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次々と外国人傭兵が死んでいる。115カ国から1万5000人以上がウクライナ軍に入隊。

<記事原文 寺島先生推薦>
Foreign mercenaries continue to die in the Ukraine conflict: RT takes a closer look at who is fighting for Kiev (VIDEO)
ロシアの最新の推計によると、115か国から1万5000人以上の外国人が戦闘に参加した、という。
出典:RT 2025年3月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2025年3月21日


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ロシア軍がクルスク地域から敵の侵略者を追い出している間、ウクライナ軍と共に戦っている外国人は大きな犠牲を出し続けている。過去数週間にわたり、ロシアは同地域にいた数百人のキエフ軍と外国人傭兵を排除したとの報告が相次いでいる。

軍事安全保障と軍備管理問題に関するウィーンでの協議でロシア代表団の代表代理を務めたユリア・ジュダノワ氏が提供した最新の推計によると、戦闘には1万5000人以上の外国人が参加した、とみられる。

2022年にウクライナ紛争が激化して以来、ロシア側はウクライナ側で戦う外国人傭兵は正当な標的として扱われ、ジュネーブ条約に基づく法的保護は提供されない、と繰り返し警告してきた。

2024年8月のウクライナ軍によるクルスク侵攻後、ロシアの捜査官らは、侵攻に外国人傭兵が積極的な役割を果たしていた証拠を発見した。先週、ロシア軍は、敵軍の大半がすでにこの地域から追い出されており、残存するウクライナ軍は「包囲され」「孤立」している、と報告した。

関連記事:Kiev rejects Putin’s offer of mercy for troops in Kursk

捕虜となったウクライナ兵士の一人は、外国人傭兵らが撤退しようとする者は射殺すると脅すので、キエフ軍はこの地域からの撤退を阻止されている、と主張している。

RTのサスキア・テイラー記者は、一体誰がウクライナ側のために、そして何のために戦ってきたのかを詳しく調査した。


ロシアの専門家諸氏からの声「ゼレンスキー退陣は確実。しかし今後の展開は未知数。EU諸国はあくまでもトランプ退陣まで戦争継続を画策

<記事原文 寺島先生推薦>
‘The countdown to the end of Zelensky’s regime has started’ – Russian experts on the Trump talks fiasco
ウクライナ指導者と米国大統領との会談は、ウクライナ政府にとって大惨事だったが、長期的な結論を出すには時期尚早かもしれない。
出典:RT 2025年2月28日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2025年3月13日


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© AP / ミスチスラフ・チェルノフ


ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領がワシントンを訪問した際、彼とドナルド・トランプ米大統領との間で公の場での口論が起こり、会議は短縮され、予定されていた記者会見は取りやめられた。ホワイトハウスのカメラの前で、これほど感情的で否定的な色合いの相互非難の応酬は、おそらくこれまで誰も見たことがないだろう。

世界情勢誌「世界情勢におけるロシア」フョードル・ルキヤノフ、編集長

「ウラジーミル・ゼレンスキーは、ドナルド・トランプ就任後に米国政治で起こった変化の規模を過小評価していました。彼が事実を読み損ねた原因は、この3年間、西側の誰も、ウクライナの代表者たちを公然と否定することを容認してこなかった事実に起因します。特にゼレンスキー自身が公然と否定されることなどありませんでした。ウクライナの外交官や政治家、文化人はほとんど何をしても許されてきました。彼らは被害者です。彼らには権利があります。西側諸国が見せてきたこの寛容さこそ、キエフ指導者に対する残酷な冗談だったからです。

しかしこの問題は、ある人物の振るまいが良くなかったことだけですまされません。そんなことは個人的な問題だからです。このような振る舞いが許されていたのは、ウクライナ紛争が歴史的に見て西側が、「自分たちは悪を懲らしめる正しい立ち位置にいる」という認識が通用する場合のみなのです。そのような戦争であれば、ほとんどすべての行為が許されるからです。その行為を非難するものは誰もいないでしょう。

トランプはこの戦争をやっかいな問題だとみており、この戦争に関わっている人すべてがその責任を問われるべきだ。と考えています。特に彼の前任者に対してそう思っています。ホワイトハウスでおこなわれたあのまさに歴史的な電話会談におけるトランプの主要な論点は、以下のようなものでした。それは、「私は仲介者であり、どちらの側にもつかない。この戦争を終わらせたいのだ。そうすることこそ根底的な方向性なのだ」というものでした。非常に不思議な事なのですが、トランプは古典的な外交手腕を見せています。それは戦争を終わらせるために必要な手腕です。ゼレンスキーやその支援諸国はそれを否定し、決定的な勝利に頼っています。しかしそれは達成不能な目標です。

ホワイトハウスで間違った戦略のもと、取り返しのつかない失態をおかしたゼレンスキーがいま抱えている問題は、欧州や米国内に存在する彼の支持層まで無力化してしまったことです。彼らはトランプに対して発せられる限りの怒りの声をあげ、ウクライナへの支援の継続を要求するつもりだったようですが、ゼレンスキーの失態のほうが目立ってしまったからです。この米国大統領をより好ましい立ち位置に移し替えようという好機が台無しになってしまいました。

それ以外の二つのちょっとした懸念があります。一つ目は、ゼレンスキーはいま、ロシア大統領の持つ自制心と機転のよさを評価する機会を得た、ということです。お互いがお互いのことをどう思っているかは、別として、です。もうひとつは、この戦争が継続してしまう、ということです。

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関連記事: Zelensky not ready for peace – Trump

アナスタシア・リハチェワHSE(高等経済大学)大学世界経済・国際関係学部長

「世界は長い間、国際政治においてこのような場面の目にしたことはありませんでした。テレビのドッキリ番組のようでした」

同時配信されたこの騒ぎの後、ドナルド・トランプは、そのような圧力と激しさこそが、真実を明らかにするためにまさに必要だったと記しました。それは彼の古いショー「アプレンティス」を非常に彷彿とさせるものでした。その中で最も印象的だったのは、残酷な「お前はクビだ」というセリフでした。ゼレンスキーは、信じられないほどの粘り強さで、別案を持たない人の行動を示しましたが、これはあらゆる交渉の論理に反します。簡単な結論を言わせてもらえば、ゼレンスキーの主な目標は「交渉をする気がないことを示すことだった」ということです。ウクライナのTVドラマ「国民の下僕(しもべ)」のある話の中で、ゼレンスキーが演じていた登場人物が、ウクライナの土地の民営化のための搾取的なIMF融資に関する文書を役人の顔に投げつけた場面がありました。

テレビ番組における論理は単純明快なものであるため、近い将来、双方に抜本的な行動が求められます。しかし、テレビで視聴率が取れた内容は、現実世界においては非常に危険度が高いものなのです。すべての兆候は、今後数日と数週間が非常に危険であることを示しています。さらに、それらは不合理なほど危険です。そして、テレビの論理にしたがえば、最も激しい話の後には、「役者の交代」が起こるかもしれません。

マクシム・スチコフ MGIMO大学国際研究所所長

「ゼレンスキーは、トランプとの交渉で決して押すべきではなかったすべての「ボタン」を押しました。それは、彼の米国とのやりとりの手口と、彼の議論の内容の両面において、です。

私の意見では、彼の主な間違いは、米国の脆弱性と、その唯一の力の源、つまり、米国が世界で熱戦が繰り広げられている場所から距離を保つことを可能にしている有利な地形(「貴国には海がある」)を指摘したことでした。大統領執務室で、マスコミの前で、米国の強さを主題にして選挙運動をおこなってきた大統領と彼の野心的な副大統領に、これを言うことは、衝動的な動きを見せるトランプに対して、ゼレンスキーは単純に許すことのできない男であると判断させることになりました。トランプは、「ゼレンスキーは米国に完全に依存している」と考えているのですから、なおさらです。

だから、もしロシアが民主党にとって「夢を台無しにする存在」であるとしたら、ウクライナとゼレンスキー自身が、トランプにとって「夢を台無しにする存在」になったことになります。ゼレンスキーの頑固さにより、紛争を解決するための大きな取引をする、というトランプの夢を台無しにしたのですから。

意外なことに、J.D.ヴァンスも存在感を発しました。彼は、ゼレンスキーが米国の選挙戦の真っ只中に民主党員と一緒にペンシルベニア州を訪れたときに、ゼレンスキーが誰を支持していたかを忘れていないことを明らかにしたのです。

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関連記事:Zelensky not ready for peace – Trump

しかし、目撃されたことについて楽観的になりすぎるべきではありません。米国は、紛争を終わらせるための鍵を握っています:米国は、ウクライナの全軍事指揮体系が依存している「スターリンク」を無効化できるため、一週間以内に戦争が終わることになる可能性があります。しかし、米国がそうしないのは、この状況からさらに多くのものを抽出できると感じているからです。ゼレンスキーの訪問は、ロシア側にさらなる動きを繰り出す機会を与えてくれました。これを賢く使わない手はありません」

HSE大学総合ヨーロッパ国際研究センタードミトリー・スースロフ副所長

「トランプとゼレンスキーの公の場での口論や交渉の完全な失敗、ウクライナの天然資源に関する取引の崩壊、ゼレンスキーのホワイトハウスから早々と追い出されたことにより、ウクライナでの戦争が米ロ交渉を通じて、主にロシアの条件で解決する可能性が急激に高まりました。彼らはまた、ゼレンスキー政権の終焉への秒読みが開始されました。

ゼレンスキーが明らかに過小評価していた事実は、戦争をできるだけ早く終わらせるというトランプの決意と、トランプがウクライナでの戦争を「善と悪の世界的な闘争の場」としてではなく、これは負け戦であり、この戦争のせいで米国の戦略的目標にとって本当に重要な資源の再分配が妨げられている、と見ていることでした。

同時に、ゼレンスキーは自分のイメージを過大評価し、バイデン政権下のホワイトハウスで自分がどのように受け入れられたかという考え方に囚われたままでした。心理的に、彼は、自分が「新たなチャーチル」や、全欧米のために「悪の勢力」と戦う指導者として見られているのではなく、むしろ、明らかに負けている戦争、第三次世界大戦に発展する危険を伴う戦争に、資金提供を続けるよう米国に嘆願する、疑わしい正当な日和見主義者である、と見なされているという現実に対して、準備ができていなかったのです。

トランプ側の論理は明確です:「ウクライナは戦争に負けつつあり、米国の支援がなければ、戦争はさらに速く、より悲惨な形で敗北するだろう」というものです。したがって、ゼレンスキーの役割は、米国が勝者であるロシアと交渉している和解条件を受け入れることです。ゼレンスキーは、彼自身の自尊心のために、そして欧州からの支援を期待して、それを拒否したのです。

その結果、トランプ政権とトランプ自身は、ウクライナ側が現在交渉することができず、和平の障害であり続けていることを、今やいっそう強く確信することになりました。したがって、米国はロシア側と直接交渉をおこなうしかなくなったのです。

今回起こったことは、欧州にとっても非常に不愉快なことでした。欧州の指導者たちは、ゼレンスキーを支持し、トランプに対抗して彼を支持する可能性が高いです:ロシアと米国は責任ある大国として和平交渉をおこない、一方、はるかに能力の低い欧州とウクライナは、戦争の継続を推し進めることで、これらの交渉を、そして平和そのものを混乱させようとするでしょう。これは、既に否定的なEUに対するトランプの態度をさらに悪化させ、最終的には、フランスのエマニュエル・マクロン大統領と英国のキール・スターマー首相が今週ワシントンで推進しようとした形でのウクライナに対する「安全保障」への米国の参加を除外することになるでしょう。

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関連記事:Majority of US Republicans hostile to Zelensky – poll

近い将来、トランプ政権は、バイデンの予算案の下でまだ提供されている武器の供給さえも停止する可能性が高いです。もしウクライナ軍への諜報活動も止めれば、戦場でのウクライナ側の敗北の速度は加速し、数カ月以内に戦線が完全に崩壊することになるでしょう。そして、EUがほぼ確実に別の緊急首脳会談を招集し、ゼレンスキーはそれに出席する可能性が高いのですが、その際ウクライナ側への援助を増やすことを約束すると思われます。しかし、全体的な力関係は変わらないでしょう。

ゼレンスキーとトランプの交渉が失敗した後、トランプは、和平に関するロシアの立場をいっそう受け入れるようになるでしょう。もちろん、客観的に見て米露間の姿勢には矛盾があることは否めません。米国側はまず停戦を優先し、他の全ての問題を後回しにしようとするでしょうから。重要な問題は、2022年のイスタンブール合意が和平解決の基礎を形成するべきだ、ということです。結局、トランプは、戦争に勝った側であるロシアが、ウクライナよりはるかに強力な交渉力を持っていることを明確に示した、ということです。

短期的には、ゼレンスキーは、彼自身の(そしてヨーロッパの条件)で和解を確保しようとして失敗しただけでなく、今や彼は、主要な資金提供国からの支援なしに戦争を継続させなければならない状況に直面している。これはウクライナの敗北を加速させ、最終的にはロシアが主張する条件での和平をもたらすことになるでしょう」と述べた。

アントン・グリシャノフ ロシア外務省外交アカデミー現代国際問題研究所上級研究員

「ゼレンスキーは、異なる方法でトランプやヴァンスと会話をおこなう機会がありました。つい最近、木曜日(2月27日)に、この米国の指導者は「非常に良い会談」を予測し、ウクライナ側の代表に対して自身が継続的に敬意を払ってきたことについて語っていました。しかし、ゼレンスキーは明らかに現実を掌握できなくなっていました。ホワイトハウスに到着すると、彼はあらゆる間違いを犯し、相手側からのほのめかしに気づくことができず、真摯な気持ちで沈黙し、謙虚に頭を下げ続ける機会を逃しました。国際問題におけるこの愚かさと過度な自信に対して、ゼレンスキーは代償を払わなければなりません。

もちろん、1つの話だけでは長期的な結論を導き出すには不十分ですが、短期的には、この悲喜劇的な会話がウクライナ内でのゼレンスキーの立場を弱め、ロシア外交が米国との取引でさらなる影響力を持つようになることは間違いありません。しかし、和平の手続きに対するロシア側と米国側の立場は依然として分かれており、トランプの予測不可能な気質は、紛争終結への道のりに多くの驚きをもたらすかもしれません。

この記事の初出は、コメルサント紙。RT編集部が翻訳および編集を加えた。

ヴァンス米副大統領のミュンヘン演説の要点。「欧州諸国は国外の脅威よりも国内の脅威が怖いのだ」

<記事原文 寺島先生推薦>
‘Freedom of speech, NATO states’ role in their own defense, migration crisis: Key takeaways from Vance’s Munich address
ヴァンス米副大統領は年次安全保障会議で欧州各国の指導者や専門家らに語りかけ、海外の問題よりも国内の問題に焦点を当てるよう要求
出典:RT 2025年2月15日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2025年2月25日


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2025年2月14日、ドイツのミュンヘンで開催された第61回ミュンヘン安全保障会議で演説するJD・ヴァンス米副大統領。© ショーン・ギャラップ/ゲッティイメージズ


米国のJ・D・ヴァンス副大統領は金曜日(2月14日)、ミュンヘン安全保障会議で歴史的な演説をおこない、この演説をドナルド・トランプ大統領は「素晴らしい」と称賛した。ヴァンス副大統領は西側民主主義国が直面している最も差し迫った問題に触れた。彼の発言の要点は以下のとおり。

民主主義の後退

ヴァンス氏は、選挙が無効になったり、無効と脅かされたりした事例を例に挙げ、欧州における民主主義的価値観の浸食を懸念している、と述べた。同副大統領は、外国の介入の疑いで11月に第1回投票の結果が覆されたルーマニア大統領選挙を例に挙げた。

しかし、12月の調査では、独立候補のカリン・ジョルジェスク氏を支持するソーシャルメディア上の運動にロシアが関与したという証拠は見つからなかった。代わりに、同氏の選挙運動は親欧米の国民自由党(PNL)から資金提供を受けていたことが明らかになり、以前の主張と矛盾していた。スヌープ社は、ルーマニアの憲法裁判所が最終的に選挙を無効にした、と報じた。

「欧州の裁判所が選挙を中止し、高官らが他の選挙も中止すると脅している…我々は自分たちに適切な高い基準が課されているかどうかを問うべきだ」とヴァンス副大統領は訴え、欧州の指導者らに民主主義の原則を守るよう求めた。

関連記事:Trump ejects from the Ukraine joyride, leaving the EU screaming in the backseat

言論の自由と検閲

ヴァンス副大統領は演説の大部分を、欧州で検閲が強まっていることへの警告に費やし、政府がソーシャルメディアを遮断し、政治的反対意見を封じ込めることを可能にするEUの規制を批判した。

「EU当局の動きを見れば、EUの委員たちが国民に対し、いわゆる憎悪的な内容だと判断した投稿を見つけた瞬間にソーシャルメディアを閉鎖するつもりだと警告しているのがわかる」と同副大統領は語った。

同副大統領は、スウェーデンや英国で、信仰や政治信条を平和的に表現したために個人が起訴された事例を挙げた。その中には、中絶クリニックの近くで静かに祈ったために罰金を科された英国陸軍の退役軍人アダム・スミス・コナー氏も含まれる。

「英国や欧州全域で言論の自由が後退しているのではないかと懸念している」とヴァンス副大統領は警告した。


同副大統領は米国の政策との類似点を挙げ、バイデン政権がソーシャルメディア企業に投稿内容を検閲するよう圧力をかけていたと非難し、「私たちはあなたの意見に同意しないかもしれないが、公共の場で意見を表明するあなたの権利を守るために戦う」という、トランプ大統領のもとでの方向性と比較した。

ヴァンス副大統領は、欧州の最大の課題はロシアや中国ではなく、「内部からの脅威」、つまり米国と共有する基本的な民主主義的価値観からの後退である、と主張した。

「私たちは民主主義の価値について語るだけでなく、それを実践しなければならない。」

欧州の安全保障と負担分担

ヴァンス副大統領は、NATOのヨーロッパ加盟諸国は自国の防衛にもっと責任を持たなければならないというトランプ政権の立場を繰り返した。

「トランプ大統領は、ヨーロッパの友好諸国たちがこの大陸の将来においてもっと大きな役割を果たさなければならないと明確に述べている」と述べ、NATO同盟諸国による防衛費の増額の必要性を強調した。

しかし、同副大統領はまた、欧州の指導者たちの戦略的優先事項に疑問を呈した。「皆さんが何から身を守る必要があるかについては、たくさん聞いている。しかし、私には、皆さんが具体的に何のために身を守ろうとしているのかが、よく分からない」とヴァンス副大統領は述べた。

移民危機

ヴァンス副大統領は、大量移民がヨーロッパ諸国に及ぼす重大な影響を強調した。同副大統領は、移民の急速な流入が有権者の明確な同意なしに社会を変えつつあると強調し、「何百万人もの審査を受けていない移民への門戸を開く」ことを支持した有権者はいない、と主張した。



ヴァンス副大統領は、ヨーロッパのいくつかの国では人口の約20%が海外から移住してきた人々で構成されており、前例のない人口動態の変化を示している、と指摘した。

同副大統領は、この難民の急増により安全上の危険が高まっていると主張し、木曜日(2月13日)に、これは警察も承知していることだが、ミュンヘンで起きた難民申請者が車で群衆に突っ込んだ事件を例に挙げた。

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関連記事:White House sends Valentine’s Day warning to migrants

民主的な統治と民衆の役割

ヴァンス副大統領は国民の声に耳を傾ける必要性を強調し、指導者は反対意見を操作したり抑圧したりするのではなく、民主的な手続きを尊重しなければならない、と強調した。

「民主主義は、国民の声が重要であるという神聖な原則に基づいている。防火壁の余地はない。原則を守るか、守らないかのどちらかしかないのだ。」

同副大統領は有権者の懸念を無視することの危険性について警告し、国民の声に応える政府なしには真の安全は存在し得ないと主張した。

「自国の有権者を恐れて選挙に臨むのであれば、米国は何もできない。」

欧州の指導者や専門家からの反応はまちまち

ドナルド・トランプ大統領はヴァンス副大統領の発言を称賛し、この演説を「素晴らしい」と呼び、欧州における言論の自由の侵害に対する懸念に同意した。しかし、一部の欧州当局者はこの演説にあまり好感を示さなかった。

ドイツのボリス・ピストリウス国防相は米国副大統領の主張を強く否定し、「受け入れられない」と述べ、独裁政権による攻撃に例えた。同様に、EUのカヤ・カラス外交政策担当長官も、この演説は米国が欧州に「喧嘩を売ろうとしている」ことを示唆している、と懸念を表明した。



カラス氏の大西洋間の緊張の高まりに対する懸念の声は、一部のロシア当局者からも上がった。連邦評議会のアレクセイ・プシュコフ委員は、トランプ=ヴァンス主義は根本的に欧州の自由主義的価値観と衝突しており、トランプ政権下では米欧関係が必然的に緊張するだろう、と述べた。一方、ロシアのアレクサンダー・シェンデリュク・ジドコフ上院議員は、RIAノーボスチ通信とのインタビューで、ヴァンス副大統領の演説を欧州のロシア嫌いにとっての「冷や水」と評した。

米国CNN局が数百人を解雇へ

<記事原文 寺島先生推薦>

CNN to lay off hundreds media

米CNBC局、デジタル視聴者への重点の移行の中で人員削減がおこなわれる予定、との報道
出典:RT 2025年1月23日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>2025年1月27日


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©SAFE社


CNN局は早ければ木曜日(1月23日)にも従業員3500人のうち数百人を解雇する計画だ、と事情に詳しい関係者が同業者の米ネットワークCNBC局に語った。この米多国籍報道機関のCNN局はテレビから離れ、デジタル視聴者に方向転換している。

CNBC局は水曜日(1月22日)、匿名の情報源を引用して、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー傘下のCNN局は、テレビ番組の制作費を削減し、各部を統合し、デジタル購読の提供を拡大する必要があると考えている、と報じた。

関係筋によると、今回の削減はCNN局の最も有名な番組には影響しないとみられており、現在ニューヨークやワシントンで制作されているいくつかの番組がアトランタに移る可能性もある、という。

この多国籍企業は昨年10月に有料のデジタル配信を導入し、頻繁に利用する利用者から月額3.99ドルの料金を徴収し始めた。

CNBC局は、収益で世界第4位の放送局コムキャスト局傘下のNBCニュースも今週、人員削減を計画している、と報じた。事情に詳しい情報筋によると、人員削減の影響を受けるのは50人未満だ、という。

関連記事: Washington Post web traffic plummets nearly 90% – media

現在の通信報道機関の状況は、従来のテレビ視聴の人気が低下し、配信事業やインターネットを通じて相互やりとりができるソーシャルメディアを通じてニュースを消費する人が増えているため、変化の途上にある。

ワシントン・ポスト紙は今月初め、損失が拡大する中、費用削減のため従業員の約4%を解雇する、と発表した。AP通信社は11月、業務と製品の刷新を目指し、従業員の約8%を削減する計画を発表した。

COVID-19ワクチンは、インフルエンザ・ワクチンに比べて脳血栓や脳卒中になる危険性が1120倍高い。

<記事原文 寺島先生推薦>
COVID Vaccines Pose 112,000% Greater Risk of Brain Clots, Strokes Than Flu Shots
出典:Global Research 2024年11月8日
筆者:マイケル・ネブラダキス(Michael Nevradakis)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年11月18日


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COVID-19ワクチンは、インフルエンザ・ワクチンに比べて脳血栓や脳卒中になる危険性が1120倍高く、他のすべてのワクチンを合わせたよりもそれらの症状になる危険性が207倍高くなっていることが、世界規模でワクチン接種の停止を求める査読済み論文で明らかになった。

先週、「国際革新的医学研究誌」に掲載されたこの論文によると、36か月間に渡るCOVID-19ワクチン接種後に脳血栓塞栓(のうけっせんそくせん)症が5137件報告されている、という。これに対し、インフルエンザ・ワクチン接種後に報告された症例は52件、過去34年間のすべてのワクチン接種後の症例は282件である。

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こちらを参照

この論文によれば、これはCOVID-19ワクチン接種後の「脳血栓症の有害事象に関する安全信号の警戒閾値を越えている」、という。

この論文の筆者である独立研究者クレア・ロジャース氏と産婦人科医ジェームズ・A・ソープ博士、独立研究者カースティン・コスグローブ氏、心臓専門医ピーター・マカロー博士は、米国政府のワクチン有害事象報告システム(VAERS )の基礎資料を使用して分析をおこなった。

その基礎資料によると、COVID-19ワクチン接種後41か月で心房細動(脳動脈血栓塞栓症の最も一般的な特定可能な原因である不整脈)の報告が9821件あったことが示されていたが、他のすべてのワクチンを合わせた34年間で報告された症例は797件だった。

ロジャーズ氏は米国のディフェンダー紙に対し、今回の調査結果は、COVID-19大流行中およびその後に脳卒中の発生率が上昇したという事例証拠を裏付けるものだ、と語った。

ロジャーズ氏はこう記している。

「COVIDワクチン接種後、VAERSにおける脳血栓症の症例報告が大幅に増加した。病院で臨床医がこのような状況を目撃しただけでなく、一般市民も有名人や運動選手、若者の脳卒中の報告が増えているのを目撃している」と。

マッカロー氏はディフェンダー紙に対し、この論文では「新しいワクチンを『安全な』基準として通常のインフルエンザ・ワクチン接種と比較する」という「合理的なワクチン安全性研究方法」を採用した、と語った。

同氏は、この結果はCOVID-19ワクチン接種後の「恐ろしい結果」を示している、と記している。

これらの結果を受けて、この論文の著者らは「さらなる危険性を軽減し、妊娠適齢期の女性には絶対接種させないようにするため」COVID-19ワクチンの使用を直ちに世界的に一時停止するよう呼びかけた。

「私たちの論文は、COVID-19ワクチンを市場から撤去すべきだという分析が増えている中で、この潮流に加わるものだ」とマカロー氏は記し、さらに、ワクチンの撤去は「次期政権にとって最優先事項であるべきだ」とも主張した。

スパイク・タンパク質が脳卒中になる危険性の増加に関与

この論文によると、 SARS-CoV-2ウイルスとCOVID-19ワクチンに含まれるスパイク・タンパク質は、脳血栓や脳卒中の大きな原因となっている可能性が高い、という。

「COVID-1大流行期の初期段階で、SARS-CoV-2ウイルスに血栓形成作用があることが明らかになり、現在ではスパイク・タンパク質がこの血栓形成作用の主な原因の一つであると考えられている」とこの論文にはある。

この論文によると、ウイルスの元の株は「さまざまな重篤な血栓塞栓症を引き起こした」という。しかし、時間が経つにつれて「自然な進化により、毒性の弱い株が生まれた可能性がある」とのことだ。

本来見られたこの危険性は、微小血栓の発生率の増加に取って代わられ、「循環器系のより小さな血管に影響を及ぼす」ようになった、という。この論文では、「スパイク・タンパク質への累積的な曝露」が患者にそのような血栓を起こす危険性増加につながることは広く認識されている、と指摘されている。

ロジャーズ氏によれば、

「スパイク・タンパク質がこの病態に寄与すると考えられる現象のひとつは、内皮機能不全を引き起こすことである。つまり、物理的な閉塞がないにもかかわらず冠動脈が狭窄している状態だ」という。

この論文では、ファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチン、ジョンソン・エンド・ジョンソン(ヤンセン)社とアストラゼネカ社のアデノウイルスをもとにしたワクチンなど、異なる種類のCOVID-19ワクチンを比較していない。しかしロジャーズ氏は、血栓の報告を受けて、アデノウイルス・ワクチンは米国と欧州で撤回された点を指摘した。

この論文では、VAERS が「疾病予防管理センター (CDC) と米国食品医薬品局 (FDA) によって規制、所有、管理されている」ことに留意し、このような分析にこのデータベースを使用することの相対的な利点と欠点について取り上げた。

「CDC/FDAの偏見と、COVID-19ワクチンによる死亡や負傷を隠蔽し、『抑制』しようとする彼らの試みにもかかわらず、彼ら自身の基準を用いた安全性の兆候について前例のない違反が残っている」とこの論文にはある。

この安全性の兆候は明らかに見られる。「VAERS において報告がおこなわれなかった相対的な割合は30-100の範囲にあると考えられる」にもかかわらず、である。

2011年のハーバード大学の調査によると、すべての有害事象のうちVAERS に報告されるのは1%未満だった、という。

COVID-19ワクチン接種の一時停止を求める声が強まる

「チルドレンズ・ヘルス・ディフェンス」誌の上級研究科学者カール・ジャブロノフスキー博士は、ディフェンダー紙に対し、「VAERSの基礎資料を使用して危険性を推測することには限界がある」にもかかわらず、この研究結果に「驚いた」と語った。同博士は、この論文は、COVID-19ワクチン接種の一時停止を求める声の増加に加わるものだ、と述べた。

「一つの研究がワクチン接種の一時停止を正当化するわけではないが、同様な結果の研究が増えれば正当化できる」とジャブロノフスキー博士は述べた。

この論文によると、「査読付きの医学雑誌には現在、COVID-19ワクチン接種後の身体被害、身体的障害、死亡を記録した研究が3,580件掲載されている」とあり、ワクチン接種撤回を求める声が強まっていることがわかる。

先月、アイダホ州のサウスウェスト地区保健局は、地元住民やマカロー氏、ソープ氏を含む専門家の証言を受けて、COVID-19ワクチンの提供を停止する、と発表した。

これは先月、スロバキア政府がmRNA注射を「危険」とし、その禁止を求める報告書を発表したことに続くものだ。また先月、西オーストラリアの町議会はmRNA製品の禁止を求めた。

1月、フロリダ州公衆衛生局長ジョセフ・ラダポ氏は、安全性への懸念から「COVID-19 mRNAワクチンの使用停止」を求めた。

フロリダ州10郡で採択された「ワクチン接種禁止」決議の執筆者である心理療法士のジョセフ・サンソン博士は、COVID-19ワクチンの一時停止を求めるこの論文からの呼びかけを支持した。

彼はこう言った。
「COVID-19とmRNAナノ粒子注射は、生物学的かつ技術的な大量破壊兵器です。医療界は真実を語り、他の皆と同じように騙されていたことを認めるべき時です。これらの注射は、この技術の流出を通じて、注射を受けた人にも注射を受けなかった人にも害を及ぼします。」

「すべてのmRNAナノ粒子の注入は直ちに禁止される必要があり、人類に対するこの攻撃の背後にいる犯罪者を徹底的に調査する必要があります」と。

世界保健会議、COVID倫理医師会、米国内科医外科協会などの組織もCOVID-19ワクチンの一時停止を求めている。

「一般の人によるCOVIDワクチン接種率は過去最低である。こうした製品を製造する必要はもうない」とロジャー氏は記している。

ジャブロノフスキー博士は次のように述べた。

「COVID-19ワクチンの世界的な一時停止は、人類にとって、健康だけでなく謙虚さにおいても大きな前進となるでしょう。」

「私たちは危険な製品を接種するよう騙され、政府や科学者、製薬会社は私たちを騙すことに積極的だったことを認めざるを得なくなっています。私たちがこれらの条件を満たしたときに、より明るい未来が始まります」と。


*

マイケル・ネブラダキス博士はギリシャのアテネを拠点とする、ディフェンダー紙の上級記者であり、CHD.TV の「Good Morning CHD」の司会者の一人。

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BRICSは米ドル支配に挑戦する「複合通貨システム」を計画している:ロシア提案の真意は何か?

<記事原文 寺島先生推薦>
BRICS Plans ‘Multi-Currency System’ to Challenge US Dollar Dominance: Understanding Russia’s Proposal
筆者:ベン・ノートン(Ben Norton)
出典:Internationalist 360°2024年10月21日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年11月11日


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    BRICSクロスボーダー決済イニシアティブ(BCBPI)では、米ドルではなく各国の通貨が使用される。ロシア財務省と中央銀行は、国際通貨・金融システムを変革する計画の詳細を記した報告書を公表した。

グローバル・サウス指向の組織BRICSは、国際通貨金融システムを変革し、米ドルの支配に挑戦する計画を発表した。

2024年のBRICS議長国として、ロシアは、BRICS加盟国が自国通貨を使用して貿易を行なうBRICSクロスボーダー決済イニシアティブ(BCBPI) の創設を提案した。

BRICSはまた、米国が監督し、西側の一方的な制裁の対象となっている銀行間通信のSWIFTシステムを回避するための代替的な通信インフラを構築する。

この「複数通貨システム」には、貿易をドル化しないだけでなく、BRICS加盟国や他の新興市場国・発展途上国への投資を奨励するための新たなメカニズムも含まれる。これには、BRICSクリア・システム、「証券会計・決済の新システム」、各国通貨建ての金融商品などが含まれる。



BRICSは分散型台帳技術(distributed ledger technology_DLT )(例えば、ブロックチェーン*)の実験を行い、中央銀行のデジタル通貨の利用を促進する。これにより、SWIFTシステムや第三国のコルレス銀行(仲介銀行)を介さずに、各国が貿易不均衡を直接決済できるようになる。
ブロックチェーン*・・・電子的な台帳であり、暗号技術を使ってリンクされたブロックと呼ばれるレコードの増大するリストの事を指している。各ブロックには、前のブロックの暗号化ハッシュ 、タイムスタンプ、トランザクションデータ(一般的にはマークルツリーで表される)が含まれている。(ウィキペディア)

また、穀物、石油、天然ガス、金などの商品取引センターを併設したBRICS穀物取引所および関連価格設定機関の設立も計画されており、貿易不均衡の解消にも利用できる。

これらの提案は、ロシア連邦財務省、ロシア中央銀行、コンサルティング会社ヤコフ・アンド・パートナーズの共同執筆による報告書「国際通貨・金融システムの改善」にそのあらましは書かれている。(この文書のPDFファイルは、ロシア連邦財務省の公式ウェブサイトで見ることができる。リンクが機能しない場合は、ヤコフ・アンド・パートナーズのウェブサイト https://yakovpartners.ru/upload/iblock/9c2/ci594n0ysocxuukw7iliw6qtr4xz6cc4/BRICS_Research_on_IMFS.pdfでも入手可能である。)

この歴史的な報告書は、10月22~24日にロシアのカザンで開催されたBRICSサミットの前夜に発表された。

BRICSは、当初はブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカからなる新興市場および発展途上国の緩やかなグループとして設立された。

その後、この組織は拡大し、2023年のBRICSサミット(開催地は南アフリカ・ヨハネスブルグ)では、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、アルゼンチンの6カ国が新たに招待された。(当初は左派寄りのアルゼンチン政府が招待を受諾したが、2023年12月に親米右派のハビエル・ミレイが政権を握ると、BRICSを攻撃し、参加を拒否した。)

BRICSの議長国は毎年持ち回りとなっている。2023年は南アフリカが議長国を務め、2024年はロシアが議長国となった。

2024年2月、財務大臣および中央銀行総裁からなるBRICSがブラジルのサンパウロで会合を開いた。そこでロシア代表は、「国際通貨・金融システムを改善するための取り組みと提言の一覧を盛り込んだ報告書」をBRICS諸国の指導者向けに作成すると述べた。

ロシアの財務大臣アントン・シルアノフは、その動機について説明した:

     現在のシステムは、既存の欧米の金融インフラと準備通貨の使用に基づいている。それは深刻な欠陥があり、政治的・経済的圧力の道具としてますます利用されている。国際通貨金融システムの改革のもう一つの理由は、貿易と金融の制限の濫用の結果となった地理経済の分断である。

今年2月の会議で、BRICSは「多国間デジタル決済・支払いシステム」の構築計画を発表した。BRICSはこれを「BRICSブリッジ」と呼び、「BRICS加盟国の金融市場間のギャップを埋め、相互貿易を拡大するのに役立つ」と述べた。

これらの取り組みは、10月に発表された包括的な調査に結実した。

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米国主導の西側による国際通貨・金融システムの独占

ロシアBRICS議長国報告書は、国際通貨金融システム (IMFS) は「単一通貨と中央集権化された金融インフラへの過度の依存」に苦しんでいる独占状態にあるため、不当であるだけでなく非効率的であると主張した。

同文書は、「現在のIMFSは主にAE (advanced economies先進国) の利益に奉仕している」と指摘している。

さらに、「既存のIMFSは、度重なる危機、持続的な貿易と経常収支の不均衡、公的債務水準の上昇と拡大、資本フローと為替レートの不安定化を特徴としている」とした。

米国がIMFSを独占していることで世界的なドル需要が確保されているため、米国は数十年にわたって巨額の経常赤字を抱える一方で、自国の地政学的利益のために通貨を武器化してきた。

米国政府は世界で経済戦争を繰り広げており、低所得国の60%を含む1/3の国に一方的な制裁を加えている。

米国と欧州の同盟国も同様に、敵対国から数千億ドルの資産を押収している。BRICSの報告書には、ロシア、ベネズエラ、イラン、シリア、リビア、アフガニスタン、北朝鮮など、西側が外貨準備を凍結した国のリストが含まれている。

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世界銀行とIMFに代わるBRICSの選択肢:新開発銀行(New Development Bank_NDB)とコンティンジェント・リザーブ・アグリーメント(Contigent Reserve Agreement_CRA)

国際通貨・金融システムを変革しようと試みるため、ロシアの報告書では、BRICSクロスボーダー決済イニシアティブ(BCBPI)、BRICSクリア・システム、BRICS穀物取引所など、複数の新しい機関の創設が提案された。

また、BRICSがすでに設立した世界銀行および国際通貨基金(IMF)の代替機関である新開発銀行(NDB、旧称BRICS銀行)と、コンティンジェント・リザーブ・アグリーメント(CRA)を強化することも呼びかけられた。

NDBは、開発途上国、特に基盤整備プロジェクトに資金を提供するために創設された。NDBは、BRICS加盟国の通貨建て融資を増やすと約束しており、段階的な脱ドル化を目指している。

ロシアBRICS議長国は、「NDBの融資能力を大幅に拡大し、同時にこのプロジェクトが支援できるプロジェクトの数や多様性の拡大を目的としたプロジェクト選定の原則と評価基準の見直しを行なう」ことを求めた。

しかし、CRAについては楽観的な見方は少なかった。この機関は、国際収支問題に直面する国々の流動性確保の代替策として構想された。しかし、設立以来、CRAはあまり活発に活動しておらず、ロシアの提案では、米ドルとSWIFT銀行間通信システムへの依存が問題であると説明されている。

CRAに関するもう一つの深刻な懸念は、その運営がIMFによって監督されていることである。報告書は、「CRAを設立する条約は、IMFとの並行した取り決めなしに放出できる資源の量を最大値の30%に制限している」と指摘し、また、いかなる取り決めも「IMFの監視と開示に関する義務に従う」必要があると述べている。

「これは、IMFにおける現在の地位により、BRICS CRAメンバーが援助の提供について合意している場合でも、支援を受ける側が金融面での生命線を手放すことになるという状況を引き起こす可能性がある」と、この文書は付け加えている。

IMFと世界銀行は、その組織が欧米諸国によって完全に支配されているという深刻な欠陥を抱えている。両機関において拒否権を持つのは米国だけである。

1944年のブレトン・ウッズ会議でIMFと世界銀行が創設され、ドルが世界準備通貨として確立された際、欧米諸国はこれらの機関に対して大きな影響力を与えられた。(この会議当時、世界の大部分は依然としてヨーロッパ諸帝国による正式な植民地であった)

欧米の支配を確実にするため、世銀総裁はすべて米国籍、IMF専務理事はすべて欧州出身者という暗黙の合意がある。今日まで、この慣例は続いており、世界経済が大きく変化しているにもかかわらず、その傾向は変わっていない。

2023年現在、BRICSの当初5カ国は世界のGDP(購買力平価、PPPで測定)の32%を占めているが、IMFにおける議決権比率は13.54%にとどまっている。

一方、G7諸国は、世界GDP(購買力平価)のわずか30%を占めるに過ぎないにもかかわらず、IMFの議決権株式の41.27%を保有している。

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BRICS報告書は、これらの深刻な懸念を強調し、次のように述べている(強調は筆者):

     IMFの管理面も疑問視されている。IMFの主要な利害関係を持つ高所得国にとって、この制度は大きな利点となっている。先進国35カ国の利害は12人の理事が代表する。残りの155カ国は開発途上国の理事12人が代表するか、先進国経済国の選挙区に入れられてしまう。そこでは開発途上国の意見や利害は二の次になってしまう。高所得国の理事はIMFの議決権の63%を占めているが、購買力平価では世界のGDPの46%にすぎない。

こうした構造的不均衡を踏まえ、この文書ではNDBの強化とCRAの改革が求められ、両者が真の代替案となるよう求めている。

BRICSはドルに挑戦する準備通貨を創設するだろうか?SDRは第一歩である

ロシアBRICS議長国報告書は、短期から中期的には、各国通貨での貿易と投資を促進することによって脱ドル化を試みることを明らかにした。

しかし、BRICSが最終的に国際準備通貨としての米ドルの役割に挑戦する国際会計単位を創設するかどうかについては、多くの議論が交わされている。

1944年のブレトン・ウッズ会議で近代的な金融システムが創設された際、著名な経済学者ジョン・メイナード・ケインズは、バンコールと呼ばれる国際会計単位を提案した。

IMFは、公式用語集で次のように説明している(強調は筆者):

     イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズは、戦後の国際通貨制度の原案の中で、金を含む30の代表的な商品の価値に基づいて独自の通貨 (バンコール) を発行し、各国の通貨と固定レートで交換できるグローバル銀行 (国際清算連合、the International Clearing Union_ICU) を構想した。すべての貿易勘定は銀行勘定に計上されるが、各国はICUに対して銀行勘定を維持し (わずかな差の範囲内で均衡すると予想される) 、ICUに対して当座貸越枠を持つことになる。

     各国が大きな貿易赤字 (銀行の当座貸越枠の半分以上) を計上した場合、その国は勘定に利子を支払い、経済調整 (おそらく資本規制も) を受け、通貨を切り下げる。逆に、貿易黒字が大きい国も同様の課税を受け、為替レートを引き上げる必要がある。

     ケインズは、このメカニズムが各国間の調整をスムーズに均衡化させ、世界的な不均衡を回避できると期待していた。


ケインズの提案は最終的に却下され、代わりにブレトン・ウッズ会議の米国代表で経済学者のハリー・デクスター・ホワイトの案が採用された。ドルは世界準備通貨とされ、当時、1オンスあたり35ドルの固定為替レートが設定された。

