真紅のthinkingdays 愛と死~『アフター・ウェディング』
FC2ブログ
映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

愛と死~『アフター・ウェディング』

アフター・ウェディング


 EFTER BRYLLUPPET


 インドストリート・チルドレンの救援活動に携わるヤコブ(マッツ・ミケルセン)
元に、故郷デンマークの富豪ヨルゲン(ロルフ・ラッセゴード)から資金援助が打診
される。但し、ヤコブがコペンハーゲンまで来て交渉することが援助の条件だとい
う。20年ぶりに帰国したヤコブはヨルゲンと会うが、話し合いもそこそこに週末行わ
れるヨルゲンの愛娘アナ(スティーネ・フィッシャー・クリステンセン)結婚式
招待される。アフター・ウェディング、結婚式の後に、ヤコブを待ち受けていたもの
とは?

ある愛の風景に続いてスザンネ・ビア監督作品を鑑賞。その前にDVDで観たしあ
わせな孤独
と、どの作品も例外なく家族について、彼らを巡る一筋縄ではいかない
愛についての物語
である。

アフター・ウェディング2

 20年間音信不通であっても、ヤコブは元恋人のヘレネ(シセ・バベット・クヌッセン)
の指の感触を、片時も忘れたことはなかったのだろう。偶然にしては、出来過ぎて
いる・・・。
ヨルゲンは知っているのか? 彼は一体、何が目的なのか。混乱する
ヤコブ
に対し、私たちは物語のからくりにうっすらと気付きながらも、この複雑な
人間関係の落とし所
を探ろうとする。

 若い頃にはわからなかったけれど、10年、20年なんて過ぎてしまえば実感として
はあっという間だ。身を置く環境や状況、肩書きは変わっても、心の中のある部分
は全く変わらないままに月日は過ぎて行く。


 20年間、よき夫、よき父であり続けたヨルゲンにも、心の葛藤はあっただろう。
命の期限を知ったとき、最愛の家族に最善の道を残すことができた彼は、幸せだ
ったんじゃないだろうか。対して20年間追憶の中で生きていたヤコブは、20年分
の葛藤
を一気に背負うことになる。

 ヨルゲンは知っていたのだろう。アナの結婚が遠からず破綻するであろうことも、
ヘレネがヤコブに思いを残していることも。幼い息子たちのジッパーを、ヤコブが
上手に直してやれることも

「家族」とは、「血」で繋がった人間だけで作られるものではない。自分の為だけでな
く、相手のために生きようという思いが芽生えたとき、初めて人は家族を手にする。
死は終わりではない、死は全てを奪うわけでもない。愛は必ず、与えた相手の心に
残るものだ。

「何故言ってくれないの?」アナが父ヨルゲンの秘密を知ったとき、何も言わずに去ろ
うとした父にこう言う。ある愛の風景でも、サラはミカエルに話して欲しいと言う。
生きたくても生きられない者、苦しみを抱えて生き続けなければならない者。ここ
にも人生の矛盾があり、支える家族がいる。

アフター・ウェディング3

『アフター・ウェディング』監督・原案:スザンネ・ビア
  主演:マッツ・ミケルセン、ロルフ・ラッセゴード、シセ・バベット・クヌッセン
                      /2006・デンマーク、スウェーデン)
関連記事

テーマ : ★おすすめ映画★
ジャンル : 映画

2008-01-16 : 映画 : コメント : 14 : トラックバック : 11
Pagetop
英雄になれなかった男~『ジェシー・ジェームズの暗殺』 «  ホーム  » 久々バトン~イメージバトン
trackback

