アジア - 寺島メソッド翻訳NEWS
FC2ブログ

ロシアで米傭兵が殺害されるなか、西側諸国は北朝鮮がロシアに援軍を送ったという疑わしい主張に狂気的に反応

<記事原文 寺島先生推薦>
U.S. mercenaries killed in Russia, West goes hysterical on dubious North Korea claim
筆者:フィニアン・カニンガム(Finian Cunningham)
出典:Strategic Culture Foundation 2024年10月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年11月7日


2894-1.png


NATOと西側諸国の指導者たちは、ロシア国境での「深刻な緊張激化」と世界平和への無謀な脅威という真実を認めるよりも、北朝鮮についての空想話をすることを好んでいる。

「これは戦争の重大な激化であり、世界平和への脅威だ」と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は今週語った。

今週、ロシア領内で戦闘中に米国やカナダ、ポーランドの傭兵が死亡したことは、確かに憂慮すべき事態だ。偵察・破壊工作部隊に配属されていたこれらの傭兵は、ウクライナからロシアのブリャンスク州に侵入した際にロシア軍によって排除された。

しかしフォン・デア・ライエン委員長や他の西側諸国の指導者たちはそのことについては何も言わなかった。彼らはむしろ、ロシアに派遣された北朝鮮軍についての不確かな主張に過敏に反応していた。

信頼できるロシアの防犯カメラには、横たわる兵士の死体の横にセムテックス爆薬や対戦車擲弾発射機など「小さな都市を吹き飛ばすのに十分な」重火器の供給品が映っていた、と報じられている。犠牲者の一人は、代表的な空挺特殊部隊である米第75レンジャー連隊のタトゥーを入れていた。この米兵が元米陸軍兵士で民間傭兵会社に加わったのか、それともロシアと戦うためにウクライナで米軍から再配置されたのかは不明だ。

いずれにせよ、米国や他のNATO諸国の軍事戦闘員がロシア領土に存在することは、NATO諸国がロシアに対するウクライナの代理戦争に直接関与していることを示す明白な証拠である。

米国とEU当局は、ウクライナに「単に」武器を供給しているが、NATOは核兵器保有国ロシアとの紛争には参加していない、という根拠のない虚構を主張し続けている。

その虚構は常に常識を侮辱してきた。NATO諸国はウクライナで戦う外国人傭兵の募集に積極的に関与してきた。ロシアは、2022年2月に紛争が勃発して以来、1万5000~1万8000人の戦闘員がウクライナ軍に派遣された、と推定している。その多くが殺害されたり捕虜になったりしている。

米国や英国、カナダ、ドイツ、フランス、ポーランド、バルト諸国、ジョージア(旧称グルジア)出身の傭兵が確認されているほか、アル・タンフなどの基地で米占領軍によって訓練を受けたシリア出身の聖戦戦士も確認されている。100カ国以上の外国人戦闘員がウクライナにたどり着き、NATOが支援するキエフ政権を支援していると推定されている。

彼らの中には、間違いなく、日雇いの給料で金を稼ぐ「傭兵」がいる。他の者は、NATO軍人でまちがいないだろう。なぜなら、HIMARS砲などの技術的兵器の運用には、NATOの取り扱い専門知識が必要とされるからだ。

8月6日に始まったロシアのクルスク地域への必死の侵攻には、多くの外国人傭兵が含まれていたと考えられている。特定された米国の民間軍事請負業者の1つは、フォワード・オブザベーション・グループ社である。

西側報道機関は地上戦とNATOのつながりに関する報道をほとんど無視、あるいは曖昧にしてきた。情報戦における西側「ニュース」報道機関の喧伝機能を考えれば、驚くことではない。

いっぽう今週、マーク・ルッテNATO事務総長マーク・ルッテは、北朝鮮軍がクルスク地域で戦闘をおこなっているとの懸念を表明した。NATOが公式にその主張をしたのはこれが初めてだ。数週間前から、北朝鮮軍がロシア軍に加わるという憶測や噂が飛び交っていた。

米国と欧州の報道機関は、NATOの主張が事実であると示唆する見出しを掲げた。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は「北朝鮮の兵士はロシアの侵略戦争を支援するために派遣されている。これは戦争の重大な激化であり、世界平和への脅威だ」と述べた。

健全な懐疑心は当然だ。NATOのルッテ事務総長は自身の主張を裏付ける証拠を一切示さなかった。同事務総長は単に韓国の軍事情報当局者との話し合いについて言及しただけだ。

ウクライナの事実上の独裁者ウラジミール・ゼレンスキー氏(数ヶ月前に大統領選挙を取りやめた)は、数ヶ月にわたって、数千人の北朝鮮軍がウクライナのロシア軍に加わっている、という主張をおこなってきた。ゼレンスキー氏が昨年、広島でのG7サミットで韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と会談したことは意義深いようだ。両者の初会談だった。会談直後、韓国はウクライナへの軍事・財政支援の拡大を約束した。ゼレンスキー大統領の妻も「報道機関の行事」に出席するため、疑わしい韓国訪問をおこなっている。

尹大統領に対する韓国国民の支持率は、生活費の高騰などさまざまな不満から最低水準に落ち込んでいる。尹大統領は北朝鮮との関係では強硬派だ。北朝鮮側は、意図的に緊張を煽っている、として韓国を非難している。

尹大統領の指揮下で、韓国は主要な武器輸出国となり、過去2年間で推定200億ドル相当の武器を販売した。韓国は、北朝鮮軍がロシアに配備されているという主張を背景に、ウクライナへの軍事供給を増やすと警告している。

北朝鮮による不測の事態については、かなり大げさに報道されているようだ。キエフ政権は、米国とNATOを代理戦争にさらに関与させる方法として、この主張を誇張して伝えている。ホワイトハウスは、北朝鮮の関与疑惑の主張に懸念を表明している。尹大統領にとって、ウクライナは、低迷する支持率を引き上げ、武器輸出の増加による経済的利益を得る好機である。

西側報道機関は、北朝鮮軍の派遣はウクライナでの軍事的損失に対するロシアのプーチン大統領の絶望の表れだ、と希望的に主張している。

その主張は意味をなさない。ロシア軍はウクライナのドンバス地域を完全に掌握すべく急速に前進しているからだ。NATOの支援を受けているウクライナ側は、2年以上の紛争中、最も速いスピードで領土を失っている。ロシアが北朝鮮の軍事的支援を必要としているという考えは、馬鹿げているとまでは言わないまでも、あり得ない。

ロシア側は今年初めに北朝鮮当局と相互防衛協定を締結した。北朝鮮の兵士が訓練などのためにロシアに派遣されたとしても、それは完全に合意した当事者間の法的かつ主権的な内容である。

「必死」になっているのはロシアのほうではない。米国やその他のNATO加盟諸国の傭兵がウクライナに派遣されたことは、キエフ政権が攻撃の材料を使い果たし、国境を越えた挑発行為に手を染めているという絶望の真の兆候だ。

もちろん、NATOと西側諸国の指導者たちは、ロシア国境での「深刻な緊張激化」と世界平和への無謀な脅威の真実を認めるよりも、北朝鮮についての空想話をするほうを好むだろう。

北朝鮮はロシアに兵力を供給しながら韓国を攻撃しようとしているのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
A series of events and speculation has stirred debate over what’s happening on the Korean Peninsula
朝鮮半島で何が起きているのか;一連の出来事と憶測が議論を巻き起こしている
出典:RT  2024年10月24日
筆者:コンスタンチン・アスモロフ(Konstantin Asmolov)
ロシア科学アカデミー中国・現代アジア研究所韓国研究センター主任研究員 
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年11月2日


2883-1.jpg
ファイル写真: 北朝鮮の金正恩委員長(中央)は、北朝鮮の非公開の場所で、発射台に搭載された大陸間弾道ミサイル(ICBM)「華星17」の周囲を歩いている。朝鮮中央通信/韓国通信社 via AP


一連の同時多発的な出来事により、憂慮論者や無能な専門家は 「朝鮮半島は戦争の瀬戸際にある 」と述べている。どのような事件も武力衝突に発展する可能性は常にあり、そのリスクはゼロでも100%でもないが、現時点では過度な懸念は不要である。以下では、韓国情勢の複雑さをあまり知らない人なら、確かに不安を覚えるかもしれない事件について、さらに詳しく説明する。

平壌上空の韓国軍無人機

「やめろ、さもないと悲惨な結果を招くぞ」というセリフに沿った相互の脅しの応酬によって特徴づけられる現在の緊張は、韓国の無人機が平壌上空に反北朝鮮ビラを投下したことが引き金となった。この事件は、アレクサンドル・マツェゴラ駐北朝鮮ロシア大使によって確認され、写真によれば、これらは韓国のモデルに似た飛行機のような無人航空機であった。

北朝鮮と韓国のプロパガンダ合戦が頻繁に気球を利用していることはよく知られている。この戦術は韓国の「市民活動家」が始めたもので、彼らはもう何年も前から、パンフレットやUSBメモリなどを搭載したプロパガンダ用の風船を打ち上げ、国境を越えて飛ばしている。どうやら、気球は国家管理下の国境地帯から打ち上げられているので、韓国の文在寅前大統領と現職の尹錫烈(ユン・ソクヨル)大統領は、これらの活動を許可しているようだ。北朝鮮からの厳しい暴言を受けて、ソウルの民主党政権は気球の打ち上げを禁止したが、保守勢力が政権に復帰したため、気球キャンペーンは再開された。

宣伝ビラは単に北朝鮮の「精神的完全性」を損なうことを目的としているのではなく、南北間の武力衝突を誘発することを意図しているから、このような取り組みはかなり危険だ。挑発者たちは、北朝鮮がイデオロギー国家である以上、「最高の尊厳」に対する侮辱を無視することはできないと想定している。実際、これはナチス・ドイツが配布した宣伝ビラに似ており、ロシア人に「ユダヤ人政治委員を叩け」と呼びかけている。当然ながら、北朝鮮が厳しい軍事的対応(韓国の風船発射場への砲撃など)に出れば、韓国は報復する以外に選択肢を失い、それによって韓国の終末論的プロテスタント宗派が予期しているような紛争が勃発する。つまり、神を信じない共産主義に対するキリスト教と民主主義の聖戦である。そのような牧師たちの目には、韓国人は選ばれた人々であり、その犠牲が勝利を確実にすると映っている。

しかし、その激しい巧みな言い回しにもかかわらず、北朝鮮はいくつかの印象的な対抗策を打ち出している。宣伝用風船への報復として、彼らは自分たちの風船にゴミを積んで韓国に送り返したのだ。これらの風船は家庭ゴミや紙くずを運んでいる。現在までに北朝鮮は6000機以上のゴミ風船を打ち上げており、中にはソウルの大統領官邸に着地したものもある。これらの風船による被害もあるが、ありがたいことに死傷者は出ていない。このような対応は、爆撃よりもはるかに好ましいと思われる。この風船は、国境地帯で拡声器を使って放送される反北朝鮮の宣伝に反応して打ち上げられるものだが、個人的には、K-POPを韓国の伝統音楽やモランボン楽団のガールズ・グループ(「バネッサ・メイに対する平壌の反応」)でかき消す方が楽しいと考えている。

2883-2.jpg
関連記事: プーチンを英語で: これまでにないロシア大統領の言葉を聞いてみよう(ビデオ)

しかし、挑発者たちはこのような解決策を明らかに否定しており、どうやら誰かが緊張を拡大激化させることに決めたようだ。国際法の観点からすれば、ドローンの発射は、風に乗って漂う風船を飛ばすよりもはるかに深刻な領空侵犯であり、国家主権の侵害である。さらに、これらの出来事に対する韓国の反応は非常に興味深い。普段からビラ入りの風船を飛ばすことに関与している団体が、「自分たちは関係ない」と言い出したのだ。当初、韓国軍当局は関与を否定していたが、その後、「北朝鮮の主張を肯定も否定もできない」という立場に変わった。さらに、当局はドローン発射の背後に誰がいるのか調査することを拒否した。一方、北朝鮮の最高指導者、金正恩の妹である朝鮮労働党広報情報部の金与正副部長は、韓国軍の挑発行為を直接非難した。

このことは、無人機が北朝鮮の軍指導部の承認なしに領空に入ったと推測する根拠となる。つまり韓国軍には、平壌にソウルの軍事力を誇示したかったか、あるいは韓国のミサイル防衛システムに気づかれずに北朝鮮偵察機が韓国まで往復飛行に成功した過去の事件に報復をしたかった「若い過激派」のグループが存在するということだ。さらに厄介なシナリオは、このグループが前述のプロテスタントの一派とつながっている場合だ。なぜなら、このことはその結果、さらなる挑発行為が増えるかもしれないからだ。

一方、北朝鮮は国境沿いの砲兵部隊に戦闘態勢を整えるよう命じ、朝鮮人民軍への入隊を奨励する全国的な広報活動を開始した。これは重大な情勢緊迫ではあるが、今のところ新たな挑発行為は起きていない。緊張が徐々に緩和され、朝鮮半島が冷戦時代のソ連とアメリカの膠着状態を彷彿とさせるような状況になることを願っている。軍拡競争や時折の力の誇示、小さな事件が起こるかもしれないが、どちらかがレッドラインを超えることはなさそうだ。結局のところ、戦術的な観点からすれば、衝突が起これば、双方が互いに大きな損害を与える可能性が高いからだ。

「草の根の愚かな取り組み」が司令部に認められることはめったにないが、軍が内部調査を行い、国全体を危険にさらしかねない無謀な熱狂者を抑制することを願うばかりである。結局のところ、似たような状況は2010年に起きた。韓国軍が国境付近での演習中に北朝鮮領海を砲撃した際、魚以外には誰も被害がなかったため、影響はないだろうと考えたのだ。しかし、これに対して北朝鮮は延坪島を砲撃し、4人の死者を出した。対立がそれ以上悪化しなかったのは、すべての当事者が根本的な理由を理解していたからにほかならない。

韓国への道路の寸断

北朝鮮が国境沿いに砲兵部隊を配置したことは、もうひとつの大きな出来事と重なる。北朝鮮軍が韓国との国境に通じる道路を爆破し、残っていた南北間の連絡路を遮断したのだ。

これは、北朝鮮が2023年末から2024年初めにかけて南北政策の根本的な転換を図り、統一という概念を放棄したことに伴う一連の防衛措置の結末である。朝鮮半島が分断された当初、多くの人々は朝鮮半島の統一はいずれ実現すると信じていた。1972年まで、平壌はソウルを「一時的に占領された」領土と分類し、首都とみなしていた。20世紀初頭の統一に関する議論は、しばしば遠い見通しとして組み立てられていたが、2018年から2019年にかけての「オリンピックの雪解け」は、文前大統領の比較的リベラルな政権下でさえ、ソウルが南北対話を実際の協力の機会よりも儀式とみなしていたことを明らかにした。 しかし、保守的な指導者の下で、韓国の対北朝鮮姿勢はあからさまに敵対的なものとなり、平壌は、南の「同胞」との仮定の統一という考えが、かつてドイツ国民がナチスのために戦わないという蔓延した考え方と似ていることに気づいた。

2883-3.jpg
関連記事:チュチェの砦:北朝鮮の与党と王朝はいかにして何十年も権力の座に居座り続けることができたのか?

朝鮮半島に拮抗する2つの国家が存在することは公式に認められ、韓国は公然と敵国と呼ばれている。しかし、強制統一のために戦争をするという考え方はもはや意味をなさない。北朝鮮の宣伝では、韓国が紛争を起こせば、韓国は必然的に粉砕され、領土は北に吸収されると主張している。しかし、これは侵略行為に反応して起きるかもしれないことだ。戦争に備えることは、戦争を起こしたいということと同じではない。さらに平壌は、1953年に米韓の間で調印された相互防衛条約により、いかなる紛争も即座に北朝鮮、米国、同盟国を巻き込んだ対立にエスカレートすることを十分に理解している。そのため北朝鮮は年初から、韓国の攻勢に備えて自衛の準備を整え、地雷原や要塞の建設を進めてきた。道路の破壊はこの方針を強調するものであり、ここで軍事専門家にとって1つのポイントが明確になるはずである。

ある国が攻勢に備えるとき、援軍や弾薬を含む攻撃軍への国境を越えた支援を提供するために重要な、強固な通信ラインのシステムを確立しようとする。この側面は、朝鮮戦争の勃発に関する議論にしばしば登場する。軍事史家は、北朝鮮の戦車は地雷よりもむしろ米国の航空戦力によって大部分が破壊されたと指摘している。これは、韓国も北を攻撃する準備をしていたにもかかわらず、北の軍事指導部は攻撃作戦の承認を得ることができたが、韓国軍はそのような承認を得られなかったという事実で説明できる。

道路を爆破することが北朝鮮による新たな「挑発」であるという考えは、滑稽に聞こえる。特に、韓国の憲法が自国の領土を朝鮮半島全域と定めている一方で、韓国の国家安全保障法が北朝鮮を国家としてではなく、北方領土を不法占拠している反国家的存在と定義しているという事実を考慮すると、その考えは滑稽に聞こえる。これは、ドネツクとルガンスクがまだ未承認の共和国だった頃、キエフがどのように受け止めていたかによく似ている。しかし、爆破された道路の印象的な画像にもかかわらず、北朝鮮が自衛の準備をしているという事実は、実際には、紛争を起こさない可能性が高いことを意味している。

ロシアと北朝鮮の包括的戦略的パートナーシップ条約の批准

私の考えでは、この文書はもっと早く批准されるべきだった。しかし、官僚的な手続き処理の遅さを考慮すると、ロシアのプーチン大統領がこのタイミングで批准を提案したのは、意図的な平壌支持の表明というよりは、むしろ偶然の一致のように思える。しかもこの条約は、半島の緊張を激化させるどころか、むしろ緩和させる可能性が高い動きである。

西側の分析家たちは、他の一部の人々とともに、この協定の第4条に注目している。この条文では、一方の当事国が戦争状態に陥った場合、他方の当事国は可能な限りの軍事支援を提供する義務を負うとされている。西側諸国では、これは北朝鮮軍が近いうちにウクライナに派兵される可能性や、モスクワの後押しを受けて平壌が新たな武力挑発を行う可能性を示唆していると解釈されている。

しかし、「戦争状態」という表現は極めて重要である。すべての武力紛争が「戦争」に該当するわけではないし、厳密に言えば、ロシアの特別軍事作戦は戦争とはみなされない。したがって、潜在的な紛争が発生した場合に協議を行い、共同戦略を策定しなければならないとする協定第3条に注目する方が重要かもしれない。この分野でのモスクワと平壌の協力の歴史を考えると、これらの協議は、ロシア国境に近い場所で新たな火種が発生することはモスクワにとって望ましくないため、問題の非攻撃的な解決策を模索することを目的としている可能性が高い。

2883-4.jpg
関連記事:北朝鮮は砲兵隊に南への「砲撃」の用意があると警告した

さらに、北朝鮮と韓国がともに世界の主要国と相互防衛協定を結んでいるという事実は、この紛争をマクロな地域問題に変容させる。第三次世界大戦が勃発する可能性は、ワシントンとモスクワの双方にとって不利である。損失が仮定の利益をはるかに上回るからだ。

西側の専門家やロシアのリベラル派の中には、この協定の批准はモスクワとソウルの関係を著しく冷え込ませ、国連安全保障理事会が平壌に課している国際制裁をロシアが解除することにつながるかもしれないと考えている者もいる。こうした懸念は誇張されているようだ。協定の第5条は確かに、当事国が敵対行為に関与することを禁じている。そのため、韓国の牧師たちはロシアの大学で、北朝鮮が犯したとされる残虐行為について講義をしたり、共産主義が悪魔崇拝の延長であると述べたりすることができなくなる。しかし、この条項がロシアと韓国のその他の関係に影響を与えることはない。軍事技術協力に影響を与える可能性はあるが、現在のところそのような協力は存在しない。

制裁に関しては、今のところロシアの立場は変わっていないようだ。実際、ロシア政府高官は頻繁に、北朝鮮に対する制裁体制は不当であり、見直すべきだと述べている。そしてロシアは、制裁圧力の全体的なレベルがすでに完全な経済封鎖に近いことを考えると、いかなる口実であれ、北朝鮮に新たな制裁を課すことに断固反対している。制裁文書の解釈が「禁じられていないことは許される」という路線でより創造的になっていることも事実であり、場合によっては制裁を回避するための法的抜け穴を見つけるように見えるかもしれない。とはいえ、ロシア自身がかつて賛成した国際制裁を公然と無視することは、これまではない。

理論的には、「世界的な乱気流」が進行している状況ではこの状況は変わる可能性がある。その「世界的乱気流」というのは、旧世界秩序に関連する構造や制度(国連の権威や核不拡散の方針を含む)の崩壊や意義の低下、あるいは朝鮮半島における不測の事態によって特徴づけられる。しかし、その時期はまだ来ていない。

モスクワとソウルの関係に話を戻すと、ロシアにとって韓国は依然として「非友好国の中の友好国」である。口喧嘩や外交的緊張がときおり燃え上がるものの、双方は関係を劇的に断ち切るよりは、現在の協力レベルを維持することに傾いているようだ。レッドラインは明確に定義されている。モスクワにとっては、ウクライナへの武器や軍事装備の直接供給であり、ソウルにとっては、北朝鮮のミサイルや核の能力を高めるロシアと北朝鮮の軍事技術協力である。両国間の人道的協力が続いていることからも、接触維持の傾向は明らかである。緊張が生じると人道的な分野が真っ先に被害を受けるため、これは重要な指標である。

2883-5.jpg
関連記事:西側諸国がプーチンと話す前に理解すべき10の事実

ウクライナの北朝鮮軍に関するゼレンスキーの主張

率直に言って、「ブリヤート人*に偽装した数千人の北朝鮮特殊部隊」という話は、1年以上前にこの記事の筆者が最初にでっち上げたものだ。当時、詐欺師たちから電話があり、孫娘が私の銀行口座から80万ルーブルを引き出したことを知っているかと聞かれた。彼らはこのお金が盗まれた可能性があると主張し、私の銀行口座の詳細とアパートの鍵を要求した。しかし、私は彼らに即興の不意打ちをして、次のように述べた。「私の孫娘は軍の通訳になる勉強をしていて、ロシアの特別軍事作戦地域に派遣されようとしている北朝鮮の特殊部隊に密かに同行している。しかし、物流上の問題が出てきた。北朝鮮の兵士は犬を食べることに慣れているが、ウクライナで犬を捕まえて食べ始めたら正体がバレてしまう。だから犬は自費で買って輸送しなければならないし、そのために私の銀行口座からこの金が引き出されたとしても、何の犯罪性もない」。しかし、どうやら私のちょっとした悪ふざけが暴走してしまったようだ。
*ロシア連邦やモンゴル国、中華人民共和国に住むモンゴル系民族

北朝鮮軍人の一団がウクライナで殺害されたとか、朝鮮人民軍の部隊がウクライナに再配置されつつあるとかいう最初の報道が、ウクライナのメディア、それも公式出版物ではなくタブロイド紙に掲載された。これらの記事が言及したのは、「情報機関の匿名の情報源」(そのような情報源は著者の頭の中にしか存在しないことをジャーナリストは知っている)か、「ロシアのソーシャルメディア」(ある特定のテレグラム・チャンネルを指す興味深い言及)だった。これらのチャンネルは、全くのいたずら好きか、反プーチンのチャンネルでさえ「感心しない内容」とみなしているウクライナ/親ウクライナのチャンネルである。それらのチャンネルでは、北朝鮮からの侵略者に関する投稿の隣に、「リーク情報」が見られる。その情報は、どのようにしてプーチンがチュクチ自治管区の地下組織のトルイド僧*を訪れ、黒いアザラシを生贄に捧げた後、ウクライナで戦術核を使用するかどうかを占ったというものだった。
*古代ケルト社会のドルイド教の僧。科学者、教師、裁判官、王に対する助言者の役割も果たしたとされる。伝説では魔術師としても登場する。(英辞郎)

しかし、このような話は現代のウクライナの宣伝にも入り込んでいる。私はウクライナの専門家でも軍事分析家でもないが、ゼレンスキー政権が西側からの援助をさらに正当化することを緊急に必要としていることは明らかである。また、最前線の状況がなぜこれほど切迫しているのかを国民に説明する必要があることも明らかである。この文脈では、北朝鮮軍は、敵が冥界の底から召喚した神話上の怪物、つまり、旧来の対策では効果がなく、新たな解決策が切実に求められている新たな怪物のような脅威の役割を果たしている。一方、ウクライナに北朝鮮軍が駐留しているという証拠は、「友人の友人から聞いた」などという伝聞か、フェンスの向こうから撮影された粒子の粗いビデオに要約される。このビデオには、制服を着た正体不明の人々が、どこの誰だかわからないもの(おそらく犬)を運んでいる様子が映っている。しかし、戦時中の宣伝の文脈では、これで十分な証拠だと考える人もいる。結局のところ、「列車の車両が写っている衛星画像だが、北朝鮮のミサイルが積まれていることを厳粛に誓う」といった主張は、比較的成功している。

興味深いことに、韓国の指導部はこの可能性を真剣に検討している。このような懸念は、韓国の国防相によって初めて提起された。モスクワと平壌が軍事同盟を結んだのなら、なぜ互いに助け合わないのか? その後、上層部の機嫌を取りたい韓国の国家情報院がこの話を取り上げ、分析結果や衛星画像を提示したことで、韓国指導部はこの問題を議論するようになった。しかし、事態は依然として「動向を注視し、潜在的な結果について遺憾の意を表明する」段階に留まっている。

2883-6.jpg
関連記事:「新たな影響軸」: ロシアとイランの同盟は可能か?

一方、私は、ウクライナに北朝鮮軍が駐留すると仮定した場合、メリットよりも問題の方が多くなると考えている。なぜなら、ロシアにとって状況は暗澹たるものであり、軍事作戦を救えるのは偽物のブリヤート人だけだという西側の説は信用できないからだ。第一に、朝鮮半島の緊張を考えれば、北朝鮮が自国から遠く離れた場所に相当な兵力を展開するとは考えにくい。第二に、これらの軍隊の到着は、特に、上層部から日常的な交流に至るまで、さまざまなレベルでの情報交換を確保するために必要な軍通訳の数に関して、ある種の困難をもたらすだろう。第3に、紛争の国際化は相手側にも同様の機会を作り出すだろう。たとえ「ボランティア」の話であっても、NATOは同じ方法でウクライナに駐留を簡単に確立できるだろう。最後に、北朝鮮軍の使用はロシアの国内政治情勢に影響を与える可能性があり、与党の格付けに悪影響を与える可能性がある。「クレムリンはこのような同盟国なしに、この国内問題を自力で解決できないのか?」といった疑問が人々の間に生じるからだ。ロシアのメディアで北朝鮮に関する神話が少なくなっているにもかかわらず、多くのロシア人は北朝鮮を、K-POPを聴けば対空砲で死刑になるような奇妙な場所だと認識している。

結論として、世界が激動に揺れている間は、何が起こっても不思議ではない。しかし、朝鮮半島が戦争の危機に瀕していると推測するのは、「生存者バイアス」*に似ている。仮に紛争や事件が起きたとしても、ほとんどの場合、それはどちらの国の指導者が行った行動の結果ではなく、第三者による挑発を含む非合理的な要因によって引き起こされるだろう。
*何らかの選択過程を通過した人・物・事のみを基準として判断を行い、その結果には該当しない人・物・事が見えなくなることである。(ウィキペディア)

北朝鮮の軍隊が走り回り、銃を乱射している映像には、北朝鮮のメディアのウォーターマーク*が表示されていた。しかしこのメディアは、北朝鮮が相互対話戦略の転換により韓国向けのメディアを閉鎖した半年以上前に閉鎖されている。だから、キエフがウクライナに北朝鮮軍が駐留していることをほとんど疑っておらず、ソウルもこの可能性を重く見ている(韓国の最高指導部は確認していない)一方で、2024年10月17日現在、米国防総省がこの情報を確認できないと表明しているのは驚くべき事ではない。
*著作権を示すために使われる表示のこと

インドの不屈のマルクス主義者、シタラム・イェチュリの死:この左翼の英雄は、この国の最後の偉大な共産主義者の一人だった

<記事原文 寺島先生推薦>
The unrepentant Marxist: This hero of the Left was one of the last great communists of his country
シタラム・イェチュリは稀有な指導者であった:革命的視座を議会政治に結びつける現実主義者であり知識人であった。
筆者:サリサ・S・バラン(Saritha S Balan)、インド、ティルヴァナンタプラム在住の独立系記者
出典:RT 2024年9月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年9月28日


2793-1.jpg


インド共産党は、指導者のシタラム・イェチュリ(72歳)を失った。同氏は、呼吸器疾患を患った後、9月12日にニューデリーで亡くなった。

野党指導者、インド国民会議派のラフル・ガンディーは、イェチュリを「我が国に対する深い理解を持ち、インドの理念を守る人」と評した。インド・マルクス主義共産党(CPI-M)の書記長として、イェチュリは稀有な実践主義のインド共産主義者であった。

イェチュリは政府の役職に就いたことはないが、その政治的経歴は精力的な活動で満載だった。インディラ・ガンディー首相が国家に権威主義的な「非常事態」を課した際には、ガンディー首相と対立し、人気の高い西ベンガル州のジョティ・バスーの首相就任案を拒否した(バスーは後にこれを「歴史的失策」と呼んだ)。また、彼と彼の政党は、左派の天敵であるアメリカ合衆国と核協定を締結しつつあったマンモハン・シン首相への支持を撤回した。

2793-2.jpg
政治局員のプラカシュ・カラット、ブリンダ・カラットらとともに、2024年4月4日にインドのニューデリーでおこなわれるインド下院選挙に向けた党のマニフェストを発表したシタラム・イェチュリ書記長。サンジーヴ・ヴァーマ/ヒンドゥスタン・タイムズ、ゲッティイメージズ経由

形成期

イェチュリは1952年8月、南インドのマドラス(現チェンナイ)でテルグ語を話す家庭に生まれた。父親のサルベシュワール・ソマヤジュラ・イェチュリは、南部のアーンドラ・プラデーシュ州の州営運輸公社に勤務し、各地を転々とする技術者だった。母親のカルパカムは政府職員だった。

イェチュリはアーンドラ・プラデーシュ州ハイデラバードで初等教育を受けたが、父親が転居するたびに転校を繰り返した。1970年にはインド全土の学校で最高位の成績を収めた。後に彼は、インドのカースト階層の頂点に立つバラモンであることを示す姓であるシタラマ・ラオという名前から改名した。

2793-3.jpg
関連記事:'Wage-slavery to a handful of multimillionaires': Vladimir Lenin's Letter to American Workers

彼が大学1年生を終えた1968年、家族がハイデラバードを離れたのは、インド共産党指導下の農民による武装反乱であるテランガーナ運動がきっかけだった。

デリーでは、イェチュリは大統領官邸学校に通い、その後、家族の反対を押し切って名門のセント・スティーブンス・カレッジで経済学を学んだ。デリー経済学校で学んだ後、かつては左翼学生政治の温床だったジャワハルラール・ネルー大学(JNU)に入学した。

そこでイェチュリはCPI-M(インド・マルクス主義共産党)の学生組織であるインド学生連盟の責任者となり、その後、偉大なインディラ・ガンディーと対決した。ガンディーは1975年6月から1977年3月まで「非常事態」を宣言し、民主主義と市民の自由を停止した。イェチュリはこれに反対し、逮捕された。

ガンジーが1977年の議会選挙で敗北した後も、彼女はJNU(ジャワハルラール・ネルー大学)の総長を務め続けた。イェチュリは彼女の邸宅まで行進し、彼女に対する不満一覧を読み上げ、ガンジーが隣に立つ中、彼女の総長辞任を要求した。彼の死後、象徴的な写真がソーシャル・メディアで共有された。


イェチュリは1975年にCPI-Mに入党。1985年に中央委員会、1989年に中央事務局、1992年に政治局に選出された。2015年に書記長に選出され、最高位に上り詰めた。同氏はCPI-Mの政治的立場を策定する上で、ときおり重要な役割を果たした。同氏の政治家としての経歴を通じて、デリーが拠点だった。

実用的知識人

インドの共産主義では、実用主義と知識人の両方であることは稀だ。知識人共産主義者は長い記事や本を書き、党幹部に対して演説することが求められる。実用主義の指導者は世論に耳を傾ける。イェチュリはその両方だった。

しかし、インド左派の「歴史的な失策」は、イェチュリとその同志たちのせいだと言われている。1996年、左派と中道左派の連合である統一戦線がジョティ・バスにインド初のマルクス主義首相就任を要請したが、CPI-M中央委員会の4分の3以上が反対票を投じた。バスと当時の書記長ハルキシャン・シン・スルジートは、CPI-Mから首相が出ることに賛成だった。

2793-4.jpg
インド・ニューデリーのジャンタル・マンタルで2023年2月28日、CPI(M)のシタラム・イェチュリ書記長がCPI(M)デリー州委員会で演説し、中央政府の反人民的な予算に反対するダルナ(平和的なデモ)を組織している。ソヌ・メータ/ヒンドゥスタン・タイムズ、ゲッティイメージズ経由

イェチュリは教訓を学び、今後は失敗を繰り返さないように努めた。彼は右派のインド人民党(BJP)に対する防壁として連立政権の架け橋となった。党の影響力が低下しても、彼はキャリアを通じて政治基盤であったニューデリーの政治中枢で影響力を維持した。

イェチュリは、共産主義者がしばしば主張する「左派の重要性は数ではなく政治的思想の強さにある」という信念を体現した人物だ。同氏は政治的思想の限界を押し広げ、BJP(インド人民党)に対抗するためライバル政党に働きかけた。

例えば、彼は社会主義農民運動を代表するヒンディー語圏の政治家、ムラヤム・シンやラルー・プラサードと友人だった。彼は、極めて世俗的で自由民主主義的、そして確固としたマルクス・レーニン主義の見解から逸脱することなくそうしていた。

インド国民会議のソニア・ガンジー党首は、イェチュリのインドの多様性を守ろうとする強い決意と、世俗主義を力強く擁護したことを回想した。「私たちは2004年から2008年にかけて緊密に協力し、その時に築かれた友情はイェチュリ氏が亡くなるまで続きました」と同党首は声明で述べた。

左派の破綻を招く米国の核合意

2793-5.jpg
関連記事:The 100-year-old firebrand: A legendary communist who fought exploitation and sex abuse celebrates his centennial

インドの共産主義者は陰気な性格だと思われている。しかし、イェチュリの絶え間ない笑顔は、彼の対人能力と健全な発言を補完するものだった。この特技は、国民会議派から反国民会議派から生まれた地方政党まで、政治的に対立するもの同士を共通の綱領にまとめるのに役立った。彼は明瞭に話すことができ、聴衆を魅了するために大声や身振りを使うことは避けていた。彼の公開集会には、党幹部が大勢集まった。

イェチュリは1990年代半ばから連立政権構築の先頭に立っていた。同氏の指導の下、CPI-M(インド・マルクス主義共産党)は一部の地域で当時嫌われていたインド国民会議派との連携を試みた。イェチュリはインド国民会議派の指導者、P・チダンバラムと協力し、1996年に統一戦線連立政権の運営のための共通最低綱領を起草し、その後2004年から2009年までインド国民会議派主導の統一進歩同盟(UPA)連立政権の舵取りで重要な役割を果たした。CPI-MはUPAに「外部支援」を与えていた。

2008年7月に左派がUPA政権のインドと米国の民生用原子力協定に反対したため、その支持は失われた。しかし、当時のプラナブ・ムカジー外務大臣と米国のコンドリーザ・ライス外務大臣は2008年10月に協定に署名した。イェチュリと同時代のプラカシュ・カラット共産党書記長は、インドの左派政党に知らせることができたはずだとして、マンモハン・シン首相が国外で協定を発表したことを批判した。

数年後の2015年、イェチュリは左翼政党は支持を撤回すべきではなかったと述べた。「2009年の総選挙では国民を核合意問題で引きつけることができなかったため、むしろ物価上昇などの問題で支持を撤回すべきでした」と同氏はインタビューで語った。

しかし、彼は、党が協定に反対するという決定は正しかったと主張した。「(支持を撤回した)時期についても、我々は自らを批判しました。しかし、後悔はしていません」とイェチュリは語っていた。

2793-6.jpg
2023年12月19日、インドのニューデリーにあるホテル・アショクでの会談後、インド国民開発包摂同盟(INDIA)指導部によるメディアブリーフィングに臨むインド国民会議党首マリカルジュン・カルゲと党首ラフル・ガンディー、シタラム・イェチュリ。ヴィピン・クマール/ヒンドゥスタン・タイムズ、ゲッティイメージズ経由

インドの建設

イェチュリはソニア・ガンディーと息子のラフルと良好な関係を築いていた。インド国民会議党の指導者ジャイラム・ラメシュは、イェチュリはインド共産党とインド国民会議の「2人で1人の」書記長であり、時にはインド国民会議における彼の影響力がインド共産党よりも大きいこともある、と指摘した。

昨年、この母子2人組との提携により、ナレンドラ・モディ首相率いる10年続いた政府に対抗するため、24の政党が選挙前に連合を結成することができた。この連合はインド国民開発包摂同盟(INDIA)と呼ばれた。

「彼はUPA(統一進歩同盟)-1で極めて重要な役割を果たし、最近では2024年の下院選挙に向けてこの同盟の台頭に多大な貢献をしました」とソニア・ガンジーは声明で述べた。

2793-7.jpg
2024年6月5日、インドのニューデリーにあるラジャジ・マルグ10番地のインド国民会議派マリカルジュン・カルゲ議長邸で会談後のインド同盟の指導者ソニア・ガンディーとラフル・ガンディー、タミルナドゥ州首相MK・スターリン、NCP党首シャラド・パワール、CPI(M)のシタラム・イェチュリ、サマジワディ党総裁アキレス・ヤダフ。サンジーヴ・ヴァーマ/ヒンドゥスタン・タイムズ、ゲッティイメージズ経由

2024年の選挙期間中、イェチュリは全国を回って選挙活動をおこない、左派の2つの拠点、つまり左派が政権を握っていたケララ州と、34年間政権を握っていた西ベンガル州に重点を置いた。7か国語を話し、演説中に通訳の間違いに気付いた場合はすぐに訂正した。

イェチュリは2018年、インドのITの中心地としても知られるバンガロールを州都とするカルナタカ州で非BJP(インド人民党)政権を樹立する上で重要な役割を果たした。イェチュリは政治的対立を超えた政治顧問だった。

多作な作家、著者、編集者として、イェチュリは過去30年間、インドの大多数の宗教であるヒンズー教と、宗教に基づく政治思想であるヒンドゥトヴァを区別することに尽力してきた。

イェチュリはしばしば、与党BJP(インド人民党)政府の政策に真っ先に反対を唱えた。5月には、モディ首相と他の BJP 指導者による模範行動規範の度重なる違反についてインドの選挙管理委員長に書簡を送った。イェチュリはすぐにソーシャル・メディアで自分の意見を投稿し、入院するわずか数週間前まで活動していた。

2793-8.jpg
2024年7月30日、インドのニューデリーにあるジャンタル・マンタルで、インド同盟のさまざまな政党の指導者や支持者に演説するシタラム・イェチュリ党首。ソヌ・メータ/ヒンドゥスタン・タイムズ、ゲッティイメージズ経由

同志、イデオローグ、友人に別れを告げる

イェチュリは、1957年にインド初の共産党州政府を率いた故EMSナムブーディリパッドに同行し、当時の社会主義諸国を歴訪した。当然のことながら、ロシアのデニス・アリポフ大使はイェチュリの死去に悲しみを表明した。「共産党(マルクス主義)書記長シタラム・イェチュリ氏の早すぎる死に、深い悲しみと悲しみを覚えます。彼は古くからの友人であり、ロシアとインドの友好関係を熱心に支持する人でした」とアリポフ大使はツイートした。

イェチュリは2005年から2017年まで西ベンガル州を代表する上院議員(ラージヤ・サバー)だった。抗議する学生を反国家主義者と決めつけるファシスト的な傾向に声高に反対し、その風潮に敢えて反対の立場をとった。

モディ首相は、イェチュリが有能な国会議員、左派の指導者として名を馳せ、幅広い層とつながる能力で知られていたことを思い起こした。

インド国民会議のマリカルジュン・カルゲ議長は、イェチュリ氏死は「自由主義勢力にとって大きな損失」であり、同氏は「進歩主義者たちの集団的良心の守護者だった」と述べた。 イェチュリと30年以上の付き合いがあるジャイラム・ラメシュは、同氏を実利的な性格と卓越した政治的個性を持つ、不屈のマルクス主義者と呼んだ。

CPI-M党幹部は、イェチュリの死によって生じた喪失感に衝撃を受けた。

2793-9.jpg
インドのニューデリーにあるゴールマーケットのCPI(M)本部で、シタラム・イェチュリ氏に最後の敬意を表している共産党幹部のプラカシュ・カラット、ケーララ州のピナライ・ヴィジャヤン首相、その他の同志たち。ヴィピン・クマール/ヒンドゥスタン・タイムズ、ゲッティイメージズ経由

「彼は人当たりの良い性格で、あらゆる政治的立場や職業に幅広い友人関係を持っていました。彼は政治的誠実さと献身で誰からも尊敬されていました。国家政治のこの重要な局面でのシタラム・イェチュリ氏の早すぎる死はCPI-Mにとって大きな打撃であり、左派や民主派、世俗派の勢力にとっては痛ましい損失です」とCPI-Mの政治局は声明を出した。

選挙学者から政治家に転身したヨゲンドラ・ヤダフは、Xの投稿で同氏を最も的確に要約している。「シタラム・イェチュリ同志の逝去により、インドは革命的視座を議会政治に、政治理論を政治実践に、そして国家政治の課題を最後の一人まで結びつける架け橋を失いました。『人民戦線』の理論と実践を設計した同氏は、わが立憲共和国への猛攻撃に対する集団闘争において、すべての民主的勢力と世俗的勢力を結集する上で極めて重要な架け橋でした。象徴的な学生指導者、熟達した国会議員、偉大な演説家、そして政治的隔たりを超えた多くの人々の真の友人であるイェチュリ同志の政治的洞察力と人間的資質は、左派だけでなくインドの理念を支持するすべての人々が惜しむことになるでしょう」と彼はツイートした。

「RTを制裁/禁止しろ」いう米国の要請を、インドが拒否!!

