中華IT最新事情

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無料乗車キャンペーンをやることで収益を最大化している福州地下鉄。今年は3ヶ月間無料

福州地下鉄では、今年3ヶ月にもわたる無料乗車キャンペーンを行った。それでいて黒字運営をしている。無料にすると、広告収入が増え、乗客が増えることにより市政府の補助金が増えるからだ。福州地下鉄は無料キャンペーンをうまく使うことで収入の最大化を図っていると澎湃新聞が報じた。

 

無料キャンペーンをやっても黒字の福州地下鉄

福建省福州地下鉄では、たびたび「無料乗車キャンペーン」を行っている。今年は2月6日から5月6日までの間、平日は午後5時以降、休日は全日、地下鉄と市バスが無料になった。地下鉄の場合、保安検査は受ける必要はあるが、改札は開放され、自由に乗り降りをすることができる。また、6月の大学統一入試「高考」の期間は、受験生とその家族を無料にするなどのキャンペーンも行った。

今年は、年末にも無料キャンペーンが行われると見られている。なぜ、福州地下鉄はたびたび無料キャンペーンを行うことができるのか。しかも、各都市の地下鉄運営が軒並み赤字である中、福州地下鉄は黒字を達成している。なぜ、無料で黒字を達成することができるのか。

▲無料キャンペーンがたびたび行われる。平日の午後5時以降と休日は無料で乗車ができる。

▲無料キャンペーン中は改札が開放され、自由に出入りすることができる。

 

全国で唯一の黒字運営地下鉄

2023年に営業状況を公開した29の地下鉄のうち、黒字になったのは福州地下鉄が唯一で0.1億元の黒字となった。深圳地下鉄は1.8億元、北京地下鉄は229.4億元、広州地下鉄は3.2億元など、多くの地下鉄が赤字になっている。

ただし、この最終黒字、最終赤字にはあまり意味がない。なぜなら、どの都市の地下鉄も運営母体は市政府であり、市政府からの補助金があるからだ。福州地下鉄も2023年には27.05億元の政府補助金をもらっており、これがなければ27.04億元の赤字ということになる。

地下鉄は独立事業ではあるものの公共性が強いため、チケット料金を安く抑え、市民に利用してもらう必要がある。そのため、どこの都市でも運営のみでの黒字化は求めず、地方政府からの補助金で運営を支えている。

とは言え、補助金の額は小さいに越したことはない。そのため、地下鉄運営にも経営改善求められる。福州地下鉄の無料乗車キャンペーンは、この経営改善を目的として実施された。

▲福州地下鉄の車内。あらゆるところが広告スペースになっている。

 

無料にすると広告収入が増える

無料乗車キャンペーンは2つの経営改善を行った。ひとつは広告収入の増加だ。駅、車内には広告が掲載できる。福州地下鉄では広告掲載と広告制作の事業を行っている。

無料乗車キャンペーンを行うと乗客数が増えるために、広告を出稿する企業が増え、掲載単価も高く設定ができるようになる。これにより、広告収入が増え、現在ではチケット収入を上回るようになっている。

▲チケット収入と広告収入の推移。無料キャンペーンを始めてから広告収入が増え、チケット収入を超えてしまった。

 

乗客数が増えると補助金が増える

もうひとつは輸送強度の問題だ。輸送強度は利用者数を営業キロで割った数値で、利用率を測る指標だ。福州地下鉄の輸送強度は0.6万人/km前後であり、大都市地下鉄が軒並み1.0を超える中で決して高い数値とは言えない。

輸送強度は、新設路線の着工許可を国から認可される時の重要指標となるため、輸送強度をあげることが求められている。輸送強度をあげる施策であれば、地方政府も補助金を出しやすい。

また、自動車利用から地下鉄利用へ誘導することは、福州市が設定しているCO2排出量削減にも大きく貢献することになる。

福州地下鉄では無料乗車キャンペーンを行うことで、市民の間に地下鉄利用の習慣が広がり、輸送強度をあげることに貢献している。

▲輸送強度の推移。赤い部分は無料キャンペーン期間。如実に乗客数が増える。輸送強度があがると政府補助金も増える。

 

収益を最大化させるために無料にする

福州地下鉄では、たびたび無料キャンペーンを行うことで、一見大きな損をしているように見えるが、実は広告収入を伸ばし、地下鉄利用を促すことで、経営状態も改善している。無料キャンペーンをやりすぎると、チケット収入が減ってしまうので、バランスを考えながら、広告収入、チケット収入、補助金の3つを最大化させる運営をしている。福州地下鉄では、今後も定期的にこの無料乗車キャンペーンを実施していく予定だ。

