2013.02.24(Sun)
プリティが多すぎる (2012/01) 大崎 梢 |
老舗出版社「千石社」の若手社員・新見佳孝は、いつか文芸の編集者になるのが目標だった。
ところが、春の異動で決まった先はなんと、ローティーン女子向け雑誌「ピピン」で…。
これまでの自分の世界とは全くかけ離れた分野で、新見の奮闘の日々が始まった――!
以前感想を書いた『クローバー・レイン』と同じ千石社が舞台となっています。
刊行順としては、こちらの方が先なのですけどね。
そして、『クローバー・レイン』の工藤は、この作品の主人公新見が憧れる部署・文芸の編集者だったわけです。
しかし、そんな新見は、春の異動で希望とは全くかけ離れたローティーン雑誌「ピピン」編集部へと決まってしまった。
少女向け雑誌、なので同僚は女性が多い。
自分の好みとは全くかけ離れた世界。
なにせ
「pretty」「pop」「pure」「pipin」「女の子はPが好き」
が、雑誌のキャッチコピーですから。
挫折を知らない成人男性がいきなり投げ込まれて、上手く馴染むはずがありません(笑)
正直、年齢はひとまず棚上げして、対象と同性の私ですら読んでいて頭がくらくらしそうでした(笑)
ページびっしりの服に小物…。
これらをひとつひとつ選び、実物を見てはまた変えていく。
いつまでも終わらない無限ループ。。。
私は学生時代にこういった雑誌を読んでこなかったクチなので、逆にどんな雑誌なのかと新鮮な気持ちで読むことができました。
考えたら、対象はローティーンでも、雑誌の編集者は同性多しとはいえ大人なんですよね。
どれだけ読者の興味に近づけるか、というのは最大の課題だと思うんです。
そこを上手くやってこそ、商業雑誌というのは成り立つ。
南吉くん(新見のアダ名)も、そこがスタートとなるのです。
当初は雑誌の意図が全く見えず、出す企画も全ボツという有り様。
南吉くんの編集ぶりを中心に描くのかな、と思ったら、意外にもピピモという少女モデルたちも大きく描かれていたのでした。
最近では芸能人でもこうしたローティーン雑誌の人気モデルだった、という経緯もありますね。
彼女たちは未来のスター候補なのです。
しかし、モデルの世界は輝かしいだけじゃない。
熾烈な競争社会に、十代の頃から身を置くのだ、ということを、南吉くんを通して気づかされました。
この辺りの裏(?)事情も含め、とても興味深く読んでいて面白かったです。
そして、モデルたちの世界はとても脆く、大人たちの思惑によって簡単に揺らいでしまうことも。
南吉くん最大の失敗。それは一人の女の子の将来を大きく変えてしまったのです。
雑誌広告のモデルの代役。
ただ一度のその代役は、やってはいけない代役だった。
それが後々、スポンサーに広告会社、果ては千石社広告部も大騒ぎになる騒動へと発展してしまうのです。
…雑誌の世界って、広告が絡んで他社も絡んで、非常にややこしい世界、なんですねー。
でも、誰よりもモデルのジュリが一番辛いですね。
自分に出来る確認もきちんとしていたし、本人の落ち度は全くない。
スポンサーお気に入りの現役モデルに固執するわけでもなく、あっさりと別のモデルに内定されたことは、自分のモデルとしての力量を雄弁に語られてしまっています。
辛くないわけ、ないよなあ。
原因を作り出してしまった南吉くんも、流石にこれにはショックを隠せません。
なんせ、一人の女の子のモデルとしてのキャリアを潰してしまったから。
不可抗力、とは言い切れない、自分の落ち度。
無難に、なんとかこなせるスペックが、悪く作用してしまった見本のようです。
途中から南吉くんの編集者としてのお仕事物語なのか、新米編集者の目を通して見たローティーンモデル話なのか分からなくなりそうでしたが(笑)
全体的に非常に面白かった!
まだ未成熟な少女モデルがメインである、というのも、ありそうでなかなか無いですし。
それに、南吉くんが最後までピピンの空気にどっぷり浸からなかったのも、南吉くんのキャラだなーと笑ってしまいましたw
そこは絶対曲げないんだな、と(笑)
もちろん、大分この世界に関する見方は柔らかくはなっていますけどね。
先にもちらと書きましたが、特別ゲスト(?)として、『クローバー・レイン』の主人公・工藤も顔見せしていますね~。
同じ会社、だけでなく大学の先輩でもあるという結構な繋がり具合です。
『クローバー・レイン』の方でも何かしらの相互リンクはあるのでしょうか。
ちょっと記憶にないのですが。
今度確認してみたい事項です。
まだまだ南吉くんの「ピピン」での奮闘は続きそう。
なんといっても、仕事は2年目3年目の慣れた頃合に色々起きるものですから(苦笑)
もしくは、ピピモのトップモデルだったキヨラをメインにしたサイドストーリーなんかも面白そうw
ここからまだまだ色々な物語が生まれる余地があると思うのですが…どうでしょう。
大崎さんなら、いつかやってくれそうと勝手に期待します(笑)
***『クローバー・レイン』とのコラボ短編 ***
「花とリボン」が、ポプラ社のHPで掲載中です(こちら)
教えていただきましたw