<記事原文 寺島先生推薦>
India shuns US request to ban RT – media
ロシアのニュースネットワークに対する世界的な制裁措置を求める米国政府の呼びかけは、インド政府で不評を買っている。
出典:RT 2024年9月15日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年9月24日


2794-1.jpg
© スプートニク / ミハイル・ヴォスクレセンスキー


インド政府は、ロシアの報道機関に対する米国政府の新たな攻撃を支持することに消極的である、とヒンドゥー紙が外交筋の話として報じた。

インド政府は、金曜日(9月13日)にアントニー・ブリンケン米国務長官が「すべての同盟国、すべての友好国は、まずRTの活動を、自国国内におけるロシアの他の諜報活動と同様に扱うべきです」と呼びかけたことに対し、公式な反応を示していない。

インド外務省は米国の動きについて沈黙を守っている。しかし、インドの外交官らは非公式の会話の中で、インドは国連が課していない一方的な制裁には従わず、今後も独立した外交政策を追求していくと述べた、とヒンドゥー紙が報じている。

匿名の外交官は同報道機関に対し、この問題は「インドには全く関係ない」と語った。

ブリンケン国務長官はRTを「事実上の(ロシア)諜報機関の機関として機能しています」と非難した。さらに同国務長官は、RTが米国やその他の国々の民主主義を弱体化させ、ウクライナに対する世界的な支持を弱めようとしていると主張し、他国に「共同外交措置」で同ロシア報道機関への攻撃に加わるよう促した。

2794-2.png
関連記事:US media merged with intelligence services long ago – RT editor-in-chief

インドの元外務大臣でRT寄稿者のカンワル・シバル氏は、このロシアの報道機関に対する米国の新たな攻撃を厳しく批判し、インド政府は決してこれに加担しない、との自信を表明した。

「米国側が標的にしようとしている南半球諸国は、これを二重基準とみなすでしょう。インドがこのような米国の圧力に応じることは明らかにないでしょう」と同元外務大臣は述べた。

キム・ジョンウン(金正恩)総書記が30人の高官の処刑を命じた?? 北朝鮮に関するまたしても偽ニュース

<記事原文 寺島先生推薦>
Kim Jong Un ordered the execution of 30 officials? Yet another fake news about North Korea
筆者:エドゥアルド・バスコ(Eduardo Vasco)
出典:Strategic Culture Foundation 2024年9月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年9月24日


2788-1.png

北朝鮮に対する敵からの喧伝は嘘を広め続けている。ただし吠える犬がいても、キャラバンは前進し続ける、とエドゥアルド・バスコは書いている。

キム・ジョンウン総書記の元恋人の悲惨な死を覚えておられるだろうか?

2013年、世界の報道機関は、ポチョンボ(普天堡)電子楽団の歌手ヒョン・ソンウォル氏の話を報じた。ヒョン氏は10年前にキム・ジョンウン総書記と出会い、結婚して子どもがいたが、秘密の関係を続けていた、という。ある日、ヒョン氏と他の11人の楽団員が、ポルノビデオを自分たちで撮影し、販売したとして逮捕された。この罪にもかかわらず、彼らの中には聖書を所持していた者もいた、という。もちろん、この行為は「北朝鮮の独裁政権」ではさらに大きな罪である。3日後、全員が銃殺刑に処された。さらに悪いことに、彼らの最も近い親族や他の著名な楽団の楽団員も、処刑を見守ることを余儀なくされた。さらに、「政権」は、処刑を目撃した人々を罪人とのつながりで有罪とみなし、強制収容所に送った。何と残忍な独裁政権なのだろう。

この悲劇的で狂気じみた物語は、翌年、ヒョン氏が北朝鮮のテレビでインタビューを受けたときに新たな展開を見せた。なんと、彼女は生きていたのだ! 英国の新聞「インディペンデント」は、ヒョン氏の出現を「奇跡的」と評した(おそらく、この歌手の復活は、酒宴の中で見つかった聖書と関係があったのだろう!)。

しかし、この歌手の奇跡的な復活は超自然的なものではない。歌手たちの悲劇的な物語を最初に報じたのは韓国の新聞「朝鮮日報」だった。同紙の報道で引用された情報源はすべて匿名だった。韓国の偽情報機関もこの言説の捏造に関与していた。この嘘が広まってから間もなく、韓国の情報機関の長であるナム・ジェジュン氏も、処刑について知っていた、と主張していた。

朝鮮日報は、朝鮮占領時代の日本帝国、そして前世紀末まで韓国を支配していた軍事独裁政権の宣伝活動をおこなっていた超保守系大手新聞である。同紙は明らかに反北朝鮮である。しかし、それだけではない。同紙は北朝鮮政府に関する偽ニュースを流していることでも知られている。2019年、朝鮮日報とテレビ局の朝鮮放送(同じ企業グループが所有)はともに、キム・ヒョクチョル氏が処刑され、キム・ヨンチョル氏は重労働を宣告されたと報じた。両氏は米国との関係において北朝鮮側の核交渉担当者であり、北朝鮮と米国の和解交渉が成功しなかったために処罰された、とされている。韓国の記者が引用した情報源は、やはり匿名だった。しかし、数日後、キム・ヨンチョル氏は国営テレビが放送した催しにキム・ジョンウン氏とともに登場し、ヨンチョル氏の威信を明確に示した。北朝鮮を20回ほど訪問したCNNの台北特派員ウィル・リプリー氏も、キム・ヒョクチョル氏が生きている、と報じた。

煽るような報道や虚偽のニュースを流してきた歴史があるにもかかわらず、朝鮮日報グループは今も世界の主要な報道機関から信頼されている情報源となっている。今月初め、同グループは、夏に北朝鮮北部を襲った洪水において4000人の死者を防げなかったとして、20~30人の政府高官が処刑された、と報じた。いつものように、ブラジルや世界の報道機関はこのニュースを熱心に伝え、ブラジルのオ・グローボ紙は朝鮮放送は北朝鮮の「地元放送局」である、とさえ報じていた。そしていつものように、朝鮮日報が流した情報源は匿名だった、とインディペンデント紙は指摘しているが、それでもこの件に関する「専門家」の声明でこのデマを裏付けている。その専門家はすべて韓国人と米国人だ。

実際に起こったことは、国際的に画策された作り話とは全く異なっていた。8月初旬、平安北道の洪水被災者を前にした演説で、キム・ジョンウン総書記はすべての指導者が自覚すべき責任を認め、政府が講じる対策を発表した。

「何かしたいという強い思いがあるにもかかわらず、あまりお役に立てず、不安を感じています。国を挙げて誠心誠意支援に取り組んでいますが、現時点では、テントや設備の整っていない公共施設で皆さんが経験している不便をすべて取り除くことができず、不安と焦りを感じるばかりです」

同演説で、キム・ジョンウン総書記は、すでに平安北道の生活基盤施設再建に人民軍の若者と兵士13万人が動員されている、と発表した。また、北道や慈江道、両江道で発生した大雨で鴨緑江が氾濫した地域の生徒・児童全員が、再建期間中、安全を確保し学業を継続できるよう、すべて国の負担で平壌に移送されることを確約した。さらに、合計で1万5400人が首都に一時移住する、とも発表した。

「生徒・児童の看護や啓蒙、教育は国家のあらゆる仕事の中で最も重要であり、たとえ天が落ちるような状況になっても決して放棄してはならないことです。したがって、復興活動中、国家はこれらの仕事に全責任を負います。また、洪水被害地域に新しい家が建てられる前に、平壌では高齢者や病人、名誉ある障害者元兵士、授乳中の母親に国家支援の介護手当が提供されます」

キム・ジョンウン総書記はまた、被災した都市に残って自宅を再建する間、すでに避難しているテントに加え、家具やその他の所持品を安全な場所に保管できることを保証した。さらに、伝染病の発生の可能性を排除するために、シャワー室と廃棄物処理体系を備えた公衆トイレが提供される。同総書記はまた、朝鮮革命の歴史的特徴である集団的ボランティア活動を問題解決の手段として取り組むことを強調した。「支援活動は、強制的または組織的な方法でおこなわれてはいけません。厳密にボランティアの原則に基づいておこなわなければなりません」と。

そして、そのとおりになった。水が引くと、労働党は、危険地域から人々を避難させ、復興作業を開始するために、約30万人の志願者から応募を受けた白頭山英雄青年突撃旅団を派遣した。最初の対策の1つは、水と電力の供給を回復することだった。冶金や鉄鋼、鉱業は、被災した北部地域の需要を満たすために生産を増やした。すべての道*の工場は、被災者向けの消費財の生産に集中した。鉄道には、消費財や建設資材をこれらの地域に供給するための特別輸送計画が設けられた。朝鮮労働党民兵の地方連隊が被災した道*に派遣された。社会のあらゆる部門が復興支援に動員された。労働者や兵士とともに建物や道路、橋の修復や再建にあたった志願者に加え、医師や科学アカデミーの科学者、芸術団体など、さまざまな分野の専門家も被災地に派遣された。
*北朝鮮には1直轄市・3特別市・9道(2020年現在)の行政区画がある。

平壌では、北部の危険地域から一時的に移住した子供や大人に対し、サーカスや劇場、博物館、動物園、水遊びができる遊園地、万景台学生少年宮、科学技術団地などの観光・レジャー施設への訪問が提案された。これらの人々のために集団誕生日パーティーも開かれている。この取組全体は韓国のマスコミによって厳重に監視され、毎日報道されている。

北朝鮮政府は、復興は3か月以内に完了すると見積もっていた。人的資源と物的資源の驚異的な動員を考えると、この短い期限は確実に守られる可能性が高い。いっぽう、北朝鮮の敵(そして全世界)からの卑劣な喧伝行為は、卑劣な嘘を広め続けている。吠える犬はいるが、キャラバンは進み続ける。

米国がフィリピンを自滅に追い込む手口とは

<記事原文 寺島先生推薦>
How is the US Convincing the Philippines to Destroy Itself?
筆者:ブライアン・バーレティック(Brian Berletic)
出典:Internationalist 360° 2024年8月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年9月8日


2740-1.jpg


中国が台頭するなか、アジア諸国もそれに応じて台頭している。東南アジアの国フィリピンは、比較的最近まで、この地域の他の国々とともに台頭するはずだったが、米国はフィリピンにそうしないように説得することに成功した。

フェルディナンド・マルコス・ジュニア現政権が発足する前、中国はフィリピンと協力して、切実に必要とされていた近代的生活基盤施設の建設に取り組んでいた。現在、フィリピンは中国と協力し貿易をおこなうどころか、ミサイルを中国に向けようとしている。フィリピンは、フィリピンの旧宗主国である米国に対し、自国の領土全体に新たな軍事施設を建設するよう「誘致」し、意味論と法の抜け穴を利用してフィリピンの憲法を回避し、その過程でフィリピンの主権を弱体化させている。

フィリピンはアジアの他の国々とともに立ち上がるどころか、態度を激化することで、この地域全体を数十年以上後退させかねない紛争へ続く道へと歩みつつある。

2014年に米国が東ヨーロッパのウクライナを政治的に掌握し、ウクライナの人口、経済、主権、そしておそらく存在さえも犠牲にして、隣国ロシアに対する地政学的な破城槌(はじょうつい)に変えたのと同じように、米国はフィリピンと中国との間で同じ手口を繰り返している。

米国はどのようにして、1億1500万人以上のフィリピン国民を説得して、自国最大の貿易相手国である中国との対立激化と引き換えに、経済の進歩と発展を諦めさせたのか? 米国政府は、フィリピン全体を紛争と自滅へと突き進ませるために、どのような手段を使っているのか?

広大な喧伝網

広く認識されつつあることは、米国が、全米民主主義基金(NED)や関連組織、機関、財団を通じて標的国の政治に干渉し、標的国を犠牲にしてその国家の指導力を弱め、米国政府に奉仕するように国家政策を作り変えるという手段を駆使している、という事実である。

NEDは、政治体制から学問、裁判所や法制度から国の情報空間に至るまで、国民国家のあらゆる側面を標的にすることで上記の目的を実現している。

世界中の多くの国と同様、フィリピンの情報空間は、米国政府が構築した広大な報道網や、財団や寄付金などの仲介者を通じて流入する企業資金の標的となっており、反中国の風潮だけでなく、フィリピンの自国の国益全般に反対する風潮さえもフィリピン国民に植え付けようとしている。

この広大な報道網の一部に、米国政府が欧米の大手報道機関やグーグルなどの米国を拠点とする大手テック業界と共同でおこなっている、いわゆる「事実確認」工作がある。この工作はその名とは裏腹に、米国政府の偽情報を強化し、米国の真意はどこにあるのか、そしてその理由をフィリピン国民を含む世界の人々に知らせようとしている人々や組織を攻撃し、弱体化させるために利用されている。

フィリピン国内においては、この報道網にはPressOne社も含まれる。フィリピン国内においては、この報道網にはPressOne社も含まれる。同報道機関の「事実確認」活動は、フィリピンの内政問題への米国の干渉を暴露する人々を何度も標的にすることで、フィリピンの主権を弱体化させてきた。

PressOne社は、米国によるフィリピン国内での数箇所の軍事施設建設に関する主張に対して間違った「事実確認」をおこない、意味論を駆使して、確かに米国はフィリピン国内で米国が自ら使用する軍事施設を建設しているが、法的にはこれらの施設の所有権はフィリピンにある、と報じた。

PressOne社は真っ赤な嘘を報じ、「フェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領は、これらの施設が軍事基地と意図を否定している」と主張した。PressOne社が引用したロイター通信の報道は、これらの施設が軍事基地であることを否定しておらず、単にこれらの基地がいかなる国に対しても「攻撃行動」 を意図したものではない、と主張しているだけだった。この件もまた、言葉遊びの好例だ。

別の例では、PressOne社は私を中傷するのに、米国政府とフィリピン政府の主張を引用したり、関連性による有罪(連座)を含む数々の誤った論理を展開したりする記事を出した。

PressOne社の任務は、フィリピンをウクライナのような代理戦争の先鋒にしてしまおう、という米国の取組を記事読者に納得させることにある。フィリピンの場合、敵はフィリピン最大の貿易相手国である中国だ。現時点でその代理戦争はまだ起こっていないが、もし発生すれば、その戦争はフィリピンにとって最大の国益になる、という論法なのだ。

だから、PressOne社の「事実確認」活動が、米国政府がこのような取組を立ち上げるよう資金を出している事実にはなんの驚きも生じないのも当然のことだ。PressOne社の「事実確認」記事の末尾には、いずれも、「PressOne.フィリピンは、ポインター通信社の国際事実確認網 (IFCN) の原則規約の認証に署名している」と書かれている。

いっぽう、ポインター通信社は・NED を通じて米国政府から資金提供を受けているほか、オミダイア・ネットワーク社や、米国国務省やその他の米国同盟諸国の政府と提携しているグーグル・ニュース・イニシアティブと関係のある企業出資の財団からも資金提供を受けていることを明らかにした。

これらすべては、米国が毎年何億ドルも費やしている中国を標的とした影響力拡大作戦の一環である。

偽情報に年間数億ドルを資金提供

2021年、米国議会は 「中国共産党の悪意ある影響に対抗する法案」を提出した。この法案は、他の法律や基金とともに、毎年数億ドルを費やして 「世界規模で中国共産党の悪意ある影響に対抗する」ことを目指している。

しかし、実際には、このような法律は米国の実際の悪意ある影響力を強化することだけを目的としている。

ロイター通信が今年初めに 調査報道で明らかにしたように、「国防総省はパンデミックの最中に中国を弱体化させるために秘密裏に反ワクチン作戦を展開した」米政府は、「中国が供給していたワクチンやその他の救命支援の安全性と有効性に疑念を抱かせることが狙いだった」のだ。ロイター通信は米軍高官の言葉を引用し、「我々は公衆衛生の観点からこの件を見ておらず、中国を泥沼に引きずり込む方法を考えていたのです」と報じた。

同じロイター通信の報道では、米国には孤立した事例がひとつだけあったわけではなく、組織的な喧伝をおこなう「心理作戦」センターから実行されるそのような計画が無数にあることを認めている。したがって、米国政府が中国に「対抗」していたのは確かだが、それは中国が「悪意ある影響力」を行使していたからではなく、中国が米国自身の悪意ある影響力を弱めていたからであった、といえる。

中国を封じ込める長期政策

米国は、公衆衛生について嘘をつくだけでなく、中国との貿易や経済開発、生活基盤施設整備計画を断念し、ウクライナ式の中国に対する代理戦争が勃発する可能性が高い事態に備えて、公的資金を軍事費に投資するようフィリピン国民を説得しようとしている。

米国政府によるフィリピンの政治的掌握と搾取の中心は「強化防衛協力協定」(EDCA)であり、フィリピン全土に軍隊や装備、武器、弾薬の基地として軍事施設を建設するために利用されている。この施設は、第二次世界大戦終結以来、米国政府が追求してきた外交政策目標である、中国を軍事的に包囲し封じ込めるというもっと広範な地域戦略に貢献している。

米国務省の歴史局が発行した、1965年に当時のロバート・マクナマラ国防長官からリンドン・B・ジョンソン大統領に宛てた「ベトナムにおける行動方針」と題する覚書では、東南アジアにおける米国の軍事作戦は「共産主義中国を封じ込めるという米国の長期的政策を支援する」場合にのみ「意味をなす」と認めている。同覚書では、米国が中国を封じ込めようとした3つの戦線として、東アジア、パキスタンとインド、そしてフィリピンが位置する東南アジアを挙げている。

今日、この包囲政策は、EDCA のような枠組みを通じて継続されている。フィリピン国民の最大の利益に明らかに反しているにもかかわらず、米国がフィリピンを含む世界中で展開している (前述のPressOne社を含む) 潤沢な資金による喧伝工作は、中国は脅威であり、フィリピンの旧植民地支配者の米国は「同盟国」であり、米国の武器を購入し、米国軍とともに米国政府の戦争を戦うことがより明るい未来への道である、とフィリピン国民を説得しようとしている。

米国がウクライナを灰と骨の山に変えつつあること、そしてフィリピンで同じ過程が勢いを増していることを考えると、この道をたどる限りフィリピンに未来はないことは明らかだ。この不幸な変貌とそれがフィリピン国内に作り出している深い社会的・政治的傷跡は、国家の情報空間をその物理的領域と同様に扱うことの重要性、そして国家が陸上の国境や海岸、領空を保護するのと同等かそれ以上にこの領域を保護することの重要性について、また別の警告となっている。他の国々がこの警告に耳を傾けるのか、それともウクライナとフィリピンに倣って自滅するのかは、時が経てばわかるだろう。

インド、23億ドル相当のブラモス巡航ミサイルを発注

<記事原文 寺島先生推薦>
India orders BrahMos cruise missiles worth $2.3bn
インド政府はロシアと共同開発した超音速兵器200発の購入を承認
出典:RT 2024年2月23日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年3月1日


2052-1.jpg
2022年10月18日、ガンディナガルで開催された防衛博覧会2022で展示されたインドのブラモス超音速巡航ミサイルの模型の前を通り過ぎる訪問者。サム・パンサキー/AFP


インド政府の安全保障に関する内閣委員会は水曜日(2月21日)、射程距離の長いブラーモス超音速巡航ミサイル200発の取得を認可した。インドとロシアが共同開発した新型兵器は約1900億ルピー(約3兆5000億)で購入される予定だ。インドの報道機関の報道によると、これらは軍艦に搭載される予定だという。インドとロシアの合弁会社ブラモス・エアロスペース社との契約は来月署名される予定だ。

インドのブラマプトラ川とロシアのモスクワにちなんで名付けられたブラモス・ミサイルの元々の射程は290キロメートル(180マイル)で、改良により450キロメートルから500キロメートルまで延長された。

この合弁事業では、陸、空、海、潜水艦の能力を備えたミサイルが製造されている。インド国外へのブラモス・ミサイルの販売は、同国のナレンドラ・モディ首相が設定した2025年までに50億ドル(約6500億円)の軍需品を輸出する取り組みの先頭に立つと予想されている。

2022年、ブラモス社はフィリピンとこの高性能ミサイルを納入する3億7500万ドル(約500億円)の契約を締結し、その納入は3月に開始される予定である。

2052-2.jpg
関連記事:Indo-Russia defense venture in talks with Saudi Arabia

今月初めにサウジアラビアで開催された世界防衛ショーで、ブラモス社のプラビーン・パタック輸出担当部長は、同社の受注書類一覧が国内と海外の両方の注文を含めてすでに70億ドル(約1兆円)に達していることを明らかにした。同部長はまた、サウジアラビアがミサイル調達に「多大な関心」を示している、とも主張した。インド国防研究開発機関(DRDO)の長官も、このミサイルは潜在的な購入者から「大きな関心を集めている」と断言した。タイやベトナム、インドネシアがこの巡航ミサイルの取得に関心を示しているとみられる。

ブラモス・ミサイルはインド海軍によって広く使用されている。このような状況になったのは、イエメンのフーシ派が重要なアデン湾と紅海の回廊を通過する際に進水させた商船への攻撃や、ソマリアの海賊活動の増加を受けて、インドが海上巡視を強化している中で行なわれた。

インドのラジナート・シン国防大臣は、攻撃に対して「厳格な措置」を取ることを決意し、同地域で「ネットセキュリティ提供」の一つとして行動するというインドの取り組みを強調した。この声明は、12月にインド海岸の西400キロで日本の船舶ケムプルート号が攻撃されたことを受けて発表された。

米国は台湾を戦争の引き金にした。中国は台湾の武装解除はできるのか?

<記事原文 寺島先生推薦>
The U.S. Has Made Taiwan a Trigger for War. Can China Disarm It?
筆者:フィニアン・カニンガム(Finian Cunningham)
出典:ストラテジック・カルチャー(Strategic Culture)  2024年2月24日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年2月28日


2050.jpg


台湾は、「競争相手」とみなされる中国と対峙する米国の戦略において有用な駒である、とフィニアン・カニンガムは書いている。

1949年に中国の内戦が共産主義側の勝利で終わって以来、中国南海岸沖の台湾島は反共産主義勢力の避難所として米国の手先となってきた。米国は蒋介石独裁政権下から現在の台北政権に至るまで、台湾分離主義者を支援してきた。皮肉なことに、米国政府は台湾を「民主的で自由」であると描いている。

台湾を中華人民共和国の主権統治下にあると規定するいわゆる「一つの中国政策」に基づいて米国が北京との関係正常化に努めた1979年に、米国の台湾支持は弱まった。米国の立場は、台湾は島嶼省にすぎず、中国を一つの主権国家として認める国際規範に沿ったものである。

ところが、米国の中国とのいわゆる国交正常化は本物ではなかった。それは中国政府とソ連政府の関係にくさびを入れるための地政学的な動きだった。習国家主席とプーチン大統領の下で中国とロシアが戦略的つながりを再確立したいま、米国は中国に対するあからさまな敵意と、台湾を本土を不安定にする手先として利用する政策に戻った。

オバマ政権が2011年にアジア基軸戦略に着手した後、米国政府は意図的に中国を刺激し、主権を損なうような形で台湾との関係を熱心に回復した。

米国が台湾領土への軍事物資の供給を強化する中、台湾をめぐる緊張はますます高まっている。兵器システムは、中国本土を攻撃する能力においてますます攻撃的になっている。この発展は中国の主権を損なうだけではない。それはまた、中国政府にとって明白な国家安全保障上の脅威となる。台湾は中国本土から台湾海峡と呼ばれる狭い海を隔ててわずか130キロメートル(80マイル)の距離にあるからだ。

これにより中国は深刻な板挟みに陥っている。先制攻撃的な軍事行動を取るべきなのか、それとも政治が軌道に乗るまで待つべきなのか。

台湾で最近行われた選挙では独立支持政党が勝利した。しかし、中国本土とのより友好的な関係を望む政党への票の合計が多かった。このことは、台湾の人たちが軍事衝突に反対しており、中国政府が提案する政治的和解に好意的であることを強く示唆している。おそらく時間が経てば、台湾では平和的統一を望む声が決定的な多数派を占めるようになるだろう。

問題は、米国が中国との緊張を高める主導権を握っていることだ。その場合、中国政府はその願望とは裏腹に、最終的には軍事衝突に巻き込まれる可能性がある。

大国間競争の復活

ソ連崩壊後の1991年に冷戦が終結すると想定されて以来、その後の30年間のほとんどの間、米国は国家安全保障上の主要な懸念は国際テロを中心に展開すると宣言した。しかし近年、米国は認識されているテロの脅威を格下げし、「大国間の競争」に関する戦略的懸念を公式に優先している。

ロシアと中国は、米国の世界権力にとって地政学上最大のライバルであるとされている。このようにして、米国政府では第二次世界大戦後の50年間に国際関係を支配していた冷戦時代の地政学と言説への回帰が起きている。ロシアと中国はともに敵対関係を否定し、多極化した世界における平和共存を繰り返し主張してきたが、米国はいわゆる「ルールに基づく世界秩序」がロシアと中国によって脅かされていると執拗に描写しようとしてきた。

ジョー・バイデン大統領下の現米国政権は、国際関係を「西側民主主義対独裁国家」間の存亡をかけた争いとして描こうと画策している。このゼロサム的用語は、国際関係を「私たちと彼ら」の地政学的な陣営に二極化させることを目的とした冷戦的思考法の典型だ。このような二極化は、米国と西側の権力政治と米国の覇権的野望の促進に不可欠な機能だ。

世界を「ブロック」に分割することで、その結果として生じる対立関係と緊張がアメリカ軍国主義に影響を与えやすくなる。言い換えれば、ロシアと中国が多極化構想の中で主張する協力的な平和的国際関係は、一方的支配に基づく米国の覇権の追求にとっては忌まわしいものである。

米国にとって中国は第一の敵である

いくつかの米国の戦略計画文書は、「大国間の競争」を重視していることを明確に示している。2022年国家安全保障戦略では、米国の優先懸念事項が定義されている。その文書には次のように記載されている。

「我が国は現在、米国と世界にとって決定的な10年の初期段階にいる。大国間の地政学的な競争の時代に突入するだろう…冷戦後の時代は決定的に終わり、大国間での競争が進行中であり、それにより新しい世界が形成されようとしている…」

戦略的見通しは、中国が米国の力に対するより大きな脅威であると明確に決定している。この文書には次のように記載されている。

「ロシアとPRC(中華人民共和国)は異なる問題を突きつけている。ロシアは、ウクライナに対する残忍な侵略戦争が示しているように、今日の国際秩序の基本法を無謀に無視し、自由で開かれた国際体系に差し迫った脅威をもたらしている。対照的に中国は、国際秩序を再構築する意図と、その目的を推進するための経済力や外交力、軍事力、技術力を備えた唯一の競争相手である。」

もう一つの米国の主要な計画文書である2022年国防戦略も、中国を米国の世界権力に対する「迫りつつある問題」と定義している。そして中国は「国際秩序を再構築する意図とその能力を高めている米国の唯一の競争相手」であるとしている。

「迫りつつある問題」という用語は、「第一の敵」の婉曲表現だ。米国の国家安全保障に対する指定された最大の脅威としてロシアよりも中国を優先することは、2023年と2024年の国防権限法(NDAA)でも繰り返された。NDAAは米国の年間軍事支出8500億ドル以上を管理しているが、これは中国の軍事予算の約4倍、ロシアの軍事予算の8倍以上に相当する。

2022年2月に勃発したウクライナ戦争は、米国とロシア間の緊張と敵対関係を確実に強調した。これは、米国政府によってロシアが中国よりも大きな脅威とみなされているという印象を与える可能性がある。その印象とは裏腹に、ウクライナでの激烈な言い回しと戦争にもかかわらず、米国自身の計画立案者による戦略的見通しは、中国を長期的な主な敵であると認識している、ということである。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領も、米国ジャーナリストのタッカー・カールソン氏との最近のインタビューで、米国政府内では、中国がロシアよりも大きな脅威とみなされていることを認めた。プーチン大統領は「西側諸国は強いロシアよりも強い中国を恐れている」と語った。

米国は中国との戦争を計画中

連合空軍は2024年2月12日、アジア太平洋地域における兵力構造の大規模な見直しと拡大を発表した。司令官らは、「最大級紛争」に向けた新たな軍備増強の動機となる脅威と理由として、特に中国を挙げた。米空軍の文官の最上位であるフランク・ケンドール氏が2022年にその役職に任命されたとき、彼は米議会で自分の3つの優先事項は「中国、中国、そして中国」であると語った。

何人かの米軍上級司令官は、米国は今後5年間に中国と戦争状態に陥る可能性があると公に警告している。そして彼らは台湾を発火点として挙げている。

この戦争計画は、空軍、海軍、陸上兵器を含むアジア太平洋における全体的な米軍の増強を説明するものである。米国政府はオーストラリア、日本、韓国、フィリピン、グアム、そして最も挑発的には中国領土の台湾で軍事基地とミサイル配置を拡大してきた。

2024年1月16日、台湾のニュースメディアは、台湾領土が台湾海峡と中国本土に面した東海岸に2つの新しいミサイル基地を建設していると報じた。この新たな建設計画は、米国の対艦ミサイルのさらなる到着が予想されることから始まった。報告書はまた、さらに5つの基地が計画中であることも示した。

これらの展開は、今後数年間における中国との軍事対決に向けた米国による長期計画を示している。

米国の敵対行為の主要走狗としての台湾

2024年1月13日の台湾総選挙を受けて、ジョー・バイデン米国大統領は、米国は台湾領土の「独立」を支持しないと述べた。

したがって、バイデン大統領は米国政府が「一つの中国政策(OCP)」を遵守していることを公に肯定したことになる。

しかし、台湾と中国に対するバイデン大統領の公的立場は、米国のもう一つの「戦略的曖昧さ」政策の一環として理解する方がよいだろう。公式には、米国政府は中国を台湾に関する唯一の主権国として承認している、と主張している。しかし実際には、米国の行動は別の危険な目的を示している。

2023年11月にサンフランシスコで開催されたAPEC(アジア・太平洋経済協力)首脳会議で中国の習近平国家主席がバイデン大統領と会談した際、米国側は「一つの中国政策」に基づく義務を改めて強調した。その首脳会談で、習主席は米国に対し台湾への武器供与をやめるよう求めた。同首席は台湾が「最も危険な」問題だとし、統一に向けて問題が外交的に解決されなければ中国は武力行使するだろう、と警告した。バイデン大統領とその前任の共和党ドナルド・トランプ大統領の下で、米国は台湾への武器供給を拡大してきた。

米国は挑発的な立場を取り、台湾への武装をやめるべきだという習主席の忠告を無視することを選択したようだ。

報告されているミサイル基地の拡大と台湾への米国ミサイル供給は、米国政府が中国の有する台湾に対する主権を損なうことで中国と敵対する方針を示している。

2024年2月8日、米国の特殊部隊が台湾と中国本土に近い金門諸島に常駐していると米国と台湾の報道機関が初めて報じた。この展開は米国による「一つの中国政策」への重大な違反である。APEC首脳会議中にバイデン大統領が習国家首席に直接示したとされる公約からすれば、そう取られても仕方がない。

さらに、台湾における米軍の目的には侵略的な意味合いがある。報道によると、米軍人たちは紛争に備えた台湾軍部隊の訓練と中国本土軍の監視に従事しているという。

留意すべき点は、台湾におけるこうした米国の軍事展開は、1月26日にタイで行われた米国のジェイク・サリバン国家安全保障担当補佐官と中国の上級外交官王毅氏との高官レベルの会談のあとにおこなわれた事実である。同月初めにも、中国と米国の当局者は2年振りの「高官レベルの協議」を国防総省でもったところだ。この一連の会談は、両側の緊張緩和と相互交流の改善に向けた米国側の取り組みとして西側報道機関では報じられた。

繰り返しになるが、こうした接触は関係改善に向けた真の努力というよりも、米国の「戦略的曖昧さ」政策をよりよく表しているといえる。より正確には、その政策は「戦略的二枚舌」と呼ぶべきだろう。

ワシントンは、台湾に関するアメリカの真意や、より広範な戦略的対立の問題について、どうやら中国を惑わそうとしているようだ。バイデン政権は、「一つの中国政策」の堅持を表明し、衝突を避けるために軍と軍とのコミュニケーションを改善するよう求めることはあるかもしれない。

しかし実際には、米国は台湾へのさらなるミサイル供給を進めている。この前例のない米国の攻撃能力の増強は、アジア太平洋の他の地域でも再現されている。

1月に頼清徳氏が台湾総統に選出されたことにより、米国政府は今後4年間、台北での「親米」の声を際立たせることになる。頼総統は以前にも台湾の中国からの独立を主張していた。実際、選挙期間中、頼氏は台湾は「すでに独立している」ためそのような宣言をする必要はないと述べた。中国政府は繰り返し、台湾と中国本土の完全な統一に対する願望と主権を宣言してきた。しかし、習主席は、台湾が正式に独立を発表した場合、中国は領土に対する法的な主権支配を主張するために軍事力を行使する権利を留保する、と警告した。

台湾は、「大国間の競争相手」の中国と対峙する米国の戦略において有用な駒である。

米国政府は台湾の独立支持派の政治家に暗黙の支持を与えることで、分離主義者の感情を煽っている。台湾に米国の武器や軍人を供給することは、米国が中国本土との紛争が勃発した場合に台湾を守ってくれる軍事後援者であるという台湾側の考えを助長することにもなる。

重要なことは、次期台湾総統が民進党(DPP)の第3期政権であることである。民進党は蔡英文総統の下で2016年に初めて政権を握った。彼女は2020年に再選された。頼清徳副大統領が5月に大統領に就任すると、同副大統領が蔡英文総統の路線を引き継ぐことになる。民進党(DPP)は、現バイデン政権と前任者のドナルド・トランプ政権下で米国政府の全面的な支援を受けて、過去8年間にわたり独立推進勢力を煽ってきた。この政治的混乱は、頼清徳氏の大統領任期の今後4年間続く可能性が高い。

ここ8年間で台湾の兵器庫にミサイルが増強されたことも重要である2016年以前は、この島の軍事能力は限られていた。しかし民進党のもと、米国からの補給を受けて、台湾軍は弾道ミサイル能力、特に対艦ミサイルの能力を向上させた。これらの兵器の目標射程は最大500キロの短射程だが、中国南部沿岸部に届く可能性がある。

注視する必要があるのは、米国の長距離ミサイルの供給である。そのミサイルが、中国との紛争におけるより大きな米国の戦略的野心を示すことになるからだ。米国が支援する台湾の軍事化は、台湾における分離主義政治の扇動と相関関係があり、それがひいては中国政府との緊張を煽る。

2月13日、米国上院は、ウクライナに対する600億ドル、イスラエルに対する140億ドル、アジア太平洋に対する80億ドルを含む、外国同盟国に対する950億ドルの軍事援助予算案を承認した。その80億ドルのうち50億ドル近くを台湾に割り当てることになる。アジア太平洋資金は、この地域における米国のミサイル増強を補強することになる。

このことは米国の中国に対する敵対的意図を示すもう一つの指標である。一見、外交的関与と軍間の新たな通信交換を強めるものだが、実際はその逆だ。「一つの中国政策」に関する言説のリトマス試験紙は、中国に対する軍事攻撃能力に基づく事実である。

事実は、台湾が中国を敵に回し、挑発する手先として磨かれていることを証明している。

ウクライナ・ロシア戦争との類似点

米国がロシアに対する挑発としてウクライナを冷笑的に利用したこととの鮮やかな類似点がある。ウクライナはロシアと文化的に深いつながりがあり、領土支配をめぐる紛争の長い歴史がある。過去10年間、米国はウクライナへの軍事支援を強化し、ロシアとの敵対を煽ってきた。緊張は2022年2月に高まり、その高まる挑発を止めるためにロシアがウクライナへの軍事侵攻を命令した。2年間にわたる戦争が続き、現在も続いている。この戦争は第二次世界大戦後、ヨーロッパで最大の戦争である。推定50万人のウクライナ軍兵士が殺害された。この紛争はヨーロッパ経済に壊滅的な影響を与えた。それは核保有国間の破滅的な全面戦争に危険なほど近づける。

中国の崔天凯元駐米大使は最近、中国は台湾で軍事的な罠に陥ることはない、と述べた。経験豊富なこの外交官は、米国が扇動したウクライナとロシアの展開についてほのめかした。台湾への米国の武器供給増加問題に関して、崔氏は「誰かが代理戦争を準備しているかもしれないが、我が国はその罠には陥りません。中国人が中国人を殺害するような状況は見たくないですから」と述べた。

そのような願望は賞賛に値する。しかし、そのような見方は幸運にかけるしかないものだ。中国当局は台湾を巡る戦争を望んでおらず、戦争を避けるために全力を尽くすかもしれない。台湾との平和的統一に対する中国政府の願望が本物であることは疑いない。

それでも残念なことに、米国は邪悪な力を弄して台湾を引き金にしようとしている。米国政府は攻撃的な軍事能力を強化し、扇動的な独立推進政治を煽っている。中国政府はその敵対的な取り組みを制御していない。台湾がロシアにとってのウクライナのようなもの、つまり米国による代理戦争の場となる時が来るかもしれない。

その場合、厳しい予測がなされる。それは、中国は台湾に対する支配を主張するために、遅かれ早かれ軍事行動を起こすことになる、というものだ。米国の無謀で救いようのない挑発を考えると、戦争は避けられないように見える。誰がホワイトハウスに座るかに関係なく、米国政府の好戦的な態度は変わらない。今年11月の米国大統領選挙によって戦略的方向性が変わることはない。中国が対応を放置すればするほど、米国が提供する台湾の攻撃能力が増大し、軍事衝突の危険性はさらに大きくなるだろう。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、2024年2月14日のインタビューで、2年続いているウクライナ戦争についての大きな後悔は、ロシアが米国主導の挑発に対して介入するためにもっと早く行動しなかったことだ、と述べた。プーチン大統領は、旧ウクライナ東部のロシア系住民を守り、ロシアの国家安全保障に対するNATOの増大する脅威を先手を打って回避するため、2022年2月24日にロシアのウクライナへの軍事介入を命令した。

筆者は10 年前、CIA 支援の軍事政変で2014年2月に政権を握ったウクライナのNATO 支援政権下での邪悪な展開に関する記事を書いた。この記事では、差し迫った米国主導の代理戦争を先制するために、プーチン大統領は2014年半ばにウクライナに軍隊を派遣すべきだった、と主張した。その後のウクライナでの出来事、恐ろしい規模の死と破壊、そしてプーチン大統領自身そのことを後悔していると最近認めたことは、筆者の2014年の予測が正しかったことを示唆しているだろう。

台湾の問題に関しては、ロシアが断固たる行動をとるのに出遅れたのと同じ過ちを中国が繰り返すという危険性が現実としてある。中国の習近平国家主席も先手を打つ断固とした行動をとらないことで、プーチン大統領がウクライナに対して抱いた同じ後悔を台湾に関して共有する可能性がある。

謝辞:
偉大なジャーナリスト、故ジョン・ピルジャー氏は2016年に受賞歴のあるドキュメンタリー映画「来るべき対中国戦争」を執筆、製作した。この記事を、世界を彩った最も優れたジャーナリストの一人であるジョン・ピルジャー(1939-2023)氏の追悼に捧げる。

大胆な発言:ロシアとの関係改善で世界にメッセージを送るインド

<記事原文 寺島先生推薦>
Bold statement: India sends a message to the world by improving ties with Russia
ニューデリーが微妙なバランス感覚を保つ中、S・ジャイシャンカル外相のモスクワでの相互交流が西側諸国で注視されている。
筆者:アーリアマン・ニジャワン (Aaryaman Nijhawan)
国際関係研究者、政治評論家。デリー大学、モスクワ国立国際関係研究所(MGIMO)卒
出典:RT 2023年12月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年1月11日


1897-1.jpg
モスクワでの記者会見に臨むセルゲイ・ラブロフ外相とスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相。(スプートニク)


インド外務大臣スブラマンヤム・ジャイシャンカル博士の5日間の訪問が終了し、2023年は、古き友であるニューデリーとモスクワの二国間関係にとって、まさに比類なき年となった。両国は現在、強力で予測可能な、互恵的だがやや低迷している関係を再び活性化させるための明確な道筋をたどっていると考えることができる。

公式日程の一環として、ジャイシャンカル外相は、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相やデニス・マントゥロフ副首相と会談した。そして、モスクワのインド人コミュニティと交流し、プーチン大統領とも歓談した。この歓談はクレムリンとしては異例のものだった。

