真紅のthinkingdays 誰が何と言おうと傑作認定~『ブギーナイツ』
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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

誰が何と言おうと傑作認定~『ブギーナイツ』

 こ・・これは凄い映画じゃないだろうか。”Boogie Nights”のピンクのネオン
サインに導かれて、すべるように車が走る。踊るように歩く人々、車から出て来た
のはバート・レイノルズジュリアン・ムーア。彼らが入ったディスコ、ダンス
フロアで踊っているのはドン・チードルジョン・C・ライリー!この冒頭シーン
のカッコよさ、これだけでも「役者は揃った」感があり、何度観てもウキウキ、
ワクワクさせてくれる。

 1977年、カリフォルニア州サン・フェルナンド・ヴァレー。エディマーク・
ウォールバーグ
)はポルノ映画監督ジャック(バート・レイノルズ)にスカウトさ
れ、イチモツの大きさだけでポルノ業界をのし上がってゆく。彼と、彼を巡る人々
とで形成された擬似ファミリーの栄光と挫折を描いた作品だ。
 主人公エディ=ダーク・ディグラーを演じるマーク・ウォールバーグは、以前
雑誌『Cut』で「最も過小評価されている俳優」に選ばれていただけに(笑)、
主人公にしては印象が薄く、カリスマ性も感じられない。しかしだからこそポルノ
俳優独特の「安っぽさ」みたいなものを体現できていたと思う。レオ・ディカプリオ
と彼がこの役を争っていたらしいが、レオが演じたらもうちょっと芸術っぽくなっ
ていたかもしれない。脇を固めるバート・レイノルズ、ジュリアン・ムーアらも、
オスカーノミネートも納得の存在感だし、ヘザー・グラハムも、かわいらしさと
痛々しさが同居する「ローラーガール」役にとてもマッチしている。そしてなんと
言ってもフィリップ・シーモア・ホフマン。彼がまたやってくれてます。キレる
ダークを見つめる「ああ~!ど、どうすればいいの?ボクちん・・的な演技は、
もう観てるこっちまで身悶えしそうなくらいうまい、うますぎる。それでいて、
存在が全然過剰じゃないのが、この人の凄いところなんだよね。

 栄光の70年代を走り抜け、80年代を迎えるニューイヤー・パーティを境に、彼ら
の運命は暗転する。ドラッグに溺れ、ファミリーを飛び出し、堕ちるところまで堕
ちてゆくダーク。結局彼はファミリーの元に帰るしか道はなく、父であるジャック
に許しを乞い、母であるアンバー(ジュリアン・ムーア)の膝で泣く。この後に続
ファミリーのリユニオンを表すシーンで流れる”God only knows”。『ラブ・ア
クチュアリー』のラストでも流れていたこの曲、聴いているだけで胸にこみ上げて
くるものがある。本当に名曲だと思うし、ここでこの曲を持ってくるセンスにはや
られた。もちろん、音楽は全編カッコイイ!「俺のベスト」にノリノリのアルフレッド
・モリーナ
の気持ちもよ~くわかる(音楽担当のマイケル・ペンは、ショーン・ペン
の実兄なのだそうだ)。

 監督のポール・トーマス・アンダーソンは、26歳の若さでこの作品を撮ったのだ
という。長回しが多く、素人のハンディカムみたいに鈍くさく感じる箇所もなくは
ないけれど、観ている自分もそこにいるかのように感じられるカメラだった。
マグノリア』がいまひとつ好きになれず、彼の他の作品は観ていなかったのだが、
まさに素晴らしい才能、素晴らしい作品だ。これは『マグノリア』も再見すべきか
もしれない。

(『ブギーナイツ』監督:ポール・トーマス・アンダーソン
  主演:マーク・ウォールバーグ、バート・レイノルズ、ジュリアン・ムーア/1997・USA)
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2006-08-24 : BD/DVD/WOWOW/Streaming : コメント : 11 : トラックバック : 3
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ブギーナイツ ある擬似家族の群像劇
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2006-09-12 00:32 : BLOG IN PREPARATION
★「ブギーナイツ」、70年代擬似家族の変遷★
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2006-09-14 12:13 : ★☆カゴメのシネマ洞☆★
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ブギーナイツBOOGIE NIGHTS/監督:ポール・トーマス・アンダーソン/1997年/アメリカ 70年代の終わり、ひとりの超巨根ポルノ男優が誕生した。 70年代が好きです。このころに作られた映画はめちゃめちゃで面白いし、このころのファッションなんかもすごく好きなんです
2011-07-28 12:05 : 映画感想 * FRAGILE
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いや~ん、あの、フィリップ・シーモア・ホフマンのプール・サイドで肘を抱えているあのしぐさがもー、可笑しくて可笑しくて!!! 

