生まれて~『ふがいない僕は空を見た』
助産院を営む母と暮らす高校生の斉藤卓巳は、川向こうに住む主婦「あんず」
と不倫の関係にあった。同級生の松永七菜に告白された卓巳は、あんずとの関係
を断ち切ろうとするが・・・。
2010年「本の雑誌」ベストテン第1位、2011年本屋大賞第二位、第24回山本
周五郎賞受賞と、超話題の作品。やっと読めました。期待に違わず、引き込まれ
て一気読み。5篇から成る連作短編集で、それぞれのエピソードは有機的に繋が
り、悲喜こもごもの物語は季節を一巡りして完結する。
第一篇「ミクマリ」は、第8回「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞作。
当初、他の4篇の構想はなかったという。不倫、不妊、引きこもり、貧困、児童
虐待、幼児性愛、カルト、ネット犯罪と、現代における諸々の問題を盛り込み
つつ、どんなに愛があろうと決して無傷には生きられない人生の不条理を、大
らかな母性で包み込むような作品。5篇それぞれに感情を揺さぶられ、涙腺は
決壊した。いい意味でウェットな、涙や羊水や体液や、雨に満たされたような
読後感。私は読みながら、ペドロ・アルモドバルの『オール・アバウト・マイ・マ
ザー』を思い出していた。
「絶頂って幸福の絶頂という意味なんだ」
どうかこの物語を、「モラル」という言葉を盾に攻め立てないで欲しい。それ
ぞれに生まれ落ちた環境で、懸命に生きている彼らを。人は誰しも、言葉で
は表せない感情に呑み込まれ、理性を失うこともある。Iの前にHがあるよう
に、身体の関係を結んだからこそ生まれる愛もあるのだから。
しかし、この息苦しい社会は、感情に身を任せることを好しとしない、無言
の圧力に支配されている。時に孤立し、攻撃され、辛いことばかりのようなこ
の人生に、生まれてくる意味などあるのだろうか? 無力な母親は、我が子
をお守り下さいと神に祈るしかない。それでも人生にイエスと、著者は言う。
季節は巡り、傷は時が癒し、新しい命は育まれる。「ふがいない僕」は、母
である私が引き受けよう。勇気を持って、ね。
( 『ふがいない僕は空を見た』 窪美澄・著/新潮社・2010)
千両役者の花道~『大鹿村騒動記』
南アルプスの麓の小さな村。鹿料理の店「ディア・イーター」を営む善(原田
芳雄)は、村に300年続く「大鹿歌舞伎」の花形役者。舞台本番を5日後に控
えたある日、18年前に村を去った親友・治(岸部一徳)と、妻の貴子(大楠道代)
が帰って来る。
村歌舞伎での共演が縁で結婚した妻は親友と駆け落ち、認知症となって帰
って来た。戸惑いながらも二人を受け入れてゆく主人公の姿を軸に、素朴な村
の風景と、芸能の原点のような歌舞伎の舞台をクライマックスに描くコメディ。
今月19日に亡くなった主演俳優・原田芳雄の遺作となった。
名優を悼む為にか、一律千円の鑑賞料金が功を奏したか、劇場は大入り。
芸達者たちの軽妙な演技と、クドさを感じさせない演出が自然と笑いを誘う佳作。
いかにも「ここで笑って下さい!」的な作り込まれたコメディよりも、こういう映画
のほうが個人的に好感度は高い。登場人物それぞれのキャラもしっかり立って
いて、群像劇としても面白かった。佐藤浩市は、すっかりコメディ演技に開眼し
てますね(笑)。
錚々たるベテラン俳優の中で、意外と目立っていたのは冨浦智嗣。心と身体
の性のギャップに苦しむ青年・雷音を演じた彼、初めて意識して観た役者さん
だけど、いつもああいう「ちょっと内股」でビミョーなキャラなんだろうか? 思い
を寄せる寛治くん(瑛太)を見つめる瞳は恋する乙女そのもので、もうかわいい
ったらない。
そしてやはり、特筆すべきは村歌舞伎の舞台。映画の中で演じているのは勿
