ダルデンヌ兄弟 『イゴールの約束』 『息子のまなざし』 『ロゼッタ』
ダルデンヌ兄弟の新作 『トリとロキタ』 を観逃してしまった。
ちょっと無理をすれば時間を作れないこともなかったのだけど、彼らの作品は 『サンドラの週末』 くらいしか観たことがなくて
「どうしても観たい!」 という気持ちになれず結局スルー
そこでU-NEXTで観られるダルデンヌ兄弟の監督作品を観てみることに
以下、とりあえず3作品観たところで観た順に感想をメモ
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『イゴールの約束』 (原題:LA PROMESSE/1996)
父とともに不法移民の就労に手を染めている少年イゴールの物語
アニエス・ヴァルダやグザヴィエ・ドランがフェイバリットに挙げている作品なのだそう
イゴールを演じた少年、かわいい、、どこかで観たことある、、、と思っていたらなんと 『2重螺旋の恋人』 のジェレミー・レニエじゃない!
彼が 「人として」 の善性に目覚める過程がとてもリアル
ラストは 「ここで言うか!」 というタイミングなのだけれど、彼なりにギリギリまで逡巡したのだろうな、、、と思う
『息子のまなざし』 (原題:LE FILS/2002)
職業訓練校で木工を教えているオリヴィエのクラスに、ある少年がやってくる
手一杯だと一度は少年を拒否したオリヴィエだったが、少年の挙動が気になり結局は彼を受け入れるのだが、、
カンヌ映画祭男優賞受賞作
予備知識なく鑑賞したので、少年がオリヴィエの(生き別れた)息子なのか? と思いながら観ていた
これは邦題のミスリードですね
少年とオリヴィエの関係が明かされてからはサスペンスの様相
少年が 「名前で呼んでいい?」 「後見人になって」 と距離を詰めてくるに連れて大きくなるオリヴィエの戸惑い(葛藤)が伝わってくる
言葉少なく、感情をほとんど表に出さないオリヴィエゆえに緊張感が半端ない
最悪の事態を予想させながら、希望を感じるラストシーンに安堵
いや~この映画は凄い!
『ロゼッタ』 (原題:ROSETTA/1999)
酒浸りの母とキャンプ場のトレーラーで暮らす少女ロゼッタが、理不尽な仕打ちを受けながらも懸命に生きようとする物語
カンヌ映画祭パルムドール&女優賞受賞作
う~ん、、これは観るのが辛い作品だった
同性として、あまりにも過酷なロゼッタの境遇が苦し過ぎる
「生活保護を申請して」 と言われても頑なに拒否し、仕事を探して生きるのだと突っ張る
「どうしてそこまで意地を張るの?」 と思う自分がいた
あの母と二人、今までどうやって生きてきたのだろう、、、とロゼッタの来し方に思いを馳せてしまう
救いがない、、しかし最後の最後にロゼッタは変われたのです
そう思いたい
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3作ともにオリヴィエ・グルメが出演
彼は2021年のマイベスト作の一本 『私は確信する』 が印象深かったのですがダルデンヌ兄弟作品の常連俳優さんだったのですね
『サンドラの週末』 はオスカー女優マリオン・コティヤールの映画、という印象が強かったのだけれど、ダルデンヌ兄弟は社会的弱者に目を向け、常に問題提起する映画作家なのだとわかった
被写界深度が浅く主人公の視線に観るものを極力近づけるような映像表現と、シンプルなタイトル、最小限の登場人物、セリフ、劇伴、短めなランタイムで主題を明確に描く作風が貫かれている
ケン・ローチに近いものを感じます(尊敬)
彼らを評価し、世界に紹介してきたカンヌ映画祭はやはり凄いなと改めて思う(運営にいろいろ文句はあるにしても)
遅すぎるけどサブスクにあるダルデンヌ兄弟作品は全て観たいし、今後も公開作は観続けたいと思う
彼らはベルギー出身ですがアニエス・ヴァルダ、シャンタル・アケルマン、新作 『クロース』 がもうすぐ公開(超期待♪ ロゼッタ役の女優さんが出演するらしいと知りますます楽しみよ)のルーカス・ドンもそう
いい映画作家が多い印象なのは大国に挟まれた国の成り立ち(歴史)と無関係ではないのかもしれないと思う
ポーランドもそうですよね
そんなことを考えていると、映画を娯楽として観るだけでなく映画史的に勉強してみたいな、、と思ったり
ああ~、人生
時間が足りねぇ