2015.01.17(Sat)
繕い裁つ人(4) (KCデラックス Kiss) (2013/07/12) 池辺 葵 |
「時が経つと凪いでくる。忘れられるのね、人は」
親友の結婚式のためにウエディングドレスを仕立てることになった市江。
思い出されるのは洋裁店の初代であった祖母が母のために仕立てた一着のウエディングドレス。
着られることのなかった祝福の服に込めた想いとは。
そして、その祖母の服を飾る展示会が、百貨店で開かれることに。
今回は、市江さんと藤井さんのすれ違い巻だったなーと思います。
庄司さんとの結婚が決まり、少しずつ変わっていく牧さんを見ている市江さん。
その市江さんに、藤井さんは
「市江さんは誰にも 何ひとつ譲っちゃだめだと思いますよ」
「何かひとつでも失くしたら 南市江という仕立て屋ではいられなくなる」
と。
聞きようによっては“今”の市江さんを大絶賛しているようですが、私にはこれが呪いの言葉のように聞こえました。
祖母の仕立て屋を引き継いで模索していく最中の市江さん。
市江さんは確固とした意思を持っているように見えますが、どうしたって時代の変化というのはあります。
時代に、人に合わせて、市江さんのやり方は変わるはず。
そして市江さんも、そう思っているのではないかな。
そんな彼女に藤井さんが言った言葉は、彼女を縛るものでしかないような気がします。
だから、という訳ではないでしょうが、その後もちょくちょく、二人の間には見えない壁か河が存在しているようでした。
どうしても隔たりを感じる。。。
そこへいくと翔くんの直球は分かりやすくていいですねw
「ほっといても人って変わってくんじゃないんすか?」
「藤井さん 市江さんが変わっちゃやなの?」
とか(笑)
ずばっと言い、ずばーっと聞いてくれたw
多分、自分の知らないところで変わってしまうのがヤなのではないかなーと思うのですが。
どうでしょう。
そうは言っても、やはり市江さんは骨の髄まで仕立て屋なんですね。
子ども時分の出来事も、お祖母さんを貶されて睨んでいるのかと思いきや、闇夜に浮かぶドレスを見ていたとは。
それで
「私はものごころつく前から仕立て屋でしたから」
って。
「どんな顔で言ってんのかと思って」
て、思った藤井さんの気持ちがなんだかよく分かります。
この巻では牧さんがご結婚。
おめでとうございます~。
そして憎いのが巻末おまけ漫画。
前巻で離婚された、さつきさんのお話が。
あのワンピースは、さつきさんの希望で仕立てたものかしら。。。
洋服をオーダーするくらいに気持ちが回復したってことなのかな。
だとしたら嬉しいです。
やっぱり洋服によって、人は気分が変わるよなー。
元気な姿が見られてよかった。私まで嬉しくなってしまいます。
結婚、といえば、市江さんのお母さんとお祖母さんのエピソードも今回出てきました。
あの、明るくて朗らかな感じのお母さんが、まさかお父さんと駆け落ち染みたことをやっていたとは!
情熱的~。
生まれてすぐ、お祖母さんに引き取られて洋裁の技術を教え込まれたという市江さん。
その後のお話でも、ランドセルを背負った市江さんとお祖母さんの二人しか家にはいない様子が描かれています。
…ということは、実は市江さんとお母さんって、結構な年数一緒に暮らしていなかったのでは。。。
なかなか複雑な家庭環境で育っているんですね、市江さん。
お母さんとお祖母さんは色んなすれ違いを経てきたようですが、お祖母さんが作ったというウエディングドレスのエピソードが素敵。
「ウエディングドレスに刺した刺繍の数は 願った幸せの数だ」
なんか素敵ですね。
オーダーものだからこそ、なエピソード。
一刺し一刺し、着る人の為にかけた手間と技術。
「この執念のような熱だけはまだわからないでいる」
と語る市江さん。
牧さんのドレスに試行錯誤している姿はあれど、そういう執念のような熱、という感じではなかったな。
この熱を市江さんが感じるのはまだ先、ということでしょうか。
牧さんは結婚してしまったけど、若手デザイナーの翔くんが“定番”の洋服を作ろうとやる気になっています。
そしてなんだかそれに巻き込まれそうな市江さん。
更に有名(?)デザイナーのアラキさんと立原さん。
新キャラですが、同じ服飾に携わる者同士、なにかありそうなような…?
今月6巻が発売。しかも最終巻だとか!
最終巻を読む前に是非とも5巻の感想を書きたいと思います。