論プロの俳優だけれど、廻り舞台もある本格的な歌舞伎小屋が信州の小さな村
にあること、300年以上もその伝統が守り継がれてきたことに驚き、感動する。
エンドロールの最後に鳴り響いた杵の音は、名優・原田芳雄を悼む葬送の音に
も聞こえて・・・。涙
渋い名優が去るのは名残惜しい。けれど、こんな素敵な作品を花道に旅立て
た原田芳雄は、幸せな役者人生を全うできたんじゃないだろうか。謹んでご冥福
をお祈りします。
仇も恨も、是まで是まで・・・
( 『大鹿村騒動記』 監督・企画・共同脚本:阪本順治/2011・日本/
主演:原田芳雄、大楠道代、岸部一徳、冨浦智嗣、佐藤浩市、松たか子)
心と身体は連動している~『身体のいいなり』
幼い頃から原因不明の体調不良に悩まされ続けていた著者が、38歳で乳が
んを発症。治療の過程でヨガと出逢い、健やかになっていく過程を綴ったエッセ
イ。イラストも著者が手掛けている。第27回講談社エッセイ賞受賞作。
「身体と心(意志)は連動している。切り離しようがない。なのに私は生まれた
ときから意志だけで生きていけるものと思い込んできた」
著者とは同世代の私。自分は大病はしたことがないが体力・筋力はなく、生ま
れてこの方運動というものとは無縁で生きて来た。虚弱だビンボーだと連呼(笑)
する著者に、なんとなく親近感を覚えてしまう。
一番切実なお金のこと、病院(医師)選び、時期を同じくして癌を発症した友の
死。乳房再建に当たっての揺れる思い。同じ女性として、考えさせられるところ
が多かった。私もやろうかな、ヨガ・・・。
ちなみに、講談社エッセイ賞の賞金は百万円。内澤さん、よかったね。
( 『身体のいいなり』 内澤旬子・著/2010・朝日新聞出版)
少女よ君は旗を揚げる~『コクリコ坂から』
1963年、港横浜。坂の上に建つ「コクリコ荘」を切り盛りする高校生、松崎海
は、毎朝信号旗を掲げる。「安全な航行を祈る」。海と同じ高校に通う風間俊は、
その旗をタグボートから見つめていた。
少女漫画を原作に、宮崎駿が企画、脚本を手掛け、宮崎吾朗が監督したアニ
メ。戦争の記憶を色濃く残しつつ、東京オリンピックを翌年に控えた港・横浜が
舞台。海で亡くした父を恋いながら、学校でも家でも「しっかり者」の少女・海。
新聞部部長として、ガリ版を切る少年・俊。「出生の秘密」が絡んだ二人の恋の
顛末が爽やかに描かれる。日本の夏、ジブリの夏がやってきた!
物凄くよかったです。。主人公に過剰に感情移入してしまい(いつものことで
すが)、ボロ泣きでした。もう一回観たいな。。ただ、「これ実写で観たいかも」と
思ってしまったから、「アニメ」として突出した作品ではないのかも。
恋愛が主題の夏休み映画だけれど、正直大人(中高年)向け。おばさんの私
でさえ、高校生たちのセリフが理解できないところがあった。昔の高校生って、
知識レベルが高かったのですよね。。「哲研」とか、今でも在るのかな?
明治時代に建てられた文化部の部室「カルチェ・ラタン」の取り壊し反対運動
に関わることになった海。運動の中心人物である俊に抱く恋心。彼の出自を知
り、悩みながらも悲嘆に暮れることなく、まっすぐに彼の目を見つめながら「好き」
だと叫ぶ姿に感動。。そう、どうしようもなくても、何も起こせなくてもいいんだ。
人が人を「好き」になること、その感情をどうして止めることができるだろう? ど
うしてカルチェ・ラタンを残したいのか、徳丸理事長に訊かれた海は答える。 「好
きだからです」と。とてもシンプルで、力強い答え。
声のキャストは、長澤まさみと岡田准一以外知らなかったのだけれど、クレ
ジットを観てその豪華さに驚き。俳優を起用することで批判も多いジブリだが、
今作に関しては全く違和感はなかった。音楽は武部聡志。「上を向いて歩こう」
はじめ、「唄」が印象的で素晴らしい!
