今回はCapletonのアルバム

「More Fire」です。
Capleton(本名:Clifton George Bailey
III)は90年代頃から活躍するボボ・
アシャンティ系のルーツ・ディージェイ
です。
ネットのDiscogsには彼について次のよう
に書かれています。
One of Jamaica's most acclaimed dancehall artists, Capleton has
been active in the dancehall scene since the late 1980s.
Initially known for his risqué lyrics, he discovered Rastafari in 1994.
Born April 13, 1967, in rural St. Mary Parish, Jamaica.
《ジャマイカで最も評価の高いダンスホール・アーティストの一人で
あるケイプルトンは、1980年代後半からダンスホール・シーンで活躍
してきた。
当初はきわどい歌詞で知られていたが、1994年にラスタファリに
目覚める。
1967年4月13日、ジャマイカのセント・メリー・パリッシュの田舎町で
生まれる。》
当初はスラックネス(下ネタ)のきわどい
歌詞で知られるダンスホール・ディー
ジェイでしたが、仲間のディージェイの
Pan Headの死などをきっかけにラスタ
ファリズムに目覚め、コンシャス
(真面目)な歌詞を歌うルーツ・レゲエの
ディージェイとなって活躍します。
厳格なラスタの宗派ボボ・アシャンティに
所属しているディージェイで、この宗派は
ホモ・セクシャルなど同性愛者を否定して
いる為、彼の歌詞には同性愛者を攻撃する
曲もあり、ゲイのコミュニティから批判
されるなどの摩擦も起きています。
半面ラスタの教義を教育するデヴィッド・
ハウスという学校を創設するなど、慈善
事業を積極的に行う側面もあります。
King ShangoやKing David、The Fireman、
The Prophetの別名もあります。
ネットのDiscogsによると、共演盤を含めて
27枚ぐらいのアルバムと、876枚
ぐらいのシングル盤をリリースしていま
す。
アーティスト特集 Capleton (ケイプルトン)
Capleton - Wikipedia
今回のアルバムは2000年にUSの
VP Recordsからリリースされた彼のソロ・
アルバムです。
プロデュースはCapleton(Clifton Bailey)
本人とStuart 'African Star' Brownで、
バックにSly & RobbieやSteely & Clevie
などジャマイカの一流のバック・ミュージ
シャンが参加したアルバムで、タイトルの
通りにCapletonの火を噴くような熱い
トースティングがとても魅力的なアルバム
となっています。
手に入れたのはVP Recordsからリリース
されたCD(新盤)でした
全20曲で収録時間は65分29秒。
ミュージシャンについては以下の記述が
あります。
Executive Producers: Herbie Miller, Chris Chin & Joel Chin
Produced by: Clifton Bailey & Stuart 'African Star' Brown
Project Co-ordination: Herbie Miller, Norman Bryan & Joel Chin
Mastered by: Paul Shields & Joel Chin at VP Mastering NY
Musician: Lowell 'Sly' Dunbar, Lloyd 'Gypsy' Willis, Robbie Shakespeare,
Paul 'Jazzwad' Yebuah, Dean Fraser, Bongo Herman, Ward 21 (Suku & Kunley),
Paul 'Wrong Move' Crossdale, Donald 'Danny Bassie' Dennis,
Melborne 'Uncle Dusty' Miller, Wyclif 'Steely' Johnson, Cleveland 'Clevie' Browne,
Paul 'Computer Paul' Henton, Morgan Heritage, Mikey Williams,
Ricky 'Mad Mad Man' Myrie
となっています。
エグゼクティブ・プロデューサーは
Herbie MillerとChris Chin、Joel Chin、
プロデュースはCapleton(Clifton
Bailey)本人とStuart 'African Star'
Brownが担当しています。
プロジェクト・コーディネイターは
Herbie MillerとNorman Bryan、Joel Chin
で、マスタリングはPaul Shieldsと
Joel Chin(ニューヨークのVP Mastering)
となっています。