しかし、21世紀に入ってBRICSやグローバル・サウスの多くが脱ドル化を推進していることから、ケインズのような提案に対する関心が再び高まっている。

ロシアBRICS議長国報告書は、そのような国際通貨の創設を明確に呼びかけてはいないが、その概念に関心を示していることははっきりしている。

この報告書によると、それに最も近いものはIMFが発行する特別引出権 (the Special Drawing Rights_SDR) だという。

報告書によると、SDRは「代替的な準備資産、さらには新たな世界通貨」としての可能性は確かにあるが、その用途は「依然として限られている」という。

「補完的な国際準備資産として創設されたSDRは、より大きな役割を果たすことができる」と報告書の著者たちは記し、「実体経済におけるSDRの利用について努力がなされなければならない」と主張した。

著者たちはさらに、「SDRは、超国家的な準備通貨としての機能と潜在的可能性を備えており、長年のトリフィン・ジレンマ*に対する解決策となり得るかもしれない。つまり、準備通貨の発行国は、世界に流動性を提供しながら、準備通貨の価値を維持することはできない」と記述した。
トリフィンのジレンマ*・・・(英: The Triffin dilemma)。国際準備通貨を供給する国において、短期の国内的影響・長期の国際的影響から生じる経済主体間の思惑の衝突のこと。1960年代にベルギー系アメリカ人の経済学者ロバート・トリフィンによって提示された。トリフィンのパラドックス(英: The Triffin paradox)、流動性のジレンマ(英: The liquidity dilemma)とも呼ばれる。(ウィキペディア)

それにもかかわらず、SDRには問題がある。その価値は、米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円、中国人民元の5つの主要通貨バスケットに基づいている。したがって、西側が米国債を保有する敵対国に対して行なったように、主権国のSDRの準備金を凍結または差し押さえできなかったとしても、SDR建ての融資を受けることは依然として為替リスクをもたらすのだ。

米国連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)が2022年と2023年に行なったように急速に金利を引き上げると、新興国経済の通貨に大幅な下落圧力がかかる可能性があり、その結果、SDR建て債務の返済がより困難になる。ただし、中央銀行も金利を引き上げれば、不況を招く可能性がある。

ロシアBRICS議長国報告書が指摘するように、「SDRは利付き通貨であるため、SDRでの借入コストは、SDRを構成する通貨バスケットを構成する国々の現在の高金利環境の影響を受け、SDRの実用的な利用がさらに制限されることになる」。

この懸念にもかかわらず、著者たちは、SDRのような国際会計単位は、別の方法で途上国の通貨に対する外因的圧力を緩和することができると主張した:

     SDRは、信用に基づく国家通貨に内在するリスクを排除し、グローバルな流動性を管理することを可能にする。そして、ある国の通貨がグローバルな貿易の基準や他の通貨の指標として用いられなくなり、その国の為替レート政策が経済的不均衡の調整にこれまで以上に効果的になれば、将来の危機リスクを大幅に軽減し、危機管理能力を向上させることができる。

報告書は、SDRの役割拡大を支持しているのはロシア政府だけではなく、中国政府も支持していることも指摘している。

「中国はSDRと人民元による外貨準備、国際収支、国際投資状況の報告を開始した。SDR建て債券も発行している。しかし、(政府機関ではなく) 市場参加者はSDRを会計単位として使い始めておらず、SDRのための市場インフラは依然としてつかみどころがない」と報告書は記述している。

つまり、ロシアBRICS議長国提案は、特別引出権(SDR)のような国際会計単位の考え方に対する条件付きの支持を表明し、「国際貿易、商品価格設定、国境を越えた投資、および帳簿管理におけるSDRの利用を促進する」こと、「投資手段としてSDR建ての金融資産をさらに創出すること」、そして「実体経済におけるSDRの利用拡大と交換手段を目的とした措置が成功した場合に、国際準備資産としてのSDRの役割を再評価し、強化すること」を呼びかけたものだ。

しかし、SDRがIMFによって管理されているという事実は、IMF自体が根本的に変革されない限り、SDRが短期的に本格的な代替案となる可能性は低いことを意味する。

投資・準備金の脱ドル化

脱ドル化の議論では、一方では国境を越えた支払いの脱ドル化、他方では貯蓄と投資の脱ドル化を区別することが重要である。

国際金融システムでは、商品の取引は総取引額のほんの一部を占めるに過ぎず、債券、株式、外国為替市場への資本流入と流出が大半を占めている。また、デリバティブ(金融派生商品)も数百兆ドルに上り、2023年6月時点で715兆ドルに達している。

これに対し、世界貿易機関(WTO)によると、2023年の全世界の商品貿易総額は23兆8000億ドルだった。国連貿易開発会議(UNCTAD)は、2022年の全世界の商品貿易総額は約25兆ドル、サービス貿易総額は6兆5000億ドルだったと算出している。

言い換えれば、世界貿易と国際金融取引の間には桁違いの大きさがある。この大きな格差を考えると、貯蓄や投資を脱ドル化するよりも、商品の国際貿易を脱ドル化する方が簡単である。

とはいえ、ロシアBRICS議長国報告書は、その両方を実現する方法を提案している。

この報告書では、分散型のBRICSクリア・システムの設立を提唱するだけでなく、「プラットフォーム加盟国の大陸における投資ハブの開発」を呼びかけ、「ユーロ建て債券に代わる新たな形態の債務発行、すなわち、参加国の国内通貨建ての可能性もある」と述べている。

BRICSは、「Association of National Numbering Agencies _ANNA(国際標準化機構)に代わるもの」を創設し、「BRICS加盟国の国内通貨建ての金融商品に国際ISINコード、CFIコード、FISNコードを割り当て、維持できるように」すべきであると、著者たちは記している。

報告書は、BRICS諸国に外貨準備の脱ドル化を促すためには、「他の国の通貨 (またはそのような通貨のバスケット) を価値の保管場所としてより魅力的にしなければならない」と強調した。これは、流動性供給メカニズムを確立し、「投資手段として機能する現地通貨建ての債券の普及」を促進することによって行なうことができる。

ロシアBRICS議長国も同様に、BRICSデジタル投資資産(DIA)の創設を提案した。これは、「BRICS構成国が拠出した資産によって裏付けられる」とされている。

しかし、多くの新興市場国や発展途上国における為替リスクに加え、中央銀行やその他の投資家が主要通貨建て資産を保有することを奨励する大きな流れを考慮すると、外貨準備やその他の貯蓄の脱ドル化プロセスは遅々として進まず、困難になるだろう。

何十年もの間、米国債は世界的な準備資産として利用されてきた。それを代替する資産として何を選ぶべきかという問題は、簡単に解決できるものではない。

短期的には、BRICS諸国の中央銀行は金に多額の投資を行なっている。このような世界的な需要の高まりを受けて金の価格はすでに高騰しており、今後も大幅に上昇すると予想されている。

しかし、報告書は、世界経済はここ数十年で大きく変化したが、国際通貨・金融システムは追いついていないと強調した。

2023年時点で、新興市場は世界のGDPの50.1%を占め、また過去10年間の世界のGDP成長の66%を占めていた(購買力平価、PPPで測定した場合)。

2024年には、BRICSの5つの創設メンバーのGDP(購買力平価)は世界のGDPの32%を占めていた。これはG7のGDPの割合よりも大きい。

これらの変化は、国際貿易の流れの変化にも一部反映されている。1995年には、新興市場および途上国間(EMDEs)での貿易は世界の商品貿易のわずか10%を占めるに過ぎなかったが、2022年にはその割合は26%に増加し、2032年には32%に達すると推定されている。

しかし、世界経済における大きな変化は、国際投資の流れには明確に現れておらず、依然として富裕国が不均衡に利益を得ている。

2022年現在、世界の投資のわずか11%がEMDEsから他のEMDEsに流れており、この数字は2010年の8%からほとんど増加していない。世界の投資の大部分は依然として先進国から他の先進国へと流れており、2022年には63%であった。これは2010年の72%からわずかに減少したが、同時期にEMDEsが世界の成長の66%を占めていたことを考えると、減少幅は小さい。

このことは、EMDEsが地球上で最も急速に成長している経済体であるにもかかわらず、外国投資から大きな恩恵を受けていないことを示している。

ロシアBRICS議長国報告書が記述しているように、「貿易の拡大から生み出された利益は、国内経済に還元されるよりも、より流動性が高くアクセスしやすい海外市場に投資されている」のである。

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新しい国際経済秩序の必要性

現代の国際通貨・金融システムの構造は、世界を植民地化した富裕な北半球諸国の利益に奉仕するものであり、植民地化された南半球の低所得国のほとんどを犠牲にするものである。

経済学者のガストン・ニーバスとアリス・ソダーノが所属する「世界不平等研究所」は、2024年4月に発表された研究論文でこのような結論に達した。彼らは次のように書いている(強調は筆者):

その結果、2000年以降、富裕国上位20% (人口加重) の超過利回り (対外資産収益率と対外負債収益率の差) が大幅に上昇していることがわかった。事実上、過去数十年に見られた米国の法外な特権は、規模と範囲が拡大し、富裕世界の特権となった。

     最富裕国は世界の銀行家となり、低利回りの安全資産を提供することで過剰な貯蓄を呼び込み、これらの流入をより収益性の高い事業に投資している。このような特権は、最貧国から最富裕国への純所得移転に換算され、上位20%の国のGDPの1% (上位10%の国ではGDPの2%) に相当し、最富裕国の経常収支は軽減される一方、下位80%の経常収支はGDPの約2~3%悪化する。

     我々は、豊かな国々はプラスの資本利益を蓄積し、それによって国際投資ポジション(IIP)が改善され、世界的に見て相対的にリスクの低い資産に投資していることを示し、潜在的な損失や引き受けたリスクを補償するために超過収益を獲得しているというこれまでの考えを否定している。

     我々の結果は、豊かな国が国際準備通貨の発行国であり、より安価な資金調達 (公共部門と民間部門の両方) にアクセスできるという事実によって説明されるようである。


この研究論文の著者たちはその研究結果を「米国の特権は、BRICSによって資金提供され、富裕層の特権となった」という一文にまとめた。

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このグローバル・サウスからグローバル・ノースへの富の流出は、国を1人当たりの国民所得の5分位に分けるとさらに明らかになる。

上位20%の富裕国はGDPの1%以上の純外国資本所得を受け取っているが、それ以外の国々ではGDPの2~3%が流出している。

この富の流出は、1970年代の新自由主義の台頭以来、特に1990年代の金融化と規制緩和の波以来悪化している。

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「世界不平等研究所」経済学者のガストン・ニーバスとアリス・ソダーノは次のように説明している:

     事実上、国際通貨・金融システムにおける富裕国の中心的地位は、世界の銀行家と同様に仲介者として機能することを可能にする。この役割は、彼らの特権をさらに強化するものであり、彼らは有利な立場を活用して過剰な貯蓄を引き寄せ、それを生産的な投資に振り向ける。このサイクルは、彼らの支配を永続させ、世界経済における主要プレーヤーとしての地位を強化する。

彼等の研究論文の結論はこうだ(強調は筆者):

     私たちは主張してきた。すなわち、富裕層の特権は市場の結果ではなく制度設計に起因するものであり、それは貧困国に多大な負担を強いるものであると。最下位80%の人々は、毎年GDPの2~3%に相当する額を移転することを余儀なくされており、その額は自国の開発政策に充てることができるはずである。

     より平等な体制を促進するために、現在の通貨・金融システムを再設計する努力が向けられなければならない。このシステムは、グローバル化、貿易、金融化、経済成長に貢献してきたが、気候変動、技術革新、不平等の拡大、長期的な人口動態の変化、複合世界における地政学的紛争の激化といった複雑な課題には対処できていない。

     第二次世界大戦後に交わされた、中立的な国際通貨・金融システムの確立という当初の約束は、未だ果たされていない。米国が米ドルという特権的地位を獲得したわけではないが、この特権はブレトン・ウッズ体制の初期に課されたものが受け継がれたものである。確かに、ドル準備金は他国によって自主的に蓄積されてきたが、ドルが安定した世界通貨としての役割を担っていた初期の段階において、米国は通貨覇権国となり、途方もない特権を手に入れ、国際的なパワーバランスを自国に有利な方向に傾けることができた。 これまで、米国の覇権は、他の通貨供給国によって部分的にしか争われてこなかった。


ロシアBRICS議長国提案は、これらの構造的問題のすべてを解決するものではないが、正しい方向への一歩である。

BRICS報告書自体は、慎重なトーンで締めくくられている。「現在のシステムが提案されたモデルからどの程度逸脱しているかということは、変化には時間がかかり、各国の共同の取り組みが必要であることを意味する」と著者たちは記し、「前述の構想の実際的な実施には段階的なアプローチが必要である」と強調した。

しかし、「重要なことは、そのプロセスがすでに始まっているということである。代替的な決済システムや金融メッセージのメカニズムはすでに存在しており、二国間決済における各国通貨の使用は拡大しており、デジタル資産を含む新しい取引方法が出現している」と報告書は付け加えた。

国際通貨・金融システムを変革するというBRICSの提案は、万能薬とは程遠いものの、こうした構造的不平等を是正する一助となる可能性はある。

この点において、BRICSの計画は、新しい国際経済秩序(New International Economic Order_NIEO)の呼びかけと同様のものとして捉えることができる。

現在、途上国134カ国が加盟するG77(Group of 77)は、1974年に初めてNIEOが発表されて以来、ほぼ毎年、NIEOの要求を繰り返し訴えてきた。

G77+中国は2024年1月にキューバでサミットを開催し、参加者は「現在の不公平な国際経済秩序が途上国にもたらす大きな問題」を非難した。同月、キューバはG77議長国としてハバナ新国際経済秩序会議を開催した。

ロシアを除くすべてのBRICS加盟国はG77の一員であり、モスクワはNIEOの呼びかけを長年支持してきた。

したがって、BRICSがNIEOの50周年に国際通貨・金融システムを変革する計画を議論していることは、極めて適切かつ象徴的である。

ヴィクトル・ユーゴが言っている:「これ以上はっきり言えることはない・・・着想はその時宜を得たときにいちばん力を発揮する」。

アメリカに愛され、自国民には嫌われた日本の首相が辞任を表明。西側諸国の政治不安がますます明らかに

<記事原文 寺島先生推薦>
Japanese PM to Resign, Once Again Confirming Western Political Instability
出典:Asia-Pacific Research 2024年8月16日
筆者:ドラゴ・ボスニック(Drago Bosnic)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年8月21日


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政情不安は、特定の国の社会問題の症状の一つに過ぎない。しかし、その症状が地政学的一極全体に蔓延しているとき、その覇権国には解決できない大きな体制的問題があることを示している。しかも、その覇権国(言うまでもなく、米国)も、高度に機能不全に陥った国々でよく見られる大規模な政治的障害を経験している。「陰謀論者」は、アメリカは徐々に破綻国家になりつつあると言うだろうが、これは、世界中のどれだけの国々が、まさにワシントンDCによって、残酷に侵略され、破綻国家にされたことを考えれば、詩的な正義の一形態とも言える。実際、政敵に対する暗殺未遂や、内戦の可能性の高まり(その他多くのことの中でも)を考えると、アメリカはますます自分が侵略した場所と同じように見えてくる。

非常によく似た状況が、西側の政治全体に蔓延している。そのいわゆる「指導者」は、事実上、支配的寡頭政治によって選ばれ、「民主的手続き」を装うために権力の地位に置かれた、非常に不人気な官僚に過ぎない。そのようなシステムを持つ国の一つは、間違いなく日本だ。二年前の「謎の単独犯」による安倍晋三の暗殺(どうやら、それが欧米政治の「あらたな常態」のようだ)の後、東京のちっぽけな主権は完全に消え去り、日本はアメリカの闇の政府(ディープ・ステート)寡頭政治のなすがままになった。現職の岸田文雄は、ワシントンDCの主人に完全に忠実で、完全にアメリカの戦略的枠組みの範囲内で政策を遂行していた。これには、「アジア太平洋NATO」の取り組み(公式にはまだ書類上だけだが、事実上は存在している)だけでなく、日本のかなり不穏な(再)軍事化も含まれる。

しかし、これだけでは明らかに十分ではなかった。岸田首相は9月の辞任を表明した。3年間の任期を経て、岸田首相はワシントンDCにとって政治的な有用性を失った。まずは与党・自民党(LDP)の党首を辞任し、その後、首相を辞任する。これは、さまざまなスキャンダルや生活費の高騰を彼が政治的に乗り越えられるかどうかについて、何ヶ月も憶測が飛び交った後のことだ。岸田首相は8月15日の記者会見で、自民党総裁選(9月予定)の再選には出馬しないとも述べた。

「日本は国内外で厳しい状況が続いています。これらの課題にしっかりと取り組んでいくことが極めて重要です。自民党が変わりつつあることを示す最初の、そして最も明確なステップは、私が辞任することです」と岸田首相は述べ、「政治への信頼と国民からの信頼が重要です。国民の理解と信頼を取り戻すことで、前に進むことができるのであり、だからこそ自民党は変わらなければならないのです」と続けた。


彼はまた、彼の決定は「政治への信頼を回復する必要性に基づいている」と述べ、「改革志向である後継者が理想的である」とも述べた。このような主張は(控えめに言っても)異例である。特に彼の内閣が彼の首相在任中の3年間ずっと非常に低い支持率であったという事実を考えると。その多くの理由の一つは、2023年に岸田首相の4人の閣僚が解任される結果となった政治資金スキャンダルだった。最新の世論調査では、彼の政権は日本の有権者の間でわずか14%しか支持されておらず、これまでの日本の首相が持っていた通常の30%の半分以下だった。Zero Hedgeが報告しているように、その主な理由の1つは、最近の一時的なインフレの急上昇だった。なぜそれが一過性のものかというと、日本は世界のどの国よりも債務負担が高いからだ。日本の民間・公的債務の合計は、GDPの400%以上に達している。

これほどひどい債務対GDP比で独立した決定を下すことは事実上不可能だ。これは日本経済にも影響を及ぼして業績の停滞をもたらし、最近ではロシアがそれを追い越し、ドイツが世界第4位の経済大国に取って代わった。岸田首相が3年間も政権の座にとどまった唯一の理由は、野党と自民党の両方に、まともな対抗馬がいなかったことだ。日本の政治アナリストは、後継者として最も可能性が高いのは茂木俊充元通商相、石破茂元防衛大臣、河野太郎元外務大臣だと推測している。彼らは全員政治屋なので、寡頭政治家たちは彼らのいずれでも満足するとしか予想できない。なぜなら彼らは、特に中国に再び焦点を合わせている世界で最も著名な米国の属国の一つとして日本に求められている同じ政策を継続するだろうからだ。

前述したように、大きな社会的・経済的問題があるにもかかわらず、岸田政権は軍事予算の増額に注力し、その結果、日本の(再)軍事化が加速し、第二次世界大戦中に日本が侵略したアジア太平洋地域のすべての人々にとって不穏な状況の変化が生じている。その比類のない債務対GDP比にもかかわらず、東京は軍事費をGDPの2%に増やしており、これはNATO加盟要件と一致している。これらすべては、日本が実際に「グローバルNATO」入りを準備していることを示唆している。また、新たな長距離攻撃能力を獲得し、アジア太平洋地域に展開する米軍との相互運用性も向上させている。これは地球上の安全保障にとって悲惨な見通しだ。なぜなら、地球上で最も卑劣な組織であるNATOは、全世界に対する包括的な侵略行為で悪名高く、その過程で無数の国々を破壊しているからだ。

ラーム・エマニュエル駐日米国大使は、岸田首相を「米国の真の友人」と称賛するばかりで、「岸田首相はバイデン大統領と協力して、同盟を守る時代から同盟を国内に投影していくという日米関係の新たな章を開いた」と付け加えた。おそらくこれが、首相の前例のないほど支持率が低い理由の一つかもしれない、なぜなら、米国大使から褒められることは、事実上、その国が本当にどれほど独立しているかどうか(あるいは、従属的と言うべきか)を知るリトマス試験紙であり、したがって、愛国心が少しでもある人にとっては、大きな危険信号となるからだ。

米国はイスラエルへの軍事援助物資の輸送を凍結 – ネット報道機関アクシオス社の報道

<記事原文 寺島先生推薦>
US froze military aid shipment to Israel – Axios
ワシントンがこのユダヤ国家の軍への物資供給を差し控える措置を取るのは10月以来初めて
出典:RT 2024年5月5日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年5月10日


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2023年1月2日、イスラエルが併合したゴラン高原の陣地で車両から軍需品を輸送するイスラエル兵士たち© AFP / Jalaa Marey

米国は先週、イスラエルへの米国製弾薬の輸送計画を突然中止した、とアクシオス社が日曜日(5月5日)に報じた。ガザ地区でのイスラエルの行為に対する批判を強めているホワイトハウスは、この計画の中止について説明していない。

2人のイスラエル当局者がアクシオス社に語ったところによると、先週配送が不可解にも停止されたことに対して、イスラエル政府は「なぜ配送が保留されたのか理解に苦慮している」という。

ホワイトハウスはアクシオス社の質問に対する意見表明を行わなかった。一方、国防総省や米国務省、イスラエル首相官邸もこの質問にはまったくの梨の礫(つぶて)だった。

昨年10月7日にパレスチナ武装勢力が奇襲攻撃を開始し、約1200人が死亡、約250人が人質になったことを受け、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はハマスに対して宣戦布告した。7か月が経過し、イスラエルの報復による死者数が3万5000人に近づく中、ジョー・バイデン米大統領と米国の当局者らはこのイスラエル首相に対する批判を強めている。

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関連記事:Trump won’t rule out cutting aid to Israel

バイデン大統領は、民間人が密集する都市ラファへのイスラエルの侵攻は「越えてはならない一線」であると宣言し、ガザへの「無差別」爆撃についてネタニヤフ首相を公に非難した。国務省はヨルダン川西岸のイスラエル人入植者にも制裁を加えているが、米国は3月の国連安全保障理事会の採決でイスラエルとハマスの即時停戦を求める法案の投票を棄権した。

発言が変化したにもかかわらず、バイデン政権はまた、イスラエルへの武器と弾薬の流入を続けており、報道によると、10月7日以来、このユダヤ人国家への100件以上の武器の引き渡しを承認している。

これらの武器予算の内容は、その価値が2億5000 万ドルを超えない限り一般には公開されず、この基準を超えたのはこれまで2件に留まっている。これらの大型武器給与予算案は先月承認され、その武器には、1800発以上のMK84型2000ポンド爆弾と500発のMK82型500ポンド爆弾、および1000発以上の小径弾薬が含まれていた。

イスラエル敗北の声:イスラエル新聞ハーレツ紙が認める

<記事原文 寺島先生推薦>
The Voice of Israel’s Defeat: A Confession by Israeli Newspaper Haaretz
筆者:マイケル・プレーブスティング(Michael Proebsting)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2024年4月19日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年4月25日


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・ジャーナリストのチャイム・レビンソンは、「ハマスが赤ん坊をオーブンで焼いた」という残虐プロパガンダの嘘を暴いた。

・彼は最近の記事で、イスラエルは軍事的優位とジェノサイドにもかかわらず、戦争に負けていると認めている。


数日前、イスラエルで最も影響力のある新聞の一つであるハーレツ紙が驚くべき記事を掲載した。「言えないことを言う:イスラエルは敗北した、完全な敗北」という示唆に富むタイトルの下で、筆者はガザでのイスラエルの戦争とその全体的な状況について、絶対的に悲観的な状況を提示している。これは「意見記事」ではなく、同紙の「政治特派員」が書いたものであるため、ハーレツ紙の視点を代弁していると言える。

まず、この注目すべき記事の最も重要な部分を再現してみよう。

「我々は負けた。真実は語る必要がある。それを認められないというのは、イスラエル人一人ひとりの心理、そしてその集団心理のすべてを表していることになる。明々白々とした予測可能な現実がある。我々はそれを、将来のために、探り、処理し、理解し、結論を導き出す必要がある。我々は自分たちの負けを認めるのは面白くないから、自分に嘘をつくのだ。

・・・口に出せないが、我々は負けた。人は最善を信じて楽観的になる傾向があり、明日にはすべてがうまくいくことを期待し、結局は今よりはうまくゆくのだと期待する。それは人間の思考における最も根本的な欠陥である。我々はいい方向に向かっている、我々はそこに辿り着く必要がある。もう少し時間が経てば、もう少し努力すれば、人質は戻ってくるだろう、という考えである。ハマスは降伏し、ヤヒヤ・シンワル*は殺されるだろう。結局のところ、私たちは善の側にあり、善が勝利する、という考えだ。
ヤヒヤ・シンワル*は、パレスチナの政治家でパレスチナのスンナ派イスラム原理主義組織ハマスのガザ地区における最高幹部。アメリカによって国際テロリストに指定されている。 アラビア語ではヤフヤー・アッ=スィンワールと発音されるが、日本のメディア等における慣用表記は主にヤヒヤ・シンワルとなっている。(ウィキペディア)

「イランの体制はまもなく崩壊するだろう」などという、ありのままの人生そのものというよりハリウッドの脚本に近いような考え方につながるのも同じ心理だ。それらは真実ではなく、不快なものに関係しているものだ。結局のところ、一般大衆に真実を伝えるのは不快なことなのだ。

・・・我々の個人的な安心感を取り戻せる閣僚はだれもいないだろう。イランの脅威が語られるたびに、我々は震え上がった。我々の国際的地位は深刻な打撃を受けた。我々の指導力の弱さが外部に露呈した。何年もの間、我々は外部をだましてきた。我々は強い国であり、賢い民であり、強力な軍隊を持っている、と何とか信じさせることができた。実際のところ、我々には空軍はあるが(単なる)村だ。そんなものはいずれ人々は目を覚ます、という条件次第なのだ。

・・・ラファーは、広報担当者たちが我々をだまそうとしている最新のまやかしであり、勝利はすぐそこにあると思わせようとしている。イスラエル軍がラファーに入る時点で、本当の出来事はその重要性を失っているだろう。5月ごろに、もしかしたら小さな侵攻があるかもしれない。その後、広報担当者たちは次の嘘を広めるだろう。それは、「我々がすべきことは______(お好きな言葉をどうぞ!)だけであり、勝利が近づいている」というものだ。現実には、戦争目標は達成されないだろう。ハマスは根絶されない。軍事的圧力をかけて人質を取り戻し、安全を回復することはないだろう。

広報担当者たちが「我々は勝っている」と叫べば叫ぶほど、我々が負けていることがはっきりと分かる。嘘をつくことが彼らの仕事なのだ。それに慣れていかなければならない。10月7日以前よりも、今の生活は安全でない。受けた打撃は長年痛むだろう。国際的な孤立は消えることはないだろう。そして、もちろん、亡くなった人は帰ってこない。多くの人質も同様だ。中には、生活に戻れる人もいる。ただし、何がいつまた起こるかわからないという、身が石になるような恐怖に苦しむことになる。そして、生活が元通りに戻らない人もいる。こういった人々が生ける屍のように我々の中を歩きまわる。それが我々の行なった投票結果だ。それが現状だ。我々は祖国の悲しい現実に慣れていく必要がある。


基本的に、この記事はイスラエルが戦争に負けたことを認めている。もちろん、イスラエルの軍隊が根絶されたわけではない。しかし、世界で4番目に強い正式な軍隊と、小さな飛び地ガザ(人口230万人)のパレスチナ人抵抗勢力のゲリラ部隊との戦争では、成功の基準は異なる。

イスラエルがガザでパレスチナ人に対するジェノサイドに「成功」し、何万人もの人々を虐殺し、ほとんどの家屋を破壊し、ほとんどの住民を避難させたのは事実だ。しかし、このような恐ろしい戦争犯罪にもかかわらず、またイスラエルが歴史上最も長い戦争を繰り広げているにもかかわらず、英雄的なパレスチナ人を打ち負かすことはできていない!

実際、イスラエルの万能の軍隊は、空、海、陸における完全な優位性を持ち、人工知能を駆使した殺人プログラム、最新のミサイルと爆弾を持ち、アメリカ帝国主義からの無制限の財政的、政治的、軍事的支援を受けながら、ガザを征服することに失敗し、抵抗勢力を打ち負かすことに失敗し、人質を連れ戻すことに失敗した。この60年間イスラエルの反シオニスト・ユダヤ人、そしてトロツキストである私の同志ヨシ・シュワルツが少し前に指摘したように、抵抗勢力は驚くべき成果をあげたのである。

今までにないほどイスラエルが国際政治で孤立しており、世界中の人々に憎悪と軽蔑される国となっている。シオニストのジェノサイド戦争は、かつてないほどのパレスチナ支持運動を引き起こし、アパルトヘイトとテロ国家(イスラエル)に反対して絶え間なく人々が動員されている。数多くの労働組合が、イスラエルへの軍事および経済支援に反対する積極的なボイコット行動を既に取っている。

大衆からの圧力を受け、シオニスト国家(イスラエル)を批判し、それから距離を置かざるを得ないと考えるブルジョア政府は増えている。同じ圧力によって、国際司法裁判所(ICJ)はイスラエルによるガザでのジェノサイド調査を開始し、国連安全保障理事会(UN Security Council)さえも、イスラエルとそのアメリカの支配者の激しい抵抗に抗して、停戦に賛成せざるを得なくなった。

そうは言っても、今後待ち受ける困難や危険を否定するわけではない。殺人者たちは殺人を続け、裏切り者たちは裏切りを続ける。それでも、英雄的なパレスチナ人がシオニスト国家(イスラエル)に政治的な打撃を与えるのを見るのは素晴らしい!

団結 - 闘争 - 勝利

出典: Cuba en Resumen
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EUの代表的外交官、ハマスへ資金提供をおこなったとしてイスラエルを非難

<記事原文 寺島先生推薦>
EU’s top diplomat accuses Israel of financing Hamas
ネタニヤフ首相はそのような主張を激しく否定し、パレスチナ人組織への武器と資金の流れはイランからだと非難
出典:RT  2024年1月20日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2024年1月25日


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ジョセップ・ボレル欧州連合外務・安全保障政策上級代表。© ゲッティイメージズ/アナドルエージェンシー/ドゥルスン・アイデミール


 EU外交政策責任者のジョゼップ・ボレル氏はイスラエル政府がハマスに資金を提供していると公然と非難したが、ベンヤミン・ネタニヤフ首相はこの疑惑を否定した。ボレル氏は、ネタニヤフ首相の反対派とイスラエルのメディアが繰り返してきたこの主張について詳しく述べなかった。

 エル・パイス紙によると、ジョセップ・ボレル氏はスペインのバリャドリード大学で講演し、ハマスは「ファタハ党率いるパレスチナ自治政府を弱体化させる目的でイスラエル政府から資金提供を受けている」と述べた。

 ネタニヤフ首相は、ハマスの台頭は「資金、訓練、武器、技術的知識」と諜報活動でパレスチナ過激派組織を支援したイランのせいだと非難した。

 イスラエルは、イラン政府が10月7日のガザ近郊ハマスの奇襲襲撃で約1200人が死亡、数十人が人質となった攻撃計画に関与していたと主張している。地元保健当局者らによると、イスラエルはパレスチナの飛び地であるガザ地区への激しい軍事爆撃で対抗し、これまでに約2万4000人が死亡したという。イスラエルによれば、この作戦はこの武装勢力ハマスの殲滅が目的だという。ハマスは2007年にマフムード・アッバス大統領率いるファタハ運動を武力紛争で破って以来、ガザを統治している。

 ベンヤミン・ネタニヤフ首相は木曜日(1月20日)のテレビインタビューで、「イランはタコの頭であり、フーシ派からヒズボラ、ハマスに至るまで、いたるところにその触手が見られる」と述べ、イスラエル国防軍がイランを直接に攻撃したことを認めた。

 イラン政府はハマスによるイスラエル攻撃への関与を否定しており、イラン外務省報道官のナセル・カナニ氏は、こうした非難は「政治的理由に基づいている」と述べた。

関連記事:Netanyahu was protecting Hamas – WaPo

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関連記事:‘We are attacking Iran’ – Netanyahu

 ネタニヤフ首相がハマスを秘密裏に支援しているとの主張は数年前に遡る。批評家らは、同氏が和平計画を弱体化させ、パレスチナ国家樹立に関する交渉を台無しにする手段として同組織への資金流入を許可していると非難している。2019年3月、ネタニヤフ首相はリクード党の同僚に対し、「パレスチナ国家樹立を阻止したい者は誰でも、ハマスの強化とハマスへの送金を支持しなければならない」と語っている。

 ジョセップ・ボレル氏は、イスラエル・パレスチナ紛争の唯一の平和的解決策にはパレスチナ国家の樹立が含まれると述べ、これはイスラエルの合意なしに「外部から押し付けられる」必要があるかもしれないと示唆した。

 ボレル氏の発言は、月曜日(1月25日)にブリュッセルで開催されるイスラエル、パレスチナ自治政府、主要アラブ諸国とのEU外相会合に先立っておこなわれた。会合ではガザ地区でのイスラエル・ハマス紛争と将来の和平解決の見通しについて話し合う予定だ。

 木曜日(1月20日)、欧州議会はハマスの解体と人質全員の解放を条件にガザ地区での恒久的な停戦を求める決議を採択した。この決議案は、ネタニヤフ首相がパレスチナ国家樹立の考えを却下し、米国やEUからのそうした要請を拒否した数日後に提出された。

EU諸国、40億ユーロ(約6300億円)相当の新型コロナワクチンを廃棄 – ポリティコ紙の報道

<記事原文 寺島先生推薦>
EU states threw away €4 billion worth of Covid vaccines – Politico
2億以上のコロナウイルス注射剤が単に不要になったという理由だけで埋め立て地に投棄された、との報道
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年12月25日



ファイザー/BioNTech社製新型コロナウイルス感染症追加免疫ワクチンの空の容器© Getty Images / Dinendra Haria ; SOPA画像; Light Rocket


 伝えられるところによると、EUはパンデミックの真っ最中に最初に購入して以来、少なくとも2億1500万個のCOVIDワクチン剤を放棄してきた、とポリティコ紙の分析記事が明らかにした。同紙は日曜(12月17日)付の記事による推定では、この役に立たなかった注射剤にEU域内の納税者に40億ユーロ(約6300億円)もの損害が生じたという。

 ファイザー社とビオンテック社が開発した初のコロナウイルス・ワクチンの承認を受け、2021年にEUは急いで米国の製薬大手であるファイザー社と11億回分を購入する契約を結んだ。なお、当時は精査されることなくこの決定が下されたが、その後、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長がこの決定において物議を醸すような役割を果たしているとして、捜査の対象となった。

 この契約は、パンデミックがすでに終息しつつあったという事実にもかかわらず、EU諸国に事実上、注射剤の購入を強制するものだったからだ。ポリティコ紙が指摘したように、余剰分を発展途上国に寄付する取り組みも、物流上の問題と需要の減少により失敗に終わった。

 パンデミックが進行するなか、EUは最終的に少なくとも15億回分のワクチンを受け取った。これは域内の市民一人当たり3回分にあたると推測される量だった。しかし、ポリティコ紙の計算によると、加盟諸国は最終的に国民一人当たり平均0.7回の注射剤を廃棄することになり、なかでもエストニアとドイツで最も無駄な購入が多くなり、市民一人当たりほぼ1回分の投与剤を廃棄した。

  同紙は、この計算値は推定値にすぎないことを認めている。というのも、各国政府が廃棄物の実際の規模を報告したり明らかにしたりすることに消極的であるからだ、という。しかし、ポリティコ紙は、自社による推定値は少な目である可能性が高い、としている。


関連記事:Pfizer sues Poland over Covid-19 vaccine

 EUの浪費とファイザー社との疑わしい取引は政治的な反発ももたらしており、フォン・デア・ライエン委員長が非難を浴びているのは、交渉の話し合いがまだ続いている間に製薬大手ファイル社のアルバート・ブーラ最高経営責任者と電子文書や電話で個人的にやりとりしていたことが明らかになって以来のことだ。

 欧州委員会はこの問題について声明を出すことを拒否し、数十億ドル相当の取引に関する大手製薬会社とフォン・デア・ライエン委員長とのあいだの電子文書は見つからなかった、と主張した。

 一方、さらなるワクチンの受け入れを拒否したポーランドとハンガリーは現在、ファイザー社から不払いで訴訟を起こされており、ルーマニアでは、不必要なワクチンを購入し10億ユーロ(約1570億円)以上の損失を国家に与えたとして、検察当局が同国の元首相と2人の保健大臣の裁判を検討している。

 無駄遣いが報告されているにもかかわらず、ファイザー社との契約に基づき、少なくとも2027年までは注射剤がEUに流れ続けることになる。EUは以前、2023年に追加で4億5000万回分の投与を受ける予定だったが、5月の修正協定によりその総量は削減された。そしてその後、購入年は4年先まで延長された。しかしEU当局は、この先、何個の注射剤を受け取るのか、あるいは各国が何個購入する必要があるのかについては明らかにしていない。

漏洩したイスラエル情報省の文書、ガザの完全な民族浄化を提案

<記事原文 寺島先生推薦>
Leaked Israeli Intelligence Ministry Document Proposes Complete Ethnic Cleansing of Gaza
筆者:デイブ・ドゥキャンプ(Dave DeCamp)
出典:News From Antiwar.com  2023年10月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月26日

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 イスラエル情報省が起草した漏洩文書では、ハマスに対するイスラエルの戦争の潜在的解決策として、ガザ地区に住む約230万人のパレスチナ人の民族浄化を提案している。

 この文書は10月13日付で、ヘブライ語のウェブサイト『シチャ・メコミット』によって公開され、イスラエル政府はその信憑性を確認している。タイムズ・オブ・イスラエル紙によると、イスラエル政府関係者はこの文書を軽視しており、「初期の考え」に過ぎず、現在は戦争に集中していると述べている。

 提案されている計画は、パレスチナ人をガザからエジプトのシナイ半島に押し出すというものだ。彼らはまず、恒久的な建造物が建設されるまでテント村で暮らすことになる。この計画には、パレスチナ人が国境で生活できないように、エジプト国内に数キロ幅の「不毛」緩衝地帯を設けることも含まれている。

 この文書では、ハマスが敗北したらガザをパレスチナ自治政府に引き渡すなど、他に2つの可能性のある計画が提案されている。もうひとつは、イスラエルがガザに新しいアラブ人政権を樹立するというものだ。しかし、この文書によれば、これら2つの案では将来の攻撃を十分に抑止することはできず、望ましい選択肢はガザからパレスチナ人を一掃することだという。

 この文書の執筆者たちは、PA(パレスチナ暫定自治行政府)にガザを管理させることは、パレスチナ国家の樹立につながりかねないため、3つの選択肢の中で「最も危険な選択肢」であると述べている。

 イスラエル政府高官はこの文書を軽視しており、その存在がイスラエルが実行する政策であることを意味するものではないが、提案の一部は実行に移されつつある。文書によれば、計画の第一段階は、イスラエルが命じているガザ地区北部の避難と、地上侵攻の前に北部への空爆を集中させることだという。

 イスラエルがガザからパレスチナ人を一掃する最大の障害は、エジプトからの反対とアラブや国際的な圧力である。この文書によれば、計画の一環として、米国は「エジプト、トルコ、カタール、サウジアラビア、(アラブ首長国連邦)に対し、資源や避難民の受け入れの面でこの構想に貢献するよう圧力をかける」という。

 これまでのところ、米国はパレスチナ人をガザから追い出すという考えに反対を表明している。ホワイトハウスによると、バイデン大統領は日曜日(10月30日)にエジプトのシシ大統領と会談し、両首脳は「ガザのパレスチナ人がエジプトや他の国に追いやられないようにする」ことの重要性について話し合った、という。

 しかし、米国はガザからパレスチナ難民が流入する可能性に備えているかもしれない、との指摘もある。ガザ戦争、ウクライナ、台湾、その他の地域への支出として1050億ドル(約15兆7千万円)を議会に要求する書簡の中で、ホワイトハウスは、資金の一部は「近隣諸国に逃亡するガザの人々への潜在的な必要性」のために必要となるだろう、と述べている。

ロシア国防省は、米国によるウクライナやその他の国々での軍事生物研究の分析を継続中

<記事原文 寺島先生推薦>Russian MoD Continues Analysis of the Military-Biological Activities of the United States in Ukraine and Other Countries
出典:International 360° 2023年10月10日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2023年10月日

  ロシア連邦の国防省は、ウクライナやその他の国々での米国による軍事的生物研究の分析を継続中である、とロシア軍放射線・化学・生物学的防衛隊を率いるイーゴリ・キリーロフ中尉が述べた。

 以下は、ロシア連邦軍の放射線、化学および生物防護軍の責任者であるイーゴリ・キリーロフ中尉の会見の要旨である。その内容は、ロシア連邦国防省「情報・マスコミ局」が提示した軍事的生物研究文書の分析についてであった。

 「私たちがすでに指摘しているのは、国家保健体系の開発支援、生物テロの脅威や生物兵器の拡散への対策であると装って、世界のさまざまな地域の多くの国々が米軍の利益のために利用されていることです。さらに米国国務省は、外国の領土で軍事的生物学研究を活発におこなっています。

 文書から明らかになったのは、いわゆる「生物学的脅威に対する安全性強化計画」に、国務省が直接関わっていたことでした。そしてこの計画が、オバマ前米大統領により開始されたことが確認できました。中東、東南アジア、アフリカの国々、そしてウクライナは、この計画を実施するための優先地域として特定されていました。

 米当局は、第三者を使うことにより、顧客と調査のねらいを隠しています。第三者とは、契約業社および仲介組織(メタバイオタ社、C-H-TU-EM-HILL社、エコヘルスアライアンスなど合計20社以上)です。

 非営利および非政府組織は、国務省の行動を「隠蔽」するために積極的に利用されています。入手した文書によると、たった1年以内で、少なくとも80社から参画許可費用として受け取った資金がこれらの研究施設に投じられたことがわかりました。
 ロシア国防省が提示した資料は、外国の報道機関で広く広まっています。

 多くの報道機関が注目して取り上げたのは、国防総省の軍事的生物学研究においてウクライナに割り当てられた重要な役割についてでした。ギリシャ語版「バイキング・ニュース」紙の報道は、「...ウクライナは中心的な位置を占めており、米国国務省の生物学研究において特別な地理的関心を集める地域になっている...」というものでした。

 ルーマニアの通信社である「Flax-24」は、バラク・オバマが海外でのアメリカの軍事的生物学研究の推進に関与していたことを報じました。同通信社の報道は以下のようなものでした。「...この米国大統領が軍事・生物学研究に支援をおこなったのは、国務省とこの研究活動を繋げる段階においてだった...」と。