海がなぜ「メル」と呼ばれているのか、観ている間中ずっと疑問だったのです
が。フランス語の「MER」海のことなのですね(公式サイトより)。みなさん、す
ぐにわかってご覧になってました? あだ名一つとっても、昔は本当に知識レベ
ルが高いと感心している私です(恥)。
( 『コクリコ坂から』 監督:宮崎吾朗/2011・日本/
声の出演:長澤まさみ、岡田准一、石田ゆり子、大森南朋、香川照之)
人間は人間に会わないと! ~『男友だちを作ろう』
「男の人と友情を築きたいというのは、決して恋愛からの逃避ではないと思う。
せっかくこの大きな世界の、長い時間の中で、人と出会えるのに、恋愛のこと
しか考えないなんて、つまらなさ過ぎる」
という考えの下、山崎ナオコーラが人(男性)に会い、スケッチ風に綴ったエッ
セイ。人に会い、話をしているのに敢えて「対談」本ではないところに、著者の
「小説家」としての矜持を感じる。会ったのは、大学生から古希過ぎの元ミュー
ジシャンまで。著者と同世代のアーティストが多い。
該当作なしとなった今回(第145回)の芥川賞にも、候補となっていた山崎ナ
オコーラ。何度も候補に上がりながら「落とされる」、そして選評で「ゴミのよう
に」扱われることに、彼女なりに酷く傷ついている様子(これは先日『ボクらの
時代』で本谷有希子も語っていた)。『人のセックスを笑うな』で獲れたらよかっ
たのにね。。しかし、賞を獲れないことで人から褒められることがない人生でも、
人と会って仲良くして、何かを発信したいというエネルギーは素晴らしいと思う。
文章は、相変わらずの「ナオコーラ節」。やる気があるんだかないんだかわか
らない、飄々とした雰囲気。きっと恥ずかしがり屋さんなんだね。応援してるか
ら、「佐野洋子さんみたいな」かっこいい物書きおばあさんになってね。
( 『男友だちを作ろう』 山崎ナオコーラ・著/2011・筑摩書房)
生涯一海賊宣言~『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』
PIRATES OF THE CARIBBEAN: ON STRANGER TIDES
自分の身代わりとなって捕えられた相棒ギブスを救うため、ロンドンにやって
来たキャプテン・ジャック・スパロウ。そこで彼はかつての恋人、女海賊のアン
ジェリカと再会する。彼女は父である海賊「黒ひげ」のために、永遠の命をもた
らすという「生命の泉」を探していた。
毎度お馴染み、ディズニーの大ヒットシリーズ。キーラ・ナイトレイ&オーラ
ンド・ブルームが降板、新たなヒロインにスペインの宝石、ペネロペ・クルスを
迎えた第4弾。テーマ曲もちょっとフラメンコ調にアレンジされていたような。。
主演はもちろん、我らがキャプテン・ジャック・スパロウ=ジョニー・デップ。
しかし、このシリーズってホントにストーリーが分かり難いよね(途中で爆睡
してしまうからだと思うけど、すみません)。ジャック・スパロウが登場して、何
かから逃げようとして捕まって、また逃げる途中にバルボッサ(ジェフリー・ラッ
シュ!)とか出てきて。最後は敵味方入り乱れてのチャンバラ(笑)になって、
結局はジャックがおいしいところを持っていく、みたいな。。
それでも当たり前のように劇場鑑賞してしまうのは、やっぱりジャック・スパ
ロウっていう愛すべき強烈なキャラクターを生み出した役者、ジョニー・デップ
が見たいから。このシリーズ、毎回思うけどホントにお金かかってますよね。
スタッフだけで何千人いるんだろう? その人数のケータリング考えただけで
気が遠くなりそう。プロデューサー(ジェリー・ブラッカイマーね)がスーパーマ