ジャイシャンカル外相の今回の訪問は、ヨーロッパのみならず世界的に深い地政学的分裂を引き起こしているウクライナ紛争のために、重要な意味を持っている。インドは一貫して中立の立場を維持し、平和的手段による解決を追求するようすべての当事者に呼びかけてきた。そのため今回の訪問は、ロシアとインドの関係が重要な役割を果たしていることを浮き彫りにしている。なぜなら、欧米諸国がモスクワへの制裁やロシアの輸出品(特に石油や軍需品)のボイコットを求めているにもかかわらず、その訪問が行われたからだ。

1897-2.jpg
<関連記事> プーチン大統領、「友人」モディをモスクワに招待

ジャイシャンカル外相は、インド人コミュニティとの約1時間にわたる交流の中で、世界政治におけるインドとロシアの関係は、「例外的な安定性と一貫性のある関係」であると指摘した。また、2つの大国間の関係の安定性を賞賛し、国家間のほとんどすべての関係には「良い時期」と「そうでない時期」があるが、インドとロシアの関係は1950年代初頭以来、世界政治において唯一不変のものであるとも述べた。

公式には、印露関係は特別かつ特権的な戦略的友好関係というユニークな称号を享受している。ウクライナ危機が始まって以来、ロシアとヨーロッパが地政学的な関係で断絶に見舞われた一方で、その後のロシアの東方重視とインドの中立は、冷戦時代の伝統的な同盟国間の爆発的な貿易と通商をもたらした。ジャイシャンカル外相は、この関係の重要性を強調し、この関係を育むために歴代の指導者たちが細心の注意を払ってきたことを強調した。

西側諸国がロシアの石油輸入に制限を課しているため、ロシアはインドの石油購入に熱い市場を見出した。アメリカとヨーロッパの同盟国が主導し、ロシア産原油に1バレルあたり60ドルという新たな価格上限が設定された。しかし、インドは欧米の価格上限を認めることを静かに拒否している。

1897-3.jpg
<関連記事> ロシア・インド貿易が過去最高に ― 大臣

スロバキアで開催された「Globsec 2022フォーラム」で、ウクライナ紛争に対するインドのユニークな立場について質問された際、ジャイシャンカル外相は有名な反論をした。 「ヨーロッパは、『ヨーロッパの問題は世界の問題であり、世界の問題はヨーロッパの問題ではない』という考え方から脱却しなければならない」、と述べた。

演説の中で、ジャイシャンカル外相はまた、両国間の経済関係が著しい成長を示している時に、インドからロシアへの輸出を増やすことは歓迎されるだろうと強調した。このほか、両国で台頭している経済の担い手や情報システム、活動基盤についてよく慣れていないという課題も指摘された。また、文化交流の強化、企業間交流、観光、両国の市民社会組織間の協力などが、成長の可能性を秘めた分野として挙げられた。

インドの外務大臣はまた、12月28日にクレムリンでロシアのプーチン大統領と交流した。プーチン大統領は、インドとロシアの経済的パートナーシップの高まりを強調し、特に石油、石炭、ハイテク分野において、両国の商業的協力関係がより大きな投資が期待されると指摘した。

1897-4.jpg
<関連記事>ロシアからインドへの石油供給は世界市場の「大混乱」を防いだ―同省

インドは現在、石油のほぼ20%をロシアから輸入している。世界第3位の石油購入国であるインドは、増大する経済需要を賄うためのエネルギー純輸入国である。ロシアは最近、イラクとサウジアラビアを抜いて、インドにとって最大の供給国に浮上した。ロシアからの石油輸入は現在、インドの総石油需要の40%を占め、前年比44%の伸びを示している。

石油の輸入はまた、過去数年間、主に防衛装備品に限定されていた関係に新たな経済的推進力を与えている。両国は現在、商業関係を拡大・活性化させる方法を模索しており、モスクワはアジア市場との統合拡大を、そしてインドは経済的地位の上昇を後押しする新たなビジネス協力関係を模索している。

ウラジーミル・プーチンは、ナレンドラ・モディ・インド首相が来年ロシアを訪問するよう招待した。プーチンは、「平和的な手段でこの問題を解決するためにあらゆることをしたいという彼の願いを知っている」と述べ、ウクライナ危機についてモディは「何度も報告を受け」、常に実情を把握しているとも指摘した。

<関連記事> インドとロシアの関係は「前向きな軌道」に乗っている ― 外相

インドは、ウクライナにおけるロシアの行動を批判していると見られる国連決議への参加を一貫して拒否してきた。今年初め、ロシア大統領は、ニューデリーが近年獲得しようとしているインドの国連安全保障理事会常任理事国入りをモスクワが支持することを改めて表明した。水曜日(12月20日)のジャイシャンカル外相との共同記者会見でも、ラブロフ外相は同じことを繰り返した。

防衛、核、宇宙分野でのロシアとの協力拡大について議論した際、ジャイシャンカル外相は、観察者として注視せずにはいられないと強調した。インド人コミュニティとの交流の中で、彼は「これらの協力は、本当に高い信頼関係がある国とのみ行うものだ」と述べた。また、クダンクラム原子力発電所(KNPP)共同プロジェクトの拡大について重要な合意が交わされたと付け加えた。

特にインドは、西側諸国との関係を拡大する一方で、モスクワとの協力関係を深めるという難しい外交の綱渡りに成功している。今回の訪問は、インドが米国やその同盟国との距離を縮めつつある今、インドが自国の利益を追求するための独立した外交政策と戦略的自主性を示すものでもある。

インドとロシアの長年にわたる関係は、ジャイシャンカル外相の最近の投稿が最もよく表している。その投稿には、1962年に彼が父親と一緒に赤の広場に行ったときのソ連の訪問カードの写真と、クレムリンの前での最近の写真が掲載されており、「どのように始められたのか。どのように継続しているか」という解説が添えられている。

プーチン大統領と金委員長の会談:これまでに判明したこと

<記事原文 寺島先生推薦>
Talks between Putin and Kim: What has emerged so far
国連の制裁にも関わらず、ロシアと北朝鮮には「多くの興味深い計画」が用意されている、とロシア指導者は語った
出典:RT  2023年9月13日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年9月19日



ロシア・アムール地方のボストチヌイ宇宙基地を訪問中のロシアのウラジーミル・プーチン大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長©スプートニク/ミハイル・メッツェル


 今週、北朝鮮の指導者金正恩総書記は、これまでほとんど例のなかった外国訪問をおこない、ロシア極東のいくつかの軍事・民間施設を歴訪した。

 水曜日(9月13日)に金総書記と会談したロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、国連が北朝鮮に課した制裁にもかかわらず、今回の会談が両国間の協力の機会になることを強調した。

 金総書記の訪問初日の様子は以下のとおり。

1。宇宙基地での会談
 
 金総書記は、父や祖父が北朝鮮を率いていた際に利用した交通手段である専用列車でロシアに到着した。同総書記の最初の主要な目的地は、アムール地域にある先進的な宇宙打ち上げ施設であるボストチヌイ宇宙基地だった。

関連記事:Putin meets Kim Jong-un at Russia’s Vostochny Cosmodrome (VIDEO)

 プーチン大統領は現場で金氏と会い、施設見学に同行した。映像には、最近ロシア宇宙計画の地上基盤施設の責任者に任命されたニコライ・ネステチュク氏の案内のもと、同施設の機能について追加の質問をしている北朝鮮の指導者の様子が映っていた。

 現地では二国間協議が2回行なわれ、最初は両国の代表団間、2回目はプーチン大統領と金委員長の対面の協議がおこなわれた。

2。北朝鮮からの揺るぎない支援

 交渉に先立った挨拶の中で、金総書記が「覇権主義勢力」と「帝国主義」と呼ぶものに対するロシアの対応への同国の揺るぎない支持を表明した。

 ロシア政府は、米国とその同盟国がウクライナでの経済制裁、強制、軍事行動を通じてロシアに対して「代理戦争」を仕掛けていると非難した。また北朝鮮も何十年ものあいだ西側からの圧力にさらされてきた。

 北朝鮮とモスクワ当局は1950年代の朝鮮半島内戦中に同盟関係にあったが、この内戦では米国が韓国側の主要な外国軍事支援者であった。

3。軍事協力

 ワシントン当局者らは数か月間、ロシア政府がウクライナ紛争で使用するため、北朝鮮の膨大な備蓄から武器や弾薬を調達しようとしている、と主張してきた。7月にロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣が北朝鮮を訪問した際、その非難はさらに激しくなった。


関連記事:‘I will always stand with Russia,’ says North Korean leader


 北朝鮮が武器供与でロシア当局を支援すれば、「北朝鮮に良い影響を与えず、国際社会でその代償を払うことになるだろう」と先週、ホワイトハウスのジェイク・サリバン国家安全保障担当補佐官は脅迫した。

 ロシアを常任理事国に含む国連安全保障理事会は、北朝鮮との武器貿易を禁止する制裁を発動中だ。プーチン大統領は、ロシア当局が既存の制限を遵守していることを明言した。

 「しかし、検討できることは確実にあります。定められた規則の範囲内でも協力する機会はあります」と金総書記との会談後、プーチン大統領はロシアの報道機関の取材に答えた。

4。金総書記の今後の旅程

 北朝鮮の総書記は、今後コムソモリスク・ナ・アムーレやウラジオストクなどロシアの他の地域を訪問する予定である、とロシア側は記者団に語った。今回の訪露での広範囲にわたる計画から考えれば、今回の訪問の「結果を評価するには時期尚早」であるとプーチン大統領は示唆したうえで、これまでの行事は「生産的」だったと述べた。

 大統領は、ロシア国防省はロシア太平洋艦隊の能力を披露する予定だ、と述べた。今後の金総書記の目的地は、環境問題や教育関連施設が予定されている。

 プーチン大統領は、「我々には多くの興味深い計画があります」と約束し、その一例として北朝鮮を通るロシアの鉄道接続を開発する計画を挙げた。

アジア太平洋NATO:戦火をあおる

<記事原文 寺島先生推薦>
An Asia-Pacific NATO: fanning the flames of war
出典:Pearls and Irritations  2023年7月8日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年8月14日
1307.jpg
「私の国アメリカは理解不能だ。誰が国を動かしているのかよくわからない。大統領だとは思いません」と、ジェフリー・サックスはオーストラリアのメルボルンで開催されたSHAPE(「人類と地球を救う」)のセミナーでの講演で述べている。「米国の行動は、我々を中国との戦争への道へと導いている。ウクライナにおける米国の行動と同じである」。

ジェフリ-・サックス
SHAPEでの講演
2023年7月5日

 皆さん、こんにちは。私をお招きいただいたことに感謝し、併せてSHAPEの統率力に感謝します。さきほど幸運にもアリソン・ブロイノウスキーとチュンイン・ムン両氏の話を聴くことができました。洞察力に富んだすばらしい発言でした。私はおっしゃったことすべてに完全に同意します。世界は狂ってしまいましたが、とりわけアングロ・サクソンの世界は恐ろしい状況です。世界の中にある私たちの英語圏という小さな片隅に、分別というものが少しでもあるのかどうかわかりません。もちろんアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのことです。

 今、私たちの国の政治には非常に悔やまれることがあります。深刻な狂気です。それは、残念ながら、アメリカに引き継がれた大英帝国主義の思考なのです。私の祖国アメリカは今、20年前、30年前と比べてみても、理解不能になっています。本当のことを言うと、いま誰が国を動かしているのかよくわかりません。アメリカの大統領ではないと思います。我々は将軍、つまり、安全保障体制によって運営されています。大衆は何も知らされていません。主流メディアでは外交政策について語られる嘘が日常的に溢れています。私はそれを聞いたり読んだりすることに耐えられません。ニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙、ウォール・ストリート・ジャーナル紙や主要なテレビ局が報じることは、来る日も来る日も、その100%が政府の偽情報扇動の繰り返しであり、これを打ち破ることはほぼ不可能となっています。

 いったいどうなっているのでしょうか。これは、いま先に話されたお二人からお聞きになったようにアメリカの狂気の問題なのです。自国の覇権を維持しようとする狂気です。軍事化された外交政策は、凡庸な知識人のように見えて、実は貪欲な将軍たちによる思考に支配されています。わずかの分別もありません。なぜなら、彼らの唯一の手口は戦争を起こすことだからです。

 そして彼らはイギリスに応援されていますが、残念なことに、私が大人になってからは、アメリカの覇権と戦争のためのアメリカ応援団として、ますます哀れな姿をさらしています。アメリカが何を言っても、イギリスはそれを10倍にして繰り返すでしょう。イギリス指導部は、これ以上ないほどウクライナ戦争を楽しんでいます。イギリスのメディアとイギリスの政治指導者にとって、それは大規模な第二次クリミア戦争*なのです。
*1853~56年、ロシアが南下政策を積極化させ、オスマン帝国に宣戦したことに対し、イギリスとフランス及びサルデーニャがオスマン帝国を支援して列強間の戦争となった。ロシアが敗北し、パリ条約で講和、オスマン帝国の領土は保全され、ロシアのバルカン方面での南下はいったん抑えられた。(世界史の窓)


 さて、オーストラリアとニュージーランドがどうやってこの愚かさに陥っているのかは、私にとってもあなたにとっても非常に奥深い疑問です。そんな馬鹿げたことは止めるべきです。しかし、政治家たちに指示したのはファイブ・アイズと治安当局だったのではないかと思います。彼らは、政治家たちがこれに関与している範囲において『まあ、このようにしなければならない』と言ったのでしょう。オーストラリアは私たち米国の安全保障国家ですが、私たちの政治家が必ずしもこれに大きな役割を果たしているとは思いません。ところで、米国の外交政策には当の国民の役割は全くありません。私たちは議論も討論もせず、1000億、いまや1130億ドルにもなる支出を認める法案への投票についても討論はありませんでした。それにもかかわらず、実際にはウクライナ戦争にはるかに多くのお金が費やされています。

 これまでのところ、この件については議会でさえ1時間も組織的な議論が行われておらず、ましてや公の場でもその議論はおこなわれていません。ただ私の推測では、あなた方の安全保障体制こそがオーストラリアにおけるこの動きの推進力であり、彼らは首相やその他の人々にこう言っているのでしょう。「これが最高の国家安全保障なのです。これはアメリカが私たちに言ったことです。あなた方の安全保障装置について、私たちが見ているものを説明しましょう。もちろん、このことを広く一般に漏らすことはできませんが、これは本質的には世界での生き残りをかけた闘いなのです」。

 現在世界中で経済顧問としてこの活動に 43 年携わっている私自身が目にするものすべてが、この彼らの発言がバカげたものであることを示唆しています。 こうした動きを理解するために人々が注目するのに興味深いと思うのは、ハーバード大学での私の元同僚であるロバート・ブラックウェル大使とアシュリー・テリスが2015年3月に外交問題評議会のために書いた非常に説得力がある記事です。現在起こっていることの計画がかなり直接的に述べられているので、そこからいくつかの抜粋を読みたいと思います。これが米国での物事の仕組みであり、その中に将来の計画が示されています。

 米中関係がどうなるかは基本的には2015年に知らされています。関係悪化は計画されたものであり、その場しのぎではありません。そこで、2015年にブラックウェルとテリスが書いたものを紹介しましょう。まず、「建国以来、米国は一貫して、さまざまな競争相手に対して優位な力を獲得し、それを維持することに重点を置いた壮大な戦略を追求してきた。最初は北米大陸、次に西半球、そして最後に世界的に」。そして、「世界全体における米国の優位性を維持することは、21世紀の米国の大戦略の中心的な目的であり続けるべきである」と主張しています。

 では、米国の目標は何か。目標は非常に単純で、世界における米国の優位性です。ブラックウェルとテリスは中国に対する目標達成計画を提示しました。彼らは私たちに何をすべきか教えてくれます。

 その計画項目をご紹介しますが、かいつまんでの紹介です。「中国を意識的に排除する手段によって、米国の友好国と同盟国の間で相互利益を増大させる新たな特恵貿易協定を作成する」。オバマ大統領はTPPで既にこの計画を始めていました。国内の政治的反対を押し切ることはできませんでしたが。第二は、中国の戦略能力を阻止するために「米国の同盟国と協力して、中国に対する技術管理体制を構築する」ことです。第三は、「中国の周辺にいる米国の友好国や同盟国の権力政治能力」と「中国の反対を無視して、アジアの周辺地域に沿って効果的に戦力を発揮するように米軍の能力を向上させる」ことです。

 この計画項目で特に注目に値するのは、それが2015年に作られたものだということです。実際に実行されている段階的な行動計画なのです。このような外交問題評議会(CFR)による米国の政策の伏線は、最近の歴史でもよく知られています。1997年、CFRの機関誌『フォーリン・アフェアーズ』において、ズビグニュー・ブレジンスキーはNATO拡大の時系列を正確に示し、特にそのNATO拡大にはウクライナを含める意向が書かれていました。もちろん、このNATO拡大計画はウクライナ戦争に直結しており、まさにNATO拡大をめぐるロシアとアメリカの代理戦争となるものです。

 さて、あなた方にウクライナ戦争をもたらした友人や天才たちは、今度はあなたの隣国で新たな戦争を起こそうとしています。ムン教授が指摘したように、北大西洋条約機構は、東アジアにも事務所を開き始めています。ここは厳密には北大西洋ではありませんね。

 これが私たちの現状です。ひとつの主な理由を見つけることはとても簡単とは言えません。少なくともアメリカでは、オーストラリアがどのような国なのかはよくわかりませんが、アメリカとほぼ同じであると予想されます。そこでは、この問題について誠実に向き合って、国民的な議論がなされていないからです。政策は、安全保障機構、軍産複合体、「頭脳集団」の連携網によって完全に所有されています。これらは実際にはワシントンの頭脳集団では決してありません。ほとんどすべての資金が軍産複合体から出ているのです。

 軍産複合体とその傘下にある政治に圧力を加える企業は、私が教えている東海岸の大学を乗っ取っています。私はハーバード大学で20年以上教え、現在はコロンビア大学で教えていますが、大学における情報機関の影響力は、私の経験ではかつてないほど大きくなっています。これらはすべて、あまり世間に知られることなく、ほとんど静かな政権転覆のように起こっています。議論もなく、公の政治もなく、正直さもなく、文書も公開されていません。すべてが秘密であり、機密であり、少し不可解でもあります。私はたまたま世界中の国家元首や閣僚と関わる経済学者であるため、公式の「物語」や蔓延する嘘を見破るのに役立つ多くのことを聞き、多くのことを目にしています。

 私が経験したようなことは、公の場では一切お目にかかれません。そこで、ウクライナ戦争についてひとこと述べますと、戦争は完全に予測可能であり、1990年初頭に遡るNATO拡大に基づく米国の覇権計画の結果でした。米国の戦略は、ウクライナを米国の軍事軌道に乗せることでした。ブレジンスキーは、1997年に著書『世界チェスボード(The Global Chess Board』の中で再び戦略を示しました。ウクライナなしのロシアは重要ではないと彼は主張しました。ウクライナはユーラシアの地理的要であると彼は書いているのです。興味深いことに、ブレジンスキーはアメリカの政策立案者に対して、ロシアと中国を同盟関係に追い込むことがないように注意を促しました。実際、それは米国の利益に反するものであり、ブレジンスキーはそれが決して起こらないとはっきり信じていた。しかし、実際はそうなっています。米国の外交政策は無能であるだけでなく、非常に危険で誤った考えを持っているからです。

 1990年から91年の間、私はたまたまゴルバチョフの顧問であり、1991年から94年の間は、ボリス・エリツィンとレオニード・クチマの顧問でしたので、その期間は、ペレストロイカの末期からソビエト連邦解体後のロシアとウクライナの独立の初期に及んでいます。私は何が起きているのかを注意深く見ていました。そこで私が見たのは、アメリカがロシアの安定化を支援することには全く無関心であることでした。

 1990年初頭からの米国の安全保障体制の構想は、米国主導の一極化、すなわち米国の覇権主義でした。1990年初頭、米国はソ連経済、次いでロシア経済の安定化を目的とした支援策を拒否する一方で、NATOの拡大を計画し始めましたが、これは米独がゴルバチョフとエリツィンに約束したこととは正反対でした。したがって、ウクライナを含むNATO拡大問題は、1990年初頭に始まった米国の行動計画の一部であり、最終的にはウクライナ戦争につながりました。

 ところで、アメリカは、2014年のウクライナの親ロシア派大統領の失脚に深く関与していました。そう、これはクーデターであり、アメリカにとって重要な政権交代作戦だったのです。私はたまたまその一部を見たことがあり、アメリカのお金がマイダンの支援に注ぎ込んだことを知っています。このような米国の干渉は不快で不安定なものであり、NATOをウクライナとジョージアに拡大するという行動計画のすべての部分でした。

 プーチン大統領は外交的対応を進めましたが、米国やNATO同盟国は何度も拒否しました。国連安全保障理事会で承認されたミンスク2協定も同様の対応をしましたが、ウクライナに無視されています。

 2021年12月17日、プーチンは交渉の基礎となる完全に合理的な文書「米ロ安全保障協定草案」を交渉のテーブルに置きました。核となったのはロシアのNATO拡大停止要求だったのですが、悲劇的なことに、アメリカはそれを無視したのです。2021年12月の終わりにホワイトハウスに電話して、安全保障担当の高官と話し、「交渉する。NATOの拡大を止める。戦争を避ける好機がある」と訴えました。もちろん、無駄です。米国のプーチンへの正式な回答は、NATO拡大はロシアと交渉の余地がないというものであり、ロシアの発言権はまったくありませんでした。

 これは信じられないやり方です。なぜなら、それは戦争への直接の道になるからです。皆さんに理解してほしいのは、2月24日にロシアが侵攻したわずか一ヶ月後の2022年3月には、ウクライナにおけるこの戦争は交渉による合意によって早くも終結に近づいていたことです。ところが、この合意は、米国によって中止されました。というのも、この合意はウクライナの中立性に基づいていたからです。米国はウクライナに対し、戦い続け、交渉を打ち切り、中立を拒否するように命じていました。

 そして、私たちは核戦争の可能性に向けて激化し続ける戦争の中にいます。もしロシアが戦場で大敗を喫したら、それが起こるでしょう。ロシアは今のところ戦場で負けてはいませんが、もし負ければ核戦争に発展する可能性が高くなります。ロシアはドンバスとクリミアから追い出されて、おとなしく謝罪して帰国するつもりはないでしょう。ロシアは戦いを激化する必要があれば、そうするでしょう。つまり、私たちは今、非常に危険な連鎖的悪循環の中にいるのです。

 日本はこの連鎖の中に完全に飲み込まれています。そしてオーストラリアも同様です。オーストラリアがこの無謀な方法で利用されることを受け入れているのを見るのはとても悲しいことです。無謀で挑発的、そして費用のかかる方法で新たな軍事基地に巨額の費用を投じることは、オーストラリアに大きな負担を与えながら、米国の軍産複合体を養うことになるだけです。

 このような米国の行動は、ウクライナにおける米国の行動と同じように、我々を中国との戦争への道に向かわせています。アジア太平洋戦争になれば、さらに悲惨なことが起きるだけです。米国とその同盟国が中国と戦うという考えは、その意味、その愚かさ、そして無謀さにおいて、唖然とさせられます。これらはすべて、オーストラリアの安全保障上の真の利益とは完全に乖離しています。中国はオーストラリアにとって脅威ではありません。世界に対する脅威でもありません。

 私は、中国の歴史の中で中国が海外の国を侵略した例をひとつも知りません。ただ、モンゴル人が中国を一時的に統治し、日本を侵略しようとしたときを除いてですが。モンゴルによる侵攻は台風に負けましたが、それを除けば、中国は海外で戦争を始めたことはありません。それは中国の国策の一部ではないし、そのような戦争は中国の国益にもならないからです。
世界について私が心配しているのは、世界最強になることを目指している、極度に神経質になった米国の(安全保障上の)指導者たちだが、それは彼らが信じているやり方ではそうはなれないことです。これは情けないことですが、遠い昔の世界帝国の栄光を今も夢見るロンドンでは毎日称賛の声が上がっているのです。

 結論として、私が何をすべきかを言うのに1分かかることをご了解ください。

 第一に、ウクライナでの戦争は、バイデンが決断して、NATOがウクライナに拡大しないと発言する日には、終わる可能性がある。なぜなら、交渉による安全保障協定の基礎は30年前からあったが、これまでのところ米国によって拒否されていたからだ。

 第二に、アジアにNATO事務所を開設するという考えは、その愚かさゆえ唖然とさせられる。日本人にこの無謀な行動を止めるように言ってほしい。

 第三に、米国が台湾を武装させようと行動することは非常に危険であり、挑発的であり、意図的である。

 第四に、アジア太平洋地域で最も必要なのは、アジア太平洋諸国間の地域対話である。

 第五に、アジア太平洋地域はRCEP (東アジア地域包括的経済連携協定) を基礎とすべきである。RCEPは、特に気候変動問題、エネルギー政策、貿易政策、生活基盤施設への投資政策を中心に、中国、韓国、日本、ASEAN 10カ国、オーストラリア、ニュージーランドを一貫した枠組みでまとめるための正しい概念である。RCEPがうまく機能すれば、RCEPに参加する15カ国だけでなく、世界全体に利益をもたらすだろう。

 話が長くなって申し訳なかったですが、SHAPEがやっていることはとても重要です。あなた方は完全に正しい道を進んでいます。みなさんの努力が叶うことを願っています。

タリバンは米国ができなかった麻薬対策を一年で実現

<記事原文 寺島先生推薦>
Taliban achieves what US couldn’t do with opium – media
The group’s ban on poppy farming has reportedly slashed Afghanistan’s opioid production by 80% in one year
報道によると、タリバンによるケシ栽培の禁止は、一年間でアフガニスタンの麻薬製造を8割減らした、という。
出典:RT   2023年7月1日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年7月19日



資料写真:2006年4月、アフガニスタンのケシ畑を歩く米軍のポール・カルボス大佐© Getty Images / John Moore


 報道によるとタリバンは、米国の「麻薬との戦争」政策が50年掛けて成し遂げられなかったことを一年でやり遂げた、という。具体的には、アフガニスタンの麻薬生産の大多数をなくすという任務だ。2022年4月にタリバンがケシ栽培を全国規模で禁止して以来、アフガニスタンは、「人類史上最も成功した対麻薬政策」を成し遂げた、と英国のテレグラフ紙は、土曜日(7月1日)に報じた。 アフガニスタンの麻薬製造は、昨年、推定8割減少したと、その記事は報じた。ヘルマンド州では、ケシ栽培が99%、面積でいうと約2500エーカー(約10キロ平方) 減少したとのことである。この州は米国が主導したアフガニスタンでの戦争時のほぼ20年間、英軍の占領下にあった。
 
 テレグラフ紙の記事によると、このように麻薬の供給源を減少させることは、米軍がアフガニスタンに駐留していた20年間を含め、米国政府による50年間の麻薬との戦争において成し遂げられることはなかった、とのことだ。中央アジアに位置するアフガニスタンは、歴史上、世界の麻薬の8割、欧州に供給される麻薬の95%を製造してきた。このような状況を監視している組織はいくつかあるが、中でも国連が懸念を表しているのは、このようなケシ栽培の減少が、合成麻薬の使用を増やすことに繋がりはしないか、という点だ。このような合成麻薬には、フェンタニルなどがあるが、ケシを原料とするヘロインよりもずっと危険な薬品である可能性がある。



関連記事:タリバン、ケシ栽培を禁止

 米国がアフガニスタンを支配していた2004年、米国政府が支援する首都カブールの政権は、10年以内にケシ栽培をなくすという目標を立てた。実際はその逆で、米国支配下において、栽培や麻薬製造は増加した。 報道によると、米国は少なくとも90億ドルの税金を注ぎ込んで麻薬産業の根絶につとめていたという。

 米国の中央情報局(CIA)には麻薬貿易を行ってきた長い歴史がある。米国務省が1991年に出した報告書によれば、アフガニスタンでのCIAの秘密作戦が、アフガニスタンを「麻薬の自給地域から、世界市場に向けたヘロインの主要な供給地域」に変換させるものだったことが判明した。

 しかし、米国の報道機関は、タリバンを名指しで非難し、2021年8月に、このイスラム教勢力がアフガニスタンの支配権を再度手に入れて以来、麻薬製造を許可してきたと報じた。米国政府が資金提供しているラジオ・フリー・ヨーロッパは、つい最近の2023年5月に、アフガニスタンのケシ栽培が増加したのは、タリバン政権がケシ栽培の禁止を推進することに前向きでないからだ、と報じた。

関連記事:バイス・ニュース社は、「昔懐かしい」ヘロインを惜しむ麻薬使用者らが、CIAに対して疑念を抱いているとの報道。

 皮肉にも、米国政府の米平和研究所は先月、タリバンを、麻薬製造の撲滅に成功しすぎたとして非難した。「タリバン政権による現行の禁止策を、過度にいいことのように捉えること、つまり世界の対麻薬政策における重要な勝利と捉える誘惑に陥ってはならない。現在のアフガニスタンの経済面や人道面の状況からすれば、成功と捉えるべきではない。実際のところ、この禁止措置により、アフガニスタンには経済的及び人道的に大きな負担がかかっており、アフガニスタンからの難民流出がさらに促進される可能性がある」と同研究所は主張した。

イムラン・カーンの逮捕: パキスタンのファシズムの素顔とは

<記事原文 寺島先生推薦>
The Arrest of Imran Khan: The Naked Face of Fascism in Pakistan
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年5月11日
筆者:アースマ・ワドゥド(Aasma Wadud)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月23日



イムラン・カーンの人気は政権交代後うなぎ登りであり、 今やパキスタンで最も愛され、親しまれ、信頼されている指導者となった。

 
 政権交代が強制的に行われて、イムラン・カーンやパキスタン正義運動党(PTI)の指導者たち、同党に投票した人々、支持者、報道家、ソーシャル・メディア上で活動する人々、一般市民が辛い時間を迎えることになってから、野党連合「パキスタン民主運動(PDM)」が権力を握り、恥知らずにも、ファシスト的な考え方を持って権力を振るおうとしている。

 パキスタンの民主主義は最近ずっと弱体化してきているが、真の民主主義への願いはかつてなく強まっている。パキスタンは、イムラン・カーンの指導のもとで団結し、断固とした態度で立ち上がり、自国の主権や、繁栄、敬意を追求しようとしている。パキスタン元首相のカーンは、新しい方法で、パキスタンの政界を再構築しているのだ。その一例が、2023年5月6日に出された判決に連帯する国家規模の集会への呼びかけだった。

 パキスタン最高裁は憲法を守れるかの瀬戸際に立たされている。現政権は何としてでも、選挙を避けたがっていて、パキスタン最高裁や大統領の職務権限において決定的な変化が生じるまで、選挙を避ける構えのようだ。

 他方、パキスタン憲法第224条においては、議会解散後90日以内に重要な二州(パンジャブ州とカイバル・パクトゥンクワ州)において選挙をしなければならないとされている。ウマー・アタ・バンディアル最高裁長官はスオ・モト*を発令し、両州での州選挙を90日以内に行うよう命じた。政府側はあらゆる手を尽くしてこの選挙を遅延させようとしている中で深刻な影響が刻々と生じており、事態は風雲急を告げている。
*インドやパキスタンの裁判所が持つ、裁判所が独自の判断で下すことの出来る職務命令のこと

 「パキスタン正義運動党」は、パキスタン各地の4千を超える地域で平和的な反対運動を24時間以内で組織することに成功した。しかし、このファシスト政権においては、あらゆる政治的取努力は結果が伴う。今回の政権奪取の成功に伴い、政治上の犠牲者がたくさん生まれていることが、パキスタンで急速に日常茶飯事になっている。パキスタンでは、女性たちが警察により残忍に連行され、肌を日光に露出させられ、公衆の面前で衣服を破られていた。さらには、男性用の囚人護送車で運びさられていた。パキスタン正義運動党の指導者層や同党に投票した人々や支持者、支援者は嫌がらせを受け、拉致され、偽の供述調書を書かれていた。この反対運動は現政権に大きな打撃を与え、国家権力を混乱させているが、これはこの20年で最大の誤算に基づくものだった。イムラン・カーンは、翌週の選挙へ出馬を表明したので、イスラマバード高等裁判所の敷地内で、国家行政機関の命を受けた警備員らに逮捕された。国家権力に対して、恐れることなく対決したために、このような手荒な対応をされ、屈辱を受けることになったのだ。悲しいかな、こんなことは氷山の一角に過ぎない。

 カーンの逮捕は、国家規模の反対運動を引き起こし、その運動において民衆は、このような暴挙を行った軍を非難していた。このような衝突はパキスタンの歴史上例を見ないものだ。 それだけではなく、イムラン・カーンの逮捕に対する民衆の激しい怒りは、不穏な事態となっている。さらに問題なのは、イムラン・カーンは逮捕されたのか拉致されたのかどちらなのかが、未だに明らかになっていないことだ。


昨日のパキスタンのペシャワールでの抗議活動において、警察はイムラン・カーン元首相の支持者たちに対して催涙弾を発射した。Credit…Abdul Majeed/Agence France-Presse — Getty Images

 政権交代が強制的に行われて、イムラン・カーンや「パキスタン正義運動党(PTI)」の指導者たちや、同党に投票した人々、支持者、報道家、ソーシャル・メディア上で活動する人々、一般市民は辛い時間を迎えることになってから、「パキスタン民主運動(PDM)」はファシスト的な考え方で権力を握り、恥知らずにそれを実行した。「パキスタン正義運動党」の指導者たちや、同党に投票した人々、支持者たちは、拉致され、嫌がらせを受け、強姦され、危害を加えられ、拷問された。彼らは橋の上から落とされ、平和的な政治集会を行っているところを射撃され、集会から連れ去られ、留置所で殺された。

 イムラン・カーンは暗殺されそうになりながらも辛くも逃げることができたが、負傷し、何ヶ月も自宅で監禁された。報道界においては、アーシャド・シャリフ記者のような尊敬される記者が亡くなった。今パキスタンでは、これまでにない規模で政治上の犠牲者が生まれており、「パキスタン正義運動党」の指導者たちはパキスタン国内の至る所をまわり、 国内各地で多くの事態に対処している。イムラン・カーンには、150件以上の罪状が掛けられている。愚かにも政府当局は、法的正当性を無視して行動を起こし、カーンを逮捕しようと企んでいた。警察権力はカーンの自宅を家宅捜索した。 「パキスタン正義運動党」の支持者、同党に投票した人々、男性、女性、子どもたち、老いも若きもが、催涙弾を発射され、警棒で殴られ、放水砲を浴びせられた。個人的な電話も盗聴され、あろうことか内閣の記者会見内でその内容が明かされた。個人情報も人権も言論の自由もあったものではない。

 権力の座に居座り続けることが、現政権の主要目的だ。汚職の伝統と実体があるという理由だけで連立が成立している「パキスタン民主運動」政権は、13の政党からなる連立政権だが、成立したのは2020年9月のことであり、その目的は、自分たちの利権に奉仕する権力を確保することだった。不信任動議のやり直しをさせるという手口の策謀でイムラン・カーンを退陣させて権力を得た後、この不浄な連立政権は自分たちの汚職を正当化させ、法律や制度を都合のいいように変えようとしてきた。

 イムラン・カーンの人気は政権交代後うなぎ登りであり、 今やパキスタンで最も愛され、親しまれ、信頼されている指導者となった。他方、「パキスタン民主運動」政権は徐々に政治的資産を失い、権力を傘に来た横暴な態度をとるようになった。「パキスタン民主運動」政権がイムラン・カーンを恐れているという事実は、公然の秘密である。カーンが、パキスタンの国家規模で、唯一全国的に有権者や支援者、支持者からの信頼を得ている指導者だからだ。ただしそれは、自由で公正な選挙を確立させることができるなら、の話だ。そのような選挙が実現できれば、カーンは3分の2の支持票を集め、これまで妨害されてきた、「国民に対して説明責任が持てる政府」の再興を成し遂げられるだろう。そうなれば、今回カーンに与えられる政治的活動領域の画布はこれまでで最大のものとなろう。これまでは手をつけることが出来なかった聖域にまで踏み込めるようになる。

 イムラン・カーンが最大の脅威であることを考えれば、カーンを懐柔し、拘束し、身柄を抑え込み、力を削ごうとすることは、現政権にとって必須のことだ。反逆罪であれ、外国人から贈り物を得ていた件であれ、事実をよく調べることなく罪をでっち上げようとしたが、全く上手くいっていない。それでもまだ、カーンの身辺にのしかかる脅しは、終わることがない。

 「パキスタン民主運動」政権が権力者として支持を失うのは時間の問題だ。「分割して統治せよ」の手法を用いて、現政権は意図的に衝突を演出してきた。現政権は、支配者層と民衆の間の乖離を拡げている。現在、最高裁が現政権の主要な槍玉に挙げられている。今パキスタンで最も尊敬されていて、愛されている組織は、軍なのだが、この軍が、現在最も混乱している政治上の対立劇の渦中に置かれている。それだけではなく、現政権はパキスタン憲法を改悪して選挙をさせない構えだ。少しずつパキスタンが世界から孤立しつつある中で、好調な経済界は政界の安定を求めているが、パキスタン民主運動政権は何としてでも、2023年9月までの選挙実施を阻止しようとしている。

 他方、イムラン・カーンは波に乗り、民衆からの支持や愛情や賞賛を集めている。口先で妥協するつもりのないカーンの態度が、カーンと民衆を強く結合させている原動力になっている。現政権は最高裁が出した(カーン逮捕無効の)判決に抵抗していることは、イムラン・カーンとパキスタンの民衆の結束力を強め、共に努力して憲法を守ろうという動きに繋がっている。カーンや民衆は、どんな困難に直面しても、目的を達成するつもりだ。その目的とは、自立し、民主的で、繁栄あるパキスタンの実現だ。 腐敗し、王権的政治の旗手である現政権の「パキスタン民主運動」政権は、上手くいかない施策を弄して追い込まれている。 イムラン・カーンが逮捕されたことがきっかけとなり、民衆の中で鬱積されてきた怒りが爆発したのだ。カーンが拘留され続けるならば、状況は悪化の一途を辿るだろう。正当な民主主義に則った手順が取られたのであれば、このような状況は友好的・政治的に対処できていただろう。ファシズムという炉の中で燃やされるという試練を受けた後に、パキスタンの民主主義は、真の色で燃え盛ることだろう。

AUKUS(オーカス)の原子力潜水艦協定は帝国による対中戦争の一環

<記事原文 寺島先生推薦>

The AUKUS nuclear submarine deal is part of an imperialist crusade against China

Beijing is right to condemn the pact as spurring an arms race and undermining Asia-Pacific stability.