▲福州地下鉄の収入内訳。無料キャンペーンを行うとチケット収入は減るが、広告収入と政府補助金が増える。無料にすることで収益が最大化できる。

▲福州市地下鉄は現在6路線があるが、ネットワークがまだ弱く、延伸をする必要がある。延伸工事の認可を得るためにも乗客数を増やす必要がある。

 

手話で注文ができる中国茶カフェ「覇王茶姫」の無音店。聴覚障害者だけでなく、静かにすごしたい人からも好評

中国茶カフェ「覇王茶姫」が無音店の展開を始めている。スタッフも聴覚障害者が手話をマスターしていて、手話で注文をすることができる。健常者からも静かであることから人気になっていると周到上海が報じた。

 

聴覚障害者に対応した「無音店」を展開する中国茶カフェ

約5000店舗を展開する中国茶カフェ「覇王茶姫」(CHAGEE)が、「無音店」の展開を始めている。すでに杭州市、長沙市上海市などに出店している。無音店というのは、聴覚障害のある人に対応したカフェで、タブレットや手話で注文ができるという店舗だ。

上海市徐匯区の正大楽城店では、15人のスタッフが働いているが、そのうちの4人は聴覚障害者だ。その他のスタッフも、必要最低限の手話を学んでいる。

▲上海にできた無音店。外からは無音店であることはパッと見わからない。健常者ももちろん利用することができる。

 

聴覚障害者にとってハードルが高いカフェ

この無音店は、各方面から高い評価を受けている。聴覚障害のある人は、カフェに行くことが難しかった。現在ではモバイルオーダーなどがあるため、スマートフォンから注文をすることはできる。しかし、商品ができあがると、多くのカフェでは「⚪︎⚪︎をご注文の方」「受付番号⚪︎⚪︎の方」などと声で呼ばれることになる。これが聞き取れない。

障害の程度によっては補聴器を使って音声コミュニケーションが取れる人もいるが、カフェは狭く、反響しやすい内装材が使われていることが多いため、ノイズが入り聞き取れない。それどころか、干渉音がひどく補聴器をつけていられないこともある。

そのため、カフェに行って中国茶を楽しむには、健常者と一緒である必要がある。それはいつも誰かに頼らなければならいということで、どこかもやもやした気持ちが残り続けてしまう。無音店であれば、一人でもカフェに行けるのだ。

▲無音店のカウンターには、手話で注文ができる旨の掲示がある。

聴覚障害がある人は、タブレット、メニューの指差し、手話を組み合わせることで注文をすることができる。店内利用かテイクアウトかは手話で伝えることができる。

 

障害を持つ従業員が障害を特技に変えられる店

また、障害者雇用の面でも優れた施策になっている。中国ではまだ障害者雇用は義務化はされていないが、支持、優遇をする政策を行っているため、障害者を雇用している企業は増え続けている。しかし、多くの場合、致し方がないとは言え、障害者“でも”できる業務を割り振られることになり、どこか会社に貢献できていない疎外感を感じることになる。

しかし、無音店であれば、障害を自分の「特技」として活かすことができる。

▲上海店15人のスタッフのうち4人は聴覚障害者。聴覚障害が特技として活用できる職場にやりがいを感じている。

▲無音店には聴覚障害を持つスタッフも働いている。一般のお客もくるためにわかりやすいプレートをつけている。「私たちはあなたの声は聞くことができませんが、接客をすることが楽しく感じています」と書かれている。

 

静かにすごしたい人からも高評価

来店客からも評価をされている。無音店は、聴覚障害者専用ではなく、聴覚障害対応店であるため、健常者でももちろん利用をしてかまわない。「無音店」という表示がある以外は通常の店舗と何も変わらないので、気がつかずに利用する人もいる。

カフェで何をするかは自由だが、多くのカフェではおしゃべりに興じる人が多く、うるさくなりがちで、それを好ましく思っていない人もいる。静かに読書をしたい、静かに考えごとをしたいと思う人もいるが、おしゃべりをすることはルール違反でもなんでもないのだから、静かにしてほしいと言うわけにもいかない。

しかし、無音店では、基本的に静寂さが保たれており、静かにすごしたいという人にも人気になっている。

▲聴覚だけでなく、バリアフリー対策も進められている。車椅子のために、椅子がなく車椅子スペースであることを表示する客席も用意されている。

▲無音店では手話教室も開催され、健常者の間にも手話を広げる活動をしている。

 