ンじゃないと、絶対に収拾つかなくなると思う。
それでもって、必ず世界中で大ヒットする。私が観たのは公開から2ヶ月以上
経った平日夜だったけど、シアターはそこそこ埋まっていたし。これは並大抵の
ことじゃないですよ。その原動力はやっぱりジョニー・デップなわけで、彼は真
の千両役者、だと思う。
バルボッサとの掛け合いなんて、もう吉本新喜劇的な様式美というか、円熟
の味わい。前作に続いてキース・リチャーズがゲスト出演、ジュディ・デンチに
は驚いた! 宣教師フィリップ(サム・クラフリン、男前!)と人魚シレーナ(アス
トリッド・ベルジュ=フリスベ)の恋も素敵だったなぁ。ジョニーは「オファーがあ
る限り続ける」と言ってくれておりますので、もうおじいちゃんになるまでジャッ
ク・スパロウでいて下さい♪
( 『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』 監督:ロブ・マーシャル/
主演:ジョニー・デップ、ジェフリー・ラッシュ、ペネロペ・クルス/2011・USA)
テーマ : パイレーツ・オブ・カリビアン
ジャンル : 映画
理想の夫婦像(婦唱夫随?)~『周防正行のバレエ入門』
バレリーナ、草刈民代と結婚して15年。至近距離からバレエを見続けてきた
映画監督・周防正行による「未知なるバレエの世界」への招待。妻のラストダ
ンスをフィルムに収めた映画『ダンシング・チャップリン』の副読本のような役
割も果たしている。映画を観た方は、是非この本も手に取ってみることをお勧
めします。と言うか、この本を読んだら絶対にもう一度『ダンシング・チャップリ
ン』が観たくなりますよ!
しかし、読んでつくづく思うのは「周防監督、どんだけ奥さんラブやねん!」っ
てこと(笑)。芸術家として、お互いにもの凄く尊敬し合っているご夫婦だという
のもわかるし、相性が本当にいいんだろうなぁ、というのもわかる。たとえ、風邪
を引いてもいたわりの言葉一つかけてもらえず、「うつさないで!」と言い放たれ
るだけだとしても。
「屋外で撮影するなら映画はなしだ」と言ったローラン・プティに対して、監督が
取った「作戦」が何だったか、その顛末も書いてあります。映画の第一幕「アプロ
ーチ」で監督もチャップリンの扮装をしていたのは、実は監督もチャップリンの「影」
として映画に出演しているからだとか、コマ落としでコミカルな動きを表現している
とか、撮影秘話がいっぱい。
監督による妻・草刈民代へのインタビューでは、バレリーナとしての彼女の歴史
を振り返り、日本のバレエ界の事情や問題点についても明確に語られている。も
ちろん、バレエの演目についても詳しい。クラシックで一番完成度が高く、誰が観
ても感動するのは『白鳥の湖』だ、という監督の言葉に、『ブラック・スワン』ももう
一度、観たくなったのでした。
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今月10日、ローラン・プティ死去のニュースに驚きました。ご冥福をお祈りし
ます。素晴らしい芸術をありがとうございました。
( 『周防正行のバレエ入門』 周防正行・著/太田出版・2011)
帰って来た狼軍団~『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』
THE HANGOVER PART II
タイ・バンコクで結婚式を挙げることになったステュ(エド・ヘルムズ)に同行
したフィル(ブラッドリー・クーパー)、アラン(ザック・ガリフィナーキス)、ダグ
(ジャスティン・バーサ)の三人。異国で目覚めると、そこは見知らぬホテルの
一室。ここは何処? 記憶が飛んだ!
