真紅のthinkingdays 転がり続ける~『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム』
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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

転がり続ける~『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム』

ノー・ディレクション・ホーム


 NO DIRECTION HOME: BOB DYLAN


「ユダ!」 「信じないぞ、嘘つきめ」

 マーティン・スコセッシ監督による、ボブ・ディランの音楽ドキュメンタリー。
生い立ちからデビュー、1966年のヨーロッパ・ツアーまで、「生ける伝説」初期
の映像
ケネディ、冷戦、公民権運動、ベトナム反戦運動に至る当時の記録映像
そしてディラン本人と友人たちへの膨大なインタビューで構成されている。
DVDは二枚組み、3時間半一気に見せる力を湛えた作品。元々はテレビ番組
して放映されたもので、製作にはNHKも関わっている。

 私はフォーク世代でもディランのファンでもなく、『風に吹かれて』『ライク・ア・
ローリングストーン』
などの代表曲を聴いたことがある程度。実は彼がアメリカ人
であることさえ知らなかった。『アイム・ノット・ゼア』を観る前に、この世界的アー
ティスト
に触れておきたい気持ちから鑑賞。ちなみに作品タイトルの『ノー・ディレ
クション・ホーム』
とは、『ライク・ア・ローリングストーン』歌詞の一節から採られ
ている。

ノー・ディレクション・ホーム2

 まず、若い頃のディランの中性的な美しさに驚く。『アイム・ノット・ゼア』では
女性であるケイト・ブランシェットがディランを演じると聞いて耳を疑ったけれど、
この映像を観れば誰もがそのキャスティングに納得するだろう。60年代の
ニューヨーク
が舞台の『ファクトリー・ガール』ではヘイデン・クリステンセン
ディランらしき人物を演じているらしく、これものキャスティングだと思って
いた。しかしディランの「三白眼」を見て、なんとなく納得

「違う両親の元に生まれた」と感じ、「家を探しに」今もをしているようだと語る
ディラン。彼の詩は「聖書の預言」だと言われ、まさしく現代の吟遊詩人であるが、
その姿は哲学者のようにも、求道者のようにも見える。声を変え、姿を変え、その
生き方は一定の姿かたちに留まることはない。
まさに『アイム・ノット・ゼア』
体現している。

「愚かでなければ恋などしない」 「やさしさが時には人を殺すこともある」

 様々なディランを巡るインタビューの中で、公私共にパートナーであったジョー
ン・バエズ
の言葉が一番印象的だった。「貧者や弱者の気持ちがわかっていて
プロテストソングは作るけれど、デモや座り込みには決して行かない。中心的
存在になりたがらない複雑な人」


ノー・ディレクション・ホーム3

 60年代の記録映像では、ジェームズ・ボールドウィンもう一つの国)が映し
出されて驚いた。ジョニー・キャッシュウォーク・ザ・ライン)は映画で彼を
熱演したホアキンよりもイイ男! 一人の人物にフォーカスしたドキュメンタリー
と言えば、その人物を礼賛する余り逆に真実が見えてこない、もどかしさの残る
作品
もある。しかし本作は、記録映像とインタビュー、ライヴ映像の絶妙なバラ
ンス
により、60年代という激動の時代に生まれるべくして生まれた稀代のアー
ティスト
魅力と時代性が十二分に伝わってくる。そして60年代以降のディラン
の姿
も見てみたいと思わせる、優れたドキュメンタリーフィルムと成り得ている
のではないだろうか。

 (『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム』/2005・英、米、日本/
         監督・製作兼:マーティン・スコセッシ/出演:ボブ・ディラン
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ジャンル : 映画