参加したミュージシャンはLowell 'Sly'
DunbarとLloyd 'Gypsy' Willis、Robbie
Shakespeare、Paul 'Jazzwad' Yebuah、
Dean Fraser、Bongo Herman、Ward 21の
SukuとKunley、Paul 'Wrong Move'
Crossdale、Donald 'Danny Bassie' Dennis、
Melborne 'Uncle Dusty' Miller、Wyclif
'Steely' Johnson、Cleveland 'Clevie'
Browne、Paul 'Computer Paul' Henton、
Morgan Heritage、Mikey Williams、
Ricky 'Mad Mad Man' Myrieといった布陣
です。
Sly & RobbieやSteely & Clevie、サックス
のDean Fraserなどが参加しています。
Ward 21のSukuとKunley、Morgan Heritage
は、おそらくバック・コーラスの参加では
ないかと思われます。
残念ながらジャケット・デザイン等に関す
る記述は、見つかりませんでした。
ジャケットは4つ折りの紙ジャケットで、
内側の面に曲ごとのプロデュースや参加
したミュージシャンなどの記述がありまし
た。

裏ジャケ
さて今回のアルバムですが、ラスタ転向後
のCapletonの魅力がうまく収められた彼の
代表作ともいえるアルバムで、内容は
とても良いと思います。
おそらくCapletonの代表作ともいえる
アルバムですが、2021年刊行のレゲエ
本鈴木孝弥さん著の「REGGAE definitive」
では次のような指摘もされています。
「精魂絞り上げるような炎のシングジェイ
が胸のすくような名盤。しかしまたも
『Stand Tall』のような反同性愛言説が
混じる曲も含む。」
この鈴木孝弥さんという方はジャマイカ
特有のホモフォビア(同性愛嫌悪)の文化
にかなり否定的な方で、Capletonのこう
した姿勢を「思考停止に陥ることはでき
ない」と断罪しています。
(ただし鈴木孝弥さんはマリファナに
ついては容認派の方のようです。)
このジャマイカのホモフォビアの問題は、
私のようにレゲエについての文章を書いて
いる人間にとってはとても頭の痛い問題
です。
「胸のすくような名盤」と言われながらも
ホモフォビアの問題で批判されるのは、
レゲエを愛する者にとってはやはり哀しい
ものがあります。
「地球上で最も同性愛嫌悪の激しい場所」
と言われるほど、ジャマイカという国は
ホモフォビアの激しい国なんですね。
今もあるのか解りませんが、「男色法」
(アナルセックス、およびあらゆる同性間
の性行為を違法とする)という法律まで
あったんだとか。
そういう風土で育てばやはりホモフォビア
の人間になるのは解らなくもありません
が、現在のワールド・ワイドな基準から
考えると、その思想はやはり差別的で合わ
なくなって来ているのかもしれません。
ジャマイカ:同性愛嫌悪による暴力が野放し
アンチ・ゲイとレゲエの関係…
特にこのCapletonやSizzlaなどの属する
ボボ・アシャンティ派はラスタファリズム
の戒律が厳しく、同性愛をかなり激しく
否定していて、これらのアーティストの
楽曲では「ホモを燃やしてしまえ!」とか
激しいメッセージの歌を歌う事があり
ます。
その為レゲエはゲイのコミュニティなど
からヘイト・ミュージック(憎悪音楽)と
いうレッテルを貼られ、Sizzlaの海外公演
が中止に追い込まれるなどの事態に陥って
います。
今はだいぶ落ち着いたようですが、90年
代に再び人気となったレゲエが2000年
代以降失速したのは、その要因のひとつと
してこのホモフォビアの問題があったのは
否定が出来ません。
また近年ではSpiceが「LGBTQフェスティ
バル」への参加を表明したり、Lila Ikéや
Jada Kingdomといった女性アーティストが
レズビアンをカミングアウトするなど、
少しずつですがジャマイカのホモフォビア
の伝統も変わり始めているようです。
レゲエ界のタブーも変革の時か?「LGBTQ差別」に女性アーティストたちが声を上げる
こうしたホモフォビアやヘイトクライムと
いった問題は、人々の意識が変わるまで
すごく時間のかかる問題です。
一朝一夕に変わらないのが悩ましいところ
です。
↑にも書きましたが、このCapletonは半面
ラスタの教義を学ぶデヴィッド・ハウスと
いう学校を創設するなど、慈善事業を積極
的に行う人でもあります。
このホモフォビアの問題は、見方を変えれ
ば真面目さゆえの暴走と言えるかもしれま
せん。
真面目だからこそしなくても良いケンカを
あえてしてしまうようなところがあるん
ですね。
話を戻しますが、この時代の彼Capleton
は絶好調で、このアルバムを皮切りに、
2002年には「Still Blazing」、
2004年には「Reign Of Fire」と、
「Fireシリーズ」と呼ばれる一連の
素晴らしいアルバムを残しています。