『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』の続編。前作は
未見ですが、同じ製作スタッフの『デュー・デート/出産まであと5日! 史上
最悪のアメリカ横断』は結構面白かったので、迷うことなく鑑賞。感想は「まぁ
まぁ面白かった」ですが、心底観てよかったと思いました。だってだって、、、
ブラッドリー・クーパーが超カッコイイ!! んですも
の。。。ミスター・パーフェクト、とお呼びしてもよろしいかしら?(惚)
初めて知ったのですが、前作はゴールデングローブの作品賞を受賞してい
るのですね! そんなに高評価なのか~、それは絶対に観なくちゃだわ。。
「疫病神」アランに扮するザック・ガリフィナーキス(ザッくんかよ!)、相変
わらずの「ウザキャラ」です。笑わしてくれます。そんなアランを邪険にもせず、
フィルもステュもやさしいよねー。自分だったら5秒でマジ切れしそう。オロオロ
しながら、汗と埃まみれでバンコクの街をうろつく男三人(プラスおサルさん一
匹)、女っ気はほぼゼロなところも好き♪
突っ込みどころも多々あり、下ネタは正直、そんなに笑えなかったのですが、
涙ぐましい男の友情とラスト近くのサプライズ(あの顔面タトゥーは。。)、エン
ドロールの「ネタばれ画像」に免じて許しましょう(何様?)。これは絶対、パー
トⅢもあるよね~。てか、絶対作って下さい♪
( 『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』
監督・製作・共同脚本:トッド・フィリップス/2011・USA/
主演:ブラッドリー・クーパー、エド・ヘルムズ、ザック・ガリフィナーキス)
木曜日の雷神~『マイティ・ソー』 【3D・字幕版】
THOR
神の国「アスガルド」で王(アンソニー・ホプキンス)の長男として生まれたソー
(クリス・ヘムズワース)は、力に任せた振る舞いから父の怒りを買い、地球へと
追放されてしまう。
お馴染みマーベル社のアメコミが、またまた実写映画(しかも3D)になった!
監督は英国のサラブレッド、ケネス・ブラナー。ええ~、ケネス・ブラナーがアメ
コミヒーロー物の監督?! と最初はビックリしましたが、ちゃんと面白かった
です。満足度はかなり高し。しかし大嫌いな3Dをなぜわざわざ観たのか、と言
うと、我らが浅野くん(浅野忠信)のハリウッド進出作を寿がないわけにはいか
ないでしょう! 期待したほど出番は多くなかったけれど、彼は(ジャッキー・チ
ェンとか言われながらも)しっかり映画に馴染んでいました。北欧神話がベース
なお話ということで、スウェーデンの名優、ステラン・スカルスガルドも御出演。
ヒロインは公私ともに絶好調のナタリー・ポートマン。何故かノンクレジットで
ジェイミー・レナーも出てるし、これは何気に豪華キャストですよ♪ そういえ
ば、主役のソーが一番知らない役者さんだったりします(笑)。
敵と味方がはっきりしていて、血の繋がらない兄弟の確執とか、ストーリーも
わかり易い。傍若無人な暴れん坊将軍なのに、何故か周囲の人望は厚く、世間
知らずで学究肌な美人天文学者ジェーン(ナタリー・ポートマン)のハートに火を
点けてしまう素敵なソー。かなりマッチョさんなので個人的には好みではありま
せんが、あれはメロメロになるでしょう、手の甲にキスされた日には(照)。
そして思わず興奮したのが、『アイアンマン』との繋がり。コールソン捜査官が
登場したとき、「あれ、このおじさんどこかで観たゾ」と思ったら。。ソーの弟ロキ
が送った刺客を観て「(トニー)スタークのところのか?」なんて言ってくれるん
ですから!(嬉) 『アイアンマン2』で出て来た「ニューメキシコの件」って、この
映画のことだったのね。ちなみに、ジェーンの助手、ダーシーを演じるカット・デ
ニングスは、『チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室』でロバダウの娘役
でした。。繋がってるな~。
そしてラストのテロップ「ソーはアベンジャーズで帰って来る」。来た来た、