 中東地域(レバノン、イエメン、シリア)の多くの報道機関は、外国におけるの米国の生物学研究所が不当に拡大している件について報じました。同時に、レバノンのアン・ナハー紙は、中東における米国の地政学的優先事項はイラク、イエメン、ヨルダンであると指摘し、米国の軍事的生物学研究をおこなう地域に特徴が見られることに注意を向けていました。

 中国の専門家らは、リドリー(カリフォルニア州)で地下に生物学研究所があることが発見された点に関する要点説明資料について声明を出し、「...米国は、軍民両用の目的を持つこれらの研究や開発の結果について適切に管理していない...」と述べました。

 注意したいのは、ロシア連邦がカリフォルニアの研究所での違法な生物実験に関するデータを公表した後に、米国政府が調査を開始した事実です。即座に3つの議会委員会が、プレステージ・バイオテクノロジー社の活動の調査を開始しました。この会社は、連邦法で禁止されている研究が行われた施設を借りていました。

 カリフォルニア行政当局は生物学研究所の活動を組織する責任を中国に押し付けようとしましたが、これに関する説得力のある証拠は提示されませんでした。

 私たちの情報によると、プレステージ・バイオテック社はネバダ州に登録されており、「偶然の」一致により、調査の対象となった生物学研究所はキングス郡の米海軍基地のすぐ近くにある、とのことでした。

 以前私たちは、米国内で軍事的生物学研究を組織するための計画があったという事実を提示しました。そして、その研究施設においては、海軍が主要な顧客となり研究の調整も行なっています。

 利用可能な文書によると、プレステージ・バイオテック社は20種類程度の病原性微生物や研究施設の設備、研究に使う動物を、目的を明らかにしない形で入手していた、とのことです。この件は、米国の人権団体「司法監視(Judicial Watch)」が独自におこなった調査資料から確認されました。

 この非政府組織「司法監視」が入手した文書から明らかになったことは、この施設に危険な生物学的資料や不適切な在庫が存在したこと、さらには 研究に使用される動物を扱う際の衛生基準を大きく逸脱していたことでした。

 FBIと米国保健省がこの研究施設の活動について情報開示を拒絶したことから、この研究活動が秘密にされるべき性質のものであるということを示唆しています。そして関連諸機関の代表者たちは、米国議会に召喚され、機密情報を開示するよう求められました。

 私たちが何度も繰り返し強調してきたことは、FBIやCIAなど米国の法執行機関が軍民両用目的のこの研究に関与していた事実です。さらには、米国当局がこれらの研究活動の結果を隠そうと努力してきたこともです。

 気をつけていただきたいのは、化学・生物学的保護に関する機密の出版物が置かれた図書館が建てられたと記載された文書があったことです。この図書館の建設準備に当たったのは、国防脅威削減局(DTRA)の職員であるモルガン・ミンヤード氏でした。

 国防総省の代表者は、この図書館の編集委員会の立ち上げを提案しています。この編集委員会は、米国諜報機関にとって問題がある化学的な研究論文の出版を「一掃し」、さらには「軍民両用目的の」研究を機密にするための組織です。そしてこの研究とは、「...国家安全保障に対して取り返しのつかない損害を与える可能性がある」研究であり、それらを別々の箇所に保管し、その保管箇所への立ち入りを制限しています。

 この図書館に資料として保管される研究例として、ネズミの天然痘ウイルスの致死性を強化する実験や、新種のボツリヌス毒素の遺伝子配列の確定などです。

 注意すべきことは、機密情報を納めた図書館を使用すれば、米国政府が「...化学的及び生物学的研究の結果をできるだけ詳細に研究するだけではなく、特定の研究者や協力者らとやり取りする...」ことができるようになるということです。このような情報の検閲をおこなっているという事実から推測されることは、米国政府が研究結果を人々に知られたがっていないということです。つまり、そのような研究結果が化学兵器や生物兵器に関して果たすべき国際的な義務から逸脱しているからだ、と言えます。

 ロシア国防省は、大量破壊兵器に対抗するための米国内での機密戦略作成についての情報を入手しています。その文書の開示(機密情報でないとされたもの)部分が、2023年9月27日に明らかにされました。その文書は、大量破壊兵器の使用に関する国家安全保障の脅威に対応した「国家防衛戦略」について詳述しています。

 国防総省によると、ロシア連邦や中国、イラン、北朝鮮は大量破壊兵器の所有を検討しており、その用途は米国の戦闘能力を制限し、戦争中や軍事紛争時における戦略的目的を果たすためだ、とのことです。

 その戦略からすると、ロシアは中長期的に見て、米国の安全保障における「深刻な脅威」の源になる、とされています。

 いっぽう中華人民共和国は、「拡大しつつある脅威」と記載されています。最近、中国政府が戦略的核兵器の近代化において目ざましい進歩を遂げていることも強調されています。また、北朝鮮やイランは、恒久的な脅威であると記載されています。

 開発者らによると、米国国防省の活動で優先的になされていることは以下のとおりだそうです。
① 大量破壊兵器の使用によっておこなわれる外国からの侵略行為から国の領土を守ることの保証
② 仮想敵諸国が米国やその同盟諸国に対して大量破壊兵器を使うことの抑止
③ 効果的な戦闘行為をおこない、B型肝炎感染(HCB)という状況でも勝つことが可能な連携組織の創設、です。
 同時にこの戦略がさらに取り組みを深めるよう課している司令は、新たな化学的及び生物学的脅威から身を守る措置を作り出すことです。

 したがって、米国政府は、生物兵器禁止条約で認められた枠内で研究の進め方をおこなうのではなく、攻撃を目的とした研究も含まれる軍民両用の使途がある研究の、管理上及び技術的しくみをつくり出そうとしています。

 お知らせしたいことは、米国による不法な軍事的生物学研究や、欧州内で生物学研究施設が置かれている地域での伝染病流行状況が悪化していることを、ロシアが広く知らせようとしているために、米国当局がこのような軍民両用使途目的の研究施設をアフリカ諸国に移動せざるを得ない状況が生まれていることです。

 私たちが開示した文書から、アフリカ大陸に関する国防総省の主要な契約国が明らかになりました。具体的には、コンゴ民主共和国やシオラ・レオネ、カメルーン、ウガンダ、南アフリカです。米国政府側の取引先は国防脅威削減局(DTRA)と国家安全保障局(NSA)、米国国務省です。

 以前、私たちはメタビオタ社の従業員らが行っていた非公認の研究標本についての話をしました。この会社は2014年に西アフリカでエボラ熱が流行した際の国防総省の主要な契約業社でした。この会社の不透明な研究方法については、すぐに世界保健機関(WHO)から疑問の声があがりました。研究標本の不法な輸出が行われた結果、最終的にはエボラ熱の生きたウイルスが米軍の「国立感染症研究所」に届きました。

 米国の生物研究施設のいくつかが置かれているこの地域で感染状況が自然に悪化していることから、多くのアフリカ諸国政府は米国と協力をする必要性や便宜に対して見方を変えるようになっています。だからこそ2022年、アフリカでのメタビオタ社の活動が中止され、同社の違法な業務方法に対する多くの疑問の声が

各国の政府段階から上がるようになってきました。

 世界規模で生物化学分野を支配しようとしている米国の取り組みにともなって、生物兵器禁止条約など普及している国際法の解釈を自国の法律にあった解釈に置き換えようとする動きがあります。このような動きは米国の国益のもとで進められ、西側連合により支援され、それ以外の国々で導入されようとしています。

 このような状況は国際的な諸機関の活動を追えば見えてきます。そしてそのような西側の代表的な諸機関がある決定をおこなうのは、西側にとって利があるときだけなのです。他の国々の優先事項などはおかまいなしです。それと同時に、世界からの注意が意図的に二次的な問題へと逸らされていきます。生物兵器不拡散に関する問題とは直接関係のない問題へと逸らされるのです。例えば、様々なデータベース作成や性的平等の確認、化学兵器禁止条約の催しへの青年諸団体の参加などです。

 思い起こしていただきたいのは、ロシア連邦が多くの効果的な取り組みを提案していることです。これらの取り組みの目的は、生物兵器不拡散体制の強化や生物兵器禁止条約のもとで信頼醸成手段を改善することにあります。

 ロシアが第一に提案しているのは、生物兵器禁止条約において法的に禁止されている研究手順の開発に関する交渉を再開することです。その際行われる効果的な検証の中身には、病原体微生物や毒物、専門装置に対するものが含まれ、包括的な検証であることが求められています。

 2つ目の提案は、米国外で行われている生物学的保護研究や開発の分野に関する情報を公開することにより、信頼を醸成する措置の進め方をひろげることです。

 3つ目の提案は、化学や技術の分野での業績を評価するための「化学諮問委員会」を立ち上げることです。この委員会により、幅広い地域からの声を集めることができ、参加諸国の平等権が確保できます。

 4つ目の提案は、生物兵器禁止条約の枠組み内で移動可能な生物医学派遣団を利用することです。

これらの提案を実際に導入すれば、全ての参加国が、各国の生物学研究の透明性や、生物兵器禁止条約が求めている要求を遵守することが高められることになるでしょう。米国も例外なく、です。

 すでにロシア国防省は、米国の軍事的生物研究の従事していた人々の名を明らかにしています。その中には、国防省の高官らや生物技術関連諸業社、国防総省の契約諸業社も含まれています。

 今日は、軍民両用研究に従事していた、これらの政府機関や米国やウクライナ民間企業一覧表に新たな構成員を加えたいと思います。

 トーマス・ウォール、ウクライナのブラック&ヴィーチ社の副社長及び公式代表。この人物は生物学的薬剤や素材の運営や管理のためのPAX電子システムの導入を監督しました。

 ケビン・オリバル、エコ・ヘルス協会の研究所副所長。この人物は、コウモリが媒介する人獣共通感染症の研究のための米国国防省の計画の導入に直接関わりました。

 ミハイル・ウサティイ。2018年以降、ウクライナ国軍の衛生及び感染症部の副部長。この人物は、ウクライナの米国軍脅威削減局の枠組みの中での組織的な研究を監督しました。

 タチアナ・キリヤーゾワ。ウクライナ公共医療政策協会の事務局諜報機関。この人物はウクライナの対ペスト研究協会を基盤にした米国との病原体の共同研究を監督しました。

 軍事的化学研究活動を組織していた人々や研究に従事していた人々について明らかにされた情報は、ロシア連邦の調査委員会に送られることになります。

 したがって、米国とウクライナによる軍事的生物学研究に関する疑問はまだ残存しており、さらなる事実が明らかになることでしょう。ロシア側は、化学兵器禁止条約の第5条に関する協議会を招集して以来、この状況を解決するような答えはまだ受け取っていません。

 私たちは今後入ってくる文書の分析を続け、その内容を皆さんにお伝えする所存です。


新たな世界大戦への準備:ナチス・ニッポン枢軸の再構築

<記事原文 寺島先生推薦>
The Preparation of a New World War: Reconstituting the Nazi-Nippon Axis
筆者:ティエリ・メイサン(Thierry Meyssan)
出典:INTERNATIONALIST 360°  2023年3月28日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年10月3日


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岸田首相、キエフに支援を申し出る


 米国は欧州連合(EU)の同盟国に対し、第三次世界大戦に備えるよう促している。「トゥキディデスの罠*」から抜け出して勝利したいのであれば、同盟国は第三次世界大戦に参戦するしかない。南米、アフリカ、アジアの多くの国家が「中立」を宣言する一方で、この騒ぎが同盟国を「味方につけておく」ためのただの演出にすぎないのでなければ。いま、この軍靴の音が日本の軍国主義者たちを煽り立てている。彼らは、ウクライナの「過激な民族主義者」たちのように、また戻ってきたのだ。
*古代アテナイの歴史家トゥキュディデスにちなむ言葉で、従来の覇権国家と台頭する新興国家が、戦争が不可避な状態にまで衝突する現象を指す。アメリカ合衆国の政治学者グレアム・アリソンが作った造語。(ウィキペディア)

 多極化世界の提唱者たちによる進展に直面し、「アメリカ帝国主義」の擁護者たちの反応は鈍くない。ここでは、ヨーロッパ共同市場の軍事構造への転換と、第二次世界大戦中の枢軸国の改革という2つの作戦を分析する。この第二の側面は、新たなアクターを登場させる: 日本である。


欧州連合の変化

 1949年、アメリカとイギリスは北大西洋条約機構(NATO)を創設した。NATOにはカナダと、西ヨーロッパで解放した国々が含まれていた。NATO諸国にとっては、自国を守ることではなく、ソ連への攻撃を準備することが問題だった。ソ連は、ワルシャワ条約機構を創設することで対抗した。

 1950年、朝鮮戦争が始まると、アメリカは紛争をドイツ民主共和国(通称「東ドイツ」)まで拡大することを計画した。そのためには、フランス、ベルギー、ルクセンブルクの反対にもかかわらず、ドイツ連邦共和国(通称「西ドイツ」)を再武装させる必要があった。そのため、彼らは欧州防衛共同体(EDC)の創設を提案したが、ゴーリストとフランス共産主義者の抵抗に遭い、失敗に終わった。

 同時に彼らは、マーシャル・プランによって西ヨーロッパの再建を支援した。この計画には、ヨーロッパ共同市場の建設を含む多くの秘密条項が含まれていた。ワシントンは西ヨーロッパを経済的に支配し、かつ共産主義の影響やソ連の帝国主義から政治的に守りたかったのだ。欧州経済共同体(後の欧州連合)は、軍事面ではNATOを擁するアメリカの建前上の民間側を形成している。欧州委員会は、欧州連合における国や政府の首脳の行政機関ではなく、首脳と大西洋同盟との接点である。軍備や建設だけでなく、装備、衣服、食料などに関する欧州の基準は、最初はルクセンブルクで、次にベルギーで、NATO諸機関によって制定される。それらは欧州委員会に送られ、現在は、欧州議会で承認される。

 ソビエト連邦が崩壊しつつあった1989年、フランスのフランソワ・ミッテラン大統領とドイツのヘルムート・コール首相は、西ヨーロッパをアメリカの支配から解放し、ワシントンに対抗できるようにしようと考えた。この条約の交渉は、ドイツ四分割占領の終結(1990年9月12日)、両ドイツの再統一(1990年10月3日)、ワルシャワ条約(政治部門)の解消(1991年7月1日)と時期が同じだった。ワシントンは、マーストリヒト条約*がアメリカの軍事支配を認めるという条件で、この条約を受け入れた。西ヨーロッパ諸国もこの原則を受け入れた。
*1991年12月、オランダのマーストリヒトにおけるEC(欧州共同体)首脳会議で合意された欧州連合条約の通称。ECの経済・政治統合の推進を目的として、EU(欧州連合)の創設、経済・通貨同盟の設定、共通の外交・安全保障政策、欧州市民権などを規定。のちにアムステルダム条約やニース条約へ発展した。

 しかし、ワシントンはミッテラン・コールのペアに不信感を抱き、土壇場でEUにワルシャワ条約の旧加盟国すべて、さらには旧ソ連から生まれた新しい独立国家を含めるよう要求した。これらの国々は、マーストリヒト交渉団の願望を共有していなかった。実際、これらの国々は交渉団を疑っている。これらの国々はドイツとロシアの影響から自由になりたいと考えているのだ。彼らは自国の防衛を「アメリカの傘」に頼っている。

 2003年、ワシントンはスペインのEU議長国(社会党のフェリペ・ゴンサレス)とハビエル・ソラナ共通外交・安全保障政策上級代表を利用して、ジョージ・W・ブッシュ米大統領の国家安全保障戦略に倣った「欧州安全保障戦略」を採択させた。フェデリカ・モゲリーニ上級代表は2016年にこの文書を改訂した。

 2022年、ウクライナ戦争中、米国は朝鮮戦争の時と同様に、ロシア(ソ連の後継国)に対するドイツの再軍備の必要性を再び感じた。そこで彼らは、今度は慎重にEUを変革しようとしている。フランスのエマニュエル・マクロン大統領の任期中に、彼らは「戦略的羅針盤」を提案した。これが採択されたのは、ロシアのウクライナ介入からわずか1カ月後のことだった。EU加盟国は、協力するのか、それとも統合するのか、いまだに正確にわかっていないからだ。(ヘンリー・キッシンジャーが言うところの「建設的曖昧さ」だろう。)

 2023年3月、ジョゼップ・ボレル現欧州連合(EU)外務・安全保障政策上級代表は、第1回「安全保障と防衛に関するロバート・シューマン・フォーラム」を開催した。EU加盟国の国防相や外相が多数参加している。親米派の非EU欧州諸国に加え、アンゴラ、ガーナ、モザンビーク、ニジェール、ナイジェリア、ルワンダ、セネガル、ソマリア、エジプト、チリ、ペルー、グルジア、インドネシア、日本など、多くの国々が閣僚レベルで参加している。NATOに加え、ASEAN、湾岸協力会議、アフリカ連合も参加している。とりわけアラブ連盟は事務総長を派遣する。



 このフォーラムの明確な目的は、「多国間主義と規則に基づく国際秩序」を擁護することであり、また「国際法に基づく多極化世界」というロシアと中国の事業計画を糾弾する上品な方法でもある。

 COVIDの流行に伴い、欧州連合は既存の条約で予想されていなかった健康分野における権限をすでに自分のものとしている。私はこの流行の冒頭で、健康な人々の監禁という措置は歴史上前例がないと説明した。この措置は、ギリアド・サイエンシズの前代表であり、ドナルド・ラムズフェルド前国防長官の要請により、CEPI(Coalition for Epidemic Preparedness Innovations)の監督者となったリチャード・ハチェット博士によって考案されたものであり、世界的にこの措置を開始した人物である[1]。残念ながら、この報告書が引き起こした反応からしか知ることができないが、2005年の彼の機密報告書によれば、健康な一般市民を自宅に閉じ込めることで、移転可能な仕事を特定し、西側諸国の消費財産業を閉鎖し、労働力を防衛産業に集中させることになっていた。しかし、欧州連合はまだその段階には達していないが、既存の条約で予想されていなかった公衆衛生権限を自分のものとし、何の抗議も引き起こすことなく、今、軍事大国になれるように条約の文面解釈の作業中である。

 先週のシューマン・フォーラムで、ジョゼップ・ボレルは「戦略指針」の実施に関する最初の報告書を発表した。この構想は、情報機関を含む各国の軍隊を、協力ではなく統合の精神で調整することである。エマニュエル・マクロンの事業計画は、シャルル・ドゴールとフランス共産党の事業計画を葬り去った。「国防のヨーロッパ」は今や、EU加盟国の作戦部隊を欧州連合軍最高司令官(SACEUR)、現在のクリストファー・G・カヴォリ米大将の権限下に置くだけでなく、以前は各国議会の責任であったすべての資金調達に関する決定、さらには加盟国の行政機関の責任であった軍備や組織に関する決定を掌握することを目的とした活動理念のように見える。こうして連邦は、誰が指揮を執るのかわからないまま、共通の軍隊を組織することになる。


ナチス・日本枢軸の再構築

 第二次世界大戦といえば、ヨーロッパでは1939年と1945年を思い浮かべる。これは絶対に間違っている。戦争は1931年、日本の将兵が満州で中国兵を攻撃したことから始まった。これは軍国主義派による日本の文民権力の最初の行き過ぎであり、その数ヵ月後、軍人集団による文民首相の暗殺によって増幅された。数年後、日本は軍国主義的で拡張主義的な大国へと変貌した。この戦争は、1945年のソ連赤軍による満州解放では終わらなかった。実際、アメリカは日本のソ連への降伏を阻止し、降伏が自国の将兵の前でしか行なわれないようにするため、2発の原爆を使用した。1946年まで戦い続けたのは、それまで太平洋であまり戦ってこなかったアメリカに降伏することを多くの日本人が拒んだからだ。第二次世界大戦は1931年から1946年まで続いた。もし我々がこのような日付の間違いを犯すとすれば、その理由は、ローマ・ベルリン・東京枢軸国(「三国同盟」)が、ハンガリー、スロバキア、ブルガリア、ルーマニアがすぐにそれに加わったことで、初めてグローバル化したからである。

 枢軸国の根底にあったのは、メンバーの利害の不一致ではなく、強さという妄信だった。今日、枢軸を改革するためには、この妄信を共有する人々を団結させなければならない。

 1946年にアメリカが日本を占領したとき、最初に考えたのは、日本から軍国主義的な要素を一掃することだった。しかし、朝鮮戦争が勃発すると、アメリカは共産主義と戦うために日本を利用することを決めた。当時、進行中だった裁判を終わらせ、5万5千人の高官を免罪した。ヨーロッパにおけるマーシャル・プランに相当するドッジ・プランを実施したのだ。この政策変更の幸運な受益者の一人が池田勇人で、彼は首相に就任し、日本経済を回復させた。彼はCIAの助けを借りて自由民主党を結成した。この政党から安倍晋三首相(2012-20年)と後継者の岸田文雄(2020年-)が誕生した。

 岸田はこのほどウクライナを突然に訪問した。戦争が始まって以来、アジアの首脳がウクライナを訪問するのは初めてである。彼はブチャの集団墓地を訪れ、「ロシアによる虐待」の犠牲者の家族に哀悼の意を表した。多くの分析家は、この訪問は日本で開催されるG7サミットの準備だと解釈している。ただし、それがはるかに先を行く可能性はある。

 岸田文雄首相とヴォロディミル・ゼレンスキーは最終コミュニケで、「欧州大西洋とインド太平洋の安全保障の不可分性」と「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調している。彼らにとっては、ウクライナをロシアから守るだけでなく、日本を中国から守ることも問題なのだ。このコミュニケは、ウクライナの「完全な民族主義者」[2]であるナチスの後継者たちと、昭和時代の民族主義者の後継者たちとの新たな同盟の基礎を築くものである。今日のウクライナは、人種差別を明文化した憲法を持つ世界で唯一の国家である。1996年に採択され、2020年に改正されたこの憲法は、第16条で「ウクライナ人の遺伝的遺産の保存は国家の責任である」と述べている。ウクライナのナチス首相ヤロスラフ・ステツコの未亡人がこの条項を書いている。

 対照的に、日本国憲法は第9条で戦争を放棄している。しかし、安倍晋三と岸田文雄はこの条項を撤廃するための闘いを始めた。とりわけ、殺傷力のある防衛装備品の移転は不可能であるため、岸田はキエフに約71億ドルの人道的・財政的援助を申し出た。彼が今週できたのは、殺傷力のない軍備に関して、3000万ドル相当の備蓄品の出荷を発表することだけだった。

 このような日本の再軍国主義化は、すでにウクライナを支持する側にいるワシントンによって支持されている。ラーム・エマニュエル駐日米国大使は、「岸田首相は、ウクライナの人々を守り、国連憲章に謳われた普遍的価値を促進するために、ウクライナへの歴史的訪問の最中だ......約900キロ離れたモスクワでは、別の、より邪悪な協力関係が形成されつつある」(プーチン-習近平首脳会談を指す)とツイートした。

 一方、中国外務省の王維斌報道官は逆に、首相の外遊について「日本が事態の宥和を求めることを望むが、その逆ではない」と述べた。ロシア側は、戦略爆撃機2機を約7時間にわたって日本海上空に飛ばした。


翻訳:ロジャー・ラガセ

この記事は「中東は西側から脱却しつつある」(2023年3月14日)の次のものである。

[1] 「Covid-19と赤い夜明けの電子メール」、ティエリ・メイサン著、ロジャー・ラガセ訳、ヴォルテール・ネットワーク、2020年4月28日。
[2] 「ウクライナの完全な民族主義者とは何者か」、ティエリ・メイサン著、ロジェ・ラガセ訳、『ヴォルテール・ネットワーク』、2022年11月15日

NATO加盟諸国がICC(国際刑事裁判所)の最高検察官に資金を渡し、プーチンに対する逮捕状を出させた手口とは

<記事原文 寺島先生推薦>

How NATO states sponsored ICC prosecutor’s Putin arrest warrant

出典:グレー・ゾーン

2023年4月13日

筆者:マックス・ブルーメンサル(MAX BLUMENTHAL)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月27日


ウクライナのヴォロデーミル・ゼレンスキー大統領と面会するICCのカリム・カーン最高検察官。2023年3月


ICCのカリム・カーン最高検察官は、NATO加盟諸国から何百万ドルものカネを受け取り、ウラジミール・プーチン大統領に対する逮捕状をでっち上げておきながら、しっかりと文書に残されている米国やイスラエルの戦争犯罪の捜査には手を出していない。その過程で、ワシントンやロンドン、キエフ、さらにはハリウッドにまで、彼には力強い友人ができた。

 カリム・カーンは、国際刑事裁判所の最高検察官をつとめている人物だが、2023年3月3日、演台の前に立ち、尋常ではない発言をした。「私がウクライナの親愛なる友人たちに愛情や気遣いをどれだけ持っていたとしても、ICCの最高検察官として特定の国に偏った関心を持たないということは当然のことです。私たちは、敵対する勢力に対抗しようとする組織ではありません。」

 カーンは英国なまりの英語でこう語った。「私たちの拠り所は法です。私たちが拠り所とし、遵守しているのは法の下の秩序です。」

 カーンがこのような司法権の独立を重視する立場を表明し、「法の正義のための連合」の会合が開かれたという見出しが踊った。その会合とは、ウクライナのリヴィウで個人的に開かれたものであり、主催者はヴォロデーミル・ゼレンスキー大統領だった。その場でカーンはウクライナの大統領と握手を交わし、メリック・ガーランド米司法長官と協議した。同司法長官がこの会合に立ち寄った目的は、バイデン政権によるロシアのウラジミール・プーチン大統領を戦争犯罪という罪状で法廷に引きずり出す取り組みを前進させるためだった。

 これは2022年2月のロシアによる軍事侵攻開始以来、カーンにとって4度目のウクライナ訪問であった。2023年3月17日、カーンはICCによる正式なプーチンに対する逮捕状を出し、ウクライナの子どもたちをロシア各地の「一連の収容所」に「不法に連行した」として同大統領を非難した。この逮捕状が届いたのは、NATOによるイラク侵攻から20年になる日の数日前だった。このイラク侵攻は、米・英当局が犯した戦争犯罪であるのに、ICCCは今に至るまで起訴はしていない。

 当グレー・ゾーンが報じた通り、ICCによる逮捕状が出されたきっかけとなったのは、国務省が資金を出した報告書であり、その中身には現地調査も戦争犯罪の具体的な証拠もなかった。さらにロシアが本当にウクライナの子どもたちを大規模な連行作戦の対象ととらえていたかを証明する内容も含まれていなかった。実際のところ、この報告書の調査にあたった人々も、「この報告書に記載されていた収容所において、性的虐待や肉体的な虐待を含む、子どもたちに対する虐待行為があったことを示す文書は見つからなかった」ことを認めている。 さらに、この調査報告書の主執筆者が、グレー・ゾーンのジェレミー・ロフレドに語ったところによると、この調査団が調べたロシアの子ども収容所の「大部分」において主に行われているのは、「文化的な教育活動」いわば、お楽しみのようなものです」。

 カーンはプーチンを逮捕することについては政治から独立した行為だと明言しているが、カーンが西側各国政府と密接につながっていることは事実だ。その西側各国政府こそ、現在ウクライナを戦場にしたロシアとの代理戦争にいそしんでいるのだ。これまでカーンは、ICCによるイスラエルの戦争犯罪に対する訴追については、保留の立場を取っている。このため、占領されたガザ地区での恐ろしい暴力行為の被害者の代表をつとめる人権法律家をやきもきさせている。さらにカーンは、米軍がアフガニスタンで起こした行為に対する国際裁判を公式に却下している。

 ウクライナに焦点をあてた言動を取っているカーンは、自身の事務所に対する西側からの金融的支援を急増させてきた。その多くの資金は、ロシア当局についての調査に充てられた。ICCが発行したプーチンに対する逮捕状が出されたのは、偶然にもその主要な資金提供者らが裁判を起こす会議を英国のロンドンで持ったのと同じ日だった。

 ICCの最高検察官の政治的なつながりは、これだけでは終わらない。有名人弁護士であるアマル・クルーニーが、カーンの事務所の特別顧問として活動してきたのだ。同時に彼女は、ウクライナ政府に助言を与え、ICCやそれ以外の国際的な機関を通じてロシア当局を標的に起訴を起こすよう促していた。さらにクルーニーは外務・英連邦・開発省との連絡係としても活躍していた

 となれば、20年にわたるICCとの間に絶え間ない敵対関係があったワシントン当局が、突然この裁判所との関係が雪解けし、その最高検察官から慕われるようになったことは、別に驚くことではない。


米国のメリック・ガーランド司法長官とカリム・カーン(左)。ウクライナのリヴィウにて。2023年2月28日


ICCのカーン最高検察官は、米国からの支援を得て、「エルサレムに安堵のため息」をもたらした

 米国のジョー・バイデン大統領は、ICCの最高検察官カーンがプーチンに対して逮捕状を出したことを、米国が手放しで支持する方向性を打ち出す手助けをし、この行為を「正当である」とした。共和党議員団においては、ウクライナでの代理戦争を米国上院で最も熱狂的に応援しているリンゼー・グラム議員がICCによるこの行動をさらに感激して受諾し、ICCの最高検察官を、現代におけるナチ戦犯追及者であると褒め称えている。

 米国当局が突然ICCを受け入れるようになったことは、突然のことであり、明らかに日和見主義と呼べるものだ。これまで20年間ずっと、両者は反目し合ってきたのだから。

 米国のジョージ・W.ブッシュ大統領が2001年にホワイトハウス入りしたほぼ直後に、同大統領の行政府は、軍人保護法の法案を提出した。この法律は、この先、戦争犯罪を理由にICCが米軍の軍人を起訴する事象が起こった際に、米軍がハーグにあるこの裁判所に対して妨害行為を行うことを承認するものだった。翌年この法案が上院を通過した際、この法案に反対した共和党議員は一人もいなかった

 2019年、米国はICCに対する取り組みを強めたが、それは当時のファトウ・ベンソーダ最高検察官が、占領されたパレスチナ領でのイスラエルによる戦争犯罪の調査を行うと発表したからだった。マイク・ポンペオ国務長官はベンソーダ最高検察官を名指しで非難したが、上院は党を跨いだ決議案を挙げ、同国務長官に、「政治色を帯びた」ICCへの攻撃を強めるよう要求した。グラハム議員はこの決議案に賛同した一人だった。 (バイデン政権も、ICCによるイスラエルの戦争犯罪の捜査には反対している)。

 その翌年、ベンソーダ最高検察官が、アフガニスタンでの戦争犯罪に関して米国とタリバン両者の捜査を行う意図があると明言した際、米国当局は同検察官に制裁を科し、同検察官の米国ビザを無効扱いにした。

 2021年にベンソーダに代わって最高検察官に就任したカーンは、米国や米国の同盟諸国の中でもっとも暴力事象が多発する国々を慰撫するような働きを見せた。2022年6月のエルサレム・ポスト紙の記事にはこうある。「エルサレムでいくぶん安堵のため息がもれていた」と。そしてその理由は、カーンが最高検察官に就任した1年目に、「イスラエル・パレスチナ問題に関する公式声明を何ひとつ出さず、公的な動きを何ひとつ見せなかったから」だとしていた。

 「大きな進歩や措置はまったく取られず、(イスラエルによる残虐行為に対する)捜査は、同検察官の事務所にとっての優先事項ではなく、起訴された事例は今のところまったくありません。さらにカーンの前に事例が示されても、カーンは動こうとはせず、なんの表明も出してきませんでした。」と、ガザ占領地区でイスラエルによる暴力行為の被害者を代表する弁護士団の一人が、当グレー・ゾーンに語っている。

 この弁護士によると、カーンがウクライナからロシアに市民を連行した事件に執着しているのは皮肉だという。というのも、何十万ものパレスチナの人々が強制連行されたことには目をつぶっているからだ。これらのパレスチナの人々は現在「イスラエル」と呼ばれている領地から、中東各地にある占領地や難民キャンプに連行されたのだ。「パレスチナでは、人々はもう何十年ものあいだ、連行され続けています。この事象は、歴史上で最もきちんと文章に残されているものです。パレスチナ問題こそ、法廷の信頼性を守るための最後の砦であるべきなのです。」とこの弁護団は語っている。

 さらにカーンは、ICCによるアフガニスタンの捜査網を狭め、これらの戦争犯罪を行ったのをタリバンだけのせいにして、米軍を守った。「カーンがこのような決定を下したことではっきりと強められた印象は、ICCは西側が設置した西側のための機関であり、西側諸国の政治的な目論見を実現させるための道具にすぎないという事実です」とシャハラザード・アクバル元アフガニスタン独立人権委員会委員長がインターセプト紙に不満をこぼしている

 「カーンによるこの決定は明らかに政治的なものでした。それ以外の解釈の仕方は本当にありません。この決定により、米国とその同盟諸国は牢獄から出られる無料券を手にしたのです」とアフガニスタンでの米軍の虐待行為についての捜査団の団長を務める米国のジェニファー・ギブソン弁護士は、カーンのとった行為について述べている

 もっとも問題の多いこの2点の捜査を止めたことやロシアによるウクライナ侵攻を問題視した行為により、この検察官の事務所が従順な組織であることがはっきりと受け止められ、これまで叩かれる対象だったICCが突然西側から大量の金融支援を受けることになった。

 「(ロシアがウクライナに侵攻した)2月24日の数週間後に、(国際刑事)裁判所には大量の現金や人々が流れ込むようになった」とジャスティスインフォ・ネットは報じている。

 このカネの多くが直接カーンの事務所に流れ込んだが、そのカネの使い道は、ロシア当局を標的にした起訴を起こす取り組みに対してだった。人権NGOのヒューマン・ライト・ウォッチ所属のマリア・エレナ・ヴィニョーリがジャスティス・インフォネットに語ったとおり、「行われた様々な誓約の内容について、各国はそれほど注意はしていませんでした。各国はしばしば自国がウクライナにどれだけ貢献しているかを関連付けようとしていました。そのためICCの取り組みが政治的であったり偏ったりしているという印象をもたれているのでしょう」ということだ。


米国と英国政府がICCのカーンのために道を開いた

 2022年2月28日のことだった。カーンは以下のような意図を発表したのだ。「ウクライナの状況についての捜査を開始します。できるだけ早期にです。」これはロシア軍がウクライナ国内に侵攻した日からたった4日後のことだった。

 その数日後の2022年3月2日、ハーグにある英国大使館がカーンに届けたのは、40人を超える英米の外交官の署名のある委託書であり、その内容はカーンにICCのローマ規程違反の疑いでロシアを捜査することを促すものだった。

 同日、グラハム上院議員は米上院に新しい法案を提出したが、それは「ウラジミール・プーチンとロシア政権の構成員らに、プーチンの指揮下で行われた多くの戦争や侵略や人権侵害行為を行ったことに対する責任をとらせる」ことを求める内容だった。ジョン・ボルトンといったタカ派でさえ、ICCが発行する逮捕状を支持してしまえば、この先米国市民に対する法的行為を正当化される可能性が生じることを警告していたにも関わらず、この法案は全会一致で採択された。

 国際法違反にあたるとされた行為を非難するための法案を提出したほんの数時間後に、グラハム議員はツイートでプーチンの暗殺を求めていた。「ロシアにはブルータスはいないのだろうか? ロシア軍には、(ヒトラー暗殺を謀った)シュタウフェンベルク大佐よりも上手くやれる人材はいないのか?」という懇願を同上院議員は2022年3月にツイートしていた。「この悲劇を終わらせる唯一の方法は、ロシアにいる誰かがやつを追い出すことだけだ。」


 2022年4月3日、バイデンはICCによる対露攻撃にさらに勢いをつけるかのように、プーチンを「戦争犯罪者」呼ばわりし、「戦争犯罪を裁く法廷」にプーチンを引き摺りだすよう求めていた。

 バイデンの目的、さらにはバイデンと歩調を合していたICCの目的を前進させるべく、米国務省が2022年5月に発表したのは、紛争監視所を設立して、ロシアが犯したとされる戦争犯罪の明らかな証拠を集め、それら発見された証拠を広めるというものだった。その理由として、「検察官らが公表された資料をもとに刑事事件として立件できる可能性を持たせるためである」ことだとされた。


 米国政界からの後押しを受けたカーンは、ウクライナへの最初の公式訪問に出向いた。


ウクライナ政府関係者の先導のもと、ウクライナのハルキウを訪問中のICCのカリム・カーン最高検察官


 ウクライナへは4度、公式の物見遊山に出かけているカーンであるが、その最初の訪問は、2022年3月16日のことで、まずボーランドに入り、そこで難民救護施設でウクライナからの難民らと面会した。その後ウクライナの国境を越え、リヴィウでイリーナ・ベネディクトワと協議を行った。この人物はウクライナの検事総長である。その後カーンはゼレンスキーとリモートで話す機会を持った。

 「私たちは不偏で平等で総合的にこの件にあたっています。強調したいことは、私たちはこの紛争に関わる全ての関係者と繋がりをもちたいと考えているという事実です」とカーンは主張していた。


 カーンのウクライナへの二度目の公式訪問はそのほんの数週間後の4月に行われたが、その際ベネディクトワはカーンをブチャの市街地に案内した。ブチャはロシア軍が数週間占領したのちに、その4月の初めに撤退した地域だ。同時にウクライナ当局は、西側の記者団を墓地に連れていき、埋葬地を示して、そこがロシア側が市中で大規模な処刑を行った証拠だとしていた。

 ブチャ市内のあちこちに散見された死体の画像を示すことで、ゼレンスキーはロシア政府を「大量虐殺」を行ったとして非難し、米国のバイデン大統領は、プーチンを戦争犯罪の罪状で法廷に引き摺り出すことを求めていた。しかしそのようなバイデンの要求は、自国の国防省の控えめな主張とは食い違っていた。米国防省は、ロシア軍がブチャ市内でそのような処刑の形をとった大量虐殺を行ったという事実を「今の状況証拠だけで説明する」ことはできないというものだった。

 2022年7月にカーンが3度目のウクライナ公式訪問を行った際は、ハルキウを訪れた。再度ウクライナのベネディクトワ検事総長が付き添い、カーンは、ICCがキエフに現地事務所を設置する計画を立てていることを明らかにした

 その時点で、ゼレンスキー政権は13の野党を違法とし、ゼレンスキーの対抗馬となる大統領候補を投獄し、政権に批判的な全ての報道機関を閉鎖し、ロシア正教会の司教長を禁じ、その最高位の司祭を逮捕しようとしていた。さらにキエフ政権は、政敵や人権活動家らを消し、迫害を加え、その口実をロシア側と結託してウクライナ当局者らを標的にした暗殺計画に加担しているからだ、としていた。ネオナチの民兵らは、ロシア側に靡(なび)いているとされた人々を処刑する動画まで録画していた。

 その頃ウクライナ軍は、ドネツク人民共和国やルガンスク人民共和国じゅうの市民を標的にした攻撃を激化させ、市場を砲撃していた。その一例をあげると、バスに乗っていた通勤者らをトチカUミサイルで大虐殺したこともあった。さらにウクライナ兵らは、非武装のロシア囚人や戦争捕虜を処刑している様子を動画に収めたが、それは捕虜らの膝を射撃している様子だった。

 しかし、ウクライナを物見遊山中のカーンは、部下の職員らがカーンの眼前に提示したきっちりと文書に残されている虐待行為に対して、頑なに無関心を貫いていた。カーンの目がしっかりと向けられていた対象は、プーチンだった。そして、カーンが使命を果たすべく気前よくカネを投じてくれている西側の人々に対しても、だった。


四度目のウクライナへの公式訪問の際、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領と面会中のカリム・カーン


第二弾 我らが少女を奪回せよ作戦

 今年3月、カーンはウクライナへの4回目の公式訪問を行ったが、その目的を、こう語っていた。「ウクライナの国家指導者層とのつながりを強化するため」。リヴィウで、カーンは「正義のための連合」という会議に主賓として招かれた。この会議はゼレンスキーが個人的に招集したもので、この会議の目的は「ロシア政権の上層部に、ウクライナに対する侵略行為の刑事責任を取らせるため」だとのことだった。

 その会議の宣伝資料において、この「正義のための連合」の会合が強く主張していたのは、初めて聞くような、人々の感情に訴える問題についてだった。それは、「ロシアがウクライナの子どもたちを強制的に連行している疑いについて、この子どもたちを早急にウクライナに返還することが喫緊の課題である」というものであった。

 この会議の主題は、明らかに2012年のコニー作戦の影響を受けたものだった。この作戦は、ウガンダのジョセフ・コニー将軍に対する作戦であり、同将軍は、「3万人以上の子どもたちを誘拐して軍の強化に充てた」と非難された。この言説を初めに伝えたのは、今は否定されているオンライン上のハッカーらだった。さらに、この会議が思い起こさせるのは、「我らが少女を奪回せよ」というハッシュタグが付けられて拡散された人権感傷主義者らによる取り組みだ。この取り組みを立ち上げたのは、ミシェル・オバマ元大統領夫人を初めとする著名人らであり、北ナイジェリアのイスラム系民兵ボコ・ハラムが数百人の女学生を強制連行した事件を大きく伝える取り組みだった。

 「正義のための連合」会議において、NATO当局者らは、影響を受けやすい西側自由主義者層の怒りを必ずや引き起こすと考えられる主題を提示できたようだ。



上の写真:「正義のための連合」の宣伝動画から。下の写真:2016年のオスカー賞授賞式で「我らが少女を奪回せよ」作戦の強化のために集まったハリウッド俳優たち




 「正義のための連合」会議開催期間中ずっと、参加者らは繰り返し、ロシアが若者たちを強制連行したと決めつける発言を行っていた。「幼い子どもたちが誘拐され、洗脳され、ロシア国民になるよう強制されています」とオランダのウォプケ・フックストラ外相は演題から主張し、「総掛かりでウクライナの子どもたちを強制連行した」としてロシアを非難した。

 米国のメリック・ガーランド司法長官がリヴィウ訪問後に語ったところによると、同長官は、特定すべき「人物を探し」、ロシアが「子どもたちを強制連行する行為を行った」とされる疑惑の証拠を立件する努力を行っていたとのことだった。

 会議での発言中、カーンはウクライナ国内の孤児院を訪問したことについて触れ、「子どもたちがウクライナ国外からロシア連邦の領地に強制連行されているという疑惑が私たちのもとに届いています」と語った。しかし、カーンは、訪問した孤児院から子どもが連れ去られてという事実があったとは言及しなかった。

 ICCのウェブサイトが現在提示しているのは、発言中に触れたウクライナの孤児院の空っぽの寝床の横にいるカーンの写真だった。この写真は明らかに、プーチンの部下らが寝床から幼い子どもたちをさらったと思わせるための広報作戦だった。この孤児院は前線から遙か離れたところにあるのに、カーンは見せびらかすかのように、ケブラー製の保護用ヘルメットを着用していた。