「この協定は軍拡競争を招き、アジア太平洋地域の安定を損なう」という中国側の非難は至極もっとも。

筆者:Timur Fomenko(ティムール・フォメンコ) *政治分析家

出典:RT

2023年3月17日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月3日



© Global Look Press/Keystone Press Agency


 今週はじめ、豪・米・英の指導者による3カ国首脳会談がサンディアゴで開かれ、AUKUSの協定に関する具体的な話合いが持たれた。それは豪州当局に原子力潜水艦を供給するということについてであり、その意図はインド洋と太平洋において中国を封じ込めることにある。

 さらにこの協定により、英・米の原子力潜水艦による豪州西部のパースの近くの周航が2027年から認められた。その目的は、米英の原子力潜水艦隊を統合し、豪州は自力で「必要な軍事行動が取れる能力」を打ち立てることにある。

 この協定の発表が、コモンウェルス・デーに行われたのはただの偶然ではない。この日は、大英帝国のかつての覇権を祝う例祭の日だ。その同じ日に、英国政府は「総括的方針」を発表し、防衛費の増額を誓約した。その際リシ・スナク首相は、中国を「重要な脅威である」とし、いっぽう英国やAUKUS同盟は、開かれた自由なインド・太平洋地域を維持するために力を注ぐ善意の勢力であるとしていた。中国側の反応は、この3カ国首脳会談を厳しく非難するものであり、この首脳会談は、「典型的な冷戦時代期の考え方」であり、「軍拡競争に拍車をかけ、世界の核不拡散協定を覆し、この地域の平和と安定を損なうことにしかならない」とした。




関連記事:AUKUSの原子力潜水艦協定の詳細


 AUKUSの原子力潜水艦協定の中国による解釈は正しい。バイデン政権は、積極的に同盟体制を拡大し、中国を軍事的に封じ込めようとしている。AUKUS同盟とともに、バイデン政権は、韓国・日本との3カ国協力体制を推し進めており、韓国のユン・ソクヨル大統領は、フィリピンへの軍の駐留や、Quad(米・印・豪・日)などの他の地域同盟に参加することに前向きな姿勢を示している。ただし、AUKUSが独特なのは、この同盟の加盟国は、英語圏の国だけであるという点だ。すなわち、英語圏の例外主義という新帝国主義の風情を具現化する同盟なのだ。

 英国がますます反中政策を強める決意を示している背景には、無論米国の影響を受けていることや、中国が英国にとって最大の利益を得る障害になっていることがある。しかし、英国の外交政策の言い分には、特にブレグジットの観点から言えることだが、帝国主義への懐古が纏(まと)われている。つまり、大英帝国時代を振り返って、「善を促進する力」を有していた時代だとする考え方だ。奴隷制度や搾取や他国に対する侵略行為などの記憶はなかったことにしようという触れ込みなのだ。英国を「慈善国家」であるととらえ、「世界の規律」を取りしきる、「世界の警察」の役目を果たした国だったと見ているのだ。当時の英国は他に比類なき海軍力により、 侵略者たちを撃退し、自国の善き意思を遂行しようとしていた、というのだ。

 歴史についてのひとつかふたつの真実をご存知の方であれば誰でもお気づきになるだろうが、こんな考え方は理想主義であり、歴史修正主義によるものだ。さらに中国が酷い侵略に曝(さら)されていたのは、英国が中国を強制的に開国させ、中国の諸港を占拠し、香港という地域を占領することを求める中でのことであった、ということもご存知のはずだ。そのため中国は当時のことを「屈辱の世紀」であるとしている。大英帝国はもはや存在しないとはいえ、英国の指導者層は未だに過去に生きていて、英国の帝国主義の遺産は、米国や、大英帝国が生み出した国々(例えば豪州)の覇権主義の中に生きながらえている。これら大英帝国の末裔が、「バトンを繋ぎ」続けていており、今の彼らの掛け声は、「規則に基づく秩序」だ。その結果、中国に対する軍事拡張主義を維持していることを、道義的観念的に正しいことであると主張しているのだ。




関連記事:中国は米国が「最大の核脅威」であると主張


 実際、AUKUSはアジア・太平洋地域を不安定化させる要因となっており、軍拡競争や緊張の高まりを引き起こす原因となっている。インドネシアのような中立的立場にある国々については、西側が同盟に引き込みたがっているのだが、これらの国々はAUKUSを警戒している。その理由は、AUKUSにより、この地域の戦略的抑制が危うくなるからだ。さらに、戦争を回避したいと主張しているAUKUSが、実のところは戦争を奨励していることもある。学者であるアダム・ニー氏が上手く言い当てているとおり、「最高額の保険金を払っているのに、車の衝突事故が起こる可能性を高めようとしているようなもの」だ。中国は、AUKUSへの対応策として、防衛費や軍の駐留を拡大し、ロシアなどの国々との同盟関係を強化せざるを得なくなっている。このような状況は米国にとって思う壷であり、悪循環を生みだし、戦争が起きる可能性を高めることになる。

 AUKUSは、脱帝国主義後の新しい戦いの象徴であり、アジアの平和を終焉させ、この地域を戦場と化してしまおうというバイデン政権による多面的な戦略の一環である。 この動きは、太平洋地域にNATOのような同盟体制を生み出そうとするものであり、この先この動きは拡大する可能性がある。このような動きは平和を導くものではなく、戦争や不安定化に繋がるものだ。そしてその標的は明らかに中国だ。このAUKUS同盟に漂う香りは、大英帝国への帰属意識であり、基底概念であり、懐古主義だ。そこには、この地域や歴史やここに住む人々への敬意は感じられない。平和を愛する国々から拒絶されても仕方のないような同盟だ。この同盟から 何か実態のある結果が出るのは数年後のことになりそうだが、緊張や政治感情は、直ぐにしかも唐突に高まりそうだ。

米帝国は世界を灰にしてから支配する

米帝国は世界を灰にしてから支配する
<記事原文 寺島先生推薦>
Ruling over the Ashes

Strategic Culture 2022年2月20日
イーモン・マッキニー(Eamon McKinney)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月10日

 「銃を手にした白人たちが善良な意思の告白とともに現れたとき、アジアの苦難が始まる」。これがアジアの歴史だ。


 アジア太平洋地域が最近脚光を浴びている。そこに映し出されているほとんどは、あからさまに中国や、中国のめざましい台頭に害を与えようとする企てである。オバマの「アジア基軸戦略」を覚えておいでだろうか?「中国が近隣諸国に脅威を与えている」という主張が支配的だ。しかし当地域の住民たちから「中国から脅威を与えられている」という感情を耳にすることはほとんどない。反中国論を駆使して常に攻撃を加えようとしている西側諸国の理解では、「アジア諸国は中国を恐れていて、西側諸国から保護してもらうことを歓迎している」となる。本当にそうなのだろうか?以下論述する。

 この考え方を理解するためには、不都合な歴史の振り返りを行わなければならない。タイを例外として、すべての東南アジア諸国は西側植民地主義の餌食となってきた。具体的には、ベトナム、台湾、香港、マレーシア、インドネシア、そして中国だ。これらの国々はすべて西側による抑圧に大きく苦しまされてきた。フィリピンや韓国や日本には、いまでも米軍基地が置かれていて、その結果これら3国は米国の事実上の属国扱いだ。しかしこれら3国の圧倒的多数の人々は、そのような状況に怒りを表明しており、その証拠として反帝国主義運動デモが数え切れないほど起こっているのだが、少数派である各国政府の支配層によりこれらのデモはすべて無視されている。「銃を手にした白人たちが善良な意思の告白とともに現れたとき、アジアの苦難が始まる」。これがアジアの歴史だ。

 このような状況が今日まで400年以上も続けられている。西側の言い分はアジアでは聞き流されている。それは、これまでアジア諸国と西側の間で交わされてきた約束が反故にされ続けてきたからだ。アジア諸国が分かっていることは、西側はアジア諸国と自分たちと平等に扱う気はないという事実だ。そして今、アジア諸国に見えているのは、西側帝国主義の利益に奉仕するために、再び苦しみを味わされようとしていることだ。

 ここ40年間この地域は、平和で、安定し、繁栄した時代を享受してきた。これは長いアジアの歴史の中でなかったことだ。より正確な言い方をすれば、この地域内には歴史的に見て大きな敵意をもつ国同士が存在する。日韓間や日中間などにおいては、衝突してきた悲劇的な歴史がある。そのような国々の間には愛情は薄く、憎しみの感情のほうが強く残っている。南シナ海に関しては、係争中の領土問題が残されていて、多くの国々が丁々発止の主張のやりとりを続けている。現在の地図上に引かれた海上の国境線について議論が行われており、納得している国はひとつもない。実は、これらの国境線を引いたのは西側であり、第1次世界大戦後のことだった。しかもアジアのどの国もその議論に参加させないまま決めてしまったのだ。その国境線は西側帝国主義諸国の利害をもとに決められたもので、アジア諸国の利害をもとにしたものではなかった。アジア諸国のやり方に従えば、これらの国境問題は外交により解決するものであり、戦争で解決しようとする国などない。すべての国々はその地域での航海の自由を享受しており、西側が主張しているような大問題にはなっていない。

 大統領職に就いてすぐに、トランプは北朝鮮に標的を定めた。北朝鮮は米国にとって何の脅威にもなっていなかったにも関わらず、トランプが長らく放置されてきた問題に手をつけてしまったことで、その地域が大きく不安定化する原因を作ってしまった。想定内のことだったが、韓国は特に警戒させられたが、この平和な国の大多数の国民の常識的な見方は「トランプは口を閉じて、自分の国のことだけ見ておいてくれないか」というものだった。同様に台湾でも、市民の大多数が受け入れているのは、「中国は平和的な再統合を望んでいる。ここ70年以上の中国の動きを見ればわかる」という考え方だ。度重なる挑発にも乗らずに、中国はこの問題には冷静な立場を維持しており、米国の横やりがなければ、そのうち台湾問題は自然と平和裡に解決するだろう。

 日本は長年米国の中国侵略の拠点にされていることをよくは思ってこなかった。確かに日本の人々は中国に対して友好的ではないが、だからといって中国はここ70年間、日本に核爆弾を投下したり、日本を占領したり、日本を下等国扱いしたりすることは全くなかった。日本国民は、憎たらしい米国のためにこれ以上苦しむことは望んでいない。 近年日中両国は、有意義な二国間首脳会議を持ち、米国が吹っかけてくる言説を覆そうとしている。アジア独自のやり方を用いれば、敵対心によりこじれている諸国感の乖離を解決できるだろう。 皆にとって明白なのは、米国が、中国に害を与えるために犠牲を強いる準備をしているということだ。そして米国が犠牲を強いるのは、当地域の全てのいわゆる「友好諸国」であり、その犠牲のもと中国の台頭を阻止しようとしているのだ。

 このアジアの現状と同様の動きが今欧州でも見られている。それがでっち挙げられたウクライナ危機だ。欧州諸国が重々承知しているのは、欧州が平和や安定を享受することが、米国の覇権にとっては脅威になると米国が見ていることだ。ドイツがロシアの天然ガスを本当に必要としているので、ノルド・ストリームに巨額を投資してきたのに、米国はロシアの天然ガスを買わさずに、欧州の人々が凍えているのを見るつもりのようだ。米国がウクライナに対して行っているむき出しの侵略のせいで、ロシアは欧州戦線に引きずり出されようとしている。しかし賢明にもロシアはその挑発には乗っていない。これは台湾を使った挑発に中国が乗らないのと同じことだ。米国にとっての最悪の展開は、欧州がロシアを平和理に国家間の連合の中に組み込んでしまい、双方にとって経済的利益が得られる関係を作ってしまうことだ。 ロシアという巨大な悪党がいなくなれば、NATOの存在意義もなくなり、米軍を引き入れる理由もなくなり、欧州内の全ての米軍基地の撤退を余儀なくされるだろう。ロシアや中国とのどんな戦争も世界にとって想像もできない惨劇をもたらすことになるだろう。そしてハッキリとしているのは、紛争を求めている国など米国以外にはないだろうという事実だ。ドイツやフランスはNATOとは離れた所から、ロシアとの平和を模索しようと努力し続けている。NATO派閥が、米国が欧州に持っている唯一の同盟国であって、この超国家派閥は、どの国民国家の利益の代表者にはなっていない。崩壊しつつある米帝国は息たえだえで、国内においては社会的にも経済的にもボロボロになっている。従って、いかなる戦争も崩壊の目くらましの道具に使うつもりだ。今はっきりとわかるのは、米帝国は世界を戦いの火の中に落とそうとしていることだ。その灰の上でしか世界支配ができなくなっているのだ。

インドで巻き起こる農民の抗議活動「農作物の抜本的改革」案の代償は計り知れないものとなる

<記事原文 寺島先生推薦>Farmers’ Protest in India: Price of Failure Will be Immense. “The Plan to Radically Restructure Agrifood”
コリン・トッドハンター著

グローバル・リサーチ
2021年2月7日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2021年3月5日


 今世界で起こっているのは、ひと握りの巨大企業が、どんな食物を育てるのか、どんな風に育てるのか、どんな農薬を使うのか、誰が売るかを決めてしまっているのが現状だ。この流れの中には、化学物質が添加されている加工度の高い食品も含まれており、その食品が、最終的には業界をほぼ独占している巨大スーパーマーケット・チェーンやファースト・フード店に並べられることになる。これらのスーパーマーケットやファースト・フード店は企業型農業に依存している。

 巨大店舗の棚に並べられている食品の商標は様々あるように見えるが、これらの商標を所有しているのはひと握りの食品会社であり、それに伴い原料の生産は比較的狭い範囲の物に限られている。同時に、選択肢がたくさんあるように見せられていることには、貧しい国々が食品安全保障の犠牲を強いられているから成り立っているのだ。これらの貧しい国々は、農業の生産構造を作り替え、農作物を輸出するために、以下の組織に特別待遇を図るように強いられているのだ。つまり、世界銀行や、IMF(国際通貨基金)や、WTO(世界貿易機関)や、世界規模で展開しているアグリビジネス(農業関連産業)への優遇である。

 メキシコでは、超国家規模の食料販売業者や加工業者が、食料の流通網を押さえ込み、各地域で流通していた食品を追いやり、安価な加工食品を流通させることになっている。そして政府もその動きを直接支援している。自由貿易・投資協定の締結が、この流れに決定的な役割を果たし、さらに、市民の健康が壊滅的な打撃を受けることにもつながった。

  メキシコ合衆国保健省は,2012年に食の安全と栄養に関する報告を出している。それによると、1988年から2012年の間に、20歳から49歳までの女性で太りすぎである人の割合が25%から35%に上昇し、同年代で肥満状態にある女性の割合は、9%から37%に上昇したとのことだ。5歳から11歳までのメキシコの子どもの約29%は太りすぎであり、11歳から19歳までの青年層では35%にのぼることがわかった。いっぽう、学童の10人に1人が貧血の症状を示していた。

 国連の「食への権利」で以前、特別報告者をつとめていたオリビエ・デ・シュッターは、以下のように結論づけている。すなわち、「通商政策によって、長期間、棚で保存できる加工食品や精製食品への依存が顕著になり、フルーツや野菜などの新鮮で腐りやすい食べ物の消費は避けられるようになる」と。さらにシュッターはこう付け加えている。「メキシコで起こっている太りすぎや肥満は避けることができたかも知れない」と。

 NPO法人「グレイン」の2015年の報告によると、北米自由貿易協定(NAFTA)によって、食品加工業への直接投資が行われるようになり、メキシコ国内に世界規模で展開するアグリビジネスやメキシコ国内に全国規模で展開する食品会社を出現させただけではなく、メキシコの小売業界の構造を変えてしまったと言う。(具体的には、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの展開によってである)。

 NAFTAは、外国企業が企業の49%以上の株式を所有することを禁じる法律を撤廃させた。さらには、国内企業の生産割り当て最低ラインを確保する法律を禁じ、外国の投資家が初期投資で利益や運用益を得る権利を拡大した。1999年の時点で、米国企業はメキシコの食料加工業に53億ドルを投資していた。これは12年間で25倍伸びた計算になる。

 米国の食品会社は、メキシコでティエンダ(街角にある店)と呼ばれる零細商店の食品流通網を手中におさめ始めた。このため、栄養価に乏しい食品の普及がすすんだ。それはこれらの企業が、そのような食品の小さな町や共同体に住む貧困層の人たちへの販売を促進したからだ。2012年の時点で、これらの企業による販売網は、ティエンダを押しのけ、メキシコの食品のおもな販売元となった。

 メキシコでは、食の主権が失われたことで、メキシコの人々の健康状態は壊滅的に悪化し、多くの小規模農家たちが生活手段を失ってしまった。それを後押ししているのが、米国からの余剰商品の流入だ。(これらの余剰商品は、米国政府からの補助金によって実際の生産コストよりも安く生産されている)。

 NAFTは、メキシコの何百万人もの農家や、酪農家や、零細小売業で働く人たちを破産に追い込んでいる。そのため、何百万人もが移住労働者として流出した。

インドにとっての警告

 インドの農民たちは、メキシコで起こったことを警告とすべきだろう。インドの農民たちは、新しい3つの農業法案に対する抗議活動を続けている。その法案とは以下の3点を実現させようというものだ。
①契約農業という形態で、農作物を完全に企業の傘下におくこと。
②政府による農民たちへの支援体制を大幅に削減すること。
③輸入食品への依存(後に米国との貿易協定により強化されることになる)を高め、大規模な(オンラインによる)販売を強化すること。

 インドの地方市場や零細小売業者の行く末を知りたいのであれば、米国財務大臣のスティーブン・ムニューシンの2019年の発言を聞けば十分だろう。スティーブンによれば、アマゾン社が、「米国内の小売業を破壊してしまった」とのことだ。

 そしてインドの農家たちの行く末を知りたいのであれば、1990年代の状況を思い出せば十分だろう。当時、IMFや世界銀行は、1200億ドルの融資を行う見返りに、インド政府に農業に対する何億ドルもの支援金をやめるよう助言していたのだ。

 インドは、政府所有の種子供給システムを解体し、補助金を減らし、農業協同組合を停止させ、外貨獲得のための輸出用商品作物の栽培には報奨金を出すよう助言を受けた。その対策の一部には、土地に関する法律の改定も含まれており、それによって農地が売られ、企業用農業用地にまとめられることが可能になった。

 この計画は外国企業が農業分野を取り込むためのものであり、先述した政策にもとづいて、効果的に独立農民たちを弱体化させ、追い出すことになった。

 今日までこの潮流は、ゆっくりと進行してきた。しかし、最近の法改正は、何千万人もの農民たちに致命傷を負わせることになる可能性がある。これこそが、アマゾン社や、ウォルマート社や、フェイスブック社や、カーギル社や、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド社や、ルイス・ドレフュス社や、バンジ社など世界規模で展開している農業技術・種子・農業化学関連企業がずっと欲してきたものを与えることになるのだ。またこの法改正により、インド最大の資産家であるムケッシュ・アンバニや、インド6番目の資産家であるゴータム・アダニに対して、小売業・アグリビジネス・物流における利益を提供することにもなるのだ。

 現在進行中の抗議活動中ずっと、農家たちは催涙ガスを発射され、中傷され、打ちのめされている。ジャーナリストのサツヤ・サガは、こう書いている。「政府の助言者たちが恐れているのは、自分たちが抗議活動を起こしている農民たちに強く対応することができていないように見えてしまうことだ。そうなれば、外国の農作物の投資者からよく思われず、その投資者から農業分野へ大金が流れ込むことが止まってしまう。その大金は経済全体にも使われるからだ」と。

 そのお金は本当に「大金」なのだ。フェイスブック社は昨年、ムケッシュ・アンバニ 所有のジオ・プラットフォームズ社(電子商取引会社)に550億ドルを投資している。グーグル社も、45億ドルを投資している。現時点で、アマゾン社とインドのフリップカート社(ウォルマート社がその81%の株式を所有している)の二社で、あわせてインドの電子商取引誌上の60%以上を支配している。これらの国際的な投資家たちは、現在の農業法改正が廃案になれば、大きな損失を被るだろう。インド政府も同じだ。

 インドが新自由主義経済に門戸を開いた1990年代から、インドはますます外国資本の流入への依存体制が強まっている。政策は、外国からの投資を引きつけ、保持し、「市場の信頼」を維持できるかどうかで決定されてきた。つまり、国際資本の要求を引き受けることによって、政策が決定されてきたということだ。このようにして、「外国からの直接投資」が、モディ政権の究極の目標となっているのだ。

 だからこそインド政府が、抗議活動を行っている農民たちに「強く」出ているように見せかける必要があるのは当然のことなのだ。というのも、国際市場で食品を買うために、外国からの資金を引きつけ、外貨準備金を保持することがいまだかつてなく必要とされているからだ。そのような状況は、インド政府が、農作物の価格を安定させるための緩衝在庫制度をやめ、食に関する政策の責任を私企業に任せるようになってしまうと起こってしまうことなのだ。

 インド国内における農作物を抜本的に改革しようという計画は、農業分野を「近代化する」という偽りの名目で世間に流布されている。そして、この計画を実行するのは、自称「資産創出家」である、ザッカーバーグや、ベゾスや、アンバニだ。確かに彼らは富を作り出した経験は豊富だ。でも、それは自分の資産のためだ。

 任意団体であるオックスファムの最近の記事「不平等なウイルス」によると、ムケッシュ・アンバニは、2020年3月から10月までの間に資産を倍増させた、とのことだ。インドでのコロナウイルス関連のロックダウン措置により、億万長者たちは資産を約35%増やしたのに、2020年4月だけで、1時間ごとに17万人が職を失ったのだ。

 さらにオックスファムの報告によると、ロックダウン措置に先立つ2017年に生み出された富の73%が、1%の富裕層に分配された、とのことだ。いっぽう人口の半数を占める、6億7千万人の極貧層は、たった1%しか富を増やしていない、とのことだ。

 さらに、インドの億万長者たちの資産は、ここ10年でほぼ10倍になっており、彼らの総資産額は2018年から2019年の会計年度のインドの総予算よりも高額だ。

 これらの「資産創出家」たちが、誰のための資産を生み出そうとしているかは明らかだ。「ピープルズ・レビュー」というサイトで、タンモイ・イブラヒムはインドの億万長者富裕層に関する記事を書いている。その記事で、イブラヒムは、アンバニとアダニの2人に深く焦点を当てている。インドにおける縁故資本主義の概略を述べることで、その記事が明らかにしたのは、モディ政権の「資産創出家」たちが完全な自由裁量を与えられ、国庫金や、国民や、環境を略奪することができているいっぽう、本当に富を創出する人々(それはとりわけ農民たちだ)が、生きるための闘いを強いられている、という現状である。

 現在の闘争を政府対農民という構図で見るべきではない。メキシコで起こったことと同じことがインドで起こるとしたら、その影響は農民だけではなく国中で見られるようになる。具体的には人々の健康状態は悪化し、生計手段は失われることになるのだ。

 よく見てほしいのは、インドにおける肥満率がここ20年で3倍になっている事実や、インドが急速に糖尿病大国や心疾患大国となっている事実である。国内家庭健康調査(NFHS-4)によると、2005年から2015年の間に、肥満の人の数は2倍になっており、5歳から9歳までの子ども世代でさえ5人に1人が発育不良状態にあることがわかった。

 しかしこんな状況は、これから先、降りかかる被害の一部に過ぎないだろう。そして、その被害は、農業分野を大金持ちたちに手渡してしまうことから起こるのだ。つまり、億万長者の資本家であるムケッシュ・アンバニゴータム・アダニや(彼らは外国資本に従属し、自国民から搾取して富を得ようという売国奴だ)、ジェフ・ベゾス(世界一裕福な人物)や、マーク・ザッカーバーグ(世界第4位の資産家)や、カーギル一族 (所有資産は14億ドル)や、ウォルマート一族(米国一裕福な一族)に売り渡すのである。

 これらの人々が、インドの農作物分野の富を吸い取ろうとしているのだ。いっぽうで何百万人もいる零細農家たちや、家族経営の小売業者たちの生活はずたずたにされ、さらにはインドの人々の健康状態も冒されているのだ。

 

 

フィリピンが米国との軍事同盟を辞めると、ドミノ効果を引き起こすかもしれないし、きっとワシントンの反中国音頭は、台無しになる



<記事原文 寺島先生推薦>Philippines quitting military alliance with US may cause domino effect & is sure to spoil Washington’s anti-China drumbeat

RT Op-ed 2020年2月17日 
202002282057174dd.jpg

Finian Cunningham
is an award-winning journalist. For over 25 years, he worked as a sub-editor and writer for The Mirror, Irish Times, Irish Independent and Britain's Independent, among others.

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ 2020年2月28日>
20200228205907f64.jpeg

フィリピンが米国との軍事パートナーシップを破棄しようとしたタイミングは、米国をかなり狼狽させるものだった。同盟国に、中国に対抗する結集を呼びかけようとしていた時だったので。

東南アジアの一国(フィリピン)は、米国による軍事的「保護」を必要とせず、米国の仲介なしに、中国や近隣諸国と正常な関係を構築できると確信しているようだ。
米国の保護下にある、日本や韓国を含む他のアジア諸国が、フィリピンと同じ結論を下す可能性があり、そのため、「ドミノ効果」が、現状を変えることが起こるかもしれない。

米国防総省のマーク・エスパー長官は、週末にミュンヘン安全保障会議で、世界は、中国を安全保障上の脅威として「見つめ直す」必要があると語った。 しかし、それはフィリピンが中国を見る見方とは異なる。

毎年恒例のミュンヘン会議の数日前、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、1998年に結んだ訪問米軍地位協定(VFA)を終了することを発表した。 正式に協定を終了するには6か月かかる。 この動きは、ドゥテルテが、2016年の大統領選以来進めてきた「中国への接近」のひとつの動きだ。



Also On RT.COM‘It’s about time we rely on ourselves’: Philippines tears up key military treaty with US


この動きは、米国を驚かせたようだ。 しかし、それはドゥテルテが以前行った約束、すなわち、米国と「グッバイ」し、中国とより緊密な経済的および政治的関係を結ぼうという約束を果たしたまでだ。

フィリピンの動きと、ミュンヘンでの反中国の「お経」が、どれだけ食い違っているかを念頭に置き、エスパーは、フィリピンが軍事パートナーシップを廃棄するという決定に不快感を表明した。

「これは、間違った方向だと思います 。今、私たちはフィリピンと二国間で、また、この地域の他の多くの友好国や同盟国とともに、中国にこう伝えようとしています。「国際的なルールに従わなければなりません。 国際規範を遵守しなければなりません 」と」。エスパーは、ヨーロッパに向かう途中、記者団にこう語った。


対照的に、ドナルド・トランプ大統領はフィリピンの動きについてより楽観的な見方を示した。 彼は、フィリピンで毎年行われている多くの合同軍事演習をキャンセルすることで 「 米国は、多くのお金を節約できる」ので気にしないと言った。
トランプの強気な反応は、彼が、外交でいつも見せる、表面上の取引のような態度であることは疑いがない。しかし、国防総省の政策立案者たちが気づいていることだが、より戦略的に深く見ると、フィリピンの基地を失うことは、中国を抑制することを目的とした南シナ海でのパワーバランスにおいて、大きな打撃になる。

「仮想敵国を作る」という考え方は、近年、ペンタゴンの指針として再登場してきた。 いくつかの戦略計画文書は、中国とロシアを明白に地政学的な敵国とみなし、標的にし、これらテロやならず者国家からの脅迫に屈しないよう、説いている。これは、かつての冷戦時代のやり方と同じだ。

危機の原因は、経済的および軍事的に世界支配の野望を維持しようとする米国にある。 米国の一国集中的世界観は、中国とロシアが、米国、欧州、南北アメリカ、アジア、アフリカとのパートナーとして参加する多極的な国際協定とは相容れない。 そのため、両国より優位に立つために、米国は「我々」と「やつら 」を区別する敵対的条件を作り出さざるをえない。「親中」「親露」などとタグ付けをすることで。

  Also On RT.COM Chinese FM after Pompeo & Esper speeches: Replace ‘China’ with ‘US’, and maybe lies become facts?。

この米国の動きは、ロシアが、ヨーロッパ向けに進めている、ノードストリーム2というガスパイプラインのプロジェクトに対抗した動きであるといえる。 米国は、絶えず、ヨーロッパ諸国に、そのプロジェクトをやめるよう、脅している。国家安全保障を盾にしてだ。これは、中国のファーウェイ社に対してやったのと同じ手口だ。
南シナ海では、ワシントンはしばしば、分断させるというやり方で、中国と他の国々との間の領土紛争に介入してきた。 米国のねらいは、中国をその地域における有害な脅威のように見せ、米国が、友好国を「守る」という名目で、軍事力を配置することだ。 しかし、米国が実施するこれらの「航海の自由 」演習の真の目的は、軍事力で中国を包囲することだ。
中国の経済は、年間5兆ドルの商品が出荷される海上貿易ルートである南シナ海に依存している。 東南アジアにおけるアメリカの軍艦と基地は、中国に暗黙の脅威を与え、経済的封鎖を起こすこともできる。米国は、この条件を使い、貿易交渉や政治交渉を優位に進めることができる。

米国の中国を敵視する世界観からすれば、フィリピンが米国との軍事同盟に参加したくないと発表したことは、鼻でわらうような話だ。その同盟は、約70年前、太平洋戦争が終わった1945年にまでさかのぼるのだから。
ドゥテルテ大統領は、長い間、中国を経済的パートナーとして受け入れたいという願望を表明してきた。 彼は、南シナ海をめぐる両国間の領土紛争は交渉を通じて解決できると言っている。

中国は、ドゥテルテの方向転換を歓迎している。 中国はすでに、一連の主要なインフラ整備プロジェクトへの投資で数十億ドルを提供している。 ドゥテルテを批判する人達は、約束された投資が遅れていることを指摘し、ドゥテルテが領土の主張に関して中国にあまりにも多くの譲歩を与えていると警告した。
米国の戦略立案者をさらに悩ませるのは、軍事力を見せつける基地としてフィリピンを失うという兵站面での後退に加えて、「ドミノ効果」 によって、現状に大きなうねりをおこすかもしれないことだ。

Also On RT.COM ‘End that son of a b*tch’: Duterte confirms US-Philippines military collaboration agreement is toast

冷戦時代、ワシントンはドミノ効果による共産主義の広がりを恐れていた。共産主義が広がって、ソ連や中国に触発され、アメリカへの忠誠を捨てることになることを恐れていた。 10年に及ぶベトナム戦争は、米国のそんな不安が引き起こしたのだ。アメリカの影響力が低下するという不安だ。

フィリピンが米国の軍事パートナーシップを拒否することは、アメリカの世界的地位に深刻な打撃を与える。 それは、「我々は保護者である」という米国の自負を大きく損なうものだ。
ドゥテルテ大統領は、国家が真の友好国との対話を通じて協力することが唯一の実行可能な方法であることを正しく理解している。 分断や敵対心を使ったアメリカのやり方には、先がない。

アジア太平洋地域の他のいくつかの国々が、フィリピンが示した新しい方向に注目していることは間違いない。フィリピンの動きが、米国がいう「 間違った方向 」であるわけがない。各国は、フィリピンと同じ道をたどるべきだという答えを出すかもしれない。

スペイン・カタロニア州の「分離主義者」は非難されるべきだが、
香港の「民主化運動家」は称賛されるべきだ!?
---- オーウェルの小説『1984年』はついに
    自由メディアの指南書になってしまった

<記事原文>Catalonia ‘separatists’ bad, HK ‘pro-democracy protesters’ good: Orwell’s 1984 becomes user’s manual for Western ‘free media’

ジョージ・ギャラウェイ

George Galloway
was a member of the British Parliament for nearly 30 years. He presents TV and radio shows (including on RT). He is a film-maker, writer and a renowned orator.


RT  Home/Op-ed/ 2019年10月15日

(翻訳:寺島メソッド翻訳グループ:寺島美紀子 2020年1月31日)


(写真左)2019年10月14日、カタロニア州都バルセロナのエル・プラット空港に通じる高速道路で、抗議運動参加者たちがスペイン警察と衝突©AFP/PAU BARRENA
(写真右)2019年10月6日、香港シャムスイホ(深水土歩)の反政府抗議運動参加者©REUTERS/Tyrone Siu

スペインからの独立をめざすカタロニア州の民主的な州民投票を組織したとして投獄された指導者たちに支持を表明する人たちが、2019年10月14日にバルセロナのエル・プラット空港に続くハイウェイに進撃した。すると、メディアは「分離主義者」が混乱を引き起こしていると大騒ぎをした。ところが、香港で同じ戦術が使われると、それは「民主化運動」となる。

ジョージ・オーウェルの小説『1984年』では、戦争省は平和省と改名された。戦争は平和であり、真実は嘘であり、憎悪が愛なのだ。しかし、ルイス・キャロルのほうが先に同じことを述べていた。

1871年に出版されたルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』では、卵男のハンプティ・ダンプティがアリスに、ちょっと軽蔑するようにこう言った。「おれが言葉を使うとき、それが何を意味するのかは、おれが意図したことだけだ――それ以上でも以下でもない」

アリスは言った。「問題は、言葉にいろんな意味を持たせることができるかどうかだわ」

ハンプティ・ダンプティは言った。「問題は、どちらが言葉のご主人様か。それだけさ」

                     
イギリスの伝承童話『マザーグース』に登場するハンプティ・ダンプティ

ハンプティ・ダンプティが、西側のニュース編集室や、西側の政治家の発言のなかに再びよみがえってきた。いつものごとくだが、それが今シリアで頂点に達しているのだ。

ある人にとっては「テロリスト」でも、別の人にとってはもちろん「自由の戦士」なのだ。今ではそれはもうバカげたことになりつつある。なぜなら、いわゆる括弧つきの「自由」「シリア」「軍」(自由シリア軍FSA=Fighting Syrian Army)は、いまではシリア北東部のトルコ人(トルコ国境沿いのクルド人)襲撃の際におこなった虐殺行為のせいで世界中で非難されているからだ。


Also on rt.com Westerners who propped up Islamist ‘moderate rebels’ suddenly realize they're terrorists as they launch ‘genocide’ of Kurds 西側の人々はイスラム「穏健派反乱軍」を支援してきたのだが、彼らイスラム穏健派反乱軍がクルド人「虐殺」を開始したことで、彼らこそテロリストであると突然に認識するに至った。


現代のハンプティ・ダンプティたちは、今になって自由シリア軍FSAの虐殺行為をペンで猛烈に非難している。問題は、その同じハンプティ・ダンプティたちが、FSAこそシリアの「独裁政権」に対抗して「民主主義」のために戦っている「穏健な反乱軍」「世俗的な兵士たち」だと、これまで強弁してきたことだ。そう強弁しつつ、彼らは銃をテロリストたちに渡してきた。その銃を使って彼らは現在クルドの民間人を射殺しているし、そのことで私たちはいま肝を潰しているのだ。

ユーチューブ上では、自由シリア軍FSA司令官の一人が囚人の心臓をえぐり出して食べていた。そのことを私たちが指摘すると、逆に非難され、ソーシャルメディアから排除されたり、「アサド擁護者」だとか「プーチン擁護者」だとかとの烙印を押されたのだ。私個人は、その両方のレッテルを貼られた。シリアのいわゆる「民主的」反対派とは、オバマ大統領の国務長官ヒラリー・クリントンから褒めそやされた白ヘル集団、すなわちイスラム原理主義狂信勢力の略語にすぎなかった。ところが当時、これは口にすることすら禁じられたのだ。

この悲劇的な茶番劇は、始まると同時に終わりを迎えつつある。ヒラリー・ハンプティ・ダンプティ・クリントンの肝いりでスタートした「民主的シリア連合CDS」が今や「民主的」という言葉を口に出せなくなったからであり、その「連合」を構成する国の多くが世界で最も非自由で最も非民主的なイスラム原理主義の国々だと分かったからだ。

ISIS、ISIL、IELTSなどからIS(イスラム国)へと次々と名前を変えたが、銃やお金や政治やプロパガンダ支援の流れは何も変わらなかった。

<
Also on rt.com Protesters shut down key Catalonian transport routes after night of violence (PHOTOS, VIDEOS) 


大手メディアの垂れ流すシリアの嘘物語を概略だけでも示そうとしたが、書くスペースも限られているし、それを思うとイライラしてくる。だから、次にカタロニア万歳、カタロニア讃歌に話を移したい。[註:ジョージ・オーウェルのスペイン人民戦争・カタロニア従軍記『カタロニア讃歌 Homage to Catalonia』を想起せよ]

「民主的」EUにおけるスペインの「民主的」政府は、カタロニアで民主的な州民投票を組織した民主的カタロニア人政治家たちに100年の禁固刑を言い渡した。さらに悪いことに、その政治家たちを支持する、いわゆる「暴徒たち」がバルセロナの空港に押し寄せた! そして商業や休日や貿易が「台無しにされた」。それらは確かに、この「暴徒たち」がおこなった非民主的形式の抗議によって、台無しにされた。

しかし、香港で全く同じ戦術が使われたばあい、デモ参加者は「暴徒」ではなく、破壊者でもなく、 「民主的抗議運動の参加者」なのだ。

香港のデモ隊が、火炎瓶やナイフや銃さえも使って中国の警察と対峙すると、首にナイフが突き刺された警官が悪者となるのだ。フランス警察が文字通りイエローベストの抗議運動参加者たちから武器を取り上げるため、銃で彼らの手を吹き飛ばした。これについては現代のハンプティ・ダンプティでさえも言葉を失ってしまう。だからこそ憲兵によって眼球や手や命でさえもが奪われていることに対しては、メディアに完全な秘密のベールがかけられるというわけだ。


Also on rt.com Hong Kong phooey! Would you like any hypocrisy with that?
  

ジョージ・オーウェルの『1984年』は、ディスト暗黒ピア郷(←→ユートピア理想郷)の世界を描いた小説だ。もし私たちが注意を怠れば、全体主義を維持するために真実の歪曲が要求されることになる、という警告なのだ。

2019年に小説『1984年』は、全体主義を維持する「指南書」となり「台本」となった。世界最悪の偽善者たち――すなわち「自由」主義国の「自由」メディア――は、自分たちが仕える政治的階級から賛同をいただくために、この「指南書」を使った。

ハンプティ・ダンプティが言うように、「問題は、どちらがご主人様か。それだけなのだ」

香港問題とアメリカの大胆さ:
   それは中国への「不安定化工作」の一部だ

Hong Kong and the Audacity of the U.S. Part of a “Destabilization War” with China

ピーター・ケーニッヒ

グローバル・リサーチ 2019年8月26日

(翻訳:新見明 2019年9月8日)

<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/hong-kong-and-the-audacity-of-the-u-s-part-of-a-destabilization-war-with-china/5687191

人々はよく、香港抗議運動とフランスのイェロー・ベストには類似性があるのではと言う。香港は3月31日に始まり、19週になろうとしている。イェロー・ベスト(YV)は先週末の抗議行動で40週目を祝ったところだ。最近、マクロン派が浸透したイェロー・ベスト運動、もしくは第5列*1は、イェロー・ベストが自由を求める香港抗議運動を支持していることをほのめかした・・・。
  
 [訳注]*1 第5列: 本来、味方であるはずの集団の中で敵方に味方する人々、つまり「スパイ」などの存在を
             指す。


ところが、それはよく教育され、よく訓練されたイェロー・ベストには当てはまらない。実際、彼らの多くはマクロンに侮辱されたと感じた。誰のために、こいつ[マクロン]は我々から奪うのだ。そして、まさにそうなのだ。二つの運動に、それらが抗議運動である点を除けば、一片の類似点もない。二つの抗議行動は、大きく違った動機をもち、そして全く違った行動目標であるからだ。イェロー・ベストは全く香港とは関係がない。香港はアメリカに資金援助されたカラー革命と同じなのだ。

イェロー・ベストの指導者は言った。我々はますます全体主義的になるフランス政府に反対して闘っているのだ。フランス政府は、いろいろな種類の税金で、我々の正当な収入をどんどん盗み、フランスの家族に、もうこれ以上生きられないというレベルの最低賃金を押しつけているのだ。労働者の定期的な年金では暮らしていけないのだ。マクロン政権は財源を移転することによって、貧困を生み出している。底辺から上層に吸い上げられ、ほとんど残っていない。だから我々は闘い、抗議をしているのだ。我々はフランスの経済構造とフランスの指導層の根本的変化を求めているのだ。これら全ては、ワシントンに資金援助された香港の抗議行動とは何の関係もない。香港は、ワシントンのために香港人が、中国本土政府に対して抗議しているのだ。

明かではないか。フランスのイェロー・ベストは、彼らが何のために闘っているか知っている。香港の抗議運動は、彼らのほとんどが偽の仮面を付けて、彼らの国、北京に対して少数の指導者に従って闘っているのだ。明らかに抗議行動の多くの者が、親欧米であり、彼らはアメリカ国歌を歌い、イギリス国旗を振っている。それは、彼らの元植民地主義者たちの旗であるのに。

実際、香港を将来にわたって不安定化する資金投入は、イギリスから中国への香港公式返還の少なくとも3年前、1994年に早くも始まっていた。アメリカが香港に第5列のネットワークをつくったのは、1997年の香港の中華人民共和国(PRC)への公式返還よりずっと前のことだ。

ワシントンは、ウクライナのように香港を不安定化するために、多額の資金を注ぎ込んだ。その時、アメリカ国務省は、2014年のクーデターの準備に少なくとも5年前から約50億ドルの資金援助をした。国務次官ビクトリア・ヌーランドが自ら認めるところでは、直接、又はNED(全米民主主義基金)を通して行われたが、それらは、「NGO」ではあり得ない。その資金援助はむしろ、CIAの長期にわたるソフトな武器であり、アメリカ国務省は世界中の「体制転覆」活動に数億ドルを出したのだ。

1991年、ワシントン・ポストは、NEDの創設者アレン・クインシュタインを引用して書いている。

   「今日、我々がしている多くのことは、CIAにより25年前に秘密裏
     に行われた。」

言わずもがな、我々は世界中でその結果を見ている。

まさしくこれが香港で起こったことで、今日まで続き、恐らくこれからも続くだろう。アメリカは手放さないだろう。特に、ほとんどの人が,これら欧米の策謀がどのように行われているか、少なくとも限られた理解しかもたないので、誰が不安定化の種をまいているのか、自分で見て理解しなければならない。22歳の学生、2014年雨傘革命の欧米ヒーロー、ジョシュア・ウォン(黄之鋒)*2は、アメリカ国務省、NED、CIAによって訓練され、資金援助されていた。彼は再び現在の抗議行動の立役者であるが、ジョシュア・ウォン(黄之鋒)は現場の少年であるが、地域のメディア王ジミー・ライ(黎智英)*3は、2014年に「オキュパイ・セントラル」抗議行動(雨傘革命)に自分のお金を数百万ドル使ったのだ。
  
  [訳注]*2 ジョシュア・ウォン(黄 之鋒 こう しほう)(1996年10月13日 - )
        は香港の民主化団体「学民思潮」の元リーダー、香港衆志
         事務局長、香港公開大学社会科学の学生。(ウィキペデア)

  [訳注]*3 ジミー・ライ(黎智英)
        中国を批判する香港メディア「アップル・デイリー」創業者
         1948年、中国広東省広州市生まれ。60年、12歳で香港へ密航し80年に
         アパレル小売りチェーン、ジョルダーノを創業。90年に創刊した雑誌
         「壹週刊」とその母体Next Media(現在はNext Digitalと改称)の経営
         に専念。94年にはアップル・デイリーを創刊。反中国政府、
         民主化支持の姿勢を貫く。(FACTA onlineより)

                  

オリガルヒ(寡頭政治家)は、抗議運動指導者や抗議運動グループに援助するため自分の資金を広範に使っている。ライ(黎)氏はまた、自分の国民党を創設した。それは、曰くありげな外国人嫌いの政党である。しかしライ(黎)氏はトランプ政権ときわめて密接な関係を持っており、多くの抗議運動指導者と共に、香港のアメリカ公使や、ジョン・ボルトン国家安全保障アドバイザーや、他のアメリカ高官とも会った。7月8日、ジミー・ライ(黎智英)氏は、アメリカ副大統領マイク・ペンスとホワイトハウスで会ったのだ。

READ MORE:What Is Happening in Hong Kong?