サミュエル・L・ジャクソン! でも、最後に言わせて。。この映画、別に3Dじゃ
なくてもいいと思いますよ。全然。
( 『マイティ・ソー』 監督:ケネス・ブラナー/2011・USA/
主演:クリス・ヘムズワース、ナタリー・ポートマン、アンソニー・ホプキンス)
テーマ : 特撮・SF・ファンタジー映画
ジャンル : 映画
死にゆく者への祈り~『BIUTIFUL/ビューティフル』
BIUTIFUL
サグラダ・ファミリアを遥かに望む、スペイン・バルセロナの貧民街。幼い二人
の子どもを抱え、裏社会に生きる男ウスバル(ハビエル・バルデム)。彼は末期
癌に侵され、余命2ヶ月と宣告される。
主演のハビエル・バルデムがカンヌ映画祭男優賞を受賞したヒューマンドラマ。
監督のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥにしては正攻法な語り口ではある
が、彼自身のパーソナルな感情(思い入れ)がじわじわと伝わってくる作品。
ささやくようなウスバルの語りで始まる物語は、148分の長尺を感じさせない、
強い磁力を帯びていた。陰影のくっきりと際立つ映像は、名手ロドリゴ・プリエト
によるもの。
確かに「重く」 「暗い」、死に縁取られた物語ではあるが、決してそれだけで
はない。観ている間中、そして観終わってしばらく、終わりなく考えを巡らせて
しまう。生と死、父と息子、親子の絆、それぞれの人間にふさわしい居場所に
ついて。
ウスバルは、死者の「声」を聴くという特殊な能力を持っている。彼は度々葬儀
を訪れる。人生半ばで倒れた者の言葉を、遺された者に伝えるために。彼が見
送った死者たちは、蝶となってウスバルの部屋の天井に留まる。
見送る側だった者が、いつかは死にゆく者となる必然。しかし、それは幼い子
どもと双極性障害を抱える元妻を養うウスバルにとって、あまりにも突然で残酷
な宣告だった。子どもを遺しては死ねない、死にたくない。。金の為に、彼は危険
な仕事に手を染める。中国やアフリカからの不法滞在者を、肉体労働に従事さ
せて上前を撥ねるのだ。そしてそれは、取り返しのつかない更なる不幸を呼ぶ・・・。
「死」が人間にとっての必然であるならば、「何故」 人は生まれるのか、生き
なければならないのかと、問わずにはいられない。故国を追われ、希望を求め
て異国に渡っても、志半ばで倒れてしまう弱者たち。裏社会で生きるしかない
彼らは、同じ国で「富裕層」と呼ばれる人々と、どこがどう違うというのか。それ
でも人は、この世界を、人生を「美しい/ビューティフル」と思うべきなのだろうか。
父親を知らずに育ったウスバルが、自らも子どもたちの前から去らざるを得な
い無念。「死なないで」 「死にたくない」 娘に指輪を託し、ウスバルは天国の「父」
と出逢う。若いままの父は、ウスバルの幼い息子と同じ言葉を語る。父と子の絆
は、確かに存在している。姿は見えなくとも、命は確かに受け継がれているのだ。
スペインの名優、ハビエル・バルデムを、初めてハンサムだと思った。彼なしで
は、恐らく成り立たなかったであろう作品。個人的には、今年のベスト作の一本に
挙げたい。
( 『BIUTIFUL/ビューティフル』
監督・製作・原案・共同脚本:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ/
主演:ハビエル・バルデム/2010・メキシコ、スペイン)
1979年の子どもたち~『SUPER 8/スーパーエイト』
SUPER 8
1979年、アメリカの田舎町。工場の事故で母親を亡くしたジョー(ジョエル・
コートニー)は、保安官代理の父(カイル・チャンドラー)と二人暮らし。夏休み、
彼は中学の同級生たちと、ハンディカメラ「SUPER 8」で自主製作のゾンビ映画
を撮影していた。
ヒットメイカー、J・J・エイブラムスによるファンタジーSF大作。共同製作を務め
たスピルバーグへのオマージュ満載、映画らしい映画と言うべきか、娯楽映画
の王道を貫いた傑作に仕上がっている。これは今年のベスト作の一本でしょう!