やはり彼の魅力はダンスホール・レゲエで
培ったノリの良いトースティング力で、
火を噴くような激しいシング・ジェイは、
他のアーティストに無い説得力と魅力が
あります。
いろいろ賛否両論はあるとは思いますが、
今回のアルバムはこの時代の重要作として
必ず名前の挙がる作品である事は間違いが
ありません。
1曲目は「Fire Chant (Intro)」です。
このアルバムのイントロで、ほぼCapleton
の語りが入っています。
Capleton - More Fire - #1 Fire Chant (Intro)
2曲目は「Danger Zone」です。
リディムはLloyd Robinsonの「Cuss Cuss」
です。
ちょっと不穏な空気なギターとピアノ、
ベースを中心としたメロディに、心地良い
パーカッションのリズム、Capletonの力の
入ったトースティングがイイ感じ。
Capleton - More Fire - #2 Danger Zone
リズム特集 Cuss Cuss (カス・カス)
3曲目は「The More Them Try」です。
リディムはDennis Brownの「No More Will
I Roam」。
心地良いドラミングに、ギターとベースを
中心としたメロディ、磨き抜かれた
Capletonのトースティングがイイ感じ。
Capleton - More dem try
4曲目は「Conscience Ah Heng Dem
(Interlude)」です。
こちらもアカペラのトースティングの、
5曲目のオープニングのような短い曲
です。
Capleton - More Fire - #4 Conscience Ah Heng Dem (Interlude)
5曲目は「Who Dem?」です。
ネットのRiddimguideによると「Bellyas」
というリディムのようです。
デジタルなドラミング、ベース音とキー
ボード、パーカッションを中心としたリズミ
カルなメロディ、切れ味のあるCapletonの
トースティング。
Who Dem?
6曲目は「Good In Her Clothes」です。
リディムはDetermineの「Hotta Fire」。
ギターを中心としたノリの良いメロディ
に、ダンスホールで磨かれたCapletonの
熱いトースティングがとても魅力的。
Capleton Good In Her Clothes 1999
7曲目は「More Prophet」です。
「Dirty Money」というリディムのよう
です。
デジタルなドラミングに、不穏な空気感の
キーボードを中心としたメロディ、表情
豊かで激しいCapletonのトースティングが
イイ感じ。
Capleton - More Prophet (with lyrics)
8曲目は「Hunt You」です。
こちらは「Hurricane」というリディムの
ようです。
デジタル感のあるドラミングに、こちらも
デジタルらしいキーボードのメロディ、
激しく煽るようなCapletonのトース
ティングが印象的。
Capleton - More Fire - #8 Hunt You
9曲目は「Jah Jah City」です。
「Liberation」というリディムのよう
です。
華やかなホーン音のイントロから、ホーン
とキーボードのメロディ、Capletonの
シング・ジェイが見事な曲です。
Capleton - Jah Jah City
10曲目は「Prophet's Philosophy
(Interlude)」です。
こちらも短い語りの曲です。
Prophet's Philosophy (interlude)
11曲目は「Critics」です。
リディムはLone Rangerの「M 16」。
ワン・ドロップのドラミングに、お馴染み
のホーン、ギターと重いベースの
メロディ、Capletonの軽妙なトース
ティングが楽しい曲です。
capleton - critics
12曲目は「Final Assassin (On A Mission)」です。
リディムは「Street Sweeper」として知ら
れるリディムで、オリジナルはSean Paul
& Mr Vegasの「Hot Gyal Today」のよう
です。
アカペラのトースティングから、デジタル
らしいドラミング、弦楽器とキーボードの
メロディ、Capletonの激しいトース
ティング。
Capleton Final Assassin On a Mission 2000
13曲目は「Bun Dung Dreddie」です。
「Riott」というリディムのようです。
サックスとキーボードのメロディに、性急
なリズムのデジタルのドラミング、流れる
ように滑らかなCapletonのトース
ティング。
Capleton - Bun Dung Dreddie
14曲目は「Hands Off」です。
リディムはSuper Catの「Mud Up」。
デジタルのリズミカルなリズムに、キー
ボードのメロディ、激しいCapletonの
トースティングがイイ感じ。