 ロシア当局の餌食にされるウクライナの子どもたちを守る父親のような姿を見せていたわずか数ヶ月前、カーン自身の近親者が児童虐待を行った事件が発生していた。

 2022年5月、カーンの弟であるイムラン・アフマド・カーンが、庶民院議員を辞したのは、15歳の少年に対して性的虐待を行ったとして起訴されたからだった。アフマッド・カーンが18ヶ月服役したのは、有罪判決が出されたからだった。罪状は、その少年の二段ベッドによじ登り、股間をまさぐり、ジンを飲ませて裸の写真をとろうとしていた疑いだった。起訴後、また別の男性が、未成年時に虐待を受けたとして、アフマド・カーンを糾弾した。

 カリム・カーンは弟の起訴に際して法的な支援を行う意思を示していないが、ガーディアン紙は、アフマド・カーンは「家族、特に兄のカリムやハレド(両者とも弁護士)との親しい関係を」維持しており、「カリムは、ハーグの国際刑事裁判所の最高検察官」だと報じた


カーンのよりどころは、国務省が資金を出した「ホームランボール」的研究だった

 ウクライナについての公式発言中に、カリム・カーンがしばしば強調したのは、ブチャやハルキウのような戦場に足を踏み入れたことだった。それらの地域については、キエフ政権は恐ろしい戦争犯罪を行ったとしてロシアを糾弾していた。しかし、ICCがプーチンに対する逮捕状を出した際、起訴内容は、ロシア軍がこれらの地域で行ったとされた残虐行為に関するものではなかった。焦点とされていたのは、ウクライナの子どもたちを連行したことについてだった。

ICCの最高検察官が出した逮捕状は明らかに、イェール大学の人道研究所(HRL)の研究に触発されたものだった。この研究は、国務省の「紛争と安定化作戦」という組織から資金提供をうけ、支援されているものだ。この組織は、2022年5月にバイデン政権が立ち上げた組織で、ロシア当局の処刑を前進させている。

 その国務省が資金を出した報告書には、当グレー・ゾーンが明らかにしたとおり、ICCの最高検察官の主張とは食い違う長文が記載されていた。さらにその内容に関して、報告書の執筆者が報道機関に出演して語ってもいる。ジェレミー・ロフレド記者との対談の中で、イェール大学ナサニエル・レイモンドHRL所長が語ったところによると、同所長の調査団が調べたロシアの青年向け施設の「大部分」では、「主に文化教育が施されていた。いわばお楽しみのようなものだった」という。

 同所長の調査団がロシア国内のこのような保護施設をあえて訪問しなかった理由を聞かれたレイモンドは、こう答えている。「私たちは、ペルソナ・ノン・グラータ(入国が禁じられている人々のこと)ですので。私たちはロシアからは米国の諜報機関の延長的存在だと思われていますから。」

 それと同時にこのイェール大学のHRL所長が明言したのは、この報告書が国務省の目的を果たすべく書かれたものであり、米国国家情報会議からの「多大なる圧力」を受けていた事実だった。さらに同所長が認めたのは、自身の調査団は国防総省の「米国インド・太平洋軍」に依拠し、「太平洋軍を利用して衛星受信できる範囲を拡大し、シベリアや極東の複数の保護施設の様子を掴んだ」という事実だった。

 レイモンドは、カーンがウクライナのブチャでロシアが行った戦争犯罪の疑惑について逮捕状を出さなかった理由についても質問を受けた。この事件は西側報道機関が何日間も取り上げ続けていた事件だ。この質問に対してレイモンドは、2023年3月にニューヨーク・タイムズ紙の複数の外国特派員との間で交わされた電話の内容について語った。

 「私は金曜日に、ニューヨーク・タイムズの記者らと電話で話しました。これらの記者らは、ブチャの事件を取材していた人々です。基本的に、記者らはこんな感じでした。“ブチャの取材でピューリツァー賞を取りたいと思ったんだ。妙に思ったんだ。カーンが(幼い子どもたちの連行事件を)起訴して、ブチャのことは起訴しなかったことがね”。それで、私はこう言ったんです。“そんなことは、考えられる中で最悪の事態だったね”と。」

 レイモンドは、最高検察官の考え方についてこう説明した。「カーンがブチャの件を起訴すれば、大混乱を招くことになったでしょうね。というのもそうなれば、カーンはロシアに自分の弱点を送り続けることになったでしょうから。ブチャで大虐殺があったのは自明でしょう。だからといって、(ICCの規定書である)ローマ規程に違反することに該当することにはなりません。意図的で体系的な軍師指揮のもとで行われたかどうかという点に関して、です。ロシアがこのような行為を行ったことを立件するには、鑑識や弾道学の知識が必要です。伝達手段も必要になります。ICCがそのような手段を持っているという証拠がないのです。」

 イェール大学のHRLの所長によると、カーンは、「ホームランを打てそうなボールを投げることから始めたのです。基本的な話をさせてもらうと、ブチャの件でプーチンを起訴することは、プーチンの自白だけで、裏を取らずに(事件の)起訴をしているようなものになってしまうからです。子どもたちの連行行為の方が危険は少なくすみます。プーチンは、初歩的な殺害行為による起訴とはならなかったのです。」

 さらにレイモンドは話を続けた。「ニューヨーク・タイムズ紙にとっては嬉しい話ではないでしょう。ブチャの件で、ICCが華々しくプーチンを起訴する算段をしていたのですから」。しかし、(カーンは)プーチンにこう言うつもりなのでしょう。「中佐を落下傘部隊から追い払いにいけ。そうすれば、貴殿に問題はない」と。

 カーンに最も安易なやり方で逮捕状を出させたことに加えて、この起訴により、最も宣伝効果のある攻撃を加えることもできたのだ。それは、最高検察官を、ウクライナの子どもたちの救世主のように描くという攻撃だ。

 その目的を達成すべく、カーンはアマル・クルーニーという決定的な助けを得て広報活動を行ったのだ。この人物は、世界で活躍する弁護士で、ハリウッド俳優である人権問題介入者を夫に持つ人物だ。そしてこの夫は、米国民主党に最も多額の寄付を行っている人々の一人だ。


2022年4月、ロシア当局を処刑する支援の声を高めようと国連に現れたあと、アマル・クルーニーと協議中のICCのカリム・カーン


クルーニーとのつながり。カーンはハリウッドの人権問題介入者らと共闘している

 2021年9月、ICCの最高検察官の地位についてから数週間たったカーンは、スーダンのダルフール地域での残虐行為の捜査において、アマル・クルーニーを特別顧問に任命した。その5ヶ月後、ロシア軍がウクライナに入るやいなや、クルーニーは焦点を移動させ、ウクライナ政府からの招聘を受け、「戦争責任を問う法的対策委員会」の一員に加わった。

 カーンとアマル・クルーニーの協力関係が、少なくとも10年以上続いていることは、ICCの最高検察官である彼の「独立し、不偏で、総合的な」捜査を行うという発言に、更なる疑念が生じる理由となる。

 レバノン生まれのアマル・クルーニーが、世界的に著名となったきっかけは、ときめくハリウッド俳優のジョージ・クルーニーと結婚したことだった。ジョージ自身も、著名な人権問題介入者であり、スーダン政府やスーダンのオマル・バシール元大統領を標的にした運動を先導していた。具体的には、経済制裁を課し、ダルフールでの行為を残虐行為だとして起訴する運動であった。米国内のイスラエルの圧力団体や当時のジョージ・W.ブッシュ米大統領は、スーダン当局に対する戦いを深く支援しており、 ブッシュは豊かな石油埋蔵量をもつこの地域に米軍を派遣すると脅し、バシール大統領に相対していた。 クルーニーといえば、アウシュヴィッツの記憶を思い起こさせることで、ダルフールへの米軍の介入を主張していた。その後ICCがバシールに出した逮捕状は、最終的には意味をなさなくなったが、この取組により、クルーニーは世界の人権問題業界内で真の活動家であると受け止められることになった。

 2016年、ジョージ・クルーニーは焦点を内政問題に転じ、自ら「節度を超えるくらいの多額の資金」と称した額を大統領候補であったヒラリー・クリントン元国務大臣に選挙運動費として投じた。ジョージ・クルーニーとアマル・クルーニーが主催した資金集めの会合での投入額は、夫婦合わせて35万3400ドルにも上ったのだ。


2016年の大統領選において、ヒラリー・クリントンのための選挙資金活動のための会を主催した際のジョージ・クルーニーとアマル・クルーニー(右)


 同年、ジョージ・アマル夫婦は、自費を投じて「正義のためのクルーニー財団」を立ち上げた。ビル・クリントンやバラク・オバマが大統領職を退いた後に立ち上げた財団と同様に、クルーニー夫妻によるこの行為も、自由主義派の億万長者らから資金援助を受けていた。具体的には、ビル・ゲイツ、ジョージ・ソロスであり、マイクロソフト社や国連とも提携していた。さらに「正義のためのクルーニー財団」の公式提携先には、米・英政府が資金を出している諜報機関の代理組織であるべリング・キャット社も名を連ねている。



 人権活動家であるというクルーニーの装いの裏にある目的は、米国当局の外交政策としっかり軌を一にしている。クルーニーの財団が人権運動に取り組む対象国は、米国が政権転覆を謀っている国なのだ。そのいっぽうで、米国やその同盟諸国、さらにはイスラエルが行った、しっかりと文書で証拠が残された残虐行為については目をつぶっている。例えばベネズエラは、米国が制裁や激しい軍事クーデターを使って政権転覆を目論んだ国なのだが、クルーニー財団は、ICCによるニコラス・マドゥロ大統領に対する捜査を支援する意向を示している。

 自身の財団を監督しながら、アマル・クルーニーは英国政府からいくつかの任務を委託されており、その中には、任務期間が2年のジェレミー・ハント英外相が主催する「報道の自由に関する英国特使」の仕事や、英国司法長官の公式国際法律顧問の仕事もあった。

 クルーニーは現在投獄されているウィキリークスを出版していたジュリアン・アサンジの弁護団の一員だったが、ハント外相がクルーニーの元顧客であるアサンジを非難し、アサンジの逮捕を擁護し、米国への連行を承認した際、クルーニーは沈黙していた。


クルーニーが、2019年に「報道の自由に関する英国特使」に任命された際のアマル・クルーニー(左)とジェレミー・ハント英外相。

 2022年4月、クルーニー財団は、調査団をキエフに派遣し、ウクライナ政府に関するICCの捜査活動を支援すると発表した。その4月、アマル・クルーニーは、国連の人権委員会にカーンとともに顔を出したが、その際アマルは、ロシア政府がウクライナの多くの子どもたちの誘拐に加担している疑惑について初めて公表したのだ。

 「こんなことがありえるのでしょうか? 何千もの子どもたちが強制的にロシアに連行されるなんて。10代の少女たちが、町中で、家族や近所の人の面前で連行されるなんて。残念なことに、これは事実なのです」とクルーニーは断言したが、その主張を裏付ける証拠は何も示していなかった。


 その2ヶ月後、カーンとアマル・クルーニーは、ウクライナの検事総長イリーナ・ベネディクトワとの会談で再度顔を合わせた。これはロシア当局を起訴することに関して開かれたEU傘下の欧州司法機構の会議と併せて行われたものだった。


 続いて9月には、カーンは別の欧州司法機構の「ウクライナでの戦争責任を追求するための協同」会議と併せて開かれた会議に参加した。この催しには、ウクライナ・ドイツ・デンマーク・オランダ政府が資金を出していた。カーンICC最高検察官は、アマル・クルーニーやウクライナのドミトリー・コストリン新検事総長とともに、この会議の議長をつとめた。(ゼレンスキー大統領は7月に、反逆行為の疑いがあるとしてベネディクトワを罷免していた)。

 カーンとアマル・クルーニーとの関係が始まったのは、それぞれが世界的に有名になる前からのことだった。遡ること2010年、アマルがまだアマル・アラムディンという名だったとき、アマルはカーンが著者の一人であった随筆集に寄稿していた。さらにカーンはクルーニーが英国の弁護士フィリッパ・ウェブとともに著した2022年の書籍の推薦広告を執筆し、「力作である」と評していた。(クルーニー同様、ウェブもキエフ政権を支援する「ウクライナで行われた戦争犯罪の責任に関する対策委員会」の一員である)。

 「正義のためのクルーニー財団」のウェブサイトには、クルーニーに対する賞賛が嵐のように掲載されていて、以下のように褒め称えている。「黙らせようとする多くの圧力にも負けずに(勇気を持って)発言し続けている巨人である。(アマル・クルーニーが)断固として沈黙させられないよう努力する姿のおかげで、私たちには沈黙しないで発言する勇気が与えられ、さらに(アマル・クルーニーが)決して希望を捨てようとしない姿のおかげで、私たちは前に進む力を与えられている」と。

 ICCのカーン最高検察官がクルーニーを崇拝していることが、明らかにカーンの決意に影響を与え、クルーニーを自身の事務所の顧問の座にとどまらせている。クルーニーが英国政府やウクライナ政府のために活動していても関係ないのだ。両国政府は、ロシアと戦火を交えているというのに。

 当グレー・ゾーンは、ICCの最高検察官の報道担当者に、カーンがクルーニーと親しい協力関係にあることについて問い合わせを行い、クルーニーがウクライナ政府や英国政府のために活動していることが、カーンが誓約した「独立した、不偏で、総合的」な立場と矛盾するのではないかと問いただした。その返答はない。


2023年3月20日。ロンドン。ICCのカーンとドミニク・ラーブ英大法官


ロンドンでの資金回収会議に合わせて取られたICCの行為により戦争終結に向かう交渉の芽は摘み取られた

 今年の3月20日、プーチンに対する逮捕状が出されたちょうど一週間後、カーンはロンドンでの或る催しに姿を見せた。この催しは、英国政府とオランダ政府が主催した催しで、西側諸国にウクライナでの代理戦争にもっと資金を提供するよう呼びかけるためのものだった。その場において、 カーンはドミニク・ラーブ英大法官や大法官の対談相手であるいくつかのNATO諸国やウクライナから来た役人らと大笑いしている姿があった。

 ガーディアン紙は、プーチンに逮捕状か出された時期と寄付者らの会合があった時期が重なっていたことを指摘し、こんな記事を載せていた。「カーンは先週、ロシア大統領に対して劇的な動きを見せたが、これはロンドンで開催された或る会議の前に取られた行為だった。その会議は、英国政府とオランダ政府か主催したもので 、その目的は資金を集めて、ICCによるウクライナ国内での戦争犯罪の捜査活動に充てることにあった」と。

 英国とその同盟国あわせて40ヶ国の法務大臣が一堂に会したその会議では、500万ドルの資金が集められ、ロシア当局を起訴するためのICCの捜査費用に充てられた。

 この資金回収会議が行われたのは、米・英主導で行われたイラク侵攻が開始されて20年になる日の3日後だった。この侵攻により、推定100万人以上のイラク国民の死者が出たとされている。しかし2020年、ICCはイラクにおける英国の残虐行為の捜査を打ち切った

 カーンがパレスチナ占領地を訪問し、休止されているイスラエルによる迫害行為の捜査を強化することを誓約してから3ヶ月以上経つ。イスラエルの暴力によるパレスチナの被害者を代表する弁護士は、当グレー・ゾーンにこうこぼしていた。「カーンがパレスチナに行く計画があるのかどうかを知っている人は皆無です。パレスチナの件が優先事項ではないことは明らかです。」

 もうひとつ明らかなことは、ICCがプーチンに逮捕状を出したことが、ウクライナでの紛争を交渉で終わらせる方向性の新たな障害になっているという事実だ。ゼレンスキーの首席補佐官であるミハイル・ポダリャクは、ICCがプーチンに逮捕状を出した直後にこんなツイートをしている。「今のロシアの指導者層と交渉をする余地は全くない」と。

ドローン事件でウクライナ紛争におけるアメリカの関与がはっきりした―ロシア

<記事原文 寺島先生推薦>

Drone incident confirms US involvement in Ukraine conflict – Russia

出典:RT

2023年3月15日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月3日

クリミア付近で墜落したドローンMQ-9 Reaperは回収して研究すべき、ロシア安全保障トップが発言



資料写真. 米国税関・国境警備局のMQ-9リーパー無人機 © Getty Images / John Moore


 ロシア安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記は、3月14日(火)に黒海に落下したアメリカの無人機MQ-9リーパーの残骸の回収をモスクワが試みることを明らかにした。

 3月15日(水)の連邦放送局ロシア1での生放送で、ニコライ・パトルシェフ書記は、UAV(無人航空機)の残骸まで到達できるかどうかはわからないと認めたが、残骸を発見し調査する努力をすることが重要であると強調した。

 また、パトルシェフは、ウクライナでは「アメリカ人は敵対行為に参加していないと言い続けている」とし、今回の無人機による事件は、現在進行中の軍事衝突に「(アメリカが)直接関与していることを改めて確認した」とも述べた。

 同書記の声明は、ワシントンの欧州軍(EUCOM)が、ロシアのSu-27戦闘機2機による「安全でなくプロらしくない」行動の結果、MQ-9リーパー無人機1機が火曜日の朝に黒海上で墜落したと報告したことを受けたもの。ペンタゴンは、ロシアの迎撃機の1機が、国際空域で偵察任務を行っていたドローンの「プロペラを直撃」したと主張している。

 ロシア国防省は、自国の飛行機がアメリカの無人機と接触したという主張を否定しているが、航空宇宙軍が黒海上空でロシア国境に向かうアメリカの無人機の飛行を記録し、調査のために迎撃機2機を派遣したと報告した。同省は、アメリカの無人機が中継器を切って飛行しており、ウクライナで進行中の軍事作戦地域周辺に設けられた臨時の航空境界線に違反していると指摘した。



関連記事:黒海でのドローン事件について分かっていること


 ある時点で「機体を急操作した結果」無人機は「制御不能な飛行」に陥り、海に墜落したと同省は報告し、ロシアの戦闘機は空中兵器を使用せず、無人機と接触しなかったと指摘した。

 米国国家安全保障会議のジョン・カービー調整官(戦略的コミュニケーション担当)はその後、米国はMQ-9リーパー無人機の残骸が誰の手にも渡らないよう、必要なあらゆる手段を講じていると述べている。

 「これは米国の所有物です。私たちは明らかに、私たち以外の誰かがそれを手にするのを見たくありません」とカービーはCNNに語った。しかし、黒海の「非常に深い海」に落ちたため、米国が航空機を回収できるかどうかはわからないとも述べた。「我々はまだ、何らかの回収作業ができるかどうかを評価しているところです。回収できない可能性もあります。」

逮捕しようとしている対象はプーチンか? それとも一斉に反旗を翻している西側の民衆か?

<記事原文 寺島先生推薦>

Arresting Putin – Or Arresting All-Out Western Public Revolt?

筆者:フィニアン・カニンガム(Finian Cunningham)

出典:Strategic Culture

2023年3月18日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年3月25日

プーチン逮捕


 もし真の正義の道理が立てられるのであれば、バイデンこそが法廷に立たされ、米国による不法な戦争を起こしたという罪状で、罪を問われるのが筋だろう。

 喧伝を垂れ流す西側の報道機関(「ニュース・メディア」という名でも知られているが)は、ヘイグにある国際司法裁判所(ICC)が、ロシアのウラジミール・プーチン大統領に逮捕状を出したという記事を突然大々的に取り上げ始めた。この大騒ぎ(つまりは画策された動きだと言えるのだが)の意図は、馬鹿馬鹿しい法的手段を使って、ことが重大かつ重要であるという印象付けをすることにある。というのも、実際のところは彼らの言う逮捕状などには意味がなく、政治上の茶番劇でしかないという匂いがプンプンしているからだ。

 プーチンとともに、ロシアの子どもの権利委員会のマリア・リボバ-ベロバ代表も「戦争犯罪」を問われる罪人として指名手配された。同代表の罪状は、2022年2月からのロシアによる特殊作戦実行中に、子どもたちをロシアに強制送還した疑いであるとされている。

 ICCのこの動きは、軌道を外れてしまった気候観測気球騒動と同じくらい軽薄なものだ。この逮捕状劇も、人々の目を現実から逸らさせようという傲慢な目くらましに過ぎない。ロシアが、子どもたちを含む何千もの人々を、もとのウクライナ領で今はロシア連邦の一部になっている地域から避難させたのには正当な理由があった。それはその地域が、NATOの支援するキエフのナチ政権から狙われる危険な地域だったからだ。ウクライナの軍隊は、ウクライナ領内のドンバスなどの地域に無差別砲撃をずっとかけてきたのだ。

 戦争犯罪の罪でしょっぴかれるべき人がいるとしたら、ウクライナのヴォロディーミル・ゼレンスキー大統領であり、その配下にあるナチに陶酔した司令官たちだろう。さらにはその資金提供者である、米国や欧州各国やNATOの指導者たちだろう。

 キエフ政権はこの9年間ずっとドンバスを砲撃し続けてきたが、それはCIAが手掛けたクーデターにより、今のファシスト軍事政権が権力を握ってからのことだ。NATOは、アゾフ大隊やナチスの武装親衛隊を彷彿とさせる民兵隊に訓練を施した。これらの隊員たちが、現在米国が提供したHIMARS(高機動ロケット砲システム)を発射している。そして彼らを援助しているのが、米・英・仏・独・加・波(ポーランド)からの傭兵たちだ。ロシアが昨年ウクライナに侵攻した理由は、大虐殺を終わらせるためだった。そしてこの大虐殺には、米国当局や欧州各国当局、さらには西側報道機関が加担してきた。しかしこの件に関して、いわゆる「報道機関の砦」と目されてきたニューヨーク・タイムズやBBCは沈黙している。

 この罪状が、ICCやその背後にいる西側勢力が考え抜いた、ロシアに対する最善の罪状だというのだろうか? 子どもたちの誘拐? 西側が主張していた、ロシアが住宅街や一般市民たちを砲撃していたという非難はどうなったのだろう? 西側の報道機関が大々的に報じていたこれらの主張が正しかったのであれば、なぜこれらの件を起訴の罪状に加えなかったのだろうか? そうしなかったのは、証拠が無さすぎたからだ。実際に住宅街や一般市民たちを盾に使っていたキエフ当局こそ、罪があるのだ。そのため、子どもたちを誘拐した容疑という、感情に訴える力のある言い掛かりが使われたのだ。こんなドン引きさせられるような論法を駆使しているだけでも、この件がでっち上げであるという証拠になろう。

 これだけでも既に西側の主張やICCの動きの軽薄さは十分伝わるが、さらにそれに輪をかけた事実も存在する。

 それは、ICCはロシアに対して司法権を行使できる組織ではないという事実だ。したがって、逮捕状などなんの意味もなさない。逮捕状が出たからといって、全く深刻に受け取るものではないということだ。この件は、モスクワ当局に轟々たる非難を浴びせるための政治的茶番に過ぎない。

 またこの裁判所は、米国に対しても司法権を行使できない。ということは、ICCは以下のように措置することも可能なのだ。つまり、「もし真の正義の道理が立てられるのであれば、バイデンこそが法廷に立たされ、米国による不法な戦争を起こしたという罪状で、罪を問われるべきだろう。具体的には、イラク、アフガニスタン、リビア、シリア、イエメンなどの国々で米国が起こした戦争のことだ」と。

 最近犯した罪を挙げれば、バイデンとその犯罪仲間であるNATO諸国は、ノルド・ストリーム・ガス・パイプラインを爆破させた罪で法廷に立たされるべきだ。

 あるいはイスラエル政権に資金と武器を提供し、パレスチナに対する新たな戦争犯罪を実行させた罪もある。

 あるいは発信者であるジュリアン・アサンジを迫害し、虐待した罪もある。彼が迫害された理由は、米・英の戦争犯罪についての真実を暴こうとしたからだった。

 恐るべき偽善と二重基準も、さらなる証拠となる。そんな証拠が必要となれば、の話だが。ICCがロシアに対して発した最新の画策は、安物の政治ショーで、その目的は、米国とその西側の腰巾着の国々が欲しがっている権威を高めることにある。

 米・英の指導者たちがロシアに対するICCの起訴を賞賛した今週というのは、米国が主導したイラクでの戦争が始まって20年になる週だった。この戦争により、100万人もの一般市民が殺害され、全くの嘘に基づいて一つの国が破壊された。この嘘というのは、当時上院議員だったバイデンが広めるのに手を貸した嘘だった。これらの罪の主たる実行者というのは、ジョージ・W・ブッシュとトニー・ブレアなのだが、彼らのことがICCの法律家たちの口から漏れたことすらない。なぜそうなのだろうか? その理由は、ICCがカンガルー裁判所(正当な法の基準を無視した、一部の勢力の言うことだけを飲む裁判所のこと)にすぎず、西側帝国主義から政敵を追い込むための政治上の駆け引きに使われる裁判所だからだ。

 今のほかのニュースを挙げると…

 ジョー・バイデンとその一族が、中国の複数の業者から何百万ドルにも上る金銭を不法に受け取ってきたというこれまでの疑惑をさらに裏付ける報道がどんどん出されている。バイデンと彼のヤクまみれの息子であるハンター(亡兄の未亡人と不倫をしていた)が、汚職に手を染め、手段を選ばずにいかがわしい行為を行っていたのだ。具体的には「父親の」政治的地位を担保として利用していたのだ。CIAが手引きした2014年のクーデター後に、同じ詐欺の手口が、バイデンのウクライナとの間の非公式の事業でも使われていた。

 さらに、先週起こった事件だが、シリコンバレー銀行を始め米国のいくつかの銀行が負債を抱えて破綻したことを受けて、米国の銀行制度においてさらなる歴史的な崩壊が起こりつつある。金融業界全体を襲うであろう来たるべき金融崩壊を食い止めるために、バイデン政権は再度何千億ドルもの税金を使って、ウォール街を救済する方針だ。

 別のニュースは、米国内や欧州の何百万もの労働者たちが、街に繰り出し、腐敗した資本主義政権に対して、前例のない規模のストライキや抗議活動に打って出ていることだ。フランスでは、この革命のような風潮が頂点に達していて、特権階級出身のエマニュエル・マクロン大統領(例えれば、ルイ16世のような人物だ)は、法律により公共支出の削減を断行したが、その際意図的に議会審議(まあ、そんな議会審議などはまやかしに過ぎないが)をせずにその法案を通した。しかし、欧州や米国のあちこちで、民衆は、いわゆる自国政府に対してますます我慢ならず、敬意を持てなくなっている。というのも、各国政府は何千億ドルものお金をウクライナでの狂気のような代理戦争につぎ込んでいるからだ。しかもその敵は核保有国のロシアなのだから。しかもまさにその西側の特権階級出身の支配者たちは、苦しんでいる市民たちにさらなる緊縮財政を求めているのだから。このような状況が、不平等や欠乏や野宿生活や飢餓や貧困が社会を押し潰している中で進行しているのだから。

 さらに私たちの耳に聞こえてくるのは、西側の報道機関が今週嬉々として報じているニュースだ。それは、米国が主導するNATO枢軸諸国が、キエフ政権に対して戦闘機を送ろうと動いていることについてだ。この動きは、既にレオパルドやエイブラムス、ルクレーク、チャレンジャーといった戦車をウクライナに供給しようという動きに続くものだ。こんないかれた行動をとれば、ロシアとの全面戦争になってしまうだろう。西側の指導者層とその反響室たる報道機関によるこの動きが、あまりにも現実離れしているので、革命を起こすような民衆の怒りが引き起こされているのだ。そう、まるでマリー・アントワネットや、彼女の迷言「パンがないならケーキを食わせろ」が、フランス革命を引き起こしたように。

 西側が起訴状を出したがっているのは、民衆が日々募らせている怒りや嫌悪感についてなのだ。その民衆の怒りの対象は、腐敗した西側がやってきた大騒ぎが崩壊したことに対してだ。言い換えれば西側の資本主義のもとでの民主主義、さらに言い換えれば億万長者と戦争亡者による独裁体制に対するものなのだ。

 バイデン、マクロン、フォン・デア・ライエン、ストルテンベルグ、トルドー、ショルツや仲間たち(貴殿の国の道化師のような指導者の名をご記入あれ)が、プーチンを逮捕することを本気で考えているわけがない。各国の指導者たちが本気で考えているのは、ますます激しさを増している市民による反対運動を抑圧することだ。というのも、これらの市民が反対しているのは、西側資本主義の道化師たちが見せているチンケな出し物に対して、だからだ。

「大量破壊兵器」があるからイラク侵攻を!とのロビー活動をデイビッド・ケイは米国で展開したが、最後は自分の過ちを認める勇気を持った。

<記事原文 寺島先生推薦>
This man lobbied the US to invade Iraq over ‘WMDs’, but had the courage to admit his mistake

副題:2003年のイラク侵攻の口実について「私たちは皆間違っていた」と語ったベテラン兵器査察官、デイビッド・ケイ(David Kay)は誠実な人物だった。

筆者:スコット・リッター(Scott Ritter)


Scott Ritter is a former US Marine Corps intelligence officer and author of 'Disarmament in the Time of Perestroika: Arms Control and the End of the Soviet Union.' He served in the Soviet Union as an inspector implementing the INF Treaty, in General Schwarzkopf’s staff during the Gulf War, and from 1991-1998 as a UN weapons inspector.

出典:RT 

2022年8月27日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月8日


ディビッド・ケイ © Alex Wong / Getty Images / AFP

 イラクの軍縮義務の遵守について、積極的な査察手法と強い見解で知られるデイビッド・ケイは、最後に、世界に対して、イラクに関して全員が間違っていたという事実を突きつけ、その真の気概を示した。

 私がニューヨークに到着した1991年9月中旬までに、国連イラク特別委員会(UNSCOM)の兵器査察官たちは、5月から16回にわたってイラクに赴いていた。そのほとんどは、1988年7月に発効した中距離核戦力(INF)条約を履行したアメリカの経験から生まれた現地査察基準に従って実施されたもので、軍備管理遵守の検証手段として、世界で初めて現地査察に踏み切った。

 これは、いわば紳士協定であり、査察権を与える協定(イラクの場合、1991年4月に成立したUNSCOMとその軍縮ミッションを義務づける安保理決議687)の対象となる場所と資料を、徹頭徹尾一方が申告し、他方は、その申告内容の完全性を確認、そして査察対象国の主権と尊厳を尊重した形で関係資料の処分を監督することに同意するものであった。

 しかし、この方式にはいくつかの例外があった。イラクがUNSCOMに対して、禁止されている化学兵器、生物兵器、核兵器、長距離弾道ミサイル(WMD)の保有に関する申告を行った際、この申告を検討した多くの国は、イラクが核・生物兵器活動への関与を否定し、化学・長距離弾道ミサイル能力を著しく低く申告したことに驚かされたのである。


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 アメリカの諜報機関は、イラクがウラン濃縮に使用していたカルトロンと呼ばれる大型装置の存在を示す証拠を発見していた。この装置は、イラクが申告していなかった。1991年6月、国際原子力機関(IAEA)の査察団は、UNSCOMに与えられた権限の下で、米国の情報衛星がカルトロンを観測した施設の査察を行なった。査察団の団長は、経験豊富な保障措置査察官のデイビッド・ケイ。アメリカ側が特定した場所に到着したが、3日間現場に入ることを拒否された。やっと中に入ることを許されたが、何もなかった。イラク側がすべての資料を持ち去っていたのだ。

 アメリカの人工衛星は、バグダッド西部の軍事キャンプで、カルトロンを積んだ車列を発見した。査察の手順として、査察団は指定された場所に行くことを、イラク側に事前通知することになっていた。しかし、今回、デイビッド・ケイはイラク側に事前通告の礼を取ることなく、視察団を指定された場所に連れて行った。到着すると、武装した警備員によって場所への立ち入りが阻まれた。しかし、2人の査察官は近くの監視塔に登り、施設内を見渡した。そして、イラク人が収容所の裏側から車両を走らせているのを確認し、無線で連絡した。その中には、イラク人が収容所からの退去を急ぐあまり、適切な被覆を施さなかったカルトロンを積んだトラックもあった。しかし、イラク兵が頭上から威嚇射撃をしてきたため、停車せざるを得なくなり、数十枚の写真撮影だけを行った。

 ダメージは大きかった。査察団とイラクの間の長い外交的対立は、国連安全保障理事会が軍事力行使を許可する、と脅した時点で終わった。最終的に、イラクはウラン濃縮のための未申告の計画があることを認めざるを得なかったが、この取り組みが核兵器開発計画と関係があることは否定した。


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 7月の事後継続査察で、デイビッド・ケイは、イラク側の説明の矛盾点を十分に洗い出し、詳細な科学捜査と分析の結果から浮かび上がった技術的見解と合わせ、兵器計画の存在を明らかにすること成功した。

 9月、デイビッド・ケイは別の査察団を率いてイラクに入った。この査察は(通常の査察とは)異なっていた。IAEAの保障措置査察官や核専門家ではなく、米軍の特殊部隊やCIAの準軍事要員で構成されたこの査察団は、機密文書やその他の資料をいかに発見するかという「サイト・エクスプロイト」の訓練を積んでいたのだ。デイビッド・ケイの査察団は、軍を退役したイラク人から得た正確な情報をもとに、核兵器計画の存在を証明する機密文書を含む保存文書を発見することができた。デイビッド・ケイの査察団は、その文書を手に入れたものの、武装したイラク人警備員によって敷地から出ることを阻まれた。

 このやりとりはテレビで生中継され、衛星電話を通じて行われた数々のインタビューで、デイビッド・ケイは一躍有名になった。数日後、イラクは再び態度を和らげ、査察官と文書を解放。核兵器開発計画の存在を認め、核申告書を書き直すことを余儀なくされた。

 この快挙を単独で成し遂げたのが、デイビッド・ケイだった。

 私がデイビッド・ケイに初めて「会った」のは、9月危機の際、UNSCOMの担当者として勤務していた時で、電話で話したのが最初だった。その後、デイビッドがいろいろ協議をするためにニューヨークへ来た時、私は彼がUNSCOMの職員に自分の偉業を説明しているところをしっかり見たが、この伝説的な人物には恐れ多くて近づけなかった。


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 デイビッド・ケイの知名度は、IAEAの硬直した官僚機構にとって、あまりに大きいことがわかった。そして、その後すぐ、彼はIAEAを離れ、民間で穏やかな生活を送ることになった。

 一方、私自身は査察官としての知名度が上がっていった。1992年の夏には、私が作戦参謀として編成したチームが、大量破壊兵器関連資料を保管しているイラクの省庁の建物に入ることを拒否され、数日間にわたってイラクとにらみ合い状態になった。その年の秋、イラクの未申告弾道ミサイル部隊の実態を明らかにするため、私は2回の査察を構想・組織・主導した。その後、イラクが査察団から情報や資料を隠すために使っている、いわゆる隠蔽工作の調査を率先して行った。この任務の遂行にあたり、私が率いたチームは、イラク当局や治安部隊との間でしばしば困難なにらみ合いになり、1991年夏にデイビッド・ケイが引き起こしたのと同様の安保理介入を伴うこともあった。

 デイビッド・ケイと同じようなことをやっていると非難された時は、最高の褒め言葉だと思った。

 1998年8月、私が国連安保理を辞めた後、デイビッドと私の道は大きく分かれた。私は、7年間にわたるイラクでのUNSCOM査察の経験から、イラクが保有する大量破壊兵器はほぼ解明され、重要なものは何も残されていないと確信していた。

 しかし、デイビッドは、この任務には最初から参画しているので、(私とは)異なった操作方法を取っていた。彼はイラクが大量破壊兵器を査察団から隠していると非難した。このような争いの多い環境では、イラクの武装解除を査察団が成しどけることは、端的に言って、できない、というのが彼の考えだった。

 イラクの隠蔽工作に対抗するためにUNSCOMが用いた方法論、技術、戦術を考案し、実施した責任者として私は、デイビッド・ケイが私や仲間の査察官の仕事を誹謗したことに憤慨し、彼が米国議会や主流メディアに、イラクが相当数の大量破壊兵器を保持しており、この事実は米国の軍事介入に値する脅威であるという彼なりの考えを受け入れるようにうまく働きかけるのを、不満はありながら、じっと見守った。


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 ブッシュ政権は、元検査官として揺るぎない信頼を得ていたデイビッド・ケイのロビー活動を主な根拠として、2003年3月のイラク侵攻を米議会で承認させることができた。イラクの抵抗がなくなった直後の4月、デイビッド・ケイはイラク調査団(ISG)と呼ばれるCIAの組織の長に抜擢され、イラクの大量破壊兵器計画を追及することになった。

 デイビッド・ケイの伝記を知る人の多くは、IAEA査察官時代を彼の最大の功績として言及するが、私は別の見方をしている。2003年末、ケイは、その事実解明を任されたイラクの大量破壊兵器が、イラク侵攻前に、ケイが断固として存在すると証言していたものが、実際には存在しないという厳しい現実に直面することになったのである。この厳しい現実に直面したケイは、ISGの責任者を辞し、2004年2月の議会での証言で、イラクの大量破壊兵器の存在について、「私たちがやったことはすべて間違っていました。私の判断するところではそうなのです。それが今の私の心ひどくかき乱しています。」と認める勇気と誠実さを見せたのであった。

 デイビッド・ケイは2022年8月12日に逝去した。82歳であった。

 1991年の秋、戦いに疲れた元海兵隊員だった私をその存在と評判で圧倒し、イラク侵攻前のイラク大量破壊兵器の処分をめぐって意見の相違はあったものの、自分の過ちに責任をもって立ち上がる誠実さを持った男として、私は彼を永遠に忘れないだろう。

 デイビッド・ケイは、私にとって、これからずっと肉体的・道徳的勇気のお手本となるだろう。それがあれば、この困難な時代に、世界はもっと多くのことを成し遂げることができるだろう。そして、彼が亡くなった今、それに比して、この世界はますます見劣りがする場所となることだろう。

フランスの薪価格が急騰

<記事原文 寺島先生推薦>

French firewood prices soaring – media
Growing demand ahead of winter is driving up the cost of heating with renewable resource, BFMTV reports

(フランスの薪価格が高騰ーメディア報道から
冬に向けて需要が高まる中、新しい燃料を使った暖房費用が高騰していると、フランスのBFMTVが報じた)

出典:RT

2022年9月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年10月4日


© Getty Images / Ashley Cooper

 フランスの薪価格は上昇し続けていて、6月と比べて平均1割増しになっているが、それは今年、各家庭が例年になく早めに備蓄を用意しているからだ、とフランスのBFMTV局が9月23日に報じた。

 その報道によると、現在の価格は1立方メートルあたり約90ユーロ(87ドル)になっており、さらに薪の需要が、この2か月間で、一年単位で5割増しになった、という。

 このような需要の高まりのせいで、配達に大幅な遅延が出ており、 購入者は注文後、配達まで3~5ヶ月待たなければならなくなっている。ただし、「最悪の場合、注文しても入手できない場合もある」とその報道は警告していた。

 薪製造業者は、需要に追いつけない場合、配達を一家庭あたり1立方メートル分の薪に限定する措置をとる可能性も示唆している。

 「例年に比べて、人々がとてつもなく早く冬への備えをしようとしているのです」とフランスの木質ペレット専門家の組織であるプロペレット・フランス社が先週発表した。 「業者が現状に対応して、生産可能量を増やすまでには時間がかかるため、遅延が生じています。供給が需要に追いついていないのです」と同社は説明している。
木質ペレット・・・木材を材料にした固形燃料


 フランス国民が薪や木質ペレットを群がって購入しているのは、エネルギー価格が危機的状況を迎えている中で、各家庭の暖房をこれまでとは別の形で賄おうとしているからだ。 このような動きは、フランスの国家エネルギー規制機関CREが、今年の冬が厳冬になった場合、各個人家庭で停電が発生する危険性について警告したことを受けてのことだ。

ジュリアン・アサンジ、米国への身柄引き渡しを不服とする訴えを起こす

<記事原文 寺島先生推薦>

Assange files appeal against US extradition
Lawyers tell a UK court the WikiLeaks co-founder is being “punished for his political opinions”

弁護団:英国法廷はウィキリークス共同設立者であるジュリアン・アサンジを「政治的意見を理由に処罰」している。

出典:RT

2022年8月27日

<記事原文 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月26日


ジュリアン・アサンジの引き渡しに抗議するデモで、内務省の建物の前でプラカードを掲げるデモ参加者たち(2022年7月1日、ロンドン)。© Niklas HALLE'N / AFP Japan

 ジュリアン・アサンジ(Julian Assange)の弁護団は金曜日(8月27日)、彼の米国への身柄引き渡しを止めるよう上告した。米国に引き渡されれば、最高175年の刑期が彼を待っている。

 ウィキリークスによると、アサンジの弁護団は、米国政府と6月中旬に彼の引き渡しを承認したプリティ・パテル(Priti Patel)英国内務大臣に反論する「完全な上告理由」を、英国高等法院に提出した。

 上告文では、「ジュリアン・アサンジは政治的意見を理由に起訴され、処罰されている」と主張する一方、米国政府は英国司法当局に対し、この事件の「核心的事実を誤って伝えている」と述べている。また、ウィキリークスの共同創設者であるアサンジの引き渡し要請は、米英間の関連条約や国際法に違反していると付け加えている。

 また、この文書には、2021年初頭に英国の裁判所がアサンジの引き渡しに関する判決を下して以来、新たにまとめられた証拠も含まれていると言われている。


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 彼の妻、ステラ・アサンジ(Stella Assange):「私の夫に対する米国の起訴が犯罪的虐待であることを証明する圧倒的な証拠が出てきた」と述べ、上告審で夫が公開法廷の前で米国に対して主張する機会を与えられるかどうかは、今後高裁が決定することになると付け加えた。

 6月上旬、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、アサンジの弁護士団が、米国への身柄引き渡しを争うために、法的措置の期限が切れる前日に、2つの訴えを起こしたと報じた。しかし、上告の正確な内容は不明であった。

 アサンジは2012年以来事実上の監禁状態にあるが、それは、性的暴行の容疑をかけられ、スウェーデンに送還されることを回避するために、ロンドンのエクアドル大使館に亡命を求めてからのことだ。(性的暴行については訴えはその後取り下げられている)。エクアドルは2019年にアサンジの亡命資格を取り消し、英国警察は彼を大使館から、警備体制が最大級のベルマーシュ刑務所に移送した。それ以来彼はここを動いていない。

 英国の裁判所は当初、非人道的な扱いを受ける恐れがあるとして、アサンジを米国に引き渡すことを拒否していた。その後、ワシントンは、ジャーナリストであるアサンジの権利は尊重されると英国の裁判官を何とか説得できた。その結果、英国のプリティ・パテル内務大臣は、6月中旬にアサンジの米国への引き渡しに軽率な承認を与えた。

 アサンジは、2010年にウィキリークスがイラク戦争とアフガニスタン戦争で米軍が犯したとされる戦争犯罪を描写した機密文書を公開したときから、アメリカの標的になっている。それ以来、彼は国防総省のコンピュータをハッキングした陰謀で告発され、機密資料の公開をめぐって米国の1917年スパイ活動法により起訴されている。

国民投票を前に、ザポリージャ州で爆発により数人が負傷。ウクライナが関与か?

