2011.03.08(Tue)
もう誘拐なんてしない (2008/01) 東川 篤哉 |
ひょんなことからヤクザの娘を誘拐することになってしまった、大学生の翔太郎。
助っ人の力を借り、どうにかこうにか身代金を手にすることが出来たものの、翌朝、裏切りにより身代金は行方不明。
替わりに残っていたのは一人の男の死体・・・!
女子高生と大学生のドタバタ逃走劇が関門海峡を挟んで炸裂する青春ミステリ!
現在、絶賛東川作品読み倒し中です。
いっそこのまま全作品制覇してもいいかもしれない。。。
特にこの作品、好きーw
まずなんといっても表紙!
大好きな杉田比呂美さんなんですもんw
しかも、中身も可愛いんですよー。
このお話は、あらすじにも書いた大学生の翔太郎と、ヤクザの娘で女子高生の絵里香サイド(誘拐犯側)。
それから、絵里香の実家・花園組サイド(被害者側?)。
このネーミングのギャップが良いですよね。ヤクザなのに花園w
(取り立てて珍しいという捻りではないけど・・・)
花園組サイドのメインは絵里香の姉で家事手伝いの皐月さん。そして花園組の幹部たち。
それぞれの視点が交互に描かれるのですが、その際、文と文の間にイラストが挿入されています。
翔太郎・絵里香コンビはタコのイラスト。
皐月さんサイドは花(恐らく花園組にかけて)のイラスト。
これも杉田さんのイラストだと思われるのですが、とにかくタコのイラストが可愛いー!
しかし何故タコなのか。。。
最初、絵里香と出会った時、翔太郎が乗っていたのがたこ焼き屋さんのワゴンだったからかな?
とにかく、どこサイドのお話なのか見当がつきやすいし、イラストも可愛いしで満足w
そして個人的には花園組、大好きですw
やっぱり東川さん。ヤクザなのにどいつもこいつもアホばっかりw
そんな中、紅一点でありながら皐月さんのさばけ具合はかなり素敵。
組長でもある父親は妹の絵里香ばかりを猫っ可愛がりして。
普通はもうちょっと・・・こう色々ありそうですが、皐月さん、そんな中普通に父親と会話していますからね。
変に捻くれていないところが良いキャラしてる。
しかも、父親は父親で、娘の器で花園組は持っている、なんて言っちゃいますからね(笑)
この二人、不仲なようで実はかなりあけっぴろげ。
もう読んでいて楽しくて楽しくて!
章の間にタコさんイラストが挿入されると、「えー、もうちょっと読んでいたい!」って思ってしまいました(笑)
そんなわけでキャラクターは実に面白い、です。
が。
お話としては、ですね。
ミステリとしては、やっぱり誘拐が絡んでいるので、身代金の受け渡しとか。
そういったトリックはしっかりしていて、成る程なーって感じ、しました。
しかも実際にある舞台ですからね。
それを使い、ちゃんと無理のない(多分・・・)トリックになっているとは思います。
犯人は想像ついてしまいますが。
他にいないもんね(笑)
絵里香が自分を誘拐して欲しかった理由。
それは離れ離れになってしまった妹の手術費用が欲しかったため。
なのですが。
話の、かなり最初のうちから、結局その手術費用を捻出する必要はなくなってしまったことが読者に発覚してしまいます。
つまり、誘拐劇はまったく必要なし!
そして皐月の側でも、一件の殺人事件に遭遇します。
最後にそれらは一連の犯行・・・となるのですが。
その事件に行き着くための、偽札騒動。
一応偽札は身代金の受け渡しのトリックに使われた、わけだけど。
そもそも、それはこのトリックを想定して作られたわけじゃない。
犯人側としても、絵里香の誘拐劇はシナリオの外なわけで。
そうすると、偽札事件は偶然なのだとわかります。
分からないのは、何故印刷会社の社長を殺害したのか?
犯人と被害者の関係はどんなものだったのか?
その辺りのことは、一切触れられていません。
んー、どうリンクするのかと思ったんだけどなー。
この事件は蚊帳の外っぽい。
オチは意外でした。ワカメ怪人(笑)
だけど、最初の方で判明した、結局手術資金の必要がない、というすり合わせは最後まで行われなかったですね。
そして分かってはいたことだけど、翔太郎と絵里香の組み合わせより、皐月さんと山部の方が良いカップルに見えていた自分としてはちょっと残念。
でもお話としては文句無しに面白かった!
ちょっとしたドタバタ劇が読みたい時、オススメです。