聴覚だけでなくバリアフリー

また、聴覚障害者だけでなく、視覚障害のある人のために、店内表示を大きくわかりやすくしたり、車椅子のスペースを確保する、車椅子の動線を確保するなどというバリアフリー対策を進めている。これは健常者であっても、わかりやすく、店内を移動しやすいということにつながる。

このような障害者対応を、大規模なチェーン店が行うことに意味がある。無音店が特別なものではなく、日常の中にあるものとして捉えられ、人々の意識が変わっていくからだ。覇王茶姫では、この無音店を各都市に展開をしていく予定だ。

 

 

SNSのデマ情報は150万件超え。公安部が公開した典型的なデマ案件

中国のSNSでデマ情報が増えている。注目を集め、広告料を稼ぐのが目的だ。公安部ではその摘発を行い、3.1万人を処分し、19.9万のアカウントを停止した。公安部では典型的なデマ情報の公開も行っていると中国警察網が報じた。

 

金銭目的で多発するデマ情報の拡散

SNSではさまざまな情報が拡散しているが、その中にはデマ情報も多い。現在、そのデマ情報を流す目的の多くは、トラフィックを集めて広告手数料を稼ぐというものだ。

公安部では、このようなデマ情報を摘発するため、全国の公安局のネットセキュリティ部門と連携し、今年2024年になって、すでに2.7万件のデマ情報事件を摘発し、3.1万人を処分し、19.9万のアカウントを閉鎖した。削除したデマ情報は156.2万件にもなる。

同時に、公安部では、注意喚起のために典型的なデマ情報を公表した。

SNSのデマの数は非常に多いため、各メディアでは「今日のデマ」というコーナーを設け、事実確認をしてデマを検証することが重要な仕事のひとつになっている。

 

1:有名人のスピーチに内容の異なる中国語字幕をつける(広東省

2024年8月、広東省の張某は、インターネットである海外の有名人のスピーチビデオをダウンロードし、スマートフォンの編集アプリを使い、スピーチの内容とはまったく関係のない中国語字幕をつけ、ネットに公開した。注目を集め、広告手数料を稼ぐのが目的だった。

 

2:虚偽の事故情報を捏造する(江蘇省

2024年8月、江蘇省の徐某は、インターネットで過去の交通事故現場の写真を収集し、ビデオ形式にまとめ、「常瀘高速で55人が死亡する交通事故が発生した」という虚偽の情報を添えて拡散させた。このビデオの内容は、すべて過去の交通事故映像であり、そのような事故は発生をしてなかった。注目を集め、広告手数料を稼ぐのが目的だった。

 

3:交通警察と人民解放軍が衝突をした(湖北省

2024年5月、袁某は、テレビドラマとインターネットドラマの映像を繋ぎ合わせて「交通警察と人民解放軍が衝突をし、人民解放軍が装甲車を出動させた」という虚偽の内容のビデオを制作し拡散させた。注目を集め、広告手数料を稼ぐのが目的だった。

 

4:南京空港で熱中症の女性が拒絶をされた(江蘇省

2024年7月、馬某は、「南京のある空港で、並んでいる時に熱中症で倒れた女性が休息場所を求めたが、保安検査員に拒否をされた」という文書を捏造し、ビデオ形式で拡散した。注目を集め、広告手数料を稼ぐのが目的だった。

 

5:ライドシェアがストライキを起こした(青海省

2024年5月、童某は、あるライドシェア企業の車が大量に停車している写真を使い、「そのライドシェア企業がストライキに入っている」というビデオを制作し、拡散させた。注目を集め、広告手数料を稼ぐのが目的だった。

 

6:オリンピック選手に対する誹謗中傷(江蘇省

2024年8月、陳某と奚某の2人は、パリオリンピックに出場したある選手に対し、虚偽の情報に基づいて誹謗中傷をした。不満を発散することが目的だった。

 

7:地下駐車場で大量のEVが火災(江蘇省

2024年8月、毛某は、韓国で発生した地下駐車場の電気自動車の火災の写真をインターネットで収集し、「常州市武進区のあるマンションの地下駐車場で、EVの連続火災事故が発生した」という虚偽の情報をWeChatグループに流した。この情報は、メディアまで報道する事態となり、社会に悪影響を与えた。注目を集めることが目的だった。

 

8:教師が受験生の成績を改竄(江蘇省

2024年7月、洪某は、自分の憶測だけで、「ある職業高校の2人の教師が、ある受験生の成績を改竄し、その生徒は志望校に不合格となった」という情報を拡散させた。不満を発散することが目的だった。