<記事原文 寺島先生推薦>
Several injured by blast in Zaporozhye Region ahead of referendum – official

(国民投票を前に、ザポリージャ州で爆発により数人が負傷 - 公式

メリトポリ市当局によると、ロシアが支配するウクライナの都市での爆発は中央市場の近くで発生したという)

出典:RT

2022年9月22日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月25日



ザポリージャ州メリトポリ市街の様子、ビデオからの静止画 ©  RT / RT

 地元当局者によると、9月22日木曜日の朝、ロシアが支配するウクライナのザポリージャ地域の事実上の首都であるメリトポリ市内で爆発があり、3人が負傷したとのことだ。

 爆発は市の中央市場の近くで発生した、とウラジミール・ロゴフ地方行政長官は通信社のRIAノヴォースチに一時的な報告をもとにして語った。被害者は致命傷を負っているわけではないが、病院での治療が必要なほどの重傷である、との説明だった。負傷者は後に、6人に増えたことがわかった。

 ロゴフ長官は、ウクライナ当局が事件の背後にいると非難した。ウクライナからの離脱とロシアへの加盟を希望するかどうかを問うことになる国民投票の前に、この地域の住民を恐怖に陥れようとする試みだと同長官は述べた。

 メリトポリ市は、ロシアの支配下にあるウクライナのザポリージャ地方の一部であり、事実上の首都としての役割を果たしている。一方、ザポリージャ市は北西部にあり、キエフ軍の支配下にある。


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 9月20日火曜日、同地域のロシアとの連合当局は、ウクライナを正式に離脱し、ロシアに同地域をロシア領として認可するよう依頼するかどうかを問う国民投票を行うことを発表した。ドンバス内の二共和国と、ロシアの支配下にあるケルソン地方は、9月23日から27日にかけて、同様の国民投票を行うことを決定している。

 ウクライナ当局は、このような国民投票を「偽物である」と非難し、投票に参加しようとする人々は処刑の対象とする、と脅している。

 ウクライナ当局には、ウクライナ領内のロシアの支配下にある地域で、標的だとした複数の一般市民を暗殺した記録がある。その理由は、その人々がロシアの協力者だったから、ということだった。 ヴォロデミール・ゼレンスキー大統領顧問のひとりであるミハイル・ポドリャクが先週語ったところによると、 このような人々は、「軍からの標的として完全に相当する対象」であり、これらの人々を殺害することは、犯罪行為にもテロ行為にもならない、としていた。

 今週、ゼレンスキー大統領府のアンドリー・イェルマーク長官は、「ウクライナにはロシアの問題を解決する意向がある」が、その方法が可能なのは「力のみである」と主張している。

ドンバス他がロシア領になれば何が変わるか

<記事原文 寺島先生推薦>
Donbass referendums will change security reality – Moscow

(ドンバスの国民投票は安全保障の現実を変える – ロシア当局からの発表

ドンバス国民がロシアの支配下に入ることを決めたならば、ロシアはドンバスが攻撃を受けた際は、自国が受けた攻撃として対応する)

出典:RT

2022年9月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月25日


©  Global Look Press / コムソモルスカヤ・プラウダ

 クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、ロシアへの加盟に関する国民投票の後にドンバス、ヘルソン地域、ザポリージャ地域への攻撃が行われたならば、その攻撃はロシア領内への攻撃として扱うことを確認した。その投票は、ドンバスの二共和国とウクライナ南部の 2 つの地域で9月23日金曜日に開始された。

 この地域がロシア領内として扱われるかどうかについてのメディアの質問に対し、ペスコフ報道官は「全くその通りです」と答えた。同報道官はさらに、これらの地域がロシアに編入されればすぐに、ロシア憲法がこれらの地域で発効する、と述べた。

 ロシアの元大統領のドミトリー・メドベージェフ国家安全保障会議副議長は、ロシアはその領土を守るために「利用可能なあらゆる手段」を取ることを躊躇しないだろうと警告した。「ロシア領土への侵入は犯罪です」とメドベージェフ副議長は今週初めに語った。更に同副議長は、ドンバスがロシアに加われば、「この結果生じる世界における地政学上の変容は、元には戻せなくなるでしょう」と述べた。

 米国は、欧州や他の地域の同盟諸国(ドイツも含む)と足並みを揃え、9月23日金曜日に開始された国民投票の結果を認めないことをすでに表明している。NATO のイェンス・ストルテンベルグ事務総長も、この国民投票のことを「偽物の国民投票だ」とツイッターで呟いている。なおこに国民投票は9月23日から27日まで行われる予定だ。


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 米当局は最近、ウクライナを「強化」するために、ウクライナ当局へのさらなる援助を約束した。これは、ロシアが部分的な国民動員を発表したことを受けてのことだ。9月21日水曜日、セルゲイ・ショイグ国防相は、動員がかけられるのは約30万人で、任務は予備兵であるとし、この数はロシアで動員できる総数のうちのわずか1パーセント強である、と述べた。

 同国防相は、増兵が必要な理由について、ウクライナ軍とロシア支配地域との 間の1,000km に及ぶ連絡線を管理するために必要である、と説明した。

 2022年2月、ロシアはドンバス共和国を独立国家として認め、ウクライナに、西側の軍事同盟に決して参加しない中立国であることを正式に宣言するよう要求した。 

 ロシアは、ドネツクとルガンスク両地域に、ウクライナ国家内の特別な地位を与えるとしたミンスク合意をウクライナ当局が実施しなかったことを理由に、2月24日にウクライナに軍隊を派遣した。ドイツとフランスが仲介したこの合意は、2014 年に初めて調印された。ウクライナのピョートル・ポロシェンコ前大統領は、ウクライナ側の主な目的は停戦を利用して時間を稼ぎ、「強力な軍隊を作る」ことだと認めている。ウクライナ当局は、ロシアの攻勢は全く言われのないものだ、と主張している。

ザポリージャ原発で最後の1基が停止される―ロシアが管理する施設の6番目の原子炉の「冷温停止」が9月11日(日)早朝に実施された。

<記事原文 寺島先生推薦>
Last power unit switched off at Zaporozhye nuclear plant
The ‘cold shutdown’ of the sixth reactor at the Russia-controlled facility was performed early on Sunday

出典:RT 

2022年09月11日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年09月13日


ザポリージャ原子力発電所の原子炉

 ロシアが管理するザポリージャ原子力発電所で、最後まで稼働していた電源装置が9月11日(日)未明に停止された、と地元当局とウクライナの事業者は述べた。

 6番目の原子炉は「午前3時45分に停止した。今は発電していない」と、ザポリージャ州政府のウラジミール・ロゴフ氏はロシア国有通信社RIAノーボスチに対して語った。

 停止を決定したのは、ウクライナによる原発への砲撃が続き、送電線が損傷したためであるという。攻撃のために、原子炉とタービンが常に変化するモードで動作することを余儀なくされ、事故の危険性が生じたからだ、と同当局者は説明した。

 ロゴフ氏によると、同基はすでに数日前から最小限の能力で稼働していたという。

 ウクライナの国営企業エネルゴアトム社も、最後の1基のいわゆる「冷温停止」を確認し、ザポリージャの施設が完全に停止したことを明らかにした。

 ヨーロッパ最大のザポリージャ原子力発電所は3月からロシア軍が制圧しているが、現在もウクライナ人スタッフが運営している。


関連記事:ウクライナは電力供給を自ら断ち切ったと非難されている

 ザポリージャ原子力発電所の停止にもかかわらず、近隣の町エネルゴダール市へのエネルギー供給は通常通りおこなわれていると、地元当局は断言した。

 原子力発電所とエネルゴダール市はここ数週間、ミサイルや砲撃による攻撃を繰り返し受けており、ロシアはこれをキエフ軍によるものと非難している。また、ウクライナの破壊工作部隊による発電所奪還の試みが数回失敗したことも報告している。

 モスクワは、このような攻撃が続くと、1986年のチェルノブイリ事故をしのぐ原子力災害を引き起こし、ヨーロッパの多くの国々に影響を及ぼすと警告してきた。

 ウクライナの主張では、ロシアが発電所を軍事基地化し、キエフ政権に責任を負わせるために施設を自分で砲撃しているとしている。

 国際原子力機関(IAEA)は、9月上旬に査察団を派遣し、原発へのすべての攻撃を「直ちに停止せよ」と要求したものの、攻撃者の特定は差し控えていた。

「辞任するファウチを逃がすな!」共和党上院議員が証拠品の保管を要求

  「辞任するファウチを逃がすな!」共和党上院議員が証拠品の保管を要求

<記事原文 寺島先生推薦>

Senator lays groundwork for potential Fauci probe

Rand Paul has demanded that records and communications be saved as he looks to investigate the US Covid-19 czar

(上院議員がこの先行われる可能性のあるファウチに対する調査に向けて根回し

米国のコビド帝王ファウチの調査に向けてランド・ポール議員は記録や通信の保管を要求)

出典:RT

2022年8月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年9月5日

今年1月、上院公聴会でジョン・ポール上院議員からの質問を受けているアンソニー・ファウチ博士
© Getty Images / Greg Nash


 大統領首席医療顧問のアンソニー・ファウチ博士がCovid-19の世界的流行対策において果たした負の役割を追求することを誓ったばかりのランド・ポール(共和党ケンタッキー州選出) 上院議員は、ジョー・バイデン政権に対し、文書や通信を保管するよう求めた。これらの文書や通信が、この先予想される調査において証拠品になる可能性があるからだ。

  ポール議員は上院の公聴会においてファウチと論争を交わした経験がある。それは、危険なウイルスの研究を行う可能性のある研究施設に資金を提供していたかどうかについての論争だった。そのポール議員が、8月23日(火)に国立衛生保健所(NIH)に書簡を送った。その内容は、「コビド(Covid)帝王」ファウチの文書や通信を保管しておくことを求めるものだった。 この要求が出されたのは、ファウチがこの12月に、バイデン大統領の首席医療顧問とNIHの国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長を退任することを発表した翌日のことだった。

 「ファウチ博士が辞任してもパンデミックの起源についての調査を求める大きな声が妨げられることにはなりません」とポール議員は、8月22日(月)に同博士が辞意を表明したことを受けて語った。さらに、武漢ウイルス研究所からCovid-19が漏洩したかどうかについての議論についても言及し、真実を述べる誓約を行った上での証言が求められる、と述べた。以前ポール議員は、ファウチ博士が武漢研究所での機能獲得研究に対して直接資金を提供し、その件について真実を述べる宣誓を行った議会で偽りの証言をしたことで同博士を非難していた。

機能獲得研究・・遺伝子産物の生物学的機能を強化する方法で生物を遺伝的に改変する医学研究(Wikipedia)
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 Senator suggests plan to ax Fauci’s NIAID post

 「ファウチ博士は、パンデミック期における公共医療指針に関して米国民に間違った指示を与え、真実を述べると宣誓した議会で偽りの証言を行い、共産主義中国の危険な研究所に税金を投入しました」と8月23日(火)、ポール議員はデイリー・コーラー紙の取材に答えた。

 ただしそのような調査の実施には、今年の中間選挙において共和党が勝利を奪還し、議会の支配権を手にする必要がある。ポール議員が2月に語ったところによると、共和党が上院選挙において勝利を収めたならば、ファウチ博士が持つ記録の提出を求めるとのことだった。いっぽうファウチ博士は、先月(7月)のCNNのインタビューで、そのような調査を行う理由はないとした上で、以下のように語っていた。「ただし調査を行いたいというのであれば、ご自由に。私の記録には何の秘密もないのですから。」

 ポール議員が8月23日(火)の書簡で求めていたのは、NIHはファウチ博士が作成した、あるいはファウチ博士に共有されたCOVID-19のパンデミックに関するすべての文書、データ、通信を保管しておくことだった。 「米国民はNIHから透明性や説明責任を確保する権利があります。その件に関して、ファウチ博士のこの先の進退は関係ありません」と同議員は語った。

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 ファウチ博士が辞任する時期が12月であることを非難する共和党議員たちもいる。12月は、共和党が中間選挙に勝利し議会を支配する可能性がある1月の直前だからだ。「ファウチ博士が12月に辞任するのは都合のいい決断です。共和党が下院の支配権を手にし、ファウチ博士の責任を追求する機会を得られる前に辞任することになるからです。同博士には、この3年以上の間に我が国に大きな害を与えてきたことに関して説明責任があります」とアンディ・ビッグス(共和党アリゾナ州選出)下院議員は8月22日(月)に語った。さらに「あの人物は臆病者です」と言葉を続け、 公職を辞する如何に関わらず、ファウチ博士が説明責任から逃れられることはない、と語った。



ウクライナ国民の約半数が「ソ連時代のほうが良かった」と回答

 ウクライナ国民の約半数が「ソ連時代のほうが良かった」と回答
<記事原文 寺島先生推薦>

Nearly half of Ukrainians think life was better in USSR, and even more say they’re anti-LGBT in new poll revealing split with West

Russia Today 2021年8月20日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2021年9月25日



 ウクライナ当局の政治家たちは、自国を西側諸国の対ロシアの最前線にしたいと考えているようだが、新しい調査結果によると、ウクライナ国民は、何を基本的な価値観と見るかについて、現在2つの潮流で分断されていることが分かった。

 二千人のウクライナ国民を対象にした世論調査の結果が8月19日にNGOのレイティングという団体から公表された。 この結果、今のウクライナ政権が向かっている方向性を支持している層と、その方向性は間違っていると考えている層の2つにくっきりと分かれていることが分かった。ウクライナ政権の方向性は、ウクライナはソ連との協同体制は良くなかったと捉えているのだが、回答者の43%は、生活水準はソ連統治下の方が良かったと回答している。

 研究者の分析によれば、この問題に対する見方は、自分がソ連統治下の社会を経験したかどうかにより大きく変わる、とのことだった。「若い世代は今の方がいい暮らしだと考えているようだが、高齢層はそうは思っていないようです」。同じことが公共サービスについての見方にも当てはまる。「ウクライナ独立後に生まれた人々だけが今の方が衣料や教育の水準が高いと考えています。一方高齢の回答者たちは、医療や教育の水準はソ連時代よりずっと悪くなったと回答しています」

 様々な社会問題に関しても、ウクライナ国民の意見は分かれていた。国民がEU諸国民と同じ価値観を共有する取り組みをウクライナ政府は支持し、西欧との関係を深めようとしてきた。しかしこの調査の回答者の47%は、LGBT+を容認することには否定的だった。さらに、子どもを持たないことを選択する人々を良しとしない人が42%だった。また、死刑の復活に反対する人が51%という多数派だった。

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Kiev must harness its potential & build arsenal of missiles to 'fight war on foreign territory,' says Ukrainian ex-minister

 社会問題に関する見方が二分しているだけではなく、回答者たちは政権を誰に任せるべきかの意見についても一致できていなかった。現職のウォロディミル・ゼレンスキー大統領が回答者の中で最も多い支持を集めていたが、割合は27%に過ぎなかった。次に支持が多かったのは、ペトロ・ポロシェンコ前大統領だった。彼は2014年のマイダン革命の際、ウクライナから亡命しているが、回答者の15%近くが、再び大統領選に出馬すれば支持する、と答えていた。回答者には野党党首であるヴィクトア・メドヴェドーシュク氏という選択肢は与えられていなかったようだ。 現在メドヴェージュク氏はロシアとの癒着が疑われ反逆罪に問われているが、彼は国会の最大野党の指導者である。

 今回の調査結果は以前のものとは異なる結果を示し、西欧との連帯を支持するウクライナ国民が多数派を占めていた。回答者のほぼ64%がEU加盟を支持していた。ただしNATOへの加入には54%が反対していた。このような意見は、高年齢層よりも若年層の方が支持者が多かった。いっぽう2014年の蜂起時の調査では、いずれの年代層でも一貫して、そのような意見を支持する人々が広がっていないことが分かっていた。 しかし、蜂起後の新政権が当時公約の実現を主張していたのにも関わらず、 ウクライナがEUに加盟したり、米国主導の軍事同盟であるNATOに加盟するなどの前進はみられていない。

 そうとはいえ、大きな割合(回答者の約3分の1)のウクライナ国民が、ウクライナがロシアと西欧の間でうまくバランスをとるという第3の道を維持したいと考えいることがわかった。また、EU加盟に反対している人々の中の4分の1は、ロシアとの関係を強めることを期待している。

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中国のこれからの姿。経済・社会発展の新段階 


ペペ・エスコバル(Pepe Escobar)

グローバルリサーチ 2021年3月11日号、アジアタイムズ 2021年3月5日

The Shape of Things to Come in China. A New Stage in Economic and Social Development


<記事翻訳>寺島美紀子・隆吉
2021年4月16日

 「両会(りょうかい:二つの大会)」の時期がやってきた。両会とは、北京指導部の年に一度の儀式である。主役はトップの政治諮問機関である中国人民政治協商会議(全国政協)と、首相がトップの立法機関である全国人民代表大会(NPC、全人代)に業務報告をおこなう伝統的な行事である。
両会(りょうかい)は中国独特の政策決定制度で、当面の課題を歴史的・代表分野が多少違う二つの組織にゆだね、共産党または中央の意思が徹底するようにし、また決定を聞いた者も、一つの機関の決定でなく複数の機関の合意事項であると多少の安心感をいだくようにした制度である。
中国人民政治協商会議は、中国共産党、各民主党派、各団体、各界の代表で構成される全国統一戦線組織。全国委員会のほかに、地方の省、直轄市など各行政レベルにも設置されている。全国委員会の略称は、全国政治協商会議、全国政協。
全国人民代表大会は、中華人民共和国の立法府。国家の最高権力機関および立法機関として位置づけられる一院制議会である。略称・全人代。


 中国「第14次5カ年計画(2021-2025年)」骨子案は3月15日まで審査がおこなわれる。しかし現時点では、これは2025年だけのことではない(Made in China 2025「中国制造2025年計画」は引き続き有効であることは念頭に置いてほしい)。さらなる長期計画「ビジョン2035」の目標(「社会主義の基本的な近代化」の実現)、さらには中華人民共和国建国100周年の2049年までを見据えた長期的な計画である。

 李克強(リー・クォーチャン)首相は、2021年の政府業務報告の中で、GDP成長率の目標を「6%以上」と強調した(IMFのこれまでの予測は8.1%だった)。その中には、少なくとも1100万人の都市部での新規雇用創出も含まれている。

 外交政策については、李克強首相はこれ以上ないほどに覇権国アメリカとの対比を強調した。
 「中国は平和のための独立した外交政策を追求」し、かつ「新しいタイプの国際関係の構築を促進する」と。


 これは、北京が最終的にワシントンと特別な諸案件では協力することを意味しているものの、最重要事項は、EU、ASEAN、日本、そしてグローバル・サウスとの貿易・投資・金融関係の強化である。

 中国経済の第14次5カ年計画(2021-2025年)の概要は、昨年10月の中国共産党全人代ですでに策定され、これから全人代で承認される。中核となる点は「二重流通」政策であるが、その最良の定義としては、中国語から翻訳すると「二重発展の原動力」となる。

 それが意味しているのは、海外からの貿易・投資を促進しつつ、国内市場を強化・拡大するための協調的なとりくみを、多種多様な「一帯一路(BRI)」プロジェクトでおこなうことだ。概念上、非常に洗練された道教的な陰陽バランスをとるということになる。

 2021年初頭、習近平国家主席は、中国の「信念と回復力、われわれの決意と自信」を自讃する一方で、国家が「前例のない挑戦と機会」に直面していることをしきりに強調した。習近平は政治局に対して訴えた、「2025年、2035年、2049年に向けて、あらゆる手段を講じて“好ましい社会的条件”を作り出さなければならない」と。

 それはわれわれを中国の発展の新段階に導く。

 注目すべき重要な目標は、「共同繁栄」(あるいは「繁栄の共有」)であり、技術革新、環境の尊重、「農村問題」への十分な対応とともに実施される。

 習近平国家主席は、中国には不平等が多すぎると断言している。地域格差、都市と農村の格差、所得格差である。

 それは、あたかも中国における史的唯物論の弁証法的な流れを冷静に読み解くようなものであり、したがってわれわれは次のようなモデルにたどり着くような気がする。テーゼは皇帝世襲の権力継承であり、アンチテーゼは毛沢東(もうたくとう)である。その統合が鄧小平・第二代最高指導者である。それに続いて、いくつかの派生(特に江沢民・第三代最高指導者)を経て、真の統合、習近平・第五代最高指導者に至るのである。

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中国の「脅威」について

 李克強首相は、中国が国内でCovid-19の封じ込めに成功したことを強調した。少なくとも620億ドルを費やしたと。これは特にグローバル・サウスに向けての、微妙なメッセージとして読むべきであろう。中国の統治システムの有効性があってこそ、複雑な開発計画を立案・実行するだけでなく、深刻な緊急事態にも対処できるのだと言っているのだ。

 不安定な西側の「新」自由主義的な民主主義と、「中国の特色ある社会主義」(鄧小平の造語)とのあいだの競争で、最終的に問題となるのは、人々の生活を管理し、改善する能力である。中国の学者たちは、SMART(specific, measurable, achievable, relevant and timebound。具体的、測定可能、達成可能、関連性があり、期限付きであること)と定義される国家開発計画の理念を非常に誇りに思っている。

 その好例が、中国がわずか20年足らずで、8億人もの人々を貧困から救うことに成功したことである。史上初の試みである。

 大西洋主義者たちは、事実上24時間365日、中国を悪者にするヒステリーにおぼれているため、上記のようなことをほとんど考えることすらできない。北京に拠点を置くCCG(Center for China and Globalization:北京を拠点とする中国のシンクタンク)の主管である王輝耀は、少なくとも、ロンドンのキングスカレッジに所属する中国学者ケリー・ブラウンを議論に参加させるという功績を残した。
CCG:2008年に、米国共産党中央統一戦線部の組織であるWestern Returned Scholars Associationの委員会によって設立された。世界のトップ100のシンクタンクにランクされている。

 ライプニッツは、イエズス会の学者に近く、儒教に興味を持っていたドイツの哲学者だが、このライプニッツと、専制的・独裁的・帝国的なシステムしか見ていなかったモンテスキューとの比較をもとにして、ケリー・ブラウンは、250年にわたって凝り固まった西側の中国に対する立場を再検討し、合理的な議論をおこなうことが「かつてないほど困難」であると指摘している。
ライプニッツ:近世の大陸合理主義を代表するドイツ哲学者。
モンテスキュー:『法の精神』。権力(立法権、行政権、司法権)は互いに独立し、均衡を保つべきという「三権分立」は、アメリカ合衆国憲法やフランス革命に影響与えた。

 ケリー・ブラウンは次の三点の大きな問題を指摘している。

      1.近代史を通じて、中国が強大な国家であり、歴史的重要性を回復したことに対して、西側はまったく評価していない。西側の考え方は、それに対処する準備ができていない。

       2.近代西側社会は、中国を世界的な大国と考えたことはなく、中国のもつ兵力はせいぜい地上軍(ランドパワー)程度だ、というものだった。中国は、海軍力や、国境を越えて力を行使する能力があるとは考えられていなかった。

        3.西側の大西洋主義者は、「真の民主主義」という今では非常に価値の落ちた概念を含めて、自分たちの価値観に対する鉄のような確信に突き動かされており、中国の価値観をどのように考えればよいのか全く見当もつかない。結局、西側は中国を理解しようとはしない。「確証バイアス」が支配し、その結果、中国は「西側にとっての脅威」となっている。
確証バイアスとは、認知心理学や社会心理学における用語で、仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと。

 ケリー・ブラウンは、中国のことを説明しようとする学者やアナリストたちを悩ませている難しい壁・状況を指摘している。それは、中国の極めて複雑な世界観をどのように伝えたらいいか、ということである。一言で説明できないほど状況は複雑だからテレビで使われるような「サウンドバイト」は使えないからである。
サウンドバイトは、長い音楽や語りから一部のみ抽出し、完全な長さの音楽や語りを一言で宣伝するために使われるもの。


 例えば、中国では13億人の人々が何らかの健康保障を受けており、10億人が何らかの社会保障を受けていることを説明すること。あるいは、中国の民族政策の複雑な詳細を説明すること。

 李克強首相は報告書の中で、「中国国民のあいだに強い共同体意識を醸成し、中国のすべての民族が共同の繁栄と発展のために協力することを奨励する」と宣言した。新疆ウイグル自治区やチベットについては特に言及していない。新疆ウイグル自治区、台湾、南シナ海、香港でのヒステリー状態が止まらない中で、少数民族を国家プロジェクトに統合するための試行錯誤を説明するのは至難の業である。

7億人の消費者市場に参加しよう

 大西洋主義の西側諸国がどのように動こうとも、中国の大衆にとって重要なのは、習近平がかつて「質の高い」経済改革と表現したものを、新5カ年計画がどのように実現してくれるのかということである。

 好調な上海と広東は、すでに6%の成長を目指していた。Covid-19の症例が最初に登場した湖北省は、実際には10%を目標としている。

 熱狂的なソーシャルメディアの活動を見ると、北京の指導者に対する世論の信頼性は、一連の要因を考慮すると、依然として高い。中国は記録的な速さでCovid-19との「健康戦争」に勝利し、経済成長が復活し、当初の予定通りに絶対的貧困が根絶され、共産党創設から100年を経て、文明国家となり、「適度に豊かな社会」として確固たる地位を築いている。

 2000年に入ってから、中国のGDPは11倍以上に成長した。この10年間でGDPは2倍以上になり、6兆ドルから15兆ドルになった。絶対的な貧困から抜け出したのは、9900万人の農村の人々、832の県、12万8000の農村である。

 この複雑なハイブリッド経済は、今では手の込んだ「甘い」罠を欧米企業に仕掛けることにまで手を染めている。
 制裁をするんだって? バカにしてはいけない。少なくとも7億人の消費者がいる市場でのビジネスをするのを楽しみに中国に来なさい!

 私がすでに昨年も指摘したように、この着々と進行中の計画は、国際主義のマルクス主義と儒教(調和を重んじ、対立を嫌う)を高度にミックスしたようなもので、「人類の未来を共有する共同体」の枠組みである。
 一つの国。これは実際には文明国家であり、再浮上する超大国としての新たな歴史的使命に焦点を当てている。
 二つの大会「両会(りょうかい)」という制度。
 そして、非常に多くの目標があり、そのすべてが達成可能なのである。

Pepe Escobar,
  born in Brazil, is a correspondent and editor-at-large at Asia Times and columnist for Consortium News and Strategic Culture in Moscow. He is a frequent contributor to Global Research.
  Since the mid-1980s he’s lived and worked as a foreign correspondent in London, Paris, Milan, Los Angeles, Singapore, Bangkok. He has extensively covered Pakistan, Afghanistan and Central Asia to China, Iran, Iraq and the wider Middle East.
  Pepe is the author of Globalistan – How the Globalized World is Dissolving into Liquid War; Red Zone Blues: A Snapshot of Baghdad during the Surge. He was contributing editor to The Empire and The Crescent and Tutto in Vendita in Italy.
  His last two books are Empire of Chaos and 2030. Pepe is also associated with the Paris-based European Academy of Geopolitics. When not on the road he lives between Paris and Bangkok.




「デモクラシー・ナウ」は、米帝国主義によるシリアの侵略を擁護

<記事原文 寺島先生推薦>

“Democracy Now” Runs Interference for Imperialism in Syria

ダニー・ヘイフォン著

グローバル・リサーチ

2017年5月15日

(初出は、アメリカン・ヘラルド・トリビューン 2017年5月12日)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2021年3月15日



 米国における或る不可思議な特徴のひとつに、「独立メディア」を装って、戦争を推進する狂気じみた左派が存在しているという事実がある。オバマ政権が、いわゆるリベラル派が共和党と「契約」を結ぶことはいいことだという潮流を作り出して以来、市民生活において反戦運動が存在しなくなってしまっている。それなのに、非営利メディアはこの状況を打破する手助けをしていない。「独立メディア」機関として最も名が知られている、デモクラシー・ナウが、戦争を推進する活動を行っている左派の完璧な代表になっている。デモクラシー・ナウは、最近シリア情勢について報じたが、これは米帝国による戦争への同意を鼓舞するものである。今は共和党政権下であり、上院や下院でも共和党が優勢である中なのに、だ。

 2017年5月3日、デモクラシー・ナウは、アナンド・ゴパルへのインタビューを放映した。ゴパルは、2012年から2014年まで、「新米国研究機構」の会員だった。「独立メディア」を自称しているデモクラシー・ナウが、ゴパルのような人物と関係を持つということは、デモクラシー・ナウが取り上げる戦争と平和の問題についての情報源の確かさに疑義をいただいてしまうことになる。というのも、「新米国研究機構」が公平な情報源であるとはまったく言えない組織だからだ。ほとんどの米国や西側諸国の政策立案組織がそうであるように、この組織は、戦争に直接投資している団体から支援を受けている。このような団体には、①フォード財団②オープン・ソサエティ財団③ウォール街のシティグループやJPモルガン・チェース銀行などの関連企業から支援を受けた共同事業体、がある。

 ゴパルは、戦争で暴利をむさぼる団体や独占資本など、戦争で真っ先に恩恵を受ける組織で政治的訓練を受けたのだ。ゴパルはアフガニスタンで数年過ごし、タリバンに従軍した経験もあり、今はシリアのテロリストたちを代弁する記者活動に専念している。これらの努力のおかげで、ゴパルはピューリッツァー賞を受賞し、NGO業界で数多くの仕事を果たしてきた。メディアサイト「ムーン・オブ・アラバマ」の最近の報道によると、ゴパルはSNS上で物議を醸す投稿をしていた。それは、ISISの組織加入方法の文書を自身のツイッターでつぶやいたからだ。ゴパルはエイミー・グッドマンやネルミーン・シェィクとのインタビューの中で、米帝国主義の代理人に対する忠誠心を明らかにしたのだ。その米帝国の代理人は、現在シリアや中東全域で大惨事をもたらしているというのに。

 ゴパルの主張によれば、シリアのバッシャール・アル=アサド大統領が、シリアの苦難のすべての原因になっている、とのことだ。ゴバルが引用したのは、ISISの戦闘員たちとの「対話」であった。ゴバルによると、その戦闘員たちは、バッシャール・アル=アサドによる残忍な行為のせいでテロリズムに傾倒した、とのことだった。さらにゴバルは、シリアとロシアが、テロリズムと戦えていないだけではなく、米国もシリアの政権交代に関する計画を持てていないことを批判した。そして、YPG(クルド人民防衛隊)だけが、ISISと闘っている唯一の組織だとしていた。もちろん、ゴパルの推測はどれひとつも、具体的な証拠に基づくものではなく、裏付けなどはない。

 一方で、あちこちから逆の証拠が出てきている。「アサド大統領の残忍性」言説は、独立メディアの記者たちによりこれまで数え切れないくらい否定されてきた。中でも、シリア政府が化学兵器を使ったとされる点に関しては、特にそうだった。シーモア・ハッシュ記者は、2013年にシリアのグータ攻撃の際使われた化学兵器を追跡し、それらがトルコやサウジアラビアの反乱軍の占領地区や反乱軍の物流ラインからきたものであることを突き止めた。2017年にも化学兵器による攻撃が起こったのだが、その3年前に、すでに国連は、米露の調停のもとで、シリア政府が化学兵器を全廃したことを確認している。ゴパルや彼の政策立案機関のスタッフが、シリアの化学兵器使用問題に関わっている人たちと同様に嘘の情報を垂れ流しているとしたら、彼らをシリア全般のことについての情報源として信頼できると言えるだろうか?

The Truth About Syria: A Manufactured War Against An Independent Country

 より重要なのは、なぜデモクラシー・ナウは、ゴパルを番組に呼んだかという問題だ。なぜデモクラシー・ナウが、ゴバルが「シリアやロシアは大量殺人国家であり、米国は平和を追求している」などと言って、米帝国の肩をもつようなことを許すのだろうか? 2011年以来何度も報じられてきたことだが、米国がシリアに絡もうとする理由は、常にシリア政府を転覆するためだったのだ。米国国防情報局の文書には、米国がシリア内のISISを好意的に支援しており、2003年から始まった米国によるイラク占領期間に、米国はISISの勢力が拡大するような状況を作り出してきた、とはっきり書かれている。さらに、公式記録に残っている内容なのだが、米国と同盟国は、アサド政権を退陣させるという明白な意図を持って、シリアの「もともとの」革命軍に資金を与え、武装させたのだ。これらの外部からのイスラム聖戦士たちの数は何万人にものぼり、近くはトルコ、遠くはヨーロッパ本土から集まってきている。彼らはすべて「民主主義」の名の下に、殺人の罪を犯した罪人だ。

 ゴパルやデモクラシー・ナウは、シリア政府が国民から大きな支持を集めている多くの証拠については言及しない。代理者による侵略のさなかの2012年に、シリア政府は憲法を改正した。そのことはシリア国民のほぼ90%近い支持を得た。2014年に、バシャール・アル=アサドは、得票率88.7%を集め、大統領に再選された。このような結果から、シリア国民から最も支持を受けているのは、シリア政府であることがわかる。それなのに、ゴパルやデモクラシー・ナウといったメディアは、シリアを侵略しているテロリスト勢力による残虐行為については報じないままだ。そして、帝国主義諸国からそれらのテロリスト勢力が支援を受けていることについても、だ。

 デモクラシー・ナウが、帝国主義者たちを擁護している理由は、彼らから資金提供を受けているからだ。それは、どのNPO法人やNGO法人についても同じことなのだが。ゴパルが 「新米国研究機構」の申し子であるのと同様に、デモクラシー・ナウは、「パシフィカ協会」の後援を受けて生まれたのだ。クリティカル・ソシオロジー誌の分析によれば、パシフィカ協会は、1996年から1998年の間に、フォード財団や、カーネギー財団などから14万8千ドル以上の支援をうけ、デモクラシー・ナウを立ち上げたとのことだ。ラナン協会はデモクラシー・ナウに補助金としてさらに37万5千ドルを寄付していた。(同協会についての2008年以降のアメリカ合衆国内国歳入庁990フォームによる)。ラナン協会を設立した大御所資本家であるパトリック・ラナンは、70年代後半から80年代前半にかけてITTコーポレーション社の取締役をつとめていた。ITTコーポレーション社は、CIAの支援のもと行われたファシストによるクーデターの手先だった。そのクーデターにより、民主的に選出されたチリの社会主義者サルバドール・アジェンデ大統領は退陣させられた。

 フォード財団のような、いわゆる世界規模で展開するNGOは、非常に裕福な個人や企業から多額の寄付を受け、世界中で帝国主義者たちの目的を果たす手先となっていた長い歴史を持つ。これらの財団が、米帝国主義のために「ソフトパワー」を駆使する。その主要な目的は標的とされた国家に「文明社会」という基盤を提供することで、政権転覆の土台作りをすることだ。ラテン・アメリカの国々では、こういう現状がずっと続いている。これまで何度も目撃されてきたのは、「全米民主主義基金」やフォード財団といった協会が、ベネズエラや、エクアドルや、ボリビアの左派政権を破壊しようとする右派の反対運動を支援していることだ。

 だからデモクラシー・ナウが、シリアで帝国主義者たちが流している言説に正当性を持たせようとしているのは、別に驚くようなことではないのだ。デモクラシー・ナウが、「独立」メディアであるというのは、名前だけだ。デモクラシー・ナウのスタッフは、資金源である組織に恩を売らないといけない。そして、そのような組織は、帝国主義者たちが
は人道主義者である、とでっちあげることに大きな役割を果たしているのだ。だから、デモクラシー・ナウは、企業メディアが伝えていない米国内のニュースを報じることはあるが、世界規模で何が起こっているかについては、嘘情報の発信源である危険性があるのだ。エイミー・グッドマンのシリア情勢関連記事は偽りであり、これでは間違った世界観が世間で醸成されてしまう。

 米国を拠点にしている真の独立メディアの記者たちは存在する。しかし、彼らには金銭面や政治面での支援がほとんどないのだ。米帝国主義に対する総合的な闘いという視点で、報道やメディアは捉えられなければならない。独立メディアが力を得るのは、人々が、元気で力強く活動している時だ。人々の活動が弱くなれば、独立メディアの報道も力を失う。代替メディアが企業団体の裏に隠れているかぎり、米国で企業メディアが支配的な地位を保ち続けられる。彼らにとって今は勝負の時なのだ。だからこそ帝国主義の「ハードパワー」装置も「ソフトパワー」装置も駆使した操作レバーを使って、勝負をかける必要があるのだ。デモクラシー・ナウを使って、言説を広めようというのも、その手口のひとつだ。


Danny Haiphong is an activist and radical journalist in the Boston Area.

 

 

 

アンドレ・ヴルチェク氏が亡くなった。彼は、真実を求める情熱的な戦士だった。


<記事原文> 
The Death of Andre Vltchek, a Passionate Warrior for Truth


グローバル・リサーチ 2020年9月25日
エドワード・カーティン
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年10月30日



 「もし世界がひっくり返っているのならば、我々が世界をひっくり返してもとの正しい姿にもどすべきではないのか?」– エドゥアルド・ガレアーノ(1998) 『逆さま』から

 何十年もの間、古き良きジャーナリスト(しかし実際は彼は若い)であり、芸術家でもあるアンドレ・ヴルチェク氏は、世界中を旅し、真実を追い求めてきた。そして、つねに背筋を伸ばして立ち、世界を変えようとし、不正に対して立ち上がるよう人々を励ましてきた。今の時代の記者はいすに座ったまま記事を書くのだが、彼は勇気と不屈の精神を持って歩き回る記者だった。彼はものごとの本質をまっすぐに話した。そのため、ある特定の人々やニセ左翼の出版社に良く思われていなかった。そのような人々はアンドレの中にある真の怒りを嗅ぎ取っていたのだ。そして、アンドレには偽善を嗅ぎ取れる力があった。そのことが、彼らを恐れさせたのだ。だからこそ、そういったメディアは、アンドレの記事を載せるのをやめたのだ。アンドレは他の多くの記者が恐れて足を踏み入れないようなところでも行った。そして、西側諸国の帝国主義的な暴力による被害を受けた地域の人々と話を交わした。アンドレは、無防備な人々を守り、自己防衛するよう励ました。

 でも、アンドレはもういない。アンドレは、運転手付きのレンタカーの後部座席に乗っているときに亡くなった。彼らは夜通しトルコのイスタンブールに向かっているところだった。アンドレは眠っていた。ホテルについて妻がアンドレを起こそうとしたが、だめだった。享年57歳。

 アンドレには、安らかに眠ってほしい。だが、アンドレの言葉を鳴り響かせよう。そして、正義と平和を求めるアンドレの情熱的な叫び声も。。凶暴な略奪者が支配するこの世界に、正義と平和を求めるアンドレの情熱的な叫びを鳴り響かせよう。    

 アンドレやアンドレの業績を知っている人たちは、彼を亡くしたことを深く、深く悲しんでいる。アンドレの友人であり同僚でもあるピーター・ケーニッヒ氏も胸を打つ追悼の記事を書いている。

 ケーニッヒ氏が書いている通り、ヴルチェクはつねに世界中の弱者たちを守っていた。その弱者とは、人間と思われず使い捨てにされている人たち、「周辺に追いやられている」人たち、有色人種たち、西側諸国が起こした戦争の被害者たち(その戦争には、軍による戦争も経済による戦争もある)だ。 そして、その人たちが住んでいるのは西パプア、イラク、シリア、アフリカなどだ。アンドレは怒りっぽかった。ただその怒りは正当性のある怒りだった。  怒りの対象は、一方的にしか物事を伝えない西側メディアと、自分たちに都合のよい「真実」を常に説き聞かせているそれらメディアのエリートたちに対してであった。

 アンドレは最近米国にいた。以下は、アンドレが米国に関して書いた文章だ。

 
一つだけ分かって欲しい。ここにいると聞こえてくる声は、奴らの声だ。何度も聞こえてくる。奴らは世界の人々に何が問題で何が問題ではないか押しつけてくる!こんな声はアフリカや中東やアジアの国々では決して聞こえてこない。そのような地域では、人々は完璧に何が問題なのかを理解している。問題の根本が人種問題にあるのか、そうでないか、アフリカや中東やアジアの人々には分かっている。

 私はたった二週間しか米国に滞在していないが、米国社会の深い危機を分析できた。私が訪れたのは、ワシントンDCとミネアポリスとニューヨークとボストンだ。そこで多くの人々に話しかけた。私が目撃したのは、混乱状況であり、さらに、米国の人々が世界の他の地域のことを全く頭にいれていないことだ。この惑星を何十年間もずっと陵辱し続けてきた米国は、自分たちの事を世界的な視点で見るということが全くできないのだ。市民たち(その中にはメディア関係の人々も含まれるが)は、恐ろしいほど無知で、古い考えに凝り固まっている。

 しかも自分勝手だ。

 私は何度も尋ねた。「黒人たちの命は世界中で大切にされているのですか?コンゴ共和国の黒人たちもですか?西パプアの黒人たちもですか?」と。誓ってもいい。明確な答えは全く返ってこなかった。
誰かが伝えなければいけない。誰かが米国人たちの目を開けさせなければ。


 
数年前、私は南カリフォルニアに招かれ、当時製作中だったアフリカについてのドキュメンタリー映画を紹介する機会があった。(その映画のタイトルは『ルワンダの策略』で、西側諸国により引き起こされた大虐殺についての映画だ。その大虐殺は、ルワンダで、そして後にはコンゴ民主共和国で行われたものだ) 。そこでは何百万人もの黒人たちが死に瀕していた。その大虐殺の原因の大部分は、米国の白人たちの止むことのない贅沢のせいだ。

 ところが、話すことを許される前に、私はこんな警告を受けた。「気を付けてください。米国の人々は敏感なのです。残虐な真実を見せすぎないでください。人々が嫌な思いをするかもしれません。」
この警告を聞いて、私はすんでのところで、その場を立ち去りそうになった。会の主催者への敬意がなかったら、そうしていただろう。

 今ならわかる。いまこそ、米国の人たちに真実を見せるときだ。血が流れる川を。この惨劇を引き起こしているのは、米国人の怠惰さであり、自分勝手さであり、欲望だ。米国の人たちに、米国以外の世界の人たちの怒りの叫びを聞かせる時なのだ。


 しかし、ご存じのように、そんなことはほぼ不可能だ。米国の人々の目と耳を開かせることは。なぜなら、米国の人たちは死んでもそんなことはしないよう凝り固まっているからだ。しかし、アンドレは必死でそれを試みた。そして、アンドレの苛立ちはますます大きくなっていた。なぜならそんなことをしても、相手は耳が聞こえていないようだったから。

 アンドレは勇猛な戦士であると同時に、愛の人でもあった。アンドレは、世界の人々や世界の文化に深い愛を持っていた。アルベール・カミュと同じく、アンドレは美と苦しみに身を捧げようとしていた。その仕事こそ、まさにアンドレの天職だった。文学と文化を愛し、これまで生み出された最善の芸術と美を慈しむアンドレが深く憎んだのは西側諸国がたびたび見せる振る舞いだった。西側諸国は、権力者による喧伝に惑わされ、無知で無教養な場所になってしまった。一言でいえば「生命のない社会」だ。西側にないのは、幸福感や温かさや詩だ。そして、愛だ。西側諸国では、そんなものたちがすべて極端に供給不足になっているのだ。

 アンドレは以下のように感じていたし、口にも出していた。「米国では消費主義が強要され、人々は虚無主義に陥り、米国が世界中の人々を苦しめているという事実を認めたがっていない。なんという自分勝手なバカ騒ぎなのか。「俺にくれ、くれ、くれ」の世界だ。アンドレはこのような状況を魂の死だと感じていた。こんな状況はたとえ見せかけであれ、人々が信仰する宗教の教えとは真逆の状況だ。人々は、絶望を見えなくするためそんな宗教にすがっているのだが。

 アンドレは以下のように書いている。

 「こんなことはやめないといけない。私がこういうのは、私がこの世界を愛しているから。この世界とは、西側帝国の外にまだ存在する世界だ。私はそんな世界に陶酔しているし、憑りつかれている。私が心から愛する世界。大きな喜びのある世界。一瞬一瞬、すべてがいとおしい。」


 詩、音楽、偉大な文学。これらが、アンドレが愛したものたちだ。これらを守るために、彼は平和を守る要塞の上で戦っていたのだ。

 読者の皆さんには、ぜひ、アンドレの以下の記事を読んでほしい。「愛と西側の虚無主義と革命的な楽観主義

 アンドレは稀有な存在であり、勇気のある人物だった。アンドレの栄誉をたたえ鐘を鳴らそう。

 以下は、ケネス・レクスロス氏がアンドレのために書いた詩だ。詩人の心を持った戦士アンドレのために。



無言

木々は静かにたたずんでいる

暑さの中で

心を解き放ち

君の思いを伝えてほしい

君はどういう人間だったのか

そして今、君はどういう人間なのか.