ディカプリオって童顔だから、彼がやったらチャイルド・ポルノになっちゃいますよ。

リンクしときますね。
2006-08-24 21:42 : チュチュ姫 URL : 編集
チュチュ姫さま、コメントありがとうございます。
リンクもありがとうございました。お手数かけます。
エロサイトじゃないのにTBもコメントもできないって、、悲し過ぎる(泣)

私もあの場面はキレまくっているダークより、スコッティに釘付け&爆笑でした。
PSHサイコー。

また遊びに来て下さいね。こちらからもご連絡します。ではでは、ありがとうございました。
2006-08-24 21:56 : 真紅 URL : 編集
こちらもTBしたんですけど、反映されてないみたいですね。もう一回してみます。
2006-08-24 23:38 : チュチュ姫 URL : 編集
真紅さん、こんにちは。
いや~ん、今度は『ブギーナイツ』だなんて!
PTA監督、わたしの尊敬する人リストに入っています。だって26歳でこんな映画を撮るんですからね!自分が26歳の頃は・・・何やってたんでしょう、思い出せません・・・。
そしてこれまた素晴らしい豪華キャストでしたね。PTA監督はお気に入りの俳優を家族のように思っているそうですが、この映画の‘擬似家族’のようなつながり、必ずしも前向きではないけれど、でもすごく好きでした。そしてラストのささやかな幸福感。ああまた観たいです。
そしてそして真紅さん、『マグノリア』再見されたらぜひ感想を記事にしてください、お願いいたします!わたしは大好きなんです『マグノリア』。通算24時間以上は絶対観てます~。いばることではありませんが。
それではこの辺で。
2006-08-24 23:46 : かいろ URL : 編集
チュチュ姫さん、かいろさん、コメントありがとうございます。お返事まとめさせて下さい~。

☆チュチュ姫さん
 再びありがとうございます。最近、TBがうまく届かなくてガッカリ、ってことが多いです。復旧したらガンガン送りますね!
お手数かけます、ありがとうございました。

☆かいろさん
 ホント、こんな映画撮るのに名前がPTAってところがまた凄いですね(笑)。
冗談はさておき。『マグノリア』、観た後の気分は「暗い!」「長い!」体調が悪かったのかもしれません(汗)。
トム・クルーズとかPSHとかジョン・C・ライリーとか、クイズ番組とか、もちろんラストの蛙とか、それぞれのエピソードはそれなりに印象には残ってるのですが。。
『ブギーナイツ』を先に観ていたら、感想もまた違っていたのかもしれませんね。これにはヤラレました。
しかしあの長い映画を8回以上観ているとは!凄い!PTAが喜びますよ。
『マグノリア』再見する前に『パンチドランク・ラブ』観てみますね。これは短そうだし(そういう問題か)。
また覗いてみて下さいね。いつもありがとう。ではでは。。
2006-08-25 00:10 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、コメント&TBありがとうございました。

この作品は、脚本もカメラもキャスティングもなにも素晴らしかったですね。あと、『マグノリア』も素晴らしい作品だと思います。機会があったら、是非またご覧になってください。
2006-09-12 00:34 : Ken-U URL : 編集
Ken-Uさま、初めまして。拙ブログへようこそ!コメント&TBありがとうございます。
これにはヤラレました。「この映画が大好きだ~」って叫びたい気分で、Ken-Uさまのお宅にも押し掛けてしまいました。
『マグノリア』も再見せねばなりませんね・・。
また遊びにいらして下さい。ありがとうございました。
2006-09-12 10:13 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、TB、感謝です♪

あれ? なんだ、「マグノリア」はもう観てらっしゃるのですね?
うーん、「マグノリア」は「ブギーナイツ」の発展拡大版の様に感じていたので、
「マグノリア」がお嫌いというのが今一飲み込めない(笑)。
この映画で一番のお好み俳優は、
やっぱりヘザー・グラハムですね。
もう抱き締めて上げたい位に可愛い(苦笑)。
ウォールバーグに関しては、
まぁあれくらいの力量で丁度宜しいかと(笑)。
2006-09-14 12:19 : カゴメ URL : 編集
カゴメさま、こちらにもコメント&TBありがとうございます!
すみません、『マグノリア』再見しますんで許して下さい(笑)。
ヘザー・グラハム、ヒース・レジャーのモトカノですね(嫉妬)。彼女が『ツイン・ピークス』に出ていたとは、全然忘れてました。
確かにかわいい・・。私もジュリアン・ムーアになって抱きしめてあげたかったです(笑)。
ではでは、またカゴメさま宅にも伺いますね~。ありがとうございました。
2006-09-14 13:57 : 真紅 URL : 編集
作品中でオーバーオースになった女性のシーンが 今考えると 皮肉に感じます
 また フィリップがらみになりましたね。
今 「ブギーナイツ」ツタヤでDVDでレンタルで見ました。

 この作品で コカインパーティでオーバードースで 女性がブッ倒れるシーンがありますが 後にフィリップ自身がオーバードースで死ぬとは なんだか皮肉に感じました。

 いっしょに共演した アンダーソン監督やバートレイノルズ、ウォルバーグ ジュリアンムーア たちはビックリしたことでしょうに・・・ たぶん 彼らは フィリップの葬儀に参列したんじゃないかな?在りし日のフィリップをしのんで

2014-02-19 01:40 : zebra URL : 編集
zebraさん、おはようございます。コメントありがとうございます。
この映画、PSHのベストアクトだと思います。
きっと繊細過ぎるほど繊細な人だったのでしょうね。
しかし、この記事8年も前ですね。懐かしいです。
今も、サントラは時々聴いています。
2014-02-22 07:22 : 真紅 URL : 編集
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