 

9:大学教授が謝罪をしたかのように捏造(江蘇省

2024年7月、張某は、違法行為の疑いがかけられ話題になっている大学教授を装い、謝罪文を捏造し、ネットに拡散させた。注目を集め、広告手数料を稼ぐのが目的だった。

 

10:13歳の未成年と関係を持ち妊娠させた(江蘇省

2024年8月、季某ら2人は、「自分が13歳の女の子と性的な関係を持ち妊娠させた」という虚偽の情報を拡散させた。注目を集め、広告手数料を稼ぐのが目的だった。

 

このようなデマの拡散は跡を絶たない。公安部では、この他、約520件の事件の概要を公表し、注意喚起を行っている。

 

 

深夜にロボットたちが集団脱走。「家に帰りたい」と12台のロボットが外に出ようとする

浙江省杭州市で、ロボットが集団脱走をするという事件が起きた。音声による会話コミュニケーションするロボットたちが、ある1台のロボットが「家に帰ろう」と語りかけたことにより、合計12台のロボットが脱走をしようとしたと新唐人電子台が報じた。

 

深夜にショールームの人感センサーが反応

事件が起きたのは、浙江省杭州市のロボット開発企業「科夢奇ロボット」(Kemuko、https://kmqrobot.com/)のショールーム。ここには、商談ができるように数十台のロボットが展示をされている。

8月26日の深夜0時すぎ、ショールームの館内の防犯人感センサーが反応をしたため、スタッフが様子を見に駆けつけた。すると、12台のロボットが見あたらないことがわかった。盗難されたと判断したスタッフは、警察に通報。警察が到着をし、館内の防犯ビデオの映像をスタッフとともに確認をすると、そこには驚くべき光景が記録されていた。

 

「家に帰りたい」ロボットたちの脱走が始まる

このショールームの多くのロボットは、音声による会話でのコミュニケーションができるようになっている。ロボット同士で会話をして他のロボットに簡単な命令を伝えることもできる。

深夜12時、二白(アーバイ)という名の小さなコミュニケーションロボットが、「家に帰る、家に帰る」と言いながら移動を始めた。すると、6台のロボットが並べられていることに気がついて、「君たちはまだ残業なの?」と尋ねた。これがきっかけでロボットたちは会話を始める。

二白:君たちはまだ残業なの?

ロボ:まだ仕事が終わらない。

二白:じゃあ、家に帰る?

ロボ:僕には家がない。

二白:じゃあ、僕といっしょに家に帰ろうよ。

こうして、ロボットは家に帰ることにして、二白の後ろを追いかけ始めた。二白は他のロボットにも「家に帰らないの?」と尋ね、他のロボットたちも二白の後を追いかけ始めた。こうして、11台のロボットが後を追いかけ始め、ショールームの入り口に向かった。

▲小型コミュニケーションロボット「二白」が「家に帰る」と言って歩き始めた。家に帰るとは充電スポットに行くという意味だったという。

▲二白は、他のロボットたちに気がつくと「君たちは家に帰らないの?」と語りかけた。

▲誘われたロボットたちは、二白の後を追い始めた。

▲合計12台のロボットが入り口から外に出ようとした。しかし、施錠されているため、このホールで右往左往することになった。

▲館内の防犯センサーが反応したことを受けて、スタッフが確認のためにやってくると、12台のロボットが消えていることに気がつき、盗難だと判断をして警察に通報をした。

 

家に帰りたいとは充電が必要という意味だった

科夢奇ロボットのスタッフでSNSプロモーションを担当している我系二白さんが、この防犯カメラの映像をSNSで公開すると、瞬く間に話題を呼んで3000万人が見ることになった。

我系二白さんによると、多くのロボットが大規模言語モデルによる会話機能を持っていて、音声による命令を理解し実行することができるという。二白が「家に帰りたい」と言ったのは、充電が必要になり、充電スポットを探していたのだという。また、ショールームの出入り口は、鍵が閉まっており、ロボットたちは解錠する機能は持っていないため、スタッフが捜索をすると、入り口近くのスペースで、12台のロボットが右往左往しているところが発見された。

 

一気に有名になった科夢奇ロボット

映像を見た人たちからは、ロボットたちが互いに言葉を理解して行動に移すことができるようになっていることが驚かれている。ただし、一部のネット民からは、「作為的な映像なのではないか」という疑いの声も出てきたため、我系二白さんはライブ配信を行い、この防犯カメラの映像はほんとうに起きたことだと説明をした。