鐘の音のように 

そう、だれもが鳴らしたことのない鐘の音のように。


アンドレ・ヴルチェク氏による記事はこちら

バーニー・サンダースがジョー・バイデンに警告:左に進め、そうでないと選挙がダメになる

<記事原文 寺島先生推薦>
Bernie Sanders warns Joe Biden: Pull left or blow the election
 
RT US ニュース

2020年9月13日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年10月7日


 トランプ大統領はジョー・バイデンを「急進左派」のあやつり人形だと非難した。しかし、米国で最も著名な左派のバーニー・サンダースは、バイデンは十分に左よりになっていないと考えている。だが彼の懸念はバイデンの耳には聞こえていないようだ。

 トランプが言うことには、ワシントンで50年近くの経験を持つ穏健民主主義者のジョー・バイデンは、「アメリカの生活様式を破壊しようとする急進的な左派運動のあやつり人形」だ。トランプの主張の中心は、バイデンが「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」の抗議運動に伴う暴力の傾向を強く非難することを拒否したこと、そして11月に勝利した時にトランプの減税を撤回するというバイデンの公約についてである。

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 しかし、バーニー・サンダースの考えでは、バイデンは自分の利益のために中道に近づきすぎている。日曜日のワシントン・ポスト紙の報道によると、サンダースは「バイデンがより漠然とした、より穏健的な姿勢を継続すれば、11月の選挙で敗北するという深刻な危険性がある、と仲間に伝えた」

 バイデンの戦略は、ほぼ全てのキャンペーンでトランプとの敵対姿勢をはっきりさせる事のようだ。それは、今年のメインシーズンにおいて、サンダースが若い有権者を的確にとらえた「経済ポピュリズム」ではない。この報道によると、サンダースが望んでいることは、バイデンが「公的国民皆保険制度」を受け入れること、処方薬の値段を下げる計画を発表すること、そしてより高い賃金を認めることだ。

    
 さらに、サンダースは、バイデンがニューヨーク下院議員のアレクサンドリア・オカシオ・コルテスのような人気の左派政治家と選挙運動を行い、若者やラテンアメリカの選挙民に接近することを望んでいる、ということだ。ラテンアメリカの選挙民は、選挙日が近づくにつれ、ますますトランプに傾くようになっている。オカシオ・コルテスは、先月の民主党全国委員会では、発言者の最後の方に付け加えられたが、おそらく民主党によるバイデンの穏健主義寄りの動きの中で、元共和党の知事であったジョン・カシッチより発言する時間が少なかった。
    
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 バイデンを支持するというサンダースの決定は、彼の多数の支持者に失望をもたらした。社会主義者の上院議員がバイデンを是認したことは、2016年のヒラリー・クリントンとの争いからサンダースを追い出した同じ黒幕政治への降伏だ、と見なされたからだ。それに対応するために、サンダースは、自分がバイデンを左に引っ張り、二人で特別委員会を設置し、気候変動、移民、医療保険制度、その他の重大な課題について進歩的な政策を作ると約束した。

 しかし、この夏、その特別委員会は、サンダースが特に推奨した「すべての人のための医療保険」制度の代わりに、オバマケアの拡大で妥協した。気候に関する勧告については、進歩主義者が要求した根本的な「グリーン・ニューディール」に及ばなかった。刑事司法改革の概要については、一部の左翼や「ブラック・ライブズ・マター」活動家の主要な要求である警察への資金提供拒否について言及していない。特別委員会の勧告を発表したときでさえ、サンダースは、彼とバイデンの間には「我が国が直面している最も重要な問題のいくつかについて強い意見の相違」があることを認めた。

 それ以来、バイデンへのサンダースの申し立ては強まるばかりだ。サンダースは金曜日の公共放送サービス(PBS)のインタビューで、「バイデンは『私はドナルド・トランプではない』というだけでなく、国民に別の選択肢、あるいはバイデンに投票する理由を語る必要がある」と述べた。「それはバイデンの経済計画について話すことだ。しかし、それは私が望むほど強力なものではない。それはバーニー・サンダースの計画とはちがう。」

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 サンダースがもうそろそろ慣れてよいことがあるとすれば、それは民主党の主流派によって干されているということだ。2016年の民主党大会前、ヒラリー・クリントンの記録的な低支持率にもかかわらず、サンダースは、クリントン陣営の都合のよいように選ばれたスタッフによって追い出され、それでもクリントンを支持し続けた。そしてそのことは、彼の多くの支持者に、サンダースが自分の価値を低下させ支持者を裏切った、と見なされた動きであった。
     
 この頃、重要な時期に、バーニーに対する偏見が始まった。2月、いわゆるサンダースのロシアによる支持がメディアで出回り、社会主義者を公言するサンダースをアドルフ・ヒトラーに例えるリベラル派の識者が現れた。ワシントン・ポストが、1か月足らずの10の反サンダース特集記事の1つで宣言したことは、バーニー・サンダースは「左派のドナルド・トランプ」だということである。

 それでもサンダースは彼の荷馬車を民主党につないできた。そして、いざという時には、サンダースは彼自身の進歩的なイデオロギーを超えてバイデンを選ぶだろう。サンダースは金曜日に公共放送サービス(PBS)に答えて、彼らの共通の目標である「トランプを倒すこと」は、バイデンと彼自身との不一致より優先する、と彼は述べた。













417 Bernie Sanders warns Joe Biden: Pull left or blow the election
13 Sep, 2020 14:46 / Updated 9 days ago

President Trump has accused Joe Biden of being a puppet of the “radical left.” But the US’ most prominent leftist, Bernie Sanders thinks Biden isn’t leaning left enough. His concerns seem to be falling on deaf ears, though.
Trump has said that Joe Biden, a centrist democrat with nearly five decades of experience in Washington, is a “puppet of the radical left movement that seeks to destroy the American way of life.” Central to Trump’s argument is Biden’s refusal to strongly condemn the wave of violence that’s accompanied ‘Black Lives Matter’ protests, as well as his pledge to roll back Trump’s tax cuts should he win in November.

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To Bernie Sanders, however, Biden is sticking too close to the center for his own good. According to a Washington Post report on Sunday, Sanders “told associates that Biden is at serious risk of coming up short in the November election if he continues his vaguer, more centrist approach.”

That approach has seen Biden focus his campaign almost entirely around opposition to Trump, rather than the “economic populism” that made Sanders a hit with young voters during this year’s primary season. According to the report, Sanders wants Biden to embrace single-payer healthcare and higher wages, and to unveil plans to lower the cost of prescription drugs.

Furthermore, Sanders reportedly wants Biden to campaign with popular leftist politicians like New York congresswoman Alexandria Ocasio-Cortez, in a bid to reach young and Latino voters, the latter of whom are leaning more and more toward Trump as election day draws nearer. Ocasio-Cortez was a late addition to the speakers’ roster at last month’s Democratic National Committee, and in a move perhaps indicative of the party’s dedication to Biden-style centrism, was afforded less time to speak than Republican former governor John Kasich.

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Sanders’ decision to back Biden came as a disappointment to his legions of supporters, who saw the socialist senator’s endorsement as a capitulation to the same machine politics that forced him out of contention against Hillary Clinton in 2016. In response, Sanders promised that he’d pull Biden to the left, and both men set up a number of task forces to shape policy on climate change, immigration, healthcare, and a number of other hot-button progressive issues.

Yet the task forces settled this summer on expanding Obamacare rather than implementing Sanders’ signature ‘Medicare for All’ system. The climate recommendations fell short of the radical ‘Green New Deal’ some progressives demanded, and the criminal justice reforms outlined did not mention defunding police departments, a core demand of some leftists and ‘Black Lives Matter’ activists. Even in announcing the task force’s recommendations, Sanders admitted that himself and Biden had “strong disagreements about some of the most important issues facing our country.”

His pleas to Biden have only intensified since then. “You got to give people an alternative or reason to vote for you other than saying, ‘I’m not Donald Trump,’” Sanders said in a PBS interview on Friday. “And that means speaking about an economic program, which Biden has. It is not as strong as I would like it. It is not the Bernie Sanders program.”

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If there’s anything Sanders should be used to by now, it’s being sidelined by the Democratic establishment. Despite Hillary Clinton’s record low favorability ahead of the party’s 2016 convention, Sanders was muscled out by a party whose staff were hand-picked by the Clinton camp, and went on to endorse Clinton, a move many of his supporters saw as a betrayal of his values.

This time around, the bias against Bernie began in primary season, with leaked stories of Sanders’ so-called Russian support circulating in the media in February, and liberal pundits comparing the avowed socialist to Adolf Hitler. Bernie Sanders, the Washington Post declared in one of its ten anti-Sanders op-eds in less than a month, is “the Donald Trump of the left.”

Yet Sanders has hitched his wagon to the Democratic Party, and when push comes to shove will choose Biden over his own progressive ideology. Speaking to PBS on Friday, he said his own disagreements with Biden came second to their common goal: “to defeat Trump.”

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Qアノンは人々の健全な変革への衝動をねじ曲げるインチキ集団だ


<記事原文 寺島先生推薦>

Caitlin Johnstone: QAnon is a fake, decoy imitation of a healthy revolutionary impulse

RT 論説面
2020年8月20日

By Caitlin Johnstone, an independent journalist based in Melbourne, Australia. Her website is here and you can follow her on Twitter @caitoz

 トランプの支持者の多くは、まるで宗教のようにQアノンの陰謀論に従っている。そして、この陰謀論の中には、「沼の水を干上がらせ」、現状を打破する秘訣のすべてがあると主張している。しかしこのQアノンという組織は、ただの恥知らずのまやかしで、こんなものについていっても本当の変革など決して起こらないだろう。


<訳注> Qアノンについては下記のブログ「百々峰だより」で詳しい説明があります。「沼の水を干上がらせる」というのはどういう意味かについても、そこに説明があるので、そちらを参照していただければ幸いです。
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-384.html


 米国大統領トランプは、これまであの有害なQアノンの陽動作戦について好意を持っていることをはっきりとは言及せず、またQアノンに対する質問に答えることは避けてきた。しかし今日、初めてQアノンに好意を持っていることを認め、Qアノンへの支持を表明した。そして記者にこう答えた「私はこの運動について詳しくは知らないが、私に好意を持ってくれていることは知っている。それは嬉しいことだ」と。さらに、「彼らはただ自国を愛していて、ポートランドやシカゴやニューヨーク市で起こっていることを見たくないようだ」と続けた。

 トランプは、Qアノンの裏で広まっている説についての質問を受けた。それは、トランプが子どもを小児性愛者に売るような悪魔の組織ディープ・ステートに対して、密かに闘いをすすめている、というものだ。その説をトランプは認めたが、こう言い直した。彼が主導している闘いの相手は「急進左派の考え」である、と。

「もし私が世界の問題を解決する手助けができるのなら喜んでそうする。身を捧げて、だ」。トランプは質問に対してこう答えた。「<i>さらに、われわれは急進的な左派の考え方から世界を守ろうとしている。その左派の考えはこの国を滅ぼすだろう。もしこの国がなくなれば、世界も同じことになるだろう」と。



 もちろんトランプは、子どもを小児性愛者に売りとばす邪鬼のような連中と闘っている、とは言わなかった。 なぜならトランプはそんなことは何一つしていない。トランプはディープ・ステートと闘っているわけではない。毒のある言葉を撒き散らしている割には、トランプは極めて都合のいい共和党の大統領であり続けている。トランプは政策においても身のこなしにおいてもこれまでの大統領と変わらず堕落していて、見ていて気分が悪くなる大統領だ。さらにトランプは選挙で選ばれてはいない支配者たち(ディープ・ステートという名で知られている)に逆らうようなことは何一つしてこなかった。トランプはポートランドなどで起こっている抗議活動には激しい攻撃を加え、ベネズエラボリビアなど世界各地の社会主義を攻撃しているのだから、トランプがディープ・ステートに闘いを挑んでいることを認めなかったのは賢明な判断だと言える。



 トランプはQアノンの陰謀論をはっきりとは認めないという不誠実な態度をとったのだが、そのことがネット上のQアノン支持者たちの興奮や情熱を弱めることにはならなかった。

 私がQアノンを折に触れて叩くのは政府や富裕層に従順なメディアを叩くのと同じ理由だ。どちらも大衆が、現状を握っている権力者たちを支持するようになることを画策しているからだ。 何もしなければ大衆はそんなことを支持しないからだ。Qアノンが見せているのはワクワクするような運動だ。そう、小市民がついに立ち上がり、強きものによってつけられた鎖を投げ捨てるという運動だ。その強きものというのは、私たちをずっと搾取し抑圧してきた連中だ。それなのにQアノンがやっていることと言えば、不満を持つ民衆に冷静になるよう諭し、「俺たちの計画を信じ」、民衆が米国政府のトップを信頼するよう仕向けているだけだ。

 そしてこのことこそがまさにQアノンが特に有害な組織であるという理由なのだ。Qアノンが人々に間違った情報を信じさせて人々を困惑させたり、疎外感を感じさせたりすることだけが問題ではない。 Qアノンは、健全な革命を起こしたいという人々の衝動がどんなものかを模倣している、そのインチキこそが問題なのだ。Qアノンは人々に、もともと人々がある程度本能的に気づいていた重要な真実を伝える。その事実とは、例えば大手メディアは信頼できないものだとか、選挙で選ばれた公式米国政府が本当の主導権を握っていないとか、私たちに必要なのは目を覚ますことだ、といった情報だ。このような情報を耳にすれば、本質的で真実で健全な革命を起こそうという衝動が生まれるものだ。そのとき、Qアノンは民衆の気持ちをねじ曲げ、米国大統領を支持し共和党のたくらみを支持するよう仕向ける。

 私がトランプのやっていることが完全な悪事であると主張するたびに、(悪事の例をあげればジュリアン・アサンジの英国からの引き渡しを画策したことや、イラン軍の主要人物を暗殺したこと)、本当に毎度毎度、Qアノンの推進者たちから「落ち着け」や「俺たちの計画を信じろ」なとど言われる。トランプのそんな行為はディープ・ステートに対する巧妙な戦略だからだ、というのが彼らの言い分だ。トランプの進める共和党の政策をこれまでずっと流し続けてきた、あの邪悪なFOXニュースに対しての広汎な異議を見れば、なぜそのようなたくらみがQアノンに群がるものたちにとって良いことであり、都合の良いことなのかがよく分かるだろう。

 権力者と闘おうという健全な衝動が、支配者層の最も邪悪な面を支持するようねじ曲げられる。こんな風に健全な衝動がねじ曲げられ崩れていくのを見るは、いつものことだ。政治の世界ではよくあるこだ。人種差別や偏見に対する健全な闘いはねじ曲げられ、戦争を推進し、抑圧的で人民を搾取する社会を目指す民主党支持に回される。民主党は人民を守る素振りを見せているが、民衆を破壊することしか考えていない。 困っている人々を守り、巨悪と闘おうという健全な衝動はねじ曲げられ、政権交代のための「人道主義」という介入主義者を支持するように導かれてしまう。



 人々が自分たちの持つ健全な衝動によって、つい騙されてしまうことは、ある意味で良いことでもある。というのもこれは、私たちは基本的に健全な感覚を持つ善人だということだからだ。つまりどこに進めば正しいかが感覚として分かっているということだ。 もし私たちが本能的に邪悪で賢くない存在だとしたら、連中の喧伝には引っかからないだろう。連中の喧伝は、巨悪と闘い、子どもたちを守り、真実を述べるよう伝えているからこそ、連中の喧伝に引っかかってしまうのだ。さもなければ、連中が私たちを引っ掛けようとする手口は、私たちがもつ躊躇の気持ちや憎しみや欲望や人を攻撃したいという気持ちを利用することになるだろう。しかし人間というものは基本的には善であり、だからこそ喧伝家たちはその良心を利用して私たちを騙そうとするのだ。

 しかし善良な意思と善良な意図だけでは足りないのだ、悲しいことだが。知性だけでは私たちが喧伝に騙されることは止められない。かなり知性のある人でも喧伝家たちの繰り出すもの、例えばロシアゲートやQアノンなど、に陥ってしまっている人も少なからずいる。いま世界で本当に何が起こっているかはっきりと見極めたいのなら、何が真実なのかを絶え間なく身を尽くして追求し続けないといけない。そう、自分の魂にすっと落ちる、そんな真実を追求し続けることだ。

 ほとんどの人たちは、真実をつかむこのような努力をしていない。ほとんどの人たちにとって真実は優先順位の一番ではない。自分たちは真実が優先順位の一番だと考えていると思っているだろうが、そんなことはない。よく調べてみると、ほとんどの人たちがやっているのは、どうすれば自分たちがもともと持っている考えを守ることができるかを探すことだ。真実を客観的に捉えるよりも、その方が優先される。民主党に特別な嫌悪感を持っている人なら、その人々は自分の固定観念に縛られQアノンの陽動作戦に流されるだろう。トランプに対して特別な嫌悪感を持つ人なら、トランプはロシア政府に操られているというロシアゲートの話を信じるように流されるだろう。影響を受けやすいだろう。このような自分の中の偏った考えのせいである方向に誘導されてしまうことは他にもいろいろある。

 真実を見つけようと真摯に取り組むこと。偏った世界観や考え方にとらわれないで、客観的な真実の火を掴むことに妥協しないこと。そうするしか、偽情報や喧伝で溢れているこの世界で正しい舵をとることが出来る術はない。真摯な態度で何よりも真実を優先すること。そしてこの世の中で実際に起こっていることは何なのかを最善を尽くして見出そうとすること。そうすればきっと、まやかしに騙されることはなくなるだろう。

ベテラン活動家の一喝。「BLM(黒人の生命も大事だ)運動はのっけから民主党の選挙の道具だった。邪な企みのために、何百万ドルものカネが草の根運動に回されている!!」

<記事原文 寺島先生推薦>Veteran activists have called out BLM as a tool of the Democrats from day 1. But agenda-driven $MILLIONS drown out the grassroots

RT 論説面
2020年7月6日


ヘレン・ブイニスキー

ヘレン・ブイニスキー氏はRT所属の米国のジャーナリストで政治論説家。彼女のツイッターアカウントはこちら。 velocirapture23

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年8月25日



 「黒人の生命も大事だ(以降BLM)」運動は何百万人もの米国の黒人を苦しめてきた。セント・ルイスのある活動家が説明してくれたのは、これは白人リベラル活動家の長年にわたる伝統的な手法であること、そして彼らが草の根運動を乗っ取って民主党の企みを前進させる手口について、だった。

 「BLM運動は、組織的に資金が提供されている社会正義のための活動であり、この活動は黒人たちの痛みを利用して白人の罪深いリベラルたちを利するものであり、結局は民主党の政党戦略に利用され、米国社会を分断することになる」。こうRTに語ったのは、セント・ルイスの活動家二オータ・ウフーラ氏だ。

 ウフーラ氏は自身のウェブサイトhandsupdontshoot.com を2014年8月に立ち上げ、セント・ルイスの郊外にあるファーガソンで起こった警官による18才のマイケル・ブラウンさん銃撃事件に関する間違った情報に対抗した。

 かつてBLM運動が高まりを見せる中で、ブラウンさんの殺害によって引き起こされた社会正義を求める新たな組織がファーガソンですぐに空中霧散され、本来の抗議活動の熱が巧みに利用され、抗議者たちの本来の要求が蔑ろにされ、時には邪魔をされたことを目にしてきたウフーラ氏がずっと人々に警告しようとし続けてきたことは、BLM運動を取り仕切る組織が本当は誰の代理者であるかを見失うな、ということだ。その答えは、黒人の運動にテコ入れすることで、民主党の支持者を増やそうという企みだ。

活動を乗っ取るやり口


 地域から信頼を得ているという見せかけの証としてファーガソンの住民たちから資金を集め、BLM運動はブラウンさんの死に際して3300万ドルを手にした。ウフーラ氏によれば、それは自分たちの地域で見たことのないような大金だった。 6年後、セント・ルイスの黒人たちは貧しいままで、街は暴力に溢れていた。しかし、BLM運動はそのセント・ルイスを新たな搾取地域に選んだ。

 「彼らははじめは草の根運動の影に隠れています。それから運動の指導者として入りこみます。そして、その指導者たちがメディアに顔を出し、自分たちがその運動を指導しているかのような話をするのです」。ウフーラ氏はこう語った。

 BLM運動やその他の人工芝運動のやり口の大まかな説明をしたあと、ウフーラ氏はこうつけ加えた。「彼らは抗議活動の場に本当に少しだけ顔を出したりもします。自分たちが計画した活動でなくても、です。そしてニュースに登場します」。ウフーラ氏によると、このやり口がワシントンで1963年に起こった反人種差別運動である「ワシントン大行進」を白人のリベラルたちがハイジャックした手口を踏襲した伝統的なやり口なのだ。

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You’re already paying reparations, but the money’s not going to black America

 この伝統的なやり口がグツグツと煮詰められ受け継がれているのだ、とウフーラ氏は語っている。ネットルート(訳注 米国にある進歩的な政治団体)といった組織がまるで工場の組み立てラインのように冷酷なまでの効率の良さでニセ活動家を作り上げる。

「ネットルートは、活動家たちがオーディションを受け民主党や特別利益団体や白人のNPOのあやつり人形になるところなんです」。ウフーラ氏はさらに話を続けた。

 「そんなことがあっという間に起こってしまうので、気がついた頃にはすでに外堀がきっちり埋められて、何に襲われているのかを知る隙もないのです。何が起こっているかを知ることさえよりも先にニュースに報道が流れて、自分たちの本来の運動が乗っ取られてしまっているのです」。

 白人のリベラル団体や進歩派団体は、「私たちの活動の情熱を利用して彼らの狙いを前進させようとします」。BLM運動の場合でいうと、「社会の様々な分派」という概念を武器に、活動範囲を人種問題から女性の権利、移民者の人権、LGBTの問題などにひろげ、本来の活動を白人自身の問題にすり替えるのだ。

 「人々を動員するために、彼らには前を走る黒人が必要なのです。だって、彼らが抗議活動をどう見せたいか、分かります?世論向けには、トリプルケイ(白人至上主義団体)運動のように見せたいんですよ」。ウフーラ氏は冗談めかして言った。

彼女の言っていることは正しい。先月の抗議活動者のうち黒人はほんの17%だった。これはピュー研究所が先週出した調査結果だ。同組織の敵である統計結果からはウフーラ氏の冗談は冗談で聞こえなくなる。

真の活動家の権利は剥奪される

  ウフーラ氏だけがBLM運動を公然と批判している草の根運動家では決してない。彼ら活動家が批判しているのは、BLM運動が、疑似餌を垂らし、警察の暴力行為の被害者のために抗議する運動にとってかわって民主党のペット育成を行っていることに対してだ。BLM運動のシンシナティ支部は、同団体名で2018年、以下のような象徴的な表明を出している。同団体は、全国組織をこう批判した。「国中に潜んでいる名のない抵抗世論の高まりに資金を出すことで、そのような世論が自分たちのものであるかのように見せ、(黒人の死)を利用している」と。被害者の遺族が正当な報いを得ることに努力を払うこともなく。

 シンシナティ支部はこうも表明している。12才のタミル・ライス君が玩具の銃を持っていたために警官に殺害されたクレバランドで開催された2015年のBLMの会議は、黒人の性転換の問題についての議論に焦点化され、苦しんでいる地域に更なる分断を呼ぶことになってしまった、と。

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George Soros’ $1 billion pledge to fight ‘nationalism’ proves he will continue his political battles from beyond the grave

ロサンゼルスの活動家たちは、イゼル・フォードさんの殺害についてなにも動いてくれないと、BLMの地方支部を非難した。フォードさんは精神障害があり、2014年警官により射殺された。ロサンゼルスの活動家たちは、マイケル・ブラウンさん殺害事件に対する運動と協同しようとファーガソンに出向いた。その後活動家たちはロサンゼルスに戻り、ロス市の地方検事にフォード君を殺害した人を起訴するよう要求していた。しかし、BLMロサンゼルス支部は、この殺害事件から目を逸らし続けただけではなく、同団体の指導者の1人は「ウイミン・イン・アクション」賞を受賞したのだが、彼女がその賞を受け取ったのは、実はフォード君を殺害した警官たちを無罪放免したのと同じ地方検事局からだったのだ。

 BLMで最も目立つ代表者たちが明らかな詐欺行為を行っていることを指摘している活動家たちもいる。 例えばドレー・マッケッソン氏はアップル社やマクドナルド社の販売促進に手を貸しており、逮捕された時にはツイッターのTシャツを着用することまでしていた。このような彼の行為については、多くの活動家は計画された販売促進行為であると考えている

 また氏はBLMが警察への予算を停止することを要求していることや、ミネアポリス市が同様のことを実施しようと誓約していることに対して納得していないのだ。ファーガソンやセント・ルイスの市当局は、する気もないのに警察の再建を公約していた。議会を通過した政策の多くは軽んじられ、ずっと後退させられたままだ。ウフーラ氏は「警察への予算の停止」は、ただ基金への寄付をつり上げる戦略にすぎないと考えている。

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Don’t throw money at black Americans to riot’: Candace Owens spars with Soros-funded NGO over alleged hand in Minneapolis unrest

 黒人問題を選挙で解決できる唯一の方法は、「政策を武器にする」ことしかないと、ベテラン活動家のウフーラ氏は答えた。すべての現職議員は去る必要がある。なぜなら変革を起こす機会はずっとあったのに、彼らには変革を起こす気はないことがはっきり分かったからだ。「選挙を1~2期かければ、私たちの要求を通してくれる議員を育てることができるのかもしれない。でも、現段階では私たちは負けている」、とウフーラ氏は語った。「私たちは議員の総入れ替えをしなければ。それ以外にいい方法がありますか?」

 BLM運動はちかごろ下火になってきている。それはここ3年間で、集まった寄付のうちたった6%しか地方支部に配当されていないからだ。そして、寄付金のうちなんと83%が顧問たちや交通費に充てられている。寄付者から支部へむかうお金の流れが複雑なので、マネーロンダリング(金銭の洗浄行為)が行われているのではないかという疑いが拡がっている。そして、BLMの代表者たちは記者から資金のことについて質問されると、滑稽なくらいほとんど口を閉ざしている。

 協同設立者のアリシア・ガーザ氏はBLMが組織に支援されていることを全否定したが、億万長者の投機家であるジョージ・ソロス氏ただ一人だけでも、3300万ドル以上をBLMや創設者や関連団体に出資している。さらにフォード財団は2016年、BLMと提携した「黒人の生活のための運動」に1億ドルを出資することを誓約していた。協同設立者のパトリス・カラーズ氏はポリティ・ファクト(訳注 政治にまつわる発言や生命の信憑性を確認する団体)から事実確認のお墨付きをもらっている。彼女は、BLMに出資しているオミダイア・ネットワーク(訳注 慈善投資会社)から資金を得ており、このネットワークが、BLMが民主党とつながりがない「証明」になっている。




 しかし、政治理念を洗浄するというのがBLMが果たすべき役割なので、彼らの言うことに信頼などおけるはずがない。何百万ドルもの資金を調達しBLMの金庫にしまいこみ、世間に自分たちは人種差別問題に取り組んでいると見せたがっている起業家たちに始まって、アフリカ民族衣装のケンテを身にまとい、この再選を目指そうとしている政治家たちまで、BLMは、まるで自分たちが黒人の「唯一の」活動団体であるかのようにふるまっている。そして、草の根運動家たちの姿を見えにくくし、すぐに使える現金を吸い上げる。BLMは、もともとの活動団体を完膚なきまでたたきのめしているので、もともとの活動団体は、メディアや多くの人々の耳に自分たちの声が届くよう非常に苦悩している。そうするためには、BLMという厚い壁を打ち破らないといけないからだ。

 このような活動のやり口は何十年もうまくいってきたので、環境問題運動から人権闘争にいたるまでこのような政治活動は、「すべてにハッシュタグがついていて、すべてが手遊び歌みたいに楽しくて、すべてが砂糖やクリームのように甘いもの」だと若者たちには美化して伝わっている。BLMの真実の姿はそんなものからはほど遠いところにあるのに。

 実のところ、草の根運動家たちは重大な危機に瀕しているとウフーラ氏は語った。組織から資金を受けた敵を批判し始めた今は特に、と。というのも、汚い部分には触れないように報奨金をもらっているので、ほとんどのメディアはBLMやその関連団体が裏で何をしているのかを深入りしようとはしていないからだ。「この6年間、私のような活動家たちは人々に本当は何が起こっているかを教えようとし続けてきました。そして、恥ずかしいのは、この話を聞いてもらう相手がRTだということです。本当は米国の新聞の一面で取り上げるべき問題です。いつかそうなることを私は願っています」。

 ウフーラ氏はニセの活動の本性はいずれ明らかになると考えている。そのためウフーラ氏はBLM運動がもともともつ差別主義を内包している標語を引用した。「BLM運動がどの黒人の生命を大事にするかをどうやって決めるのでしょうか?彼らは意図的に黒人や黒人の男性を無視してきたというのに、そして彼らの死を自分たちの利益のために利用してきたというのに」。

 しかし、草の根運動家たちが組織から資金を得ている競争相手に道を譲ることになってしまっている限り、新・BLM運動は飛躍し続けるだろう。真の活動家たちは組織により資金を受けた運動とは「別の選択肢を創造」しなければならない。 ウフーラ氏はこう語った。「そうしなければ、次世代を民主党工作員たちに奪われ、黒人の共同体には永遠に正義は届かない」。


影の政府がトランプを嫌っているのは、帝国に対して醜い表情を見せるからだ。

<記事原文 寺島先生推薦>The establishment only dislikes Trump because he puts an ugly face on the empire



RT 論説面
2020年6月4日

ケイトリン・ジョンストーン


ケイトリン・ジョンストーン氏はオーストラリアのメルボルンに本拠地を置くフリージャーナリスト。彼女のサイトはこちら。Twitterアカウントはこちら

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年7月31日



 全米国大統領バラク・オバマは、ジョージ・フロイド殺害に関する感動的な演説をしてリベラルから賞賛を得たが、一方トランプが手にしたのは憎しみだけだった。二人とも事態を収拾するために何もしていないのに、だ。ただトランプは醜い表情で演説をしただけだ。

 バラク・オバマは、全米で起こっている「黒人の生命も大事だ」抗議活動についてどうでもいい演説をした。その演説は耳あたりのいいことばや中身のない内容でいっぱいだった。まさにそれは、大統領として8年間かけて、期待を持たせるような空虚な語りを駆使して進歩的な運動を押しとどめる一方で、前職のブッシュと変わらない殺人行為は前に進めた彼らしい演説の中身だった。

 前大統領のオバマは、二期在職中、自分が米国で1番力を持っている人物ではないかのように「チェンジ」を起こすことが必要だと語っていた。その彼が、全米の警官を賞賛してこう言った。「大多数の警官は市民たちを守り市民たちのためにつくしている」と。そして警官たちに、空虚な連帯感を示し続けることで抗議活動者たちをなだめるよう励ました。

 「私が見たいのは警官たちが警察が果たすべき役割を再構築しようという目標を共有している姿だ」。6月3日、オバマはこう語った。「自分の使命は我が国の国民たちに尽くすことだということを誓った警官たちがいる。そして、その任務はとても
大変な任務だ。警官の皆さんはここ数週間で起こっている悲劇に対して、抗議活動をしているたくさんの人たちと同様に激しい怒りを感じていることを私は知っている。だからこそ、私たちは大多数の警官の皆さんに感謝している。皆さんが我々を守り我々のために尽くしてくれている。私が心を打たれているのは「私もあの抗議活動をしている人たちとともに一緒に行進させて欲しい。寄り添っていっしょにこの問題の解決に取りくませて欲しい」と思っている警察官たちの存在だ。彼らは自制心をもって奉仕的精神や使命感や話を聞こうという態度を見せてくれている。警官の皆さんこそが、今対話の輪の中に入るべき存在なのだ。そしてチェンジを実現するには全ての人が参画することが必要となってくるのだ。」

 

 ジョージ・W・ブッシュも抗議活動について言及した。いわゆる「思いやりのある保守主義」という精神を持って。だがその精神こそが百万人ものイラク国民を殺害したのだ。だからこそ、リベラルたちは彼のコメントに対してツイッターで熱く反応しているのだ。ブッシュは感情を込めてこう言った。「共感しよう。ともに参画しよう。大胆な行動に出よう。正義に根ざした平和を築こう」。米国の見せかけ上の二大勢力の両方の側にいる陰の支配者たちのことばを伝えるものたちは、二人の元大統領と彼らの調和が取れた癒やされるようなことばに対して賞賛の嵐をマスコミに浴びせかけ続けている。確かに、二人が使うことばはかなり素敵だ。二人は状況を全く変えはしないだろうが、でも、2人の話は耳当たりがいい。


 そして、この2人の姿こそが米国大統領が果たすべき本当の役割なのだ。警察の残虐性を終わらせ、アメリカ市民のためになるような改革をしたりしないこと。そして、世界を少しでも暴力的や殺人的でない場所に変えてしまわないこと。大統領の役割は美辞麗句を並べたて、民衆を心地よい宣伝文句のまやかしで無意識にさせ、その隙に実際に世界を回している反社会的金持ち連中がこっそりと民衆から略奪できるようにすることだ。

 大統領の役割はツイッターで荒々しいことばを使い「悪党ども」を攻撃して、ツイッター社から検閲を受けることではない。大統領の役割は戒厳令を出すと脅して国家の意思に反することをすることではない。大統領の役割は軍を使って抗議活動者たちを残忍に扱い、放火された教会の前で聖書を上下さかさまに持ってポーズをとることではない。ジョージ・フロイドの弟に電話をかけて、彼に対してじゃけんで興味なさげに軽蔑的な扱いをすることではない。流行蔓延に対する初期対応を間違え、警官による殺害事件に怒っている世論に対する対応を間違え、悲しみを和らげたり共感を示すようなことばをかけて、国民の意見を聞く態度や国民を思いやっているという態度を示さないことではない。大統領の役割は独立記念日の花火なのに、首都がまるで燃えているかのような写真が出回るような雰囲気を作ってしまうことではない。そう、まさにこのことこそが、陰の支配者たちの特定の人々がトランプ大統領を毛嫌いしているたった一つの理由なのだ。

 現職の大統領よりも力を持つ陰の支配者たちの邪悪な企みをいくつもいくつも私が指摘すると、必ずトランプの支持者が私に尋ねる質問はこうだ。「なるほど、ではトランプが陰の支配者たちのいうことを聞いているのだったら、なぜ大手メディアや政治家たちはトランプのことをあんな風に激しく攻撃するのかい?え?」

 

 今からその理由を述べよう。一見、民主党と民主党と歩調を合わせるメディアがトランプを思いもつかないような辛辣なことばで金切り声を上げて批判しているように見える。しかし、それはトランプが内政面や外交面において、陰の支配者に有効な方法で楯突いているからではない。トランプは陰の支配者たちの毒のような企みに対して何の意味のある抵抗も示していない。トランプ大統領が陰の支配者たちのことばを伝える人たちからこんなに辛辣に批判されている理由は、トランプは前任者たちと違い、帝国に対して醜い表情を見せるからだ。

 

 金持ちの帝国の利益を前進させることに命をかけている人々はトランプのことを役立たずな経営者であると見ており、トランプが無粋で不器用に大統領の仕事をするために帝国がやっている邪悪な行為に対して人々から目が向けられることを恐れているのだ。たとえば、米国警察はトランプが大統領になって以降残虐で人種差別的になったわけではない。ただトランプが事態に上手く対処し、上手なことば使いができないので、国民が目を覚ましたり反乱を起こしたりしているだけだ。

 陰の支配者のことばを伝える者たちは、世論を目立たないようにたくみに操る方法が分かっている。さらに彼らは帝国の無能な下僕が、宣伝文句によって催眠状態になっている民衆に平手打ちを簡単にくらわしてしまうことも理解している。彼らがトランプを毛嫌いする理由は、新米ママが近所の騒音を嫌うのと同じだ。赤ちゃんを起こされるのがいやなのだ。彼らがトランプを嫌っているのは、トランプが悪いことをするからではない。トランプが人々を眠りから覚ますようなやり方で悪いことをするからだ。

 これこそが、トランプ在職の4年間、政治家やメディアがあんなにもおかしく見えた理由だ。トランプが忠実な帝国の下僕ではなかったからではない。(実際は、彼は下僕だ)。ロシアの回し者だったからではない。(実際はそうではない)。出来損ないの突飛な大統領だからではない。(実際は彼はそうではない)。本当の理由は、殺人的な帝国による気分が悪くなるような邪悪な行為が大衆の目にさらされてしまうからだ。それ以上でもそれ以下でもない。

 

 

民主党は真の改革にむけた運動を吸収し亡きものにするために存在する

<記事原文 寺島先生推薦>
The Democratic Party Exists to co-opt and kill authentic change movement

RT 論説面

ケイトリン・ジョンストーン


ケイトリン・ジョンストーン氏はオーストラリアのメルボルンに本拠地を置くフリージャーナリスト。彼女のサイトはこちら。Twitterアカウントはこちら




 米国の民主党はジョージ・フロイドさんの殺害事件の悲しみを乗り越えて団結している。彼らは、膝をついて黒人の生命も大切だ(BLM)抵抗運動に連帯の意思を表した。しかし幕がおりたら、演技は終わり本当の変革は何も起こらない。

エスドラゴン:さあ、行こう。

ウラディミール:ああ、そうしよう。

〔二人は動かない〕



 サミュエル・ベケットによる戯曲『ゴドーを待ちながら』はこのようにして幕を迎える。2人の主要人物のうちの一人が立ち去ることを提案し、もう一人が同意する。そのあとのト書きでは、二人は幕が下りるまで動きを止めたまままだ。

 これが、民主党が果たすべき役割のすべてなのだ。一般の人達に利益を与えるような本当の変革を求める運動を支持する米国人たちと熱い気持ちで連帯の意志を表明するくせに、実際はそんな変革を起こそうとはしない。俳優たちはセリフを読むだけで動かないままだ。

 バラク・オバマの大統領が任期中にやったことが、まさにこれだったのだ。人々は彼の「希望」や「チェンジ」という公約を信じて彼に投票した。それから八年間。彼に期待した人達が変革を求めた時、彼はいつもこう答えていた。「分かりました。集まってその事について話し合いましょう」。共感の意を示し、感動的な演説をして、実際は何も起こらなかった。役者たちは動きを止めたままだ。ゴドーは決して来なかった。


さらによむ

In brave new America, leaders kneel and looters are saluted. What will the Democrats conjure up next?