Hands Off
リズム特集 Mud Up (マッド・アップ)
15曲目は「Boost No War」です。
デジタルのドラミングに、キーボードの
メロディ、冒頭からのCapletonのノリの
良い激しいトースティング。
Capleton Boost No War 2000
16曲目は「Stand Tall」です。
リディムはLarry Marshallの
「Mean Girl」。
激しいドラミングから、サックスの心地
良いメロディ、刻むようなギターとキー
ボードのメロディ、ユッタリと語るような
Capletonのトースティング。
Capleton Stand Tall 2000
17曲目は「Pure Sodom」です。
リディムはWayne Smithの「Under Me
Sleng Teng」で、通称「Sleng Teng」
リディムと呼ばれています。
調子ハズレのようなハーモニカ音、硬い
デジタルのドラミング、ちょっとふざけた
ような歌い出しから徐々に激しくなる
Capletonのトースティング。
Capleton Pure Sodom 2000
リズム特集 Sleng Teng (スレンテン)
18曲目は「Love Is Comin' At You」
です。
ギターのメロディに女性ヴォーカル、
間合いよく入って来るCapletonのトース
ティングがイイ感じ。
Capleton Love is coming at you
19曲目は「Witness」です。
リディムはGatherersの「Words Of My
Mouth」。
心地良いパーカッションのドラミングに、
浮遊感のあるキーボードとギターの
メロディ、伸びやかなCapletonのシング・
ジェイがイイ感じ。
Capleton - Witness (African Star Music) 1998
20曲目は「Glorify」です。
ユッタリとしたキーボードのオープニング
から、デジタルらしいドラミングと、キー
ボードのメロディ、語るようなCapletonの
トースティング。
Capleton - Glorify
ざっと追いかけて来ましたが、Capletonの
全身全霊をかけて語りかけるようなトース
ティングはやはりとても迫力があり、その
思いを込めたシング・ジェイに圧倒され
ます。
また聴き逃せないのが、このアルバムが
レゲエならではの独特の世界観を作り上げ
ている事です。
この世界はダンスホール・ディージェイと
して活躍し、ルーツ・ディージェイに転身
したCapletonだからこそ、作りあげる事が
出来た世界だと思います。
いろいろ批判があったとしても、この
アルバムがこの時代の聴いておくべき1枚
である事は疑いの余地はありません。
その後も活躍し、今もYouTubeで他の
シンガーなどの動画に客演している彼です
が、2010年のソロ・アルバム
「I-Ternal Fire」以後にソロ作のリリース
が無いのが、稀有な才能を持った人だけに
とても残念に思います。
機会があればぜひ聴いてみてください。
Capleton - Nuh Fear Dem (Official Music Video)
Capleton, Jah Vibez - High (Official Video)
○アーティスト: Capleton
○アルバム: More Fire
○レーベル: VP Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2000
○Capleton「More Fire」曲目
1. Fire Chant (Intro)
2. Danger Zone
3. The More Them Try
4. Conscience Ah Heng Dem (Interlude)
5. Who Dem?
6. Good In Her Clothes
7. More Prophet
8. Hunt You
9. Jah Jah City
10. Prophet's Philosophy (Interlude)
11. Critics
12. Final Assassin (On A Mission)
13. Bun Dung Dreddie
14. Hands Off
15. Boost No War
16. Stand Tall
17. Pure Sodom
18. Love Is Comin' At You
19. Witness
20. Glorify
●今までアップしたCapleton関連の記事
〇Capleton「Lotion Man」

「More Fire」です。
Capleton(本名:Clifton George Bailey
III)は90年代頃から活躍するボボ・
アシャンティ系のルーツ・ディージェイ
です。
ネットのDiscogsには彼について次のよう
に書かれています。
One of Jamaica's most acclaimed dancehall artists, Capleton has
been active in the dancehall scene since the late 1980s.