ライ(黎)は、これら抗議運動グループに火を付け、活性化するためにアメリカ政府の全面的な支援を受けている。しかしどちらというと、抗議行動派には,彼らが望むことの正確な計画や戦略がない。香港島は大きく分断されている。今のところ全ての抗議行動派が本土から分断することを望んでいるわけではない。彼らは中国人であり、ジミー・ライ(黎智英)の急進的な反北京宣伝に嫌悪の情を表している。彼らは彼を裏切り者と呼んでいる。

ライ(黎)氏は1948年中国本土で生まれ、広東の貧しい家庭で育った。彼は小学5年レベルの教育を受け、13歳の時小さな船で香港に密入国した。香港で彼は、織物工場で児童労働者として、1ヶ月約8ドルで働いた。1975年彼は破産した織物工場をわずかなお金で買い取り、ジオダーノを作った。J.C.ペニーやモントゴメリー・ウォード等のように、ほとんどアメリカの顧客としてセーターや他の服を作った。ライ(黎)氏は今日、香港暴動とか抗議行動(彼はそう呼ぶのを好むが)の暴力の背後の陰謀者として彼自身の仲間からでさえ広く批判されている。

抗議行動は「論争になっている」引き渡し条例から始まった。ところがそれは、アメリカのほとんどの州の間で存在している。ヨーロッパ諸国間でも、広く国際的にも存在している。だからこれは異例でも何でもないのだ。しかしその重要性が、欧米メディアやライ(黎)氏自身の地方紙でも構図をゆがめて大きく報道された。もちろん少数派は中国からの完全独立を望んでいる。それは、1997年の返還時にイギリス・北京間で署名された合意に全く反するものである。

2・3日前、アメリカは香港の中国水域に数隻の戦艦を派遣した。それらは大胆にも北京に対して香港港でドックに入れる権利を求めたのである。北京はもちろん拒否し、ワシントンに警告した。我々の国内問題に介入するな、と。もちろんワシントンは中国の忠告に従う意思はなく、一度も従ったことがない。彼らは、例外的な国が命令するのだという観念が植え付けられている。いつもだ。他の誰も敢えて彼らに反対しようとしない。以上。

7月3日、チャイナ・デイリーの報道は鋭い。

    「欧米政府のイデオローグは、彼らが好まない政府に対する
    不安定化工作を決して止めようとしない。たとえ彼らの行動が、
    ラテンアメリカ、アフリカ、中近東、アジアの国々で、貧困や混
    乱を引き起こそうとも。今、彼らは中国で同じ策謀を試みてい
    るのだ。」

アメリカの香港での戦術が、トランプの貿易戦争と結びついているのかもしれない。ペンタゴンがますます大きな存在感を示し、主にインド・太平洋地域で新たな軍事基地建設や海軍を派遣している。オバマの悪名高いアジア基軸政策は、南シナ海へアメリカ艦船の60%を派遣した。

これら全ては中国不安定化工作の一部である。ワシントンは、世界で勃興する中国の経済力を恐れている。特に中国の貨幣制度を。それは経済力や金に基づいていて、欧米のターボ資本主義制度に従ったUSドルやユーロや他の通貨のような名目紙幣ではない。そしてワシントンはドルが覇権を失うことを恐れている。世界準備通貨として、中国の元がドルの役割を徐々に取って代わりつつあるからだ。

香港は基本的に、1842年アヘン戦争の高まりでイギリスによって奪われた。1842年8月29日、イギリス軍事力の圧力下で署名された南京条約で、中国は香港を割譲した。それ故、香港はイギリス帝国直轄植民地となった。1898年、香港総監クリス・パッテンとチャールズ王子は99年間の借地契約に合意し、1997年香港を中国に返すことを誓約した。

香港の人々は、イギリスによって155年も植民地的抑圧を受けたのだから、もう香港の地位を正常化する時だった。絶えずそうあるべきものに、つまり中国の欠くべからざる領土という地位に正常化すべき時だった。1997年の「一国家二制度」合意は、香港を中華人民共和国に返したが、当事者たちは50年間資本主義制度を残すことに合意した。合意はまた、香港への介入や植民地的権利を終えることが規定されていた。いま何が起こっているのか。アメリカとイギリスは島の独立を求めて暴動を策動している。それは1997年割譲条約を全く無視している。

アメリカに鼓舞され、資金援助された抗議行動は、香港・中国の主権条項に異議を唱えるように仕向けられている。完全な「自由」を求める世論を動員することによって、中国からの独立を求めているのだ。

絶えず腐敗した資本主義が50年続いたので、アメリカ・イギリスの帝国主義者が、香港を経済的に支配し続け、それによって中華人民共和国に経済的影響を及ぼすだろう。なんとおかしなことをするのだろう。1997年香港のGDPは中華人民共和国のGDPの27%であったが、今その比率は3%にまで縮小した。中国の急速な発展は、とりわけ一帯一路(BRI)政策で、欧米は1年前頃まで全く無視してきたが、今やアメリカ企業世界にとって重大な脅威となったのだ。

アメリカとイギリス、そして他の西欧諸国が特に関心を示すものは、世界における香港の特別な銀行の立ち位置である。シンガポールや香港を通して、ウォール・ストリートやヨーロッパの主要銀行は、彼らの「倫理的に」汚れた、しばしば詐欺的なHSBC*4と結託して、アジア経済を支配し、影響を及ぼそうとしている。そして特にアジア金融市場を引き継ごうとする中国を阻止しようと試みているのだ。香港は、恐らく世界で最も自由な銀行法があり、そこでは違法な金融取引、マネー・ローンダリング、億万長者への影の投資が行われ、誰も監視していないのだ。香港をできるだけこの特別な国家の地位にとどめ、中国金融市場に影響を与え、支配することは、欧米の目標の一つなのだ。

  [訳注]*4 HSBCホールディングス
   イギリス最大規模の金融機関で、イギリス、アジアなどを基盤にする世界有数の
    銀行持株会社。世界87か国に約7500のオフィスをもつ(2011)。イギリスによる
    東アジア植民地経営の発展とともに成長した銀行であり、香港ドルの発券銀行
    の一つでもある。本社所在地はロ ンドン。

  
しかし欧米がほとんどわかっていないことは、中国や他の東洋の国々(ロシアやインド、パキスタンを含む)が、既に大きく離脱したこと、またはドル経済から離脱する過程にあることだ。そして彼らは上海協力機構(SCO)のメンバーであることだ。それに直視しよう。SCOは世界人口の約半分になり、世界経済生産の約3分の1を占めているのだ。

だからSCOメンバーは、もはや欧米金融市場や金融操作に頼っていない。実際、上海は、この10年で中国の金融ハブになるまでに成長し、中国にとって香港より重要性を増した。介入によって余りに多くの政治資金が失われた。欧米と香港抗議行動派は自分自身を暴動によって腐らせるかもしれない。

しかし、もし中国がこれらのたゆまない欧米の挑発にうんざりして、それらを終わらせたいのなら、中華人民共和国は48時間以内に香港を乗っ取ることができる。そして欧米資本主義の50年を短縮し、香港を中国の全面的な州にすることができる。特権もなく、特別な地位もなく、単なる主権国家中国の一部となる。話はこれで終わりだ。

*

ピーター・ケーニッヒはエコノミストで地政学アナリストである。彼は水資源や環境問題の専門家でもある。彼は、環境・水問題で、世界銀行やWHO(世界保健機構)で30年以上世界各地で働いた。彼はグローバル・リサーチ、ICH、RT、Spputnik、PressTV、the 21st Century、TeleSUR、The Saker Blog、the New Eastern Outlook(NEO)、その他のインターネットサイトに定期的に寄稿している。彼は「爆発 --- 戦争、環境破壊、企業の貪欲に関する経済スリラー」の著者である。また彼は「世界秩序と革命!抵抗のエッセー」の共著者でもある。彼はグローバリゼイション研究センターの準研究員である。

「紛争を望んでいるのか?お前がやってみろ!」
フィリピンのドテルテは、アメリカに挑む。
「艦隊を連れてきて、中国との戦争を宣言してみろ!」

‘Want trouble? You first!’ Philippines’ Duterte dares US to bring its fleet & declare war on China

RT Home/World News/ 2019年7月9日

(翻訳:新見明 2019年7月28日)

<記事原文>寺島先生推薦
https://www.rt.com/news/463698-duterte-china-war-usa/

Get short URL

アメリカ航空母艦ミニッツ© Flickr/US Navy / Seaman Aiyana S. Paschal

「もしワシントンが、フィリピンに中国と戦争させたいのなら、アメリカ軍がやって来て、まず闘うべきだ」とロドリゴ・ドテルテ大統領は非難した。アメリカの同盟国を北京の「餌」として使おうとしているのだと。

「アメリカはいつも、我々を追い詰めて、我々を扇動し・・・、俺を餌にする。フィリピン人はミミズだと思っているのか?」ドテルテは金曜日、レイテ州の演説でそう述べた。メディアが注目したのは日曜日だった。

「じゃあ言おう。あんたが、あんたの飛行機を、あんたの船を南シナ海へ持ってくればいい。あんたが最初に攻撃しなさい。我々は、あんたの後ろで、見ているよ。さあ、やりなさい。闘いましょう」。そして「紛争を望んでいるのですか。よろしい。さあ、やりなさい」と彼は付け加えた。



その発言がなされたのは、マニラの政府が、より強固な中国に対する姿勢を求めるアメリカの要求と、北京の南シナ海における海洋拡大、特にフィリピンが自分のものだと主張する島々のことで、板挟みになっているときだった。

アメリカは、中国が島を増強していることがわかっていた。アメリカ海軍は日本に第7艦隊を配備しているのにと、大統領はコメ加工工場の開設式で、アァンガランの聴衆にそう語った。

「なぜ彼らは第7艦隊をスプラトリー諸島に送らないのか。そして『おい、お前、公海上に人口島を建設することなど考えられない。それは国際法でまさに禁止されている。お前は、我が友人のフィリピンの排他的経済水域内で島を建設していることななるのだぞ』」とドテルテは問うた。「彼らに島をつくらせておいて、いま島はそこにある。全ての銃はそこにあり、全てのミサイルは配備されているのだ。」


Also on rt.com Duterte warns China of ocean grabbing free-for-all amid South China Sea dispute (さらに読む)「ドテルテは、中国に対して、南シナ海の論争の最中に、勝手に海を自分のものにしていると警告する」


先月、フィリピン漁船が中国船と衝突して、沈んだ。22人の乗組員が自力で抜け出さなければならなかった。マニラの軍隊は、それを海の「ひき逃げ」と呼んだ。結局、彼らはベトナム船に全員救助された。ドテルテはその事故を「小さな海難事故」として片づけた。北京に自制を求めたが、事態をエスカレートさせなかった。

「我々は、中国との戦争に決して勝てない」、と大統領は金曜日に説明した。「私は兵士達に、地獄の入り口で闘わずに死ねと命令できない。私はそうできなかった。」

もし彼が20年権力の座に就くことになったら、あらゆる村に「5発の巡航ミサイルと大砲」を配備できるだろう。しかし現実はそうなっていない。ドテルテは中国が「やり過ぎないように」望むと付け加えた。

ドテルテが、アメリカの同盟国に対して厳しい言葉を発したのはこれが最初ではない。5月、彼はアメリカに「親分風」を吹かせすぎる、そして武器取引の約束違反を「尊重しない」と非難した。ワシントンは2016年、フィリピン警察向け2万6千丁のライフル販売を、人道的懸念を表明して中断した。


Also on rt.com ‘US has no honor!’ Duterte slams ‘bossy’ Washington for breach of arms deal
(さらに読む)「アメリカは約束を守らない!」とドテルテは「親分風の」ワシントンを武器取引不履行で非難する。


欧米人権団体によると、ドテルテが就任して麻薬戦争を開始してから、何千人という人々が超法規的に殺されている。アムネスティ・インターナショナルは、人道に対する犯罪としてドテルテに対する調査を求めた。

しかし、月曜日に発表された世論調査は大統領の記録的な人気を示していて、80%が彼の仕事を評価していて、不満を表明しているのは12%だけである。それは2017年の前回の記録より2ポイント高く、今年3月も同様に高い支持率だった。

トランプー金(キム)会談:
大統領が平壌に向けて20歩北朝鮮に入ったことは、
劇的で歴史的な出来事である。しかし「どこまで行けるのか?」

The Trump-Kim Meeting: Mr. President, Your 20 Steps into North Korea Toward Pyongyang Were Dramatic and Historical. But, “How Far Are You Going”?

ジョセフ・H・チャン

グローバル・リサーチ 2019年7月3日

(翻訳:新見明 2019年7月14日)

<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/mr-president-your-20-steps-north-korea-pyongyang-dramatic-historical-how-far-you-going/5682553



6月30日非武装地帯でのトランプ・金(キム)会談は世界をあっと言わせた。それは劇的であった。それは歴史的であった。それは長い間待った朝鮮半島の平和と、悲惨な冷戦の最後の最前線がなくなる一縷の希望を与えた。

不幸にも、アメリカのメディアやシンクタンクや政治グループやその他は、ことの重大性を十分に認識できていないようだ。

私は二つのことを問う。何が二人の世界的指導者が会談を持つようにさせたのか。そして何が会談の成果だったのかという問いである。

会談の目的はトランプと金では異なっている。私達は、金正恩がこの前の2月ハノイサミット会談の失敗で、どれほど屈辱を受けたか、どれほど怒ったか思い出さなければならない。彼は中国を縦断する何週間もかかる辛い旅で、どれほど真剣に彼が核危機を解決しようとしていたか、世界に示めそうとしたことを思い出さなければならない。

しかし彼はトランプに裏切られた。ハノイ会談は、彼の威厳やプライドや彼の指導性を確実に傷つけた。彼は自国の人民の前で顔をつぶされたのだ。

ハノイ会談以来、金は彼の指導性をなんとか回復しなければならなかった。そして核問題の実際の解決や、同時に飢餓や経済発展の問題の解決を見つけなければならなかった。

彼はいくつかの方策を講じた。

まず、彼は交渉チームを安全保障チームから外交チームに代え、外務第一副大臣に指導させた。

2番目に、これは重要だが、金はワシントンを信用しなくなったことだ。彼のトランプに対する不信、特に彼の安全保障アドバイザーのジョン・ボルトンとマイク・ポンペオに対する不信が深まったことだ。

3番目に、金は終わることのない制裁から逃れる希望を捨てたのかもしれないことだ。習近平やプーチンとの会談を通して、金はトランプの制裁にもかかわらず経済的協力関係の保障を得た可能性がある。言い換えれば、金は制裁からの救済は必ずしも最優先事項ではないと結論したかもしれない。このことが金をより強い交渉の立場に立たせたかもしれない。

4番目に、金はトランプとの会談の間、体制保障と国家安全保障に焦点を当てることに決めたのかもしれない。体制保障は連絡事務所の設置、最終的には大使館を設立を通してなされる。

トランプにとって体制保障や安全の保障は、国連がかかわっている制裁の緩和より容易であるようだ。

もし安全保障と同様に制裁や体制保障に関する私の仮定が正しければ、金は重荷を背負うことなく非武装地帯に来たかもしれない。彼は低いレベルの希望を抱いてきたのかもしれない。それゆえ彼は会談の結果に比較的容易に満足できたのだろう。実際トランプとの53分間の会談の後、金はかなり楽しそうに見えた。

5番目に、重要なことはトランプを招待したのは金ではなかったということだ。トランプが金を招待したのだ。この事実だけでも、金の尊厳や彼の指導性やハノイでつぶされた「顔」の回復に大いに貢献している。

つまり金正恩に関する限り、非武装地帯でも会談はかなり成果があったようだ。

トランプに関しては、いくつかの要因が彼に会談のイニシアチブをとらせたようだ。

最初に、ハノイ会談以来、トランプは金との会談の希望を諦めていなかった。多くの場面で彼は金との良好な関係を自慢していた。

2番目に、彼は北朝鮮問題をイラン問題とは違って考えているようだ。トランプはイランに対してずっと好戦的な接近をしている。なぜならイランは中東地域を支配することができ、一方、北朝鮮は東アジア地域を支配する能力はないからである。だからトランプは平壌に向けてより寛大であることができる。


READ MORE:US-North Korea Summit: Hold the Cheers. Inter-Korean Summit to Precede Trump-Kim Meeting?(さらに読む)「米・北朝鮮サミット:トランプ・金会談に先立つ南北朝鮮サミット」


3番目に、核のない北朝鮮はアメリカと親しくなる。そしてそれは中国の抑止政策の一部でもある。

4番目に、北朝鮮は、その地域に残された最後の真に経済的フロンティアであるかもしれない。そしてアメリカは十分な利益を見込んでその経済発展に参加できる。

5番目に、韓国の文在寅大統領の仲介のおかげで、北朝鮮とアメリカのエリートグループの相互不信は、ある程度払拭された。

6番目に、非武装地帯でのサミットは、2回目の民主党大統領選挙討論の大きな衝撃を緩和する絶妙のタイミングであった。非武装地帯のサミットは、完全に民主党討論のメディア報道を侵食した。それ故サミットはトランプにとって重要な政治的勝利であった。

だから、トランプも金もサミット会談を実現する十分な理由があったのだ。

さて、私は「何故サミットの達成したものは何か?」という問いをしている。私達はいくつかの肯定的な可能性を見てもよい。

まず、サミットは直ちに組織されたことを証明した。サミットは最小限のコストで、しかも何度も行えることを証明した。

さらに、二人の指導者の秘密会談は、もともと5分の計画だったが、53分も行われた。金もトランプも双方が会談に満足しているようだ。韓国の核危機の専門家は次の会談の可能性をほのめかしている。

5番目に、金は寧(によん)辺(びよん)の核施設の解体をミサイル発射台解体とともに約束しただろう。そのかわり、金は体制保障と平和解決を求めただろう。制裁の解除はより低い優先順位となっていただろう。

2番目に、トランプは、アメリカによる相応の見返りとして、段階的非核化からなる「小さな取り引き」を容認したかもしれない。つまりボルトンの大きな取り引きは放棄されたことになる。ちなみにボルトンは、非武装地帯の会談が行われていたときモンゴルにいた。これはトランプ戦略の転換を意味する。

3番目に、会談が具体的成果を生み出さなかったことは本当だ。会談は具体的成果を生み出すために組織されたのではないから、当然だ。会談が価値があったのは、それが核対話の膠着状態を打ち破り、対話継続の相互の意思を確認できたことだ。

この点で、会談は成功であった。新しい交渉チームが2・3週間して結成されるだろう。アメリカチームは、マイク・ポンペオ国務長官の下、ステーブン・ビーガンによって行われるだろう。北朝鮮チームは崔(チェ)善(ソン)姫(ヒ)によって率いられる。彼女は李容浩(リヨンホ)外務大臣の下で第二外務副大臣である。

4番目に、会談で両指導者はボトムアップを支えられたトップダウン方法を強めることに同意した可能性がある。ハノイ会談の失敗は、トップとボトムの間のコミュニケーションと調整の欠如のためであったようだ。これからは、トップが交渉チームの仕事をさらに綿密にチェックするようだ。

私の文章を閉じる前に、メディアや政治家、そして顧問団の反応について2・3付け加えたい。これらの人々はほとんど、会談について非常に否定的である。民主党大統領指名候補バーニー・サンダース上院議員や教皇フランシスコを除いて。

彼らの否定的な会談の受け止め方は、二つの主要な非難に基づいている。つまり北朝鮮の存在は信頼できず、独裁国家であるというものだ。

以前、グローバル・リサーチの私の論文で指摘したように、二つの国のどちらが信頼が置けないか不確かである。私達は1994年の米朝枠組合意がアメリカとその同盟国によって破られたことを思い出すべきだ。実際もしアメリカとその同盟国が合意を尊重していれば、北朝鮮はそもそも核兵器を決して開発しなかっただろう。

独裁に関して、アメリカが世界中の数え切れない恐ろしい独裁者を支援してきたことを歴史が物語っている。韓国では、アメリカは朴正煕将軍と全斗煥将軍の無慈悲な独裁政治を支援してきた。アメリカが独裁者達と取り引きしないという主張は、全くの偽善である。

全斗煥将軍の政府は、1980年5月18日何百人という無実の光州市民を戦車とヘリコプターで殺害した。しかしアメリカは全斗煥政権の犯罪者を支持したのだ。

まとめとして、非武装地帯のサミットは行われたことを私は喜ぶ。FFVD(最終的で完全に検証された非核化)は可能だ。しかし、ワシントンは「大きな取り引き」モデルを捨てて、制裁解除や他の補償に見合った段階的非核化を受け入れるべきだ。それが最終的にFFVD(最終的で完全に検証された非核化)や朝鮮半島の永続的な平和につながる。しかしFFVDは北朝鮮の自衛能力を保障するべきだ。

しかし、非核化の試みを成功させるためには、トランプはワシントンのオリガルヒ(少数独裁政治)によって続けられている北朝鮮の悪魔化の罠から自らを解放しなければならない。オリガルヒは朝鮮半島の緊張の現状を、韓国に更に兵器が売れるように永続したがっているからだ。

*

ジョセフ・H・チャン教授は、モントリオ-ル、ケベック大学の統合とグローバリゼイション研究センター(CEIM)の、東アジア観測所(OAE)の共同所長である。彼はグローバリゼイション研究センターの準研究員でもある。

米軍アフガニスタンへ増強は、中国を閉め出すためか? リチウムや豊富なアフガニスタン鉱物資源のための戦い

More American Troops to Afghanistan, To Keep the Chinese Out? Lithium and the Battle for Afghanistan’s Mineral Riches

ミシェル・チョスドフスキー教授

グローバル・リサーチ 2018年11月18日

(翻訳: 新見明 2818年12月3日)
<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/more-american-troops-to-afghanistan-to-keep-the-chinese-out-lithium-and-the-battle-for-afghanistans-mineral-riches-2/5605456

トランプが、アフガニスタン戦争拡大を要求。なぜなのか?それは「世界テロ戦争」の一部なのか。悪者を追跡するためか、それとも何か別のもののためか?

庶民には知られていないが、アフガニスタンは石油、天然ガス、戦略的天然鉱物資源が豊富である。アヘンは言うまでもなく、アメリカの違法ヘロイン市場を潤してきた何十億ドルもの産業である。

これらの鉱物資源には、鉄、銅、コバルト、金、リチウムの巨大な鉱脈を含んでいる。
リチウムはラップトップ、携帯電話、電気自動車用のハイテク・バッテリーの生産で使われる。

トランプの決意の意味するところは、アフガニスタンの豊富な鉱物資源を略奪し、盗むことである。アメリカとその同盟国による16年間の戦争で、破壊された国の「再建」に財政支援するためである。つまり侵略国家に支払われる「戦争賠償」である。


Screenshot: The Independent.

ドナルド・トランプは、16年間の戦争後、再建のために支払う1兆ドルの鉱物資源を狙う。(金、銀、プラチナ、鉄鉱石、銅の豊かな埋蔵量は、経済的独立への道を示すことが出来る。しかし専門家はそれらの計画を「夢物語」と呼ぶ。)

ニューヨーク・タイムズで引用された2007年ペンタゴン内部文書では、アフガニスタンは「リチウムのサウジアラビア」になり得ることをほのめかしている。

        鉱業を発展させるには何年もかかるが、その潜在
        能力が大きいので、政府高官やその産業の経営者
        は大きな投資に値すると考えている。

        アメリカ中央軍司令官デイビッド・H・ペトレイアスは、
        「ここには驚くほどの可能性がある。もちろん多くの
        ”もし”があるが、私は非常に重要な可能性があると
        思う」と述べた。

        「これはアフガニスタン経済のバックボーンになるだろ
        う」とアフガニスタン鉱山・石油省顧問ジャリル・ジュム
        リアニーは語った。(ニューヨークタイムズ、オピニオン
        からの引用)

この2007年の報告が述べていないことは、この資源基盤は、1970年代にさかのぼってロシア(ソ連)にも中国にも知られているということだ。

アシュラフ・ガニー大統領のアフガニスタン政府は、リチュウムを含む鉱山業にアメリカの投資を促すためにドナルド・トランプ大統領を訪れたが、中国は、パイプライン計画や輸送回廊と同様、鉱業やエネルギー開発計画で先頭を走っている。

中国はアフガニスタンの主要な貿易・投資パートナーである(ロシアやイランと並んで)。
その関係は、アメリカの中央アジアにおける経済的、戦略的利害を侵害する可能性がある。

中国の意図は、アフガニスタンと中国新疆ウイグル自治区を結ぶ歴史的ワハーン回廊を通じた陸上輸送を完成することにある。(下の地図を参照)
       
        アフガニスタンの推定3兆ドルの価値がある
        未開発の鉱物で、中国企業が銅や石炭の巨大
        な採掘権を得た。そして数十年間で最初の石油
        採掘譲渡権が、外国人に許可された。また中国
        は、バッテリーから核兵器部品まで広範囲に利
        用されるリチュウムの大きな埋蔵も狙っている。

        中国人はまた水力、農業、建設部門にも投資し
        ている。2国間の国境を横切る76キロに渡る直通
        道路が建設中である。(ニュー・デリータイムズ、
        2015年7月18日)
         
     READ MORE 「戦争はする価値がある」。アフガニスタンの鉱物、天然ガスの巨大な埋蔵量

アフガニスタンの豊富な石油埋蔵量は、中国石油天然気集団公司(CNPC)によって探査されている。 

READ MORE:“The War is Worth Waging”: Afghanistan’s Vast Reserves of Minerals and Natural Gas
資料:鉱業ニュース、2010年8月
        

「戦争はいい商売だ」

米軍基地がそこにあるのは、アフガニスタンの鉱物資源管理を主張するためである。フォーリン・アフェアーズによると「他のどの戦闘地域よりも多くの米軍勢力が、アフガニスタンにいる」。その公式任務は、「テロとのグローバル戦争」の一部として、タリバン、アルカイダ、ISISを追跡することである。

なぜそんなに多くの軍事基地があるのか。なぜ増派が、トランプによってなされるのか。

アフガニスタンの米軍の語られざる目的は、中国を閉め出すことである。つまり、中国がアフガニスタンと貿易・投資関係を打ち立てるのを妨害するためである。

さらに広く言えば、中国国境西側のアフガニスタンに軍事基地を置くことは、中華人民共和国を軍事的に包囲する大きな過程の一部である。つまり、南シナ海への海軍派遣、グアムの軍事施設、南朝鮮、沖縄、チェジュ島などが大きな包囲網となる。(下の2011年地図参照)
    

アジア軸

オバマの「アジア軸」構想で打ち立てられた米国・アフガン安全保障協定の下で、ワシントンとNATO 諸国は、アフガニスタンに永続的な軍事プレゼンスを確立した。それらの基地は、トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタンと同様、中国、パキスタン、イラン国境に戦略的に置かれている。


しかし、米軍プレゼンスは中国とアフガニスタン間の貿易・投資関係の拡大を阻止することは出来なかった。戦略的パートナーシップ協定が2012年カブールと北京の間で調印された。アフガニスタンは、上海協力機構(SCO)のオブザーバーでもある。

さらに隣のパキスタンは、今はSCOの正式メンバーであり、中国と密接な2国間関係を築いている。そして今ドナルド・トランプは、パキスタンを脅し、長年アメリカの「宣戦布告のない戦争」の攻撃目標であり続けている。

別の言い方をすれば、地政学的連携の変化は、パキスタンの隣のアフガニスタンをユーラシア的貿易、投資、エネルギー軸に統合することとなった。

パキスタン、アフガニスタン、イラン、中国は、石油、ガスパイプライン計画で協力している。トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタンがSCOの正式メンバーであることは、アフガニスタンをユーラシアのエネルギー・輸送回廊に統合する地政学的基盤を与えている。
中国は、アフガニスタンを一帯一路の一部として西中国の輸送ネットワークにいつかは統合することを狙っている。

さらに中国の巨大国有鉱業会社、中国冶金科株式会社は、「タリバン支配地域にある巨大なメス・アイナック銅鉱床を既にうまく支配している。すでに2010年にはワシントンは、「資源に飢えた中国が、アフガニスタンの鉱物資源開発を支配しようとして、アメリカを苦しめることを恐れていた。・・・ローガル州のアイナック銅山の入札を勝ち取った後も、中国はさらなる要求をすることは明かだ。」(Mining.com)

中国とリチュウム戦争



中国の鉱業コングロマリットは今、戦略物資である世界リチュウム市場を支配しようと争っている。その市場を最近まで支配していたのは、「ビッグ・スリー」コングロマリット、つまりアルベマール・ロックウッドリチウム(ノースカロライナ)、ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ、アルゼンチンで操業するFMCコーポレーションであった。ビッグ・スリーが市場を支配しているが、中国はいま世界リチュウム生産の大きな部分を占めていて、オーストラリア、チリ、アルゼンチンに続く4番目に大きなリチウム生産国である。一方中国のチアンキ・グループは、グリーン・ブッシーズと呼ばれるオーストラリア最大のリチウム鉱山を支配している。チアンキは今ノースカロライナのアルベマールと共同でタリソン・リチュウムの51%の株を取得している。

このリチュウム生産の推進力は、中国の電気自動車産業の急速な発展と関連している。

中国は今「リチュウム界の中心」である。中国は既に最大の電気自動車市場である。ウォレン・バフェットに支援された会社BYDは、世界で最大のEVメーカーであり、中国企業はバッテリーのための最大のリチュウム化学製品を生産している。今中国では25の企業があり、電気自動車の51のモデルを作っている。今年、中国で50万台以上のEVが販売されるだろう。2009年からGMがシェビー・ボルトを10万台売るのに7年かかたのに。BYDは今年だけでEVを10万台売るだろう。(Mining.com, 2016年11月報告)

アフガニスタンのリチウム埋蔵規模は、正確に確かめられたわけではない。

専門家の評価では、まだ利用されていない貯蔵量は、世界リチウム市場に大きな衝撃を与えないということだ。

「私たちはモルモットだった」:アメリカ在住広島原爆被爆者の証言

Us used HIroshima atomic bomb victims as 'guinea pigs', survivor tells RT
RT 2018年8月3日
(翻訳:大手山茂、岩間龍男 2018年8月22日)
<記事原文>https://www.rt.com/news/435030-hiroshima-victims-nuclear-guinea-pi

広島平和記念資料館で原爆のキノコ雲の写真を見学している家族連れ
          © Issei Kato / Reuters

「広島原爆投下の生存者はアメリカ側研究のモルモットでした。そして占領軍は原爆の悲惨さに光をあてようとするメディアの報道を検閲していたのです」とある広島原爆生存者はRTに語った。
セツコ・サーロウ女史は核兵器廃止運動の活動家であり、広島原爆の生存者だ。 彼女はRTのソフィー・シェバナゼ記者のインタビューに対して、「第二次世界大戦後日本を占領したアメリカ軍は核兵器の影響を研究することに関心があって、原爆投下による犠牲者に援助の手を差しのべることはしていません」と語った。

『日本はアメリカの核の傘から離脱すべきだ」・・・広島市長

「アメリカはABCC(原爆傷害調査委員会)という名称の機関を立ち上げました。 みんなとても喜びました。 これでやっと治療を受けられるし、原爆について知識のある専門家が来ると思ったのです。 日本人の医師達はどうしていいかわからない状態だったものですから」とサーロウ女史はシェバナゼ記者の番組「ソフィコ」の中で語った。
「でもABCCの目的はひとつで、それは人間の体への放射線を研究することだったのですね。 放射線で病気になった人に救いの手を差しのべることは念頭にありませんでした。 生存者達は2回モルモットにされたと感じました。 1回目は投下目標だったし、2回目は研究対象でした。」
もっとひどいのはアメリカの占領軍があらゆる手段を使って原爆投下とその恐るべき影響を報道しようとするメディアに圧力をかけたことだ、とサーロウ女史は述べた。
「占領軍はメディアや新聞が占領軍に不都合と思われる記事は一切書いてほしくなかったのですね。 もしどこかの新聞社が広島や長崎での破壊の様子、とりわけ人間への被害を報じるとすればそれは不都合と考えられ、記事の発行にストップがかけられたでしょう。 実際占領軍は検閲を行い、メディア数社は廃社に追い込まれました。 こんなのは民主主義ではありません。」
サーロウ女史によれば日記、写真そして俳句まで何万点という個人的なファイルがアメリカ当局者によって押収され、核戦争の終末がどんな結末になるのかを世界に知らせまいとした、とのことだ。
「アメリカが原爆を製造した科学的な勝利は問題なし。 それは世界中知ることができました。 問題は人間への被害です。 それを世界に知らせるわけにはいかなかったのです。 それが個人的ファイルまで押収したことの理由です。」
(映像は省略)

通貨戦争はエスカレートする: 「オイル元」が、米軍が支援する「オイル・ダラー」に挑戦するとき

The Currency War Will Escalate as China’s ‘Petro-Yuan’ Challenges the U.S. Military-Backed ‘Petro-Dollar’

ティモシー・アレクサンダー・グズマン

グローーバル・リサーチ 2018.6.24
(翻訳:新見明 編集:大手山茂)
<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/a-currency-war-will-escalate-as-chinas-petro-yuan-is-set-to-challenge-the-u-s-military-backed-petro-dollar/5616456

現在進行している通貨戦争に関連して。最初2017年11月に発表。


米ドルとそれに関連した地政学的状況に関して、私の頭をいつもよぎる一つの引用は、トレンド調査研究所の創設者ジェラルド・セレンテの言葉だ。「他の全てが失敗したとき、彼らは戦争へと導く」

米ドルが世界の主要準備通貨の地位を失い続けるとき、世界戦争の現実は避けられないようだ。特に中国、ロシア、イランが、米ドルを回避して、「オイル元」のような他の通貨に肩入れする戦略的動きをしているときはなおさらだ。中国は自分の通貨「元」で石油価格を決定するとした。そのような新たな金に裏付けられた先物契約は、世界経済の力学を変えることになるだろう。中国は今年後半にオイル元を開始する準備をしている。それは結果的に世界準備通貨としての米ドルを脅かすことになるだろう。

第二次世界大戦の終結時、国際経済システムは大混乱していた。だから新しい経済システムを構築するために一つの計画が考案されていた。1944年7月までに730人の代表団がニュー・ハンプシャー州ブレトンウッズの国連金融財政会議に集まって、歴史的ブレトンウッズ協定にサインした。それは国際復興開発銀行(IBTD)と国際通貨基金(IMF)を創設することになる規則体系を作り出す計画であった。IMFの主目標は支払いの一時的不安定を阻止することであった。ブレトンウッズ協定の枠組みは、国家間の貨幣価値を管理することであった。各国は金に換算できる固定価格内に自国通貨の交換比率を保つ金融政策を持たなければならなかった。しかし1971年までにアメリカは米ドルと金の兌換性を終了させた(当時、金の固定率は1オンス35ドルだった)。そしてアメリカが米ドルを法定不換紙幣にすることになり、ブレトンウッズ体制を終わらせたのだ。法廷不換紙幣とは、中央銀行(特に米連邦準備銀行)にお金をどんどん印刷することを認めることなのだ。

そこで中国の動きが重要になるだろう。まず第一に、中国は、ワシントンが勝手にどの国にも経済的制裁を課す能力を徐々に現象させるだろう。そして同時にアメリカの消費者は、輸入品がさらに高価になるので、ゆっくりとの購買力を減少させるだろう。

中国(米国債の最大の保有者)は、石油の最大輸入国である。一方ロシアは世界で最大の輸出国であり、オイル元を使っオイルダラーを回避することに同意した。オイル元は世界中の米ドルのヘゲモニーを脅かしている。ワシントンの大敵である数カ国、イランやベネズエラやインドネシア(現在ワシントンの攻撃目標になっていない)さえも、最近石油取引で米ドルから元への切り替えに加わることに興味を示しているのだ。

大手メディアは、中国がドルを回避し、国際社会でペトロ元を導入する最近の展開を報道している。CNBCの記事、「中国はドルを退位させる大望を抱いている。それは今年の大きな動きとなるかもしれない」の中で次のように書いている。

  
中国は、ドルの世界支配に対抗する大きな動きをするつもりである。それは今年早々になるかもしれない。新しい戦略は、エネルギー市場の支援に積極的に参加することだ。北京はこの数ヶ月のうちに石油価格決定の新たな方法を導入する可能性がある。しかし現在世界市場を支配している米ドルに基づく契約とは異なって、これは中国自身の通貨を使用することになる。もし中国が希望するように、広範な採用があれば、それは世界で最大の通貨としての米ドルの地位に対抗する第一歩となるだろう。

中国は世界最大の石油輸入国だ。だから北京は自国通貨が世界経済の最も重要な商品の価格を決定するのは当然のことだとみている。しかしそれ以上に、ドルから離れることは、中国やロシアのような国にとって戦略的優先事項なのだ。両国とも米ドル依存度を減らし、米国の通貨リスクを減らし、アメリカの経済制裁の影響に歯止めをかけようとしているのだ。


ワシントンはドナルド・トランプ大統領が先頭に立って、もう一つの戦争である北朝鮮と衝突過程にある。アメリカ負債帝国は、生命維持装置としての米ドルの力で、戦争という脅しを使い続けていている。ある場合には世界で、ワシントンの攻撃目標であるイランやシリアやベネズエラと実際に戦争をしている。イランとロシアは、ワシントンから課される経済制裁を避けるために米ドルからすでにゆっくりと移行している。ベネズエラも米ドルに対抗する動きをすでに準備している。ロイターは、マドゥーロ政権が石油輸出の新たな国際決済システムを実施する決定について報道しなかった。しかし「ベネズエラのマドゥーロは中国元を支持し、米ドルを避けるだろう」という見出しの報道は、マドゥーロがベネズエラ、カラカス連邦立法宮殿での憲法制定議会で述べたことを次のように引用した。

「ベネズエラは新たな国際決済システムを実施し、ドルから我々を解放してくれる通貨バスケットを創設するだろう」とマドゥーロは新たな立法府に対して数時間に及ぶ演説で語ったが、新たな制度の詳細は語らなかった。「もし彼らが我々にドルを求めるなら、我々はロシアのルーブルや元やインドのルピーやユーロを使うだろう」とマドゥーロは述べた。


「中国、サウジアラビアへ元での石油取引を“強要”、その米ドルへの影響」とだいされたCNBCのもう一つの最近の記事で、高度流通経済のチーフ・エコノミスト、理事長カール・ワインバーグへのインタビューがあった。それは世界最大の石油輸入国である中国が、サウジアラビアに「オイル元」を強要した場合、アメリカドル体制が近い将来どのように世界の支配力を失うかがテーマだった。

        
中国が「世界最大の石油輸入国」としてアメリカの地位を奪ったので、北京は石油需要において世界で最も影響力を持った国になっている、とチーフ・エコノミスト、理事長のカール・ワインバーグは述べた。

ワインバーグは続けて、サウジアラビアは「このことを無視できない。今後1・2年もたたないうちに、中国の石油需要はアメリカのそれを圧倒するからだ。元の石油価格決定力は、サウジがそれを受け入れるや否や実現するだろう。こういった動きと平行して他の石油市場も歩調をあわせることになるだろう」と述べた。


米ドルは世界の準備通貨としての地位を徐々に失いつつある。そうすると中国との戦争の可能性があるのか。アメリカは、中国への容赦ない警告として、北朝鮮を攻撃するのか。それとも米ドルを救おうとして、中国を紛争に巻き込むのか。サダム・フセインはイラクの石油輸出で米ドルの代わりにユーロでの取引を望んだ。リビアのムアンマール・カダフィはアフリカ大陸で米ドルを退けて、ディナール金貨を使うことを望んだ。イラクとリビア両国によってなされた決定は、米・NATO軍による国家破壊へと導く結果となった。アメリカは中国に対しても同じことができるのか。私はそれを疑わしく思う。なぜなら中国はアメリカのどんな攻撃に対しても防衛できる侮りがたい軍隊を持っているからだ。確かに中国はイラクやリビアではない。それでは長期的に見て、中国に対する戦争はあるのだろうか。アメリカはゆっくりと着実に崩壊しているので、ワシントンは生き残りのためなら何でもするだろう。米ドルが、軍産複合体と、それが世界で仕掛けている破壊的でとてつもなく金のかかる軍事的冒険を支えているからだ。

「オイル元」の開始が、いわゆる脱ドル化の過程を促進するだろう。しかしオイル元がいつか米ドルをひっくり返すことをわかっていない人々が大手メディアにはいる。例えば、ブルームバーグ・ニュースのディビッド・フィックリングは「オイル元の時代はやってこない」と書いていた。 
        
例えば、中国の大連商品取引場で最も取引されている商品、鉄鉱石をご覧なさい。本土の商品市場が最近、過熱気味であるが、ロンドンやニューヨークの主要取引契約よりも気配値にまだ数倍の開きがある。そのため取引はコスト高になり、価格の乱高下も激しく、適正価格発見力も弱くなる。中国は現有の大消費国なのだから、こういった不安定な変動には異論を唱えてしかるべきだ。

考慮すべき生産国もいる。ほとんどの中東の石油輸出業者はドルペグの通貨をもっている。元による価格決定に転換することは、はっきりしないもうけのために予算に外国為替リスクをもたらすことになる。特に中国への原油輸出は産油国全体では20%にも満たないからである。

予定された契約が役に立たないということではない。中国は自分の目的にもっと適した基準を持つことで利益を得るだろう。特に、現地の製油所によって精製される硫黄化合物を含んだ原油を対象とする契約はそうだ。西側主要諸国が結ぶ契約をさせている硫黄分の少ない形質の原油とは事情が異なる。