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
アフター・ウェディング
 『愛は、死なない。 命の終わる日を知った時、 大切な人に残したいものがある。』  コチラの「アフター・ウェディング」は、\"デンマークが生んだ恐るべき才能\"スザンネ・ビア監督が\"日常に潜む運命に絡めとられていく男と女の究極の愛のカタチ\"を描いた10/27公
2008-01-16 20:51 : ☆彡映画鑑賞日記☆彡
#162.アフター・ウェディング
心に沁みる物語だ。人が生きる上で、一番向き合わなければいけないことを、静かに、だが確実に、どっしりと響くように描いている。
2008-01-16 21:07 : レザボアCATs
「アフター・ウエディング」
「Efter brylluppet」...aka「After the Wedding」2006 デンマーク/スウェーデン デンマーク発、感動の親子愛ファミリー・ドラマ。 主演ヤコブには「しあわせな孤独/2002」のマッツ・ミケルセン。彼の元恋人へレネにシセ・バベット・クヌッセン。ヘレネの夫ヨルゲン
2008-01-16 22:06 : ヨーロッパ映画を観よう!
『アフター・ウェディング』  Efter Brylluppet
ドラマティックな展開、人間の複雑な感情、繊細な表現力と深遠なるテーマが心に沁みゆく。 インドで孤児たちの援助活動に従事するヤコブは、寄付金を申し出た実業家ヨルゲンに会うため久しぶりに故郷デンマークへ赴く。『しあわせな孤独』のスサンネ・ビア監督の作品が...
2008-01-17 01:14 : かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
アフター・ウェディング 
アフター・ウェディング  (2006 デンマーク・スウェーディン) EFTER BRYLLUPPET AFTER THE WEDDING 監督: スザンネ・ビア 製作: シ...
2008-01-17 10:30 : ちょっとお話
『アフター・ウェディング』~冠婚葬祭シネマ~
『アフター・ウェディング』公式サイト 監督:スサンネ・ビア出演:マッツ・ミケルセン ロルフ・ラッセゴード シセ・バベット・クヌッセンほか 【あらすじ】(goo映画より)? インドで孤児たちの援助に日々奔走するヤコブは、母国デンマークの実業家ヨルゲンから多....
2008-01-19 01:45 : Swing des Spoutniks
真・映画日記『アフター・ウェディング』
JUGEMテーマ:映画 11月12日(月)◆622日目◆ 終業後、有楽町駅前に新しく出来た「シネカノン有楽町2丁目」へ。 ここは2つスクリーンがあり、この日は小さい方に。 5、60人しか入れないスペースでまさしくミニシアターである。 午後7時くらいからデンマーク...
2008-03-30 04:37 :           
アフター・ウェディング
2007年の,アカデミー外国語作品賞にノミネートされた,スザンネ・ビア監督作品。しあわせな孤独・ある愛の風景と彼女の作品を観てきたけど,私はこれが一番好きかな。他の2作品では深い余韻は残っても,泣くまではいかなかったのに,この作品では,途中何度も涙がこ...
2008-12-21 21:55 : 虎猫の気まぐれシネマ日記
「アフター・ウェディング」
やはりこの監督さんの作品には余韻が残ります・・
2009-01-12 09:49 : 心の栄養♪映画と英語のジョーク
アフターウエディング/EFTER BRYLLUPPET/AFTER THE WEDDING
先日鑑賞したばかりのデンマークの映画スサンネ・ビア監督作品です《ある愛の風景》に感じた事を、この作品でも感じる事となりました
2009-04-24 20:47 : Musica di Maria
『アフター・ウェディング』 2006年・デンマーク/スウェーデン
『アフター・ウェディング』を観ましたデンマークの女性監督、スサンネ・ビア監督が、家族の大切さをリアリティあふれるタッチで描いて2007年のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたラブストーリーです>>『アフター・ウェディング』関連原題:EFTERBRYLLUPPET  ...
2010-01-28 22:58 : おきらく楽天 映画生活
Pagetop
コメントの投稿
非公開コメント