Initially known for his risqué lyrics, he discovered Rastafari in 1994.
Born April 13, 1967, in rural St. Mary Parish, Jamaica.
《ジャマイカで最も評価の高いダンスホール・アーティストの一人で
あるケイプルトンは、1980年代後半からダンスホール・シーンで活躍
してきた。
当初はきわどい歌詞で知られていたが、1994年にラスタファリに
目覚める。
1967年4月13日、ジャマイカのセント・メリー・パリッシュの田舎町で
生まれる。》
当初はスラックネス(下ネタ)のきわどい
歌詞で知られるダンスホール・ディー
ジェイでしたが、仲間のディージェイの
Pan Headの死などをきっかけにラスタ
ファリズムに目覚め、コンシャス
(真面目)な歌詞を歌うルーツ・レゲエの
ディージェイとなって活躍します。
厳格なラスタの宗派ボボ・アシャンティに
所属しているディージェイで、この宗派は
ホモ・セクシャルなど同性愛者を否定して
いる為、彼の歌詞には同性愛者を攻撃する
曲もあり、ゲイのコミュニティから批判
されるなどの摩擦も起きています。
半面ラスタの教義を教育するデヴィッド・
ハウスという学校を創設するなど、慈善
事業を積極的に行う側面もあります。
King ShangoやKing David、The Fireman、
The Prophetの別名もあります。
ネットのDiscogsによると、共演盤を含めて
27枚ぐらいのアルバムと、876枚
ぐらいのシングル盤をリリースしていま
す。
アーティスト特集 Capleton (ケイプルトン)
Capleton - Wikipedia
今回のアルバムは2000年にUSの
VP Recordsからリリースされた彼のソロ・
アルバムです。
プロデュースはCapleton(Clifton Bailey)
本人とStuart 'African Star' Brownで、
バックにSly & RobbieやSteely & Clevie
などジャマイカの一流のバック・ミュージ
シャンが参加したアルバムで、タイトルの
通りにCapletonの火を噴くような熱い
トースティングがとても魅力的なアルバム
となっています。
手に入れたのはVP Recordsからリリース
されたCD(新盤)でした
全20曲で収録時間は65分29秒。
ミュージシャンについては以下の記述が
あります。
Executive Producers: Herbie Miller, Chris Chin & Joel Chin
Produced by: Clifton Bailey & Stuart 'African Star' Brown
Project Co-ordination: Herbie Miller, Norman Bryan & Joel Chin
Mastered by: Paul Shields & Joel Chin at VP Mastering NY
Musician: Lowell 'Sly' Dunbar, Lloyd 'Gypsy' Willis, Robbie Shakespeare,
Paul 'Jazzwad' Yebuah, Dean Fraser, Bongo Herman, Ward 21 (Suku & Kunley),
Paul 'Wrong Move' Crossdale, Donald 'Danny Bassie' Dennis,
Melborne 'Uncle Dusty' Miller, Wyclif 'Steely' Johnson, Cleveland 'Clevie' Browne,
Paul 'Computer Paul' Henton, Morgan Heritage, Mikey Williams,
Ricky 'Mad Mad Man' Myrie
となっています。
エグゼクティブ・プロデューサーは
Herbie MillerとChris Chin、Joel Chin、
プロデュースはCapleton(Clifton
Bailey)本人とStuart 'African Star'
Brownが担当しています。
プロジェクト・コーディネイターは
Herbie MillerとNorman Bryan、Joel Chin
で、マスタリングはPaul Shieldsと
Joel Chin(ニューヨークのVP Mastering)
となっています。
参加したミュージシャンはLowell 'Sly'
DunbarとLloyd 'Gypsy' Willis、Robbie
Shakespeare、Paul 'Jazzwad' Yebuah、
Dean Fraser、Bongo Herman、Ward 21の
SukuとKunley、Paul 'Wrong Move'