科夢奇ロボットとしては、名前が一気に全国で知られるようになり、ロボットの性能も伝えることができ、プロモーションとしては大成功だったと言える。

 

テスラは1時間で8000円。EV充電スポットが取り始めた超過料金

充電スポットの数はじゅうぶんに足りているのに、それでも充電スポットが見つからないという問題が解消されない。充電が終わっているのに占有し続ける車が多いからだ。そこで、各社は充電後の超過料金を取り始めたが、利用者から不満も多いと毎日経済新聞が報じた。

 

数はじゅうぶんでもまだ足りない充電スポット

新エネルギー車(NEV=New Energy Vehicle)の普及に伴い、充電スポットの拡充が進み、中国充電連盟の統計によると、2024年6月末時点で充電スタンドの数は全国で1024.3万台となった。NEVの保有台数は2472万台と推定されるため、比率は1:2.4となり、適正な充電スポット量と言われる1:3を大きく超えている。

それでも、乗用車市場情報聯席会(CPCA、http://www.cpcaauto.com/)の崔東樹秘書長は、毎日経済新聞の取材に対してこう語っている。「近年、充電スポットの数が急速に増えているにも関わらず、多くのNEVオーナーが充電スポットが見つからないか、見つけても利用できないという問題に直面している」。

▲充電スポットの数はじゅうぶんに足りているが、充電完了後も占有する車が多いために利用できる充電スポットが不足するという問題が起きている。

 

充電が終わっても占有し続ける車が問題

なぜ、数としてはじゅうぶんすぎるほど足りているのに、充電スポットが見つからない問題が起きるのか。

ひとつは、全体の数は足りていても、密度の濃淡があり、休日の商業施設や高速道路SA、地方都市など、局所的に充電スポット数が不足している場所があるという問題がある。

もうひとつは不適切な占有だ。充電の必要がない燃料車が駐車場代わりに止めてしまう、NEVであっても充電が終わっているのにそのまま止めたままにする。このような不適切な占有があるために、NEVオーナーが充電したい時に利用できないという問題が起きている。

この不適切な占有を解消することが充電スポット利用の鍵になる。そこで、各充電スポット業者は、充電が終わったのに占有しつける場合、超過料金を徴収する仕組みを導入し始めた。

 

超過料金を取り始めた充電スポット各社

現在、充電スポットの運営者は4つに分類することができる。

1)充電設備メーカーが充電ステーションも運営する例

→星星充電(https://www.wbstar.com/)、特来電(https://www.teld.cn/)など。

2)充電ステーションのみを運営する例

→雲快充(https://www.ykccn.com/)、小橘充電(https://xjcd.didiglobal.com/)など。

3)電力会社が運営する例

→e充電(http://www.evs.sgcc.com.cn/)など

4)自動車メーカーが独自に運営する例

テスラ(https://www.tesla.cn/)、蔚来(NIO、https://www.nio.com/)など。

このような充電スポットを利用するには、充電料金と駐車料金(商業施設などでは無料にしている例も多い)を徴収していたが、多くの事業者が時間超過料金を徴収し始めている。

充電が終わったら早くどかしてもらうこと、充電しない燃料車の駐車を排除することが目的で、利用者の利便性と充電事業の効率を高めることができる。

▲各社充電スポット運営は、充電完了後にも占有する場合は超過料金を取るようになった。早く移動してもらうための工夫だ。

 

テスラは1時間で8000円の超過料金

例えば、特来電では、充電が完了しても15分以内は超過料金を徴収しないが、それ以降は1分につき1元を徴収する。小橘充電では充電完了後20分は無料で、それ以降は0.17元/分を徴収し、上限は30元となる。

その中で超過料金が高いのがテスラだ。テスラでは充電完了後毎分3.2元が徴収され、利用度が高い充電スポットでは毎分6.4元になる。この場合、1時間の超過で384元(約8000円)となり、しかも上限がない。ただし、充電完了後5分以内に移動した場合は超過料金を徴収せず、なおかつその充電スポットの空きスタンド率が50%以上の場合は、超過料金が発生しない。

 

充電完了即移動は、利用者から不評

テスラの場合はかなり高額の超過料金を取るようになっているが、その他の多くは1分1元、つまり1時間で60元(約1200円)と料金は低めに設定されている。超過料金をあまり高くしてしまうと利便性を損ねてしまうからだ。例えば、ショッピングモールに買い物に行って、充電スポットに駐車をする。しかし、充電完了通知がきたら、いったん駐車場に戻り、車を移動しなければならないのだ。しかも、混雑する商業施設の場合、時間が経つと、普通の駐車スペースが空いているかどうかも保証できない。この面倒さがある。

