかし、それすら、結局は見当違いだ。モスクワは、2022年10月のケルチ橋攻撃の直後にウクライナをテロリスト国家と認定することができた。しかし、そうしても、NATOは生き残っただろう。
プリゴジンの「神々の黄昏」シナリオは、クレムリンが本当に望んでいるのは蛇の頭を追い求める(息の根を止める)ことであることを忘れているかもしれない。プーチン大統領は、1年以上前に重要なヒントを提供した:
「集団的な西側の干渉は、あなたがたが歴史上で経験したことのないような結果をもたらすだろう」。
それがNATOのパニックを説明している。ワシントンの一部の知能指数が室温(訳注:セ氏20華氏68。IQの平均値は100)を超える人々は、霧を通して見抜いたかもしれない:したがって、挑発行為(クレムリンへのこれ見よがしのドローン攻撃も含め)繰り返し、モスクワにSMOを迅速に終わらせるように迫ったのだ。
いや、いや、そんなことは起こらない。
モスクワにとっての現状は見事なうねりとなっている。NATOの武器や財政は測り知れないブラックホールへと止まることなく落ち込んでいる。クレムリンがさり気なく出す yes を合図に、「はい、私たちは応答しますが、それは私たちが適切と判断した時です」と。
さあ、これが、親愛なるプリゴジン同志よ、究極のマスキロフカ(偽装)だ。
________________________________________
ラムザン・カディロフ、ワグネル部隊を自分の部隊で置き換えることを提案
Kadyrov_95
https://t.me/RKadyrov_95
私はロシア国防相セルゲイ・ショイグ、ロシア軍参謀総長、そしてPMC「ワグネル」の創設者に呼びかけます。
国家の運命に無関心でないすべての人々と同様に、私もエフゲニー・ヴィクトロヴィチの最新の発言を聞くのは嫌です。なおかつ、ロシア国防省の指導部がPMC「ワグネル」との意思疎通や説明のために会合を開かず、意見を出さないことはさらに不快です。何だかんだ言っても、プリゴジンはワグネル隊の貴重な貢献は尊敬に値します。もし不足しているのであれば、砲兵に頼らず、少なくともワグネル部隊のさらなる戦術がどのように調整されるのかを基準に説明し、示す必要があります。
私はマリウポリでのチェチェン部隊の経験を思い出します。歩兵を支援するために国防省から5両の戦車が必要でしたが、割り当てられたのは1両だけでした。その戦車の乗組員も最初の戦闘で車両を離れてしまいました。その後、戦車兵は再び戦闘に向けて調整され、車両に戻され、アゾフの悪魔崇拝者たちの少なくとも1つの位置を砲撃で抑える必要がありました。他の装備にも問題がありました。SSOの開始以来、私たちは30門の砲を交換することができませんでした。私は個人的にモスクワに電話し、指揮官や上官と話しました。1か月後、問題は解決しました。最初の電話ではうまくいかなかったかもしれませんが、私たちの部隊は一撃を受けることもなく、敵に楽しい情報エンターテイメントを提供することもありませんでした。
・・・ところで、人々の反応を考えれば、戦友の死体を撮影することは正しくありません。私たちは決してそれを行わないようにしましょう・・・
たとえば、私の親愛なる兄弟であるアプタ・アラウディノフは、特殊部隊「アフマト」の指揮官であり、ロシア軍第2軍団の副司令官として、敵との接触線に100キロ以上の責任範囲を持っています。彼にとって問題のない日はありません。しかし、アプティ・アロノヴィッチはインターネット上でそれを公に発表したことは一度もありません。彼は内部のコミュニケーションを通じてのみ問題を伝えています。指摘しておきます(まれには例外もあります)が、国防省と参謀本部は常にチェチェン部隊に対して協力的で支援的でした。一般市民生活には常に誤解が生じます。戦争は言うに及ばず、です。この戦争において弾薬の不足が常に存在しています! セルゲイ・クズゲトヴィッチに私の訴えが聞き入れられ、参謀本部に現地に行って問題を解決するよう命令が出されることを私は願っています。これが兵士のやり方であり、状況からの唯一の正しい道です。
チェチェン部隊はワグネル部隊とともに、ポパスナ、セヴェロドネツク、リシチャンスクなどのドンバスの最も困難な地域で肩を並べて戦いました。彼らは国籍や信仰の区別なく、母国に対する神聖な使命を共に果たしました。国家の利益と国家の安全は常に最優先されるべきです。そして、USO(特別戦争作戦)が終わった時、私たち全員、戦士も指揮官も、ロシアの愛国者全員が勝者であることを願います。一緒に。
はい、もし兄であるプリゴジンと「ワグネル」が去るのであれば、参謀本部は経験豊富な戦闘部隊を失い、弟であるカディロフと「アフマト」がアルテモフスクにその位置を引き継ぐでしょう。もしもそれが予定通り進むなら、私たちの戦士たちは移動し、市を占拠する準備がもうできています。それは時間の問題です。しかし、市の残りの2キロメートルが兵士たちの命を犠牲にせず、相互理解と支援、指揮部と戦士たちの決意によってロシアの最高司令官、ウラジーミル・ウラジミロヴィッチ・プーチンの命令を遂行する結果として奪取されるとしたら、それは素敵なことでしょう。
t.me/RKadyrov_95/3600
2.0MviewsMay 5 at 12:02
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