真紅さま、こんばんは!
このTOP画像、真紅さまのイメージ通りで、とっても素敵ですね。静かなんだけれど、とても情熱的なイメージです。

真紅さまは、スザンネ・ビア監督の作品を、順番通りにご覧になったのですね!
私の場合は全く逆で、この作品から遡って見てしまいました。
私にはそのせいか、この作品が一番完成度や成熟度が高いように思ってしまいました。
人間て、死や大きな出来事、大事件、そうした物事に向き合って初めて、自分の弱さを感じ、価値観が揺らぐように思います。
この監督には、本当の意味で自分にとって何が大事なのか、そうしたことを再発見する、真摯な目線が見て取れて、とても感慨深い気持ちになります。
2008-01-16 21:17 : とらねこ URL : 編集
真紅さん、こんばんは。
このテーマにはとてもうなってしまいました。
普通に血縁の家族を描いた映画って山ほどあるけれど、こういう切り口、こういう関係性はえらく新鮮でした。
劇場に貼ってあった記事に、「隣人愛」という言葉が使われていて、とてもしっくりきました。
マッツもステキでしたしー♪
2008-01-17 01:21 : かえる URL : 編集
お邪魔します~
どの部分に重きを置いて考えるかで
色々な感想がとびかう作品ですよね。
ドラマチックすぎる展開ではあるものの、
そこに少しの違和感も感じなかったのは
細かい部分の演出が光っていて
見応えがあったからかな・・・・・。
新作もあるのですね。わ~~楽しみです。
行けるといいな・・・♪
そうそう、ヨルゲンさんの秘密・・・予告ではバレバレで・・笑。ちょっといただけないな・・・・と
思ったものです。
2008-01-17 10:21 : みみこ URL : 編集
真紅さんメッセージとTBありがとうございました。みなさん、とても感動されたコメントばかりなので、メッセージだけにしておきますね(笑)
私は抉った映画の方が性に合ってるみたい。
最近、ハネケの日本未公開の初期作品を観ているの。こんなテイスト、突き詰め方がいいなって、ルンルンで(ハネケにルンルンはおかしいけどね)みています。
2008-01-17 13:22 : シュエット URL : 編集
とらねこさま、こんにちは~。コメント&TBをありがとうございます。
「静かだけれど、とても情熱的」きゃ~♪ そんなそんな~照れます~。
実際は、すごくうるさい女かもしれません・・・。フフフ。
でも、ありがとうございますね。

さて。スザンネ・ビア監督作品、順に観ましたが「ズシン、ドッカーン、ミシミシ・・」という感じです。
『ある愛の風景』が、一番インパクトは大きかったです。
でも、どの作品も考えさせられますね。
絵空事でなく、日常に潜む、紙一重で直面することになる衝撃を描いているからこそだと思います。
そういうとき、人はどういう行動をとり、どう生きるべきなのか・・・。
最後に希望を描いてくれるところも素晴らしいですね。
ではでは、またお伺いします!
2008-01-17 13:28 : 真紅 URL : 編集
かえるさま、こんにちは~。コメント&TBをありがとうございます。
「隣人愛」ですか・・。考えてみれば、この映画悪人が一人も出てきませんよね。
みんな、いい人で互いを思いやって・・・。それが「隣人愛」なのかも。
日焼けしたマッツ、素敵でしたね。背が高いな~、と思いました。素敵な後ろ姿でした♪
『カジノ』は観てない私なのですが・・・。
ではでは、またお伺いしますね~。
2008-01-17 13:34 : 真紅 URL : 編集
みみこさま、こんにちは~。コメント&TBをありがとうございます。
確かに、ドラマチックではありますね。ヨルゲンさんも、あり得ないほどお金持ちだし。。
アカデミー賞にノミネートされた、というのは最初知らなかったのですが、国際的にも評価が高いのですね。
物凄く厳しい視線で描く部分もあれば繊細な表現もあり、とても見応えがある演出だと思います。
予告とかフライヤーとか、ネタバレバレの時ありますよね。困ったものです。。
新作、どんな感じでしょうね? きっとまた大阪は公開が数ヶ月遅れると思いますが・・・。
またお話できるとうれしいです。ではでは~。
2008-01-17 13:41 : 真紅 URL : 編集
シュエットさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
感想は十人十色ですから、どんな意見も歓迎ですよ。
ハネケさんですか。。ハネケにルンルン、いいですね~(笑)。興味深いです~。
私も『ファニーゲーム』を観たくて探しているのですが、見つからなくてホッとしています(爆)。
またいろいろ教えて下さいね!ではでは~。
2008-01-17 13:45 : 真紅 URL : 編集
こんばんは、『ある愛の風景』に続いてTB&コメントいただき、
ありがとうございました。
私はまったく前知識なしにこの作品を見たので、てっきり
ヨルゲンは見るからに極悪人だと決めつけていました。
それがラストのサプライズとなったのですが。