ただそれが世界を変えるとは期待できない。経済的重心が東へ移動しているのだが、西テキサスや北海との石油コネクションはこれから何年も強いだろう。


「通貨戦争:次の世界危機を作るもの」の著者ジェイムズ・リカーズはこのフィックリングの分析にきっと賛成しないだろう。

        
自国で紙幣を印刷することは中国では高いインフレ、エジプトでは物価高騰、ブラジルでは株式バブルを意味する。ドル紙幣をどんどん印刷することはアメリカ国債の価値が下がり、外国債権者を売却する場合に手取りが少なくなるということだ。このアメリカ国債価値下落はいろいろな経済発展活動分野で執拗者が増えることを意味する。アメリカへの輸出品の値段が高騰し、その結果アメリカ国内で商品があまり売れなくなるからだ。当然インフレということになるが、それは銅、トウモロコシ、石油そして小麦のような一次産業を発展させるときに必要な資材の価格を高騰させる。アメリカが資金援助や関税や資本調整を通じて引き起こすインフレに対して、外国は戦い始めた。通貨戦争は急速に拡大している。


米ドルが失敗しているのは、ワシントンの経済的、外交政策のため、そしてウォールストリート銀行カルテルや多国籍企業や軍産複合体との共謀のためだ。カイザーレポートのマックス・カイザーはRTのインタビューで、なぜ世界が米ドルから離れようとしているかを説明している。

        
世界中の国々は「アメリカの軍事的冒険に“帝国の負債”の一部となって」資金援助することに、うんざりしている。それは世界中で知られている米ドルという負債だ。それ故に、脱ドル化の動きに加わりがちなのだ、とカイザーは述べた。しかしアメリカ金融部門とその軍産複合体は、戦うことなしにドルのヘゲモニーを諦めることはない。ドルがアメリカの基本であり、主要産物であるからだ。そしてアメリカはそのために他のお気に入りの道具を使う。つまり戦争だ、とカイザーは考える。

たぶんアメリカは日中間の戦争を仕掛けるだろう。そして彼らは北朝鮮との戦争を始めるかもしれない。アメリカは、世界準備通貨としての米ドルを守るために何でもするだろう」とカイザーは述べた。「彼らはアフガニスタンでやったように、国々を侵略するだろう。彼らはどんなことがあっても止めない。なぜならこれがアメリカ帝国の土台だからだ。それは土地に基づいたものでも、物質的商品に基づいたものでもない。それは借金経済(賃貸料)に基づいたものだ。それはドルを上陸させ、収入を奪うことに基づいている。そして支払わない国があると、彼らはその資産を解体し、それらを乗っ取る。我々はそれをラテンアメリカや南アメリカで見てきた。このようにしてアメリカは帝国を築いた。」


あなた方が同意しようがしまいが、通貨戦争は始まった。我々は来たるべき数ヶ月、しっかり注意を払うだろう。そして何年か先に米ドルの優越性を維持するためワシントンがどこまでやるか見ることになる。そうなると中国がオイル元へ踏み込む準備をする様子を見ながら、アメリカは北朝鮮との戦争に乗り出すということになるのだろうか。

この記事は元々Silent Crow Newsで発表された。

(さらに読む)「特集記事:通貨戦争、中国ペトロ元の介入」
https://www.globalresearch.ca/selected-articles-the-inception-of-petroyuan/5624061?utm_campaign=magnet&utm_source=article_page&utm_medium=related_articles
                                  

<新見コメント>--------------------------------
ティモシー・アレクサンダー・グズマン「通貨戦争はエスカレートする。“オイル元”が、米軍が支援する“オイル・ダラー”に挑戦するとき」

この翻訳には経済・金融用語がで出てくるのでとても苦労しました。私自身まだ理解できていない点や、不正確な翻訳があると思うので、気づかれた点を指摘してください。

しかし、この記事が石油取引で、ドルに対して中国元が挑戦している動きはとても重要なので翻訳してみました。

アメリカは自分に従わない国に、経済制裁を加え、ドル支配を維持しようとしている。それに対して経済制裁や軍事的圧力を加えられた国々は、生き残りをかけて脱ドル化をはかろうとしている。中国、ロシア、イラン、ベネズエラなどである。

サウジアラビアなど中東産油国はドルで石油取引して、入ってきたお金はアメリカの高額兵器を購入したり、アメリカ財務証券を購入する取り決めがある。その代わりアメリカはサウジアラビアなどの政権維持を保証するのだ。このペトロ・ダラーの仕組みを、経済制裁や軍事圧力を受けた国々が中国元での石油取引をすることによって対抗しているのだ。

この記事の重要なところは、アメリカはドルの一極支配体制を維持するために、戦争をも辞さない段階に来ている点を指摘している点です。サダム・フセインのユーロ石油取引、カダフィのアフリカディナール金貨構想、これらの国は全てアメリカの戦争によって破綻国家とされました。いま中国が元で石油取引をしようとしているが、この場合はイラクやリビアのようには行かないだろう。しかしアメリカは日本など属国を巻き込んで、東アジアや中国周辺で紛争を起こす可能性が高いことは、我々も警戒しておかなければならない。

世界最大の興行権: オリンピックで誰が儲けるのか

Business News

RT 2018年2月9日

トービー・メルビル/ロイター

第23回冬期オリンピックが韓国の平昌で開かれている。これをローマ人(彼ら自身古代オリンピックの大ファンだった)が「誰のためになるか」または「誰が儲けるのか」と糺した視点から見てみよう。
もっと明確に言えば、誰のお金でオリンピックが回っているのかということだ。
現在世界でIOCほどおいしいお金儲けマシーンはない。ドル箱となる名称権やシンボル権を売って。しかしまず一般に考えられている思い違いを検討しよう。

一般通念:
IOCは、やや国連と似ている。つまりIOCは、それぞれの参加国、つまり各国オリンピック委員会によって支払われる料金によって成り立っている。

真実:
IOCは本質的にスイスにある非営利の私的機関である。IOCは自分のことを次のように誇らしげに言う。
   ...全く私的財源による組織として、IOCの商業的協賛事業は、オリンピッ
   ク開催やオリンピックのあらゆる組織運営上で貴重なものである。

一般通念:
IOCとオリンピック主催者は、オリンピックの準備費用や開催費用を分担する。


(開会式の花火、平昌オリンピックスタジアム フィル・ノーブル/ロイター)

真実:
オリンピックは世界最大の興行権である。応募都市は、大会に必要なものがすでに準備できていることをIOCに認めさせなければならない。つまり、すべての関連費用をもつことだ。必要とされるのは、ただIOCの自由裁量なのだ。それと引き替えに、成功した入札者はオリンピック競技を招致する権利が得られる。経費のうまい汁は、いつも各国組織委員会が負担されることになる。競技施設、選手や役員の宿泊、輸送手段、競技期間の食事など、などが含まれるが、それだけではない。
IOCが生む唯一最大の費用は、競技のテレビ放映権でもたれる。

一般通念:
きっと利益は、オリンピック主催者とIOCによって分割される。

真実:
違います。IOCが試合に関連した販売権をほとんどもっていて管理している。現場のオリンピック施設やチケット販売からの収入は分割される。しかしそれらは主要な収入源からすれば小さいのです。販売権からの主な利益は、いつもIOCに直接行きます。

一般通念:
主要な収入源でいえば、競技は主に超国家企業によって引き受けられる。その超国家企業の宣伝を競技場のポスターやテレビで絶えず見ることになるのですね。

真実:
yesでありnoでもある。IOCと連携し、商品にオリンピック競技場の特許権を表示する権利を持つために、オリンピック協賛権(TOP)プログラムを買わなければなりません。現在ほとんどアメリカを本拠とする13の大企業が、「IOCに競技場のために支払っています」。それらはその特権のために年間数億ドルを支払います。

(キム・ホンジ/ロイター)

しかしTOP(オリンピック協賛権)プログラムは、重要なのですが、IOCにとって資金源としては2番目なのです。TOPからのお金はすべてIOCの金庫に直接入りますが、大会主催者はそれには無関係であると述べましたが。
...だからもしチケット販売が収入源の小さなものであるなら、また強力なコカコーラ、P&G、Visaからのお金でさえ、IOCの主要財政源と比較すれば小さなものであるとすれば・・・どうでしょう。誰がIOCの狩猟財政スポンサーなのでしょう。
答えは簡単です。NBCユニバーサルです。そのアメリカのメディア複合企業がIOCにオリンピック競技の全収入のなんと40%あまりを出しているのです。それは単純な数学です。ニューヨークに本部を置く企業が、IOCにアメリカ市場のテレビ放映権として2014年から2020年まで4回のオリンピックに43.8億ドル支払ったのです。もちろん2018年の平昌オリンピックを含めて。もしくは1回平均11億ドル(契約は夏季、冬季オリンピックの区別はありません)を支払ったのです。アメリカ人がローザンヌに進んで送っているお金の額にびっくりしている人々にとって、もう一つさらに印象的な数字があります。2014年早々、NBCとIOCは、2032年までの次の6回のオリンピックに77.5億ドル、もしくはそれぞれの大会に13億ドル支払う契約を延長したのです。NBCがそんな巨大な投資の見返りをどうやって受けるのだろうか(テレビ市場支払われた最高額)。しかし事実は、アメリカ人はオリンピック運動の巨大な「株主」なのです。それは「支配株」と呼ばれるかもしれない。

(オリンピック組織委員会)

しかしそれだけではありません。IOCはヨーロッパの放送局と個別に交渉することにうんざりし、ヨーロッパ全体をひとまとめにして放映権を売り出すことに決めました。ヨーロッパ人は交渉してみましたが失敗して、IOCの好みを満たすことになりました。放映権はもう一つのアメリカ基盤の巨大メディア、ディスカバリー・コミュニケーションズに行ってしまいました。その取引はIOCにとってNBCのように甘い汁ではありませんが、決して不満足な数字でもありませんでした。メリーランド基盤の企業が2018年から2024年の4回のオリンピックに13億ポンド(現在のレートで約16億米ドル、もしくは1種目ごとに4000万ドル)支払いました。
ディスカバリーは当時、ヨーロッパの放送局各社に少しずつ放映権を再販売し始めました。それはヨーロッパ放送局各社をさんざん苦労させました。しかし再び、それは別の話なのです。世界の他社は、NBCやディスカバリーと比べて、ずっと少ないお金を支払っている。それは公的には公表されていませんが。いろいろな概算が示されている。アメリカやヨーロッパ以外のIOCの二つの最大のもうけ口は、日本と中国のテレビ放映権で、オリンピック放映権所有者に2億5千万ドルと各「オリンピックの4年」ごとに1億2千5百万ドル支払っている。概してIOC収入の最近の内訳は次のようになる。
・73%の放映権
・18%のオリンピック協賛(TOP)プログ ラム販売権
・5%の他の収入
・4%の他の権利

次の大会のIOC全体収入は(低く見積もっても)20億ドルと見積もられた。それはIOC幹部が近くのスイス銀行の金庫に入れることになるのだろうか。もちろん違う。大部分のお金は貧困な国々のスポーツ発展やユース・オリンピックのような儲からない競技開催のために援助される。しかしIOCはその文書の中で控えめに述べている。「収入の10%そこそこは機構維持のために使われる」。しかしそれは決して少額ではない。
さらに重要なのは、最近、高額入札者に売られるこれら主要な収入源増大を、IOCが明らかに隠していることだ。入札者が誰であり、入札者がどこから来ているかを。結局それは企業活動と類似し始めている。その中で主要投資家は、運営「もしくはその他」へのさらなる要求を増大させている。「国際オリンピック活動」とはそんなものなのだ。

<記事原文>
https://www.rt.com/business/418322-olympic-games-money-profits/

<新見コメント>--------------------------------
オリンピックがスポンサーの意向で歪められている報道をどきどき見る。

例えばフィギュアスケートが午前中に開催され、転倒する選手がたくさん出たとか、ジャンプで日にちをまたいで競技が行われたとか。
    東アジアの昼間は、フィギュア人気の高い米国の夜にあたり、
    深夜は欧州の夕方になる。最近の五輪はIOCが掲げる「アス
    リートファースト(選手第一)」ではなく、巨額のテレビ放映権
    料を支出する欧米の視聴者を意識した「顧客第一」と言うの
    が実態だ。     (毎日新聞 クローズアップ2018)
https://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20180227/ddm/035/050/024000c

これらすべてがアメリカのゴールデンタイムにリアルに放映できるためにあるとは驚きだ。スポンサーの意向だけが優先され、競技するものはそのためにどんな悪条件でも競技しなければならないということだ。

2020年の東京オリンピックも真夏の一番競技環境の悪いときに実施されるという。そして競技時間もスポンサーの意向が反映され、選手にとって無理な日程が組まれるのだろうか。グローバル企業は、株入主のため利益を最大限にすることを飽くなく追求し、それによって犠牲になる庶民のことは視野に入らないようだ。出資比率40%余りのNBCは筆頭株主にあたり、その意向は絶対的であることをこの文章は示している。

もう一つオリンピックの果たす役割がある。日本では北朝鮮核・ミサイル問題が、国内問題(森友・加計など)を国民の視線からそらしたように、オリンピックが国民の目をナショナリズムに向ける役割を果たしていることだ。安倍晋三がかくもオリンピックに熱を上げるのは、国民の目線を国内矛盾からそらすのに大きな役割を果たすからだ。

かつてナチスドイツが第一次世界大戦の敗戦の苦しみの中で徐々に勢力を伸ばし、1936年ベルリンオリンピックでは、国内矛盾から目をそらせ、国民の意識高揚を謀ろうとしたことは有名です。アテネからの聖火リレーが始まったのもこのベルリンオリンピックからだということです。

観戦型スポーツの果たす役割を、私たちは注視しておかなければならない。チョムスキー『チョムスキーの「教育論」』(「観戦型スポーツ」の役割)から見てみよう。
     <スポーツが社会の脱政治的な人々に果たす役割>
     だったら何が残っているのでしょうか。そうです、唯一残って
    いるのがスポーツなのです。そこで、あなたは多くの知識・思考・
    自信をスポーツにつぎ込むのです。そしてそれが、社会におい
    て概して多数の人々が果たす基本的機能のひとつでもあると考
    えます。つまり、本当に重要なことに関係しないように、人々を
    遠ざけるのがスポーツの役割なのです。(p.378)

      「観るスポーツ」が持つ別の役立つ機能がまだ他にもあります。
    一つは、それらは「ショービニズム(好戦的盲目的愛国主義)」を
    築き上げる素晴らしい方法になることです。このような完全に非
    理性的な忠誠心を、まだ小さな頃から育て上げ、それを見事に
    他の分野に移行させるのです。(p.378)

        しかし肝心なのは次の点です。何か意味のない共同体に対す
    る非理性的忠誠心というこの感覚は、権力への従属訓練、すな
    わち「ショービニズム」のための訓練なのです。 (p.379)

      権威主義的態度に対して、実際、これ以上に根本から貢献す
    るものを想像するのは困難です。多くの知能を総動員し、かつ
    人々の関心を他の重要事から遠ざけるという事実を考えると、
    なおさらです。      (p.379)                    

チョムスキーはスポーツの他にも「メロドラマも他の領域で同じ役割を果たしています」と書いています。これらが戦時の危機的状況で使われるばかりか,日常的にも人々の関心を引きつけ、「本当に重要なことに関係しないように」しているのです。ここにもメディアによる民衆の意識操作の典型があることを忘れてはならない。

だから私たちは、超国家企業による横暴な振る舞いに気づくと共に、政権やメディアによる意識操作にも注意しておかねばならない。

ゾンビの国? 「処刑された」北朝鮮人が生き返る

ロシア・トゥデイ ニュース (RT NEWS) 2018年1月21日


(北朝鮮の指導者である金正恩(キム・ジョンウン)が、新しく改装された平壌の教員養成大学への訪問中に人々が拍手している時、それに応えているところ)

西側メディアによると、北朝鮮の指導者金正恩は、気に入らなくなった人々を処刑することで有名だ。しかし、何人かの人々は死者から生き返る巧みな技を見つけたようだ。

その報道は、いつも金正恩の最近の処刑方法のうわべだけをなぞる。平凡な銃殺隊から、芝居じみたものや漫画ぽいものまである。例えば、敵対者を飢えた犬の群れの食べ物にしたり、火炎放射器で丸焼きにするという。

有名ポップ歌手と「以前の恋人」

報道によれば、北朝鮮の有名ポップ歌手 玄 松月(ヒョン・ソンウォル)は、1年前に、歌手、音楽家、ダンサーの粛清で、銃殺隊によって処刑されたとされていたにもかかわらず、2014年のテレビに出演して、生きていることが判明している。

その芸人は他の11名の人たちと共に殺害されたと報道されていた。その中には、モランボン(牡丹峰)楽団のメンバー、ウナス(銀河水)管弦楽団の代表、そしてワンジェサン軽音楽団の何人かのダンサーも含まれていた。

報道によれば、その12名の犠牲者は、とりわけ、セックスをしているところを録画し、そのビデオを販売したことで告訴されていた。玄 松月(ヒョン・ソンウォル)は、金正恩が恋愛関係にあった人物だと報道されていたが、冬季大会に先立ち韓国のオリンピック開催地を視察するために、最近、土曜日に再びおおやけに現れた。


北朝鮮のポピュラー歌手、オリンピック芸術会場を視察するため韓国に到着する。2018.1.21

参考 玄 松月(ヒョン・ソンウォル)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8E%84%E6%9D%BE%E6%9C%88

軍の参謀長

2016年に戻り、北朝鮮人民軍総参謀長である李 永吉(リ・ヨンギル)は、「分派活動、職権乱用、汚職」のために処刑されたと報道されている。しかし孤立した国[北朝鮮]から出てきた多くの情報のように、これは偽りだと分かった。

韓国情報将校は、彼の人民軍総参謀長解任を、彼が処刑されたものと考えていたようだ。ところが問題は、2李 永吉(リ・ヨンギル)が死者から明らかに蘇えって、2,3か月後の5月に高官たちの列に加わり、その年労働党大会に出席をしたことだった。

参考 李 永吉(リ・ヨンギル) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%8E%E6%B0%B8%E5%90%89

「犬の群れによって処刑された」叔父

もし西側メディアを信じることができるならば、明らかに金は彼の年上の親類に本当に恨みを持っている。そんなわけで、進んで自分自身の叔父を処刑した。2014年の別の粛清では、叔父に120匹の飢えた犬をけしかけて処刑したという。

張 成沢(チャン・ソンテク)は本当に処刑されたようだが、「犬によって引き裂かれた」話は完全にでっち上げで、中国の皮肉っぽいマイクロ・ブロッギングのウエッブサイトで最初に出てきたものだった。

参考 張 成沢(チャン・ソンテク)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%B5%E6%88%90%E6%B2%A2

「依頼に応じて毒殺された」叔母

上で述べたように、金正恩は「彼の叔父を犬の餌にした」ということに加えて、残忍なまなざしを彼の叔母キム・ギョンヒ(金 敬姫)に向けた。

金正恩の父親の妹であり張 成沢(チャン・ソンテク)の妻である金 敬姫(キム ギョンヒ)は、指導者の命令で毒を盛られて処刑されたと報道された。

しかし、再びこれらの報道は偽りであることが判明しました。韓国のニュース通信社聯合ニュース(ヨンハプニュース)が昨年報道したことは、彼女はうつ病からガンまでの病気を治療中だが、しっかり生きているということだった。

参考 金 敬姫(キム ギョンヒ) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E6%95%AC%E5%A7%AB

記事原文 https://www.rt.com/news/416572-north-korea-executed-kim-return/
                                         (翻訳:岩間龍男)

(岩間コメント)-------------------------------------

金正恩政権の下で側近たちが次々と粛清・処刑がされているという情報(*)が流れ、恐ろしい何をするか分からない指導者としてイメージが定着しています。
その中でも、叔父の張 成沢(チャン・ソンテク)の処刑は有名でした。
金正恩の元恋人の美人歌手の玄 松月(ヒョン・ソンウォル)については、ポルノビデオに出演したことで処刑されたと聞いていました。元恋人がポルノビデオに出演するのもスキャンダラスですが、ポルノに出演したぐらいで銃殺刑になるというのもショッキングな情報でした。
北朝鮮や金正恩の報道については、悪意をもって意図的に虚偽の報道や情報が流されているようなので、それぞれの情報がどれが本当でどれが嘘かということについて、私たちは注意しなければならないと思いました。
* 粛清・処刑の情報例 http://www.epochtimes.jp/2017/09/28484.html

朝鮮の人々に対する米国の戦争: 

米国戦争犯罪の歴史的記録

ミシェル・チョスドフスキー

Global Research 13 September 2013

http://www.globalresearch.ca/americas-war-against-the-people-of-korea-the-historical-record-of-us-war-crimes/5350591

(このままクリックしても原文は出てこないので、PC上の検索のところにコピー貼り付けをして原文を呼び出す)
(なお文中の説明で、( )はチョスドフスキーが解説したもの、[ ]は岩間が解説したものであることを区別しました)

ミッシェル・チョスドフスキーの次の文章は、2013年7月27日の朝鮮休戦記念日の記念式典の際に、韓国のソウルで述べられたものです。

 平和へのメッセージ。和平合意と米軍の朝鮮からの撤退に向けて。

序論

1953年7月27日の休戦記念日は、朝鮮の戦没者を追悼する日です。


それは、国の再統一と主権のための歴史的な戦いにおいて重要な日です。

私は、2013年7月27日の休戦記念日の60周年記念式典に参加する機会を得て光栄に思います。

この平和と再統一についての議論に貢献する機会を持てたのは、「反戦、平和、民衆行動」の運動団体のお陰です。

*
休戦協定は紛争を止めるための紛争当事者による合意です。それは戦争の終わりを意味します。

1953年の休戦協定の背後では、紛争当事者の一方、つまり米国が過去60年間、朝鮮民主主義人民共和国に戦争をすると一貫して脅してきたのです。

米国は何回も休戦協定を破ってきました。米国はずっと戦時体制のままでした。西側のメディアと国際社会に何気なく無視されてきたことですが、米国は半世紀以上の間、北朝鮮を標的とした核兵器を積極的に配備してきました。これは休戦協定の13b条項に違反するものでした。

休戦協定は存続しています。しかし米国はいまだに朝鮮と戦争状態です。休戦条約は平和条約ではなく、和平合意は一度も署名されていませんでした。

米国は、休戦協定を利用してきました。その目的は、国連の偽りの命令で、朝鮮の37,000人の米軍の駐留を正当化すると同時に、継続した軍事的脅威の環境を作り出すことでした。この「潜在的な戦争状態」は過去60年間続いてきました。大切なことは、この韓国での米国の駐留には、アジア大陸を永久に根拠地にしようとする米軍のねらいがあることです。

この式典での私たちの目的は、広範囲に及ぶ平和条約を呼びかけることです。その平和条約は、1953年に署名された休戦協定を無効にするだけでなく、朝鮮からの米軍の迅速な撤退と朝鮮国家の再統一の基礎を構築するでしょう。

より幅広い歴史的見地からの休戦記念日

朝鮮に対してだけでなく、ワシントンの「アジア基軸」として、米国が中国とロシアに対して脅威を増大させていることを考えると、この記念式典は特に重要です。例えば、アフガニスタンとイラクの違法な占領、リビアとシリアに対する米・NATOの戦争、イランに対する軍事的脅威、イスラエルに対するパレスチナ人たちの長期にわたる闘い、サハラ以南での米国に支援された戦争と反乱は米軍の脅威の典型です。

1953年7月27日の休戦協定は、米国主導の戦争の歴史で重要な出来事です。1940年代に策定されたトルーマン・ドクトリンの下、朝鮮戦争(1950-1953)は、地球規模の軍事化プロセスと米国主導の戦争のお膳立てをしました。和平合意の観点からの「講和」は、ワシントンの「戦争屋」の行動計画とは直接的に対立するものです。

*

ワシントンは世界規模の軍事行動計画を策定しています。4つ星のウエスリー・クラーク元陸軍大将(退役)(写真右)は国防省高官の言葉を引用しています。

 「私たちは5年間で7か国を排除するだろう。イラクで始め、次にシリア、
  レバノン、リビア、ソマリア、スーダンそして最後にイランだ」1
  (デモクラシー・ナウ2007年3月2日)

朝鮮戦争(1950-1953)は、第2次世界大戦に続いて米国によって着手された最初の重要な軍事作戦でした。いわゆる遠回しに「冷戦」と呼ばれていたものの手始めとして始められたものでした。多くの点でそれは第2次世界大戦の継続でした。日本の植民地支配下にあった朝鮮の地は、日を追うごとに新植民地帝国アメリカ合衆国に譲り渡されました。

ポツダム会談(1945年7月~8月)で、米国とソ連は朝鮮を38度線で分割することに合意しました。

米軍が入ってきた後は、朝鮮の「解放」はありませんでした。全く逆でした。

過去を振り返ってみると、米国軍事政府が1945年9月8日に南朝鮮で創設されました。8月15日の日本の降伏の3週間後のことです。そのうえ、韓国における日本の役人たちは、この軍政移行を保証するために、ホッジ将軍に率いられたアメリカ軍政庁(USAMG)(1945-48)を助けました。ソウルの日本人の植民地統治者たちと韓国の警察官たちは、新しい植民地支配者と結託して働きました。

最初から米軍事政府は、「朝鮮人民共和国」*臨時政府の承認を拒否しました。「朝鮮人民共和国」は重要な社会改革に全力を上げていました。その改革には、土地の分配、労働者の権利を守る法律、最低賃金の立法制定、南北朝鮮の再統一が含まれていました。

    [*訳注 1945年9月6日、建国準備委員会は、全国各地の145の人民
    委員会と連携して、全国人民代表者大会を開き、「朝鮮人民共和国」の
    設立を宣言。主席は李承晩(イ・スンマン、副主)席は呂運亭(ヨ・ウニョン)だった
    が、当時米国に亡命中の李承晩の承認を得たものでなく、国内の活動家
    が勝手に李承晩の名前を使ったものであった。朝鮮共産党(後に南朝鮮
    労働党になる)の朴憲泳(パク・ホニョン)も政権に参加している左右の勢力
    の合作の政府であった。米国はこの政府を認めず、短命の幻の政府に
    終わった。出典:池上彰(2014)『そうだったのか!朝鮮半島』集英社 
    より要約]

「朝鮮人民共和国」は反植民地主義の非同盟国であり、次のことを要求していました。「米国、ソ連、英国、中国との緊密な関係を作ること、そして内政に干渉するいかなる外国の影響力にも絶対反対すること」。

「朝鮮人民共和国」は、アメリカ軍政庁によって1945年9月の軍事法令で廃止されました。民主主義、自由、独立はありませんでした。2

日本が敗北した帝国としての扱いを受けていた一方で、南朝鮮は植民地の領土と同一視され、米国の軍事的支配と米国の占領軍によって管理されていました。

*
米国の都合のいいように選ばれた李承晩(写真左)が、ダグラス・マッカーサー元帥の個人用飛行機で、1945年10月に米国からソウルに連れてこられました。

朝鮮戦争(1950-1953)

朝鮮戦争中とその後に、米軍によって朝鮮の人々に対して犯された犯罪は、現代史の中では先例のないものでした。

さらに、次のことを理解することが大切です。それは、1950年代に米国に支援をされ、米国によってなされたこれらの人類に対する犯罪は、何年にもわたって、世界の他の地域での「殺害モデル」となり、米国の人権侵害を定着させることになったのです。

朝鮮戦争はまた、政治的反体制活動家を標的にした暗殺を特徴としていました。それは、その後、インドネシア、ベトナム、アルジェンチン、グアテマラ、エルサルバドル、アフガニスタン、イラクを含む多くの国々で、CIAによって実行に移されました。

これらの反体制運動家を標的にした殺害は、いつもCIAの指図通りに行われ、米国に支援された傀儡政府や軍事独裁政権によって実行されました。より最近では、民間人を標的にした暗殺が米国議会で「合法化され」、いわゆる「新しい基準」となりました。

(朝鮮戦争の真っただ中の)1952年に初めて出版されたI・F・ストーンの『秘史朝鮮戦争』によれば、米国は意図的に偽りの行動の口実を探し、北側に38度線を超えさせるように駆り立て、ついには全面戦争に導きました。

    「(I・F・ストーンの本は)朝鮮戦争の起源に疑問を投げかけました。米国
    が国連を操り、米国軍部と韓国独裁国家が和平交渉の妨害工作を行っ
    て、戦争を引き出したと証言しまし*た」。3



ストーンの説明では、ダグラス・マッカーサー(写真左)は「平和を回避するためにあらゆる可能なことを行った」ということです。

米国の侵略戦争は、「自衛」を装った先制攻撃として行われます。マッカーサー元帥に関するI・F・ストーンの歴史的な陳述を真似て言うなら、60年後に米国大統領バラク・オバマと彼の国防長官のチャック・ヘーゲルも「平和を回避するためにあらゆる可能なことを行っています」。

敵に「先に発砲させる」ように駆り立てるこのお決まりのやり方は、米国軍事理論としてしっかり確立されています。それは「戦争の口実となる事件」を生み出すことです。それは「自衛」を根拠として、侵略者[米国]に軍事介入する口実を与えます。そのやり方は、1941日本によるハワイ真珠湾攻撃を特徴付けています。真珠湾攻撃は、策略と挑発によって引き起こされました。米国の当局者はその策略と挑発の知識を向上させていました。真珠湾は米国が第2次世界大戦への参戦を正当化するものでした。

1964年のトンキン湾事件は、米国が北ベトナムに戦争をしかける口実でした。その事件の後、米国議会によってトンキン湾決議の採択がありました。この決議はリンドン・B・ジョンソン大統領に共産主義国北ベトナムに戦争を仕掛ける権限を与えました。

I・F・ストーンの分析は、「標準的な話」に異議を唱えています。その標準的な話というのは、朝鮮戦争は北朝鮮が挑発されたわけでもないのに一方的に行なった攻撃で、1950年6月30日に始まり、朝鮮全体にソ連の影響を拡大するためにソ連の指示で行われたもので、完全に韓国、米国、国連を驚かせたものだったということです。

    しかしそれは予期しない驚きだったのでしょうか。少なくとも70両の戦車
    を使って7万人の兵士による同時に4つの異なった地点で開始された
    攻撃が、果たして予期しない驚きだったというのはあり得ることなので
    しょうか。

    ストーンは、韓国、米国、国連から出された報告書を集めます。
    その報告書は6月25日以前に認知されていたことを文書にし
    たものです。米国CIA長官のロスコ―・H・ヒレンロエッター准将
    がその報告書について述べたことが報告されています。「『今
    週か次の週に侵略があり得る状況が北朝鮮にある』ことに米
    国の情報機関は気付いていた」(p.2)と。ストーンは次のように
    書いています。「米国の一流の軍事コメンテーターで国防総省
    の信頼できる友人であるニューヨーク・タイムズ紙のハンソン
    ・ボールドウィンが報告したことは、それら(米国の軍事文書)
    は6月の初旬に38度線に沿って北朝鮮人民軍の際立った集
     結が始まっていることを示しているということでした。(p.4)

    どのようにして何故そんなに早く、トルーマン大統領は6月27日
    までに韓国で米軍に戦闘させることを決定したのでしょうか。
    ストーンが強く主張したのは、朝鮮での戦争とその結果として
    生じる東アジアの不安定化を、米国の国益として見ていた
    人々が米国政府と軍の中にいたということでした。4

フランスのヌーヴェル・オプセルヴァトワール[仏の報道週刊誌]の編集者クロード・ブルデによれば:

    「もしストーンの論文が現実に一致するならば、私たちは軍事史
    全体の最大の詐欺の前にいることになります。罪のない詐欺の
    問題ではなく、恐ろしい策略の問題です。その中では、和平が可
    能な時にそれを阻止するために、意識的に策略が利用されてい
    ます」。5

名高い米国人作家のレオ・ヒューバーマンとポール・スウィージーの言葉では:

    「私たちが達した結論は、(韓国大統領)李承晩は意図的に北朝
    鮮人たちを挑発したということです。北朝鮮人たちが大挙して
    38度線を超えて報復することを李承晩は願っていました。北側
    の人たちは、巧妙に罠にはまりました」。6

1950年6月25日、国連安全保障理事会決議82採択の後、占領国日本で米軍を率いていたダグラス・マッカーサー元帥が、いわゆる国連軍総司令官(UNCOM)に任命されました。ブルース・カミングズによれば、朝鮮戦争は「第2次世界大戦中の帝国日本に対する航空戦と強い類似性がありました。そしてしばしば同じ米軍の指導者たちによって指揮されました」。その中にはダグラス・マッカーサーやカーチス・ルメイ将軍がいました。

朝鮮の人々に対する米国の戦争犯罪

大規模な戦争犯罪が、朝鮮戦争(1950-1953)の最中に米軍によって犯されました。核兵器は朝鮮戦争中に使われませんでしたが、「民間人の大量殺害」戦略が広く行われました。これは第2次世界大戦中に考案されたものでした。罪のない民間人の殺害政策は、第2次世界大戦の最後の数週間に米軍と英軍によってドイツの都市への大規模な空襲と空爆で実行されました。辛辣な皮肉ですが、軍事的標的は保護されました。

軍事的目標を標的とする口実の下で民間人を殺害するこの非公式の政策は、朝鮮戦争の最中に、そしてその後の戦争でも米国の軍事行動を大きく特徴づけるものとなりました。ブルース・カミングズによれば:

*

    1950年8月12日、米軍は北朝鮮に625トンの爆弾を投下しました。2週間
    後、毎日の投下トン数は約800トンにまで増加しました。米国の戦闘機は
    第2次世界大戦の太平洋での作戦よりも多くのナパーム弾や爆弾を投下
    しました。7
  
38度線より北の領土は、大規模な絨毯爆撃にさらされました。その結果、78の都市と数千の村が破壊されました。

    それ(1950年―53年の朝鮮戦争)について消し去ることができないことは、
    北朝鮮に対する米国の空爆の異常な破壊性でした広範囲にわたる。
    継続的な焼夷弾攻撃(主にナパーム弾による)から、核兵器と化学
    兵器を使うという脅し、そして戦争の最終階では巨大な北朝鮮段
    のダムの破壊までありました。その結果、北朝鮮のほとんどすべての
    頑丈な建物が破壊されました。8
  
米国のウィリアム・F・ディーン少将は「彼が見た北朝鮮の都市と村のほとんどは、がれきか雪におおわれた荒
れ地だったと報告しました」。北朝鮮に対する爆撃を調整したカーチス・ルメイ将軍は、あつかましくも次のよ
うに認めました:

    3年かそこらにわたり、私たちは人口のなんと20%を全滅させました……
    私たちは北朝鮮そして南朝鮮のすべての町を焼き尽くしました。9
   
ブライアン・ウィルソンによれば:

    いま信じられていることは、38度線の北側の人々は、1950年から1953年
    の37カ月の長い「熱い」戦争で、800万人から900万の人口のほとんど
    3分の1を失いました。交戦が原因で一つの国が被った死亡率では、
    おそらく前例のないパーセンテージです。10
   
また朝鮮真実和解委員会によって文書で記録されているように、韓国の米軍によって広範囲に及ぶ戦争犯罪がなされました。韓国の情報源によれば、朝鮮戦争の最中に韓国でほとんど100万人の民間人が殺害されました。

    「朝鮮戦争の初期、米国の当局者は監視していて、写真を撮り、彼らの韓国
    の同盟者による大規模な処刑について密かに報告をしました。内密の大量
    虐殺は、1950年半ばの数週間の内に、通常、告訴も裁判もなしで、10万人
    あるいはそれ以上の左翼の人々とその同調者と思われる人々を殺害した
    と考えられています」*。11

    [* 訳注 (上記は補導連盟事件のことを述べていると思われるので、その
    事件について注を加える) 朝鮮戦争の中でも一番の悲劇は、保導連盟
    事件だった。保導連盟とは、韓国が建国された後、共産主義からの転向者
    やその家族を再教育するために設立された国民保導連盟のことである。
    この連盟に登録すれば、共産主義者として処罰されないことになっていた。
    しかし、朝鮮戦争が勃発すると、彼らは潜在的な敵とみなされ、李承晩の
    命令により各地で多数の連盟員が虐殺された。ソウルを占領した北朝鮮
    軍にとっても、保導連盟員は韓国側に協力した存在となり、やはり処刑の
    対象になった。犠牲者の数は20万人から120万人と言われている。
    出典:池上彰(2014)『そうだったのか!朝鮮半島』集英社より要約]
 
第2次世界大戦中に、英国はその人口の0.94%を失い、フランスは1.35%を失い、中国は1.89%を失い、米国は0.32%を失いました。朝鮮戦争の時には、朝鮮民主主義人民共和国は人口の25%以上を失いました。北朝鮮の人口は、朝鮮戦争の前の1950年には約800万から900万人でした。米国の情報源は北朝鮮で155万人の民間人が死亡、215,000人の戦闘で死亡したことを認めています。行方不明兵と戦争捕虜が120,000人、戦闘部隊の負傷者が300,000人でした。12

韓国の軍事情報は、民間人の死者、負傷者、行方不明者の数を250万人と見積もっています。そのうち、およそ990,900人は韓国内の人々です。別の見積もりでは、民間人と戦闘員の朝鮮戦争での死亡者数を350万人としています。

北朝鮮は世界の安全への脅威か?