最高に面白かった。ドキドキ、ハラハラ、笑って、泣いて。。この気分、昔どこか
で体験したことがあると思った。そう、私は『E.T.』を劇場鑑賞した時間に、タイム
スリップした気分だったのだ。
スリーマイル島、ザ・ナックの「マイ・シャローナ」。1979年の夏休み、映画
を撮ろうと集まった子どもたち。彼らはきっと、1966年生まれの監督の分身
なんだと思う。僭越だけど、私も監督と同世代だから言わせてもらう。スピル
バーグの映画からは、いつもいつも、映画が好きで好きで堪らないんだ、っ
ていう彼自身の「映画愛」を感じた。スピルバーグは、映画の神様の子ども
なんだと思う。そしてJ・J・エイブラムスは、間違いなくその遺伝子を受け継
いでいる。観客が早く観たいと思うもの--本作だったら「彼」だとか、ジョー
のロケットの写真とか--を、なかなか明かさない手法なんか、まさしく。
寂しい少年が、同じく寂しい瞳の少女に恋をする。彼らのヒロイン、アリスに
扮するはエル・ファニング。ジョーがアリスに心奪われるシーン、観ている私
にも、彼のドキドキが伝わって来る。彼らの関係には、ロミオとジュリエット的
な障壁があり、これもまた映画的王道ラブなのも逆に、心地よかったりする。
「彼」は宇宙の彼方へと去り、少し成長した少年の手には、愛する少女の手が
しっかりと繋がれている。肌身離さず握りしめられていたロケットの代わりに。
エンドロールの8ミリ映画「ある事件」も必見。(娯楽)映画が好きな方は、この
作品絶対に観逃さないで。とりわけ、1979年の夏、少年少女だったあなたは。
( 『SUPER 8/スーパーエイト』 監督・製作・脚本:J・J・エイブラムス/
主演:ジョエル・コートニー、エル・ファニング、カイル・チャンドラー/2011・USA)
テーマ : 特撮・SF・ファンタジー映画
ジャンル : 映画
Godiva Chocolatier Tarte Glacee
生きることをあきらめない~『127時間』
127 Hours
27歳のアーロン(ジェームズ・フランコ)は、ある週末、峡谷に向かう。音楽を
供に、一人でいることを愛する彼だったが、その単独行が思わぬ悲劇を招く。
巨岩に右腕を挟まれた青年が、最後に下した決断とは? その結末に失神
した観客もいたという衝撃作。主演のジェームズ・フランコは全編出ずっぱり、
ほとんどのシーンで共演者はなし。ワンシチュエーションの難しい役どころを
感動的なまでに演じ切っている。アカデミー主演男優賞にノミネートされたほ
か、批評家に絶賛されているのも納得の演技、最高でした。今年のベスト作
の一本です。監督はダニー・ボイル。
スクリーンを三分割したオープニングから、ダニー・ボイルらしい疾走感溢れ
る画作り。週末を自分の為だけにエンジョイしようと意気込むアーロンの解放
感が伝わってくる。「127時間」が始まった瞬間に、その解放感は絶望と閉塞感
に取って代わられるが、そこに停滞感はない。アーロンが乗り越えなければな
らなかった極限をピークに、94分間を見せ切る手腕はさすが、オスカーウィナ
ーですね。
観終わった感想は、「人間はここまで強くなれるのか」に尽きる。絶望的な状況
でも、アーロンは決して諦めることなく、自らの知恵と勇気を振り絞って「生きる」
ことに執着する。それは自分のためだけでなく、今まで大切にしてこなかった「愛
すべきもの」たちのため。そして未来に出逢うであろう「愛すべきもの」のため。
彼が下した決断、自らの腕にしたことも驚き以外の何ものでもないが、それ以
