大阪で生まれた男~『戸村飯店青春100連発』
大阪の下町。小さな中華料理屋、戸村飯店には一つ違いの兄弟がいた。クール
な兄ヘイスケと、いちびりの弟、コウスケ。外見も性格も正反対の二人は、高校
を卒業したヘイスケが東京の専門学校に進学し、離れ離れになったが・・・。
現代が舞台の物語なのに、メールもケータイも出てこない、どこか昭和の香り
がするバリバリの青春小説。作者は瀬尾まいこさん。第24回坪田譲治文学賞を
受賞したのも納得。
実は作者が吉川英治文学新人賞を受賞した『幸福な食卓』は、自分としては
いまいちピンと来なかった。だから「瀬尾まいこ」という名前は、私の「読みたい
作家リスト」には入っていなかった。しかし、本好きのブロガーさん何人かがこの
作品を昨年のベストに挙げていらっしゃたので、手に取ってみる。
ブログをやっていて本当にうれしいと思うのは、こういう時。自分には縁がない
と思っていた作品が最高に面白かったのだから。。感謝、感謝です。
大阪出身らしい作者の、柔らかな関西弁が心地良い。大阪では「ボン」と呼ば
れ、異端だったヘイスケが関西弁をしゃべるだけで東京でウケてしまう、というの
がリアル。大阪を礼賛しているわけでも、東京を持ち上げているわけでもなく、ど
ちらにもそれぞれよいところがある、という当たり前のことが素直に表現されてい
る。ただ、心から懐かしく思える「Home」がある人間は幸せやね。
季節のうつろいを、自然かつ的確に表現している文章が好きだった。夏の夕暮
れの空とか。
カナ表記のヘイスケとコウスケ。平行な、交わらない二人。でもそれはネガティ
ブな意味ではなくて、どこまでも並行して生きていく、という意味なのだろう。
戸村飯店の、¥680のA定食が食べてみたい。オススメ。
(『戸村飯店青春100連発』瀬尾まいこ・著/理論社・2008)
- 関連記事
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- 二倍の幸せ~『スクスクの掟』 (2009/01/29)
trackback
装丁はタカハシデザイン室。装画は小池アミイゴ。第一章加筆訂正以降書き下ろし。
大阪の下町、戸村飯店の兄弟は外見も性格も正反対で不仲...
2009-02-03 09:35 :
粋な提案
{/book/}「戸村飯店 青春100連発」 瀬尾まいこ
タイトルからすでに楽しそうな雰囲気が漂っています。
「幸福な食卓」や「温室デイズ」も良かったけれど、この小説はかなり実際にありそうな題材だったのですーっと気持ちが入っていけたし、相変わらず瀬尾さんの温かい目...
2009-02-03 16:05 :
ミチの雑記帳
戸村飯店 青春100連発 著 瀬尾まいこ
「戸村飯店」は大阪の下町にある中華料理店。
そこには性格の違う2人の息子、
...