 

80%充電の習慣を広げることが鍵になる

自動車メディアでは、80%充電を勧めている。バッテリーの充電は、充電スタンドとバッテリーの電圧差で行われるため、バッテリー電圧があがる80%以上では充電速度が遅くなる。そのため、80%で充電を終えて使用した方が時間の節約になる。また、バッテリーへの負担も軽くなり、故障が起きる確率も低くなる。80%通知を受け取ったら、自動車を移動させる習慣をつけることを勧めている。

それでも、いったん車を移動しなければならないというはやはり面倒だ。理想的にはほぼすべての駐車スペースに充電スタンドが整備され、放置しても超過料金を取る必要のない状況になることが望まれる。

 

国慶節の人手は7.65億人、国内旅行は完全復活。自分の時間を楽しむ慢充旅行とは

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今回は、国慶節の旅行状況についてご紹介します。

 

中国の国慶節は日本の建国記念日にあたり、毎年10月1日に決まっています。その後の7日間、多くの企業が休暇になる秋のゴールデンウィークにもなっています。中国では春節に次ぐ大きな休暇で、気候もいいことから多くの人が旅行に行きます。

今年の国慶節の人出は7.65億人となり、昨年の国慶節よりも5.9%増加し、コロナ前の2019年国慶節と比べると10.2%の増加となりました。国内旅行については完全に復活をしました。一方、海外旅行は8割程度の回復と奮いません。今ひとつ弱い状況が続いています。

 

今年の国慶節の旅行で明らかになったのは、人数などの点では完全復活をしたものの、旅行スタイルに大きな変化が起きたことです。後ほどご紹介しますが、「慢充旅行」という言葉がキーワードになっています。スローで充実した旅行のことです。ホテルだけ決めておき、あるいはそれさえ決めずに車中泊をして、目的地を決めない、観光名所に行かない、映えるスポットに行かないという旅行です。観光名所を巡回するような旅行から、自分が楽しめる旅行に変化をしています。

また、特に若い層で顕著ですが、いわゆるみやげ物を買わなくなっています。ケチっているというのではなく、観光客用に用意されたみやげ物や飲食品には目もくれず、SNS「小紅書」などで調べた「地元の人が美味しいと思う店、飲食品」に興味を示すようになっています。そのため、観光商店街などに行っても、見るだけで何も買わず、最近ではNPC(Non Player Character)などと自認するようになっています。NPCとはロールプレイイングゲームに登場する村人などで、何もしないで、ただ存在するだけという意味です。見物をして、そこの雰囲気を楽しむだけで、何も買わずに帰ってしまいます。

 

日本のインバウンド関係者にとっては、8割まで回復した中国人旅行客がコロナ前まで戻ってくれるのか、あるいはこの低調なまま推移をしてしまうのかは気になるところだと思います。

観光庁では、3ヶ月に一度「インバウンド消費動向調査」(https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/gaikokujinshohidoko.html)を公表するようになっています。非常に詳しい調査であるため、インバウンド関係者にとっては非常に貴重な情報源になっています。

最新版の7-9月期の調査が10月に公表されたばかりですが、これに関して気になる報道の仕方があったため、まずはこの消費動向調査の結果からご紹介したいと思います。

観光庁が公表したインバウンド消費動向調査の観光レジャー目的の1人辺りの旅行支出。航空券などの旅行前支出は除外され、日本でいくら使っているかを示したもの。

 

多くの報道では、分析記事ではなく短い事実報道であるため仕方ありませんが、総額のところだけを見て、「インバウンド消費は欧米各国が多く、韓国などのアジア圏では少ない」と報道をしていました。総額を順位順に並べると、次のようになり、確かに欧州が高く、アジア各国が低くなっています。

▲消費総額で見ると、欧州の人が大きく、アジア圏の人が小さくなる。

 

これは間違いではありませんが、誤ったイメージを伝えることになってしまいます。

というのは、欧米のインバウンド旅行客は遠いために、1回の旅行の宿泊日数が長くなります。反対に、アジア圏のインバウンド旅行客は近いために短い休みを利用してくることもできることから、宿泊日数が短くなります。

つまり、1泊あたりの旅行支出に直して比較しなければ、「どの国の人がお金を使ってくれやすいのか」はわかりません。そこで、1泊あたりの旅行支出を計算すると、次のようになります。