2008-05-08 : BD/DVD/WOWOW/Streaming : コメント : 8 : トラックバック : 4
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マーティン・スコセッシ「ノー・ディレクション・ホーム」
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2008-05-09 04:45 : Mani_Mani
独断的映画感想文:ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム
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2008-05-10 09:04 : なんか飲みたい
ノー・ディレクション・ホーム
2005年 アメリカ 2005年12月23日公開 原題:BOB DYLAN NO
2008-05-10 17:48 : 銀の森のゴブリン
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真紅さま
こちらこそお久しぶりです。
『アイム・ノット・ゼア』は、コンセプトは面白かったのですが、それ以上ではなかったですかね。ベン・ウィショーとマーカス・カール・フランクリンのパートは面白かったのですが、あとはちょっと……でした。やっぱり本物の持つパワーには負けてしまうんですね。
2008-05-08 19:35 : umikarahajimaru URL : 編集
umikarahajimaruさま、こんにちは! コメントありがとうございます。
すっかりご無沙汰しておりました。
『アイム・ノット・ゼア』すごく楽しみにしていて、粗筋もどなたのレビューも読んでないんです!
6人の俳優がディランを演じる、というアイデアだけでも興味を惹かれますよね~。
近々、絶対に観たいと思っています。またいろいろと教えて下さいね。
ではでは~。
2008-05-09 08:52 : 真紅 URL : 編集
DVD持ってます。
他にもドキュメンタリーはありますが、これが入門編でしょうね。
私は幾つか既に知ってる話が、実際に映像で流されたり、本人や関係者の口から語られる事に、一々おおお~!となってました。
「アイム-」もGW中に見てきましたよ。これから観る予定ならば、感想は書かないでおきます。
2008-05-10 01:00 : garagie URL : 編集
真紅さん こんにちは。 コメントありがとうございます。
なるほど、やはり「アイム・ノット・ゼア」との関連でご覧になったのですね。
この映画はディラン本人、多数登場するミュージシャンや文化人、そして60年代という変動の時代そのもの、様々な関心から楽しめるドキュメンタリーになっていますね。3時間半があっという間でした。
僕はこの時代のディランが一番好きなのですが、真紅さんがディランの音楽性や曲をどう感じたかぜひ知りたいですね。
2008-05-10 18:01 : ゴブリン URL : 編集
garagieさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
音楽に造詣が深くていらっしゃるのですね、私は本当に初心者なのですが、それでも素晴らしい作品だったと思いました。
音楽好きな方なら、持っていたいと思われるDVDかもしれないですね。
或いはディランと同時代に生きたファンの方とか。

『アイム・ノット・ゼア』観てきました!
本作で語られているエピソード(斧でケーブルに切りかかった、とか)が映像化されていましたし、クリベーさんのパートでは本作の形を模した作りになっていて、やはり観ておいてよかったと思いました。
また感想をアップしますので、よろしければ覗いてみて下さい。
ではでは~。
2008-05-11 11:17 : 真紅 URL : 編集
ゴブリンさま、こんにちは。こちらこそコメントとTBをありがとうございます。
そうなんです、あまりにもディランを知らないので、『アイム・ノット・ゼア』をこのまま観たら置いていかれそうな気がしたんです。
『アイム~』は独創的で自由な作品でした。DVDになりましたら是非ご覧下さいね。
スコセッシも、この時代のディランを一番魅力的に思っているのではないでしょうか?
だから初期のドキュメンタリーになっているんじゃないかなと思いました。
ディランの音楽を語る言葉を私は持っていないのですが、カッコイイ人だな~と思いましたよ。
ビジュアルもそうですが、「ユダ!」って言われても「デカイ音でやろうぜ!」とか。
全方位的にトンガっていた人なんだな~と思いました。
だからあそこまで「伝説的」な存在であり、多大な影響力を持った音楽を創り得たのだと思います。
またいろいろ教えて下さい。ではでは~。
2008-05-11 11:18 : 真紅 URL : 編集
コメント有り難うございました
真紅様

コメント有り難うございました.TBが入らなかった由,申し訳なかったです.

このドキュメンタリーは,自分が同時代を過ごしたディランを再発見する旅のようにして見ました.
音楽ドキュメンタリーでのスコセッシの腕は,確かなものだと思います.
お勧めの「アイム・ノット・ゼア」も是非見たいと思います.
2008-05-16 23:21 : ほんやら堂 URL : 編集
ほんやら堂さま、こんにちは~。こちらこそコメントとTBをありがとうございます。
TBは、今ココログさん全般的にNGなのです、残念です。
このドキュメンタリーは、ディランと同時代を過ごした方には感慨深いものがあると思います。
『アイム・ノット・ゼア』を観て「スコセッシが悔しがっていると思う」とコメントされている方がおられました。
素晴らしい映画でした、是非ご覧下さいね!
ではでは、またです~。
2008-05-17 13:17 : 真紅 URL : 編集
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