過去60年間、ワシントンは北朝鮮の政治的孤立の原因の一つとなってきました。ワシントンは、北朝鮮の産業基盤と農業を含む国家経済を不安定化しようとしてきました。ワシントンは、朝鮮国家の再統一の過程を絶えず阻止してきました。

韓国では、米国は政治制度全体にその締め付けを維持してきました。その締め付けは、李承晩の最初の任命から、政府の非民主的で抑圧的な形態を維持してきました。その政府の形態は、大部分が米国の利益に役に立ってきました。

米軍の駐留は、韓国の経済・金融政策に支配的な影響を及ぼしました。

    米国人にとっての重要な質問。米国の侵略の結果、人口の4分の1を失った
    国がどのように米国本土に脅威となるのでしょうか。

そのすぐ近くの国境に37,000人の米軍がいる国が、どのように米国の脅威となり得るのでしょうか。

戦争犯罪の歴史を考えると、北朝鮮の人々は彼らの祖国への米国の脅威をどのようにとらえているのでしょうか。朝鮮戦争で愛する人を失っていない北朝鮮の家族は一家族もありません。

朝鮮戦争は、第2次世界大戦に続いてすぐに行われた米国主導の最初の重要な戦争でした。

米国とNATOの同盟国は、遠回しに「戦後」と呼ばれる途上で、世界の主要な地域で数多くの戦争と軍事介入を行ってきました。その結果、何百万人もの民間人が死亡しましたが、米国は民主主義と世界の平和の守護者として擁護されました。

戦争のプロパガンダ

嘘が真実になる。

現実が逆さまにされる。

歴史が書き換えられます。北朝鮮は脅威として喧伝される。

米国は侵略国家ではなく、侵略の「犠牲者」だ。

これらの概念は、ニュースのネットワークに流される戦争のプロパガンダの一部です。

朝鮮戦争が終わって以来、韓国のニュース・ネットワークに注ぎ込まれた米国主導のプロパガンダは、朝鮮民主主義人民共和国を韓国の安全への脅威として示すことによって、南北朝鮮間の紛争と不和を煽ることに絶えず貢献してきました。

恐怖と威嚇の雰囲気が広がり、韓国の人々に米国の「和平の役割」を受け入れさせます。世論の目から見れば、37,000人の米国の占領軍の駐留は韓国の安全にとっては「必要なもの」としてみなされています。

米軍の駐留は、北朝鮮の侵略に対して「韓国を守る」手段として告知されています。同様に、そのプロパガンダのキャンペーンは、米国の干渉主義の正当性を維持する目的で、韓国社会の分裂を生み出そうとするでしょう。この一連の行為の目的は不和を生み出すことです。うんざりするほど繰り返される「北朝鮮の脅威」は、朝鮮はひとつの国であり、ひとつの国家であり、ひとつの歴史であるという考えを、人々の内面の意識の中で、弱体化します。

「トルーマン・ドクトリン」

歴史的に第2次世界大戦の後に、1948年の国務省の簡単な説明の中で、外交政策顧問のジョージ・F・ケナンによって考案されたトルーマン・ドクトリンが、米国の拡張主義の冷戦の骨組みを確立しました:

この1948年の文書が言っていることは、冷戦時代の「封じ込め」から「先制攻撃」の戦争までの米国外交政策の継続性です。それは丁寧な言葉で、米国は軍事手段を通じて経済的かつ戦略的支配を模索すべきだと述べています。

    そのうえ、私たちは世界の富のおよそ50%を所有していますが、その人
    口は6.3%にすぎません。この不均衡は、私たちとアジアの人々の間で特
    に大きいです。この状況では、私たちは必ず恨みや憤りの対象となるでしょ
    う。来るべき時期における私たちの仕事は、国の安全保障に実害を受け
    ることなく、この不均衡の地位を維持してくれる関係パターンを考案するこ
    とです。そうするために、私たちは感傷主義と空想は捨てねばなりません。
    そして、私たちの注意は、あらゆるところで我が国の直接の目的に集中
    日させなければなりません。私たちは今、利他主義と世界への善行の贅沢
    をする余裕があると言って、私たち自らを欺く必要はありません。(…)

    この状況では、極東に関する私たちの考えを明確に示してきた多くの概念を
    いま放棄した方がいいだろう。私たちは、好かれるとか気高い国際的利他
    主義の信頼できる人としてみなされたいという強い願望を放棄すべきです。
    私たちは、兄弟に対して責任を負う者[聖書の『創世記』に由来する表現]の
    立場に自らを置くことを止めなければなりません。そして、道徳的イデオロ
    ギー的アドバイスをすることをやめなければなりません。私たちは、人権、
    生活水準の向上、民主化というような、極東にとってあいまいで非現実的な
    目標について話すことをやめねばなりません。私たちが直接の支配権の概
    念について扱わなければならない日はそんなに遠くではありません。私たち
    が理想主義的なスローガンによって邪魔されることが少なければ少ないほ
    どよいでしょう。13

影響力のある独立した国際機関としての国連システムを崩壊させる計画は、1946年に国連が始まって以来、米国の外交政策の計画段階にありました。その計画された崩壊は、1946年に定義されたように、トルーマン・ドクトリンの不可欠の部分でした。国連が始まった時から、ワシントンは自分たちの有利になるように国連を支配しようとする一方、国連システムを弱体化させ、最後には破壊しようとしてきました。

ジョージ・ケナンの言葉では:

    「時々、国連は有用な目的を果たしてきました。しかし、概して解決よりも
    多くの問題を生み出しました。そして、私たちの外交努力をかなり拡散する
    ことにつながってきた。そして、重要な政治目的のために国連の多数派を
    利用する努力をする中で、いつの日にか私たちに敵対するかもしれない
    危険な武器と私たちは戯れている。これは、非常に注意深い研究と配慮が
    私たちの側に必要な状況である。」

ワシントンは「国際社会」に公式に関わってきたけれども、国連にはかなりリップサービスをしてきました。近年、ワシントンは機関としての国連を卑劣な手段で攻撃してきました。第一次湾岸戦争以来、国連は主にゴム印[形式的に承認する人]として振る舞ってきました。国連は米国の戦争犯罪に目をつむってきました。国連は国連憲章に違反をして、アングロサクソン系の米国人の侵略者を代表して、平和維持活動を行ってきました。

韓国と東アジアに適用されたトルーマン・ドクトリン

トルーマン・ドクトリンは、第2次世界大戦後の米国軍事戦略の頂点にあたるものでした。それは、1945年8月の広島と長崎への原爆投下と日本の降伏で始まりました。(ハリー・トルーマン、左)

*

東アジアでは、韓国を含む日本の植民地帝国を米国が奪い取ることだけでなく、戦後の日本の占領の中に、トルーマン・ドクトリンが存在しました。(朝鮮は1910年の日韓併合条約の下、日本に併合されました。)

第2次世界大戦での帝国日本の敗北に続き、東アジアと東南アジアの米国の勢力範囲が、日本の「大東亜共栄圏」の地域で確立されました。

米国の勢力範囲には、フィリピン(第2次大戦中に日本によって占領された米国の占有地)、タイ(第2次大戦中、日本の保護領)、インドネシア(第2次大戦中に日本に占領され、1965年のスハルトの軍事独裁政権が確立後、米国の代理国家となる)が含まれていました。このアジアでの米国の勢力圏は、その支配をフランスの元植民地インドシナの所有地に広げました。これには第2次大戦中に日本の軍事占領下にあったベトナム、ラオス、カンボジアが含まれていました。

米国のアジアでの支配権は、主に日本、フランス、オランダの植民地の管轄下にあった国々で勢力圏を確立することに基づいていました。

連続性:トルーマン・ドクトリンからネオコンまで

ブッシュ政権下でのネオコンの政策は、(二大政党の)「戦後」外交政策の枠組みの全盛期として見るべきです。その政策は、現在の戦争と残虐行為計画に基づいていて、それには拷問部屋と強制収容所の設立、そして禁止されている民間人への広範な武器使用が含まれます。

朝鮮、ベトナム、アフガニスタンでの戦争からラテン・アメリカ、東南アジアでのCIAの支援を受けた軍事クーデターまで、その目的は米国の軍事支配と世界経済支配を確保することでした。その目的は「トルーマン・ドクトリン」の下、最初に策定されたものです。60年以上の期間にわたって、ハリー・トルーマンからバラク・オバマまで、著しく政策が違っているにもかかわらず、この世界軍事政策を実行してきました。

米国の戦争犯罪と残虐行為

私たちが論じているのは、犯罪的な米国の外交政策です。犯罪は国の一人あるいは大勢の指導者に付随しているものではありません。それは国家政策全体に付随しているものです。それは、様々な民間機関や軍事機関であり、それと同様に米国の外交政策形成の背後にある強力な企業利益であり、ワシントンのシンクタンクであり、軍事機構に融資をする債権機関です。

この期間は、1950年の朝鮮戦争を初めとして、中東や中央アジアでの戦争に及ぶまで、広範囲に及ぶ戦争犯罪によって特徴づけられます。その結果、1,000万人以上の人々が死んでいます。この数字は、貧困や飢餓や病気で死んだ人々は含まれていません。

戦争犯罪は、米国そして外交政策の組織犯罪の結果です。私たちは単に個々の戦争の犯罪者を論じているのではなく、いろんなレベルの政策立案者たち巻き込んで、戦争犯罪を命令する過程を論じているのです。そこではみな確立された指針とやり方に従っています。

米国の財政的支援を受けた犯罪と残虐行為の歴史的記録に関して、ブッシュ政権とオバマ政権を際立たせているものは、強制収容所、標的を絞った暗殺、拷問部屋が公然と軍事介入の合法形態であると考えられていることです。それが「世界的な対テロ戦争」や欧米流の民主主義の流布を維持しているのです。

朝鮮戦争の歴史的重要性:米国の世界戦争計画

朝鮮戦争はその後に続いた米国の軍事介入のお膳立てをしました。朝鮮戦争は第2次世界大戦後の「軍事的ロードマップ」の最初の手始めでした。半世紀に及ぶ、米国主導の戦争、特殊作戦、クーデター、秘密作戦、米国に支援された反政府運動と政権転覆の「軍事的ロードマップ」です。主権を有する政府を倒すことに力を注ぐCIAの秘密作戦は言うに及ばず、世界戦争の計画が、米国の軍部の地域的指揮系統を通じて、世界の重要な地域で実行されてきました。

この世界的な征服の計画は最初、いわゆる「トルーマン・ドクトリン」の下で確立されました。「トルーマン・ドクトリン」は、国防総省が後に(冷戦のあとネオコンの下で)名付けた米国の「長い戦争」を始めました。

私たちが論じていることは、世界戦争、世界的な征服の過程、軍事化と企業の拡張主義です。企業の拡張主義が推進力です。「経済的征服」が、情報作戦と軍事作戦を伴って実行に移されます。財政的・金融不安定化が主権国家に向けられた経済的戦争の別のメカニズムです。

ジョージ・W・ブッシュの大統領選挙に先行する2,000年に、ワシントンのネオコンのシンクタンクである「アメリカ新世紀プロジェクト」(PNAC)が、米国軍部のための4つの中心任務を規定しました。

   ・米国本土を防衛すること
   ・複数の、同時に起きている主戦場で、決定的な勝利をおさめること
   ・危機的な地域における安全保障環境を作るために「警官」の役割を果たす
    こと
   ・「軍事革命(ハイテク化された軍事技術)」をして、米軍を変革すること

ジョージ・W・ブッシュの国防副長官ポール・ウォルフォイツ、国防長官ドナルド・ラムズフェルド、副大統領ディック・チェイニーは、2,000年大統領選挙に先立って「アメリカ新世紀プロジェクト」(PNAC)に青写真の作成を委託しました。

「アメリカ新世紀プロジェクト」(PNAC)は、征服のロードマップを概説する。

それは、中央アジアと中東の至るところに米国の「前進基地」を直接配置することを要求している。「その目的は、米国の世界の経済的支配を保証するために、いかなる潜在的な『競争相手』も押さえつけ、米国の『自由市場』経済のいかなる代替手段も抑圧することだった」。

戦場と違って、いわゆる「警察機能」は世界の軍事的治安維持を意味しています。それは、懲罰的爆撃と米国特殊部隊の派遣などを含む、様々な軍事介入の手段を使います。「警察機能」はイランに対する米国の戦争計画の最初の局面で考えられました。それらは、いわゆる戦場に「代わるもの」として採用される特殊な軍事介入と確認されました。

この文書には見せかけはありません。その目的は厳密に軍事的なものです。平和維持や民主主義の普及における米国の役割の議論はありません。15 主なPNACの文書は、「新しい世紀のための、米国の防衛、戦術、軍隊、資源の再建」という表題がつけられています。(PNACのウエッブサイトhttp://www.newamericancentury.org)

米軍による韓国占領は東アジアの軍事化

ワシントンは、韓国と北朝鮮だけでなく、北朝鮮と中国の間にも政治的分裂を作り出すことに熱中しています。その目的は最終的に北朝鮮を孤立化させることです。辛辣な皮肉ですが、韓国の米軍施設は軍事的包囲過程の一環として中国を脅すために使われています。同様に、ワシントンは国家間の政治的分裂を作ろうとすると同時に、隣国間での戦争を煽ってきました。(例えば、1980年代のイランーイラク戦争、インドとパキスタンの間の対立)

国連司令部の委任(UNC)

60年後、偽りの国連命令で、米軍による韓国軍事占領が広く行われています。言っておく価値があることは、国連は正式に国連軍司令部を創設したことは決してなかったことです。国連安全保障理事会による正式な決定なしに、米国によってその司令部は作られました。1994年、国連事務局長ブトロス・ガリは北朝鮮外務大臣への書簡の中で次のことを明らかにしました。「安全保障理事会は、その管理下の補助機関として統合軍を設立したことはなく、そのような統括部隊の創設を勧告(1950年)し、その部隊は国連の権限下にあるべきだと明記しただけです」。

米韓合同軍司令部(CFC)

韓国は今もなお米軍の軍事占領下にあります。朝鮮戦争と休戦協定の署名に続いて、韓国軍はいわゆる国連軍司令部の管轄下に置かれました。この配置は、韓国軍のすべての部隊が事実上米国の指揮官の支配下にあることを意味しました。1978年、米国の将軍が代表を務める米韓二国間の合同司令部が創設されました。実質的に、これはいわゆる国連司令部に関してのレッテルの変更でした。今日まで韓国軍は米国の将軍の指揮下にあります。

  米国が韓国軍の戦時作戦統制権を2015年に韓国に返還する時、米韓合
    同司令部はもともと廃止されることになっていましたが、これは韓国の防衛
    を弱体化する可能性があるという恐れがここにきて出てきました。この気持
    ちの変化は、北朝鮮のますます増加する好戦的な言辞の中で出てきました。

    朴槿恵は、状況説明会の時に軍の高官たちに、北朝鮮のいかなる挑発に
    対しても「即座の強力な反撃」を加えるよう述べました。北朝鮮の脅威は
    「かなり深刻である」と彼女は考えていると言いました。そして付け加えま
    した。「国民や我が国に対する挑発があったら、いかなる政治的考慮も
    せず、軍は迅速に強力に反応すべきである」。16

在韓米軍(USFK)

1957年、在韓米軍(USFK)が創設されました。それは「米国太平洋軍に従属する統合軍」と記されています。それは、ロシアと中国を含むその地域の第三国を攻撃するために配備できるものでした。米国防省の最近の数字では、韓国に現在(2013年4月)、在韓米軍の下に37,000人の米軍部隊が駐留していることを確認できます。

米軍によって統合されている在韓米軍は、1978年に創設された米韓合同軍司令部(CFC)とは違うものでした。米韓合同司令部は、米陸軍大将と副司令官である韓国陸軍大将によって指揮されています。(United States Forces Korea | Mission of the ROK/US Combined Forces Command参照)

現在の在韓米軍司令官は、ジェイムズ・D・サーマン大将です。彼はまた米韓合同司令部の指揮官と国連司令部の指揮官を引き受けています。(United States Forces Korea | USFK Leadership参照)

国防省から命令を受けているサーマン将軍は、韓国の大統領、最高司令官である朴槿恵より優位に立っています。

理論上は韓国の指揮下にある韓国軍(陸軍、海軍、空軍)の通常の兵士は、60万人以上の現役兵と200万人以上の予備兵から成り立っています。しかし、米韓合同軍司令部の条項によれば、これらの部隊は事実上、米国の大将が代表を務めている米韓合同軍司令部の指揮権下にあります。

このことが意味していることは、在韓米軍37,000人に加えて、事実上、米国の指揮系統が韓国軍の全実戦部隊に対する管理権を持っているということです。本質的に、韓国はその国軍を統制していないということです。韓国軍は本質的には外国の利益に奉仕しています。

毎年、米韓は北朝鮮に向けられた軍事演習を行っています。これらの軍事演習は、北朝鮮への通常攻撃と核攻撃のシミュレーションを行い、休戦協定と重なる7月下旬にしばしば行われます。

一方、韓国の西海岸と済州島の米軍基地が、軍事的包囲の過程の一環として中国に脅威を与えるために使用されます。米韓合同軍司令部の米韓合意から、米国指揮下の韓国軍が、その地域の米国軍事作戦と連携して配備されます。その軍事作戦は、在韓米軍 (USFK)や米国太平洋軍(USPACOM)と活発に連携しています。

韓国は米国武器産業にとって数十億の大鉱脈です。過去4年間の間に、韓国は世界で4番目に大きな武器輸入国で、「米国がその武器購入の77%を占めています。注目すべきことは、これらの武器は韓国の納税者のウォンで購入され、事実上米軍の管理下にあることです。その米軍は、米国の司令官が代表を務めている米韓合同軍事司令部の統合部隊であることは明らかです。

最近の進展の中で、韓国大統領は北朝鮮への先制攻撃の可能性をほのめかしました。


    ロンドン・テレグラフによれば、朴槿恵は以下のように述べました。「国軍の
    最高司令官として、私は北朝鮮による突発的な挑発について軍の判断を
    信頼するでしょう。それは北と直接対決するものだからです。全く動転せず
    に人々の安全を守る義務を果たしてください」。

    朴槿恵の国防相はまた、平壌に対する積極的な「抑止政策」を約束し、ソウル
    は北朝鮮の核とミサイル基地への先制攻撃を考慮していると提起したようで
    した。19

朝鮮の核問題。誰が誰を脅しているのか?

歴史的背景:広島と長崎:1945年8月6日、 8月9日

マンハッタン計画の下での初期の米国核兵器政策は、「抑止」と「相互確証破壊」 (MAD) *という冷戦の考えに基づいていたわけではありません。

    [* 訳注 米ソ冷戦時代(1960年代)に提唱された核抑止
    理論。米ソ両国が、自国の核戦力の非脆弱性(相手の攻撃
    に対する残存能力)を向上させて相手の先制攻撃から自国
    の核戦力の一部が必ず生き残るようにし、報復攻撃で相手
    を確実に破壊できる第二撃能力を確保することによって、核
    攻撃を相互に抑止することができるとするもの。出典:Weblio
    辞書/提供外務省]

朝鮮に関連する米国の核政策は、1945年に広島と長崎への原爆投下に続いて確立されました。この原爆投下は主に民間人に向けられたものでした。


その戦術的目的は、「大量の死傷者を出す事件」を引き起こすことでした。その結果数万人が死亡するはずでした。その目的は軍事的征服の手段として国全体を威嚇することでした。軍事的な標的は主な目的ではありませんでした。「巻き添えの被害」という見解が民間人の大量殺害の正当化として使われました。広島は「軍事基地」で民間人は標的ではないという公式の口実の下で行われました。

ハリー・トルーマン大統領の言葉では:

    「私たちは世界史の中で最もおそろしい爆弾を発見した。この兵器は日本
    に対して使われることになっている。私たちはそれを使うことになる。軍事
    的標的、兵士たち、水夫たちが標的であり、女性や子どもたちは標的
    ではない。たとえジャップたちが野蛮人で冷酷で無情で狂信的であっても、
    公共の福祉のための世界のリーダーとして私たちはその恐ろしい爆弾を
    古都や新しい首都に落とすことはできない。…標的は純粋に軍事的なもの
    となるだろう。…それはこれまで発見されたなかで最も恐ろしいもののよう
    だが、最も役に立つものになり得る」。20(ハリー・S・トルーマンの1945年
    7月25日の日記)
  
    「最初の原子爆弾が広島の軍事基地に投下されたことに世界は気づくだ
    ろう。それは、最初の攻撃で出来る限り民間人の殺害を避けることを望ん
    だからだ」。
    (1945年8月9日のハリー・S・トルーマン大統領の国民へのラジオ演説)
  
    (注:最初の原爆は広島に8月6日に落とされました。2番目の原爆は8月
    9日に長崎に落とされました。トルーマンの国民へのラジオ演説と同じ日
    でした。)
    
米国政府と軍の高官たちは、広島が軍事基地だと誰も信じていませんでした。トルーマンは自分自身にも米国民にも嘘を言っていました。今日に至るまで、日本への核兵器の使用は、戦争を終わらせ、最終的には「人命を救う」ために必要な犠牲であったとして正当化されています。

広島ドクトリンが朝鮮に適用される:韓国に貯蔵され、配備される米国の核兵器

朝鮮戦争の時、米国は北朝鮮への核兵器の使用を予想していました。1950年6月の朝鮮戦争の開始の10カ月前、ソ連が1949年8月29日に最初の原爆のテストを行ったしばらく後のことでした。必然的にソ連による原爆の所有は、朝鮮戦争の最中には米国による核兵器の使用に対する抑止力として働きました。

朝鮮戦争のすぐに後に、北朝鮮に関する米国の核兵器政策に転換がありました。核兵器の使用は、中国とソ連を含む冷戦の核保有国は介入をしないだろうという前提があったので、北朝鮮に対しては先制攻撃の原則で考えられていました。

朝鮮戦争が終わってからわずか2・3年後、米国は韓国での核弾頭の配備を始めました。議政府(ウィジョンブ)と安養市(あにゃんし)でのこの配備は、1956年には構想されていました。

米国が核弾頭を韓国に持ち込む決定をしたことは、休戦協定の第13項(d)のあからさまな違反であることを述べておかなければなりません。休戦協定では、交戦中の両派が朝鮮に新しい兵器を導入することを禁止していました。

実際の核弾頭の配備は、1958年の1月に始まりました。朝鮮戦争が終わってから4年半後のことです。「5つの核システムの導入がありました。オネスト・ジョン地対地ミサイル、マタドール巡航ミサイル、核爆破資材(ADM)核地雷、280mmカノン砲、8インチ(203mm)榴弾砲」。21(核情報:朝鮮での米国核兵器 参照)

    デイビー・クロケット自走ミサイル[戦術核兵器]は韓国に1962年7月から
    1968年7月の間に配備されました。その核弾頭は最大0.25キロまでの
    選択的核威力を持っていました。その自走ミサイルはわずか34.5キロ
    (76ポンド)の重さでした。戦闘爆撃用の核爆弾は1958年3月に到着しまし
    た。その後1960年7月から1963年9月の間に、3つの地対地ミサイル(ラク
    ロス、デイビー・クロケット、サージェント)が続きました。対空そして地対地
    の二つの任務を持つナイキミサイルが、1961年1月に到着しました。そして
    最後に155ミリ榴弾砲が1964年10月に到着しました。増強のピーク時
    には、950近くの核弾頭が韓国に配備されました。


オネスト・ジョンデイビー・クロケットナイキ・ハーキュリーズ

[写真はウイッキペディアから]

4つのタイプの武器は数年だけ配備されましたが、他のタイプは数十年間、
    配備されたままでした。8インチ榴弾砲は1991年暮れまで配備され、それは
    韓国で米国の核兵器配備の33年間ずっと配備された唯一の兵器でした。
    最後まであった他の兵器は、空中散布式の爆弾(B61核爆弾を最後に、
    いくつかの違ったタイプの爆弾が何年にもわたって配備された)と155ミリ
    榴弾砲核砲弾でした。22

公式には米国の韓国での核兵器の配備は33年間続きました。その配備は中国とソ連と同じように北朝鮮も標的にしていました。

韓国の核兵器プログラム

米国による韓国での核弾頭配備と同時期に、かつそれと連携して、韓国は1970年代初頭に自分自身の核兵器プログラムを始めていました。表向きの話では、米国はソウルにその核兵器プログラムを放棄させ、核分裂物質を生産する前の1975年4月に「核不拡散条約(NPT)に署名をさせるよう圧力をかけた」ということです。23

実際に韓国の核の構想は、米国の監視のもとで最初1970年代の初頭からありました。そして北朝鮮を脅すために米国の核兵器の配備の構成部分として進展していました。

その上、このプログラムは1978年に公式には終わっていたのに、米国は科学的専門知識そして核兵器使用の韓国軍人の訓練を促進していました。そして留意すべきことは、米韓合同軍司令部の合意の下、韓国のすべての作戦部隊は米軍司令官を長とする統合部隊の下にあるということです。つまり、韓国の軍部によって設立された軍事施設と基地は事実上共同施設であるということを意味します。韓国には全部で27の軍事施設があります。24

韓国からの核兵器の公式の撤去

軍事情報筋によりますと、韓国からの核兵器の撤去は1970年代の中頃に始められました。

    鳥山(オサン)空軍基地の核兵器貯蔵場所は、1977年暮れに稼働が取り止
    めになりました。この縮小はその後何年もの間続き、韓国の核兵器の数
    は1976年のおよそ540発から1985年のおよそ150発の砲弾と爆弾に減少
    しました。1991年の大統領の核イニシャティブの時までに、およそ100の
    核弾頭が残っていましたが、そのすべてが1991年12月に引き上げられ
    ました。25

公式声明によれば、米国は1991年12月に韓国の核兵器を引き上げました。

米国本土と米国潜水艦からの北朝鮮に対する核攻撃計画

この韓国からの核兵器撤去は、北朝鮮に向けられた核戦争の脅威を決して修正するものではありませんでした。それどころかそれは核弾頭の配備に関する米国の軍事戦略の変化に関係していました。北朝鮮の大都市は、韓国の軍事施設からより、むしろ米国本土からと弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)から核弾頭の標的となりました:

    1991年12月の韓国からの(米国)核兵器の引き上げの後に、シーモア・ジョ
    ンソン空軍基地の第4戦闘航空団が北朝鮮に対する核攻撃計画の任務を
    負わされまし た。それ以来、非戦略核兵器での北朝鮮に対する攻撃計
    画は、米国本土の戦闘機の任務となってきました。これらのひとつが北
    カリフォルニアのシーモア・ジョンソン空軍基地の第4戦闘航空団です。

    「私たちは朝鮮シナリオを使って朝鮮での戦争のシミュレーションをしま
    そした。… のシナリオは、…核兵器使用を考慮した国家司令上層部
    による決定をシミュレーションしました。… 私たちは戦術核兵器を航空機
    に搭載するために、航空機、乗組員、(兵器を)積み込む人員を確認しま
    した。…

    15分以内に標的への攻撃能力をもつトライデントD5潜水艦発射弾道ミサ
    イルは、在韓米軍のための「基幹システム」です。弾道ミサイル潜水艦
    と長距離爆撃機からの攻撃です。

    非戦略空中散布式爆弾に加えて、太平洋をパトロールしているオハイオ
    ・クラスの戦略潜水艦に搭載された弾道弾ミサイルが、北朝鮮に対する
    任務も持っているようです。1998年からのドッド監察官の報告は、トライデ
    ント・システムを「基幹システム」としてリストアップしました。そのシステム
    は、米国太平洋軍と在韓米軍によって、「彼らにとって特に重要なもの」
     として見なされています。

    トライデント・システムの主な任務はロシアと中国の標的に対して向けら
    れていましたが、低い弾道のD5ミサイルは、北朝鮮の緊急を要する標的
    に対して、素早く(12-13分)攻撃する特別な能力をもっています。他の
    米国の核兵器システムは、そんなに早く弾頭を目標に向けることはでき
    ません。2、3隻の弾道ミサイル搭載原子力潜水艦は、いつでも太平洋で
    「厳戒態勢」にあります。その潜水艦は、指定されたパトロール地域から、
    ロシア、中国、北朝鮮を警戒しています。


    長距離戦術爆撃機は北朝鮮に対する核攻撃の役割を割り当てられて
    いるかもしれません。しかし詳細はほとんど分かっていません。空軍の
    地図は、北朝鮮へのB2爆撃機の攻撃の役割を提案しています。地面を
    貫通するB61-11核爆弾の指定された運搬装置として、B2爆撃機は
    に北朝鮮で深く埋められた地下施設対する潜在的な核攻撃の任務の
    ための強力な候補です。

B61-11地中貫通型核爆弾(爆発能力は広島型爆弾の3分の1から6倍)、そしてロバスト地中貫通型核爆弾用の運搬装置としてB2ステルス爆撃機は、北朝鮮の標的に対する重要な役割を担っている。最近の新たな性能向上で、8時間以内にB2爆撃機の核攻撃準備を可能にしています。26

    公式には米国の韓国での核兵器の配備は、33年間続いたということで
    すが、多くの核弾頭が韓国に今もなお貯蔵されている証拠があります。

    「当時の韓国政府は核兵器の撤去を正式に発表してきましたが、米国の
    陳述はそれほど明確ではありませんでした。その結果長い間、特に南北
    朝鮮で、韓国に核兵器が残っているという噂が根強く残っていました。
    しかし、1991年の太平洋軍総司令部の機密解除された部分で、核兵器
    撤去については1998年に太平洋軍によって正式に発表されました」。27
    (核情報プロジェクト:韓国からの米国の核兵器の撤去)

最近の報告は、北朝鮮に対して先制攻撃用の核兵器が、韓国に貯蔵されていることをほのめかしています。そのような行為は北朝鮮全体を強烈な核放射線地域にすることになることはよく理解されていることです。

ブッシュ政権の2001年の核戦略見直し:核先制攻撃

ブッシュ政権は、2001年の核戦略見直しで、9.11後の新しい「先制攻撃」核戦争ドクトリンの概要を確立しました。つまり、それは非核保有国に対して「自衛」の道具として核兵器が使えるというものでした。

北朝鮮に向けられた「米国の核攻撃能力の必要性」が、ネブラスカ州オマハの米国戦略軍司令部で世界的な攻撃任務の一部として確立されました。いわゆるCONPLAN8022です。この計画は、中国やロシアだけでなく北朝鮮も含む多くの「ならず者国家」に対して向けられたものでした。

    2005年11月18日、北朝鮮を含む核戦争演習テストの成功後、新しい
    宇宙地球攻撃統括部隊(Space and Global Strike command)がアメ
    リカ戦略軍(STRATCOM)で始動しました。朝鮮に対する現在の米核
    攻撃計画は、3つの役割を果たすようです:第一は戦争行為に前に、
    北朝鮮の行動に影響を与えることを目的とする、伝統的な戦争抑止
     という曖昧に定義されたものです。

    この役割は2001年の核戦略見直しによって、戦争抑止だけでなく、北朝
    鮮に大量破壊兵器追求をやめさせるまで幾分広げられました。

    北朝鮮が50年間核兵器と対決してきた後に、どうして核兵器能力を増加
    させることで北朝鮮が大量破壊兵器(核兵器プログラム)追求を思いとど
    まると、ブッシュが信じたのか、それは謎です。28

核戦争の脅威:北朝鮮対米国

西側のメディアは口をそろえて北朝鮮の核の脅威に焦点を合わせますが、朝鮮の歴史を見直す時、重要なことは核能力が非対照的なことです。

半世紀以上にわたって、米国が核兵器で北朝鮮を脅してきた事実は、西側メディアによってほとんど認識されていません。

どこに脅威があるのでしょうか。

米国と北朝鮮の間の核兵器能力の非対称性は強調されなければなりません。

Arms Control.org[軍縮](2013年4月)によれば、米国は

    「5,113の核弾頭を所有しています。それには、戦術核兵器、戦略核兵器、
    未配備の核兵器が含まれています」。最近の新しい戦略兵器削減交渉(
    START)の声明によれば、米国は5,113以上の核兵器から、「1654の戦略
    核弾頭を、展開されている729の大陸間弾道ミサイルと潜水艦発射弾道
    ミサイルと戦略爆撃機に配備しています」。29
   
その上、アメリカ科学者連盟によれば、米国は500の戦術核弾頭を所有しています。

    2013年4月3日、米国務省は、ロシアとの新しい戦略兵器削減交渉
    (START)のデーター交換で、新しい事実が書かれた印刷物を発行しまし
    た。新しい戦略兵器削減交渉で説明する義務がある配備されている核
    弾頭数と、それぞれの国が持っている運搬システムの情報を共有しま
    した。2010年5月3日、米国国防総省は初めて米国の備蓄品の核弾頭
    (5,113)の総数を発表しました。国防総省は、この備蓄品に機能している
    核弾頭と機能していない核弾頭を含めています。機能している核弾頭は、
    作戦行動可能なものであり、配備されているか配備可能なものです。
    機能していない核弾頭は、「作戦不可能な状態で」維持されているもので
    あり、トリチウムのボトルが取り外されたものです。(情報源:軍縮協会、
    科学者同盟、核分裂性物質についての国際パネル、米国防総省、
     米国務省。)30
    
その一方、同じ情報源によれば、北朝鮮は、

    「大雑把に言って4~8個の核弾頭のための十分なプルトニウムを分離し
    ました。北朝鮮は2010年に遠心分離機の施設を公表しました。しかし、
    核兵器用の濃縮ウランを製造する能力ははっきりしないままです」。31
    (Arms Control.org)

さらに、専門家の意見によれば:

    「北朝鮮が米国や他の誰かに核武装ミサイルを打ち返す手段があると
    いう証拠がありません。これまでのところ、北朝鮮はいくつかの原爆を
    製造し、それをテストしましたが、その燃料と核兵器を小型化し、それを
    ミサイルに搭載する技術がありません」。32
   
アメリカの卓越した核科学者の一人、シーグフリード・ヘッカーによれば、

    「その最近の脅威にもかかわらず、北朝鮮は核の在庫をまだ多く持って
    いません。なぜなら核分裂性物質がなく、核実験の経験を制限してきたか
    らです」。33
   
核戦争の脅威は北朝鮮からではなく、米国とその同盟国から生まれています。

米国の軍事的侵略の暗黙の犠牲者である朝鮮民主主義人民共和国は、戦争に夢中になっている国、米国本土への脅威、「世界平和への脅威」として絶えず描かれてきました。これらの型にはまった非難は、メディアのほぼ一致した意見となってきました。

一方、ワシントンは現在、その戦術核兵器[通常500キロ以下の射距離が短い核兵器のこと]の改良とあわせて、戦略核兵器[威力と射距離が大きい核兵器]の改造に320億ドルをかけています。2002年の上院の決定によれば、これは「周辺の民間人には害のないものである」ということです。

これらの北朝鮮に向けられた潜在的な武力侵略の継続的な脅しと行動はまた、中国とロシアに向けられた東アジアでの広範な米国の軍事的政策の一部と理解されるべきです。

*
(国連安全保障理事会に違反して国連旗を使っている非武装地帯のオバマと朴槿恵大統領)

重要なことは、米国や西側諸国の国中の人々が、北朝鮮やイランよりもむしろ米国が世界の安全への脅威であることがわかるようになったことです。

韓国の経済発展

米軍による韓国の軍事的占領は、朝鮮での米国の経済的・金融的利益を大いに支持し保護しています。1945年の始めから、韓国経済の民主化はありませんでした。搾取的日本の工場システムが、朝鮮財閥によって採用されました。それは部分的には日本植民地支配の副産物でした。

最初は、このシステムは極端な低賃金を基礎にしたもので、朝鮮の生産拠点は、西側市場のために低賃金労働の輸出品を生産するために使われました。多くの点で、初期の朝鮮の生産拠点は、朝鮮労働者の権利の低下のもとでの「産業植民地主義」の形態でした。

韓国財閥(チェイバル)の隆盛は、1970年代に始まった経済成長の素晴らしい実績がその源となっています。財閥は「ひとつの持ち株会社のまわりに集められた」多くの会社の集合体です。親会社はしばしば、ひとつの家族や同族会社によって支配されています。一方、後者は韓国の軍事政府の役人たちと緊密なつながりがありました。

韓国の工業と科学技術革命は、西側資本主義への挑戦となりました。米軍の駐留にもかかわらず、韓国はもはや「従属した」経済を持つ「発展途上国」ではなくなりました。競争の激しい世界市場に入れられて、韓国資本主義は日本と西側諸国の多国籍企業と競争をしていました。

1997年のアジア危機*:韓国に向けられた金融戦争

    [*訳注 アジア通貨危機のこと。1997年にタイから始まり,アジア各国に
    広がった急激な通貨下落とそれによって起こった金融危機・経済危機を
    指す。なかでもタイ,インドネシア,韓国はきわめて大きな打撃を受けた。
    出典:百科事典マイペディア(平凡社)]

韓国は世界資本主義国家に発展していました。韓国は自国の技術基盤と高度に発達した金融システムを獲得していました。韓国は、世界銀行によっていわゆるアジアの虎[1980年代に急成長を遂げたアジアの国のこと]として分類されていました。

しかし同時に、政治的仕組み全体―それはマクロ経済政策の経営を含んでいました-ワシントンとウォール・ストリートによって支配されていました。米国占領軍の軍事的駐留は言うに及びません。

1997年のアジア危機は重要な転換点でした。1997年暮れに、IMFの緊急援助の押し付けが、あっという間に韓国をひどい不況に追い込みました。社会的影響は壊滅的でした。

主要な金融機関による株式市場と外国為替市場の金融操作を通じて、アジア危機は韓国の事業所を弱体化し、むしばむ一因となりました。その目的は「虎をおとなしくさせ」、韓国財閥を解体し、韓国経済やその産業基盤や金融システムに対して、米国の支配と所有権を取り戻すことでした。

1997年暮れのウォンの崩壊は、外国為替市場での「露骨な空売り」[取引の裏付けとなる株式を確保せずに行う株取引] によって引き起こされました。それは金融戦争の行為に等しいものでした。

いくつかの韓国の財閥は、国際通貨基金(IMF)の命令で、バラバラにされ、解散させられ、倒産を引き起こされました。国際通貨基金(IMF)はウォール・ストリートの利益になるように行動していました。

1997年7月から1999年6月の間に、30の最大財閥のうち11の財閥が崩壊しました。

1997年の国際通貨基金IMFの財政的緊急援助に続いて、韓国の国家経済、ハイテク業種、産業基盤の大部分が、米国と西側の資本によって韓国の債権者と取り決められた様々な詐欺的条項の下で、「盗まれ」ました。

西側の企業は爆買いを続け、金融機関と産業資産を超安値で買い占めました。ソウルの株式市場の下落と結びついて、ウォンの通貨の切り下げは、韓国資産のドル価値を著しく下落させました。

国際通貨基金(IMF)は直接ウォール・ストリートの利益になるように行動をして、大宇テウグループ[韓国の大手財閥]の廃止を要求しました。それには問題を抱えたいわゆる12の大宇の関連会社の株の処分も含まれていました。大宇自動車は容易に手に入りました。これは自然発生的な破産ではなく、金融操作の結果でした。価値ある生産的資産を外国投資家の手に移すのがその目的でした。大宇は、国際通貨基金(IMF)の合意の下で、2001年に大宇自動車をジェネラル・モーターズ(GM)に売却することを余儀なくされました。同様に韓国最大の企業である現代ヒュンダイは、1997年12月の緊急援助に従って持ち株会社を編成し直さなければなりませんでした。

1999年4月、現代ヒュンダイは事業部の3分の2を削減することと、「グループを5つの独立した企業グループに分割する計画」を発表しました。この新たな取り組みは、西側債権者によって課せられた債務削減計画一部であり、国際通貨基金(IMF)によって実行されました。それは、いわゆる「プログラム」の下で実行に移されました。そうすることで、韓国の大きな財閥は小型化され、より小さな事業体に分割されることになりました。

その過程で、韓国の大きな持ち株会社のものだった多くのハイテク部門が西側資本に買い取られました。

韓国の銀行取引の風景も「米国投資家」によって引き継がれました。国中に支店ネットワークがある韓国第一ジュイル銀行(KFB)は、不正な商取引でカリフォルニアを拠点とするニューブリッジ・グループによってひどく安い値段で購入されました。34

同様の怪しげな取り引きによって、カーライル・グループは2,000年9月に韓美(ハンミ)銀行の支配権を握ることが可能になりました。カーライル・グループの取締役会には、元大統領のジョージ・ウォーカー・ハーバート・ブッシュ(シニア)、彼の国務長官であったステイト・ジェイムズ・A・ベイカー3世、元国防長官のフランク・C・カールッチがいました。韓美銀行は、カーライル・グループに率いられた共同事業体と、JPモルガン・チェース[世界最大級の持ち株会社]によって奪取されました。韓美銀行は、1980年代にバンク・オブ・アメリカと韓国の複合企業のグループの間の共同事業として、設立されていました。

3年後、シティバンク[ニューヨーク市マンハッタンに本拠を置く米国の大手銀行]は、カーライル・グループから韓美の36.7%の賭け金を獲得し、残っているすべての株を買い占めました。それは「西半球でのシティバンクの最大の取得」と言われました。35

数十億ドルの債務危機の引き金となった1997年のアジア危機に続いて、韓国財閥の破砕と韓国国家資本主義の弱体化を目的としている政府の新しいシステムが韓国で設立されました。言い換えれば、1997年12月の国際通貨基金(IMF)の救済合意の署名は、韓国国家の構造の重要な転換を示しています。韓国の金融規制機関は、韓国以外の債権者の利益に役立つように使われています。

結びの言葉:平和に向けて

米国は今もなお朝鮮と戦争状態にあります。

この戦争状態は米国に支援を受け、南北朝鮮に向けられています。それは、北朝鮮に対する持続的な軍事的脅威(核兵器の使用を含む)によって特徴付けられます。それはまた、1945年9月以来の米国の軍事的占領の下にあった韓国をも脅かしています。

現在は韓国には37,000人の米軍がいます。朝鮮半島の地理を考えると、核兵器の使用は必然的に韓国を巻き込みます。このことを米国の軍事計画者は知っているし、理解しています。「平和条約」に関わる来るべき交渉に先立って強調されなければならないことは、米国と韓国は同盟国ではないということです。

「本当の同盟」は、外国の侵入と侵略に対して南北朝鮮をひとつにまとめ、仲直りさせるものです。

これが意味することは、米国が朝鮮国家全体に対して戦争状態にあるということです。

したがって、平和条約の制定は、平和条約に含まれるべき条件で「合意点」を作るために、韓国と北朝鮮の両者による話し合いの開催を求めています。この平和条約の条件は、いかなる状況においても、米国の侵略者に受け入れさせなければなりません。米国の侵略者は朝鮮半島の軍事的駐留を維持することに関わっているので。

この件について注目する価値があるのは、米国の外交政策と軍事の計画者は、すでに自らの「再統一」のシナリオを確立していることです。韓国で米国の占領軍を維持することが断言されています。同様に、ワシントンが描いていることは、「外国の投資家」が北朝鮮経済に浸透して略奪することを可能にする骨組みです。

ワシントンの目的は、朝鮮の再統一の条件を押し付けることです。2000年に発表されたネオコンの『アメリカ新世紀プロジェクト』(PNAC)は、「統一後のシナリオ」では米軍(現在37,000人)の数は増やさなければならず、米軍の駐留は北朝鮮まで広げられると恫喝していました。再統一された朝鮮では、米国の守備隊の軍事的権限は、いわゆる「北朝鮮の安定化作戦」を実行することになるでしょう。

    朝鮮の統一は半島での米国駐留の削減と朝鮮での米軍の基本姿勢の
    変化を求めるかもしれませんが、その変化は任務の終わりということで
    はなく、本当に変化する技術的現実を反映するものとなるでしょう。その
    上、現実的な統一後のシナリオでは、米軍は北朝鮮の安定化作戦の
    役割を持つ可能性があります。統一後の朝鮮での米国の駐留の正確な
    規模と組織を推測するのは時期尚早ですが、朝鮮での米軍の駐留が、
    より大きな長期の戦略的目的に役立つことを認識することは早すぎる
    わけではありません。現在のところ、半島の現在の米国守備隊で能力
    のいかなる削減も賢明ではないでしょう。それどころか、それらを増強
    する必要があります。特に北朝鮮のミサイル攻撃に対する防御や大規
    模な砲撃能力の影響を制限する能力を増強する必要があります。
    やがて、統一とともに、これらの部隊の構造と人員のレベルは変化
    するでしょう。しかし、アジアのこの地域での米国の駐留は続けられる
    べきです。36 (PNAC、新世紀のためのアメリカの防衛、戦略、軍隊、
    資力の再建、p.18、文中に強調を加えた)

ワシントンの意図は非常に明瞭です。

それゆえに重要なのは、これらの話し合いが、外部の第三者の関与と妨害なしで韓国と北朝鮮の間で行われるべきことです。これらの討議では、北朝鮮に向けられた経済制裁の廃止だけでなく、すべての米国占領軍の撤退に取り組まねばなりません。

米国の軍事駐留を取り除き、37,000人の占領軍を撤退させることは、平和条約の必須条件であるべきです。

平和条約に従って、韓国軍を米国の指揮下に置くという現在の米韓合同軍司令部の合意は、破棄されるべきです。それ以後、韓国軍は韓国国家の指揮の下に入るべきです。

これは抜本的な変化です。というのは、現在の合同軍司令部の合意では基本的に、北朝鮮に対する米国支援の戦争では、米国の指揮権で、韓国軍に戦闘を命ずることができることになっています。それは、韓国大統領と韓国軍総司令官の命令より優先しているからです。