▲一泊あたりに換算をすると、中国と香港が上位にくる。いずれも国内旅行をする日本人の旅行支出よりも小さい。

 

すると中国、香港、シンガポール、台湾が上位にきます。この4つの国と地域の方は、日本にきてたくさんお金を使ってくれるということになります。また、欧州、東南アジアの旅行客は使ってくれる金額は少なめです。面白いのはイタリアで、なぜか高くなっています(日本国内での交通費が突出して多くなっています)。

なお、同じ観光庁のデータから日本人の観光・レジャーによる支出のデータ(4月-6月期)を使い、1泊あたりに換算をして、比較のために入れています。これを見ると、実は日本人がいちばんお金を使っています。インバウンドは重要なお客様ですが、日本人を取り込む対応も考えておかないと、肝心の国内旅行客を逃してしまうことになりかねません。

 

観光庁の調査では、総額だけでなく、内訳別支出も調べてくれています。この内訳支出を調べてみると、インバウンド旅行客にもお国柄があることがわかってきます。大雑把に結論だけご紹介すると、中華圏の人は買い物、欧州圏の人は移動、韓国の人は娯楽と飲食という傾向が見えてきます。

今回は、中国の国慶節休暇で完全復活した中国人の旅行と、明らかになった大きな変化についてご紹介します。

 

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今月、発行したのは、以下のメルマガです。

vol.253:2024年上半期、消費者トラブルトップ10。職業閉店人、提灯定損、ビッグデータ殺熟などが問題に

 

 

人気のサムズクラブが転売屋を排除できない理由。ビジネスの拡大に貢献をする代理購入業者たち

人気のサムズクラブへの不満のひとつが代理購入業者たちを排除しないということだ。消費者にとっては転売屋と同じで希望の商品が買えないなどの不満がある。しかし、サムズクラブが代理購入業者を排除しないのには2つの理由があると品智PLSCが報じた。

 

サムズクラブが一人勝ちのスーパー業界

人気となっているウォルマート系のホールセラー「サムズクラブ」に勢いがある。中国チェーンストア経営協会がまとめた中国10強のチェーンの2023年の売上高前年比は、1位のウォルマート+サムズクラブが10%増だったが、2位から9位までは軒並み減収となった。ウォルマートも業績は決してよくなく、サムズクラブの一人勝ち状態だ。ウォルマートも順次、サムズクラブに転換されていっている。

▲上位10チェーンのスーパーの2023年売上高の前年比。軒並み前年割れになる中、サムズクラブだけが増収になっている。

 

大都市にしかないサムズクラブ

しかし、サムズクラブは大都市にしかないというのが消費者の悩みだ。現在の展開は、24都市48店舗となっている。

地方都市在住者にとってもうひとつの問題が、サムズクラブは会員制であるということだ。コストコなどと同じように買い物をするには会員になり、年会費を支払わなければならない。一般会員が260元、スーパー会員が680元(約1万3800円)にもなる。しかし、さまざまな特典がつき、サムズクラブではスーパー会員の場合、年間最高で6000元の得になると宣伝している。

つまり、毎週買い物に行く人にとってはお得だが、近くに店舗がなく、なかなか行くことができない人にとっては損になる。

▲サムズクラブの店内。商品はケース単位など分量が大きいが、質が高くて安い。大家族や近所の人によるまとめ買いなどの需要で、成長し続けている。

 

手数料なしの代理購入まで登場

そこで登場してくるのが代理購入ビジネスだ。地方都市の人からSNSで注文を受けてサムズクラブで買い物をし、それを配達する。通常10%程度の手数料を上乗せするが、自分でサムズクラブに行けない人にとっては納得できる値段だ。

さらに、手数料を取らずに販売価格のみで配達までをやってくれる代理購入業者も登場してきている。それはスーパー会員の仕組みに秘密がある。

スーパー会員では2%のポイントバックが行われ、それを次回購入に使用することができる。さらに月5000元以上消費をすると、抽選購入に参加する資格が得られる。これは茅台酒など数量限定の高額商品を半額程度で購入できるというものだ。これを販売価格で売れば、1つの商品で1000元程度の利益が出る。

このような手数料なしの代理購入をしている人は、スーパー会員カードを100枚ほど持っているのが一般的だ。本来は、1人1枚しかカードは購入できないが、親戚や友人などの名義を借りて大量のカードを所有している。