Crossdale、Donald 'Danny Bassie' Dennis、
Melborne 'Uncle Dusty' Miller、Wyclif
'Steely' Johnson、Cleveland 'Clevie'
Browne、Paul 'Computer Paul' Henton、
Morgan Heritage、Mikey Williams、
Ricky 'Mad Mad Man' Myrieといった布陣
です。
Sly & RobbieやSteely & Clevie、サックス
のDean Fraserなどが参加しています。
Ward 21のSukuとKunley、Morgan Heritage
は、おそらくバック・コーラスの参加では
ないかと思われます。
残念ながらジャケット・デザイン等に関す
る記述は、見つかりませんでした。
ジャケットは4つ折りの紙ジャケットで、
内側の面に曲ごとのプロデュースや参加
したミュージシャンなどの記述がありまし
た。

裏ジャケ
さて今回のアルバムですが、ラスタ転向後
のCapletonの魅力がうまく収められた彼の
代表作ともいえるアルバムで、内容は
とても良いと思います。
おそらくCapletonの代表作ともいえる
アルバムですが、2021年刊行のレゲエ
本鈴木孝弥さん著の「REGGAE definitive」
では次のような指摘もされています。
「精魂絞り上げるような炎のシングジェイ
が胸のすくような名盤。しかしまたも
『Stand Tall』のような反同性愛言説が
混じる曲も含む。」
この鈴木孝弥さんという方はジャマイカ
特有のホモフォビア(同性愛嫌悪)の文化
にかなり否定的な方で、Capletonのこう
した姿勢を「思考停止に陥ることはでき
ない」と断罪しています。
(ただし鈴木孝弥さんはマリファナに
ついては容認派の方のようです。)
このジャマイカのホモフォビアの問題は、
私のようにレゲエについての文章を書いて
いる人間にとってはとても頭の痛い問題
です。
「胸のすくような名盤」と言われながらも
ホモフォビアの問題で批判されるのは、
レゲエを愛する者にとってはやはり哀しい
ものがあります。
「地球上で最も同性愛嫌悪の激しい場所」
と言われるほど、ジャマイカという国は
ホモフォビアの激しい国なんですね。
今もあるのか解りませんが、「男色法」
(アナルセックス、およびあらゆる同性間
の性行為を違法とする)という法律まで
あったんだとか。
そういう風土で育てばやはりホモフォビア
の人間になるのは解らなくもありません
が、現在のワールド・ワイドな基準から
考えると、その思想はやはり差別的で合わ
なくなって来ているのかもしれません。
ジャマイカ:同性愛嫌悪による暴力が野放し
アンチ・ゲイとレゲエの関係…
特にこのCapletonやSizzlaなどの属する
ボボ・アシャンティ派はラスタファリズム
の戒律が厳しく、同性愛をかなり激しく
否定していて、これらのアーティストの
楽曲では「ホモを燃やしてしまえ!」とか
激しいメッセージの歌を歌う事があり
ます。
その為レゲエはゲイのコミュニティなど
からヘイト・ミュージック(憎悪音楽)と
いうレッテルを貼られ、Sizzlaの海外公演
が中止に追い込まれるなどの事態に陥って
います。
今はだいぶ落ち着いたようですが、90年
代に再び人気となったレゲエが2000年
代以降失速したのは、その要因のひとつと
してこのホモフォビアの問題があったのは
否定が出来ません。
また近年ではSpiceが「LGBTQフェスティ
バル」への参加を表明したり、Lila Ikéや
Jada Kingdomといった女性アーティストが
レズビアンをカミングアウトするなど、
少しずつですがジャマイカのホモフォビア
の伝統も変わり始めているようです。
レゲエ界のタブーも変革の時か?「LGBTQ差別」に女性アーティストたちが声を上げる
こうしたホモフォビアやヘイトクライムと
いった問題は、人々の意識が変わるまで
すごく時間のかかる問題です。
一朝一夕に変わらないのが悩ましいところ
です。
↑にも書きましたが、このCapletonは半面
ラスタの教義を学ぶデヴィッド・ハウスと
いう学校を創設するなど、慈善事業を積極
的に行う人でもあります。
このホモフォビアの問題は、見方を変えれ
ば真面目さゆえの暴走と言えるかもしれま
せん。
真面目だからこそしなくても良いケンカを
あえてしてしまうようなところがあるん
ですね。
話を戻しますが、この時代の彼Capleton
は絶好調で、このアルバムを皮切りに、
2002年には「Still Blazing」、
2004年には「Reign Of Fire」と、
「Fireシリーズ」と呼ばれる一連の
素晴らしいアルバムを残しています。
やはり彼の魅力はダンスホール・レゲエで