韓国と北朝鮮の間での、経済的、技術的、文化的、教育的協力をさらに発展させるために、二国間協議が取り組まれなければなりません。

経済的主権は中心的な問題です。1997年の国際通貨基金IMFの緊急援助の後に行われた闇取引に対処するべきです。これらの商取引は、不法で詐欺的な買収、韓国のハイテク産業の大部分の所有、そして西側企業資本による銀行取引につながるものでした。同様に、韓国の環太平洋戦略的経済連携協定TPPへの参入の影響も検討されなければなりません。

平和協定には、南北国境の開通も付け加えることになるでしょう。

2000年の6月の第15回南北共同声明に従って、再統一のスケジュールを決めるために、韓国・北朝鮮合同作業委員会が設立されるべきです。

--------------------------------------------------------                                        
ミシェル・チョスドフスキーは、受賞歴のある著者で、オタワ大学の経済学(名誉教授)の教授、グローバリゼーションの研究センター(CRG)モントリオールの創設者であり理事長で、globalresearch.caのウエッブサイトの編集者です。彼は『貧困の世界化』『新しい世界秩序』(2013)『対テロ戦争』(2005)の著者です。彼の最も最近の本は、『第3次世界大戦のシナリオに向けて:核戦争の危険』(2011)という題名です。彼はまたブリタニカ大百科事典の寄稿者です。彼の著作物は20ヶ国語以上で出版されてきました。

ミシェル・チョスドフスキーは、クアラルンプール戦争犯罪委員会のメンバーです。その委員会はジョージ・W・ブッシュおよびその他の者たちを「拷問の罪と戦争犯罪」で告訴を始めました。(クアラルンプール戦争犯罪法廷の判決、2012年5月)

ミシェル・チョスドフスキーはcrgeditor@yahoo.comで連絡がとれます。

(翻訳 岩間龍男)
Notes
1 Interview with General Wesley Clark, Democracy Now March 2, 2007.
2 Martin Hart-Landsberg, Korea: Division, Reunification, & U.S. Foreign Policy. Monthly Review Press. New York, 1998 pp. 65–6). The PRK was abolished by military decree in September 1945 by the USAMG.
3 Jay Hauben, Book Review of I.F. Stone’s “Hidden History of the Korean War”, OmnyNews, 2007, http://www.globalresearch.ca/the-hidden-history-of-the-korean-war/5342685
4 Ibid.
5 Quoted in Stephen Lendman, America’s War on North Korea, Global Research, http://www.globalresearch.ca/americas-war-on-north-korea/5329374, April 1, 2013
6 Ibid
7 Bruce Cumings, Korea: Forgotten Nuclear Threats, 2005
8 Ibid
9 Quoted in Brian Willson, Korea and the Axis of Evil, Global Research, October 2006.
10 Ibid.
11 AssoCIAted Press Report, http://www.globalresearch.ca/us-coverup-extrajudicial-killings-in-south-korea/9518, July 6, 2008
12 Wikipedia
13 George F. Kennan, State Department Brief, Washington DC, 1948
14 Ibid.
15 The main PNAC document is entitled Rebuilding America`s Defenses, Strategy, Forces and Resources for a New Century, The PNAC website is: http://www.newamericancentury.org
16 Chosun Ibo, April 13, 2013
17 See United States Forces Korea | Mission of the ROK/US Combined Forces Command.
18 See United States Forces Korea | USFK Leadership
19 U.S.- S. Korea Military Gameplan | Flashpoints | The Diplomat, April 4, 2013
20 President Harry S. Truman, Diary, July 25, 1945
21 See The nuclear information project: US Nuclear Weapons in Korea
22 Ibid.
23 Daniel A. Pinkston, “South Korea’s Nuclear Experiments,” CNS Research Story, 9 November 2004, http://cns.miis.edu
24 See List of United States Army installations in South Korea – Wikipedia, the free encyclopedia
25 The Nuclear Information Project: Withdrawal of US nuclear weapons from South Korea
26 Ibid
27 The Nuclear Information Project: Withdrawal of US nuclear weapons from South Korea, emphasis added
28 Ibid, emphasis added
29 ArmsControl.org, April, 2013
30 Ibid
31 Ibid
32 See North Korea: What’s really happening – Salon.com April 5, 2013
33 Ibid
34 See Michel Chossudovsky, The Globalization of Poverty and the New World Order, Global Research, Montreal, 2003.
35 See Citibank expands in South Korea – The New York Times, November 2, 2004.
36. Project for A New American Century (PNAC), Rebuilding America`s Defenses, Strategy, Forces and Resources for a New Century, Washington DC 2000, p. 18, emphasis added
The original source of this article is Global Research
Copyright © Prof Michel Chossudovsky, Global Research, 2017

<新見コメント>ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「朝鮮の人々に対する米国の戦争: 米国戦争犯罪の歴史的記録」をやっとブログ「寺島メソッド翻訳NEWS」に載せることができました。岩間龍男さんが翻訳されたものですが、私も翻訳しようとしていた英文なので協力し、編集してみました。まだまだ不完全ですのでみなさまのご指摘をいただき、より読みやすい翻訳にしていきたいと思っています。

最新のチョスドフスキーの原稿もGlobal Research(2018.1.23)*に載っていますが、この英文は2013年9月13日のもので、少し前のものですが、現在の北朝鮮をめぐる危機的状況の原因を、歴史を追って解き明かしてくれます。1945年日本の敗戦から、1950年からの朝鮮戦争、その後の韓国へのアメリカの核兵器配備など、北朝鮮核ミサイル実験の脅威を煽り立てるマスコミの言論がいかに間違っているかを歴史的事実をもとに解き明かしてくれています。朝鮮戦争後すぐに、アメリカは停戦協定に違反して韓国への核兵器配備始め、最高で950近くの核弾頭を33年間配備していました。その脅威に対して、いかに北朝鮮が自国を守ろうとしてきたかがよくわかります。

*North Korea and the Dangers of Nuclear War: Towards the Implementation of a Peace Project
「北朝鮮と核戦争の危機: 和平プロジェクトの実施に向けて」
 By Prof Michel Chossudovsky Global Research, January 23, 2018
https://www.globalresearch.ca/what-you-need-to-know-about-north-korea-and-the-dangers-of-nuclear-war/5615328

もう一つ私が興味を抱いた点は、I・S・ストーンが「朝鮮戦争は北が侵攻をしてくるように、南が38度線を越えて挑発して起こったものだ」という視点を取り上げて説明している点です。和田春樹やブルース・カミングを読んでも、朝鮮戦争開始の説明で、南が38度線を越えてたびたび挑発していたことは書かれていますが、それよりも北とソ連、中国との開戦承認に到るまでのやりとりに多くをさかれています。アメリカの開戦に至までの交渉記録は余りありません。

チョスドフスキーはI・S・ストーンの論をさらに敷衍して、日本の真珠湾攻撃、ベトナムのトンキン湾事件も「挑発を仕掛けておいて、相手に攻撃させる」作戦であったように、朝鮮戦争も南の挑発から戦争を起こさせたのだとすると、アメリカが戦争を起こす手口が一貫して理解できます。それをチョスドフスキーは「トルーマン・ドクトリン」から解き明かしてくれます。

イタリアで共産党が優勢であったとき、グラッジオ作戦で犯行が左翼勢力がやったものであるように見せかけ、左翼勢力を追い落としていったように、イラクで大量破壊兵器があると宣伝してイラクを壊滅させていったように、リビア、シリアで独裁政権に対する民主化運動であるかのように装って、アメリカが偽旗作戦で他国を破壊していった例はきりがない。

私たちはこの視点から朝鮮戦争を見直すことが重要であると思いました。そして現在の北朝鮮脅威論がどのようにでっち上げられているかを見極めるためにも、このチョスドフスキーの文章は貴重なものです。

なお翻訳の説明で、( )はチョスドフスキーが解説したもの、[ ]は岩間が解説したものであることを区別しました。

国連安保理の不名誉な日: 制裁決議は北朝鮮を荒廃させ、人道危機を誘発する

 
2017年12月22日安保理決議2397:安保理は北朝鮮にゲシュタポ式の制裁を科す。制裁は北朝鮮の人々を絶滅させるという警告にもかかわらず。
 
Carla Stea
 
グルーバル・リサーチ2017.6.12.28
 


 
以前の北朝鮮への制裁が、北朝鮮人民を荒廃させる人道危機を、特に最も傷つきやすい人々に対して引き起こしているという数多くの証言を無視して、また人々に破滅的影響をもたらすという警告にもかかわらず、12月22日、国連安保理事会は厳しく非人道的な新たな制裁決議を可決した。それはヒトラーのニュールンベルグ法(訳注1)にも比較されるに違いない。
   (訳注1)ニュルンベルク法は、1935年9月15日に国家社会主義ドイツ労働者党(以下ナチ党)政権下の    ドイツにおいて制定された2つの法律「ドイツ人の血と名誉を守るための法律」と「帝国市民法」の総称である。ユダヤ人から公民権を奪い取った法律として悪名高い。<ウィキペディア>  

賛成投票をした安保理外交官たちは、以前の北朝鮮制裁が与えた人道的苦悩に対して全く無知をさらけだし、そして新たな制裁への賛成投票が人道的苦悩を必然的にもたらすことにも全く無関心であることは、典型的な背信行為である。
 
これらの制裁は、北朝鮮の社会主義経済システムを崩壊させるために、北朝鮮を挑発することが狙いである。しかしなぜ中国とロシアがこれらの制裁に拒否権を発動しなかったかという究極的な問題が残されている。二つの国はこの破局を阻止する力を持っているのに。どんな「調整」がなされたのか。アメリカ・ジャガーノート(訳注2)はロシアと中国の近視眼的屈服を引き出すのに成功した。それはユーラシア大陸を完全に不安定化させ、アメリカの永久的軍事配備を可能にし、おそらく核戦争をも引き起こしかねない。確かにロシアが思い起こさねばならないのは、ゴルバチョフが、ソ連がドイツの再統合に合意する見返りとして、アメリカ国務長官ジェイムズ・ベーカーによって保証されたことだ。
 
つまり「NATOはベルリンの東に1インチたりとも拡大しない」と。
   (訳注2)インド神話:Vishnuの第八化身であるクリシュナ(Krishna)に対する呼び名、あるいは抵抗不可能なもの  

いまロシアはNATO基地によって包囲されている。ゴルバチョフはだまされやすかったのか、それとも当てにならなかったのか。ロシア人はしきりに騙されたと思っている。
 
安保理の常任5カ国は、彼ら自体が核拡散防止条約第6条に全面的に違反している。第6条は核兵器の軍事施設を取り除くことを求めている。ところが彼らは「核兵器」の性能を向上するために数兆ドルを投入している。NPT(核拡散防止条約)第6条(訳注3)は、信義に基づいて核兵器廃絶条約をとりまとめることを求めている。この国連条約は今年採択された。しかしロシアと中国は無視し、アメリカ、イギリス、フランスは悪意に満ちたキャンペーンをして反対した。アメリカはNPT第2条にも違反している。彼ら自身NPTに違反しているのに、安保理5カ国永久メンバーは、NPTのメンバーでさえない北朝鮮を非難する権利は絶対ない。
   (訳注3)核兵器国については、核兵器の他国への譲渡を禁止し(第1条)、核軍縮のために「誠実に核軍縮交渉を行う義務」が規定されている(第6条)。しかしアメリカ、ソ連は核開発競争により「誠実に核軍縮交渉を行う義務」の実行どころか核兵器保有数を大幅に増加させた。 

国連安保理決議2397は、安定した進歩的な独立国(イラク、リビア、そして今は北朝鮮)を破壊するという国連の伝統を運命づけられている。
 
国連決議2397の採択前に、国連人権委員会は明らかにした。北朝鮮にすでに科された厳しい制裁が、絶対必要とされる人道援助の配布を妨害している。その結果、人口の70%、1800万人の北朝鮮人が過酷な食糧不足に苦しんでいる。また国際銀行取引を妨害しているこの制裁は、国連現地活動を阻害し、食料、医薬品その他の人道援助の配布を妨げていると。
 
AFP(フランス通信社)によれば、
 
「『支援グループは、北朝鮮向け物資の税関通過に障害が生じている。補給物資の調達や輸送確保にも困っているし、4月以来
160%も急上昇した食料品価格も同様に支障をきしている』と、国連事務次長ミロスラフ・ジェンカは語った」とある。
 
12月9日、NBC(ナショナル放送会社:米国3大放送会社の一つ)のニュース報道では、
 
「専門家によれば、トランプ政権の主な北朝鮮戦略は、北の核プログラムを抑制することはほとんどできないし、飢饉を引き起こすだけだと言う。ホワイトハウスは中国に対して、朝鮮人2500万人への石油供給を止めるように強く迫っている・・・多くの分析家は、そのような動きは北の核やミサイル計画に対してごくわずかな影響しか与えず、逆に農業部門に打撃を与え、大量飢饉にいたる可能性がある」という。
 
ノーティラス安全・持続可能性研究所上級顧問のデイビット・フォン・ヒッペル博士は、石油禁輸の結末は人道的レベルで破滅的な影響があると警告した。
 
「石油停止は、市民が入手できる国内産食料の量を劇的に減少させるだろう・・・北朝鮮の耕地はもっぱら農地である。彼らはトラクター、灌漑用ポンプ、冷蔵庫、そして収穫して腐らないように食物を輸送するトラックに頼っている・・・9月(国連決議2375)で科された現在の制裁レベルでさえ、北朝鮮の穀倉地帯を貧困に陥れるだろう。」
 
10月25日、北朝鮮の人権に関する国連特別報告者トーマス・クインタナは述べた。
 
「私が受けた報告は次のように警告していた。制裁は化学療法を受けるがん患者を妨げる・・・車いすや障害者のための必須用品がいま制限されている・・・人道援助に取り組む人々は多くの必要物資を入手したり、国際的送金をするのがますます困難になっている」と。
 
クインタナがピョンヤンから戻ると、国連の事務次長(政治担当)ジェフリー・フェルトマンは述べた。
 
「私が懸念していることは、北朝鮮のための支援計画が減少していることだった。計画は30%の資金しかない。国連が人道支援計画を行うのに大きな影響が出ている。私は全面的な資金不足を心配していた・・・現場で救命備品を配る国連の能力に影響する。」
 
この人道的災害は偶然でも同時発生でもない。彼らは北朝鮮の人々にさらに致命的な制裁を加えるというこの情報は、12月22日以前に安保理の15人のすべてのメンバーには公にわかっていたはずだ。安保理はこれらの犯罪の共犯者である。彼らが無責任に制裁は人道的例外措置があると自慢していても、これら「人道的例外措置」が驚くほど実施できていないことをどのように説明できるのだろう。またこれら犯罪的かつ致命的な制裁の悲劇的犠牲者が大多数の北朝鮮人民であるという事実をどう説明するのか。
 
罪深い答えが明らかになったのは、イラク制裁の場合で、「人道援助」失敗に関する調査である。それはもう一つの人道的大惨事であり、 50万人以上のイラクの子供たちが飢餓によって死んだのだ。調査ジャーナリスト、ジョイ・ゴードンの『冷ややかな戦争:大量破壊兵器としての経済制裁』(2002年ハーパーから出版)という素晴らしい仕事の中で、ゴードン女史は述べている。
 
「イラクの死亡数のニュースは詳しく実証されてきた(とりわけ国連によって)。ところがメディアでは余り報道されなかった。しかし見えなくされたものは、どのように、そして誰によってそんなおびただしい死亡者数がずっと容認されてきたかという資料である・・・。しかし私がすぐわかったことは、私の質問に答えうる国連のすべての記録は公の調査から隠されてきたということだ。言うまでもないことだが国連はイラク計画に関する公的資料がないのだ。手に入れることができないものは、アメリカの政策が人道的かつ安全性判断をどのように決定するかを示す資料だ・・・イラク制裁の計画は、国連内部で多くの機関が関わっている・・・これらの機関は計画に対する不満がどのように進行しているかを公に議論されないように注意してきた・・・過去 3年にわたる外交官との調査インタビューを通して、イラク制裁行政に関する国連秘密重要資料の多くを私は手に入れた。私はこれらの資料を匿名を条件に手に入れた。彼らが示したものは、アメリカが、その国に入る人道物資を意図的に最小限にするために過去10年間積極的に取り組んできたということだ。そして膨大な人間的苦痛を前にしてもそうしてきた。子供の死亡率の大きな増加や広範囲に広がった伝染病などの苦痛である・・・余り知られていないのは、サダム・フセイン政府が1991年の湾岸戦争前に健康、教育、社会保障政策に過去20年間大きく資源を投入してきたことだ。イラクは無償教育、十分な電力、現代化された農業、そしてたくましい中産階級が育って急速に発展した国であった。」
 
これら北朝鮮制裁への人道的例外措置を怠ったことにうっかり言及した外交官は、ジョイ・ゴードンによって掘り起こされハーパーズから出版された事実に通じていた。それは。そしてこれらの外交官は「人道援助」失敗の本当の原因に気づいている。この失敗は、意図的で計画的な無垢の北朝鮮人殺害であり、殺害がこれらの制裁の目的であるが、制裁は実際には核開発計画になんら影響を及ぼさない。どの文明化された責任ある組織でも、これらの制裁を行う人たちは、計画的殺人犯として告発されるだろう。
 
北朝鮮は侵略者ではない。彼らは残忍な日本植民地主義との闘いに成功した。そして1949年アメリカの傀儡・李承晩軍によるゲリラ攻撃(北を攻撃するため38度線を侵犯した)から自らを守るべく挑発された。それは1950年~1953年の朝鮮戦争を引き起こした挑発であった。今日アメリカ、韓国、日本は絶えざる軍事的脅威によって北朝鮮の生存を危うくしている。
 
1950年~1953年のアメリカ主導の北朝鮮攻撃で3~4百万人以上の北朝鮮人が絨毯爆撃やナパーム弾や細菌兵器や他の大量破壊兵器によって虐殺された。これらの数字は、アメリカのカーチス・ルメイ将軍や北朝鮮人の大虐殺に関わってきた多くの者によって確認された。そして100年以上前にトルコによる100万人のアルメニア人が虐殺された(訳注4)記憶のトラウマが、未だ今日のアルメニア人の生活の中でうずいているように、また70年前ヒトラーによるユダヤ人600万人のジェノサイドが今日のユダヤ人には忘れられないように、アメリカに指揮された国連軍による300万人以上の北朝鮮人虐殺を、北朝鮮は決して忘れることはできない。だから北朝鮮政府はこの繰り返される恐怖から北朝鮮を守る決意をしている。そして最後に残る社会主義国を完全に破壊しようとするもう一つの試みに対してアメリカを思いとどまらせる唯一の武器は核兵器であり、それはアメリカが再度の攻撃を思いとどまらせるものであるかもしれない。
    (訳注4)アルメニア人虐殺 :19世紀から20世紀初頭に、オスマン帝国の少数民族であった
          アルメニア人の多くが強制移住、虐殺などにより死亡した事件

 
それ故、もう一つの虐殺手段である安保理決議2397は、人道的に破滅的な結果をもたらすとの警告にもかかわらず、北朝鮮への石油供給の90%を無慈悲にも停止するのだ。国連決議が求めることは、海外で働く15万人の北朝鮮人が追放され、24ヶ月以内に失職させられ、北朝鮮の貧困をさらに悪化させることだ。国連決議2397は、その他に共和国の経済分野にとって決定的な個人に対する多数の旅行禁止と共に、15人の経済分野の要員や貿易代表のさらなる渡航禁止を含んでいる。
 
韓大成(ハン テ ソン)大使はジュネーブの軍縮会議で次のように述べた。
 
「制裁の目的が、我が国の体制転覆をすることであることは明らかである。アメリカとその追随国家によって主張されているような兵器開発を妨げることでなく、国を分断し抑圧することによって、人道的な災害を意図的にもたらすことである。」
 
12月7日に韓国は、金正恩殺害の「斬首計画」のためドローンやグレネード・マシーンガン(自動擲弾銃)購入でほぼ10億ドルを費やす、と報道された。もちろんこれは犯罪的殺人であるのみならず、国際法違反である。12月10日ロイター通信の報道では、日本とアメリカと韓国はさらに追加の軍事演習を行う予定だという。その前の週に行われた12月4日の大規模な米韓軍事演習に続いてすぐにだ。これは北朝鮮人民や政府の生存への絶え間ない軍事的脅威であり、我慢ならない挑発だ。12月17日、韓国と米軍は北朝鮮進入合同軍事計画を、表面的には大量破壊兵器を廃棄させるためと言って実施した。この「勇者の攻撃」軍事演習は、38度線近くのソウルの北、スタンレー基地で行われた。韓国地域軍アメリカ司令官ビンセント・ブルックスとトーマス・バンダル中将も「雄者の攻撃」軍事演習に参加していた。
 
11月28日までに北朝鮮政府は、ほぼ3ヶ月間なんら核やミサイルのテストをしなかった。すべての安保理決議で求められたこの安定した雰囲気で平和的な交渉を試みる代わりに、逆にアメリカは一連の執念深い軍事訓練をして、北朝鮮に対する軍事的脅威をエスカレートさせた。それ故、米国務長官レックス・ティラーソンが12月15日、北朝鮮は交渉する権利を「勝ち取ら」ねばならないと表明したことはまったく不合理なことである。北朝鮮はほぼ3ヶ月前からどんなテストも停止させてきた。ところが平和交渉を打ち立てる機会をつかむどころか、アメリカは攻撃的に軍事的脅威を増加させたのだ。
 
北朝鮮外務省は、トランプ米国大統領の国家安全保障戦略をこう呼んだ。
 
「我が国を抑圧しようとして、朝鮮半島全体をアメリカ覇権の前線基地に変えようとするごく最近のアメリカ政策であると。トランプは全世界を従属させようとしている」と。
 
国連安保理決議2397は、北朝鮮経済にとって致命的なものとなるだろう。それは大多数の人々を破滅させるが、兵器開発にはほとんど何んの影響もない。
 
最後に12月4日、国連総会は「新しいタイプの大量破壊兵器の開発や製造そして大量破壊兵器の新しい組織網を禁止」する決議を採択した(軍縮会議報告)。北朝鮮は決議を支持して「賛成」投票をした。ところがアメリカは賛成せず「反対」投票をした。また「軍備縮小・不拡散地域における多国間主義の促進」に関して北朝鮮は決議を支持して「賛成」投票をしたが、アメリカは支持せず「反対」投票をした。どちらの国が世界平和にとって脅威であるかは明らかである。それは北朝鮮ではない。
 
今日、ニューヨークは凍るほど寒い。もしアメリカに90%の石油削減が科されたら、おびただしい数の市民が凍え死ぬだろう。北朝鮮の冬はさらに寒い。国連決議2397は北朝鮮人民に耐えがたい死を宣告するだろう。皮肉なことに12月22日は国連の「ホロコースト記念日」である。恥ずべきことに12月22日国連安保理は、21世紀のホロコーストを北朝鮮の人々に科す投票をしたのだ。国連決議2397の可決で、国連安保理はバーバリズムやテロの道具と化したのだ。
 
Carla Steaは、ニューヨーク国連本部のグローバル・リサーチの通信員
 
画像はゾビエンTVより
 
この記事の元原稿はグローバル・リサーチによる。
 
<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/day-of-infamy-for-the-un-security-council-triggering-a-devastating-humanitarian-crisis-in-north-korea/5624185                    
 
<新見コメント>-------------------------------------------
Carla Stea「国連安保理の不名誉な日」を翻訳しました。
これまで北朝鮮のミサイル、核実験を期にアメリカを中心として北朝鮮制裁、軍事的圧力が強化されてきました。しかしそれは1994年の米・朝和平合意を反故にされ、「悪の枢軸」指定を受けた北朝鮮が国家の生き残りをかけて、ミサイル、核実験に踏み切ってきた過程であることを追ってきました。
 
しかし今回は安保理決議2397による経済制裁が、どのように北朝鮮人民を苦しめるかを扱った論文です。石油の90%を遮断され、「人口の70%1800万人が過酷な食糧不足に苦しんでいる。国連による銀行取引停止は、国連現地支援活動をも阻害し、食料、医薬品その他の人道援助の配布を妨げている」と国連人権委員会は明らかにしている。
 
このような制裁が無実の住民を苦しめる例は、イラク戦争時の制裁を対比させることによって一層その惨状が明らかにされている。「50万に以上のイラクの子供たちが飢餓によって死んだのだ」と。「サダム・フセイン政府が1991年の湾岸戦争前に健康、教育、社会保障政策に過去20年間大きく資源を投入してきたことだ。イラクは無償教育、十分な電力、現代化された農業、そしてたくましい中産階級が育って急速に発展した国であった」のにである。
 
もう一つこの記事では書かれていないが、現在の経済制裁の典型例として、サウジアラビアによるイェメン攻撃と制裁を挙げておく必要がある。
   イエメン・ミサイルは、サウジアラビアで誰一人殺害していないが、アメリカ製
   の爆弾とミサイルで、サウジアラビアが何万人ものイエメン一般市民を殺害
   していることを、ヘイリー(国連大使)は、指摘するのを怠った。イエメンを経済
   封鎖して、極めて大規模な飢饉を引き起こしているのは、サウジアラビアだ。最
   近、サウジアラビアは封鎖を解除したと主張しているが、米国国際開発庁すら、
   経済封鎖が変わった兆しは皆無だと言っている。イエメンでは毎日何百人もの
   人々が食料や単純な医薬品の欠如で亡くなっている。
     Moon of Alabama「ヘイリー大使、イエメン・ミサイルの証拠を挙げる説明
     に失敗、サウジアラビア戦争犯罪を無視」2017年12月19日 (火)「マスコミ
     に載らない海外記事」より
      http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/post-a098.html
 
このように戦争が起きているところでも、いまだ戦争になっていないところでも、経済制裁がいかに一般市民を死に至らしめていることを忘れてはならない。この安保理決議に対して防波堤となるべき中国、ロシアまで賛成してしまったことは、事態の一層の悪化が懸念される。
 
そして制裁は、戦争に至らないための手段という考えが間違っていることがわかった。実弾は飛んでいないが、死に至らしめる舞台裏の戦争はどんどん進められているのだ。だからこそ、圧力によるのではなく、外交による解決が早急に求められているのだ。 http://blog-imgs-118.fc2.com/t/m/m/tmmethod/20180114104921a80.htm

トランプが北朝鮮との戦争を始めない理由

Mike Whitney
2017年9月8日
Counterpunch

ドナルド・トランプは北朝鮮と戦争を始めないだろう。そういうことはまずないだろう。

というのは、米国にはそんな大規模な作戦を遂行する地上軍はないし、さらに言うならば、北朝鮮と戦争しても戦略的には何の得にもならないからだ。

米国は朝鮮半島にはすでに望んでいる体制を確保している。どういうことかと言うと、韓国は米国の軍事占領下にあるし、その経済・金融システムも米国主導の欧米体制にすっぽりと組み込まれているからだ。

また北東アジアにおいては、半島の戦略的位置は極めて重要な場所になっている。なぜなら、そこには急速に台頭しつつあるライバルである中国とロシアを包囲・支配するために用いる重要な兵器システムを配備できるからだ。

そんな場所で戦争をやって何かいいことはあるのか。

何にもない。ワシントンにとっては、いまのままの状態が最高なのだ。

いや、私にもみなさんの考えが理解できないわけではない。攻撃を指示しているトランプが衝動的なふるまいをする政治的素人ゆえに、気まぐれなことをやらかして北朝鮮と核戦争を始めることだってあるじゃないかと心配していることを。

確かにそんなことも全くないわけではないが、その可能性は限りなく小さい。

というのは、あなた方も気づいておられるかもしれないが、トランプは実際のところは取り巻きの将軍連中に外交政策を手渡してしまっており、その連中は外交政策のシステムを牛耳る有力メンバーと緊密に連携しているからだ。

彼らは巷の「何をしでかすかわからない男」というトランプ評価を利用して大きな効果を生み出している。例えば、「炎と怒り」とか「狙いを定めて装填済み」などと激しい言葉を操ってTHAADミサイルシステムの配備に反対する韓国世論をうまく押しつぶしてしまった。このシステムの特徴は「強力なAN/TPY-2」レーダーを備えていることで、中国国内を偵察することもできるし、その迎撃ミサイルは中国やロシアとの核戦争に際して米軍基地や駐留米軍を守るように設計されている。

THAADの狙っているのが北朝鮮でないことは明白だ。ワシントンにとっては北朝鮮はちっちゃなジャガイモにすぎないのだ。それは「アジア基軸」戦略を実行するために米国が密かに進めている軍備増強の重要な一環なのだ。

一方で、トランプのけんか腰は北朝鮮の態度を硬化させて、弾道ミサイルや核兵器の実験を勢いづけさせている。北朝鮮のそういった対応が韓国との昔からの対立を増幅し、リベラル派である文(ムン)在(ジェ)寅(イン)大統領の宥和政策を損なうことにもなっている。

北朝鮮のふるまいは、同時に、戦術核兵器を配備することをとりわけ強く望んでいる韓国の極右集団を元気づけている。トランプは右翼グループにへつらい南北間の憎しみを煽ることで、南北を統一するという努力に耳を傾けるどころか、米軍の軍事的占領を継続することを正当化するのに一役買っているのだ。

今回の危機が朝鮮半島へのワシントンとの支配を強化し、また一方で米国の黒幕である特権階級(エリート)の利益を拡大したのは明白だ。

私はトランプ自身がこのような計画を自分で考えたとはとても思えない。これは闇の政府(ディープステイト)を操る連中の仕業にちがいない。かれらは彼の気まぐれな性格を自分たちに有利になるように利用することを思いついたのだ。

北朝鮮の核兵器についてもひと言

北朝鮮指導部は核兵器と弾道ミサイルにお金をつぎ込みたいとは思っていない。国民が飢餓の瀬戸際にあるからだ。しかし彼らに他のどんな選択肢があるというのか。あらゆる国家の第一の責任は自国の国民の安全を保障することである。ところが、国家がある国と法律上は戦争状態が終わっていないときにはその責任を果たすことは困難になる。さらにその相手国が過去70年間に50ヶ国もの主権国家を転覆させたり、あるいは転覆させようとした国であるときには、なおさらそれは難しい。

朝鮮戦争は平和条約を締結させて終わったのではなく、休戦協定を結んだだけなのだ。つまり、戦争はまだ継続していて、いつなんどき再び燃え上がるかもしれないのである。 しかもワシントンは北朝鮮との平和協定に署名するつもりはない。というのはワシントンは北朝鮮の政治形態を嫌っていて、彼らを権力の座から追い出すチャンスを虎視眈々と狙っているからだ。この点においてはトランプは彼の前任者と何も変わらない。彼も平壌の指導者を嫌い、またそのことを隠そうとはしていない。

結論はこうだ。米国はいかなる文書での保証も北朝鮮に与えることを拒否している。米国は戦闘を再開しない、国民を殺さない、都市を焼き払わないという保証を与えないのである。そんなふうだから、北朝鮮が自国を防衛する手段を講じるのは当然なのだ。金(キム)正(ジヨン)恩(ウン)もよくわかっている。もし彼が核兵器を攻撃で使用すれば、コリン・パウエルが無頓着に表現したように、米国が「北朝鮮を練炭に変える」ことを。もちろん彼は核兵器を使うつもりはない。というのは彼に領土的野心は全くないし、自国が火の玉に包まれたいという強い願望もないからである。彼の核兵器は将来ワシントンと交渉するときの切り札にすぎないのだ。

残された問題はたったひとつ――トランプには取引する意志がないことだ。なぜなら、数発のお粗末なミサイル発射実験をハルマゲドン風のドラマに仕立て上げた方が米国の地政学的権益に役立つからだ。ワシントンほど危機の活用方法を知ってるものはいない。

ところでトランプは現在の危機にいたる歴史的経緯を少しでも知っているだろうか。1994年に北朝鮮が、米国が彼らの控え目な要求を飲みさえすれば、核開発計画を止めることに同意していたことを。その後、米国がその条件にいったんは同意したものの、それを履行することを怠ったことを。一方で北朝鮮はその規定を遵守していたが、ついには米国の裏切りにうんざりしてプルトニウム濃縮計画を再開したことを。そういった経緯があって北朝鮮はいま核兵器を保有することになっているということを。つまり、米国が約束を破ってその合意を終わらせたということなのである。

これは憶測ではない。歴史的事実なのである。

ここにインディペンド紙の記事の切り抜きがある。それを見ると、いわゆる「核枠組み合意」の具体的な中身がわかる。

北朝鮮は、1994年の枠組み条件下で、米国との政治・経済関係の完全正常化と引きかえに、核開発計画を凍結し最終的に廃止することに同意した。これは下記の4項目を意味していた。

1.原子力の喪失を補うため、米国が率いる共同体が2003年までに北朝鮮に二基の軽水炉を建設する。

2.そのときまで、米国は北朝鮮に年間500,000トンの重油を供給する。

3.米国は経済制裁を解除し、北朝鮮をテロ支援国家リストから外し、おそらくはこれが最も重要なことだろうが、1953年の朝鮮戦争休戦の条件にしたがったままになっている政治的関係の正常化する。

4.最終的には、双方が「核兵器使用の脅威」に対する「正式な保証」をする。

(「1994年のアメリカと北朝鮮との協定はなぜ失敗したのか―そしてトランプがそれから学べること」Independent紙)


これは全くわかりやすい協定内容で、双方の要求が満たされたものだった。北朝鮮は、死活的要求だった国家の安全を保証することに加えて、いくつかの経済的特典を得られる。一方で,米国は、その見返りに、あらゆる核施設を監視でき、それで大量破壊兵器の開発を防げる。全員がそれぞれ望んでいたことを得たはずだった。ただ、ひとつだけ問題があった。米国が最初から怠慢を始めたのだ。軽水炉は基礎段階以上には決して進まず、重油供給はますます不定期になった。それとは対照的に、北朝鮮は協定書をきちんと守るだけでなく、待されていた以上のことまでした。協定が発効して4年後の同記事には次の記載がある。

米国も国際原子力機関も、北朝鮮側には「枠組み合意のあらゆる点において根本的な違反は無い」ことに満足した。しかしワシントンは、自らの誓約についてはきちんと守れなかった。 (インディペンデント紙)

これでおわかりだろう。北朝鮮は約束を守ったが、アメリカは守らなかった。実に単純だ。

上記の事実はしっかり押さえておいてほしい。というのは、マスコミは何が実際に起こって、誰がその責任を負っているのかに関して、間違った報道をすることが普通だからだ。
責任は平壌にあるのではなく、ワシントンにあるのだ。同じ記事を更に引用しよう。

ワシントンは自分の約束を守り切らなかった。軽水炉は決して建設されなかったし、重油出荷は遅延することが多かった。北朝鮮は2008年まで国務省のテロ支援国家リストから削除されなかった。ずっと以前から削除基準を満たしていたのにもかかわらず、である。もっとも重要なことは、米国は朝鮮戦争(法律上は継続している)を正式に終わらせるためのいかなる行動もとらなかったことだ。1953年の停戦協定を平和条約で置き換えれるだけでそれは可能だった。米国が北朝鮮を攻撃しないという「正式な保証」は枠組みが調印されて六年後までなされなかった。(インディペンド紙)

2000年にブッシュが大統領に当選して、事態はさらに悪化した。北朝鮮はブッシュによる「悪の枢軸」演説で名指しされ、「米国が武力を行使するよう備えておくべきならずもの政権」のリストにも載せられた。またペンタゴンは韓国との共同軍事演習を強化し、火に油を注いだだけだった。最終的には、ブッシュは協定をすっかり放棄し、北朝鮮は核兵器開発を再開することとなった。

次に登場したのはオバマだったが、ブッシュよりずっとまともだったわけではない。もちろん世間の評判は違ったが。ネイション誌に掲載されたティム・ショロックの秀逸な記事では、オバマは六カ国協議を妨害しエネルギー支援を中断した。より厳しい「検証計画」を受け入れさせるため北朝鮮に圧力をかけたかったのである。平壌との「直接対話という考え方を放棄し」、「韓国との一連の軍事演習に乗り出したが、これが彼が政権にいる間に規模もテンポも拡大し、今や金正恩との緊張の核心となっている」。

オバマは「紛争調停者」という仮面で自身の残虐行為や侵略を隠すことこそできたものの、北朝鮮との関係は悪化し続け、状況は目に見えてひどくなった。

ショロック記事の以下の抜粋を見てみよう。いったい何が起きたのか、そして、いったい誰が悪いのかについて簡潔な記述がある。

合意された枠組みによって、北朝鮮はプルトニウムによる核兵器開発計画を10年にわたって停止した。これは100発以上の原子爆弾を製造するに足るウラニウム濃縮を行わなかったことになる。「私たちが知らないのは、北朝鮮が1991年から2003年の間まったく核分裂性物質を製造していなかったことだ」。

枠組みはブッシュ政権までは有効だった。1998年に国務省のラスト・デミングは議会でこう証言した。「北朝鮮には枠組み合意のいかなる点においても根本的な違反は無かった」。

平壌は全ての中距離、長距離ミサイルの開発、実験配備を停止する用意があった。

1997年までは北朝鮮ははげしく抗議していた。米国が約束した石油提供をなかなかせず、敵対的政策を止めるという誓約を引き延ばしたからである。

このような経緯があって、平壌は米国には約束を果たす意志はないと確信するようになり、1998年に「他の軍事的選択肢」を模索し始めた。

ブッシュは枠組み合意を破棄した。そして一年前の2002年1月に彼が北朝鮮を「悪の枢軸」のひとつに名指ししたときに引き起こされた関係悪化はさらにひどくなった。そのような状況の中で、北朝鮮は国際原子力機関査察官たちを追い出し原爆製造を始め、2006年に最初の原爆が完成した。そしてそれが今日まで続いている第二次の核危機につながるのである。 (「北朝鮮との外交はかつてはうまく行っていたのだから、いま一度、そうすることも可能だ」、ティム・ショロック、ネイション誌)

 今や水素爆弾を保有している北朝鮮に対して、ワシントンは相変わらず愚かなゲームを演じている。このイカサマ危機は全てワシントンの帝国主義的謀略をおおい隠すために考えられた巨大な煙幕である。トランプは金(キム)のミサイル実験をペンタゴンの軍事的触手をアジアの奥深くまで広げる口実に利用している。米国は世界で最も急速に成長しつつある地域でも支配的な立場につきたいのだ。ワシントンが過去百年間やってきたのと全く同じゲームだ。不幸なことに、連中はこれが大得意なのだ。(2017/12/15))
                           (翻訳:山田昇司)
英語原文
https://www.counterpunch.org/2017/09/08/why-trump-wont-start-a-war-with-north-korea/

続きを読む»

汚い小さな秘密 アルジャージーラのニュース

<朝鮮戦争の読書メモを書いている際に、貴重な資料だったので翻訳しました(翻訳:岩間龍男)>

汚い小さな秘密 Dirty Little Secrets

アルジャジーラ 2010年3月10日

http://english.aljazeera.net/programmes/peopleandpower/2010/03/201031761541794128.html

 この夏は朝鮮戦争開始から60年目の記念日に当たります。血なまぐさい3年間の戦争は、共産主義国の北朝鮮とアメリカに率いられた国連の連合軍によって支援を受けた南朝鮮を対決させました。

 それは冷戦の最初の武力紛争であり、1953年に休戦が合意されるまでに、200万人の兵士と200万人の民間人が殺傷されました。

 60年たっても、いまだに戦争は正式には解決していません。

 両陣営の軍隊は38度線でお互いに対峙しています。その一方で、ワシントンと北朝鮮の首都である平壌の関係は、北朝鮮の核兵器のプログラムをめぐる厳しい論争に支配されています。

 しかし、両陣営につきまとい続ける別の厳しい歩み寄りのない論争があります。

 北朝鮮が主張しているのは、戦争中にアメリカが朝鮮の民間人に対して生物兵器を使用したということです。炭疽菌、腸チフス、腺ペストに感染した昆虫や貝類や羽を含んだ「細菌」爆弾を国中の村々に投下したというのです。

続きを読む»

地獄への道:フィリピン国内のダーイッシュはアメリカのプロジェクト

2017年6月10日 (土)
Federico PIERACCINI
Strategic Culture Foundation
最近の一連の出来事で、フィリピンは急速に混乱に陥っている。フィリピン特殊部隊が、悪名高いフィリピンの組織アブ・サヤフの指導者と目されるイスニロン・ハピロンを逮捕しそこねたことと、一連のダーイシュ系のテロ集団によるマラウィの都市占拠のす早い作戦行動とが同時に起きた。これは、ドゥテルテ政権に対する国内、海外からの圧力のエスカレーションで、彼が外交政策を変更したことに起因している。
続きを読む(Federico PIERACCINI Strategic Culture Foundation)

米国の戦争の脅威が北朝鮮に強迫観念を強いている

http://blog-imgs-102.fc2.com/t/m/m/tmmethod/20170427224433e77.htm

北京の「カンボジア・コネクション」

北京の「カンボジア・コネクション」:
 中国との友好回復、「アメリカの友からアメリカの敵へ」 ジョセフ・トーマス
  グローバル・リサーチ2016.826
http://blog-imgs-100.fc2.com/t/m/m/tmmethod/201702012211524cc.htm

プロフィール

tmmethod

Author:tmmethod
FC2ブログへようこそ!

検索フォーム
リンク
最新記事
カテゴリ
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

月別アーカイブ
最新コメント