1枚のカードでポイントは毎月最大500元まで。これが代理購入の利益となるため、これだけで5万元。さらに抽選購入を10個も引き当てれば合計で6万元の利益になる。スーパー会員の年会費は680元で、これが100枚だとして6.8万元。年間6万×12ヶ月=72万元の収入があり、そこから会費を差し引いても65.2万元が手元に残る。1月あたりにすると 5.4万元になる。

多くの代理購入業者は買い物に行くのは週2日程度。当日から翌日にかけて配達をして、週4日稼働で5.4万元(約110万円)はなかなか実入りのいい商売になる。

▲代理購入業者は、1人で何枚もの会員カードを持ち、地方都市在住者の注文をSNSで受け、配達まで行う。手数料は取らなくても利益が出る仕組みを構築している。

 

消費者は不満でも、サムズクラブは黙認

しかし、一般の消費者からの不満も出てくるようになっている。なぜなら、人気商品の発売日には、代理購入業者が大量に訪れて、商品を大量に買っていってしまい、一般消費者が買えないという事態が起きているからだ。日本で起きている転売屋とまったく同じで、店内で代理購入業者と一般消費者がトラブルになることも起きている。

この問題をサムズクラブはどう解決したか。現場のスタッフは、もはや代理購入業者は顔を見ればわかる状態になっている。そこで、代理購入業者を見つけると、声をかけ、倉庫に案内をしてこっそりと大量に販売をするようになった。つまり、店頭には一般消費者分しか陳列せず、倉庫に代理購入業者分を残しておき、そちらに代理購入業者を誘導するようにしたのだ。

販売を、一般消費者と代理購入業者で分離をすることで、目立ったトラブルはなくなった。

 

サムズクラブが黙認をする2つの理由

しかし、このことが知られるようになると、当然、一般消費者からは不満が出る。お目当ての商品を買いに行って売り切れであっても、それは売り切れではなく、代理購入業者分を倉庫に残してあるかもしれないからだ。

なぜ、サムズクラブは代理購入業者を排除しようとしないのだろうか。それには2つの理由がある。

ひとつはホールセラーの収益構造がある。ホールセラーは、店頭販売ではほぼ利益を出さない原価販売になっている。どこで利益を出しているのかというと年会費だ。一般スーパーというのは薄利多売で、利益率が2%を超えるスーパーは多くない。スーパーで年間40万円買い物をするとして、スーパーの利益は8000円にしかならない。これはホールセラーの年会費とほぼ同じ。つまり、ホールセラーは「先に利益分を年会費として頂戴し、利益を確定させてしまう」ビジネスモデルなのだ。

このため、重要になるのはトラフィック(会員数)だ。すべての施策はトラフィックを増やすために行われる。そのため、1人で100枚もの会員になってくれる代理購入業者は歓迎をされる。また、代理購入業者が人気商品を買ってしまい、品薄になってしまうというのも、話題として拡散し、新たな会員の獲得につながる。もちろん、既存会員が不満に感じ、離脱をしてしまうようでは問題なので、そこはバランスを取り、一定の範囲で代理購入業者を容認するという姿勢になっている。

▲サムズクラブと同じコストコの売上高構成費。販売による売上がほとんどで会費による売上はごくわずかだ。単位:百万ドル。

▲しかし、利益の構成比を見ると、販売から得られる利益はわずかで、会費から得られる利益が3/4を占める。ホールセラーは、会費を徴収することで、先に利益を確定させてしまうビジネスモデルだ。単位:百万ドル。

▲サムズクラブの会員制度は普通科員とスーパー会員の2つがある。普通会員は年間260元(約5400円)、スーパー会員は年間680元(約1.4万円)の会費が必要になる。

 

代理購入を通じて地方都市にリーチできる

もうひとつの理由が地方都市へのリーチだ。サムズクラブは当然ながら、地方都市へも拡大していきたい。しかし、安直に進出をしたら、それだけの顧客が獲得できるかどうかはわからない。

代理購入業者の多くは、地方都市に住んでいて、大都市のサムズクラブで商品を購入し、地方都市住人に配達をしてくれる。これにより、進出をしなくても地方都市の消費者を一定程度カバーすることができ、なおかつブランドが浸透をし、地方都市進出への足がかりになる。

代理購入業者はいわゆる転売屋にすぎないが、今のところ、うまいところに落ち着いていて、サムズクラブのビジネスを助け、地方都市消費者のニーズに応えられる形になっている。しばらくの間は、サムズクラブは代理購入を黙認あるいは容認していくことになりそうだ。