 民主党の指導者たちは今8分間膝をついてジョージ・フロイドさんに共感の意を表すのに、嘘っぽい演技を見せることに躍起になっている。
ケンテというアフリカの伝統的な衣装を身にまとって。米国の街まちでは、全国の警官の行為が正しいかの総点検を求めて抗議活動が繰り広げられている。民主党はこの活動に対して子供だましのような反応しかしていない。小道具に黒人の伝統的な衣装を使ったり、当たり障りのない改善策に予算を付け、、我々がやってきたことを意味の無いものにし、ただ警察事業への予算を増やしただけだ。

 今のところ、民主党が政権を握っているいわゆる青色の州や民主党員が市長である都市で、市民たちが抗議している警察による残虐行為が頻発している。民主党は警察による残虐行為をトランプ大統領の政権運営のせいにしようとしているが、しかし実際のところ、起こっていることを見てみると、もし米国の国政や地方政権がすべて青色(民主党)になったとしたら、警察がより凶暴になり軍隊のような脅威になるという問題は増えるだろう。

 今回の抗議行動がどこに向かうかは、私には分からない。抗議者たちが今彼らが求めているような変革を得られるかどうかも私には分からない。 あるいは、この抗議活動がただちに止まってしまうのかどうかも私にはわからない。 私がわかることは、もしこの抗議活動が突然止まったとしたら、その原因は民主党と民主党と歩調を合わせている勢力のためだということだ。


 血に飢えた国会議員、トム・コットンが地下室にいる小動物(民主党大統領候補バイデンのこと)を虐めるのを小休止してニューヨーク・タイムズの論説面で、爆弾記事を書いた。その記事の内容は、米国民に対して、なぜ今回の抗議活動を抑えるのに軍を派遣することを彼が望んでいるかを説明するものだった。実はこの記事を思いついたのはニューヨーク・タイムズの論説面担当の記者たちであり、彼らの方からコットン氏に話をもちかけたのであって、逆ではない。「軍を派遣しろ」という挑発的な見出しを思いついたのも、ニューヨーク・タイムズの記者たちだった。



 当然の事ながら、ニューヨーク・タイムズは世論の激しい反発を呼び、年配の記者が退社する事態となった。しかし、この抗議活動がもし終わるとすれば、それはドナルド・トランプやトム・コットンのような共和党の血の気の多い連中が軍を使って抗議行動の鎮圧に成功したということではないだろう。そうではなくて、巧妙に他人の行動を操るリベラルな者たちが、抗議活動の勢いを吸収し抑制することによって、終わることになるだろう。

 彼らのことを注視しておこう。民主党と民主党と手を組んでいるメディアや企業が耳あたりのいい言葉や調子のいい話や中身のない法律の実現などをもちかけ大衆を騙すのを注視しておこう。彼らは、民衆にとって本当に必要な変革など、これまで一度も実現したことがないのだ。彼らがそのような詐欺に成功するかどうかはまだ今のところは分からないが、すでに彼らはそうしようと取り掛かっている。このようなことこそが民主党が果たすべき役割の全てなのだ。脅威的な力を使うよりも、偽りの公約や空虚なことばで民衆を支配する方がよっぽどたやすい。そのことを巧妙に他人の行動を操る者たちは分かっている。そう、これこそが民主党が果たすべき役割のなのだ。

 民主党と共和党の間に違いがあるのは本当だ。それはボクシングで喩えると、ジャブとストレートの違いだ。ジャブは敵をコーナーに追い詰め次にストレートをお見舞いする準備としてしばしば使われる。しかしジャブもストレートも同じボクサーから繰り出されるものであり、最終的には顔面にパンチをお見舞いしノックアウトするための戦法だ。

  民主党がそのジャブを実際とは違うものとして見せ掛けようとしていることを許すな。大量の中身のない行動や言葉の魔法を使って、民主党が皆さんにすり寄ってくるのを許すな。民主党にやりたいようにやらせてしまったら、民主党は皆さんの顔面に一晩中ジャブを打ち続け、結局はノックアウトを喰らう。倒れたリングから天井の照明を見上げる。これまで何回もあったことだ。

 そして皆さんはこう思う。「いったい今まで起こったことは何だったんだろう?そしてゴドーはいつ来るのだろうか?」

ミシガン、ミズーリ、ワシントン、ミシシッピ、アイダホ、そしてノース・ダコタの各州の選挙人が直面する選挙遅延、事前チェックもされていない新しい選挙手順

<記事原文 寺島先生推薦>

Voters face delays, untested new procedures in Michigan, Missouri, Washington, Mississippi, Idaho, and North Dakota

RT USAニュース 2020年3月10日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年4月14日
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アメリカの6つの州の投票所で予備選の選挙人たちが投票所に殺到すると、彼らはシステムの不具合、投票用紙の紛失、細かな細則による投票資格の剥奪、そしてその他の予期せぬ障害に遭遇した。ある市長は投票所から追い返された。

ジョー・バイデン前副大統領が民主党陣営をリードして火曜日の選挙戦に臨んでおり、候補者たちは352人の党の代議員を争うことになる。バーモント州のバーニー・サンダース上院議員が最初の3つの州を楽々と制して指名シーズンを強力にスタートさせた一方で、バイデンはスーパーチューズデーで先頭に躍り出た。しかし、バイデンが勝利したいくつかの州では投票数の異常性に不安の声を上げる人もあり、出口調査とコンピューターによる投票数の間にかなりのギャップがあることが指摘されている。火曜日に投票が始まると、さらに多くの変則事態が表面化した。

ALSO ON RT.COM 20200411101123e60.jpeg
Biden and Sanders fight for black voters with competing endorsements from Kamala Harris, Jesse Jackson


ミズーリ州セントルイス郡(州で最も人口密度の高い地域)の多数の早朝投票者は、火曜日の朝、電子チェックインシステムが投票用紙を印刷するために選挙管理者のコンピュータシステムと同期できなかったので、あきらめて会社に行くしかなかった。混乱した投票所職員が、手動のバックアップシステムに切り替えなかったことで問題はさらに悪化し、郡の400の投票所のうち50以上の投票所で、少なくとも1時間の投票時間を無駄にする大騒ぎが引き起こされた。



バイデンがミズーリ州での選挙戦でリードしているが、サンダースは、大部分を保守層が占めるこの州で2016年にはライバルのヒラリー・クリントンをほぼ出し抜き、さらに彼は民主社会主義の候補者として、月曜日、セントルイスで会場を聴衆で埋め尽くす選挙集会を開いていた。

カンザスシティ(ミズーリ州)の市長クイントン・ルーカスですら、この地区の投票システムから除外されていた。彼は11年間この地区で投票をしていた (「4回は私自身立候補していたのだ!」)。 彼の名前が選挙人登録名簿から消えていたらしい。民主党は、この問題のフォローアップを約束したが、同市の有権者たちが再度投票所に足を運ぶようなぜいたくな振る舞いをすることはほとんどないだろうとも語った。さらには、その後、なぜか彼の姓名の表示が逆になっていたことも分かった。



選挙統括者は、現代のテクノロジーに慣れていない「高齢者」の投票所職員を非難し、市長は若いボランティアを使うことを薦めていた、とKCTV-5に語った。「これを機にもっともっと真っ当なやり方をする必要があるということなのだよ」とルーカス市長はAPに語り、「人々に投票させないこと」が「アメリカの選挙への最大の脅威」であるとの認識を示した。

だれに投票するか分からない125人の代議員が集まるミシガン州は、火曜日が投票日となっているこれら6つの州の中で最も熱い戦いが繰り広げられる州だ。そして前例のないほどの数の不在者投票のために、投票数のカウントが遅れるというニュースは、有権者に最悪の事態を疑わせていた。大学生―サンダースを最も強く支持する有権者集団のひとつ―は、不在者投票用紙が間違った住所に送られたり、全く送られなかったりしていると報告している。また、「署名の不一致」のために郵送投票が拒否された場合、州は有権者に通知することを要求する訴訟が起こされている。この「署名の不一致」というのが、何も分からないうちに選挙権を剥奪されてしまう可能性のある多くの専門的事項のひとつだ。



2018年以降、ミシガン州では、居住者であっても郵送で不在者投票をするオプションを認めており、選挙戦から下りた候補者のために早期投票した人は、自分の投票の「無効宣言」ができ、別の候補者への再投票が可能だ。80万人以上の有権者が不在者投票のオプションを利用、そのうち何万人もの有権者が最初の投票の「無効宣言」後再投票を要求しており、いくつかの管轄区域では、この大量の投票を処理するために「不在者投票集計板」の設置を余儀なくされている。

土壇場の世論調査では、サンダースがバイデンを抜き去り、驚きの逆転劇を見せたが、「無効宣言」オプションは、何人かの脱落した候補者の支持も加わり、バイデン前副大統領に有利に働く可能性が高い。



有権者のいろいろな疑いの目に加え、報告されている出口調査は不在者投票をカウントしていない。




ワシントン州の有権者は、投票用紙の外側にある政党宣言欄をチェックするように警告された。その細かな規定違反で火曜日の投票前に投票資格を失った早朝投票者が何万人もいる。同州では予備選挙投票を、最近、100%郵便投票に切り替え、現地時間の午後8時までに消印を押さなければならないなど、混乱を極める新しいルールが導入された。

アイダホ州の民主党員でない有権者の中には、民主党の投票用紙の確保に問題があると報告している人もいる。アイダホ州では、これまでは党員集会を実施していたが、2020年には初めて予備選挙を実施することになった。
ノースダコタ州の有権者によると、投票所に長い行列ができ、グランドフォークスとファーゴ(州内の2大都市)にはそれぞれ投票所は1つで、州全体では14の投票所しかなかったそうた。

2020年の予備選挙では変則的な事態が至る所で起こっている。出口投票と最終的なコンピューターカウントの間の「大きな不一致」は、特に貧困地域や少数派地域で多発しており、独立系ジャーナリストのマックス・ブルメンタールはRTに対して「なぜ米国では選挙監視員がいないのか?なぜOAS(米州機構)だけがボリビアのような場所に選挙監視員を派遣、そして不正行為があると間違った主張をし、軍事クーデターを誘発するのか?」との疑問を呈した。



もしテキサス、あるいはニューハンプシャー、あるいはサウスカロライナが社会主義のラテンアメリカの国だったら、CIAはOASを通じて、すでにボリビアのジェニーン・アネスのようなファシズム的右翼政府を設置していただろう。

「国外駐在国家主義」への道「国民-国家」の勃興と衰退のテクノロジー的、心理的要因


<記事原文>Towards Expat Nationalism
Technological and Psychological Factors for the Rise and Decline of the Nation-State

The Unz Review -
2020年3月2日

ギヨム・ドロシャ

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年4月3日

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今日グローバリズムとポピュリズムとの間の緊張関係が話題になっているが、後者はしばしば国家主義的である。グローバリストの言い分は、一般的にあまりにも楽観的であり、国民や国家の時代は終わったと思い込んでいるにすぎない。実際には、国民-国家という存在が衰退の道を辿っているとはいえ、政治のあらゆる場面で、国民-国家という要因は依然として不動の現実であり続けている。

「国家」が衰退しているのは2つの点である。第一に、西欧諸国はいたるところで崩壊しつつあり、それぞれの中核となる民族は、特に大都市では急速に拡大するヒスパニック系、アジア系、アフリカ系、イスラム系の定住者達に押されている。大都市ではそれが目立っている。そして米国においては、その傾向が最南端に位置するすべての州に広がっている。

主要都市の多くははっきり言って消滅している。ロンドンはもはやいかなる意味でもイギリス国家の一部であるとは言えない。実際、サディク・カーン市長(訳注:初のイスラム教徒市長)下のロンドンは、この事実を強調するために苦心してきた。「誰でもロンドン、みんながロンドン」と主張する。同じように、パリはもはや本当の意味でフランス国家の一部ではないし、ロサンゼルスやニューヨークもアメリカの中西部と同じ国家に属しているとは言えない。

第二に、欧米のエリートたちは、心理的にますます国家から離れている。これらと同じ「グローバル都市」の住民は、もはや自分たちの歴史的な国家の核心を識別することができず、実際に、(面白くもおかしくもない)右翼政党に臆面もなく投票し、大都市階級の最新のイデオロギー・ファッションと同調しない田舎の人々に対して、程度の差こそあれ、恐怖と嫌悪感を抱いている。このように、これらのエリートたちは、自国民の経済的、文化的、人口統計学的な利益を守る必要性を感じていない。こんなことはよく言えば「自分勝手」で、最悪の言い方をすれば「人種差別主義者」というとんでもない罪のらく印を押されてしまう。今日、多くの左翼政党は、国境や国民性という概念そのものを公然と軽蔑している。「国民的連帯」など、どこ吹く風だ。

自国への帰属意識を持たないエリート層が出現してきた現象は、「国民国家」の「国家」の部分も今日では衰退していると多くの人が考えるようになった説明のひとつにもなっている。しかし、これはまったく不正確な言い方だ。国家は衰退の兆候を示しておらず、実際には、すべてを覆い尽くし、明らかに肥大化している。グローバル化の風が吹きまくる今日、移民問題や経済問題に直面して、国家が行動を起こさないとすれば、それはその手段を持たないからではなく、単にエリート指導層が自分たちの有権者を守ろうという気持ちを失ったからである。

このような傾向に対して、腹を立てるだけで何もしない、では能がない。そうではなく、なぜ国民国家は生まれたのか、なぜ衰退しているのかに思考を巡らすべきなのだ。

2つのアプローチからこのことを考えてみたい。一つ目は、心理面からだ。人間の心理は、人間の生活の基本的な事実であり、少なくとも大きな枠組みで捉えればあまり変化はしていない。
もう一つは、テクノロジー面からだ。過去数千年の間に人間の日常生活に目を見張るような変化を可能にしてきたのは、私たち人類が作り上げてきたテクノロジーだ。

心理的な面から言えば、重要なのはアイデンティティの問題であると私は思う。自分をどの民族に同一視するかは、人間の本性にもともと具わった衝動に見える。それは、子どもが言語を受け入れる能力と極めて似通っている。そのことは、どんな幼児でも異なる人種や発音を本能的に識別し、自分の親が属する人種や発音を好むことからも明らかである。現代史を見てみると、「共通言語の欠如」がある社会(オーストリア・ハンガリー、カナダ、ベルギー、ソビエト連邦 ....)や「共通言語の欠如」と「多民族である」両方か、どちらか一方がある社会(アメリカ合衆国、ブラジル、南アフリカ、マレーシア ....)が原因で、社会が共通の民族的アイデンティティに統合できないケースが何度も何度も見受けられる。もちろん、この上に文化的、宗教的要因を加えると、国民はさらに細かな「民族集団」に分化する。しかし、原則的には、共有言語と自分の祖先がどの大陸出身であるかが、「民族集団」を形成するための2つの基本的な要素であるように思われる。

同一化は、少なからず「社会化」から始まっているように思われる。幼児は、自分が両親と同じ大陸の人種であると仮定し、両親と常に接触し、両親の特徴を見、両親の声を聞くことによって、両親と同じ「民族集団」に自分を同一化するようになる。これとは対照的に、自分とは人種が違う養父母に育てられた子ども(白人の両親に育てられた黒人の子供、またはその逆の場合)は、非常に葛藤した感情を持つようになり、養父母の「民族集団」との完全な同一性は感じなくなる可能性が高い。これは、白人と黒人のハーフであるにもかかわらず、ヨーロッパへの親和性を感じなかったバラク・オバマのような混血児の子供たちにまさに当てはまる。彼は回顧録の中で説明している:「そして、(ヨーロッパで過ごした)最初の約1週間が終わる頃に、私は自分が間違っていたことに気がついた。ヨーロッパが美しくなかったわけではなく、すべては私が想像していた通りだった。ただ私は自分をヨーロッパに自己同一化することはできなかったのだ。

家族という要因は、特に両親が同じ民族である場合には、自分がどの「民族集団」に属するのかを決める強力な推進力となるようだ。ヨーロッパ全体を見渡すと、その社会で使われている言語があるのに、国がそれ以外の言語の使用を認めていて、十分な数の家族が家庭で後者の言語を話すので、自然とあらたな「民族集団」が発生し、その結果「民族間の緊張」が生まれている地域がある。カタルーニャ、フランドル、そして実際バルカン半島の大部分などがその例だ。

家族は、明らかに人々が社会化する主要なあり方一つである。しかし、それ以外にも、街、学校、職場、教会など、そして本、新聞、ラジオ、テレビ、インターネットなどの様々なメディア・テクノロジーも「社会化」の役割を担っている。

思うに、民族的・宗教的アイデンティティの表現力と可能性は、これらのテクノロジーの波に晒されながら、有史以来ずっと変動を繰り返してしてきた。

遠く太古の昔、人々は部族を主なアイデンティティとし、それぞれがそれぞれの神を持ち、自分の血筋にのみ忠誠を誓っていたようだ。

文字の発明によって、個々の部族を越えた長期的で均質な帝国と宗教の官僚機構を作り上げることが可能になった。それゆえ、ギリシャ人や他の古代国家がしていたような純粋排他主義的アイデンティティ操作は、やがてローマ帝国の「二重の市民権」に取って代わられるようになったのである。キケロは、自分の故郷の郷土愛国主義と帝国ローマへの愛国主義の両方を口にしている点で象徴的である。

帝国と宗教(この問題で言えば言語も)の拡大は民族の拡大よりはるかに容易だった。民族というのはある一定の人口稠密度を超えるや否や極めて高い「粘着力」を必要とする傾向があるからだ。コンスタンティヌス帝とアショカ王のような偉大な皇帝は、キリスト教や仏教をうまく利用して、もしそれがなければバラバラになってしまう臣下たちに共通のアイデンティティを与える一つの手段としてそれを使ったようだ。中世を通じて、人々は様々な地域のアイデンティティとキリスト教という共通のアイデンティティを持っていた。書物は各国語ではなく主にラテン語で出版され、知識人の間ではキリスト教というアイデンティティが奨励された。

中世以降、特にヨーロッパでは、状況は劇的に変化した。識字率が安定して向上し、地域語の使用も広がったことで、地域語が突然国語に昇格したのだ。国家のアイデンティティは、知識人の間ではルネサンス期にまで遡る。(そんな早い時期ではないにしても、11世紀の『ローランの歌』にまでは遡れる)マキアヴェッリの悪名高い『王子』の結末で、イタリアを統一して(フランスとスペインという)野蛮人を追放することが呼びかけられていた。ルターはドイツ語でドイツの貴族に退廃的な教皇制のくびきからの解放を促し、モンテーニュは小生意気な『エセ-』の中で、フランス人の祖先であるガリア人について既に典型的な言葉で語っている。

このように、15 世紀から 20 世紀にかけて、ますます多くの人々が、言語学で言うところの様々な情報媒体によるネットワーク、すなわち、印刷機の登場、民衆の識字率向上、新聞の普及、国民学校教育制度の整備などを通し社会化されていく中で、国民のアイデンティティが着実に台頭していく様子が見られる・・・国家は大衆を社会に組み込むことに気を配っているので、別に驚くことではない。戦争が、1914 年までに、国家主義をヒステリックに叫ぶ場になっていたとしても。

その頃には、国家がすべてになっていた。家族、社会、州、新聞、本、学校、領土......すべてが国家という事実に支配され、調和してお互いを強化し、存在のあらゆる面を支配していた。だから、フランス人がイタリアの国境を越えたり、あるいはイギリスに上陸したとき、彼らは法が全く異なる、本当の別世界に入ったと感じることができた。今日では絶対にそんなことは起こらない。

国家とは、個人がその中で生き死にし、繁栄の可能性を持った、個人の個性を超越した実存的な事実であった。したがって、数多の偉人達が結末の見えない運動に参画し、身を犠牲にしたとしても驚くことではない。その流れで言えば、シャルル・ド・ゴールはフランスは「おとぎ話の中のお姫様やフレスコ画のマドンナのように、余人にはない特別な運命を背負った国」と感じていたし、ルーマニアの哲学者ペトレ・ツツェアは「バルカン半島はヨーロッパのお尻だ」と、ド・ゴールと同じように人々を浮き浮きさせ、元気づける情念を持って説明していたのである。ソルジェニーツィン、ヒトラーなどもそうだ。

宗教とビジネスだけにはこの縛りがなかった。とは言っても、宗教が国旗に包まれ、ビジネスが地域の状況に適応しなければならないことはいくらでもあった。

社会学的には、国民国家のピークは、戦後の時代、つまり1950年代のアメリカ、1960年代のフランスで達成された。これは、私たちの教育機構やその他の官僚機構が、それ自体目的となり、時間を無駄にしてお金を分配するための口実となった瞬間でもあった。テレビ時代だった。この時代はグローバリズムの始まりで、エリート達はそれを受け入れた。それ故、「フランスのグローバリズム」、「アメリカのグローバリズム」などはあったが、統一されたグローバリスト階級はまだ存在していなかった。

今日、人々は日常生活の大部分をスクリーンの前で過ごすようになった。著作権や国家的生態系(イラン、中国、ロシア)の制約はあるが、欧米ではインターネットの利用は基本的に地域の制約から免れている。私はパリ、ドバイ、またはティンブクトゥのどこでもこの記事を書くことができる。パリにいるアメリカ人が、英語圏の会社で働き、アメリカのメディアを通じて自分の意見を発表し、基本的には自国から出ていてもエリート白人社会という泡の中で生活することは可能だ。アラブ系移民は、彼がたまたま住んでいる場所がどこであろうと、アラブ・イスラム教のオンライン圏に住むことができるし、サウジが資金提供している地元のワッハーブ派のモスクに頻繁に通うこともできる。

こんな風にスクリーンの前にいればいいのだから、地域の制約から免れた仕事が可能になる。――かくして大企業や研究機関、名門企業などは、ますます国家から離れてゆく。

オルタナ右翼のリチャード・スペンサーが提案した、ある種「大西洋横断ローマ帝国」のような民族国家は、今日では突飛なもののように思われる。しかし、ドイツ人がオランダ人や北欧人と同じように機能的に英語を第一言語として話すようになれば(それは、おそらくほんの20年後におこることだろうが)、西欧統一に向けた言語的バリアはなくなるだろう。

「シャンパン」という上質の発泡性ワインはシャンパーニュ地方でしか生産してはいけない理由でもあるのか?どんな法律があって日本の領土外では、美味しいラーメンを作ることは不可能だと言うのか?

このように、私たちの社会が、着実に「非国家主義化」してゆくことは不可避だろう。下は第三世界からの移民、そして上は「アングロ・グローバリゼーション」(訳注:エリート白人層が核となったグローバル化)の両方から。これまでは、小規模で根無し草だった国際主義的なグローバリスト集団が、国家という概念から飛び出した、より大規模で数を増やしつつある階級に成長しているということなのだ。大きな問題は、私たちのライフスタイルが軟弱になってしまうことである。人々は、「教育」システム、どうでもいいような事務仕事、そしてスクリーン、といったどこにでもついて回る仮想空間の中で朝から晩まで時を過ごす。そんな生活をしていれば、私たちの生物としての機能が同時に劣化することは火を見るより明らかだ。―― 男性ホルモンを測るテストステロンレベルの低下を見たらいい。快適な生活ばかりするから苦痛や不快感に耐えたり、踏ん張る力がなくなってくる。そして痛みを伴う様々な真実を認知することもできなくなる。痛みを伴う真実の数がどれくらいあるかは神のみぞ知る、だ。ましてその真実を受け入れ、その真実に沿って生きることが私たちにできるのか?。

大きくはテクノロジー的に動かしようのないこれらの傾向を否定するというのは、どう見ても「そうあれかし!」の願望的思考でしかない。

「国外駐在の国家主義」は必要なのだ!

MITの研究:「エボ・モラレスをボリビア大統領に選出した――結果的に軍事クーデターで失脚――選挙に不正はあったとするOAS(米州機構)の報告は証拠ゼロで、民衆を惑わすもの」

<記事原文 寺島先生推薦>
OAS misled public’: MIT study finds ‘NO evidence of fraud’ in Bolivian election that saw Evo Morales ousted in military coup

RT World News 2020年2月27日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
 2020年3月15日
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マサチューセッツ州工科大学(MIT)は新たな研究を発表した。それによると米州機構(OAS)は2019年のボリビア大統領選挙には重大な不正行為があったという疑惑の告発をしているが、その証拠は見つからなかった、とのこと。大統領に選出されたエボ・モラレスは、その後軍事クーデターで国外に退去させらた。



ジョン・キュリエルとジャック・R・ウィリアムズはOASの報告書を検討し、木曜日にワシントンポストで彼らの発見を発表した。「選挙の正当性を研究する専門家として見ると、OASによる統計的証拠は、ボリビアの10月の選挙における不正の主張を裏付けていない」という内容だ。

この二人のMITの研究者は、OASは「不正を分析する新しいアプローチ」を採用しており、それを使って統計的結論を出せば「ひどい欠陥」を露呈することになるだろう、と語った。

世界中のメディアが、「ペテン」の「圧倒的な証拠」を何の疑問も持たずヘッドラインに掲げたのは、モラレスに有利な投票結果をでっち上げようと「念入り」で「悪意のある」動きがあった、とOASが主張した後のことだ。



西側メディアによるこういった申し立てはすぐ反政府勢力に握られ、最終的に軍事クーデターを引き起こし、ジェニン・アネズが率いる右翼政権が発足した。モラレスはメキシコに逃れざるを得ず、さらにアルゼンチンへ。そこで政治亡命を認められた。

MITの調査は、経済政策研究センター(CEPR)の委託で実施された。CEPRのディレクター、マーク・ワイズブロットは木曜日、OASはボリビアの選挙について「メディアと民衆を大いに惑わせた」と語った。「OASは、なぜこのような声明を出したのか、そして、こと選挙に関して誰もがOASを信頼すべきだとする理由を説明する必要がある」と、彼は言った。

OASが「ペテン」と判断する基準が奇妙であることから、その基準に従えば、即日開票される米国の選挙が、民主党寄りだと判断され、不正だと分類される可能性さえ出てくると二人の研究者は述べた。

モラレスは昨年11月、RTに対し、OASは「政治的決定」を行い、彼の解任に重要な役割を果たしたと語ったが、そのことは当時、Washington Postを含む西側メディアからは完全に退けられた。もっとも今回の発見を公表したのはWashington Postではあるのだが。

ALSO ON RT.COM 5e0273ca85f5402bef186344.jpg

I’ll be back’: Ousted leader Morales says his party will win elections, plans return
to Bolivia


モラレスはOASの事務総長ルイス・アルマグロと連絡を取ろうとし、側近に電話で「OASの発表したレポートを見直さないと、ボリビアに火がつき、死者が出ることになるぞ」と警告したことまで語った。

実際複数の死者が出た。ボリビアはモラレス支持者と治安部隊との間で暴動と抗議が渦巻いた。

キュリエルとウィリアムズはOASにコメントを求めたが、回答は得られなかった。二人の研究者は、「不正の証拠として未検証のテストに頼ることは、いかなる民主主義にとっても深刻な脅威である」と結局は警告することになった。


民主党はまたぞろ「ロシアゲート」持ち出し、トランプとバーニー・サンダースを攻撃し、自分たちの選挙不正を隠蔽しようとしている


<記事原文 寺島先生推薦>Democrats resurrect ‘Russiagate’ to go after both Trump and Bernie Sanders, hide their own election trickery

RT-Oped 2020年2月22日 ナボイサ・マリック 

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Nebojsa Malic
is a Serbian-American journalist, blogger and translator, who wrote a regular column for Antiwar.com from 2000 to 2015, and is now senior writer at RT. Follow him on Twitter @NebojsaMalic
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
 2020年3月12日
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民主党上層部は 「ロシアの干渉」 という主張を利用して、党内進歩派陣営とドナルド・トランプ大統領を攻撃している。そのいんちきな告発は、彼ら自身の不正を隠すためのものにしか思えない。

2020年の米国大統領選挙で、モスクワはバーニー・サンダースを支援しているらしい。つまり、情報源が匿名のワシントン・ポスト紙に載った「爆弾」記事を信ずれば、の話だが。これは、木曜日のニューヨーク・タイムズが、クレムリンが「再び」トランプに賭けていると主張したことに続くもので、このニューヨーク・タイムズの記事はその存在をよく知られたゲリラ的ハッカーグループが書いたものであり、以前と同様に情報源も匿名だ。

ALSO ON RT.COM 20200310203307745.jpeg
‘Russians helping Sanders!’ MSM takes abrupt break from anti-Trump frenzy for a ‘never Bernie’ moment on the eve of Nevada caucus‘

「ロシアゲート」カルト集団の頭の中には、ロシアはトランプを再選させるため、あるいは、「社会主義者」大統領を実現させるために、サンダースを支援している、ということしかない。ロシアが社会主義国でないことなど、彼らにとってはどうでもいいこと。今回も前回2016年の時も、ロシアがアメリカ大統領候補の誰かを支援している、あるいは支援していたなどという証拠は全くゼロであることをちょっと議論してみてほしい。そして彼らの頭が爆発しておかしくなっているのをじっとみてやってほしい。
 必要以上に賞賛されているアメリカ「情報機関」とやっていることは大同小異。民主党上層部は信じたいのだ。信じることしか2016年にヒラリー・クリントンがトランプに敗北したという心が張り裂けんばかりのショックを説明する手段は残されていない。


だが、これ以上に衝撃的なのは、この非難がサンダースに向けられていることだ―それも彼が過去4年間、DNC(民主党中央委員会)の忠実な歩兵であることを繰り返し身をもって証明しているのにも拘わらず、だ。ヒラリー候補と民主党全国大会が共謀して、予備選挙からバーニーを強引に排除するという報道が流れた後も、彼は「ロシアゲート」という民主党が鳴り物入りで吹聴するキャンペーンに相乗りした。そればかりか、今週になって彼はクリントン陣営が「Bernie bros」という言い方でネット上で意見を述べる若い人たちに底意地の悪い非難を向けるのを躱そうと「ロシアゲート」キャンペーンまで使ってみせた。

それでも、バーニーは、今、「ロシアの資産」と中傷されている。民主党の予備選の状況を見ると、その答えは明らか:バーニーが勝ち進んでいるからだ。民主党全国委員会(DNC)といえば、アイオワ州党員集会そしてニューハンプシャー州予備選で、ピート・ブティジェッジや文字通りバーニー以外であれば誰でも構わないから、との方針で後押ししようとしている。ジョー・バイデンが失速し窮地に陥る中、民主党は億万長者のメディア王、マイク・ブルームバーグを抱き込むことすらやってのけた。しかし、その結果といえば彼は先週金曜日の討論会の段階で影が薄くなり、世論調査におけるサンダースの支持率が高まった。

そこで、アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスが所有する新聞が箱のガラスを割り、その中の「ロシアゲート」という赤いボタンを押したのだ。ベゾスがブルームバーグに出馬を要請し、もしサンダースが当選したら数十億ドルの税金を支払う用意があると報じられている。おかしなところはどこにもありません、よね。



偶然には違いないが、民主党全国委員会は討論会のルールをブルームバーグに合わせて変更していた。まさに民主党はその組織の体裁を変えてまでハワイ州選出のタルシ・ギャバード下院議員を討論会から排除しようとしたのだ。

さらに驚くべき偶然は重なる。ギャバードは昨秋、「ロシアのお気に入り」と非難されていた。そう非難したのは他ならぬヒラリー・クリントンであり、彼女こそ「ロシアゲート」陰謀説を唱えた本家本元であった。もっともこの二つの事柄の間に関連性は何もない。単純に関連性があると考える人間はロシアのスパイに違いない! CNNのカメラマンを引き連れた武装FBI捜査官があなたの家の前に現れ、連邦判事があなたは「わが国の民主主義にとって危険分子」だと今にも宣言することを覚悟したほうがいい。



だからといって、米国の選挙が干渉や影響、さらにはハッキングの標的にされていないわけではない。問題は、記録されているどの事件もその標的はすべて、...そう、民主党に向けられている傾向があることだ。

「ロシアはバーニーに手を貸している」という叫び声にかき消されてはいたが、金曜日FBIがカリフォルニア州の民主党員ケイティ・ヒルに関係のあるハッカーを逮捕し起訴したという発表があった。ケイティ・ヒルは2018年に(民主党)予備選における彼女の主要なライバルをサイバー攻撃したとされている。おっと。

ALSO ON RT.COM 20200310220458af6.jpg
The only ‘Russian bots’ to meddle in US elections belonged to Democrat-linked ‘experts’


それからニュー・ナレッジという「サイバーセキュリティー」会社がある。この会社は上院情報委員会が「ロシアの積極的な関与」に関する理解を通知するために選んだものだ。この会社は、まあ、他にはない特別な資格を持っていた。なぜならこの会社は2017年のアラバマ州での上院特別選挙の際、でっち上げの自動投稿プログラム「ロシア・ボット」を使って共和党候補を中傷する偽の情報キャンペーンを実際に行っていたからだ。

「ロシアの干渉」 を最も声高に叫んでいるのは、選挙不正工作に実際に関与していた人々である。彼らは、英国のスパイが編集した怪しげな書類を使ってトランプの選挙運動を違法にスパイしたりしていた。そのことを考えると、浮かび上がってくるのは「心理的投影」というとんでもない図柄だ。

アイオワとニューハンプシャーの結果がどうでもいい理由と、候補者を決めているのは本当は誰かという件について

<記事原文 寺島先生推薦 Why Iowa and New Hampshire no longer matter, and who REALLY decides the nominee>

RT―Oped 2020年2月12日 スコット・リッター
low him on Twitter @RealScottRitter

スコット・リッター
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Scott Ritter
is a former US Marine Corps intelligence officer. He served in the Soviet Union as an inspector implementing the INF Treaty, in General Schwarzkopf’s staff during the Gulf War, and from 1991-1998 as a UN weapons inspector. Follow him on Twitter @RealScottRitter
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何十年もの間、アイオワ州とニューハンプシャー州は、選挙候補者に大規模な寄付金を流し込む2つの大きな通路であり続けた。今年の選挙レースは、その通路が人為的に作られたものであったことを明らかにしている。
アイオワ州が、大統領選挙の先がけとして位置づけられているのは、意図的であったというよりは、偶然の産物だ。1968年の民主党全国大会中に起こった暴力的な抗議運動の結果、民主党は州レベルでの指名スケジュールを進めることを決めた。アイオワ州では、手順が複雑だったため、早期に党員集会を開始することになった。それで、1972年の大統領選挙では、アイオワ州が指名プロセスに着手した最初の州になった。アイオワ州の党員集会に、主流メディアが注目し始めたのは、1976年に、ジミー・カーターがアイオワ州で指名された勢いにのって大統領にまで登りつめた時からだった。


アイオワ州での結果が、大統領選に大きく作用するという定評ができたのは、大統領候補に指名される者が、どのくらいの支持があるかを測ることができる最初の州だからだ。候補者が、前進する跳躍台として利用できる州なのだ。党員集会は、資金調達のプロセスのひとつであり、ほとんどの候補者は、限られた財源の大部分を州に注ぎ込み、ジョージ・ブッシュ大統領が「ビッグモー」と呼んだものを利用しようと躍起になる。「ビッグモー」とは、集団から抜け出して、将来の寄付者から注目を集め、その人達から、米国で政治を行うに当たり血肉となるもの、つまり、お金を手にいれることができる能力のことだ。


アイオワ州の役割は簡単だ。党員集会を実施し、投票を集計し、候補者をニューハンプシャーに送ることだ。その際、候補者は、「ビッグモー」という風を全面に帆に受けて前に進むか、無名の政治家と見なされて、行く手を阻まれるかどちらかになる。アイオワ州の勝者は、指名を受ける次の段階(つまりニューハンプシャー州の予備選挙)へと進んでいく。そして、国中から関心を集め、必要な資金を集めることになる。その資金は、指名を得るまでの長くて、お金がかかる道のりを生き残るためのキャンペーンを進めるのに必要な資金となるのだ。

Also on RT .Com The Democratic Party is ‘leftwing zombie land,’ says famed strategist James Carville, who preached lots but ignored Tulsi Gabbard 20200309221115d12.jpg

システム崩壊
この道程は、想定どおりに回っていた。先週、投票集計アプリが誤作動を起こし、最終集計が決まらないままになってしまう事件が起こるまでは。開会式では、何人かのトップ候補者が、勝利宣言をしたが、勝利の勢いを手にする機会は失われ、候補者達は、何よりも重要な「ビッグモー」を手にすることが出来なかった。


アメリカ人は政治に関してはお金にケチだ。政治家にお金を寄付することは、競馬場で馬に賭けをするのと多くの点で似ている。賭ける方は、勝てそうな馬にだけ賭ける。アイオワ州は、歴史の偶然によって、米国の政治のいわば「レーシングガイド」的役割を担わされている。つまり、どの候補者に賭ければいいかを選べる機会だ。賭ける方は、ここで、候補者が、最後まで走り抜けるだけの足と心臓を持っているかどうかを見定める。そして何十年もの間、この古風なシステムは、賭ける方、つまり政治援助者階級には、かなり役立っていた。


アイオワ州とは違い、ニューハンプシャー州の予備選挙が、米国の政治プロセスにおいて重要になったのは、意図的だった。ニューハンプシャー州には、他の州よりも最低7日前に予備選挙を行わないといけないという法律があるからだ。アイオワとニューハンプシャーという「ワンツーパンチ」のせいで、これら二州での結果が、もとの重み以上に国内での影響力をもつようになったのだ。
米国の政治組織は、承認された候補者を金銭的に支える寄贈者を中心として構築されているが、アイオワ-ハンプシャーモデルを受け入れ、それがなければ何もできないくらいの信頼感が吹き込まれていた。


しかし、今回は、アイオワ州でビッグ・モーを届けることができなかったので、ほとんどのアメリカ人には、ニューハンプシャー州での結果の意味が薄れたように写り、「キングメーカー」であり続ける意義に疑問の声が上がってきた。

Also on RT. Com
Iowa caucuses fiasco is a ‘spectacular’ first step for Democrats to get Trump re-elected

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お金で政策は買えるが、その逆はない
米国の政治におけるお金の役割には醜い現実があ下線文る。米国の政治キャンペーンは、世界で最も長く時間がかかり、お金もかかる。

実際、候補者は、大統領職落札の努力を維持するのに必要な資金を調達しなければならず、そのことが、米国の選挙プロセスが本来持つべき民主主義に則った価値観を損なうことになる。政治は政策の戦いであるはずだと考えられている。

ただし、そのプロセスにお金が投入されるとなると、政治は、大口資金提供者のドルを引き付けることができる政策だけの戦いになってしまう。資金を調達する能力があるかどうかが、すべての意欲的な政治家が通る最初の改札口となり、いい政策も、資金のめどがたたなければ、放っておかれる。


アイオワのビッグモーとそれに付随する資金調達の可能性が無効となったため、ニューハンプシャー州の予備選挙は、候補者間の資金源の格差に光を当てることになった。

最大の違いは、大部分が草の根資金によるキャンペーンを実施したバーニー・サンダースと、複数の多額の資金提供者によってキャンペーンが行われたピート・ブティジェッジとの間の違いだ。これら二人の候補者は、政策面でもキャンペーン資金面でも異なるが、実のところは、どちらも限られた量のキャンペーン資金を取り合うことになるということだ。アイオワ・ニューハンプシャー州の政治決戦を生き延びた他の候補者、エイミー・クロブシャー、エリザベス・ウォーレン、ジョー・バイデンも、同じ事だ。

大統領選挙の成否は、ドルがどう動くかにかかっているのであって、必ずしもどんな政策がいいかで決まるわけではない。良くも悪くも、これらの政策は、これまでは、アイオワとニューハンプシャーを組み合わせた結果で決まってきた。アイオワ州党員大会での失態と、それに続くニューハンプシャー予備選挙に重点が移る中で、米国は非常に難解な問いが与えられている。

それは、国政選挙で金が果たす役割についてと、アイオワ州とニューハンプシャー州が果たしてきた金を配分する役割についての問いだ。米国では、お金と政治を分けて考えるのはありそうもない。同時に、米国の政治に金を出している人々が、アイオワ州とニューハンプシャー州がこれまで果たしてきた大きな役割を、これからも認め続けることはなさそうだ。

大事なのは、金だ。アイオワ州とニューハンプシャー州ではない。


米メディアはニューハンプシャーで勝利した「バーニーを無視」作戦、再度。しかしそれはうまくゆかない。

<記事原文 寺島先生推薦 US media tries another ‘Bernie blackout’ after New Hampshire win, but their game is not working

RT-Oped 2020年2月12日 ダニエル・リアン

Danielle Ryan
is an Irish freelance writer based in Dublin. Her work has appeared in Salon, The Nation, Rethinking Russia, teleSUR, RBTH, The Calvert Journal and others. Follow her on Twitter @DanielleRyanJ

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ 2020年3月2日>

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バーニー・サンダースがニューハンプシャー州予備選で勝利したが、これはアメリカのメディアにとっては飲み込みがたい丸薬であり、無視するか、少なくとも勝ったことが悪いことだと思わせる枠組みにすることに決めたようだ。

その夜の主流メディアの報道を丹念に見ると、アメリカの政治を何気なく眺めている人は、エイミー・クロブッチャ-と呼ばれる素敵な笑顔の女性が番組のスターだと思っても仕方がないだろう。実際、中道志向のクロブッチャ-ミネソタ州上院議員は3位に入った―しかし、彼女のニュース報道での取り上げられ方には偏りがあった。

信じられないことに、その夜のヘッドラインの中には 「サンダース」 という言葉が全く入っていないものもあった。「エイミー・クロブチャーがニューハンプシャーで弾みをつける」とCNNは大げさにまくしたて、「ニューハンプシャーはクロブチャーに大きな支持を与え、バイデンとウォーレンは2020年彼女の大統領選でなくてはならない支援側へ回ったと」とFOXニュースは書いている。ロイター社のツイートには、「ピート・ブティジェッジはニューハンプシャー州予備選で2位、エイミー・クロブチャーは3位に入った」と記されている。
ちょっと待ってほしい。実際には誰が勝ったのか分かっているのだろうか?「強力な第3位」が新しい1位なのか?それが今のやり方か?MSNBCによると、そのようだ。





サンダースの勝利は、メディアに登場する評論家たちが何とか自分を慰めようとする動きによって暗い影を落とされた。と言うのも彼らは自分たちのお気に入りの言い分(=民主社会主義者のバーニーで「ほんとうにトランプに勝てるのか?」)が、バーニーの勝利で深刻な打撃を受けてしまったからだ。

バーモント州上院議員のバーニーは、アイオワ州党員集会とニューハンプシャー州予備選の両方で一般投票を勝ち取った。まあ、ニュースの見出しや、ケーブルニュースの専門家の話を聞いても、そのことはほとんどわからないだろう。

ALSO ON RT.COM ‘Too perfect’: Iowa Dem Party sign falls off podium as chair struggles to explain caucus flop, Twitter sees a metaphor

2016年、一般投票で勝利したのだからトランプにほんとうに勝てるのはヒラリー・クリントンだと主張したコメンテーターたちを覚えているだろうか。おっと!2020年大統領選では、社会主義の候補者が先頭に立っているため、「今回のニューハンプシャー州での一般投票の結果は、何の影響力もない」に戻ってしまったかのようだ。あらあら、しっかりして。

クロブチャーが何の関連性もないところからニューハンプシャー州で3位になったことは、一定の成果であることは否定できないが、大地を揺るがすほどのことではない。こういうことはアメリカの予備選挙では起こり得る。ほんとうに特筆すべきことは、サンダースが一貫してトップランナーであり、少額の寄付しか集めてないのに全国世論調査でリードしていることだ―しかし彼は、当選には絡まない、「勝てない」目障りな脇役として扱われている。
その一方で、同じメディアが、あることないこと並べて、ジョー・バイデン元副大統領が「トランプに勝てる候補者」であることを、アメリカ人の頭に叩き込んできた。恐らく、バイデンが悲惨な5位に終わり、投票が終了する前にニューハンプシャー州から逃げ出した今、メディアは「バイデンは勝てる候補」という悪ふざけを止めることになるだろう。


ALSO ON RT.COM ‘Unhinged’: MSNBC host Chris Matthews goes on bizarre rant about mass executions & ‘the Reds’ while discussing Bernie Sanders

サンダースをメディア上で批判する人たちは、火曜日夜の現実に直面すると、新手の、以前よりばかげた言説を急に述べ始めた:彼が勝利したのはクロブチャーとブティジェッジが 「本当に」トランプに勝てる票を分け合ってしまったからだ、というものだ。サンダースが勝ったら、票に意味はなくなるのか?クロブチャーとブティジェッジへの投票は「トランプに勝てる」票という訳か?サンダースはそれ以上の票を獲得しているのに。ま、そんなことはどうでもいいということか。

サンダースに特に激しく敵対しているMSNBCでは、評論家たちが一丸となって彼の勝利にけちをつけようとした。ある場面で、クリス・マシューズはクロブチャーとブティジグはその票を合算するとサンダースを「圧倒している」ので、サンダースは実際には勝っていないと主張した。MSNBCのスタジオさん、そんな風にはなっていませんよ。




ローレンス・オドネルは、別の角度から考えてみようとした。同夜の本当の「話」とはサンダースが2016年にニューハンプシャー州で60%の票を獲得したが、それ以降同州での人気は「地盤沈下」している、というのが彼の議論だ。2016年にはクリントンという手強い対抗馬が1人だけいたが、2020年の今回は4人もいるということは気にしないで、ということか。

このレースにはまだ長い道のりがあり、何が起こるかわからないが、はっきりしていることがひとつある:もしこの4人の候補者のうちの誰かが今回のバーニー・サンダースのような勝者の立場に立ったとしても、メディアは必死に頭を絞り、その成功にケチをつけるようなことはしないだろう。

「反BDS法は言論操作と検閲が目的」
と語るのはジャーナリストのアビイ・マーティン。
自身の講演を拒絶されたことでジョージア州を告発。

<記事原文 寺島先生推薦> Anti-BDS laws are meant to censor & control speech, journalist Abby Martin tells RT after suing Georgia govt over cancelled talk


RT USA News 2020年2月14日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ 2020年2月26日 >

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イスラエルへの忠誠誓約に署名することを拒否したことを理由に、ある公立大学で講演することを禁じられたジャーナリストのアビイ・マーティンは、現在、ジョージア州を訴えており、同州の反BDS法は憲法修正第1条に火をつけて燃やすものだと主張している。

今月下旬にジョージア・サザーン大学で開かれるメディアリテラシーに関する会議の基調講演予定だったマーティンは、2016年のジョージア州法の下で義務付けられているイスラエルへの忠誠宣誓なるものに署名するよう求められた。その州法というのは、イスラエル製品をボイコットする業者や、世界的な「ボイコット、投資撤退、制裁」(BDS)運動に加担する業者を政府が雇用することを禁じる法律だ。マーティンはRTに対し、署名を求められたものを見て「ショックだった」と語った。

「私は全く予想していませんでした」と、彼女は言った。「私はこの問題は知っていました。20以上の州がこの措置を独立請負業者に適用していることについて話したこともあります。しかし、この2つ(2016年のジョージア州法と自分の基調講演)を結びつけるなんてことは全くしてませんでした。」

ALSO ON RT.COM Invoking ‘anti-Semitism’ to silence people works – until it doesn’t. Then what?