2009-02-04 12:15 :
ちょっとお話
戸村飯店青春100連発
瀬尾 まいこ
JUGEMテーマ:読書
戸村飯店は、大阪の下町にある中華料理店。ハンサムで女の子にもてる兄と、アホなギャグを連発する1歳違いの弟をめぐる物語。兄は東京の専門学校に行き、弟は店を継ぐと決めるのだが、戸村兄弟の進路も恋も迷走
2009-02-04 14:09 :
ナナメモ
コメントの投稿
こんにちは。
最高に面白かったとのことで、よかったです。
この作品、第24回坪田譲治文学賞を受賞されたのですね。
そういえばヘイスケとコウスケ、繋げてみると平行になりますね。
こんなふうに、並行した生き方でありながらも、ずっと仲良くして暮らしていってくれそうで、こういう関係っていいなと思います。
最高に面白かったとのことで、よかったです。
この作品、第24回坪田譲治文学賞を受賞されたのですね。
そういえばヘイスケとコウスケ、繋げてみると平行になりますね。
こんなふうに、並行した生き方でありながらも、ずっと仲良くして暮らしていってくれそうで、こういう関係っていいなと思います。
こんにちは♪
関西弁がやさしく響く文章でした。
帰る家(HOME)を持ってることの幸せ、待ってる人がいてくれる幸せをつくづく感じました。
私の中ではいちおう瀬尾まいこさんは要チェック作家さんなんです。
全ての作品に満足~ってわけでもないのだけど、なんだか目が離せないみたい。
関西弁がやさしく響く文章でした。
帰る家(HOME)を持ってることの幸せ、待ってる人がいてくれる幸せをつくづく感じました。
私の中ではいちおう瀬尾まいこさんは要チェック作家さんなんです。
全ての作品に満足~ってわけでもないのだけど、なんだか目が離せないみたい。
藍色さま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
瀬尾さんって学校の先生をされてるのですね。
生徒さんたちが読んでも、絶対気に入りそう、と思いました。
男同士の兄弟の気持ちはわからないですが、きっとこんな感じなんだろうな~、と思います。
またお伺いしますね、ではでは。
瀬尾さんって学校の先生をされてるのですね。
生徒さんたちが読んでも、絶対気に入りそう、と思いました。
男同士の兄弟の気持ちはわからないですが、きっとこんな感じなんだろうな~、と思います。
またお伺いしますね、ではでは。
ミチさま、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます。
いいですよね~、帰れる場所があるって・・。待っていてくれる人がいて。
瀬尾さん、こんなに面白かったんだー!と、眼からウロコでした。
ちょっとこれからは要チェックですね。直木賞も近いかも??
ではでは、またです~。
いいですよね~、帰れる場所があるって・・。待っていてくれる人がいて。
瀬尾さん、こんなに面白かったんだー!と、眼からウロコでした。
ちょっとこれからは要チェックですね。直木賞も近いかも??
ではでは、またです~。
お邪魔します~~
<大阪を礼賛しているわけでも、東京を持ち上げているわけでもなく、どちらにもそれぞれよいところがある>そうですよね。そういう描き方をしているからこそ、素直に楽しめたのだと思います。合わないな~~という作者さんでも作品によってはいいかも★ってありますよね。
<戸村飯店の、¥680のA定食>おいしそうですよね。お昼時なのでおなかすいてきました・・・笑
<大阪を礼賛しているわけでも、東京を持ち上げているわけでもなく、どちらにもそれぞれよいところがある>そうですよね。そういう描き方をしているからこそ、素直に楽しめたのだと思います。合わないな~~という作者さんでも作品によってはいいかも★ってありますよね。
<戸村飯店の、¥680のA定食>おいしそうですよね。お昼時なのでおなかすいてきました・・・笑
2009-02-04 12:14 :
みみこ URL :
編集
こんにちは。
ヘイスケとコウスケ、平行なんですね。
兄弟だから交わることなくても
ずっといつまでも一緒に歩んでいくんでしょうね。
ヘイスケとコウスケ、平行なんですね。
兄弟だから交わることなくても
ずっといつまでも一緒に歩んでいくんでしょうね。
みみこさま、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます。
瀬尾さんって先生という職業柄か、「清く正しい」作風なのかな、と思いました。
生徒さんが読んでも大丈夫な感じで。
¥680の定食って、なかなかないですよね。
でも頑固親父のいる店は、私も苦手です(笑)。
ではでは、またです~。
瀬尾さんって先生という職業柄か、「清く正しい」作風なのかな、と思いました。
生徒さんが読んでも大丈夫な感じで。
¥680の定食って、なかなかないですよね。
でも頑固親父のいる店は、私も苦手です(笑)。
ではでは、またです~。
ななさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
兄弟の名前が何故カナ表記なのかな、って疑問に思ったのですよ。
きっと、何か意味を持たせているのだろうな、と。。
コウスケは大学卒業後、大阪に帰るのか?
続編が読みたいな~、と思った作品でした!
ではでは、またです~。
兄弟の名前が何故カナ表記なのかな、って疑問に思ったのですよ。
きっと、何か意味を持たせているのだろうな、と。。
コウスケは大学卒業後、大阪に帰るのか?
続編が読みたいな~、と思った作品でした!
ではでは、またです~。