上に、彼がこの出来事の後もクライミングを続けていることに衝撃を受けた。何
という強靭な精神力。。岩壁に墓碑銘を彫り、一度は諦めかけた「命」。しかし彼
は生還した。
物語の最後に、原作者(実体験者)のアーロン・ラルストンが顔を見せる。ジェ
ームズ・フランコに、どことなく雰囲気が似ている。幻覚は現実となり、彼は今
も生きている。そう、生きてこそ・・・。
( 『127時間』 監督・製作・共同脚本:ダニー・ボイル/
主演:ジェームズ・フランコ/2010・USA、UK)
ゴシックテイストですが、、~『赤ずきん』
RED RIDING HOOD
生贄を捧げることで狼と共存してきた村で、美しい娘ヴァレリー(アマンダ・
サイフリッド)の姉が殺される。
本当は恐ろしいグリム童話、『赤ずきん』のゴス版。『ジュリエットへの手紙』
で超美しかったアマンダ・サイフリッドが赤ずきんを被っているイメージの美し
いこと。。しかも、本作レオナルド・ディカプリオ製作というではありませんか!
これは映画館へGOだぜ。そ、それなのに。。爆睡してしまいました(泣)。
観終わって知ったのですが、この映画ワーナーが「第二の『トワイライト』シ
リーズを狙って」打ち出したんだそうで。。ワタクシ、トワイライトシリーズは観
ておりませんのでわからないのですが(汗)。監督は、今でこそ『トワイライト~
初恋』の、と枕詞がつくキャサリン・ハードウィック。彼女の『ロード・オブ・ドック
タウン』は大好きで、名作だと思っています。なのに、なのに、何でなの??
お目当てのアマンダ嬢は、相変わらずの美しさ。。小さな顔に、大きな瞳、スッ
と通った鼻筋、ややぷっくりした唇が完璧なバランスで配置されています。白い
肌に、赤いずきんが似合うこと似合うこと。。眉間の皺も健在。彼女を巡って、親
が勝手に決めたお金持ちの婚約者ヘンリー(マックス・アイアンズ)と、樵のピー
ター(シャイロー・フェルナンデス)の間で火花が散る、わけです。ピーター役の
彼が、ちょっとダルビッシュくん入った野性味溢れるお方でしたわ。
ゲイリー・オールドマンやジュリー・クリスティっていう名優も御出演なのです
が、心惹かれたのは赤いずきんと赤い月だけ。だいたい、自分は狼が暴れまわ
るお話(『ウルフマン』とか)って好きじゃないんだった。。残念でした。
( 『赤ずきん』 監督:キャサリン・ハードウィック/2011・米、加/
主演:アマンダ・サイフリッド、ゲイリー・オールドマン、ジュリー・クリスティ)
更新が滞っております
映画は結構、観てはいるのですが。
近頃パソコンに向かえる時間がめっきり少なくなり、何らかの感想は書い
ても記事アップしないまま放置、という状態が続いております。
(感想を書けなかった作品もチラホラ・・・)
まぁ、人生いろいろ。今は一人でお茶(またはランチ)する時間が至福です。
あ、チェブはいつも一緒ですよん♪
食べ過ぎ(笑)
気力が戻ったらまたガンガン記事アップしますので~♪ その時はお付き合い
下さいね♪
真紅拝
近頃パソコンに向かえる時間がめっきり少なくなり、何らかの感想は書い
ても記事アップしないまま放置、という状態が続いております。
(感想を書けなかった作品もチラホラ・・・)
まぁ、人生いろいろ。今は一人でお茶(またはランチ)する時間が至福です。
あ、チェブはいつも一緒ですよん♪
食べ過ぎ(笑)
気力が戻ったらまたガンガン記事アップしますので~♪ その時はお付き合い
下さいね♪
真紅拝
2011-07-05 :
パンとか、カフェとか。 :
コメント : 8 :