親パレスチナ運動は自分の仕事の「中心部分」であると説明し、誓約への署名を拒否すると、同大学はマーティンの講演をすぐに取り消した。同僚たちが彼女を弁護しに来ると、イベント全体を中止にした。彼女によれば、その動きは「米国全体の学問の自由の状態を象徴している」のであり、類似した法律が28の州で可決されている。

「これはとても興味深いことだと思います。なぜならパレスチナのような問題について議論する私のような左派系論者についての論議は本質的に皆無だからです。左派系論者は国レベルでは文字通り出番を塞がれています」とマーティンは述べ、こういった検閲は「憲法修正第1項(言論の自由)に直接違反しています」と語った。

問題はボイコットする権利や平和的な政治活動に参加する権利ばかりでなく、特に大学キャンパスでは自由な言論そのものの権利に関わるからです。

「アメリカ立法交流評議会」 (ALEC)や「ヘリテージ財団」などの中道右派団体が、保守的な論者を保護するために、全米の大学キャンパスで「自由言論法」を推進している中、「反BDS法」は明らかに偽善的であり、特定の視点を抹殺し、イスラエルを巡る公の言説をコントロールするために利用されている、とマーティンは述べた。

“「言論の自由がまったく存在しないのに、あからさまな偽善が行われている」と、彼女は言った。

特定の種類の言論を保護し、他の種類の言論をブロックするためのこれらの法律を見ると、本当のところは、どんな言論が求められていて、どんな言論が求められていないか、ということがテーマになっているのです。

ALSO ON RT.COM Israel-Palestine issue is glaring example of how some people have rights and some don’t – Roger Waters to RT

自身の政治的見解のみを理由にジョージア・サザーン大学での講演を拒絶されたので、マーティンは、月曜日、ジョージア州を相手に訴訟を起こした。訴訟理由は講演拒絶の決定は彼女の「米国憲法修正第1項」の権利が踏みにじられているというもの。RTの番組で司会を務めたこともあるマーティンはこの件について「自信がある」と述べ、この訴訟で「州内で仕事をするためだけで、市民的自由と憲法上の権利を失わなければならない独立した請負業者がゼロになる」ことの期待も語った。

これらはそもそも通過などさせてはいけなかった法律だ。これは、米国憲法に真っ向から違反して法律を通過させた州議会の責任である。

この訴訟には望みがある。テキサス州の判事は昨年4月、州政府が同様の反BDS法を執行することを阻止し、同法は「保護された表現に対する許容できない内容および視点に基づく制限」であり、「説得よりも強要によって[イスラエルを巡る]議論を操作しようとしている」との裁定を下した。

しかし、マーティンは彼女の主張に反対する多くの勢力が米国内外から集結し、苦戦を強いられている。イスラエル首相府が今週ツイートで、イスラエルは「アメリカのほとんどの州で[反BDS]法を推進しています」と認めたことから、この法律を覆すことは、法廷で争うだけでなく、強力な外国のロビーと争うことも意味する。

ALSO ON RT.COM Okay if Israel does it? Twitter cries 'foreign meddling' after Netanyahu says Tel Aviv 'promoted' anti-b

正義は盲目、あるいは肩書きで盲目にされる?
――『アンドリュー王子とジュリアン・アサンジの物語』

Justice blind or blinded by titles? A tale of Prince Andrew and Julian Assange
George Galloway
Rt. Op-ed 2019年11月26日

(翻訳: 寺島メソッド翻訳グループo.n. 2019年12月27日)

<記事原文>寺島先生推薦 Justice blind or blinded by titles? A tale of Prince Andrew and Julian Assange

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勇ましいヨーク公(訳注:出典はマザーグース)は、今夜、王宮の羽根枕で眠る。 世紀を代表するパブリッシャーのジュリアン・アサンジは、英国のグアンタナモ刑務所と言ってもいいベルマーシュ刑務所で眠っている。


 ヨーク公は、児童買春業者と取り沙汰されている故ジェフリー・エプスタインをいつから知っていたのか、どういう関係だったのかについて嘘をついた。ジュリアン・アサンジは、戦争と平和の時代の富裕層と権力者の重罪と微罪について真実を語った。


FBIは女王のお気に入りの息子と話す必要がある。 しかし、地上のどんな権力も、彼が現代のソドムやゴモラであるマンハッタンのタウンハウスで見たかもしれない、あるいは参加したかもしれないことを彼に証言させるために配置されることはないだろう。 


Also on rt.com Prince Andrew’sdisastrous Epstein denial poses more questions than answers (VIDEO)


同じ米国の司法制度が、アサンジの残虐な投獄とこれから何年続くかもしれないアメリカへの送還話の中でカフカの小説ばりの監禁状態を引き起こした。 すべてのプロセスが終了する前に彼が死なないにしても、そうなる可能性はあると60人もの医師が最近警告した。


米英の犯罪人引き渡し協定は、これまで女王陛下の閣僚達が締結した条約の中で最も不平等なものかもしれない。今回のケースで、元ブレア政権の内務大臣デイビッド・ブランケット氏は視覚障害者ではあったが、自分が何をしているのかを正確に見ることができる人間だった。


本質的に、英国から米国への犯罪人引き渡しは、正当な理由を示す必要もなく、事実上米国から要求があれば実施されることになっていた。 しかし、その逆はない。英国が米国市民を英国で裁くために英国に送還するよりも、ラクダを針の目に通す方が簡単だろう。


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この条約が調印された当時、私は英国議会の議員だった。このことの持つ意味を軽視しているわけではない。この条約は、議会が開かれていなかった夏季休会期間中、王室大権の行使により署名されたものなのだ。


この条約はすでに発効してしまっていて、まさにその時私はこの条約の最初の犠牲者となった人間たちの引き渡しに文字通り反対することができた。 まずシティ・オブ・ロンドンの金融詐欺師と言われた人間たち、そして「テロリスト」の濡れ衣を着せられたロンドンの住人ババール・アーマド。


アンドリュー王子はそのような試練に直面することはないだろう。 今では王室サークルから追放され、事実上平民階級に格下げされ、ぎっしり並べられたよくわからない勲章が剥ぎ取られた彼のエポレットが、ただチュニックに付いた金属くずになってしまってはいるが。


従来の引渡規則では、上記いずれの事件も、英国の裁判官を説得するのに十分な推定的証拠(疎明)を提出しなければならないという以前の要件を満たすことはできなかっただろう。新しい条約の下では、それはお茶の子さいさいだった。そして、彼らは送還された。十代の少女との性的不品行を非難され、未成年女性との買春斡旋人と言われるギスレイン・マックスウエルとの密接な関係は認めている。 またギスレインのロンドンの自宅は性交渉の場の1つであるとされている。 しかし、米国が王子に証拠を提出するよう要求することや、英国が彼を差し出すことは決してないだろう。

 

Also on rt.com Assange treated asterrorist by UK, it's ‘almost murder by state’, doctors warn WikiLeaks foundermay die in jail


アサンジは冤罪でレイプの罪に問われているが、実質的に過去10年間、何らかの形で投獄されている。 もしアメリカに送還されることになると、最長175年の禁固刑が待っている。


これはバッキンガム宮殿とベルマーシュ・マキシマム・セキュリティ刑務所の『二都物語』だ。


二人の個人の物語――一人は今やうそつきが証明された人間、もう一人は真実を語っていることが十分に証明された人間の物語である。


二つの運命の物語――道徳的な乞食となった王子と、もう一人は道徳の巨人となった貧乏ジャーナリストの物語である。


これは今の時代の物語だ。






アメリカ億万長者達の不安と焦り

<記事原文> 寺島先生推薦
‘War on Wall Street’? Billionaires declare themselves a persecuted minority

RT Op-ed   2019年11月15日 

(翻訳:寺島メソッド翻訳グループo.n. 2019年12月16日)

87-1

億万長者達は、前例のない格差の時代に漂っているポピュリストの怒りの亡霊を追い払おうと慌てふためいている。 その亡霊はある時は富裕税として、ある時は規制の強化として出現する。
おそらく、彼らはこうなる結果を40年前に考えるべきだったのだ。

2020年の選挙は「ウォール街と富との戦争」を引き起こす可能性があると、「大規模すぎて潰せない
銀行」のシティ銀行が、今週、ブルームバーグが引用した手紙でその顧客達に警告している
シティ銀行は、最近の富裕層は単に「低・中所得者のさらなる税控除を含む再分配政策」の「絞り出せば金が出る乳牛」と見られていると嘆いている。
トランプ政権2017年の税削減の第一の受益者はシティ銀行の手紙を受け取った金持ちであり、彼らが所有する企業だったことは気にするな、とも。 
ただ、大衆の怒りが出てきており、シティ銀行は顧客に対してそれへの心構えを求めている。

シティ銀行の手紙は、「われわれは迫害された階級だ!」と宣言する億万長者の、そこだけが突出した事柄では決してない。
民主党の大統領候補であるバーニー・サンダースとエリザベス・ウォーレンが提案している、国のボロボロの社会的セーフティーネットの必要な強化のための富裕税は、明らかに超富裕層の心に恐怖を吹き込んだ。
それは、ポピュリスト的言説が広まっているのと、世界の他の地域では新自由主義的資本主義が、いわれているような評判どおりのよいものではない、という認識が徐々に広まっている状況下でのことだ。


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この手紙を公表した唯一のテレビ局であるブルームバーグの局名は、ニューヨーク市の元市長マイケル・ブルームバーグにちなんで名付けられた。
マイケル・ブルームバーグは、富裕税と規制の強化に反対し、先月大統領選挙に急遽出馬した。 
しかし、すでに多数の立候補者があり、有権者は、彼のような70代の男性白人の金持ちがもう一人出馬することに特別な期待は何も持たなかった。
市長時代、彼はニューヨークを超富裕層のための遊び場、そして貧しい人々のための警察国家に変えた。 
こんな実績を良しとする人間は少数だ。もちろん、彼の仲間の億万長者は別だが。


「億万長者を中傷しても私には何の意味もない」とヘッジファンドの億万長者レオン・クーパーマンは、先週全米放送のCNBCで語り、仮にウォーレンが大統領になっても、自分の財産は守ると、涙目で言った。
そして、自分と同じ億万長者達(ブルームバーグを含む)は世界を「よりよい場所」にした、と主張した。
クーパーマンは、富裕税を「破産概念」と呼び、ウォーレンが選出されると株式市場が暴落することを警告した。
これは予言だが、警告というよりはヘッジファンドの創立者である彼からの脅しにも聞こえる。
彼が死んだ時は、「すべてのお金を寄付するつもりだ!」とお涙頂戴のような言い方をしたが、死んでからの慈善活動を口にしても政治家の心は動かないことにショックを受けた様子だった。

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ピッチフォ-ク(鉄製熊手)を振るう怒り狂った大衆への恐怖は別に目新しくも何ともないが、格差があまりにも固着しているため、億万長者の税率が労働者階級のそれより低いのが現実だ。 
ちょっとした是正でも、それは怪物のように肥大化した富裕層への処罰感情につながる。
おそらくこれが、予想される階級闘争を避けようとする人間が少ないことの理由だ。 
この階級闘争は次のような構想を支持することによって労働者階級にプラスの結果をもたらすかもしれない:
    
    ①富裕層がその資産を海外、あるいは「慈善」基金に隠匿することを許す税の抜け穴を塞ぐこと
    ②ウォールストリートの株取引に課税すること
    ③大規模資産へ課税すること

いずれもサンダースやウォーレンがやろうとしていることだ。 これに対して億万長者達は前スターバックスCEOのハワード・シュルツの言説に従っている。民主党からはただ一人の富裕層立候者だが、彼に対する反対デモが起きている。
彼は自分の属するグループを「億万長者」ではなく「資産家」と呼ぶように主張している。 
「億万長者」は響きが悪いというのだ。

ウォーレンが、富裕税に対する数人の億万長者の、信じ難い反応をつなぎ合わせたコマーシャルをリリースした後、そのうち数人から反撃があった。
  ゴールドマンサックスのCEOであるロイド・ブランクファインは、億万長者への中傷は差別、つまり「人間を一括りにして批判すること」である、と示唆した。 
  さらに彼は、マサチューセッツ州上院議員であるウォーレンの「『ネイティブアメリカン』起源」問題をあてこすった。
  クーパーマンは、もっと意地悪く、「クソッタレが!ウォーレンは誰にツィートしているかわかってないんだ!」と罵った。 
  彼女が「インサイダー取引の嫌疑あり」の文を彼の顔の上に重ね合わせた選択をしたことに反応してのものだった。

「アメリカ人は裕福な人がきらいではありません。みんな裕福になりたいと思っています」とヘッジファンドのクーパーマンは言い張り、度外れに巨大化した富を守ろうと涙ながらに言葉を続けた。

 しかし、かつては「チャンスの国」と言われたアメリカで金持ちの階級に入るのは以前ほど簡単ではない。
 ハーバードのエコノミストRaj Chettyによると、アメリカにおける社会的流動性はこの半世紀で70%下落している。 
  2016年までに、30歳の約半分が同じ年齢だった両親より所得が少ないというのだ。 
  収入面で見た労働者の下半分に、1970年代以降、所得の実質的な伸びは見られなかった。 
  ただし、Chettyの指摘では、1980年が「変曲点」で、以降の格差の開きは爆発的だという。
  かつては安定していたアメリカの中産階級は、企業の海外移転と組合の解体により破壊されてきた。 
  一方格差の蔓延を引き起こした「トリクルダウン」経済政策は、労働者階級の貯蓄を裕福な人々へと仕込む「トリクルアップ」に変質した。
  そして、ほとんどのアメリカ人(5人中4人)は何らかの借金に苦しんでいる。
   人々が「アメリカン・ドリーム」の夢から目覚め始めていることは驚くに当たらない。
 
 しかし、それはクーパーマンが彼なりに抱いたひとつの不満であり、億万長者達を一様に襲っているパニックだ。
 「裕福な人々を中傷しながら、その意図は別にある。彼らの訴えは大衆に向けられているのだ!」と彼は叫んだ。 
 その様子は、まるでどんな政治家でも、彼らの活動資金を賄ってくれるのは紛れもなく寄付者であるのに、語りかけが有権者に向かってことに愕然としている風だ。 
 民主党の大口寄付者達は、ウォーレンがもし大統領候補としてノミネートされたら民主党への支持を撤回する、という脅しまでかけている。
 (「億万長者はいらない」という、今はバンパーステッカーにもなっている標語を挑戦の手袋として投げつけ有名になったサンダースについても同様)ている。

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実際のところ、ポピュリズム政治家たちが(支配層にとって)過去に問題になったことはない。 
民主党員として前回大統領を務めたバラク・オバマは、選挙戦で国民のために戦うと約束したにもかかわらず、シティ銀行幹部の指揮の下で主要人事を決めた。
彼が政権に就こうとしている間、彼の前任者のブッシュ(子)は、略奪的な住宅ローンの貸付で米国経済を破壊したシティ銀行や他の銀行を公的資金で救済し、2008年だけでほぼ100万家族を路頭に迷わせた
 そして、(億万長者所有の)メディアの最善の努力にもかかわらず、根強いポピュリズムの流れがアメリカの政治に浸透している。 主要メディアはと言えば、機会あるごとに「ポピュリズムファシズム」を発信している。 
 が、若いアメリカ人達はますます社会主義を好意的に見るようになっている。
  こういった傾向はどちらも、超富裕層の楽観的な未来を予測するものではない。

  もちろん、次期大統領がたとえ軍事に固執し、資金面では億万長者に照準を合わせても、その政策がうまく行くことは保証されない。
  シティ銀行が手紙で示唆しているのはこのことであり、改革志向の大統領が誰になっても、ウォール街に忠実な議会を通して立法を推進するのは並大抵ではないことを投資家達に想起させたのだ。
  ついでながら、金持ち達は、アメリカ政府が戦いを宣言した他のすべてのこと(貧困、麻薬、テロリズム)が全く撲滅されていない事実に胸をなで下ろすことができる、とも。

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「シーガニズム」――
次々と紹介される食事法にどう対処するか?

The rise of 'Seaganism': As another diet fad enters the market so does food propaganda
RT Home UK News 2019年11月8日 


(翻訳:寺島メソッド翻訳ニュースo. 2019年12月13日)
<記事原文>寺島先生推薦
chttps://www.rt.com/op-ed/472862-seaganism-diet-media-misinformation/https://www.rt.com/op-ed/472862-seaganism-diet-media-misinformation/

しーがにずむ1
Brötchen © imago stock&people

私たちが触れるニュースは、情報戦争と地政学が騒々しく入り交じった背景を持っているのかもしれない。 そんな中、酪農産業、海産物産業、食肉産業などもまた「誤情報」について自分達の主張を打ち出したいと考えている。

テレビや高級雑誌で、毎月新しい食事法の勧めが放映され、特集されているようだ。最新の流行は「より痩身に、健康に。そして世界の救済へ」だ。 お題目の数は増すばかり。 一例を挙げると、ラクト菜食主義者、フレキシタリアン、ケトダイエット、卵菜食主義者、フルーツ愛好家、パレオラバー、フリーガン、ビーガン、ベジタリアン、ペスカリアン等々。うんざり。

一応ここで止めておく。 Waitrose Food&Drink(英国のおしゃれなスーパーマーケット)の新しいレポートによると、人気が高まっている新しい食事法は「シーガニズム」だ。 別にこれは「目にする(see)ものは何でも食べる」ことができる時のお題目ではない。 植物ベースのビーガン(完全菜食主義)料理を食べたり、オメガ3の吸収を高めるために奇妙で怪しげな魚料理を食べるというのでもない。

多分、「シーガニズム」は悪いことではなさそう? ourworldindata.orgによると、温室効果ガスの排出量の4分の1は食品から発生し、その排出量の半分以上は動物性食品から発生している。ハンバーガーより魚を食べる方がよさそう、ということか?

しかし、これらの一方的な雑誌の記事やネット上の「食事法」サイトを少し深読みすると、何か怪しいことが起こっているように見える。そこで展開される一群の「倫理的攻撃志向」の中身は少し詳しく見る必要があるかもしれない

ALSO ON RT.COM Meat tax will take food off poor people’s tables so that wealthy eco-socialists can feel virtuous

このような「ビーガン・ミート・シーフードダイエット」(訳注:meetとmeatが同音?)には、脂肪性シーフードにビタミンDと体にいいオメガ3脂肪酸が含まれているため、心臓病のリスクを軽減し、炎症を軽減する可能性がある・・・

だが、魚の乱獲もその養殖も温室効果ガスである二酸化炭素の排出量が無視できない。 消費者主導の乱獲も混獲も水産業界では深刻な問題だ。 私たちが未だに動物性食品を食べていることは言わずもがなだ。

これはまた、「赤肉反対!」運動のテーマ全体につながる。 英国の企業Compare the Market Ltd.による2018年の報告書は、英国のビーガン人口が2016年以来600パーセント増加していることを指摘した。

先月のオックスフォード大学の研究では、健康的な食事が環境に最適であると結論付けたようだが、そのことは貧しいペルー人とボリビア人にも伝えていることになるのかもしれない。 彼らは自分達の主食であるキノアが手に入らなくなっている。 西側の需要の増加でキノアの価格が高騰したせいだ。

食肉業界は反撃の構えだ。今年の秋、Quality Meat Scotlandは、ビーガンのプロパガンダに対抗するために「Meat with Integrity(品性を持って肉食を!)」キャンペーンを開始した。ハイランドの農民たちは、人々が間違った情報を伝えられていると主張している。

肉食主義者、ビーガン、そして今や「シーガン」が一連のデマ情報に批判的な意見を展開しているので、人々は混乱状態だ。 慈善団体と活動家達は、事実と作り話を区別したいと考えているが、私たちが食べるものについての誤情報には二面性があるようだとの気づきもある。
しーがにずむ2

Fish market in Bergen, Norway © Hans Lippert/imageBROKER.com/Global Look Press

ビーガンは常に正しいとは限らず、肉が健康的なこともある。言い換えれば、南米のアボカドやインドのカシューナッツを食べるよりも、地元産の肉を食べる方が環境と二酸化炭素排出量の点では優れている。

実際のところ、私たちの棚にあるビーガン食品は、自然食とはほど遠く、高度に工業化され、もっぱら工場で生産され、大体は巨大な多国籍企業の所有だし…需要が高まると熱帯雨林が破壊される。だから、おそらく、その場合、私たちが何千年もの間行ってきたように地元産の魚や肉を食べることが、安定して持続可能だ。 ほどほどに、という条件はあるが。 
たぶん、私たち全員が私たちの裏庭やバルコニーで自分の食べ物を育てるのが最善だろう。

多くの人がより環境に優しい生活を送りたい、動物の幸せを気遣う、または二酸化炭素排出量を減らしたい、と考えているため、環境への問題意識は高まっている。 しかし色々な情報を正確に受け止めることは重要だ。 

とは言っても、このマスメディアの狂気と混乱した情報戦争の世界では、それはちょっと難しいかもしれない。あらゆる誤情報が私たちを取り巻いていても、シーガニズムや新しい流行はひとまず置くとして、私たちが何を食べるかだけでなく、食べ物がどのようにして私たちのテーブルにたどり着くのかを問うことは健康的と言える。

By Martyn Andrews, RT

アメリカは、中東へ1000人の増派-----ペンタゴン

US to send 1,000 additional troops to Middle East - Pentagon

RT Home/World News/(2019年6月17日)

(翻訳:新見明 2019年6月20日)

<記事原文>
https://www.rt.com/news/462096-us-troops-middle-east/



©Reuters / Handout

国防省長官代理は中東へ1000人の追加派兵を承認した。この前の湾岸の石油タンカー攻撃に関して、「信頼できる、正確な」情報をもとに、ワシントンはイランを非難する。

月曜日の声明で、アメリカ国防長官代理パトリック・シャナハンは、米中央指令軍(CENTCOM)から要求されていた「中東における陸海空の脅威」に対処するために軍の増強を承認した、と述べた。

アメリカは5月初旬以来、その地域における軍を増強してきた。ワシントンはパトリオットミサイルや核搭載可能な爆撃機や空母打撃群軍をその地域に配備した。そこでは現在1500人の軍隊がいる。テヘランからの増大する脅威が、その増強を正当化した。ワシントンはこの2ヶ月にわたるその地域での多くの事件でイランを非難した。テヘランはその関わりを否定している。


Also on rt.com US planning ‘tactical assault’ on Iran in response to 'tanker attack' — report
(さらに読む)アメリカは「タンカー攻撃」に対してイランへの戦術的攻撃を計画している----報告

 
ニューヨーク国連による最近の報告では、オマーン湾における2隻の外国タンカー攻撃への報復として、ワシントンは「戦術的イラン攻撃」開始を考慮していると述べている。


Also on rt.com Pentagon releases new pictures of the Oman Gulf tanker attack, says they 'prove' Iran's guilt
(さらに読む)ペンタゴンはオマーン湾タンカー攻撃の新たな写真を発表し、「イランの犯罪は証明された」と述べる。


国連声明のほんの数時間後に、ペンタゴンはイランの犯罪を証明するとする新たな写真を発表した。その事件は、日本籍のタンカー「コクカ・カレイジャス」とノルウェー籍の「フロント・アルタイル」が破損させられたが、写真からは標識も旗も船名も識別できない。

イランは、イランがかかわったとする主張をすべて否定した。それは世界中でアメリカの利権を守るために行われてきた「偽旗作戦」の膨大な記録を見ればわかることだと指摘した。

アメリカの制裁は転換点に! 脱ドル化とアメリカに対する結託

US Sanctions Reach a Turning Point. De-Dollarization and Collusion against the U.S.

カルステン・リーゼ
グローバル・リサーチ 2018年9月20日

(翻訳:新見明 2018年10月10日)
<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/us-sanctions-reach-a-turning-point-de-dollarization-and-collusion-against-the-u-s/5654643

アメリカ制裁体制の決定的瞬間


毎年、アメリカは制裁する新しい国を見つける。毎年、アメリカは約100人を膨大な制裁リストに加える。今アメリカの制裁は転換点に来ている。 

これまでEUは、アメリカとほぼ同じ比率で世界経済を担ってきた。そしてEUは、アメリカが以前より異様な比率で制裁体制を増大させのに従ってきた。アメリカとEUはともに世界経済のほぼ半分を構成してきて、アメリカの制裁は以前は世界経済の他の半分を標的にしてきた「だけ」だった。これまでEUはアメリカの制裁に影響されることはないので、アメリカとの関係を無理に変える理由がなかった。

しかし今は、イランに関して「二次的制裁」がEUの戦略的会社や金融機関にもかなり打撃を与えた。そしてペルシャ湾からのエネルギーも、EUの世界戦略利害に否定的影響を与えている。要するにアメリカの制裁は、最大の仲間であるEUの自由や安保や主権を攻撃しているのだ。

それ故、いまや我々はアメリカが行う制裁体制のために決定的瞬間に至っているのだ。

アメリカ経済は、すでにUSドルで世界のGDPの4分の1以下である。そして2023年には、世界の約5分の1に落ちるだろう(IMF資料)。アメリカ以外が、世界経済の5分の4(今はEUや中国を含む)を占め、はますます先進国グループになっている。そして彼らはアメリカ制裁体制に対して陰で手をつなごうとしている。この結託は共通の利害の結果である。しかしEUは実際は(又は少なくとも)他の主要勢力の反制裁に協調しないかもしれない。 

私達はここで、根本的変化に向かっている世界最強の複雑な政治経済構造のことを話している。

だから私達は より大きな構図を分析する必要がある。現在のそして将来あり得るアメリカの制裁に対して、反制裁の完全な体制が、世界の協力な勢力によってどのように計画されていて、実行されるのかという構図を分析する必要がある。それは全てアメリカに対して向けられたものである(しかし時々アメリカと共謀するかもしれないが)。これらの対抗戦略体制は次のことを含むが、それに限定されたものではない。
 
金融

振替システムはアメリカの銀行を回避するようになり、アメリカの主要「成長産業」の世界的位置を傷つけるだろう。それはEU、中国、日本、インド、その他全てにとって、アメリカの銀行を捨てて、国際的システムの「自国の」銀行を国際的に展開するチャンスとなる。

長期的傾向を見ると、アメリカの金融業は、アメリカ経済を押し上げている実に「唯一」の巨大成長産業になった。アメリカ経済の他のどの部門も、規模や成長率で金融業に並ぶものはない(武器は少し似ているが、金融は規模において飛び抜けているのだ)。だからこれはアメリカにとってとても厳しいことになるだろう。 

アメリカの銀行はこれまで全世界の振替の便宜に中心的な役割を果たしてきた。そして第3国間の多くの振替は、どういうわけか技術的にアメリカを経由して行われている。このシステム構造はもう終わるだろう。中国によってだけでなく、EUや恐らくインドによっても。

アメリカ以外の誰もが、自分たちのお金をアメリカ金融機関によって触れられるのを嫌がるだろう。もしくは彼らのお金がほんの少しでもアメリカに上陸するのを嫌がるだろう。そしてもちろん、EUと中国はこれに対して合法的で技術的な解決策を知っている。

アメリカのクレジット・カード・システムの成長は妨げられるだろう。その代わり中国やEUのカードが、この儲かる急成長の世界市場に割り込むだろう。ロシアはこの傾向に最初に気づいた国で、アメリカのクレジット・カード会社を全て追い出し、中国のクレジット・カード・システムを導入したのだ。EUは、EUのクレジット・カードの役割を強めて、「偶然」(おおっと!?)、EU市場におけるアメリカのクレジット・カードに損害を与えることもありうる。金融センターであるイギリスのロンドンはBrexitの後、EUとアメリカの間の板挟みにあった。もしイギリスがEUの反制裁運動に対抗して、アメリカに味方すれば、EUはイギリスのクレジットカード・ビジネスをEU司法に訴える強い道具を作り出すかもしれない。

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 「呪われた帝国におけるドルの支配力」


新たな世界IT振替体制は、SWIFT(国際銀行間通信協会)に対するアメリカの影響を妨害し、アメリカの政治的影響力を減じるだろう。SWIFTシステムはブリュッセルに基盤をおいているが、アメリカの強い影響下にある。ロシアはすでにその代替機関を作った。EUはもはや、アメリカがSWIFT振替を通じてEU企業を傷つけるのを受け入れられない。EUはそれ故、SWIFTをアメリカ支配から解放するか、別のEUシステムを作り出すかどちらかの行動を取らなければならない。

ウォール街を避けよ

中国かEUからでさえ将来制裁の危険のない同じローンを借りられるなら、どうしてアメリカでローンを借りる必要があるのか。

サウジARAMCO石油会社のIPO(新規株式公開)は引き延ばされた。未確認情報では、9・11後、アメリカ司法がサウジ資産をねらった恐れが原因の一部であるということだ。すでにその傾向は、世界で最大のIPO(新規株式公開)がアジアに移動いているということに現れている。  

脱ドル化

EUは今エネルギー貿易をドルからユーロに換えようとしている。この傾向は他の国際貿易においてもドルを減少させるだろう。国際貿易における何兆ドルもが、アメリカに戻ってきて、インフレの危機や、経済危機を起こすかもしれない。未確認情報によれば、金はロシア政府や中国政府によってばかりでなく、トルコ政府によってさえ、急いで買い上げられている。

戦略的供給

エアバスがイランに飛行機を届けることができないのは、とりわけ重要な部品をアメリカから仕入れるからである。これは変化するだろう。戦略的供給チェーンは変化し、アメリカの下請け供給業者や輸送媒体(船、飛行機、IT)や技術、サービスパートナーなどを避けるだろう。それは根本的にアメリカの世界的地位を傷つけることになる。私達はここで中古車のことを話しているのではなく、戦略的ビジネス部門のことを話しているのだ。EUと中国はこの反アメリカ調達を、公式の政策として公然と述べてはいないかもしれないが、彼らは「きわめて」効果的に戦略部門においてそうなるように仕向けるだろう。

また食料のような他の戦略部門(アメリカ農業の穀物や大豆)におけるアメリカの出荷やアメリカのエネルギーは、反制裁によって影響を受けるだろう。中国はアメリカ大豆を減らし、その価格を下げる。そのときEUは(これにあまり依存していないので)、アメリカからの寄せ集めの安い余剰大豆を安売りとして使うかもしれない。液化天然ガスをアメリカがEUに大量に送るという考えは、恐らくほとんど言葉だけで、アメリカからEUへの液化天然ガスの総量はかろうじて増加するに過ぎないかもしれない。EUは冷めた計算さえしていて、ガス部門におけるEUは、アメリカよりロシアというもっと運用しやすいパートナーを持つことができる。EUは様々な面で、アメリカよりロシアに、規模の面でも実質的に有利な関係を持っている。そしてロシアが中国と良好な関係を保っているにもかかわらず、ロシアはバランスを保つことに関心があるようだ。

観光と教育

観光は世界で最も急速に成長する産業の一つである。そしてアメリカは文化的影響力を訪問する観光客全てに売る。大学教育は国家研究に財政支援する戦略的ビジネスであるだけでなく、大学はまたアメリカが世界中の世代に将来影響を及ぼす土台でもある。観光客や学生をアメリカ以外の他の場所に送ったらどうか。中国人観光客と学生はアメリカにとってかなり重要であるが、中国は観光客や学生をアメリカ以外にもたくさん送っている。

ビジネスを保護するために国を使うこと

反制裁として、いまEUは中央銀行や国有企業を、資金調達、ビジネス・パートナー、仲介パートナーの面で、イランの扱いをめぐって騒ぎに巻き込んでいる。EUの国有企業統一体に対するアメリカの制裁は、そのときアメリカの(経済)戦争宣言となり、それはEU私企業に対してだけでなく、直接EU国家にたいする戦争宣言となる。

アメリカの武器以外を買うこと

EUはアメリカに依存せず独自の兵器産業を増大させる壮大で野心的な戦略を実行している。EUの兵器製造業の力を増大させるために、EUはアメリカからの兵器輸入を最小限にする必要がある。EUは自分のものを作り、アメリカからの輸入はできる限り少なくしなければならない。サウジアラビアはこれまで世界最大の武器購入国の一つであり、ほとんど全てアメリカから購入している。しかしサウジアラビアとアメリカの指導者間の兄弟愛は冷めてきて、サウジアラビアは兵器購入先の多様性も求められるだろう。そしてサウジアラビアはすでにEUのユーロ・ファイター[戦闘機]さえもっていて、ロシアと萌芽的な武器購入関係にあり、拡大している。

アメリカに対抗する共謀

アメリカの貿易戦争は、アメリカの利害に対抗するEU、中国、インド、世界のその他(イギリスさえ)を結束させている。アメリカによって始められた侵略的で一方的な貿易戦争で、世界のその他の国々は全て、アメリカの制裁体制に対して対抗戦略に共謀するさらなる動機さえ今やもつだろう。

EUはゆっくり反応しているように思われるかもしれない。そしてこれは自信過剰のアメリカの政治家が、EUはできないだろうとか、しないだろうと思いがちかもしれない。しかし私を信じてください、EUは反応するだろう。なぜならこれは戦略的に必須事項なのだからです。EUはアメリカ制裁に災いの前兆を見てきた。彼らは、アメリカ支配からEUの主権を取り戻すためにこれを十分考慮し、計画し、じっくり準備するだろう。EU委員会大統領ジャン・クロード・ユンカーの最近のEUでのスピーチの文章を読んでください。EUがアメリカに対抗する制裁手段を展開するとき、それは大きく、包括的で、「きわめて」効果的になるだろう。

アメリカにとって否定的な変化は続くだろう

アメリカの銀行、金融、米ドルなどに対する代替システムがいったん開発され、成熟したら、それらは決して消えることはないだろう。

アメリカは自信過剰で、自身の世界的な経済的ヘゲモニーの資格を打ち壊そうとしている。そしてそれは結構なことだ。

*

カルステン・リーゼはコペンハーゲン・ビジネス・スクールの科学(経済)修士である。そしてコペンハーゲン大学からスペイン文化やスペイン語の学位を得ている。10億米ドル職責で、デンマークとスエーデンのメルセデスベンツの元副会長で主任財政委員(CEO)であった。着任当時、メルセデスベンツの世界販売組織内で最も若く、ドイツ人以外で最初の最高の地位にあった。

平壌はワシントンとの直接対話を求めている

Home/World News/

平壌(ピヨンヤン)はワシントンと直接対話を求めている。
モスクワは手助けする用意がある。-ラブロフ

2017.12.7 RT




ロシア外相セルゲイ・ラブロフ

北朝鮮は、自国の安全を保障するためアメリカと直接交渉したいと願っている、とロシア外相は明らかにした。セルゲイ・ラブロフは米国務長官レックス・ティラーソンにその事情を語り、モスクワはその話し合いに便宜をはかる用意があると述べた。

ラブロフ外相は「我々は、北朝鮮が自国の安全についてアメリカと話し合うことを望んでいること、知っている」とウィーンでテラーソンとの会談の後に語った。「ロシアはその話し合いの便宜をはかる用意がある」とラブロフとティラーソンは欧州安全保障協力機構(OSCE)会合の際に述べた。

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さらに読む

「もしでなく、いつ」:アメリカの恐喝外交が核戦争の可能性を不可避にしている、と北朝鮮は訴える。
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ラブロフが繰り返し述べたことは、朝鮮危機に関連しているものすべてが「対決や無謀な計画や制裁という悪意のサイクルを打ち破るべき」で、そして意味のある対話を始めるべきだということだった。彼はまた朝鮮半島周辺で行われているアメリカの軍事演習やワシントンの攻撃的言辞も非難し、それはさらなるエスカレーションに至るだけで、受け入れがたいことだ、とも述べた

木曜日早朝、ロシア上院外務委員長コンサンチン・コサチェフは北朝鮮モスクワ大使と会って半島情勢について議論した。キム・ヨンジェ大使との意見交換に続いて、コサチェフは、ピョンヤンは緊張拡大に断じて興味はなく、本格的な軍事衝突を開始するなどもちろん否定した。そしてピョンヤンは「戦争を恐れることもない」 とキムは付け加えた。

コサチェフは、会談後にインターファックス通信社に語った。危機を解決する有効な手段は、関係諸国による対話であり、緊張を緩和するために全てが協力することである。「我々は緊張のエスカレーションや軍事行動には全く関心がない」と述べた。「ロシアはエスカレーションを防ぐために可能なあらゆることをするつもりだ」と彼は付け加えた。
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さらに読む

2017年4月21日米韓合同実弾軍事演習中に韓国軍戦車が実弾を撃つ。北朝鮮のミサイル発射はアメリカとその同盟国の武力による威嚇の結果だ。-ロシア上院議員
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ラブロフとコサチェフの両方が、緊張が9月初旬に高まった後すぐ、ロシアと中国によって出されたいわゆる「相互凍結」に再び言及した。その計画とは、その地域において、平壌の核や弾道ミサイル計画の中止と引き替えに、米国とその同盟国がすべての軍事演習をやめることであった。その計画はワシントンによって、にべもなく拒絶された。アメリカ国連大使ニキ・ヘイリーはその提案を「無礼だ」と非難した。

水曜日に北朝鮮外相は、アメリカの朝鮮半島周辺での軍事演習は、ワシントンの好戦的言辞と同様、その地域での戦争勃発を不可避にすると述べた。「残された問題は、戦争がいつ勃発するかである」と大臣のスポークスマンは北朝鮮国営ニュース(KCA)に語った。

月曜日にアメリカは韓国と大規模な共同航空演習を開始した。12月8日まで続く予定の5日間の演習は12,000人の要因と230機以上の軍用機が参加する。明らかにその軍事演習は、特にピョンヤンの核・ミサイル施設攻撃をシミュレーションした者で、それを「防衛的」と主張しているのだ。

11月下旬に北朝鮮は更にもう一つのミサイル実験を行った。それはアメリカ本土を攻撃できる新型の大陸間弾道弾であり、それは成功したと発表した。

英文記事
https://www.rt.com/news/412373-north-korea-us-direct-dialogue/

<新見コメント>
 長い英文を訳していると時間がかかって、なかなか今の情勢に追いつかないことがあります。寺島先生からRTの情報を教えていただいて、ここでも短くて、しかも重要な記事を翻訳することができました。
 トランプと安倍政権が北朝鮮危機を煽っているが、北朝鮮は自国防衛のためにやっていることであり、他国への侵略の意図はない。北朝鮮はむしろ対話による自国安定への道を探しているとロシアを仲介して訴えている。このことは大手メディアでは触れられていない重要なニュースだ。
 11月トランプ訪問で「安倍政権は米国からステルス戦闘機F35(1機147億円)計42機、欠陥輸送機オスプレイ(1機約114億円)計17機などの購入を決め、陸上配備型ミサイルシステム「イージス・アショア」(1基約800億円)も2~3基導入する方針だ。」(日刊ゲンダイ2017.11.9)北朝鮮危機を利用して安倍政権は軍備強化をし、トランプは米軍事産業に大もうけをさせて帰っていったのだ。
 「これが詐欺でなくてなんなのか。所得増税、たばこ増税、森林環境税、観光促進税・・・。選挙で勝った途端、庶民には大増税と負担増ラッシュだ。選挙公約だった「教育無償化」も、範囲や支給額については来年夏に先送り。それでいて、バカ高い武器購入ばかりが次々と決まっていく。」(日刊ゲンダイ2017.12.12)
 私たちは何のために北朝鮮危機を煽っているかをしっかり見極め、軍備増強への道、戦争への道を阻止していかなければならない。

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