培ったノリの良いトースティング力で、
火を噴くような激しいシング・ジェイは、
他のアーティストに無い説得力と魅力が
あります。
いろいろ賛否両論はあるとは思いますが、
今回のアルバムはこの時代の重要作として
必ず名前の挙がる作品である事は間違いが
ありません。
1曲目は「Fire Chant (Intro)」です。
このアルバムのイントロで、ほぼCapleton
の語りが入っています。
Capleton - More Fire - #1 Fire Chant (Intro)
2曲目は「Danger Zone」です。
リディムはLloyd Robinsonの「Cuss Cuss」
です。
ちょっと不穏な空気なギターとピアノ、
ベースを中心としたメロディに、心地良い
パーカッションのリズム、Capletonの力の
入ったトースティングがイイ感じ。
Capleton - More Fire - #2 Danger Zone
リズム特集 Cuss Cuss (カス・カス)
3曲目は「The More Them Try」です。
リディムはDennis Brownの「No More Will
I Roam」。
心地良いドラミングに、ギターとベースを
中心としたメロディ、磨き抜かれた
Capletonのトースティングがイイ感じ。
Capleton - More dem try
4曲目は「Conscience Ah Heng Dem
(Interlude)」です。
こちらもアカペラのトースティングの、
5曲目のオープニングのような短い曲
です。
Capleton - More Fire - #4 Conscience Ah Heng Dem (Interlude)
5曲目は「Who Dem?」です。
ネットのRiddimguideによると「Bellyas」
というリディムのようです。
デジタルなドラミング、ベース音とキー
ボード、パーカッションを中心としたリズミ
カルなメロディ、切れ味のあるCapletonの
トースティング。
Who Dem?
6曲目は「Good In Her Clothes」です。
リディムはDetermineの「Hotta Fire」。
ギターを中心としたノリの良いメロディ
に、ダンスホールで磨かれたCapletonの
熱いトースティングがとても魅力的。
Capleton Good In Her Clothes 1999
7曲目は「More Prophet」です。
「Dirty Money」というリディムのよう
です。
デジタルなドラミングに、不穏な空気感の
キーボードを中心としたメロディ、表情
豊かで激しいCapletonのトースティングが
イイ感じ。
Capleton - More Prophet (with lyrics)
8曲目は「Hunt You」です。
こちらは「Hurricane」というリディムの
ようです。
デジタル感のあるドラミングに、こちらも
デジタルらしいキーボードのメロディ、
激しく煽るようなCapletonのトース
ティングが印象的。
Capleton - More Fire - #8 Hunt You
9曲目は「Jah Jah City」です。
「Liberation」というリディムのよう
です。
華やかなホーン音のイントロから、ホーン
とキーボードのメロディ、Capletonの
シング・ジェイが見事な曲です。
Capleton - Jah Jah City
10曲目は「Prophet's Philosophy
(Interlude)」です。
こちらも短い語りの曲です。
Prophet's Philosophy (interlude)
11曲目は「Critics」です。
リディムはLone Rangerの「M 16」。
ワン・ドロップのドラミングに、お馴染み
のホーン、ギターと重いベースの
メロディ、Capletonの軽妙なトース
ティングが楽しい曲です。
capleton - critics
12曲目は「Final Assassin (On A Mission)」です。
リディムは「Street Sweeper」として知ら
れるリディムで、オリジナルはSean Paul
& Mr Vegasの「Hot Gyal Today」のよう
です。
アカペラのトースティングから、デジタル
らしいドラミング、弦楽器とキーボードの
メロディ、Capletonの激しいトース
ティング。
Capleton Final Assassin On a Mission 2000
13曲目は「Bun Dung Dreddie」です。
「Riott」というリディムのようです。
サックスとキーボードのメロディに、性急
なリズムのデジタルのドラミング、流れる
ように滑らかなCapletonのトース
ティング。
Capleton - Bun Dung Dreddie
14曲目は「Hands Off」です。