ともあれ、この作品で気になったのは、ヤコブが「ジェイコブか?」
と、名前を聞き返されるシーンが多々あったことですね。
ヤコブと言う名前に、ある種、救世主的な意味こめられている
ようにも思います。私は『ある愛の風景』と見くらべると、
こちらの作品のほうがより洗練された印象を受けました。
新作はさらに洗練されたものとなっているのか、公開が
待ち遠しいですね。
2008-01-19 01:50 : 丞相 URL : 編集
丞相さま、こちらにもコメントとTBをありがとうございます。
私は『ある愛の風景』の翌日にこの映画を観ました。
『ある愛~』はかなり重く、引き摺るタイプの映画だったので、この映画を観るとき、ちょっとバイアスがかかってしまったかもしれません。
ヨルゲンが「見るからに極悪人」ハハハ!
確かに、何か腹に一物ありそうなタイプに見えますね。

私も、インドの場面でヤコブが「ジェイコブ」と呼ばれていることが気になりました。
でも、英語読みだとジェイコブなんだな、くらいに思っていましたが、救世主的な意味ですか・・・。
深いですね。
新作はまだ全く情報を入れていないのですが、楽しみに待ちたいと思います。
ではでは、またお伺いします~。
2008-01-19 11:32 : 真紅 URL : 編集
真紅さまこんばんは
「パラノイドパーク」の前にこちらをアップしました。
私はこれとっても感動しましたわ~
>自分の為だけでなく、相手のために生きようという思いが芽生えたとき、初めて人は家族を手にする。死は終わりではない、死は全てを奪うわけでもない。愛は必ず、与えた相手の心に残るものだ。
この真紅さまの言葉,とっても素敵ですね~。
まさにそのとおりだと思います。
ヨルゲンもヤコブもどちらの思いも私には愛おしく思えてしまいました。
マッツ・ミケルセン,俳優さんとしても大好きなんですよ。
キング・アーサーの鷹をつれたトリスタン役が大好きで。
カジノロワイヤルのときはあれがマッツだとはすぐにはわかりませんでしたが。
渋くて味のある俳優さんですよね。
2008-12-21 21:52 : なな URL : 編集
ななさま、こんにちは! コメントとTBをありがとうございます。
私、実はこの映画『ある愛の風景』の翌日に観たんですよ。
だから、かなり『ある愛~』を引き摺ってしまっていて・・・。
映画も、観る順番を考えないといけないですね~。
だからななさんが『ラスト、コーション』のあと『ONCE』が観られなかった、っていうのすっごくよくわかりますよ~。
って、古い話でごめんなさいね(笑)。
↑この言葉は、私の実感ですね。。

で、『カジノ・ロワイヤル』未見なんですが果たして『慰めの報酬』より前に観られるのかな~。
マッツ、悪役なんですよね~。観たいな~。。
ではでは、後ほどお伺いします~。
2008-12-22 09:35 : 真紅 URL : 編集
真紅さま
実はそれとは知らずに《ある愛の風景》と《アフター・ウエディング》を同時にレンタルして来ていたのですが、この監督は印象に残りました。縦糸、横糸、色々な色を織り込んで一枚の布に仕上げるような上手さがありますね。
私も《ある愛の風景》の方がより良かったですが
この作品も監督のカラーを感じる事が出来ました
2009-04-24 20:51 : Maria URL : 編集
Mariaさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
私も、『ある愛の~』を観た翌日にこの映画を観たのですよ!
やはり、観る順番というのはありますよね。。
私はあまりにも『ある愛の~』でガツンち来てしまって、こちらの印象が弱まったかもしれません。
後ほどお伺いしますね、ではでは~。
2009-04-26 22:30 : 真紅 URL : 編集
Pagetop
« next  ホーム  prev »

What's New?

真紅

Author:真紅
 Cor Cordium 
★劇場鑑賞した映画の感想はインスタにアップしています@ruby_red66

Archives

Search this site

Thank You!