リディムはSuper Catの「Mud Up」。
デジタルのリズミカルなリズムに、キー
ボードのメロディ、激しいCapletonの
トースティングがイイ感じ。
Hands Off
リズム特集 Mud Up (マッド・アップ)
15曲目は「Boost No War」です。
デジタルのドラミングに、キーボードの
メロディ、冒頭からのCapletonのノリの
良い激しいトースティング。
Capleton Boost No War 2000
16曲目は「Stand Tall」です。
リディムはLarry Marshallの
「Mean Girl」。
激しいドラミングから、サックスの心地
良いメロディ、刻むようなギターとキー
ボードのメロディ、ユッタリと語るような
Capletonのトースティング。
Capleton Stand Tall 2000
17曲目は「Pure Sodom」です。
リディムはWayne Smithの「Under Me
Sleng Teng」で、通称「Sleng Teng」
リディムと呼ばれています。
調子ハズレのようなハーモニカ音、硬い
デジタルのドラミング、ちょっとふざけた
ような歌い出しから徐々に激しくなる
Capletonのトースティング。
Capleton Pure Sodom 2000
リズム特集 Sleng Teng (スレンテン)
18曲目は「Love Is Comin' At You」
です。
ギターのメロディに女性ヴォーカル、
間合いよく入って来るCapletonのトース
ティングがイイ感じ。
Capleton Love is coming at you
19曲目は「Witness」です。
リディムはGatherersの「Words Of My
Mouth」。
心地良いパーカッションのドラミングに、
浮遊感のあるキーボードとギターの
メロディ、伸びやかなCapletonのシング・
ジェイがイイ感じ。
Capleton - Witness (African Star Music) 1998
20曲目は「Glorify」です。
ユッタリとしたキーボードのオープニング
から、デジタルらしいドラミングと、キー
ボードのメロディ、語るようなCapletonの
トースティング。
Capleton - Glorify
ざっと追いかけて来ましたが、Capletonの
全身全霊をかけて語りかけるようなトース
ティングはやはりとても迫力があり、その
思いを込めたシング・ジェイに圧倒され
ます。
また聴き逃せないのが、このアルバムが
レゲエならではの独特の世界観を作り上げ
ている事です。
この世界はダンスホール・ディージェイと
して活躍し、ルーツ・ディージェイに転身
したCapletonだからこそ、作りあげる事が
出来た世界だと思います。
いろいろ批判があったとしても、この
アルバムがこの時代の聴いておくべき1枚
である事は疑いの余地はありません。
その後も活躍し、今もYouTubeで他の
シンガーなどの動画に客演している彼です
が、2010年のソロ・アルバム
「I-Ternal Fire」以後にソロ作のリリース
が無いのが、稀有な才能を持った人だけに
とても残念に思います。
機会があればぜひ聴いてみてください。
Capleton - Nuh Fear Dem (Official Music Video)
Capleton, Jah Vibez - High (Official Video)
○アーティスト: Capleton
○アルバム: More Fire
○レーベル: VP Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2000
○Capleton「More Fire」曲目
1. Fire Chant (Intro)
2. Danger Zone
3. The More Them Try
4. Conscience Ah Heng Dem (Interlude)
5. Who Dem?
6. Good In Her Clothes
7. More Prophet
8. Hunt You
9. Jah Jah City
10. Prophet's Philosophy (Interlude)
11. Critics
12. Final Assassin (On A Mission)
13. Bun Dung Dreddie
14. Hands Off
15. Boost No War
16. Stand Tall
17. Pure Sodom
18. Love Is Comin' At You
19. Witness
20. Glorify
●今までアップしたCapleton関連の記事
〇Capleton「Lotion Man」
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